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ファナック株式会社の環境イニシアチブおよびパフォーマンスに関する包括的分析:気候変動、資源循環、生物多様性

更新日:2025年4月17日
業種:製造業(3333)

はじめに

ファナック株式会社(以下、ファナック)は、ファクトリーオートメーション(FA)、ロボット、ロボマシンの3つの事業分野を核とし、産業用オートメーション技術において世界的なリーダーとしての地位を確立しています 1。特に、コンピュータ数値制御(CNC)システムおよび産業用ロボットの分野では、極めて高い市場シェアを有しており、世界中の製造現場でその技術が活用されています 5

本レポートは、ファナックの環境パフォーマンスを評価し、環境スコアリングに必要な詳細情報を提供することを目的としています。そのために、同社の主要な環境側面、すなわち「気候変動への対応」「資源循環の推進」「生物多様性の保全」における具体的なイニシアチブとパフォーマンスについて、学術的な視点から包括的に分析します。分析範囲は、気候変動緩和策、資源循環(廃棄物管理、リサイクル、水保全を含む)、そして生物多様性保全活動に焦点を当てます。

分析にあたっては、ファナックが公開しているサステナビリティレポート、環境報告書、ウェブサイト情報などの公式資料を基盤とし、競合他社の動向分析、業界における先進的な環境プラクティスとの比較検討を行います。ファナック自身も、情報開示の参照ガイドラインとして、GRIスタンダード、環境省策定の環境報告ガイドライン(2012年版/2018年版)、およびISO26000を挙げており、これらの国際的な枠組みを意識した取り組みを進めていることがうかがえます 9。本レポートは、これらの情報を統合し、日本語による記述的な分析形式で提供します。表形式でのデータ提示は避け、必要に応じてリスト形式を用いることで、情報の明確性を確保します。

ファナックの環境への取り組み

ファナックは、「自然と資源、未来に残そう」という環境方針のもと 5、事業活動を通じて持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています 5。その取り組みは、気候変動、資源循環、生物多様性の3つの主要分野にわたっています。

気候変動への対応

ファナックは、気候変動を重要な経営課題と認識し 11、脱炭素化に向けた具体的な目標設定と取り組みを進めています。

目標設定とコミットメント

ファナックは、科学的根拠に基づく目標設定イニシアチブ(SBTi)の認定を受け、意欲的な温室効果ガス(GHG)排出削減目標を掲げています 。

  • 長期目標として、2050年度までに事業活動におけるScope 1(直接排出)およびScope 2(間接排出:エネルギー起源)のGHG排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラル達成を目指しています 5

  • 中期目標としては、2030年度までにScope 1およびScope 2のGHG排出量を2020年度比で42%削減することを掲げています 5

  • さらに、サプライチェーン排出量の一部であるScope 3に関しても、カテゴリ11(販売した製品の使用に伴う排出量)について、2030年度までに2020年度比で12.3%削減するという目標を設定しています 5

  • これらに加え、エネルギー効率改善の観点から、2030年までに電力消費量を10%削減するという目標も設定しています 12


実績データ

目標達成に向けた進捗として、2023年度におけるScope 1およびScope 2のGHG排出量は、基準年である2020年度と比較して18.5%削減されました 5。これは、本社地区、壬生工場、筑波工場で使用する電力の一部を再生可能エネルギー由来のものに切り替えたことや、壬生地区における太陽光パネルの設置などが寄与しています 5。また、Scope 3(カテゴリ11)の排出量についても、2023年度は基準年比で8.1%の削減を達成しました。これは主に、FA、ロボット、ロボマシンといった主力製品における省エネルギー性能の向上が貢献した結果です 5。これらの排出量データについては、信頼性を高めるために第三者機関による検証を受けています 10。


具体的な取り組み

ファナックは、製品開発から生産プロセス、さらには物流や非生産事業所における活動に至るまで、多岐にわたる省エネルギー化と排出削減の取り組みを推進しています。

  • 製品における省エネルギー化: ファナックの気候変動対策において、製品自体のエネルギー効率向上は中核的な戦略と位置づけられています。これは単なる環境貢献に留まらず、顧客企業の脱炭素化や生産性向上に直接寄与するため、重要な価値提案となっています。CNCシステム、産業用ロボット、ロボドリル、ロボショットといった主力製品群において、消費電力の低減、小型軽量化、保守部品の削減と長寿命化などを具体的な数値目標を設定して推進しています 9。具体例としては、サーボアンプにおける電源回生システムの採用(抵抗回生方式と比較してロボドリル搭載時に約35%のエネルギー消費削減)や、最新パワーデバイスの採用によるエネルギー損失の低減(1995年比で最大35%削減)が挙げられます 5。その他、サイクルタイム優先か消費電力優先かを選択できる省エネレベル選択機能、ロボショットにおける周辺機器の電動化オプション、射出シリンダーヒーターへの保温ジャケット装着、樹脂溶融プロセスにおけるエネルギー消費と放熱損失を可視化する可塑化エネルギーモニタ、ロボドリルのスリープ機能や周辺機器省エネ制御機能など、多様な省エネ技術が実装されています 5。特に、成長市場である電気自動車(EV)産業向け製品の提供を強化しており 12、顧客のScope 3排出量削減ニーズに応えることで、市場機会を捉えています。このように、製品の環境性能向上は、ファナック自身のScope 3(カテゴリ11)削減目標達成と、市場競争力強化の両面に貢献する戦略的な取り組みと言えます。


  • 生産プロセスにおける省エネルギー化:
    自社工場においても、徹底した省エネ活動が展開されています。具体的には、旧式工作機械の自動電源断装置付きへの更新、コンプレッサのインバータ方式への変更、圧力設定の最適化(0.62Mpaから0.6Mpaへ低減)、休日運転の休止(年間約2,354 kWh削減)、必要に応じた台数削減、工場照明の省エネ型蛍光灯やLEDへの切り替え、建屋の断熱強化、人感センサによる照明・空調制御、定期的な省エネ診断の実施、壬生工場および筑波工場へのコジェネレーションシステム導入による排熱利用(2022年度のCO2排出削減効果は壬生工場で1,480 tCO2e、筑波工場で863 tCO2eと推定)、燃料の都市ガスへの転換(灯油・LPGからの切り替え)、圧縮空気配管の漏れ防止対策、不良損金削減活動(コストの高い部品を優先)などが挙げられます
    5

  • 再生可能エネルギー利用:
    カーボンニュートラル達成に向け、再生可能エネルギーの導入も進められています。本社地区、壬生工場、筑波工場では、使用電力の一部を再生可能エネルギー由来の電力に切り替えています。また、壬生地区をはじめとする拠点での太陽光発電設備の設置も行われています
    5。ただし、現状では主要拠点での「部分的」な切り替えや太陽光発電の導入が中心であり、全社的な100%再生可能エネルギー化への移行は段階的に進められていると考えられます。これは、例えばABB社が2024年に95%の再生可能エネルギー電力消費率を達成している 16 など、より早期に高い目標達成を目指す競合他社の動向と比較すると、ペースや規模感において異なるアプローチを取っている可能性を示唆しています。今後の全社的な再生可能エネルギー導入計画の詳細な開示が期待されます。

  • TCFD提言への対応:
    気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に沿った情報開示を進めています
    11。気候変動がもたらすリスク(原材料価格上昇、炭素税導入、物理的災害による生産拠点への影響など)と機会(省エネ・自動化製品への需要増など)を特定・評価し、取締役会へ報告する体制を構築しています。シナリオ分析を通じて、主要事業(FA、ロボット、ロボマシン)が高いレジリエンスを有していることを確認しており 5、気候変動への適応戦略を経営に統合しようとしています。

資源循環の推進

ファナックは、限りある資源の有効活用と廃棄物削減を目指し、資源循環の取り組みを推進しています。

  • 目標設定
    2025年度までに、2020年度を基準として、生産高あたりの廃液排出量およびPRTR法(化学物質排出移動量届出制度)対象物質の使用量を削減する目標を設定し
    5、製品輸送等で使用する梱包材の使用量削減も目標として掲げています 12。水資源に関しては、2025年までに淡水使用量を削減する目標を設定しています 12

  • 実績データ
    2023年度において、廃液排出量およびPRTR法対象物質使用量については、設定した目標を達成しました
    5。また、水使用量に関するデータは、第三者機関による検証を受けています 10。ただし、2023年度時点での具体的な削減率や目標達成状況に関する詳細な記述は、提供された情報からは確認できませんでした。


具体的な取り組み

ファナックの資源循環への取り組みは、化学物質の適正管理から、生産プロセスにおける廃棄物削減、水資源の保全、製品自体の資源効率向上、そして梱包材の削減に至るまで、多岐にわたります。

  • 化学物質管理:
    各国の化学物質規制(EUのREACH規則、RoHS指令、米国のTSCA、中国GB規格など)への準拠を徹底しています。PRTR法対象物質の排出量・移動量を把握し、削減に努めています。また、RoHS指令については、規制対象外の製品も含めて自主的な対応を進めています。化学物質を使用する部門では、保管管理を徹底し、万一の漏洩事故を想定した緊急時対応訓練も実施しています
    5

  • 廃棄物削減・リサイクル:
    生産効率の向上とコンプライアンス遵守に重点が置かれています。生産工程では、はんだ印刷条件の最適化やロボット組立の自動化による不良率の低減、ダイカスト機で使用する剥離剤の油性化や切削液・作動油の使用量削減、蒸留装置導入による廃油量削減、塗装工程での塗料使用量削減などを実施しています
    5。梱包・物流面では、輸送時のスチールケース使用を大幅に削減し、段ボール使用量も抑制しています。代わりに、通い箱や専用バケットの採用、梱包の高密度化・軽量化を進めています 5。再利用・リサイクルの取り組みとしては、輸送用パレットや梱包材の再利用、切削工具や切粉のリサイクル、書類の電子化やEDIシステム導入による紙使用量の削減、廃ケーブルの有価物としての売却などを推進しています 5


  • 水資源保全:
    工場における淡水使用量の削減目標達成に向け、ダイカスト工場の冷却水を循環利用するなど、生産用水の再利用を進めています
    5。また、本社地区の雨水調整池では、ヨシやショウブなどを植栽し、水質浄化と生物が生息しやすい環境づくりにも配慮しています 5。水管理は主に直接的な使用量の削減と再利用に焦点が当てられており、データは検証されていますが 10、サプライチェーン全体や製品使用段階での水リスク評価といった、より広範な水スチュワードシップの観点からの取り組みについては、現状の情報からは確認できません。これは、例えば安川電機が国内外の生産拠点の水ストレス評価を実施している点 17 と比較すると、今後の課題となる可能性があります。


  • 製品における資源効率: 製品自体の小型軽量化、部品点数の削減、モジュール化設計による部品の共通化などを進めています。また、ロボットのインテリジェントグリース交換機能は、グリースやオイルの廃棄量抑制に貢献します 5。さらに、製品の「高信頼性」と「長寿命化」を追求するファナックの基本姿勢 3 は、顧客工場でのダウンタイムを最小化し、結果的に交換部品や廃棄物の削減、すなわち資源効率の向上にも繋がっています。

これらの取り組みは、運用効率の改善と法規制遵守に強く焦点を当てている一方で、製品のサービス化(PaaS)、体系的な再製造プログラム、使用済み製品の回収システムといった、より進んだサーキュラーエコノミー(循環経済)モデルの導入については、現状では限定的であるように見受けられます。例えば、ABB社がロボットの再製造・買戻しサービスを提供していること 19 や、Locus Robotics社がロボット・アズ・ア・サービス(RaaS)モデルを展開していること 20 など、業界の先進事例と比較すると、ファナック自身の主導による大規模な再製造やサービス化への移行は、今後の検討課題と言えるかもしれません。ただし、ファナック製品の修理・再生を専門とするT.I.E. Industrial社のようなサードパーティの存在 21 は、間接的に循環性を高める役割を果たしていると考えられます。

生物多様性の保全

ファナックは、本社地区が富士箱根伊豆国立公園に隣接するという立地特性を踏まえ、事業活動が自然環境に与える影響を認識し、生物多様性の保全に積極的に取り組んでいます 1。環境方針はサプライヤーとも共有され、連携した活動が目指されています 22

  • 基本方針と立地特性:
    178万平方メートルに及ぶ広大な本社敷地内において、豊かな自然環境を保護・育成することを基本方針としています
    1

具体的な取り組み:

  • 「ファナックの森」保全活動:
    敷地内の緑地を「ファナックの森」と称し、日常的な整備活動を行っています。工場等の建屋建設に際しては、樹木の伐採を最小限に留め、自然の地形を活かした土地利用を心がけています。また、建物の高さを制限したり、駐車場を立体化したりすることで、緑地面積の確保にも努めています
    5

  • 100年の森再生計画:
    これはファナックの生物多様性保全活動の中でも特に象徴的な取り組みです。2015年(一部資料では2016年
    5)に開始されたこの長期計画は、かつて人の手で植えられた針葉樹林を、その地域本来の植生である広葉樹を中心とした多様性豊かな森へと転換していくことを目指しています。毎年、計画に基づき植樹活動が行われているほか、2021年からは森の健全な成長を促すための間伐も実施されています 5。この取り組みは、ファナックのユニークな立地特性を活かした、長期的視点に立った貢献と言えます。

  • 水辺の生物多様性保全:
    敷地内の雨水調整池において、水質浄化能力を持つヨシ、ショウブ、アヤメ、ミズバショウなどを植栽・保護し、水辺の生物が生息しやすい環境づくりを進めています。定期的な葦刈りや草刈り、清掃といった維持管理も行われています
    5

  • 希少植物種の保全: 敷地内に自生する希少な植物種の保護にも力を入れています。環境省のレッドリストに掲載されているクマガイソウ (Cypripedium japonicum) を発見した際には、移植して保護しています。また、マイヅルソウ、フジアザミ、シロバナエンレイソウといった山野草についても、除草作業時に配慮しながら保全に努めています。さらに、栃木県にある壬生工場の敷地内では、県指定の希少植物であるエンシュウムヨウラン (Lecanorchis suginoana) を囲いを設けて保護しています 5

  • CO2吸収源としての森林機能回復: 森林の健全性を高め、二酸化炭素吸収源としての機能を回復させるため、間伐による適切な樹木密度の確保、地域固有の樹種を導入した混合林化、常緑広葉樹を中心とした育成などを推進しています 5

ファナックの生物多様性への取り組みは、特に本社周辺の自然環境保全に重点が置かれており、「100年の森再生計画」のような長期的かつ具体的な活動は高く評価できます。しかしながら、近年の生物多様性保全に関する先進的な取り組みでは、自社拠点周辺だけでなく、原材料調達から製品廃棄に至るサプライチェーン全体での影響評価とリスク管理が重視される傾向にあります 23。現状の公開情報からは、ファナックがサプライチェーンにおける生物多様性リスク評価や、製品ライフサイクル全体での影響緩和策をどの程度実施・開示しているかは不明確です。また、保全活動の成果を示す定量的な指標(例:復元面積、植栽木の生存率、生物種数の変化など)に関する情報開示も限定的であり 5、活動の具体的な効果測定や目標管理の側面では、さらなる情報開示が望まれます。

潜在的なリスクと機会

ファナックは、TCFD提言への対応を進める中で 11、気候変動をはじめとする環境要因が事業に及ぼす潜在的なリスクと機会を認識し、分析しています。この分析は、取締役会への報告体制を通じて経営戦略にも反映されていると考えられます 5

環境関連リスク分析

物理的リスク

気候変動に伴う異常気象(台風、豪雨など)の激甚化は、生産拠点、特に自然豊かな環境に隣接する本社地区 1 に物理的な損害を与え、操業停止やサプライチェーンの寸断、復旧コストの増加といったリスクをもたらす可能性があります 5

規制リスク

世界的な脱炭素化の流れの中で、炭素税の導入や排出量取引制度の強化、各種環境規制(省エネ基準、化学物質規制等)の厳格化が進む可能性があります。これらは、事業運営コストの増加に繋がるリスクとなります。特に、EUのREACH規則やRoHS指令、米国のTSCAなど、グローバルに事業を展開する上で遵守すべき化学物質規制への対応コストも考慮すべき点です 5

市場リスク

環境意識の高まりは、顧客の製品選択基準を変化させ、より環境性能の高い製品への要求を高める可能性があります。また、EV(電気自動車)やFCV(燃料電池自動車)へのシフトといった技術変革は、既存の内燃機関関連部品製造などに用いられる一部のFA製品やロボットの需要を減少させるリスクもはらんでいます 5

評判リスク

環境パフォーマンスに対する社会的な関心が高まる中、環境負荷低減への取り組みが不十分と見なされた場合、企業のブランドイメージが損なわれ、投資家からの評価低下や、優秀な人材の獲得競争において不利になる可能性があります 1

環境関連の事業機会

環境課題への対応は、リスクだけでなく、新たな事業機会も創出します。ファナックにとって、その中核技術である自動化・省エネ技術は、これらの機会を捉える上で強力な武器となります。

省エネ・自動化需要の拡大

世界的な脱炭素化の潮流と、人手不足や生産性向上への要求を背景に、工場の自動化・省エネルギー化へのニーズは高まっています。ファナックが提供する高効率なFA製品、省エネ性能に優れたロボットやロボマシンは、まさにこれらのニーズに応えるものであり、大きな需要増が見込まれます 9。これは、顧客企業の環境負荷低減と生産性向上を同時に支援できる、ファナックの強みを活かせる領域です。

新市場(EV・代替エネルギー)

EVの普及に伴うバッテリー製造ラインや車体組立ラインの自動化、太陽光パネルの製造・組立、風力発電関連部品の加工、さらには水素エネルギー関連装置の製造など、急成長するグリーン市場は、ファナックにとって新たな事業拡大のフロンティアです。既にこれらの分野向けソリューションを提供しており、今後さらなる事業成長が期待されます 5

コスト削減

自社の生産プロセスや事業運営における省エネルギー化、廃棄物削減、水使用量削減といった取り組みは、環境負荷を低減すると同時に、光熱費や廃棄物処理費用などの運用コスト削減にも直結します 5

ブランド価値向上

環境問題への積極的な取り組みは、企業の社会的評価を高め、顧客や投資家からの信頼を獲得し、ブランド価値の向上に繋がります。また、サステナビリティを重視する姿勢は、優秀な人材を惹きつける上でも有利に働くと考えられます 1

ファナックのTCFD提言への対応 11 は、これらのリスクと機会を体系的に評価し、経営戦略に組み込むための重要な枠組みを提供しています。特に、事業機会の側面では、自社のコア技術である自動化・省エネ技術を、顧客の環境課題解決と自社の成長に繋げるという戦略が明確であり、これはファナックの持続可能な成長における重要なドライバーとなり得ます。

業界のベストプラクティス

ファナックが事業を展開する産業用オートメーションおよび製造業においては、環境負荷低減と持続可能性向上に向けた先進的な取り組み(ベストプラクティス)が世界的に進展しています。これらのベストプラクティスは、ファナック自身の取り組みを評価し、今後の方向性を検討する上で重要な参考となります。

気候変動対策の先進事例

高度なエネルギー効率化

製造現場におけるエネルギー消費をリアルタイムで監視し、最適化するために、スマートセンサー、IoTプラットフォーム、AI(人工知能)といったデジタル技術の活用が進んでいます。これにより、非効率な運転パターンを特定したり、設備の異常を早期に検知して予知保全を行うことで、エネルギーロスを最小限に抑える取り組みが広がっています 28。ファナックが提供する「FIELD system」や「ZDT(ゼロ・ダウン・タイム)」といったソリューションは、まさにこの方向性に合致するものであり、自社および顧客の工場におけるエネルギー効率化に貢献するポテンシャルを持っています 18

再生可能エネルギーの積極導入

事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際的なイニシアチブ「RE100」への加盟など、企業が自ら高い目標を設定し、その達成に向けた具体的なロードマップ(PPA契約、自家発電など)を策定・実行する動きが加速しています 25。競合であるABB社は、既に2024年時点で95%という高い再生可能エネルギー電力消費率を達成しており 16、業界における目標設定と実行のレベルが高まっていることを示しています。

サプライチェーン全体での排出量削減

自社のScope 1、Scope 2排出量削減だけでなく、製品の原材料調達から使用、廃棄に至るまでのサプライチェーン全体(Scope 3)での排出量削減が重要視されています。特に排出量が多いとされるサプライヤー由来の排出(カテゴリ1:購入した製品・サービス)削減に向けて、サプライヤーとの協働、目標設定の要請、技術支援、情報共有といったエンゲージメント活動が不可欠となっています 40。例えば、バッテリーメーカーのCATL社は、サプライヤーに対して厳しい基準を設定し、継続的なサポートを提供することで、サプライチェーン全体のサステナビリティ向上を推進しています 40

資源循環の先進事例

サーキュラーエコノミーモデルの実装

従来の「作って、使って、捨てる」というリニア(直線型)経済から脱却し、製品や資源を可能な限り長く循環させるサーキュラーエコノミー(循環経済)への移行が求められています。具体的には、製品を所有するのではなく利用権を提供する「製品のサービス化(Product-as-a-Service: PaaS)」モデルの導入、製品の修理・アップグレードサービスの提供、使用済み製品の回収・分解・再製造(リマニュファクチャリング)プログラムの構築などが挙げられます 19。ABB社は、使用済みロボットの買戻しと再製造サービスを提供し、資源の有効活用と廃棄物削減に貢献しています 19。また、倉庫内搬送ロボットを提供するLocus Robotics社は、RaaSモデルを採用し、ロボットの長寿命化と効率的な再利用を実現しています 20

設計段階からの循環性考慮

サーキュラーエコノミーを実現するためには、製品の設計段階から、分解・修理のしやすさ、部品の標準化・モジュール化、リサイクル可能な素材の選定、再生材やバイオベース素材の積極的な利用などを考慮することが重要です 34

自動化技術の活用

複雑化する廃棄物の選別や、製品の効率的な分解・部品回収といったプロセスにおいて、ロボット技術やAIを活用した自動化が有効な手段として注目されています。コンピュータビジョンとロボットアームを組み合わせることで、従来は人手に頼っていた困難な作業を高速かつ高精度に行うことが可能になり、リサイクル率の向上や資源回収の効率化に貢献します 32。AMP Robotics社は、AIを活用したロボット選別システムを開発し、リサイクル業界の変革を推進しています 46


生物多様性保全の先進事例

サプライチェーンにおける生物多様性リスク管理

事業活動が生物多様性に与える影響は、自社拠点内だけでなく、原材料調達などのサプライチェーン上流で発生することが多いと認識されています。そのため、主要な原材料の調達元における生物多様性への影響評価(デューデリジェンス)、森林認証(FSCなど)や持続可能なパーム油認証(RSPOなど)といった認証を受けたサプライヤーからの優先的な調達、製品のトレーサビリティ確保といった取り組みが重要になります 23

事業所周辺の生態系配慮

工場や事業所の敷地内およびその周辺において、地域の生態系に配慮した環境整備を行うことも重要です。具体的には、緑地や水辺空間を確保・創出し、地域の在来種に適した生息環境を提供するグリーンインフラ(緑の屋根、雨水浸透施設、ビオトープ、緩衝緑地帯など)の導入 25、地域の環境NPOや住民と連携した保全活動の実施などが挙げられます。

自然資本への投資・オフセット

事業活動による生物多様性への負の影響を完全に回避できない場合に、その影響を相殺(オフセット)するために、他の場所での生息地復元プロジェクト(植林、湿地再生など)への投資や支援を行う動きも出てきています 24。これは、企業の責任ある行動として評価されるだけでなく、長期的な資源確保や生態系サービスの維持にも繋がる可能性があります。

汚染防止の徹底

工場からの排水や排気に含まれる汚染物質、化学物質の漏洩などは、周辺の生態系に深刻なダメージを与える可能性があります。そのため、最新の排水・排気処理技術の導入、有害物質の使用量削減や代替物質への転換、厳格な漏洩防止対策と緊急時対応計画の策定などが不可欠です 48

これらのベストプラクティス全体を通じて、自動化技術(ロボット、IoT、AIなど)が、エネルギー効率の最適化、資源循環プロセスの実現(高度な選別・分解)、環境モニタリング、予知保全など、多くの側面で重要な「実現手段(enabler)」となっている点は注目に値します。これは、ファナックのような自動化技術を提供する企業にとって、自社のサステナビリティ向上だけでなく、顧客や社会全体の持続可能性向上に貢献する大きな機会が存在することを示唆しています。

競合他社の分析

ファナックの環境への取り組みを評価し、今後の戦略を検討する上で、同業他社の動向を把握することは不可欠です。ここでは、主要な競合企業の特定、各社の環境イニシアチブ、そして公表されている環境関連スコアの比較分析を行います。

主要競合企業の特定

産業用ロボットおよびFA(ファクトリーオートメーション)市場において、ファナックの主要なグローバル競合企業としては、スイスのABB、ドイツのKUKA(現在は中国の美的集団傘下)、そして同じく日本の安川電機が挙げられます。これらはしばしば「世界4強」と称され、市場で大きな存在感を示しています 4。日本国内や特定の製品分野においては、三菱電機、不二越、川崎重工業、デンソーなども競合関係にあると考えられます 51。

競合企業の環境への取り組み

主要競合各社も、サステナビリティを経営の重要課題と位置づけ、積極的な環境への取り組みを進めています。

ABB

極めて意欲的なSBTiネットゼロ目標を設定しており、Scope 1+2排出量を2030年までに80%削減、2050年までに100%削減、Scope 3排出量も2030年までに25%削減、2050年までに90%削減を目指しています 16。再生可能エネルギーの導入にも積極的で、2024年には電力消費の95%を再生可能エネルギーで賄っています 16。製品のライフサイクル全体での排出削減貢献にも目標(2022年から2030年に販売した製品を通じて600メガトンのCO2e排出を回避)を掲げています 16。資源循環に関しては、2030年までに製品・ソリューションの80%が循環性の要件を満たすという目標を設定し、ロボットの再製造プログラムも展開しています 19。詳細なESGデータを開示するダッシュボードをウェブサイトで公開しており 16、生物多様性に関しても、保護地域近隣に立地するサイトの評価を実施するなど、包括的な取り組みを進めています 16

KUKA

2030年までに自社事業活動(Scope 1+2)からのCO2排出量を40%削減(2022年比)、2050年までにクライメートニュートラル達成を目指しています。さらに、バリューチェーン全体(Scope 3)の排出量についても、2030年までに20%削減、2050年までに90%削減という目標を設定しました 61。2030年までに全世界の拠点で100%グリーン電力調達と、社用車フリートの完全電動化も目標としています 61。製品面では、ロボットの軽量化(例:KR FORTECは約30%軽量化)や省エネ設計、ECOモードなどのソフトウェア機能によるエネルギー効率向上に取り組んでいます 61。自社拠点での太陽光発電導入や建物のエネルギー効率改善も進めています 61。サーキュラーエコノミーに関しては、中古ロボットの売買プラットフォーム「KUKA | Circle」の開発や、ロボットの再調整サービスを提供しています 64。サプライヤーのESG管理にはIntegrityNextプラットフォームを、CSRD(企業サステナビリティ報告指令)対応にはMicrosoft Sustainability Managerを導入するなど、管理体制の強化も図っています 65。これらの取り組みが評価され、ESG透明性アワードを受賞しています 61

安川電機

2050年のカーボンニュートラル達成を長期目標とし、SBTi認定を受けた中期目標として、2030年度までにScope 1+2排出量を51%削減(2018年度比)、Scope 3排出量を15%削減(2020年度比)を掲げています 68。独自の目標として「CCE 100」を設定し、自社製品による顧客でのCO2排出削減貢献量を、自社の排出量の100倍以上にすることを2025年度までに目指しています(2022年度実績は67.4倍)70。環境経営の柱として「グリーンプロセス」(自社の省エネ、廃棄物削減、水管理、化学物質管理など)と「グリーンプロダクツ」(省エネ製品開発、LCA実施、環境配慮設計)の両輪で取り組みを推進しています 17。再生可能エネルギー導入も進めており、太陽光発電設備の設置やCO2フリー電力の購入により、安川電機単体でのCO2フリー電力比率は2023年度に約58.3%に達しました 17。廃棄物のゼロエミッションを維持し、国内外拠点の水リスク評価に基づく対策も実施しています 17。生物多様性に関しても、基本方針を定め、本社「ロボット村」のグリーンベルト整備や、地域と連携した植樹活動(どんぐり銀行)、敷地内での外来種駆除といった保全活動を行っています 75


環境スコアのベンチマーキング

第三者評価機関によるESGスコアは、企業のサステナビリティパフォーマンスを客観的に比較する上で有用な指標となります。主要な評価機関のスコアを比較すると、以下のようになります。

ファナック

S&P Global ESG Scoreは41点(2024年9月時点)です。内訳は環境(E)が47点、社会(S)が43点、ガバナンス(G)が33点となっています。総合スコアは業界平均(29点)を上回っていますが、業界最高値(78点)には達していません 26。データ可用性は「非常に高い」と評価されており、情報開示レベルは高いものの、特に社会・ガバナンス領域において、開示レベルから期待される潜在スコアに対して実際のスコアが低いというギャップが見られます 26。これは、報告されているパフォーマンスや管理体制が、評価機関の期待水準や業界リーダーと比較して改善の余地があることを示唆しています。

ABB

全体的に非常に高い評価を受けています。S&P Global CSA Scoreは64点(2024年)80。Sustainalytics ESG Risk Ratingは15.2点で「低リスク」区分(2024年10月時点)80。MSCI ESG Ratingでは最高評価の「AAA」を獲得(2024年7月時点)80。CDP評価では、気候変動が「A」、水セキュリティが「B」、サプライヤーエンゲージメントが「A」と高評価です 80。EcoVadisでは「ゴールド」評価(75/100点、2024年8月時点)、ISS ESGでは「Prime」ステータス(B評価、2024年4月時点)を得ています 80。Sustainalyticsの評価では、電気機器業界内で上位14社/313社(約4.5%)に位置付けられています 81

KUKA

S&P Global Ratingsによる信用格付けは「BBB+」(見通し:安定的)です 82。CSRHubによるESG評価スコアは、機械製造業の業界平均を下回っています 85。SustainalyticsやMSCIによる具体的なESGスコアは提供された情報からは確認できませんでしたが、親会社である美的集団(Midea Group)はSustainalyticsで「中リスク」と評価されています 86。一方で、ESG情報開示の透明性が評価され、「ESG Transparency Award」を受賞しています 61。CDPへの情報開示も行っています 85

安川電機

S&P Global ESG Scoreは45点(2024年9月時点)で、ファナックより高い総合スコアです。内訳は環境53点、社会41点、ガバナンス40点であり、環境スコアはファナックより高い評価となっています 88。Sustainalytics ESG Risk Ratingは26.7点で「中リスク」区分(2025年3月時点)であり、電気機器業界内でのランクは133位/309社(約43%)と中位に位置します 89。MSCIによる評価データは存在しますが 90、具体的なレーティングは不明です。CDP Temperature Ratingの対象企業となっています 91

これらの比較から、ファナックはSBTi認定目標の設定など、一定の取り組みを進めているものの、特にABBのような競合他社は、より野心的な目標設定(特にScope 3や再生可能エネルギー100%化)、包括的な取り組み(サーキュラーエコノミー、サプライチェーン管理)、そして第三者評価機関からの総合的なESG評価において、現時点では先行している側面が見られます。ファナックの高い情報開示レベル 26 にもかかわらず、実際のスコアが伸び悩んでいる(特にS&P Globalの評価における社会・ガバナンス側面)点は、報告内容の質、あるいは報告されているパフォーマンスやマネジメントシステム自体に改善の余地があることを示唆しています。

現状の課題と提言

これまでの分析を踏まえ、ファナックが環境パフォーマンスをさらに向上させ、持続可能な成長を実現していく上で直面していると考えられる課題と、それに対する具体的な提言を以下に示します。

ファナックの課題評価

Scope 3 排出量削減の加速

製品使用段階(カテゴリ11)における削減目標は設定されていますが 5、サプライチェーン上流(カテゴリ1:購入した製品・サービス、カテゴリ2:資本財、カテゴリ4:輸送・配送など)を含む、より包括的なScope 3排出量削減に向けた戦略や具体的な目標設定が、ABB、KUKA、安川電機といった競合他社と比較して、現状の開示情報からはやや不明確です。サプライチェーン全体を視野に入れた取り組みの強化が課題と考えられます。

再生可能エネルギー導入の加速

2050年カーボンニュートラル目標達成のためには、再生可能エネルギー導入の加速が不可欠です。現状は主要拠点での部分的な導入に留まっており 5、KUKAが2030年までの100%グリーン電力調達を目標としている 61 など、競合の動きと比較すると、全社的な100%再生可能エネルギー化に向けた具体的なロードマップや中間目標の開示が十分とは言えません。

サーキュラーエコノミーへの取り組み深化

生産プロセスにおける廃棄物削減や水使用量削減といった運用効率の改善は進んでいますが 5、製品の設計段階から廃棄・リサイクルまでを見据えたライフサイクル全体での循環性を高める取り組み(例:再製造プログラムの自社展開、製品のサービス化、分解・修理しやすい設計の推進)については、ABBのロボット再製造 19 や業界ベストプラクティス 20 と比較すると、さらなる深化の余地があります。

生物多様性戦略のスコープ拡大

本社地区における「100年の森再生計画」 5 など、拠点レベルでの活動は高く評価できます。しかし、サプライチェーン全体(特に原材料調達)における生物多様性への影響評価やリスク管理、それに基づく具体的な対応策の検討・開示については、ベストプラクティス 23 と比較して、まだ取り組みの初期段階にあるか、あるいは情報開示が限定的であると考えられます。

ESGパフォーマンスと開示の連携強化

S&P Global ESG Scoreにおいて、高い情報開示レベルにもかかわらず、特に社会・ガバナンス分野でスコアが伸び悩んでいる状況 26 は、報告されているパフォーマンス自体、あるいはその管理体制が評価基準を満たしていない可能性を示唆します。単にデータを報告するだけでなく、パフォーマンス向上のための具体的な取り組みとその成果を、評価機関やステークホルダーに対して効果的に伝達するための開示内容の質的な向上が求められます。

ファナックへの提言

上記の課題を踏まえ、ファナックが環境スコアを向上させ、サステナビリティ経営をさらに推進するために、以下の点を提言します。

包括的なScope 3削減目標の設定と開示

カテゴリ11に加えて、排出インパクトが大きいと考えられる上流カテゴリ(購入した物品・サービス、資本財、輸送・配送など)についても、科学的根拠に基づいた削減目標を設定し、公表することを推奨します。目標達成に向けては、サプライヤーに対するエンゲージメントプログラム(情報収集、目標設定支援、協働プロジェクトなど)を強化することが不可欠です。

100%再生可能エネルギーへのロードマップ策定

グループ全体での100%再生可能エネルギー化達成に向けた、具体的な年次目標と、それを実現するための戦略(電力購入契約(PPA)の活用、自家発電設備のさらなる拡大、非化石証書の購入など)を策定し、積極的に開示することを推奨します。

サーキュラーエコノミー戦略の具体化と推進

製品の耐久性向上、修理可能性の改善、モジュール設計の推進といった既存の取り組みに加え、使用済み製品の回収・再製造プログラムの導入可能性を検討・試行することを推奨します。また、ロボット・アズ・ア・サービス(RaaS)のようなサービス提供型ビジネスモデルへの展開可能性も探るべきです。既存の修理・再生事業者(例:T.I.E. Industrial 21)との連携を強化することも、循環性向上の一つの選択肢となり得ます。

サプライチェーンにおける生物多様性リスク評価の実施

主要な原材料(金属、プラスチック等)や部品の調達が、どの地域のどのような生態系に影響を与えうるのか、サプライチェーン全体を対象としたリスク評価を実施することを推奨します。その上で、リスクが高いと特定された調達先や原材料については、持続可能な調達基準の設定・適用、サプライヤーへの働きかけ、代替素材の検討といった緩和策を導入し、その進捗を開示することが求められます。

ESGパフォーマンス向上のための戦略的投資と情報開示の質向上

ESGスコア、特に相対的に低い社会(S)およびガバナンス(G)分野の評価を向上させるため、課題の根本原因を特定し、改善に向けた具体的な施策(例:人的資本への投資強化、ダイバーシティ推進、取締役会の実効性向上、サステナビリティ関連指標と役員報酬の連動強化など)に戦略的に投資すべきです。情報開示においては、単にデータを羅列するのではなく、設定した目標、実行している戦略、具体的な活動実績、そしてそれらを支えるガバナンス体制との繋がりを明確に示し、パフォーマンスがどのように向上しているか(あるいは課題にどう対応しているか)というストーリーを、定量的・定性的な情報を交えて具体的に記述することが、ステークホルダーからの理解と評価を得る上で重要です。

最後に、ファナックの最大の強みである高度な自動化技術 3 は、自社の環境パフォーマンス改善だけでなく、顧客企業のサステナビリティ推進(省エネ化、資源効率向上、安全な労働環境の提供など)を支援する上で、極めて強力なツールとなります。この「サステナビリティ実現のイネーブラー」としての役割を、自社のサステナビリティ戦略の中核に据え、技術開発と事業展開、そして情報開示においてより前面に打ち出すことで、Scope 3排出量削減への貢献と市場でのリーダーシップ強化という、好循環を生み出すことが期待されます。

結論

本レポートでは、ファナック株式会社の環境イニシアチブおよびパフォーマンスについて、気候変動、資源循環、生物多様性の3つの側面に焦点を当て、包括的な分析を行いました。

分析の結果、ファナックは製品のエネルギー効率向上において顕著な強みを発揮しており、これを気候変動対策と事業機会創出の両面に結びつけていることが明らかになりました。SBTi認定を受けたGHG削減目標の設定や、本社地区におけるユニークで長期的な「100年の森再生計画」といった生物多様性保全活動も、同社の積極的な姿勢を示すものです。

一方で、課題も浮き彫りになりました。サプライチェーン全体を視野に入れたScope 3排出量削減戦略、再生可能エネルギー導入の加速、製品ライフサイクル全体での循環性を高めるサーキュラーエコノミーへの取り組み深化、サプライチェーンにおける生物多様性リスクへの対応といった点では、業界のベストプラクティスやABBなどの主要競合他社と比較して、さらなる取り組みの強化と情報開示の拡充が求められます。また、高い情報開示レベルにも関わらず、第三者評価機関によるESGスコア、特に社会・ガバナンス側面が伸び悩んでいる点は、報告内容の質的向上と、それを裏付けるパフォーマンス自体の改善が必要であることを示唆しています。

競合他社との比較においては、ファナックは一部の目標設定(SBTi認定など)では追随しているものの、総合的なESG評価や、より野心的な目標設定(ABBのScope 3目標やKUKAの再エネ目標など)、先進的な取り組み(ABBの再製造プログラムなど)においては、改善の余地が大きいと言えます。

これらの分析結果を踏まえ、ファナックが環境スコアを向上させ、持続可能な成長を確実なものとするためには、以下の点が最重要であると結論付けられます。

  • サプライチェーン上流を含む包括的なScope 3削減戦略の策定・実行

  • 100%再生可能エネルギー化に向けたロードマップの策定と導入加速

  • 製品の再製造やサービス化も視野に入れたサーキュラーエコノミー戦略の深化

  • サプライチェーンにおける生物多様性リスク評価と対応策の導入

  • ESGパフォーマンス(特に社会・ガバナンス)の向上と、その成果を効果的に伝える情報開示の質的向上

ファナックが持つ世界トップレベルの自動化技術は、これらの課題解決と機会創出において、他社にはない独自の強みとなり得ます。この技術的リーダーシップとサステナビリティへのコミットメントをより深く統合し、自社および顧客双方の持続可能性向上を推進していくことが、ファナックの今後の企業価値向上と社会への貢献における鍵となるでしょう。

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  88. YASKAWA Electric Corporation ESG Score - S&P Global, 4月 17, 2025にアクセス、 https://www.spglobal.com/esg/scores/results?cid=4238286

  89. YASKAWA Electric Corp. ESG Risk Rating - Sustainalytics, 4月 17, 2025にアクセス、 https://www.sustainalytics.com/esg-rating/yaskawa-electric-corp/1008572964

  90. Project Net Zero Carbon 2023 - Montanaro Asset Management, 4月 17, 2025にアクセス、 https://montanaro.co.uk/wp-content/uploads/Project-Net-Zero-Carbon-2023-Final.pdf

  91. Approach to Net Zero Portfolios - Lazard Asset Management, 4月 17, 2025にアクセス、 http://www.lazardassetmanagement.com/docs/154082/LazardAssetManagementsApproachToNet.pdf