タイヤ・ゴム業界は、現代社会のモビリティを支える基幹産業である一方、その事業活動が地球環境に与える影響について、重大な課題に直面しています。気候変動の文脈では、製造プロセスにおけるエネルギー消費や、製品使用段階での転がり抵抗に起因する燃料消費に伴う二酸化炭素(CO2)排出が問題視されています 1。また、天然ゴムをはじめとする天然資源への高い依存度は、資源の持続可能性や価格変動リスク、さらにはサプライチェーンにおける森林破壊や生物多様性損失といった問題と密接に関連しています 3。加えて、年間推定10億本とも言われる使用済みタイヤ(ELT: End-of-Life Tires)の適正処理と資源としての有効活用は、循環型社会の実現に向けた喫緊の課題です 6。これらの課題は相互に関連しており、気候変動対策、資源循環、生物多様性保全を統合的に捉え、サプライチェーン全体で取り組む必要性が指摘されています 9。このような状況下において、業界のリーディングカンパニーであるブリヂストン株式会社(以下、ブリヂストン)が、これらの環境課題に率先して取り組み、持続可能な社会の実現に貢献することは極めて重要です。
本レポートは、ブリヂストンの環境パフォーマンスを「気候変動」「資源循環」「生物多様性」という3つの重点分野において、包括的かつ学術的な視点から分析することを目的とします。同社の具体的な環境イニシアチブ、目標設定、実績および進捗状況を詳細に記述し、それらに関連する潜在的なリスクと事業機会を評価します。さらに、タイヤ・ゴム業界における先進的な環境慣行や競合他社(ミシュラン、グッドイヤー、コンチネンタル等)の動向を調査・比較し、CDP、MSCI、Sustainalytics等の第三者評価機関による環境スコアを用いたベンチマーキングを実施します。最終的には、これらの分析結果に基づき、ブリヂストンが今後注力すべき課題と具体的な行動に関する提言を行います。本レポートは、企業の環境スコアリング評価やサステナビリティ戦略の策定、投資判断等に資する、詳細かつ客観的な情報を提供することを目指します。
ブリヂストンは、2050年とその先を見据えた長期環境ビジョンとして、「自然と共生する」「資源を大切に使う」「CO2を減らす」という3つの活動の柱を掲げています 1。これは、経済成長と環境負荷・資源消費の分離を目指す「デカップリング」への挑戦であり、持続可能な社会の実現に向けた同社の基本的な考え方を示しています 11。この長期ビジョン達成に向けたマイルストーンとして中期目標「マイルストン2030」を設定し、具体的な取り組みを進めています 10。
これらの環境への取り組みは、同社の経営戦略と不可分一体のものとして位置づけられています。2024年から2026年までの中期経営計画(24MBP)では、サステナビリティが経営の中核に据えられており、事業戦略とサステナビリティ戦略の連動性が重視されています 12。また、同社の企業コミットメント「Bridgestone E8 Commitment」においても、Ecology(環境)、Energy(エネルギー)、Efficiency(効率)といった価値を通じて、環境課題への貢献が明確に示されています 18。これらの枠組みの下、バリューチェーン全体での環境負荷低減と持続的な価値創造を目指しています。
ブリヂストンは、気候変動対策として、自社の事業活動に伴う排出量(Scope 1およびScope 2)と、バリューチェーン全体での排出量(Scope 3)の両面から目標を設定し、削減に取り組んでいます。
Scope 1およびScope 2排出量については、2030年までに2011年比で50%削減するという目標を掲げています 10。注目すべきは、2023年時点で既に57%の削減を達成し、目標を前倒しで達成したことです 13。この大幅な削減達成は、後述する再生可能エネルギー導入の加速やエネルギー効率改善策が奏功した結果と考えられます。この早期達成は同社のオペレーションにおける脱炭素化の強力な推進力を示唆しますが、一方で、比較的達成しやすい削減策は既に実施済みであり、今後のさらなる深掘りには新たな技術革新や取り組みが必要となる可能性も示唆しています。
Scope 3排出量に関しては、タイヤのライフサイクル全体、特に原材料調達から製品使用段階、廃棄・リサイクル段階までを含む排出量削減が重要となります。ブリヂストンは、2030年までに自社の製品・サービスのライフサイクル全体でのCO2削減貢献量が、自社の事業活動に伴う排出量(Scope 1、2)の5倍以上になることを目指しています(2020年比)10。さらに、2026年までの中期目標としては、3倍以上の貢献を目指すとしています 13。この野心的な目標達成のため、タイヤの軽量化や転がり抵抗の低減技術 1、燃費改善に貢献するソリューションの提供 13、サプライヤーとの連携による排出量削減 13 など、多岐にわたる戦略を推進しています。Scope 1および2の目標達成を受け、今後はより削減が困難とされるScope 3、特にタイヤの環境影響の大部分を占める使用段階と、原材料調達段階の排出量削減が戦略的な焦点となっていくと考えられます。
長期的な目標としては、パリ協定の目標達成に貢献するため、2050年までにScope 1、2、3全体でのカーボンニュートラル達成を目指しています 10。
Scope 1および2排出量削減の主要なドライバーとして、再生可能エネルギーの導入が積極的に進められています。2023年には、グローバル製造拠点における購入電力に占める再生可能エネルギー比率が69%に達しました 13。これは、2023年の目標であった50%を大幅に上回り、前年の26%から著しく増加したことを示しています。この進捗は、Scope 1および2排出量目標の早期達成に大きく貢献したと考えられます。
今後の目標として、2026年までに再生可能エネルギー比率を70%超とすることを掲げています 13。具体的な施策としては、各地域での太陽光パネル設置の推進、購入電力の再生可能エネルギーへの切り替え、再生可能エネルギーの安定的な調達体制の構築が挙げられます 13。また、生産技術基盤であるBCMA(Bridgestone Commonality Modularity Architecture)と連携した生産性向上や、エネルギー原単位(生産量あたりのエネルギー消費量)の着実な改善も、エネルギー消費量そのものの削減を通じて貢献します 13。
ブリヂストンは、自社の排出量削減だけでなく、製品やソリューションを通じて顧客や社会全体のCO2排出量削減にも貢献することを目指しています。その中核となるのが、タイヤの環境性能と運動性能を両立させる基盤技術「ENLITEN」です 2。ENLITEN技術は、タイヤの軽量化と転がり抵抗低減を実現し、特にエネルギー効率が重視される電気自動車(EV)向けタイヤにおいて、航続距離の伸長や電費向上に貢献します。
従来から展開している低燃費タイヤブランド「ECOPIA」なども、転がり抵抗を低減することで車両走行時の燃料消費量を抑え、顧客の使用段階におけるCO2排出削減に寄与しています 1。
さらに、タイヤ単体だけでなく、デジタル技術を活用したソリューション事業もCO2削減に貢献しています。例えば、フリート(車両群)管理ソリューションである「Webfleet」は、車両の運行ルート最適化や運転挙動分析を通じて、顧客企業の燃料効率改善を支援します 13。これらの製品・ソリューションによる貢献は、Scope 3排出削減目標達成に向けた重要な要素となっています。
ブリヂストンは、資源枯渇リスクへの対応と循環型経済への移行を目指し、「100%サステナブルマテリアル化」を長期目標として掲げています 10。ここでいうサステナブルマテリアルとは、「継続的に利用可能な資源から得られ、事業として長期的に成立し、原材料調達から廃棄に至るライフサイクル全体で環境・社会面への影響が小さい原材料」と定義されています 10。具体的な中間目標としては、2030年までにタイヤに使用する原材料に占める再生資源・再生可能資源由来の原材料比率(マテリアルサーキュラリティ比率)を40%に向上させることを目指しています 10。
2023年の実績として、このマテリアルサーキュラリティ比率は39.6%に達し、同年の目標であった37%を達成しました 13。これは、新規に投入されるバージン原材料を年間55.8万トン相当削減する効果に繋がったと報告されており、2030年目標(40%)達成に向けて順調に進捗していることを示しています。この進捗は、同社の資源循環への取り組みが着実に成果を上げていることを示唆しています。
この目標達成に向けた具体的な取り組みは、「そもそもの原材料使用量を削減(アクション1)」「資源を循環させる&効率よく活用する(アクション2)」「再生可能資源の拡充・多様化(アクション3)」という3つのアクションプランに基づいています 10。アクション3の例としては、乾燥地帯で生育可能なゴム原料植物「グアユール」の研究開発と実用化に向けた取り組みが挙げられます。グアユール由来の天然ゴムは、既にインディカーシリーズのレース用タイヤに一部使用されており、今後は市販タイヤへの展開も視野に入れられています 13。アクション2の例としては、使用済みタイヤからカーボンブラックを回収・再生する技術(再生カーボンブラック:rCB)の利用推進があり、これにはミシュランとの技術連携も含まれます 26。さらに、使用済みタイヤを化学的に分解し、原料(タイヤオイルや回収カーボンブラック)に戻して再利用するケミカルリサイクル技術(熱分解)の実証にも、ENEOS株式会社との協業により取り組んでいます 8。
しかしながら、2050年までに100%サステナブルマテリアル化を達成するには、技術的・経済的な課題が依然として大きいと考えられます。多様な持続可能原材料(グアユール、各種リサイクル材等)の十分な量を安定的に確保すること、タイヤとしての性能(安全性、耐久性等)を維持・向上させること、そしてコスト競争力を確保することが求められます。特に、熱分解のような先進的なリサイクル技術の確立と商業規模での展開、そして回収された材料を安定的に供給する循環型サプライチェーンの構築は、今後の大きな挑戦となるでしょう。この挑戦には、ENEOSやミシュランとの連携 13 のような企業間協力が不可欠です。
使用済みタイヤ(ELT)の適正処理と資源有効活用は、資源循環における重要な課題です。ブリヂストンは、世界各地の直営販売網を通じてELTの回収とリサイクルを推進しています。2023年時点で、同社グループが世界で展開する直営店の99%が、回収後の有効利用を定めた処理事業者との契約を結んでいます 8。日本では、一般社団法人日本自動車タイヤ協会(JATMA)との協力の下、高いリサイクル率を維持しており、2023年の国内有効利用率は99.2%に達しました 8。
グローバルな視点では、WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)のタイヤ産業プロジェクト(TIP)に発足当初から参画し、業界全体でのELT管理システムの改善に取り組んでいます 8。また、国際NGO「Soles4Souls Asia」と協働し、インドネシアで使用済みタイヤを靴底に再利用して約40万足の靴を製造・寄付するプロジェクトを実施するなど、具体的なリサイクル活動も展開しています 27。米州ではUSTMA、欧州ではETRMAといった地域の業界団体とも連携し、各地域の実情に応じたリサイクル推進策を進めています 27。
日本国内の高いリサイクル率 8 は特筆すべきですが、世界全体で見るとELTの管理は依然として大きな課題であり 6、不法投棄なども問題となっています。ブリヂストンの高い契約店舗率(99%)8 は回収へのコミットメントを示すものですが、回収されたタイヤが必ずしも最適な方法(マテリアルリサイクル等)で処理されているとは限りません。真の循環性を高めるためには、熱回収よりも上位の廃棄物ヒエラルキーに位置づけられるマテリアルリサイクル技術(例:熱分解 8)の普及と、後述するリトレッド事業の拡大が不可欠です。これには、TIPのような業界全体の取り組みが鍵となります 8。
資源生産性の向上とCO2排出削減に貢献する重要な施策として、トラック・バス用タイヤ(TBR)のリトレッド(更生タイヤ)事業の強化も進められています。リトレッドは、摩耗したタイヤのトレッド(接地面)ゴムを貼り替えて再利用する技術であり、タイヤの台座部分(ケーシング)を再利用することで、新品タイヤ製造に比べて使用する資源量とエネルギー消費量を大幅に削減できます 29。ブリヂストンは、2026年までにTBRにおけるリトレッド比率を約50%に高めることを目指しており、これは資源循環型ビジネスモデルへの移行を加速させる上で重要な戦略です 13。
生産拠点における廃棄物発生量の削減と、最終的な埋立処分量の削減も重要な取り組みです。「マイルストン2030」では、環境負荷の継続的改善の一環として、廃棄物排出量および埋立量の削減が目標に掲げられています 10。具体的な取り組みとして、生産プロセスの改善による廃棄物発生抑制や、発生した廃棄物の再資源化を推進しています。その結果、2023年時点で米州の6つのタイヤ工場がゼロ・ウェイスト・トゥ・ランドフィル(埋立廃棄物ゼロ)の認証を取得しています 21。
ブリヂストンは、長期的な環境ビジョンとして「生物多様性ノーネットロス(貢献>影響)」を掲げています 10。これは、事業活動が生物多様性に与える影響を最小化すると同時に、生態系の保全や復元といった貢献活動を拡大することで、影響を上回る貢献を生み出すことを目指すものです。さらに将来的には、自然資本の損失を止め、回復軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ」への進化を目指す方針も示しています 13。
この目標達成に向け、「影響の最小化」と「貢献の拡大」という両面からのアプローチを取っています 25。影響最小化の例としては、CO2排出量削減、水ストレス地域での取水量削減、廃棄物削減、サプライヤーへの環境配慮要請、汚染防止のための環境マネジメント強化などが挙げられます。貢献拡大の例としては、CO2削減に貢献するソリューション開発、事業所周辺の生態系保全・復元、水源保全活動、使用済み製品のリサイクル、環境教育などが挙げられます 25。
タイヤ製造プロセスでは冷却水や蒸気として水資源を利用するため、水リスクの管理は重要な課題です。ブリヂストンは、世界資源研究所(WRI)のAqueductツールを用いて、グローバルな生産拠点における水リスク評価を定期的に実施しています 4。2024年の最新評価では、インド、インドネシア、中国、タイ、南アフリカ、トルコ、イタリアに位置する18拠点が「極めて高リスク」地域にあると特定されました。これらの拠点の合計取水量はグループ全体の5.5%と比較的小規模であるものの、水ストレスへの対応は不可欠です 4。
これらの水ストレス地域に指定された生産拠点(17拠点)においては、水リスク低減に向けた「ウォータースチュワードシッププラン(WSP)」の策定と推進に取り組んでいます 10。2023年には対象となる全17拠点でのWSP策定が完了し、これらの拠点における年間取水量は前年比で8.1%削減されました 4。具体的な事例として、アルゼンチンのブエノスアイレス工場では、生産プロセス改善や近隣のセメント工場との連携による排水再利用などを通じて、2023年には生産量あたりの取水量を2005年比で約53%削減しました 4。このような拠点ごとの取り組みに加え、地域コミュニティと連携した水源保全活動なども実施しています 25。
天然ゴムはタイヤの主原料であり、その多くが東南アジアの小規模農家によって生産されています。天然ゴムプランテーションの拡大は、熱帯雨林の減少や生物多様性損失の主要な要因の一つと指摘されており、持続可能な天然ゴムの調達はタイヤ業界全体の喫緊の課題です 3。ブリヂストンはこの問題を重要課題と認識し、グローバルな調達方針において、GPSNR(持続可能な天然ゴムのためのグローバルプラットフォーム)の方針を反映させ、森林破壊ゼロ、人権尊重、トレーサビリティ確保などをサプライヤーに要求しています。2024年1月改訂の調達方針では、Tier1サプライヤーに対して、これらの要求事項をさらにその先のサプライヤーへ展開することも求めています 4。
具体的な取り組みとして、天然ゴムサプライチェーンのトレーサビリティ向上に注力しており、デジタルツールの活用などを通じて、より網羅的で正確な把握を目指しています 13。また、小規模農家の持続可能な生産活動を支援するため、WWF(世界自然保護基金)と連携し、インドネシアの天然ゴム小規模農家に対して、収量向上と持続可能な農法に関する技術研修を提供しています。2026年までに累計12,000人の農家を支援するという目標を掲げ、農家の生計向上と森林保全の両立を目指しています 13。
これらの取り組みの成果として、リベリアにある同社グループの天然ゴム栽培・加工施設が、環境負荷低減や資源効率化、気候変動緩和、優れた農業慣行などが評価され、天然ゴム農園としては世界で初めてISCC PLUS認証を取得しました 13。この認証取得は特筆すべき成果ですが、天然ゴムサプライチェーンは非常に多くの小規模農家によって構成されており、その複雑さゆえに、サプライチェーン全体でのトレーサビリティ確保や持続可能な慣行の普及・定着は依然として大きな挑戦です。WWFやGPSNRといった外部組織との連携 4 は、この課題解決に不可欠な要素となります。
ブリヂストンは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への対応に加え、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の提言にも早期から対応を進めています。2022年3月にはTNFDフォーラムに参画し、気候変動と自然資本損失に関するリスクと機会を統合的に評価・管理し、事業戦略へ反映させる取り組みを進めています 25。具体的には、自社の事業活動が自然資本(天然ゴム、水資源等)にどのように依存し、どのような影響を与えているかを分析し、それに基づくリスク(移行リスク、物理的リスク)と機会を特定しています。これらの分析結果は、カーボンニュートラル化、サーキュラーエコノミー、ネイチャーポジティブに向けた中長期戦略やサステナビリティビジネスモデルの構築に活かされています 25。詳細な情報は、同社が開示しているTCFD・TNFD対照表で確認できます 25。
ブリヂストンは、事業を取り巻く環境課題を単なるリスクとしてだけでなく、新たな価値創造と成長の機会としても捉えています 13。気候変動や自然資本の損失に関連するリスクと機会を統合的に認識し、事業戦略への反映を進めている点は、同社のサステナビリティ経営の特徴と言えます 31。
脱炭素社会や自然共生社会への移行に伴うリスクとして、まず規制強化が挙げられます。世界的にカーボンプライシング(炭素税、排出量取引制度)導入の動きが広がっており、これらは事業コスト増加のリスクとなります 13。また、タイヤの燃費性能基準の強化、使用済みタイヤのリサイクル義務化、水資源の取水・排水規制、持続可能な天然ゴム調達に関する規制(例:EU森林破壊防止規則(EUDR))13、さらにはタイヤ・路面摩耗粉じん(TRWP)やタイヤ用酸化防止剤(6PPD)13 に関する規制導入の可能性も指摘されています。Nature Positive(自然再興)への社会的要求の高まりも、将来的な規制強化に繋がる可能性があります 13。これらの規制に迅速かつ適切に対応できない場合、事業活動の制約や競争力の低下を招く恐れがあります。
市場変動リスクとしては、低環境負荷製品への需要シフトに対応できないリスクが考えられます。また、化石燃料由来の原材料への依存度が高いままである場合、将来的な価格高騰や供給制限のリスクに晒される可能性があります。技術的リスクとしては、サステナブルマテリアルや先進的なリサイクル技術の開発・導入が計画通りに進まない、あるいは想定以上のコストがかかる可能性が挙げられます。
評判リスクも重要です。環境問題への対応が不十分であると認識された場合、あるいはサプライチェーン上で環境破壊や人権侵害などの問題が発生した場合(例:天然ゴム調達における森林破壊疑惑 3)、企業の社会的評価やブランドイメージが大きく損なわれる可能性があります 30。これは、消費者からの不買運動や投資家からのダイベストメント(投資引き揚げ)に繋がるリスクも内包しています。
気候変動の進行に伴う物理的なリスクも顕在化しています。異常気象(豪雨、干ばつ、熱波、台風等)の頻発化・激甚化は、生産拠点や物流網への直接的な被害、サプライチェーンの寸断といったリスクを高めます 31。具体的には、降雨パターンの変化による天然ゴムの不作 13 や、水ストレス地域における渇水による生産活動への影響 4 が懸念されます。また、気候変動による降雪量の減少は、冬用タイヤの需要減少に繋がる可能性も指摘されています 13。
自然資本の劣化も物理的リスクです。水資源の枯渇や水質汚染は、製造プロセスに不可欠な水の安定供給を脅かします 4。生物多様性の損失は、天然ゴムのような生態系サービスへの依存度が高い事業にとって、原材料調達の不安定化やコスト上昇のリスクをもたらします。
ブリヂストンは、これらの環境リスクを裏返しの機会として捉え、持続可能な社会への貢献を通じて企業価値向上を目指す戦略を明確に打ち出しています。
環境性能の高い製品やソリューションの開発・提供は、最大の事業機会の一つです。基盤技術「ENLITEN」は、低燃費性能や軽量化といった環境価値と、安全性や運動性能といった顧客価値を両立させることを目指しており、「新たなプレミアム」として位置づけられています 13。特にEV市場の拡大に伴い、ENLITEN技術を搭載したタイヤの需要増加が期待されます。
再生資源・再生可能資源を利用したタイヤの開発も加速しています 22。2030年に40%、2050年に100%という目標達成に向けた取り組みは、環境意識の高い消費者の支持を得て市場シェアを拡大する機会となります 10。グアユール由来天然ゴムや再生カーボンブラックの利用 13、空気充填不要な次世代タイヤ「AirFree」の開発 13 などは、技術的優位性と環境貢献をアピールする好機です。
フリート管理ソリューション「Webfleet」のように、顧客の運行効率化を通じてCO2排出量削減に貢献するサービス事業も、新たな収益源として成長が期待されます 13。また、トラック・バス用タイヤのリトレッド事業は、資源効率性と経済性を両立する循環型ビジネスモデルの中核として、さらなる拡大が見込まれます 13。
環境負荷低減に向けた取り組みは、コスト削減や生産効率向上にも繋がる機会を提供します。生産技術基盤「BCMA」の導入は、開発・生産プロセスの標準化・モジュール化を通じて、材料使用量の削減や生産リードタイム短縮、ひいては環境負荷低減とコスト削減を両立させることを目指しています 13。
工場のスマート化(Green & Smart Manufacturing)によるエネルギー効率の改善(エネルギー原単位の低減)や自動化推進も、エネルギーコスト削減に直結します 13。グローバルサプライチェーンマネジメント改革「B-Direct」による地産地消の推進、在庫の適正化、グリーン&スマート物流の導入は、輸送コストと環境負荷の両方を削減する効果が期待されます 13。
さらに、サステナブルマテリアルの利用拡大や廃棄物削減は、長期的には原材料コストや廃棄物処理コストの削減に繋がる可能性があります 10。サプライヤーとの協働による持続可能な調達 13 も、資源効率の向上を通じてコスト削減に貢献し得ます。
環境への積極的な取り組みは、企業ブランド価値の向上に大きく貢献します。「サステナブル・プレミアム」ブランドの構築を目指し、ENLITEN技術などの環境配慮型製品と、持続可能なグローバルモータースポーツ活動などを通じて、環境意識の高い顧客層への訴求力を高める戦略です 13。
ESG(環境・社会・ガバナンス)評価機関からの高い評価は、投資家からの信頼獲得や資金調達コストの低減に繋がる可能性があります。ブリヂストンがMSCI ESGレーティングで最高評価「AAA」を継続的に獲得していることや、CDPで気候変動・水セキュリティの両分野で「Aリスト」に選定されていること 15 は、その好例です。
さらに、ステークホルダーとの「共創」を重視する姿勢 13 も、機会創出に繋がります。ミシュランとの再生カーボンブラック(rCB)標準化に向けた共同提案 26 や、WBCSD TIPへの参画 27、WWFとの農家支援 13 など、業界やNGO、サプライヤー等との連携を通じて、イノベーションを加速し、社会からの信頼を獲得することができます。
このように、ブリヂストンは環境課題をリスクとして認識し管理すると同時に、それらをイノベーションと成長のドライバーとして事業戦略に組み込んでいることがうかがえます。ENLITENのような技術を単なる環境対策ではなく「新たなプレミアム」価値として訴求する点 13 や、BCMAやスマートファクトリーといった効率化施策がコスト削減と環境貢献の両方を目的としている点 13 に、その統合的なアプローチが現れています。また、EUDRやカーボンプライシングといった規制リスク 13 や、天然ゴムや水資源に関するサプライチェーンリスク 4 への対応が、結果としてサステナブルマテリアル開発、トレーサビリティ強化、水スチュワードシップといった事業機会に直結している構造が見て取れます。これは、リスク管理と機会創出が表裏一体で推進されていることを示唆しています。
タイヤ・ゴム業界全体としても、持続可能性への取り組みは加速しています。以下に、業界で見られる先進的な環境慣行の例を挙げます。
サステナブル素材の利用拡大は業界共通の目標であり、各社が再生可能資源(バイオマス由来材料等)やリサイクル資源(再生カーボンブラック(rCB)、再生スチール、リサイクルPETボトル由来繊維等)の利用率向上に向けた目標設定と技術開発を進めています 32。ミシュランは2050年までにタイヤ原材料の100%を持続可能な素材にすることを目指し 36、グッドイヤーは70%や90%の持続可能素材を使用したデモンストレーションタイヤを発表しています 32。
循環技術としては、使用済みタイヤを油やガス、カーボンブラックなどに化学的に分解・再生する熱分解技術や、プラスチックのように解重合してモノマーに戻す技術などの研究開発が進められています 41。また、タイヤの寿命を延ばすためのリトレッド技術の高度化や、耐摩耗性を向上させるコンパウンド開発も重要な取り組みです 41。
製品使用段階の環境負荷低減に向けては、転がり抵抗の低減、ウェットグリップ性能、耐摩耗性という相反する性能を高次元でバランスさせる「マジック・トライアングル」の追求 41 が続けられています。さらに、空気充填が不要でパンクせず、リサイクルも容易とされるエアレスタイヤの開発も、複数のメーカーで進められています 2。
天然ゴムの持続可能な調達は、業界全体の重要課題です。多くの企業がサプライチェーンにおけるトレーサビリティの確保、森林破壊ゼロ(No Deforestation)へのコミットメント、小規模農家の生産性向上や生活改善支援プログラムなどを実施、または目標として掲げています 42。ミシュランは高いトレーサビリティ目標を掲げていますが、過去にはNGOからサプライチェーンにおける森林破壊への関与を指摘された事例もあり、実効性の確保が課題となっています 3。
製品のライフサイクル全体での環境影響を評価するライフサイクルアセスメント(LCA)を導入し、製品開発やサプライチェーン管理に活用する動きも広がっています 38。これにより、環境負荷のホットスポットを特定し、効果的な削減策を講じることが可能になります。
業界共通の課題解決に向けて、企業間の連携が不可欠となっています。WBCSDのタイヤ産業プロジェクト(TIP)は、ELT管理やTRWP(タイヤ・路面摩耗粉じん)問題などについて、科学的知見の集積やベストプラクティスの共有、ステークホルダーとの対話などを推進する重要なプラットフォームです 6。また、JATMA(日本)、USTMA(米国)、ETRMA(欧州)といった地域の業界団体も、各地域の実情に応じたELTリサイクルシステムの構築や政策提言などを行っています 27。
さらに、新たな技術や市場の発展を促進するため、業界標準の策定に向けた動きも見られます。ブリヂストンとミシュランが共同で再生カーボンブラック(rCB)の品質基準に関するガイドラインを提案したことは、その代表例です 26。
ブリヂストンは多くの分野で先進的な取り組みを進めていますが、さらなる高みを目指す上で、いくつかの課題に直面しています。
2050年の「100%サステナブルマテリアル化」という目標は極めて野心的であり、その達成には多くの技術的・経済的ハードルが存在します。多様な持続可能原材料(グアユール、再生材、バイオマス由来材等)を、タイヤ性能を損なうことなく、かつコスト競争力を維持しながら、大量かつ安定的に調達・利用可能にする必要があります 10。特に、熱分解のようなケミカルリサイクル技術は、まだ技術的な確立度や経済性の面で課題が多く、商業規模での安定稼働と普及には時間がかかると考えられます 8。
Scope 3排出量の削減も大きな課題です。サプライチェーン全体、特に上流の原材料サプライヤーや下流の製品使用段階における排出量を正確に把握し、効果的な削減策を講じることは容易ではありません。多くのサプライヤーを巻き込み、排出量削減に向けた具体的な取り組みを促すためには、より強力なエンゲージメントと支援策が必要となるでしょう 13。
天然ゴムのサプライチェーンは、多数の小規模農家が介在するため非常に複雑であり、末端までのトレーサビリティ確保や、森林破壊防止・人権尊重といった持続可能性基準の遵守を徹底することは困難を伴います 3。ISCC PLUS認証取得 13 のような成果はあるものの、これをサプライチェーン全体に広げるには、多大な労力とコスト、そして関係者との協働が不可欠です。
また、グローバルに事業を展開する上で、世界各地で異なる規制や市場環境、文化に対応しながら、グループ全体として一貫性のある高い環境基準を維持・推進していくことも、継続的な課題となります 4。
使用済みタイヤ(ELT)の管理においては、日本国内では高いリサイクル率が達成されているものの、グローバルに見ると地域によって回収・リサイクルインフラの整備状況に大きな差があります 6。単なる熱回収(サーマルリサイクル)に留まらず、より付加価値の高いマテリアルリサイクル(再生ゴム、rCB、熱分解油化等)の技術開発と普及、そしてそれら再生材の安定的な市場を創出していくことが、真の循環経済実現に向けた課題です。
さらに、リサイクル製品やリトレッドタイヤに対する消費者の理解と受容性を高め、持続可能な製品を積極的に選択する社会的な機運を醸成していくことも、メーカー単独では解決できない、社会全体で取り組むべき課題と言えます。
これらの課題認識から、業界全体に共通する重要なテーマとして「スケーリング」が浮かび上がります。持続可能な素材を用いたデモンストレーションタイヤの発表 33 や、熱分解技術のパイロットプラント計画 8 など、個別の先進的な取り組みは存在します。しかし、これらの技術やソリューションを社会全体に普及させ、実質的な環境負荷低減効果を生み出すためには、技術的な成熟度向上、経済性の確保、そして新しい材料やリサイクル資源を扱うための強固なサプライチェーン構築といった、実用化・大規模展開に向けた障壁を乗り越える必要があります。再生カーボンブラックの現在の市場浸透率が1%未満であること 26 や、ELT管理における投資コスト、政策の不整合性、データ不足といった障壁が指摘されていること 6 は、目標と現実の間のギャップを示しており、実装段階での課題の大きさを物語っています。
このような業界横断的な課題に対応するため、個々の企業の努力を超えた「連携」が重要な戦略として浮上しています。TIPのような業界団体を通じた協力 48、ブリヂストンとミシュランによるrCB標準化への取り組み 26、リサイクル技術開発や農家支援におけるパートナーシップ 8 などは、その具体例です。ELT管理、持続可能な天然ゴム調達、rCBの普及といった大規模な課題は、インフラ整備、基準策定、市場開発といったシステム全体の変革を必要とするため、このような協調的なアプローチが、進捗を加速させる上で論理的かつ必要不可欠な手段となっています。
ブリヂストンの環境パフォーマンスを客観的に評価するため、主要な競合他社であるミシュラン、グッドイヤー、コンチネンタルの環境戦略、目標、実績、そして第三者評価機関による環境スコアと比較分析を行います。
ミシュランは、「All-Sustainable」戦略を掲げ、People(人)、Profit(利益)、Planet(地球)の3つの側面でバランスの取れた成長を目指しています 36。環境側面(Planet)では、製品・サービスのライフサイクル全体での環境負荷低減を重視し、LCA(ライフサイクルアセスメント)の活用やエコデザインを推進しています 46。
具体的な目標として、2050年までにタイヤ原材料の100%を持続可能な素材(再生可能・リサイクル素材)にすることを目指しており、中間目標として2030年までにその比率を40%に引き上げることを掲げています 34。気候変動対策では、SBTi(Science Based Targets initiative)から1.5℃目標の認定を受けた削減目標を設定しており 45、2023年にはScope 1および2のCO2排出量を前年比6%、生産における水消費量を10%削減したと報告しています 34。天然ゴム調達に関しては、持続可能な調達方針を定め、トレーサビリティ向上にも取り組んでおり、2023年には加工施設レベルでのトレーサビリティが100%に達したとしています 42。一方で、過去にはインドネシアの天然ゴム事業に関連して、NGOから森林破壊への関与を指摘された経緯もあり 3、サプライチェーン管理の実効性が問われる側面もあります。
グッドイヤーは、「Better Future」フレームワークに基づき、Climate-Decarbonization, Adaptation & Resiliency(気候変動)、Circularity(循環性)、Human & Labor Rights(人権・労働権)、Supply Chain Governance and Transparency(サプライチェーンガバナンス・透明性)を重点分野としてサステナビリティ戦略を推進しています 33。
気候変動対策では、SBTi認定を受けた目標を設定しており、2030年までにScope 1および2排出量を2019年比で46%、Scope 3排出量(特定カテゴリ)を同28%削減することを目指しています 55。2023年の実績としては、Scope 1および2排出量を2019年比で21.9%削減し、全施設における再生可能エネルギー由来の電力使用率は37%に達しました 32。循環性に関しては、2030年までに100%持続可能素材からなるメンテナンスフリータイヤの開発を目標に掲げ、2023年には70%および90%の持続可能素材を使用したデモンストレーションタイヤを発表しています 32。サプライチェーンの透明性向上にも取り組んでおり、サプライヤーと協力してESGインパクトの評価と削減、トレーサビリティ向上を進めています 33。
コンチネンタルは、サステナビリティを事業戦略に不可欠な要素として統合し、2050年までにバリューチェーン全体でのカーボンニュートラル達成、資源・製品サイクルの完全なクローズドループ化、100%責任ある調達とビジネスパートナーシップの実現という野心的な目標を掲げています 43。
気候変動対策では、Scope 3排出量、特に製品使用段階と原材料調達段階の削減に注力しています 57。2024年の実績として、Scope 1および2の合計排出量は前年比で減少し、0.83百万トン(CO2換算)でした 57。資源循環に関しては、タイヤ事業において2030年までに再生・再生可能素材比率を40%以上に高める目標を設定しています 57。廃棄物管理においては、2024年の廃棄物回収率は87%と高い水準を維持しました 57。生物多様性保全については、気候変動対策や汚染防止、責任ある調達を通じて間接的に貢献するアプローチを取っていますが、具体的な数値目標は設定されていません 57。CDP評価では、気候変動で「A」、水セキュリティで「B」、サプライヤーエンゲージメントで「A」と、特に気候変動とサプライチェーン管理で高い評価を得ています 58。
企業の環境パフォーマンスを客観的に比較評価する上で、第三者評価機関によるESGスコアは重要な指標となります。以下に、主要な評価機関によるブリヂストンおよび競合他社のスコアを比較します。
CDPは、企業の環境情報開示と取り組みを評価する国際的な非営利団体です。2023年の評価において、ブリヂストンは気候変動分野で「A」、水セキュリティ分野で「A-」と評価され、特に気候変動では最高評価を獲得しました 23。ミシュランは気候変動で「A-」、水セキュリティで「B」 45、グッドイヤーは気候変動、水セキュリティともに「B」 61、コンチネンタルは気候変動で「A」、水セキュリティで「B」、サプライヤーエンゲージメントで「A」という評価でした 58。この比較から、ブリヂストンは気候変動と水セキュリティの両分野で高いレベルの取り組みと情報開示を行っていることが示唆されます。コンチネンタルも気候変動とサプライチェーンでリーダーシップを発揮していますが、水セキュリティでは標準的な評価となっています。
MSCI ESG Ratingsは、企業のESGリスクへの対応力を評価する指標です。ブリヂストンは最高評価である「AAA」を2023年から継続して獲得しています 15。ミシュランも同様に「AAA」評価を得ています 44。コンチネンタルは「A」評価です 58。グッドイヤーに関するMSCIの具体的な評価スコアは、参照した資料からは確認できませんでした。ブリヂストンとミシュランが業界内で最高水準のESGリスク管理体制を有していると評価されていることがわかります。
Sustainalytics ESG Risk Ratingsは、企業が直面する重要なESGリスクとその管理状況を評価し、リスクスコア(低いほど良い)を算出します。2024年から2025年初頭にかけての評価では、ミシュランがスコア11.4(低リスク、自動車部品業界247社中9位)64、ブリヂストンがスコア12.1(低リスク、同15位)65 と、両社ともに業界内で非常に低いリスクレベルと評価されています。グッドイヤーはスコア16.5(低リスク、同42位)66 であり、低リスク評価ながらミシュランやブリヂストンよりはリスクが高いと見なされています。コンチネンタルはスコア24.6(中リスク、同163位)68 となり、競合他社と比較してESGリスクが高いと評価されています。
Dow Jones Sustainability Indices (DJSI) は、企業の持続可能性を環境・社会・ガバナンス・経済の側面から評価する世界的に認知されたインデックスです。ブリヂストンは、DJSI World Indexに2022年から3年連続で、DJSI Asia Pacific Indexには15年連続で選定されており、グローバルおよびアジア太平洋地域において持続可能性のリーダー企業として認められています 15。DJSIは各産業の上位10%を選定基準としており 15、ブリヂストンの継続的な選定は、同社のESGパフォーマンスが業界内で高く評価されていることを示しています。競合他社のDJSI選定状況に関する詳細情報は限定的です。
その他の評価として、ブリヂストンはFTSE4Good Index Seriesに7年連続で選定されているほか 15、ISS ESG Corporate Ratingでは「Prime」評価(最高位レベル)を獲得しています 23。ミシュランもISS ESGで「Prime」(B-評価)54、コンチネンタルも「Prime」(C+評価)58 を獲得しています。EcoVadis評価では、ミシュランが最高位の「Platinum」54、コンチネンタルが「Gold」(上位5%)58 を獲得しています。これらの評価からも、ブリヂストンとミシュランが高いレベルで評価されている傾向が見て取れます。
これらのESGスコアを比較する際には、いくつかの留意点があります。第一に、評価機関ごとに評価方法論や重視する項目が異なることです 69。例えば、CDPは環境情報開示の質と量を重視する傾向がある一方、MSCIやSustainalyticsはリスク管理能力をより重視する側面があります。この方法論の違いが、同一企業に対する評価機関間のスコア差を生む一因となります。例えば、コンチネンタルはCDPでは気候変動とサプライチェーンで最高評価「A」を得ていますが、Sustainalyticsでは中リスクと評価されており、評価軸の違いが現れている可能性があります。
第二に、ESGスコアは基本的に過去の実績や開示情報に基づいた評価であり、企業の取り組みの最新の動向や将来性を完全に反映するものではない点です。スコアは定期的に更新されますが、評価時点のスナップショットであると理解する必要があります。
第三に、競合他社間で直接比較可能な定量的なパフォーマンスデータ(例:Scope 3排出量の詳細、具体的なマテリアルサーキュラリティ比率の内訳等)の入手が困難な場合が多いことです。公開されている情報だけでは、詳細なパフォーマンスレベルでの比較には限界があり、結果として第三者評価機関のスコアへの依存度が高まる傾向があります。
これらの留意点を踏まえつつも、複数の主要なESG評価においてブリヂストンが一貫して高い評価を得ている事実は、同社の環境パフォーマンスと情報開示の質が、競合他社と比較しても業界内でトップレベルにあることを強く示唆しています。特に、ミシュランと並んでリーダーとして評価されるケースが多く、グッドイヤーがそれに続き、コンチネンタルは評価機関によって見方が分かれる傾向があると言えます。
本分析に基づき、ブリヂストンが今後、環境パフォーマンスをさらに向上させ、持続可能な社会への貢献を深化させるために注力すべき主要分野と具体的な行動について、以下の通り提言します。
Scope 1および2排出削減で顕著な成果を上げた一方、カーボンニュートラル達成に向けた最大の課題はScope 3排出量の削減です。特に影響の大きい原材料調達(カテゴリ1)と製品使用段階(カテゴリ11)に焦点を当てた取り組みを加速させるべきです。具体的には、サプライヤーエンゲージメントプログラムを強化し、サプライヤー自身のSBT設定支援や排出量削減努力に対するインセンティブ導入などを検討することが有効です。製品使用段階の排出削減に向けては、ENLITEN技術のさらなる性能向上と搭載車種の拡大、AirFreeタイヤのような革新技術の開発・実用化を加速させることが求められます。また、リトレッド事業の拡大や、ENEOSとの協業によるケミカルリサイクル技術の実用化など、循環型ビジネスモデルの推進もScope 3削減に不可欠です。
2050年の100%サステナブルマテリアル化目標は非常に挑戦的であり、その達成に向けた道筋をより具体的に示すことが重要です。2030年の40%目標達成が見込まれる中、例えば2035年や2040年といった中間目標を新たに設定し、進捗を管理・開示することが望まれます。また、目標達成のための素材ポートフォリオ戦略(多様な再生・再生可能資源をどのように組み合わせ、利用比率を高めていくか)や、グアユール、熱分解技術などのキーテクノロジー開発・実用化、および関連するサプライチェーン構築に関する具体的な計画を策定し、ステークホルダーに開示することが、目標達成へのコミットメントと実現可能性を示す上で有効です。
天然ゴムサプライチェーンにおける森林破壊や人権侵害のリスクは依然として高く、生物多様性保全の観点からも管理強化が求められます。トレーサビリティ向上の取り組みをさらに推進し、ブロックチェーンなどの新技術活用も検討すべきです。リスク評価を深化させ、特に高リスク地域やサプライヤーに対する重点的な監査やエンゲージメントを実施することが重要です。WWFとの連携による小規模農家支援プログラムについては、その環境・社会的なインパクトを定量的に評価し、効果的な支援モデルを確立した上で、対象地域や支援規模の拡大を目指すべきです。また、水リスク管理においても、拠点レベルのWSP推進に留まらず、流域レベルでのステークホルダー(他の企業、地域社会、行政等)との協働を通じて、より広範な水資源保全に貢献していくことが期待されます。
ブリヂストンは既に多くのESG評価で高い評価を得ていますが、情報開示の質をさらに向上させることで、リーダーシップを強化できます。Scope 3排出量については、算定カテゴリごとの排出量だけでなく、算定根拠や前提条件に関する透明性を高めることが望まれます。サステナブルマテリアル比率についても、再生材・再生可能材の内訳や、主要な素材ごとの進捗状況を開示することが、取り組みの具体性を示す上で有効です。生物多様性に関しては、TNFD提言の枠組みに沿って、自然への依存度・影響度、リスク・機会に関する定量的・具体的な情報を開示していくことが求められます。競合他社との比較分析や自社の課題認識についても、より積極的に開示する姿勢が、ステークホルダーからの信頼を高めます。rCB標準化のような共創イニシアチブについても、その進捗と成果を積極的に発信し、業界全体の変革をリードしていくべきです。
グローバルリーダーとして、業界全体のサステナビリティ向上に向けたリーダーシップをさらに発揮することが期待されます。ELT問題に対しては、技術開発や事業展開に加え、回収・リサイクルインフラの整備促進に向けた政策提言や関係者との連携強化に、より積極的に関与すべきです。持続可能な天然ゴムプラットフォーム(GPSNR)などの国際的なイニシアチブにおいても、主導的な役割を果たし、サプライチェーン全体の変革を推進することが求められます。業界のベストプラクティスを率先して導入・発信し、タイヤ・ゴム業界全体のサステナビリティ基準を引き上げていくことが、真のリーダーとしての役割です。
本レポートでは、ブリヂストン株式会社の環境イニシアチブおよびパフォーマンスについて、「気候変動」「資源循環」「生物多様性」の3つの重点分野を中心に包括的な分析を行いました。分析の結果、ブリヂストンは長期的な環境ビジョンと中期経営計画に基づき、サステナビリティを経営の中核に据え、多岐にわたる先進的な取り組みを推進していることが明らかになりました。
特に、Scope 1および2におけるCO2排出量削減目標の前倒し達成、再生可能エネルギー導入率の大幅な向上、サステナブルマテリアル比率の着実な進捗は、同社の強力なコミットメントと実行力を示す顕著な成果です。ENLITEN技術の開発・展開や、グアユール、ケミカルリサイクルといった革新技術への投資、水スチュワードシップ計画の推進、持続可能な天然ゴム調達への注力なども、高く評価されるべき点です。
一方で、2050年のカーボンニュートラルおよび100%サステナブルマテリアル化という極めて野心的な目標達成に向けては、Scope 3排出量の抜本的な削減、サステナブルマテリアルの安定供給と性能・コストの両立、複雑なサプライチェーンにおけるトレーサビリティと持続可能性の担保、グローバルなELT管理システムの高度化など、依然として大きな課題が存在します。これらの課題解決には、継続的な技術革新、サプライヤーや業界他社、NGO等との連携強化、そして循環型ビジネスモデルへのさらなる転換が不可欠です。
競合他社との比較においては、ブリヂストンはミシュランと並び、多くのESG評価機関から業界のリーダーとして一貫して高く評価されています。これは、同社の環境パフォーマンスと情報開示の質の高さを示唆するものです。しかし、競合他社も同様にサステナビリティへの取り組みを強化しており、ブリヂストンがリーダーシップを維持・強化していくためには、残された課題への対応を加速し、さらなる差別化を図っていく必要があります。
結論として、ブリヂストンはサステナビリティを経営の根幹に据え、着実な成果を上げていますが、長期目標達成に向けては依然として困難な挑戦が待ち受けています。本レポートで提示した提言事項、すなわちScope 3削減の加速、サステナブルマテリアル移行ロードマップの具体化、サプライチェーンにおける生物多様性リスク管理強化、情報開示の高度化、そして業界リーダーシップの発揮を実行に移すことが、同社の持続的な企業価値向上と、より良い社会の実現への貢献に不可欠であると考えられます。
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