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京急電鉄株式会社 環境イニシアチブ・パフォーマンスに関する包括的分析報告書

更新日:2025年4月19日
業種:運輸・情報通信業(5555)

1. 序論

目的と背景

本報告書は、京浜急行電鉄株式会社(以下、京急電鉄または京急グループ)の環境への取り組みとパフォーマンスを、「気候変動」「資源循環」「生物多様性」の3つの重点分野において包括的に分析することを目的とする。鉄道、不動産、レジャー・サービス等を核とする同社の事業活動が環境に与える影響と、それに対する戦略的対応を評価し、環境スコアリングに必要な詳細情報を提供するとともに、学術的レベルでの考察を行う。分析は、京急グループが公表している統合報告書、サステナビリティ関連報告書、ウェブサイト情報等の公式発表資料に基づき、可能な限り定量的なデータと定性的な情報を統合して実施する 。  

報告書の構成

本報告書は、まず京急グループ全体の環境戦略とそれを支えるガバナンス体制を概観する。続いて、分析の核心となる「気候変動への対応」「資源循環の推進」「生物多様性の保全」の各分野について、具体的な目標、取り組み、実績、そしてTCFD提言に基づくリスク・機会分析(気候変動)などを詳述する。さらに、鉄道業界および不動産・レジャーサービス業界における環境面のベストプラクティスとの比較分析、主要な競合他社(東急電鉄、小田急電鉄、東武鉄道、西武ホールディングス)の環境パフォーマンスとのベンチマーキングを行う。最後に、これらの分析結果を踏まえ、京急グループが現在直面している環境課題を特定し、今後の取り組みに向けた推奨事項を提示する。

分析の視点

近年、ESG(環境・社会・ガバナンス)経営への関心は世界的に高まっており、企業価値評価や投資判断において非財務情報、特に環境(E)側面に関する情報開示の質と量がますます重要視されている。本報告書では、このような背景を踏まえ、京急グループの環境への取り組みが、規制要件への対応、リスク管理、新たな事業機会の創出、そしてステークホルダーからの信頼獲得といった多角的な観点から、いかに企業価値の持続的向上に貢献しうるかを客観的かつ分析的な視点から評価する。特に、定量的なデータに基づくパフォーマンス評価と、戦略の具体性・実効性に重点を置く。

2. 京急グループの環境戦略とガバナンス

サステナビリティ基本方針と体制

京急グループは、グループ理念の持続的な実現が社会とグループ双方の持続可能性を高めるという考えに基づき、2022年4月に「サステナビリティ基本方針」を策定した 。この方針は、ESG経営を実践し、事業活動を通じて社会課題の解決に貢献することを目指すものであり、環境保全活動への取り組みも重要な柱として位置づけられている 。 環境戦略を含むサステナビリティに関する重要事項を審議・推進する体制として、経営戦略室長を委員長とする「サステナビリティ委員会」が設置されている 。この委員会は、サステナビリティに関する諸課題について議論し、リスク管理委員会との連携を図りながら、その内容を取締役会へ報告・提言する役割を担う 。取締役会は、これらの報告・提言に基づき、グループ全体のサステナビリティ戦略、特に環境目標の達成に向けた取り組みの進捗状況や気候関連リスク・機会などを適切に管理・監督する体制となっている 。このガバナンス構造は、トップマネジメントのコミットメントを確保し、環境戦略の実効性を担保するための基盤となるものである。  

重要課題(マテリアリティ)の特定

京急グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値向上に向けて取り組むべき重要課題(マテリアリティ)を特定している。2019年度に策定された「京急グループ CSR ビジョンシート」では、「社会に与えるインパクト」と「価値創造」の2軸で12項目のマテリアリティが特定された 。これらのマテリアリティには、気候変動への対応、資源の有効活用、生物多様性の保全といった環境関連の課題が含まれており、グループ全体の経営戦略、特に2021年に策定された総合経営計画における「コーポレートサステナブル戦略」と連動している 。この戦略では、ESGへの取り組みを経営のベースと位置づけ、各分野における具体的なKPI(重要業績評価指標)を設定し、長期ビジョンの達成を目指している 。マテリアリティの特定プロセスとその後の戦略への反映は、環境課題への取り組みが場当たり的なものではなく、経営の中核に据えられていることを示唆している。  

TCFD提言への対応状況

京急グループは、気候変動が事業に与える影響の重要性を認識し、2021年9月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明した 。以降、TCFD提言が推奨する「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4つの開示項目に基づき、気候関連情報の開示を進めている 。特に「戦略」においては、複数の気候変動シナリオ(例:1.5℃/2℃シナリオ、4℃シナリオ)を用いて、自社事業への潜在的な影響(リスクと機会)を分析し、その結果を開示している 。これらの情報は、投資家をはじめとするステークホルダーが、京急グループの気候変動に対するレジリエンス(強靭性)と適応能力を評価するための重要な基盤を提供する。TCFDへの対応は、気候関連リスクを経営戦略やリスク管理プロセスに統合し、より持続可能な事業運営を目指す上での重要なステップである。  

第三者検証と情報開示の信頼性

情報開示の信頼性と透明性を高めるため、京急電鉄は2023年度の環境データ(Scope1およびScope2の温室効果ガス排出量、エネルギー使用量)について、LRQAによる第三者検証(国際保証業務基準ISAE 3000およびISO 14064-3:2019に基づく限定的保証)を受けている 。この検証導入の主な目的は、開示するGHG排出量データの算定精度を高め、その正確性を客観的に担保することにある 。近年、有価証券報告書におけるサステナビリティ情報開示の重要性が増す中、特に定量的な環境データについては、自社算定だけでは信頼性の確保・証明が困難であるとの認識が背景にある 。 さらに、この第三者検証の導入は、CDP(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)による評価スコアの向上も視野に入れている 。CDPスコアは、企業の環境への取り組みを評価する国際的な指標であり、京急グループでは2023年4月から、執行役員賞与の評価項目の一部にCDP評価結果を含むESG指標を導入している 。具体的には、ESG指標で評価される報酬の割合は、執行役員賞与のうち連結業績評価分の10%とされている 。第三者検証の取得はCDPスコアリングにおいて有利に働くことが認識されており 、検証の実施は、開示情報の信頼性向上という外部への説明責任を果たす側面と、CDPスコア向上を通じて経営層のインセンティブに繋げるという内部的な動機付けの両面を持つ。これは、ESGパフォーマンス向上に向けた取り組みを加速させる上で、有効なメカニズムとして機能していると考えられる。  

3. 気候変動への対応

目標と実績

長期・中期目標

京急グループは、脱炭素社会の実現に向けた明確な目標を設定している。長期目標として「京急グループ 2050年カーボンニュートラル」を掲げ、2050年度までにグループ全体の温室効果ガス(GHG)排出量を実質ゼロにすることを目指している 。この長期目標達成に向けたマイルストーンとして、中間目標も設定されている。具体的には、「2030年度にグループ全体の温室効果ガス排出量を2019年度実績と比較して30%削減する」ことが目標である 。基準となる2019年度のGHG排出量(Scope1+Scope2)は249,265トン-CO2であるため 、2030年度には年間約74,780トン-CO2以上の削減を目指す計算となる。これらの目標設定は、パリ協定の目標達成に向けた国際的な潮流や、日本政府のカーボンニュートラル宣言に沿ったものであり、企業としての責任を示すものである。  

GHG排出量実績

京急グループは、Scope1(直接排出)およびScope2(間接排出:エネルギー起源)のGHG排出量実績を着実に削減している。目標の基準年である2019年度の排出量は合計249,265トン-CO2(内訳:Scope1 90,657トン-CO2、Scope2 158,607トン-CO2)であった 。その後、省エネルギー施策や再生可能エネルギー導入の進展により、排出量は年々減少し、2020年度は215,593トン-CO2、2021年度は198,568トン-CO2、2022年度は194,382トン-CO2、そして2023年度には178,316トン-CO2(内訳:Scope1 64,124トン-CO2、Scope2 114,191トン-CO2)となった 。これは、基準年度比で約28.5%の削減に相当し、2030年中間目標(30%削減)達成に向けて順調に進捗していることを示している。なお、Scope3(その他の間接排出:サプライチェーン排出量など)については、算定・開示に向けた検討が進行中であるとされている 。  

第三者検証

前述の通り、2023年度のScope1およびScope2排出量データについては、LRQAによる第三者検証を受けており、データの信頼性が担保されている 。これは、目標達成に向けた進捗状況を客観的に評価し、ステークホルダーへの説明責任を果たす上で重要である。  

具体的な取り組み

京急グループは、GHG排出削減目標達成のため、「省エネ」「創エネ」「再エネ」を軸に多岐にわたる具体的な取り組みを推進している 。  

再生可能エネルギーの導入

再生可能エネルギーの利用拡大は、特にScope2排出量削減における中核的な戦略である。

  • 鉄道事業: 特筆すべきは、2024年4月1日から、京急線全線(全72駅)の運行に使用する全ての電力(運転用電力および駅等の業務用電力)を、実質的に再生可能エネルギー由来の電力(非化石証書付き電力)に切り替えたことである 。これにより、年間約100,000トン-CO2という大幅な排出量削減効果が見込まれており 、鉄道事業におけるCO2排出量実質ゼロ運行を実現した。これは、日本の大手私鉄の中でも先進的な取り組みであり、2030年度には鉄道事業における電気使用量に占める非化石エネルギーの割合を100%にするという目標達成に向けた大きな前進である 。  

  • バス事業: 京浜急行バスおよび川崎鶴見臨港バスでは、環境負荷の低い車両導入を進めている。ハイブリッドバスに加え、水素を燃料とする燃料電池バス「SORA」、小型および大型の電気バスを導入している 。特に電気バスの動力には再生可能エネルギー由来の電力が使用されており、走行時のCO2排出量は実質ゼロとなる 。2024年度にはグループ全体で電気バス11台体制となり、年間約175トン-CO2の削減効果が見込まれている 。また、川崎鶴見臨港バスではバイオディーゼル燃料を使用したバスも導入されている 。  

  • タクシー事業: 京急タクシーグループでは、2023年4月からEV(電気自動車)車両50台を導入し、運行時のGHG排出量削減に努めている 。  

  • その他施設: グループ会社が入居する京急グループ本社ビルでは、2021年12月から100%再生可能エネルギー由来の電力を利用している 。葉山マリーナでは、2023年4月から全ての使用電力を横須賀バイオマス発電所由来の環境価値が付帯された電力に切り替え、エネルギーの地産地消を実践している 。さらに、羽田空港第3ターミナル駅や油壺京急マリーナなど、一部の駅や施設では太陽光発電設備も導入し、自家消費している 。  

省エネルギーの推進

エネルギー消費量そのものを削減する取り組みも継続的に行われている。

  • 鉄道車両: 省エネルギー性能の高い車両への更新を進めている。電車がブレーキをかける際に発生する電気エネルギーを架線に戻し、他の走行中の電車が利用する「電力回生ブレーキ」を搭載した車両や、電力回生効率がより高い「VVVFインバータ制御装置」を搭載した車両の導入を推進し、2023年度末時点でVVVF制御車の導入率は100%に達した 。  

  • LED化: エネルギー効率の高いLED照明への切り替えも積極的に進められている。新造・更新される鉄道車両の客室照明や前照灯にLEDを採用するとともに、駅構内や関連施設の照明も順次LED化している 。2023年度末時点での進捗率は、車両のLED化が68%、駅施設のLED化が46%となっている 。これらの省エネ化は、東京都、神奈川県、横浜市の環境関連条例に基づくエネルギー使用量報告においても評価されている 。  

  • 不動産・建設: 不動産事業においては、省エネ性能の高い住宅(ZEH: ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)やビル(ZEB: ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の普及を推進している 。グループ会社の京急建設では、環境方針として省資源・省エネルギー化の推進や環境に配慮した設計を掲げており 、京急ビルマネジメントでは、既存ビルに対して空調設備の最適化など様々な省エネ対策を提案・導入し、最大で30%程度の空調費用削減を実現した事例もある 。  

モーダルシフトの促進

自動車利用から環境負荷の少ない公共交通機関への転換(モーダルシフト)を促す取り組みも行われている。MaaS(Mobility as a Service)基盤を活用し、シームレスな移動体験を提供することで、マイカーから公共交通への利用転換を喚起している 。また、広告媒体などを活用した公共交通利用促進キャンペーン「ノルエコ」プロジェクトなども実施している 。  

TCFDに基づくリスクと機会の分析

京急グループは、TCFD提言に基づき、気候変動が自社グループの事業、戦略、財務計画に与える影響について、リスクと機会の両面から分析・評価を行っている 。  

シナリオ分析

分析にあたっては、複数の気候変動シナリオが参照されている。具体的には、脱炭素化が国際的に進展し、厳しい政策・規制が導入される「脱炭素社会実現シナリオ(1.5℃または2℃目標達成シナリオ、IPCC RCP2.6やIEA NZE等を参照)」と、現状以上の対策が講じられず温暖化が進行し、自然災害が激甚化する「地球温暖化進展シナリオ(4℃以上上昇シナリオ、IPCC RCP8.5等を参照)」の2つの異なる将来像を想定している 。分析対象はグループの全事業(交通、不動産、レジャー・サービス、流通、その他)であり、リスク・機会の影響が現れる時間軸を短期(0~2年)、中期(2~6年、2030年まで想定)、長期(6~26年、2050年まで想定)に区分し、財務的な影響度を大(10億円以上)、中(1億円~9億円)、小(1億円未満)の3段階で評価している 。  

特定されたリスク

分析の結果、以下のような主要なリスクが特定されている。

  • 移行リスク(主に1.5℃/2℃シナリオ下):

    • 政策・法規制: 炭素税の導入や既存の税制強化、排出量取引制度などカーボンプライシング導入による事業コストの増加(影響度:大)。省エネルギー法等の規制強化に伴う、省エネ性能の高い車両(EVバス等)や設備(ZEB/ZEH基準達成のための設備)への投資コスト増加(影響度:大)。  

    • 技術: 低炭素技術への移行が遅れた場合の競争力低下。

    • 市場: エネルギー価格(電力・燃料)や建設資材(コンクリート・鉄鋼等)の価格上昇による運営・開発コストの増加(影響度:大)。環境意識の高まりによる消費者の嗜好変化に対応できない場合の顧客離れや需要減少(影響度:大)。  

    • 評判: 環境への取り組みが不十分と評価された場合の、企業ブランドイメージの毀損、ESG評価の低下、それに伴う資金調達コストの上昇や人材獲得への悪影響(影響度:大)。  

  • 物理的リスク(主に4℃シナリオ下):

    • 急性リスク: 台風の大型化、集中豪雨の頻発・激甚化といった異常気象による物理的被害の増大。具体的には、鉄道施設(線路、駅、電気設備、車両基地等)や不動産施設(商業施設、ホテル、住宅等)への浸水、土砂災害、強風による損壊リスクの増加(影響度:大)。これらの被害に伴う事業中断(鉄道の運休、施設の営業停止)による収入減少(影響度:中~大)、および復旧・修繕コストの増大(影響度:大)。サプライチェーンの寸断による部品調達難やサービス提供への支障。  

    • 慢性リスク: 平均気温の上昇による冷房需要増大とエネルギーコスト増加、熱中症リスク増大による労働生産性低下や屋外活動の敬遠。海面上昇に伴う長期的な高潮リスクの増大、沿岸部の鉄道施設や不動産への浸水リスク(影響度:大)。降水パターンの変化による水資源(渇水リスク等)への影響。生態系の変化による観光資源への影響(例:紅葉時期の変化、海水温上昇による漁獲資源の変化)。  

特定された機会

一方で、気候変動への対応は新たな事業機会も創出すると認識されている。

  • 資源効率: 省エネルギー化の推進(LED化、高効率設備の導入、運用改善等)によるエネルギーコストの削減(影響度:中)。  

  • エネルギー源: 再生可能エネルギーへのシフトによる、将来的な化石燃料価格高騰リスクの低減とエネルギーコストの安定化(影響度:大)。太陽光発電等の自家発電・自家消費によるエネルギー自給率向上。  

  • 製品・サービス: 環境性能の高い交通サービス(再エネ100%鉄道、EVバス等)の提供による、環境意識の高い顧客からの選択とブランドイメージ向上、利用者増加(影響度:大)。ZEH/ZEB基準を満たす環境配慮型住宅・オフィス・商業施設等の開発・提供による、不動産価値向上とテナント・購入者からの需要獲得(影響度:大)。エコーツーリズムやサステナブルな体験型レジャーサービスの提供による新たな顧客層の開拓。  

  • 市場: 環境規制強化や市場の変化に対応した新たなビジネスモデルの創出(例:MaaSによる交通最適化、資源循環関連事業)。ESG投資の拡大に伴う、環境分野で先進的な企業への資金流入増加(影響度:大)。  

  • レジリエンス: 気候変動適応策(防災・減災対策、BCP強化)の推進による、自然災害発生時の事業継続性向上と早期復旧能力の強化、それによる社会的信頼の向上。

財務影響評価

京急グループは、特定されたリスクと機会の一部について、シナリオに基づいた定量的な財務影響額の試算も行っている 。例えば、1.5℃/2℃シナリオにおける炭素税導入時の追加コスト負担額や、4℃シナリオにおける主要河川(例:相模川)氾濫時の資産被害想定額などが試算されている 。これらの試算は、気候変動が財務パフォーマンスに与える潜在的な影響の大きさを具体的に把握し、経営判断に役立てることを目的としているが、試算には多くの前提条件が含まれるため、その結果はあくまで将来予測の一環として捉える必要がある。  

対応策

特定されたリスクの最小化と機会の最大化を図るため、京急グループは以下のような対応策を計画・実施している。

  • 緩和策(GHG排出削減): 省エネルギー施策(省エネ車両・設備導入、LED化推進)、創エネルギー施策(太陽光発電導入拡大)、再生可能エネルギー利用拡大(鉄道100%再エネ化、バス・タクシーのEV化、施設への再エネ電力導入)の継続・強化 。ZEH/ZEB物件の推進 。MaaS推進によるモーダルシフト促進 。  

  • 適応策(気候変動影響への備え): 自然災害対策の強化(鉄道施設の耐震補強、法面防護工事、駅・施設への浸水防止設備の設置等)。ハザードマップ等を活用したリスク評価の精緻化。災害対策計画の策定・見直し、異常時対応訓練の実施による危機管理体制の強化 。  

  • 機会の活用: 環境性能の高い製品・サービス(再エネ電力利用、省エネ性能、防災性能)の競争力向上と積極的なPRによる売上増加 。環境配慮型商品・サービスの開発・提供 。ESGに関する情報開示の質・量の向上による投資家からの評価向上 。  

これらのTCFDに基づく分析と対応は、京急グループが気候変動という長期的な経営課題に対し、戦略的に取り組み、持続可能な成長を目指していることを示している。特に、鉄道事業における100%再生可能エネルギー電力への転換 は、移行リスク(炭素価格、エネルギー価格変動)に対する強力な対策であると言える。一方で、TCFD分析で「長期・大」と評価されている海面上昇や高潮・洪水による物理的リスク への対応は、再エネ導入とは異なる性質の大規模なインフラ投資(護岸強化、施設嵩上げ、移設等)を必要とする可能性がある。気候変動の緩和(脱炭素化)と適応(レジリエンス強化)の両面において、今後、戦略的な優先順位付けと継続的な投資が求められるであろう。  

4. 資源循環の推進

京急グループは、事業活動に伴う資源消費と廃棄物排出の抑制、および資源の有効活用を通じて、循環型社会の実現に貢献することを目指している。気候変動対策に比べると、グループ全体での統一的な数値目標の設定や包括的な実績データの開示は限定的であるが、各事業部門において多様な取り組みが進められている。

廃棄物削減とリサイクル

プラスチック削減

海洋プラスチック汚染問題への対応として、「京急グループ プラごみ削減運動」を展開している 。  

  • 使い捨てプラスチックの削減: グループのスーパーマーケット「京急ストア」や物販・飲食店舗において、レジ袋の有料化やマイバッグ持参の推奨を実施している 。また、顧客に提供するカトラリー(スプーン、フォーク、ストロー等)やレジ袋について、植物由来(バイオマス)プラスチックを配合したものへの切り替えを進めている 。  

  • ホテルでの取り組み: グループホテル「京急EXイン」では、客室アメニティのシャンプー類を使い捨ての小分けタイプから詰め替えボトルタイプに変更し、プラスチック容器ごみの削減を推進している 。また、歯ブラシには籾殻由来のバイオマス素材を35%配合したものを採用し 、アメニティの種類も利用率の高いものに絞ることで、無駄な廃棄物の発生を抑制している 。  

  • エコトレーの利用: 京急ストアでは、再生材を利用したエコトレーを使用している。2023年度の利用実績により、約136トン(レジ袋約438万枚相当)のCO2削減効果があったと試算されている 。エコトレーの店頭回収も促進している 。  

食品ロス・食品廃棄物リサイクル

食品ロス削減と食品廃棄物の有効活用は、特に流通事業における重要な課題である。

  • 食品ロス削減: 京急ストアでは、販売期限が近い商品を購入してもらう「てまえどり」を顧客に促すための専用POPを、見切り品コーナーや日配品棚に設置している 。また、従業員のスキルアップを通じて、正確な発注や適切な商品管理によるロス発生の抑制にも努めている 。  

  • 食品残渣リサイクル: 京急ストアの一部店舗では、店舗から排出される食品残渣(調理くず、売れ残り等)のリサイクルを実施している 。回収された食品残渣は、専門業者によって堆肥や飼料に再生され、その堆肥で育てられた野菜や飼料で育った豚などを店舗で販売する「リサイクルループ」の構築も視野に入れている 。生鮮部門から出る廃油(石鹸・洗剤等へ)や魚のアラ(魚腸骨、飼料へ)のリサイクルも行われている 。今後、食品残渣リサイクルの実施店舗拡大を目指している 。  

廃食用油リサイクル

家庭や事業所から出る廃食用油の回収・リサイクルにも取り組んでいる。

  • 京急ストアの一部店舗(蒲田店、もとまちユニオン フードホール、元町店)では、家庭から出る廃食用油の回収ボックスを設置している 。  

  • グループ各施設(例:京急ストア久里浜店)で使用した事業系の廃食用油は、国産SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)の原料として供給するプロジェクト「Fry to Fly Project」に協力している 。これは、国内資源循環による脱炭素社会実現への貢献を目指すものである。  

衣類回収・リサイクル

衣類の大量廃棄問題に対応するため、新たな資源循環プラットフォーム構築に向けた実証実験を開始した。

  • 2025年2月より、株式会社FASHION Xと連携し、京急沿線の駅構内やグループ施設(平和島駅前、八丁畷駅前、BIG FUN 平和島、立会川駅、京急蒲田駅、京急鶴見駅など)に専用の古着回収ボックスを設置している 。  

  • 回収対象は、洗濯済みの綺麗な衣類、タオル、ネクタイ、スーツ、帽子、未使用の靴、カバン、ぬいぐるみ等で、汚れや破損のあるもの、下着、寝具、敷物などは対象外となる 。  

  • 回収された衣類は、リユースやリサイクルされるほか、将来的には沿線でのワークショップイベントでの活用(例:京急百貨店環境月間との連携)、アップサイクル商品の開発・販売などを通じて、地域内で循環させる仕組みづくりを目指している 。京急電鉄は、資源循環推進協議会の正会員としても活動している 。  

建設廃棄物

グループ会社の京急建設は、環境方針に基づき、建設現場における産業廃棄物の排出抑制とリサイクル化を推進している 。具体的には、現場での廃棄物の分別徹底や、現場周辺の清掃活動などを実施している 。  

その他

  • 京急ストアでは、食品トレー、牛乳パック、ペットボトルなどの店頭回収ボックスを設置し、リサイクルを推進している 。  

  • 横浜市が推進する3R(リデュース・リユース・リサイクル)活動「ヨコハマ3R夢(スリム)プラン」に賛同し、「ヨコハマ3R夢パートナー」として登録されている 。  

  • 鉄道施設においては、長寿命な合成枕木や再生プラスチック製踏切板の導入により、木材の使用量削減と交換頻度低減による廃棄物削減を図っている 。  

水資源管理

水資源の有効活用に関する取り組みとしては、グループ会社の川崎鶴見臨港バスが、下水処理場で高度処理された再生水をバスの洗車用水として利用している事例がある 。これは、貴重な水資源の節約に貢献するものである。しかし、グループ全体としての水使用量の把握、削減目標の設定、具体的な節水技術の導入状況などに関する包括的な情報は、提供された資料からは限定的である。競合他社である小田急グループが、水使用量(取水量)の収益原単位を前年度比で削減するという目標を設定していること を考慮すると、京急グループにおいても、水リスク評価に基づいた体系的な水資源管理戦略と情報開示の強化が望まれる。  

持続可能な調達

サプライチェーン全体での環境負荷低減を目指す持続可能な調達に関する方針や具体的な取り組みについては、現状、詳細な情報が少ない。京急電鉄が沿線情報誌で秋田県の環境配慮米「あきたecoらいす」を紹介・連携している事例 や、東武鉄道がグリーン購入ガイドラインを制定している事例 などはあるが、京急グループ全体として、サプライヤー選定基準に環境評価を導入しているか、環境負荷の低い原材料や製品の調達をどの程度推進しているかなどは不明確である。サプライチェーンにおける環境リスク管理と機会創出の観点から、今後は調達方針の明確化と取り組みの具体化が期待される。  

全体として、京急グループは資源循環に関して多岐にわたる個別施策を展開している。特に、廃食用油のSAF化協力や衣類回収の実証実験は、新たな循環スキーム構築への意欲を示すものである。一方で、気候変動分野で見られるようなグループ全体の明確な数値目標(廃棄物削減率、リサイクル率、水使用量削減率など)の設定と、それに基づく体系的な実績データの開示が、資源循環分野ではまだ十分に進んでいないように見受けられる。目標設定とデータ開示の体系化を進めることで、取り組みの透明性と実効性をさらに高め、循環型社会への貢献度をより明確に示すことができるだろう。

5. 生物多様性の保全

京急グループは、事業活動を行う沿線地域の豊かな自然環境を次世代に継承することの重要性を認識し、生物多様性の保全と持続可能な利用に向けた取り組みを進めている。特に、三浦半島に広大な社有林を保有していることから、森林管理を中心とした活動が特徴的である。

森林管理:「みうらの森林」プロジェクト

京急グループの生物多様性保全活動の中核をなすのが、2023年に始動した「みうらの森林(もり)プロジェクト」である 。  

  • 概要と目的: このプロジェクトは、京急電鉄が三浦半島に保有する約100ヘクタールの社有林(主に照葉樹林)を対象としている 。従来、十分に手入れがされてこなかった森林に対し、適切な管理を行うことで、森林が持つ二酸化炭素吸収能力を高め、生物多様性を維持・向上させるとともに、地域コミュニティの形成や沿線住民が自然と触れ合える場として活用することを目指している 。これは、「環境保全を通じて、人と自然がすこやかにつながる未来をつくる」というプロジェクトの理念に基づいている 。  

  • 具体的な活動: プロジェクトでは、「まもる」「つかう」「あそぶ・まなぶ」の3つの軸で活動を展開している 。

    • まもる(森林管理): 健全な森林生態系を維持するため、専門家(神奈川県森林組合連合会等)の協力のもと、適切な間伐(樹木の成長を促し、下層植生の多様性を高めるための間引き)や下草刈り、歩道整備などの森林整備活動を継続的に実施している 。これにより、太陽光が林床まで届く明るい森づくりを進め、多様な動植物が生息できる環境を創出することを目指している 。  

    • つかう(間伐材利用): 森林整備の過程で発生する間伐材を無駄にせず、資源として有効活用する取り組みを進めている 。具体的には、バイオマス発電の燃料や薪としての利用 のほか、将来的には木材製品への加工や、森の中に新たな施設を作る際の資材としての活用などが考えられる。  

    • あそぶ・まなぶ(自然体験・環境教育): 都市近郊にある森林をフィールドとして活用し、地域住民や企業従業員などが自然に親しみ、環境について学ぶ機会を提供している 。具体的には、「山あそび」と称した自然体験プログラム、畑づくり、養蜂、子供向けの遊び場づくりなどが企画・実施されている 。  

     

  • パートナーシップ: このプロジェクトは、京急グループ単独ではなく、多様な主体との連携によって推進されている 。森林管理の専門家である神奈川県森林組合連合会 、間伐材のバイオマス利用等で協力する株式会社タケエイグリーンリサイクル 、自然体験プログラム等で連携する一般社団法人葉山の森保全センター 、HARAPPA株式会社(原っぱ大学)、株式会社やまとわ など、地域のNPO、専門企業、金融機関(農林中央金庫 )、飲料メーカー(アサヒユウアス )などがパートナーとして参画している。さらに、プロジェクトの趣旨に賛同する法人を対象とした「森林共創パートナー事業」も展開されており、パートナー企業の従業員が年間を通じて森林整備活動等に参加する仕組みが構築されている 。  

生息地保全と地域連携

森林管理以外にも、地域の重要な自然環境の保全や、海洋生態系への配慮に関する活動が行われている。

  • 小網代の森: 三浦市にある貴重な自然環境が残る「小網代の森」について、京急グループはその保全活動に協力している 。具体的には、隣接する社有地の自主的な保全管理や、一部土地の神奈川県への寄付などを通じて、森全体の生態系維持に貢献している 。  

  • ブルーカーボン: 沿岸域の生態系が吸収・貯留する炭素である「ブルーカーボン」への関心が高まる中、京急グループは関連する啓発活動や保全活動にも取り組んでいる 。過去には、沿線の小学生などを対象に、アマモ場や海藻(カジメ等)の重要性を学ぶ体験ツアーを実施した。ツアーでは、水中ドローンを用いた海中観察や、漁業者による解説、サザエの稚貝放流などが行われた 。また、葉山マリーナでは、海洋浮遊ゴミ回収装置「SEABIN」の設置に協力するなど、海洋環境保全にも貢献している 。  

  • 鉄道・開発事業における配慮: 大規模な開発事業においては、環境影響評価(アセスメント)が法的に義務付けられており、京急グループも過去の連続立体交差事業(例:平和島駅~六郷土手駅間)などでアセスメント手続きを実施し、騒音・振動、景観、生態系等への影響評価と対策を行ってきた実績がある 。しかし、日常的な鉄道施設の維持管理(例:線路脇の除草・植生管理)や、比較的小規模な不動産開発プロジェクトにおいて、生物多様性への配慮がどの程度体系的に行われているか(例:外来種対策、在来種を用いた緑化、小動物への配慮等)については、公開されている情報は限定的である。  

京急グループの生物多様性への取り組みは、「みうらの森林」プロジェクトや「小網代の森」への協力といった、特定の重要エリアにおける保全活動に重点が置かれている点が特徴である。これらの活動は具体的であり、多様なパートナーシップを通じて展開されている点は高く評価できる。一方で、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)のような国際的なフレームワークを活用し、鉄道運営や不動産開発といったグループ全体のコア事業活動が自然資本や生物多様性に与える影響と依存関係を評価し、そのリスクと機会を経営戦略に統合していく視点については、今後のさらなる進展が期待される領域と言える。例えば、小田急グループがTNFD提言に基づく情報開示を進めていること は、今後の参考となりうる。事業活動全体への生物多様性配慮の組み込みと、その取り組み状況の透明性ある開示が、今後の課題となる可能性がある。  

6. 業界のベストプラクティスと比較分析

京急グループの環境への取り組みを評価する上で、同社が事業を展開する鉄道業界および不動産・レジャーサービス業界における先進的な事例(ベストプラクティス)との比較は有効である。

鉄道業界

日本の鉄道は、他の交通機関と比較して単位輸送量あたりのCO2排出量が著しく低く、エネルギー効率の高い輸送モードとしての環境優位性を持っている 。旅客輸送におけるCO2排出量は自家用乗用車の約8分の1であり 、この特性を維持・向上させることが業界全体の課題となっている。  

  • エネルギー効率と脱炭素化: ベストプラクティスとしては、さらなる省エネルギー車両の開発・導入が挙げられる。具体的には、ディーゼルエンジンと蓄電池を組み合わせたハイブリッド車両 、非電化区間も走行可能な蓄電池駆動車両 、最新のパワー半導体(SiC素子)を用いた高効率な駆動制御システム 、マグネシウム合金やCFRP(炭素繊維複合材料)を用いた車体の軽量化 などが進められている。また、究極のゼロエミッション車両として、水素を燃料とする燃料電池車両の開発も、JR東日本などが中心となって進められている 。運行面では、AIなどを活用した最適ダイヤの策定や省エネ運転技術の向上が重要となる。電力調達においては、再生可能エネルギー由来電力の利用拡大が不可欠であり、東武鉄道が日光・鬼怒川エリアの運行電力を100%再エネ化した事例 や、JR東日本がSBT(科学的根拠に基づく目標)認定を取得し、再エネ導入目標を掲げている事例などがある。京急電鉄が達成した全線での100%再エネ電力利用 は、業界の中でも特に先進的な取り組みと評価できる。また、VVVF制御車の導入率100%達成 も、エネルギー効率化への貢献が大きい。  

  • 資源循環: 鉄道業界では、車両や設備の長寿命化、リサイクル材の活用(例:再生プラスチック製枕木・踏切板 )、廃棄物の削減・適正処理が求められる。近年では、食品ロス削減への貢献として、東武鉄道がフードシェアリングサービス「TABETE」と連携し、駅で売れ残った農産物を都心へ輸送・販売する取り組み や、JR西日本が食品廃棄物由来のバイオガスから生成した水素を燃料電池フォークリフトに利用する実証実験 など、ユニークな事例も出てきている。また、旅客輸送と貨物輸送を組み合わせた「貨客混載」による輸送効率化も、資源有効活用の観点から注目される 。京急グループの衣類回収・リサイクル実証実験 や、廃食用油のSAF化協力 は、こうした資源循環の新たな流れに沿った取り組みと言える。  

  • 生物多様性: 鉄道事業は線状に広がるインフラであり、沿線の生態系への影響が避けられない。ベストプラクティスとしては、線路法面の緑化における在来種の利用、希少な動植物の生息地への配慮、駅や車両基地における緑地の創出・管理、開発プロジェクトにおける環境アセスメントの徹底と生物多様性保全措置の実施などが挙げられる。東武鉄道が社有林の保全活動や国立公園との連携を進めている事例 も参考になる。京急グループの「みうらの森林」プロジェクト は、鉄道会社による大規模な森林保全活動として特徴的であり、高く評価される。  

不動産・レジャーサービス業界

不動産(ビル、住宅、商業施設等)やレジャー施設(ホテル等)は、建設時および運用時におけるエネルギー消費、資源利用、廃棄物排出、土地利用といった面で環境への影響が大きい。

  • グリーンビルディング: 省エネルギー性能の向上は最重要課題であり、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)やZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の基準達成が目標となっている 。新築だけでなく、既存建物の省エネルギー改修(断熱改修、高効率設備導入等)も重要である 。太陽光発電パネルの設置など再生可能エネルギーの導入 や、BELS、CASBEE、LEED、BREEAMといった国内外の環境性能評価認証の取得 が、物件価値を高める上で一般的になっている。京急グループも不動産事業でZEH認証取得率目標を設定し 、京急建設が環境配慮設計を推進している ことは、この潮流に沿ったものである。  

  • 資源循環: 建設・解体時に発生する廃棄物の削減・リサイクル・再利用の推進、環境負荷の低い持続可能な建材(例:FSC認証木材 )の利用、節水設備の導入などによる水資源の効率的な利用 が求められる。京急建設の廃棄物抑制・リサイクル方針 や、京急ストア・京急EXインにおけるプラスチック削減や食品リサイクルの取り組み は、この分野での貢献を示すものである。  

  • 生物多様性: 開発プロジェクトにおいては、計画段階からの生物多様性への影響評価と、それに基づく保全・回復措置(例:既存樹木の保全、ビオトープ創設、壁面・屋上緑化による緑地の確保、地域生態系ネットワークへの配慮)が重要となる 。敷地内の緑化は、ヒートアイランド現象の緩和や利用者の快適性向上にも寄与する 。京急グループの「みうらの森林」プロジェクト は、開発とは別の形での貢献であるが、開発事業自体における生物多様性配慮の取り組みについては、さらなる情報開示が期待される。  

  • テナント・顧客との連携: ビルや商業施設のエネルギー消費の多くはテナントや利用者に起因するため、オーナー、管理者、テナント、利用者が協働して省エネや資源循環に取り組むことが効果的である 。具体的には、エネルギー使用量の「見える化」による意識向上、省エネ改修メリットの共有、環境配慮行動の推奨(例:エコ清掃の呼びかけ)などが挙げられる。京急EXインでのエコ清掃の推進 や、京急ストアでの「てまえどり」推奨 は、顧客との連携による環境負荷低減の試みである。  

京急グループは、鉄道、不動産、レジャー・サービス、流通といった多岐にわたる事業ポートフォリオを有している 。これは、単一セクターの企業にはない、セクター横断的な環境シナジーを創出できる独自の強みとなり得る。例えば、再生可能エネルギー100%で運行する鉄道駅 を核として、隣接地にZEB基準の商業施設やオフィスビル を開発し、地域冷暖房システムやエネルギーマネジメントを連携させることで、極めて環境性能の高いTOD(公共交通指向型開発)を実現できる可能性がある。また、駅というインフラを活用した衣類回収 のように、交通ネットワークを資源循環プラットフォームとして活用することも可能である。「みうらの森林」プロジェクト で育まれる自然資本を、沿線のレジャー施設でのエコーツーリズム商品として提供し、生物多様性保全と事業を結びつけることも考えられる。このように、各事業分野のベストプラクティスを学びつつ、グループ内の連携を強化し、事業間の垣根を越えた統合的な環境価値創造戦略を推進することが、京急グループならではの持続可能な成長モデル構築に繋がるだろう。  

7. 競合他社の環境への取り組みとパフォーマンス分析

京急グループの環境パフォーマンスを相対的に評価するため、首都圏で同様に鉄道事業を核とし、不動産、流通、レジャー等の多角的な事業を展開する主要な私鉄事業者、すなわち東急株式会社(以下、東急)、小田急電鉄株式会社(以下、小田急)、東武鉄道株式会社(以下、東武)、株式会社西武ホールディングス(以下、西武)を比較対象とする。これらの企業は、いずれも統合報告書やサステナビリティレポート等を通じて、環境への取り組みに関する情報を開示している 。  

取り組み比較

気候変動

  • GHG削減目標: 各社とも2050年カーボンニュートラルを長期目標として掲げ、中間目標を設定している。小田急は2030年度にCO2排出量50%削減(2013年度比)、東武は2030年度にCO2排出量約50%削減(2013年度比) を目標としている。京急の目標は2030年度30%削減(2019年度比) であり、基準年や削減率の定義が異なるため単純比較は難しいが、小田急や東武の目標は野心的に見える。西武もサステナビリティアクションの中で目標を設定している 。東急グループ(東急不動産HD)はSBT認定を取得している。  

  • 再生可能エネルギー: 京急が鉄道全線で100%再エネ化を達成した のに対し、東急も2022年4月から世田谷線を含む全路線で100%再エネ電力での運行を開始している。東武は日光線等の一部エリアで再エネ電力を導入している 。小田急も再エネ導入を進めている 。西武も再エネ導入に取り組んでいる。鉄道事業における再エネ100%化では、京急と東急が先行している状況と言える。  

  • 省エネルギー: 各社とも省エネ車両(VVVF制御車、LED照明等)の導入を進めている。東武の省エネ車両率は88.9%(2022年度)、京急はVVVF制御車100%(2023年度末) である。  

  • TCFD対応: 主要各社はTCFD提言に賛同し、情報開示を進めている。小田急はリスク・機会分析やシナリオ分析を詳細に開示している 。東急グループ(東急不動産HD)もTCFDに準拠した開示を行っている 。阪急阪神 や近鉄 など他の大手私鉄も同様の開示を行っており、鉄道・不動産業界における標準的な対応となりつつある。京急も詳細な分析を開示している 。  

資源循環

  • 廃棄物・リサイクル: 東武は廃棄物リサイクル率約70%(2022年度)という実績を開示している 。小田急は廃棄物排出量の原単位削減を目標としている 。各社とも食品ロス削減やプラスチック削減に取り組んでいるが、グループ全体での統一的な目標設定や実績開示の度合いには差が見られる。京急の衣類回収 や廃油リサイクル は特徴的な取り組みである。  

  • 水資源: 小田急は水使用量(取水量)の原単位削減を目標に掲げている 。他の競合他社における水資源管理に関する目標設定や詳細な実績開示は、気候変動分野ほど進んでいない可能性がある。  

生物多様性

  • 各社とも沿線開発や事業活動における環境配慮、緑化推進、保全活動などに取り組んでいる。東武は社有林保全活動や国立公園パートナーシップを実施している 。小田急はTNFD提言に基づく情報開示を進めている 。京急の「みうらの森林」プロジェクト は、大規模な自社保有林を活用した独自の取り組みとして位置づけられる。TNFDへの対応は、小田急が先行している状況である。  

パフォーマンス・ベンチマーキング

以下に、記述形式で主要な競合他社と京急電鉄の環境パフォーマンス指標を比較する。

競合他社 環境パフォーマンス・ベンチマーク(記述形式)

本セクションでは、主要競合他社(東急、小田急、東武、西武)と京急電鉄の環境パフォーマンスを比較するため、いくつかの重要な指標について記述的に比較分析を行う。

  • GHG排出量実績と目標: 各社の最新報告年度におけるScope1+2のGHG排出量実績は、事業規模やエネルギー構成により異なるため単純比較は難しいが、削減目標の比較は重要である。京急は2030年度に30%削減(2019年度比) を目指すのに対し、小田急は50%削減(2013年度比)、東武は約50%削減(2013年度比) を掲げている。基準年は異なるものの、削減率の数値目標としては小田急、東武の方が高く見える。  

  • CDP気候変動スコア: 最新(主に2023年評価、2024年発表)のCDP気候変動スコアを見ると、リーダーシップレベル(AまたはA-)を獲得している企業が目立つ。東急グループ(東急不動産HD)は4年連続でAリスト入り(気候変動/水セキュリティ)。西武は2023年度評価でA-を獲得し、リーダーシップレベルを達成 。小田急も2023年度評価でA-を獲得したと報告されている 。一方で、東武はB- 、相模鉄道(相鉄)はB 、南海電気鉄道はA- 、JR東日本はA- となっている。京急については、CDP評価結果を役員報酬指標に導入し 、スコア向上を目指している段階であり 、現時点でのスコアはこれらのリーダーシップレベル企業より低い可能性がある(過去のスコア例として小田急のCレベル も参考になる)。CDPスコアは、取り組みの包括性、目標設定の野心度、リスク管理、情報開示の透明性などを総合的に評価するため、競合比較において重要な指標となる。  

  • 再生可能エネルギー導入(鉄道): 京急 と東急は全線での100%再エネ化を達成しており、この点では業界をリードしている。他の競合他社も導入を進めているが、全線での達成には至っていない場合が多い(例:東武は一部路線 )。  

  • 資源循環・生物多様性の特徴的取り組み: 資源循環では、京急の衣類回収・リサイクル や廃油リサイクル 、東武のフードロス対策連携 など、各社が独自の取り組みを進めている。生物多様性では、京急の「みうらの森林」、東武の社有林保全 、小田急のTNFD対応 などが特徴として挙げられる。  

比較分析の意義:

この比較分析は、京急電鉄の環境パフォーマンスと戦略が、同業他社と比較してどのレベルにあるかを客観的に把握するために不可欠である。標準化されたCDPスコアや定量的なGHG目標・実績の比較は、相対的な強み(例:鉄道の再エネ化)と弱み(例:CDPスコア、目標の野心度)を明確にし、改善が必要な領域を特定する上で極めて重要となる。また、各社の特徴的な取り組みを比較することで、京急が参考にすべきベストプラクティスや、差別化できる可能性のある領域(例:森林保全、沿岸生態系)を見出す手掛かりとなる。このベンチマーキング情報は、環境スコアリングの基礎データとなるだけでなく、今後の戦略策定やステークホルダーへの説明責任においても重要な役割を果たす。

全体として、京急は鉄道事業の脱炭素化(100%再エネ化)においては競合他社に先行または肩を並べるポジションにある。しかし、CDPスコアやGHG削減目標の野心度においては、一部の競合(特に東急系、西武、小田急)がより高い評価や目標を掲げている状況が見られる。資源循環や生物多様性の分野では、「みうらの森林」のようなユニークな取り組みを持つ一方で、グループ全体としての戦略や目標設定、情報開示の体系性においては、さらなる強化の余地があるかもしれない。

8. 現状の課題と今後の推奨事項

現状評価

これまでの分析に基づき、京急グループの環境パフォーマンスと取り組みの現状を総括する。気候変動対策においては、特に鉄道事業における100%再生可能エネルギー電力への転換達成 は特筆すべき成果であり、Scope2排出量の大幅な削減に貢献している。TCFD提言に基づく情報開示も進められており、リスクと機会の特定・評価が行われている 。資源循環に関しては、衣類回収の実証実験 や廃食用油リサイクル など、先進的な取り組みも見られる。生物多様性分野では、「みうらの森林」プロジェクト が、大規模な社有林を活用したユニークかつ多面的な保全活動として高く評価できる。 一方で、いくつかの課題も浮かび上がっている。CDPスコアは改善途上であり、一部の競合他社が達成しているリーダーシップレベル(A/A-)にはまだ達していない可能性がある 。資源循環や生物多様性に関しては、グループ全体を網羅する統一的な戦略、定量的な目標設定、および包括的な実績データの開示が、気候変動分野に比べてまだ十分ではないように見受けられる。また、Scope3排出量の算定・開示や、物理的リスクに対する適応策の具体化も今後の重要な課題である。  

主要な課題

京急グループが今後、環境パフォーマンスをさらに向上させ、持続可能な企業価値を高めていく上で克服すべき主要な課題は以下の通りである。

  1. CDPスコアの向上とリーダーシップレベル(A/A-)の達成: 競合他社の多くがリーダーシップレベルを獲得する中、スコア向上が急務である。これは情報開示の質・量、目標設定の野心度、リスク管理体制、具体的な削減・保全活動の成果などを総合的に高める必要があることを意味する 。  

  2. グループ全体での資源循環戦略の強化と定量目標の設定・開示: 廃棄物総排出量の削減目標(例:原単位、総量)、リサイクル率向上目標、水使用量削減目標などをグループ全体で設定し、その進捗状況を定量的に開示する体制の構築。

  3. 生物多様性配慮の事業活動全体への統合: 「みうらの森林」等の特定プロジェクトに加え、鉄道運営(例:線路管理)、不動産開発(例:計画・設計・施工・管理)、レジャー施設運営といった日常的な事業活動プロセス全体に、生物多様性への配慮(影響評価、緩和策、保全措置)を体系的に組み込む必要性。TNFD等のフレームワーク活用検討も含まれる。

  4. 物理的リスクに対する定量的評価の深化と適応策の具体化・投資計画: TCFD分析で特定された物理的リスク(特に浸水、高潮等)について、より詳細な影響評価(財務影響含む)を行い、具体的な適応策(インフラ強靭化等)とその実施に向けた投資計画を策定・開示する必要性 。  

  5. Scope3排出量の算定・開示と削減目標設定: サプライチェーン全体での排出量(Scope3)の算定範囲を拡大し、信頼性の高いデータを算定・開示するとともに、削減目標を設定し、サプライヤーとの連携強化を図る必要性 。  

  6. グループ会社間での環境取り組みの連携強化とシナジー創出: 多岐にわたる事業(鉄道、不動産、レジャー、流通等)を持つ強みを活かし、環境面での連携(例:TODにおけるエネルギー最適化、資源循環プラットフォーム構築)を強化し、グループ全体としての価値創造に繋げる戦略の具体化。

推奨事項

上記の課題を踏まえ、京急グループが今後取り組むべき具体的な推奨事項を以下に示す。

  1. 気候変動:

    • 鉄道事業における100%再生可能エネルギー化達成という先進性を、IR・広報活動を通じて積極的に発信し、ESG評価機関や投資家からの評価向上に繋げる。

    • Scope3排出量の算定・開示を加速させ、可能な範囲から削減目標を設定し、SBTイニシアチブによる認定取得を目指す。

    • TCFD分析で特定された重要な物理的リスクに対し、具体的なインフラ強靭化計画(対策内容、実施時期、想定投資額等)を策定し、可能な範囲で開示することで、事業のレジリエンスをステークホルダーに示す。

  2. 資源循環:

    • グループ共通の資源循環に関する中期目標(例:廃棄物排出量原単位のX%削減、最終処分率Y%以下、水使用量原単位Z%削減など)を設定し、統合報告書等でコミットメントとして開示する。

    • 衣類回収・リサイクル実証実験 や食品残渣リサイクル 等のパイロットプロジェクトの成果(回収量、リサイクル率、CO2削減効果、経済性等)を定量的に評価し、その結果に基づき、対象エリアや品目の拡大、本格的な事業化を検討する。  

    • サプライヤーエンゲージメントを強化し、調達段階からの環境負荷低減(例:再生材利用率の高い製品の優先調達、サプライヤーへの環境データ提供要請)を推進する。

  3. 生物多様性:

    • 「みうらの森林」プロジェクト で得られた知見やパートナーシップを活かし、鉄道沿線の緑地管理や不動産開発プロジェクトにおける生物多様性配慮ガイドラインを策定・導入する。  

    • TNFDフレームワークの導入を検討し、事業活動と自然資本との関係性(依存と影響)を評価し、リスクと機会を特定・開示するプロセスを開始する。

    • ブルーカーボン や沿岸生態系の保全活動について、地域連携を強化し、その活動内容と成果を積極的に情報発信する。  

  4. 情報開示とエンゲージメント:

    • 統合報告書やサステナビリティ関連ウェブサイトにおいて、環境関連の定量的なデータ(特に資源循環、生物多様性に関する目標・実績)の開示範囲と粒度を拡充する。グラフや図などを効果的に用い、経年変化や目標達成度を分かりやすく示す。

    • 第三者検証の対象範囲を、将来的にはScope3排出量やその他の重要な環境データ(水、廃棄物等)にも拡大することを検討する。

    • 投資家、地域社会、顧客、従業員といった多様なステークホルダーとの対話(説明会、意見交換会、アンケート等)を強化し、環境への取り組みに対する理解促進とフィードバック収集に努める。

これらの推奨事項を実行に移すことにより、京急グループは環境パフォーマンスを一層向上させ、リスクへの対応力を強化し、新たな事業機会を捉え、持続的な企業価値の向上を実現することが期待される。

9. 結論

主要な分析結果の要約

本報告書では、京浜急行電鉄株式会社(京急グループ)の環境への取り組みとパフォーマンスを、「気候変動」「資源循環」「生物多様性」の3分野を中心に包括的に分析した。 気候変動対策においては、2050年カーボンニュートラル、2030年30%削減(2019年度比)という明確な目標を掲げ、特に鉄道事業における100%再生可能エネルギー電力への転換達成は、業界内でも先進的な成果である 。TCFD提言に基づくリスク・機会分析も進められており、気候変動への戦略的な対応が進展している 。また、GHG排出量データに対する第三者検証の導入は、情報開示の信頼性向上に寄与している 。 資源循環分野では、プラスチック削減、食品ロス対策、廃食用油のSAF化協力 、衣類回収・リサイクルの実証実験 など、多岐にわたる個別施策が展開されている。 生物多様性分野では、三浦半島に保有する広大な社有林を活用した「みうらの森林」プロジェクト が、多様なパートナーとの連携のもとで進められており、独自の価値を持つ保全活動となっている。 一方で、競合他社比較においては、CDPスコアが改善途上であること 、資源循環や生物多様性に関するグループ全体での統一的な戦略・目標設定・情報開示の体系化には、まだ強化の余地があることが示唆された。また、Scope3排出量の把握と削減、気候変動の物理的リスクへの具体的な適応策の策定・投資が今後の重要課題として挙げられる。  

総括と将来展望

京急グループは、首都圏における重要な交通インフラを担い、沿線地域に根差した不動産・レジャー・流通事業を展開するという、社会的に大きな役割と影響力を持っている。この強固な事業基盤と地域社会との密接な関係性は、環境課題への取り組みにおいても大きなポテンシャルとなる。鉄道の脱炭素化におけるリーダーシップを発揮しつつ、今後は資源循環や生物多様性の分野においても、グループ全体の戦略をより明確化し、定量的な目標設定と透明性の高い情報開示を進めることが期待される。特に、鉄道、不動産、レジャーといった事業間のシナジーを活かした、統合的な環境価値創造(例:サステナブルTOD、地域循環プラットフォーム、エコーツーリズム連携)は、京急グループならではの競争優位性を築く鍵となりうる。 本報告書で特定された課題に取り組み、推奨事項を実行に移すことで、京急グループは環境リスクへの耐性を高め、新たな成長機会を獲得し、株主、顧客、地域社会、従業員といった全てのステークホルダーからの信頼を一層深め、持続的な企業価値向上を実現できるものと確信する。本分析が、同社の今後の環境戦略推進と、それを通じた豊かな社会の実現に貢献できれば幸いである。

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