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NECキャピタルソリューション株式会社の環境イニシアチブとパフォーマンスに関する包括的分析

更新日:2025年4月20日
業種:金融・保険業(7777)

1. 序論

本報告書は、NECキャピタルソリューション株式会社(以下、同社)の環境イニシアチブとパフォーマンス、特に「気候変動」「資源循環」「生物多様性」の3分野に焦点を当てた包括的な分析を提供することを目的とする。金融・リース業界において、環境・社会・ガバナンス(ESG)要素の重要性は急速に高まっており、企業の持続可能性と長期的な価値創造能力を評価する上で不可欠な要素となっている。本報告書は、同社の環境への取り組みを詳細に評価し、環境スコアリングに必要な基礎情報を収集・整理することを目指すものである。

同社は、経営戦略そのものが自社のサステナビリティに直結する「CSV(Creating Shared Value=共通価値創造)経営」の実践を掲げている。これは、事業活動を通じて社会価値の向上と経済価値の創出を両立させ、持続的な成長を目指すという考え方である。このCSV経営において、環境課題への取り組みは中核的な要素と位置づけられている。同社はグループビジョンとして「次世代循環型社会をリードするSolution Company」を掲げており、その実現に向けて環境課題への積極的な対応が不可欠であると認識している。

本分析は、同社の環境パフォーマンスの現状を多角的に評価し、業界内での立ち位置を明確にするとともに、将来の戦略的方向性に関する重要な示唆を提供することを目的とする。具体的には、各重点分野における具体的な取り組み、それに伴うリスクと機会、業界の先進事例との比較、現状の課題と推奨される行動、そして競合他社との比較ベンチマーキングを通じて、同社の環境経営の実態を深く掘り下げていく。

2. NECキャピタルソリューションの環境への取り組み

同社は、CSV経営とグループビジョンに基づき、環境課題に対して多岐にわたる取り組みを進めている。特に、気候変動への対応、資源循環の推進、生物多様性の保全を重点分野と位置づけ、具体的な目標設定と活動を展開している。

2.1. 気候変動への対応

気候変動問題は、同社にとって喫緊の経営課題であると同時に、新たな事業機会をもたらすものと認識されている。同社は、GHG排出量削減目標の設定、TCFD提言に沿った情報開示、再生可能エネルギー関連事業の推進などを通じて、脱炭素社会への移行に貢献することを目指している。

GHG排出削減目標(Scope1, 2, 3)と実績

同社は、自社の事業活動に伴う温室効果ガス(GHG)排出量削減に向けて、明確な中長期目標を設定している。環境中長期目標として、2041年3月期までに海外子会社を含む連結ベースでのScope1およびScope2排出量の「実質ゼロ」達成を掲げている 。これは、パリ協定の目標達成に向けた国際的な潮流に沿った野心的な目標設定である。  

この長期目標達成に向けたマイルストーンとして、中期計画2025においては、Scope1+2排出量(同社および子会社のリサ・パートナーズ合算)を、2026年3月期までに2023年3月期実績比で20%削減、さらに2031年3月期までには同50%削減するという具体的な非財務目標を設定している 。  

実績面では、着実な進捗が見られる。2023年3月期のScope1+2排出量は157 t-CO2であったのに対し、2024年3月期は137 t-CO2となり、目標であった前年度比13%削減を達成した 。この削減達成の背景には、具体的な施策の検討・推進があると考えられる。例えば、社用車の電気自動車(EV)への転換検討、支店オフィスのZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化検討、再生可能エネルギー由来電力の導入拡大、カーボンクレジットや非化石証書等の活用検討などが挙げられる 。  

一方で、サプライチェーン全体での排出量を示すScope3については、その算定と管理が大きな課題となっている。同社はScope3排出量の把握を一段高いレベルで進めるため、算定の精緻化に取り組んでいる。2023年3月期における同社グループのScope3排出量は、613,439 t-CO2(第三者検証済み、ただしカテゴリー13の51,859 t-CO2は除く)と報告されており、これは既存の公表値(492,018 t-CO2)から大幅に増加している 。この増加は、主にこれまで開示されていなかったカテゴリー13(下流リース資産)の排出量算出を開始したことによるものである。  

この事実は、同社のGHG排出構造においてScope3が圧倒的な割合を占めていることを明確に示している。Scope1+2の排出量(2024年3月期実績137 t-CO2)と比較して、Scope3排出量(2023年3月期実績約61万 t-CO2)がいかに大きいかは明白である。同社のコアビジネスがリース及びファイナンスであることを考慮すれば、これは当然の結果と言える。金融機関の直接的な排出量は一般的に少ないが、その投融資活動やリース資産を通じて、経済全体の排出量に大きな影響を与える。したがって、同社が真の脱炭素化を達成するためには、Scope1+2のネットゼロ目標達成に加えて、Scope3排出量、特に影響の大きいリース資産(カテゴリー13)や投融資先(カテゴリー15)からの排出量に対する具体的な削減目標の設定と、それを達成するための戦略策定が今後の極めて重要な焦点となる。現在進められている算定精緻化への取り組み は評価できるものの、その先の目標設定と行動計画が、同社の気候変動対応の信頼性を左右することになるだろう。

TCFD提言に基づく情報開示と戦略

同社は、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言の重要性を認識し、2022年9月にTCFDへの賛同を表明、TCFDコンソーシアムへも参画した 。これに基づき、TCFDが推奨する4つの開示項目(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)に沿った情報開示を積極的に進めている 。  

  • ガバナンス: 気候変動対応を含むサステナビリティに関する重要事項は、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」において審議・検討される体制が確立されている 。この委員会では、気候変動対応方針の策定・見直し、リスク対応を含む年間施策案の策定、実行・モニタリング・評価・検証(PDCA)が行われる。委員会での議論結果は経営会議で審議され、取締役会へ報告されるとともに、気候変動関連リスクによる重大な影響が想定される場合など、特に重要な事項については取締役会で決議され、事業計画に適宜反映される仕組みとなっている 。  

  • 戦略: 同社は、気候変動が事業に与える影響を評価するため、全社的な観点からシナリオ分析を実施している 。具体的には、世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して4℃および1.5℃に抑制するシナリオを参考に、2030年および2050年を時間軸として、移行リスクと物理的リスクの両面から定性的・定量的な考察を行った 。分析の結果、リスクも存在するものの、全体としては事業機会が増大する可能性が高いとの結論に至り、その結果を事業戦略へ反映させるとともに、関連するKPI(重要業績評価指標)の設定を進めている 。具体的な事業機会追求の例として、北米における蓄電池向けファイナンスへの取り組み や、国内におけるコーポレートPPA(電力購入契約)事業への参画 などが挙げられる。詳細なシナリオ分析結果については、同社ウェブサイトで公開されている。  

  • リスク管理: 気候変動関連リスクは経営上の重要なリスクとして認識され、サステナビリティ委員会において統合的に管理されている 。マクロトレンドや外部動向調査に基づき、中長期的な視点も含めた気候変動対応方針の策定・見直しが行われ、リスク対応を含む年間施策案の策定から実行、モニタリング、評価、検証に至るPDCAサイクルが運用されている 。さらに、リスク管理の定量化に向けた取り組みとして、与信関連費用における気候変動リスクの影響額試算なども実施されている 。  

  • 指標と目標: 上述のGHG排出削減目標(Scope1+2)に加え、再生可能エネルギー発電容量目標や、エコリース・エコファイナンスの成約高目標などを設定し、その進捗状況を開示している 。これらの指標と目標は、気候変動対応戦略の実行状況を測る上で重要な役割を果たしている。  

再生可能エネルギー関連の取り組み

同社は、脱炭素社会の実現に向けて、再生可能エネルギーの普及拡大に貢献することを重要な戦略の一つと位置づけている。中期計画2025の非財務目標の一つとして、「再生可能エネルギー発電容量(当社グループ保有の発電所)」を設定し、2026年3月期までに100MW(メガワット)を達成する目標を掲げている 。  

実績としては、2023年3月期の43.5MWから、2024年3月期には59MWへと着実に増加しており、目標達成に向けた進捗が見られる 。ただし、2024年3月期の実績は目標に対して僅かに未達であり、目標達成には更なる取り組みの加速が必要である。  

保有発電所の拡大に加え、同社は金融・リース事業者としての強みを活かし、顧客企業の再生可能エネルギー導入を金融面から支援する「エコリース・エコファイナンス」を積極的に展開している 。これは、顧客の省エネ設備や再エネ設備導入等に対して、リースや融資を提供するものであり、2024年3月期のエコリース・エコファイナンス成約高は1,792億円に達し、目標の1,600億円を上回る成果を上げた 。  

さらに、国内外で再生可能エネルギー普及に資する具体的な事業展開も進めている。例えば、今後市場拡大が見込まれる北米での蓄電池向けファイナンスへの取り組みを通じて、再生可能エネルギーの安定供給に貢献することを目指している。国内においても、太陽光発電に関するオフサイトおよびオンサイトのコーポレートPPA事業に参画するなど、多様な形態で再生可能エネルギーの導入を支援している 。  

CDP評価とその他の外部評価

同社の気候変動への取り組みは、外部評価機関からも高く評価されている。国際的な非政府組織であるCDP(旧Carbon Disclosure Project)が実施する気候変動質問書への回答において、同社は2023年および2024年の2年連続で、リーダーシップレベルを示す「A-」評価を獲得した 。これは8段階評価(A, A-, B, B-, C, C-, D, D-)の中で最高評価「A」に次ぐ、上から2番目の評価であり、気候変動に対する同社の先進的な取り組みと情報開示の質の高さが認められたことを意味する。この高評価の背景には、TCFD提言に基づく体制整備、シナリオ分析の実施と開示、カーボンニュートラル宣言を含む意欲的な目標設定、そしてエコリース・エコファイナンスを通じた事業貢献などが総合的に評価されたものと考えられる 。  

また、株式会社日本政策投資銀行(DBJ)が実施する「DBJ環境格付」においても、同社は19年連続(2023年3月時点)で最高ランクである「環境への配慮に対する取り組みが特に先進的」との格付を取得している 。DBJからは特に、以下の点が評価されている 。  

  • 代表取締役社長をトップとする会議体(サステナビリティ委員会等)における環境目標進捗管理や、環境経営浸透のための部署別目標設定など、堅実な環境経営体制。

  • CSV経営を具現化する環境経営中長期計画「CSV by ECO」を策定し、エコビジネスの拡大を通じて顧客や社会の「環境正価(成果)」向上に注力している点。

  • エコリース・エコファイナンス等の事業を通じた環境貢献教育やCSV経営の浸透活動を通じた社内啓発。

  • 気候変動やエネルギー問題等の社会課題に関する顧客ニーズを把握し、資本参加やPFI等で培ったノウハウ活用を通じて、顧客が直面する社会課題解決に積極的に取り組んでいる点。

2022年のTCFD提言への賛同表明から短期間で、CDPにおいてA-という高い評価を連続して獲得したことは注目に値する 。これは、同社が気候変動対応に関して迅速かつ効果的な体制を構築・実行できる能力を有していることを示唆している。この背景には、複数の要因が考えられる。一つは、親会社である日本電気株式会社(NEC)がCDP気候変動Aリスト企業であり、長年にわたり先進的な環境経営を推進してきた実績があることである。NECグループ内での知見共有や連携が、同社の取り組み加速に寄与した可能性は否定できない 。もう一つは、同社自身がDBJ環境格付で19年連続最高ランクを取得してきた実績からもわかるように、以前から強固な環境経営の基盤を有していたことである 。この既存の基盤の上に、TCFDやCDPといった新たなフレームワークへの対応を効果的に積み上げることができたと考えられる。したがって、同社の近年の気候変動分野での成功は、内部的な経営基盤と、外部(親会社等)からの影響や連携の組み合わせによってもたらされた可能性が高い。  

2.2. 資源循環の推進

同社は、グループビジョン「次世代循環型社会をリードするSolution Company」の実現に向け、資源循環の推進を重要な経営課題と位置づけている。リース事業の特性を活かした3R(リデュース、リユース、リサイクル)の推進、ICT機器のライフサイクルマネジメント、廃棄物の適正管理などを通じて、サーキュラーエコノミーへの貢献を目指している。

リース事業を通じた3R(リデュース、リユース、リサイクル)の推進

リース事業は、製品の所有と利用を分離し、製品ライフサイクル全体での資源効率を高める可能性を持つことから、本質的に資源循環型のビジネスモデルであると認識されている 。リース契約が終了した設備は原則としてリース会社に返却され、そこで適切な3R処理が行われるため、廃棄物の削減と資源の有効活用に貢献する。同社は、顧客に対して設備のリース・レンタルへの切り替えを積極的に推奨することで、循環型社会の実現に貢献しようとしている。  

同社の事業活動から排出される産業廃棄物のうち、実に99%がリース満了品で占められている 。しかし、これらのリース満了品のうち、毎年98%から99%という極めて高い割合でリサイクルが実施されている 。また、リース満了品以外の、自社の事業活動から直接排出される廃棄物についても、50%以上がリサイクルされている 。  

資源循環の取り組みをさらに強化するため、中期計画2025においては、「ICTビジネス拡大に伴う循環利用の促進」を非財務目標の一つとして設定している 。具体的なKPIとして、リース満了品の3カ年累計処理台数を掲げており、2026年3月期までに70万台を処理するという目標を設定している 。2024年3月期時点での3カ年累計実績は25万台であり、目標達成に向けて着実に処理を進めている状況である 。  

この98-99%という高いリサイクル率は、業界内でも先進的な水準にあると考えられる。しかし、この成果は主に最終段階である「リサイクル」の効率性を示している。この高いリサイクル率の達成には、特定のパートナー企業の存在が大きいことがうかがえる。具体的には、同社の100%子会社であるキャピテック&リブートテクノロジーサービス株式会社や、親会社であるNECグループが構築している3Rシステムなどが、リース満了品の処理において重要な役割を担っている 。このように特定のパートナーに依存する構造は、将来的なリスク要因ともなり得る。例えば、リース取扱量の増加(中期目標:3年で70万台処理)に伴う処理能力の限界、パートナー企業におけるコスト変動やコンプライアンス問題の発生などが考えられる。したがって、現在の高いリサイクル率を維持・向上させていくためには、既存パートナーとの連携強化に加え、処理体制の更なる強化や、処理委託先の多様化なども視野に入れた、長期的な視点でのリスク管理と戦略策定が求められる可能性がある。  

ICTライフサイクルマネジメントと再生PCプログラム

同社のリース事業において、情報通信技術(ICT)関連機器は重要な位置を占めており、年間の契約実行高の約7割がICT関連となっている。企業で利用されるパソコン(PC)などは一般的に5年程度のサイクルで入れ替えられるため、リース満了に伴い大量のICT機器が返却される。

同社は、これらのICT機器のライフサイクル全体を管理・支援するサービスとして、「PITサービス(LCMサービス)」を提供している 。これは、機器の調達・導入支援から、セキュリティ対策、契約・資産管理、運用保守、そして最終的なデータ消去・廃棄に至るまでを包括的にサポートするものであり、顧客企業のIT部門の負担軽減と効率化に貢献する。  

さらに、資源循環をより高いレベルで実現するための新たな取り組みとして、2024年10月には、NECパーソナルコンピュータ株式会社との連携による「メーカー保証付き再生PC」プログラムを開始した 。これは、同社に返却されたリース・レンタルアップPCの中から、再生利用可能な比較的高性能な機種を選別し、NECパーソナルコンピュータがデータ消去、クリーニング、部品交換(バッテリー等)などの再生処理(リフレッシュ)を施し、同社がメーカー保証(6ヶ月)と物損保証を付けて販売するというものである 。  

この再生PCプログラムは、単なる廃棄物削減や資源リサイクルにとどまらず、複数の目的を持っている 。第一に、環境負荷の低減である。PCの新規製造には多くのエネルギーと資源が必要とされるが、再生利用によりこれを削減できる。ノートPC1台あたり平均73kg、デスクトップPC1台あたり平均101kgのCO2排出削減効果があると試算されている 。第二に、サーキュラーエコノミーへの貢献である。従来の「取る・作る・捨てる」リニアエコノミーから脱却し、製品を可能な限り長く使い、資源を循環させるサーキュラーエコノミーへの移行を具体化する取り組みである。第三に、顧客への新たな価値提供である。高品質な再生PCをメーカー保証付きで提供することで、コストを抑えつつ信頼性の高いIT機器を導入したいという顧客ニーズに応える。シンクライアント端末や保守代替機など、多様な用途での活用が期待されている 。  

この再生PCプログラムの開始は、同社の資源循環戦略における重要な一歩と評価できる。従来のリサイクル中心の取り組み から、製品価値をより高く維持するリユースやリファービッシュメントへと、資源ヒエラルキーの上位に位置する取り組みへと軸足を移す動きである。これは、製品寿命の延長と資源効率の向上に直結し、同時に保証付き中古品販売という形で新たな経済的価値も創出する。製造元であるNECパーソナルコンピュータとの連携により、品質と信頼性が担保されている点も強みである。この取り組みは、同社が目指す「次世代循環型社会」 の実現に向けた、具体的なサービスモデル構築の好例と言えるだろう。今後は、このプログラムの対象機種拡大や販売量増加、さらにはCO2削減認証の取得なども検討されており 、更なる発展が期待される。  

廃棄物管理とリサイクル実績

同社は、廃棄物の適正な管理と処理に関しても、法令遵守を徹底している。廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)をはじめとする関連法規制を遵守するための社内体制を整備し、環境マネジメントシステムISO14001の枠組みの中で運用している 。具体的には、産業廃棄物の保管基準遵守、委託処理業者との適正な契約締結、マニフェスト(産業廃棄物管理票)による管理、委託業者の定期的な現地確認などが実施されている。また、フロン排出抑制法に基づき、対象機器の点検記録管理や適正処理の依頼・確認も行われている。  

環境会計においては、廃棄物削減やリサイクルによる環境保全効果も評価の対象となっている。リース資産の転用(リユース)やグリーン製品の購入なども、環境保全効果として認識されている。

実績としては、前述の通り、リース満了品の98~99%という高いリサイクル率を維持していることが挙げられる 。これは、同社の資源循環への取り組みが具体的な成果に結びついていることを示している。  

2.3. 生物多様性の保全

同社は、気候変動や資源循環と並び、生物多様性の保全も重要な環境課題の一つとして認識している。ただし、現時点での取り組みは、気候変動や資源循環と比較すると、やや限定的である側面も見られる。

環境方針と関連活動(わくわく子どもの池プロジェクト等)

同社の環境方針には、「自然との共生実現に向けて、資源循環可能な社会・環境作りを積極的に推進します」との一文が含まれており、生物多様性への配慮が基本的な考え方として示されている 。  

具体的な活動として最も中心的なものが、2007年から継続している学校ビオトープ教育支援プログラム「わくわく子どもの池プロジェクト」である 。これは、認定NPO法人アサザ基金との協働により、小学校などにビオトープ(生物が生息・生育する空間)を造成し、子どもたちが自然と触れ合い、生物多様性について学ぶ機会を提供する社会貢献活動である。都市空間における生物多様性の回復や、次世代を担う子どもたちの環境意識向上を目的としている。中期計画2025においては、このプロジェクトを「自然資本を意識した社会貢献活動の推進」に関する非財務目標の具体的な施策と位置づけ、3カ年累計で延べ10校の支援を目標としている 。2024年3月期時点での3カ年累計実績は3校であり、目標達成に向けて活動を継続している 。  

過去には、DBJ環境格付の評価において、同社が提供するエコリース・エコファイナンスの認定基準を見直す際に、生物多様性保全への貢献という観点を導入したことが高く評価された実績もある。これは、事業活動と生物多様性保全を結びつけようとする意識があったことを示唆している。

TNFDへの対応状況(NECグループの取り組みを含む)

自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)は、企業が自然資本および生物多様性に関するリスクと機会を評価し、情報開示することを求める国際的なイニシアチブであり、近年その重要性が急速に高まっている。

しかしながら、NECキャピタルソリューションが独自にTNFD提言に対応した情報開示を行っているか、あるいはTNFDフォーラム等に参画しているかについての具体的な情報は、提供された資料からは確認することができなかった 。  

一方で、親会社であるNECは、TNFDに対して非常に積極的に関与している。NECはTNFDフォーラムに早期から参画し、データカタリストのメンバーとして枠組み開発にも貢献してきた。さらに、TNFD提言に基づいた「NEC TNFDレポート」を発行するなど、先進的な情報開示を行っている。また、NECグループ全体としても、環境方針の中で生物多様性保全への貢献を明記し、事業所における絶滅危惧種の保全活動(オオモノサシトンボ S33, S34)や、自然共生サイト認定の取得(我孫子事業場 S33)、「NEC田んぼ作りプロジェクト」 など、多様な取り組みを進めている。

気候変動対応(TCFD賛同、CDP A-評価)や資源循環(高いリサイクル率、再生PCプログラム)における同社の先進的な取り組みと比較すると、生物多様性分野における取り組みは、現時点では主に社会貢献活動である「わくわく子どもの池プロジェクト」が中心となっているように見受けられる。事業活動と生物多様性の関連性、すなわち自社の事業が自然資本にどのように依存し、どのような影響を与えているのか、そしてそこから生じるリスクと機会は何か、といったTNFDフレームワークが求めるような分析や情報開示は、まだ限定的であると言わざるを得ない。

親会社であるNECがTNFDに関して先進的な取り組みを進めていること、そして金融業界全体でTNFDへの対応が急速に進んでいること を踏まえると、今後はNECキャピタルソリューションにおいても、事業ポートフォリオにおける自然関連リスク・機会の評価(例えばENCOREのようなツールの活用)や、TNFDの枠組みに沿った情報開示の強化が、投資家やその他のステークホルダーから期待される、あるいは求められる可能性が高いと考えられる。生物多様性への取り組みを社会貢献の領域にとどめず、事業戦略やリスク管理に統合していくことが、今後の重要な課題となるだろう。

3. 環境関連のリスクと機会の分析

同社は、リース・ファイナンス事業者として、環境問題、特に気候変動、資源循環、生物多様性に関連する様々なリスクに晒されていると同時に、これらの課題解決に貢献することによる新たな事業機会も有している。

3.1. 気候変動関連リスク(移行リスク、物理的リスク)

気候変動は、同社の事業活動に対して「移行リスク」と「物理的リスク」の両面から影響を及ぼす可能性がある。同社はTCFD提言に基づくシナリオ分析を通じて、これらのリスクを特定し、評価を進めている 。  

  • 移行リスク: 脱炭素社会への移行に伴う政策、法規制、技術、市場、評判の変化に関連するリスクである。

    • 政策・法規制リスク: 炭素税の導入や排出量取引制度の強化、省エネ基準の厳格化などにより、事業運営コストが増加する可能性がある。特に、同社がファイナンスを提供している高排出産業(化石燃料関連、特定の製造業など)に対する規制強化は、貸倒リスクや資産価値の低下につながる可能性がある。NEC親会社の試算では、カーボンプライシング導入によるコスト増が中期的に数十億円規模になる可能性も指摘されている。

    • 技術リスク: 低炭素技術や再生可能エネルギー技術の急速な進展により、既存の化石燃料を利用する設備や効率の低い設備の価値が相対的に低下し、リース資産の陳腐化・座礁資産化リスクが高まる。

    • 市場リスク: 環境意識の高い顧客や投資家は、低炭素・省エネ性能の高い製品やサービス、あるいは環境経営に積極的に取り組む企業を志向する。これに対応できない場合、市場シェアの喪失や資金調達コストの上昇につながる可能性がある。低炭素建物への需要に対応できない場合の収益逸失リスクも認識されている 。  

    • 評判リスク: 気候変動対策への取り組みが不十分であると認識された場合、企業の評判やブランドイメージが損なわれ、顧客離れや従業員の士気低下、投資家からの評価低下(ESG投資の潮流)につながる可能性がある。

  • 物理的リスク: 気候変動の進行に伴う異常気象(台風、豪雨、猛暑など)の頻発化・激甚化や、海面上昇などの長期的な変化によって引き起こされる物理的な損害や影響に関連するリスクである。

    • 急性リスク: 台風や洪水などの自然災害により、同社が保有またはファイナンスしている不動産、設備、再生可能エネルギー発電所などが物理的な損害を受けるリスクがある 。また、サプライチェーンの寸断や、災害対応による事業運営の一時的な中断リスクも考えられる 。航空機リースにおいては、異常気象による運航への影響もリスクとなり得る 。  

    • 慢性リスク: 平均気温の上昇や降水パターンの変化などが、農業、不動産価値、水資源利用などに長期的な影響を与え、関連する投融資先の事業継続性や返済能力に影響を及ぼす可能性がある。

これらのリスクに対し、同社は省エネルギー推進、再生可能エネルギー由来電力への切り替え、低炭素技術への対応(新型航空機導入支援等)、BCP(事業継続計画)策定、自然災害対応能力向上、自社発電所の管理体制強化などの対応策を検討・実施している 。  

特に注目すべきは、同社がリース・ファイナンス事業者として、気候変動の移行リスクと機会の双方に直接的に晒されているという点である。同社のポートフォリオには、脱炭素化の過程で価値が減少する可能性のある高排出セクター向けの既存資産(リース物件や融資)が含まれており、これらは座礁資産化する移行リスクを抱えている。一方で、脱炭素社会への移行には莫大な投資が必要であり、再生可能エネルギー設備、省エネルギー技術、電気自動車(EV)、蓄電池、水素関連技術、サーキュラーエコノミー関連技術など、新たな市場が急速に拡大している 。これらの分野へのファイナンス需要は、同社にとって極めて大きな事業機会となる 。したがって、既存ポートフォリオにおけるリスクを適切に管理しつつ、成長分野であるグリーンファイナンス市場をいかに取り込んでいくか、そのためのポートフォリオ移行戦略とリスク管理能力が、同社の将来の企業価値を左右する決定的な要因となるだろう。  

3.2. 資源循環・生物多様性に関するリスク

資源循環と生物多様性に関しても、同社の事業活動にはリスクが存在する。

  • 資源循環リスク:

    • 規制リスク: 廃棄物処理法や各種リサイクル法などの環境関連法規制は、今後さらに強化される可能性がある。これに対応できない場合、罰則や事業停止のリスク、対応コストの増加につながる。特に、プラスチック資源循環促進法のような新たな規制への対応が求められる。

    • 技術・市場リスク: リサイクル技術の進展や再生材市場の変動により、既存の処理方法やビジネスモデルが陳腐化するリスクがある。

    • 処理・管理リスク: 同社が扱うリース満了品、特にICT機器の量は増大傾向にある。これらの適正な処理・管理にはコストがかかり、処理能力が限界に達するリスクや、委託先での不適切処理が発生するリスクも存在する。

    • 評判リスク: リース満了品の不適切な処理や廃棄が発覚した場合、企業の評判を著しく損なう可能性がある。

  • 生物多様性リスク:

    • 物理的リスク(依存リスク): 同社の事業活動や投融資先の事業活動が、生態系サービス(清浄な水、肥沃な土壌、花粉媒介など)に依存している場合、生物多様性の損失はそのサービスの低下を通じて事業継続に影響を与える可能性がある。サプライチェーン全体での自然資本への依存度評価が重要となる。

    • 移行リスク(影響リスク): 同社自身または投融資先の事業活動(特に土地利用を伴う不動産開発、インフラ整備、資源開発など)が、生息地の破壊や汚染などを通じて生物多様性に負の影響を与える場合、以下のようなリスクが生じる可能性がある。

      • 規制リスク: 自然保護に関する法規制の強化(例:保護地域の拡大、環境影響評価の厳格化)により、事業計画の遅延や中止、対策コストの増加につながるリスク。

      • 市場・評判リスク: 生物多様性への配慮を欠く事業活動は、NGOや地域社会からの批判、消費者や投資家からの評価低下を招き、ブランドイメージの毀損や資金調達難につながるリスク。TNFD等の情報開示要求への対応遅れもリスクとなる。

      • 訴訟リスク: 環境破壊に対する訴訟リスク。

これらのリスクに対応するためには、資源循環においては3Rの徹底と適正処理体制の強化、生物多様性においては事業活動が自然資本に与える影響の評価(TNFDのLEAPアプローチ等)と、負の影響を回避・低減・代償するための措置、そしてポジティブな貢献を目指す取り組みが必要となる。

3.3. 環境課題への対応に伴う事業機会

環境課題への対応は、リスクであると同時に、新たな事業機会を創出する源泉でもある。同社は、リース・ファイナンスのノウハウを活かし、これらの機会を捉えようとしている。

  • 気候変動関連の機会:

    • 再生可能エネルギー: 太陽光、風力、地熱、バイオマスなどの再生可能エネルギー発電事業への直接投資・運営、および関連設備へのファイナンス(リース、融資)は、今後も大きな成長が見込まれる分野である 。系統安定化に不可欠な蓄電池システムへのファイナンスも重要な機会となる。  

    • 省エネルギー: 工場、ビル、輸送機器などにおける省エネルギー設備・技術導入を支援するエコリース・エコファイナンスは、顧客のコスト削減と環境負荷低減ニーズに応える継続的な事業機会である。

    • クリーン輸送: 電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)などの普及に伴う、車両リース、充電インフラ整備へのファイナンス需要の拡大。

    • その他: コーポレートPPAのアレンジメント 、炭素クレジット創出・取引関連サービス、企業の脱炭素化コンサルティングなど、新たなサービス展開の可能性。  

  • 資源循環関連の機会:

    • サーキュラーエコノミー型ビジネス: 従来の「所有」から「利用」へのシフトを促進するリース・レンタル事業の深化。製品のサービス化(PaaS)、シェアリングエコノミー関連事業への展開。

    • リユース・リファービッシュ: ICT機器を中心としたリース満了品の再生・再販事業(リファービッシュPCプログラム等)の拡大 。対象製品分野の多様化。  

    • 廃棄物管理・リサイクルソリューション: 企業の廃棄物削減や適正処理、リサイクル率向上を支援するサービスの提供。高度なリサイクル技術を持つ企業への投融資。

  • 生物多様性関連の機会:

    • ネイチャーポジティブ・ファイナンス: 生物多様性の保全・回復に貢献する事業(持続可能な農業・林業、生態系を活用した防災・減災(Eco-DRR)、グリーンインフラ開発など)への投融資。

    • 自然関連ソリューション: 生態系モニタリング技術、自然再生技術、持続可能な資源利用技術などを持つ企業へのファイナンスや、関連ソリューションの提供。

    • インパクト投資: 生物多様性向上に具体的な効果をもたらすプロジェクトや企業への投資(ポジティブ・インパクト・ファイナンス等)。

    • コンサルティング: 企業に対するTNFD対応支援や、自然関連リスク評価サービスの提供。

これらの事業機会を捉えるためには、環境技術や市場動向に関する深い知見、リスク評価能力、そして新たなビジネスモデルを構築・実行するイノベーション力が求められる。

4. リース業界における先進事例

NECキャピタルソリューションの取り組みを評価し、今後の方向性を検討する上で、国内外のリース・ファイナンス業界における環境に関する先進的な取り組み(ベストプラクティス)を参照することは有益である。以下に、気候変動、資源循環、生物多様性の各分野における代表的な先進事例を挙げる。

  • 気候変動への対応:

    • SBT(Science Based Targets)認定の取得と野心的な目標設定: 多くのグローバル金融機関やリース会社が、パリ協定の目標(1.5℃)と整合した科学的根拠に基づくGHG排出削減目標(SBT)を設定し、その認定を取得・公表している。Scope1, 2だけでなく、投融資ポートフォリオ(Scope3 カテゴリー15)を含む目標設定が主流となりつつある。

    • Scope3 カテゴリー15(投融資)排出量の算定と削減戦略: PCAF(Partnership for Carbon Accounting Financials)等の手法を用いて投融資先のGHG排出量を算定し、ポートフォリオ全体のカーボンフットプリントを把握。セクター別の削減目標を設定し、高排出セクターへのエンゲージメント(対話)や投融資方針の見直し(ダイベストメントを含む)、グリーンファイナンスの拡大などを通じて削減を進めている。

    • インターナルカーボンプライシング(ICP)の導入: 投融資判断や事業計画策定において、内部的に炭素価格を設定し、気候変動リスク・機会を定量的に評価するICPを導入する企業が増加している。東京センチュリーも重要性の高い投資案件で試行的に導入している。

    • 気候関連投融資方針の明確化: 化石燃料関連事業への新規投融資停止や段階的撤退方針、再生可能エネルギーや低炭素技術への積極的な投融資目標などを具体的に定め、公表している。

    • TCFD提言に基づく高度な情報開示: シナリオ分析に基づく財務影響の定量評価や、具体的な移行計画(Transition Plan)の開示など、より詳細で透明性の高い情報開示が進んでいる。

  • 資源循環の推進:

    • サーキュラーエコノミー戦略の策定とKPI設定: 資源循環を経営戦略の柱と位置づけ、リユース率、リサイクル率、再生材利用率、製品寿命延長率などの具体的なKPIを設定し、進捗を管理・開示している。三菱HCキャピタルは廃プラスチック有効利用率100%という目標を設定している 。  

    • 高度なリユース・リマニュファクチャリング: 単なる中古品販売にとどまらず、分解・洗浄・部品交換・再組立を行い、新品同様の品質保証を付けて再製品化するリマニュファクチャリング事業を強化している。

    • 製品のサービス化(PaaS): 機器や設備を「モノ」として販売・リースするのではなく、その「機能」や「利用価値」をサービスとして提供するビジネスモデル(例:「○○時間利用」契約)を推進し、製品の長寿命化、効率利用、回収・再資源化を促進している。

    • サプライチェーン全体での連携: サプライヤーに対して、製品設計段階からのリサイクル容易性向上や、再生材利用の促進、使用済み製品の回収協力などを求め、バリューチェーン全体での循環性を高めている。

    • デジタル技術の活用: IoTやAIを活用して製品の使用状況や劣化度をモニタリングし、最適なメンテナンスや回収タイミングを判断したり、トレーサビリティを確保したりすることで、資源循環の効率性と信頼性を向上させている。

  • 生物多様性の保全:

    • TNFDへの早期対応とLEAPアプローチの適用: TNFDフレームワークを早期に採用し、自社の事業活動とバリューチェーンにおける自然関連の依存関係、影響、リスク、機会を特定・評価するLEAPアプローチ(Locate, Evaluate, Assess, Prepare) を適用し、その結果を開示している企業が出始めている。日本の大手金融機関(例:SMBCグループ)なども対応を進めている。

    • 自然関連リスク・依存度評価ツールの活用: ENCORE(Exploring Natural Capital Opportunities, Risks and Exposure) などのツールを活用し、事業ポートフォリオがどの生態系サービスに依存し、どの程度のインパクトを与えているかを定量的に評価しようとする動きがある。

    • 生物多様性に関する投融資方針・基準の策定: 特定の生態系(原生林、湿地など)や生物種に悪影響を与える可能性のある事業への投融資を制限・禁止する方針(ネガティブスクリーニング)や、生物多様性保全に貢献する事業を積極的に支援する基準(ポジティブスクリーニング)を導入している。

    • ネイチャーポジティブ貢献へのコミットメント: 生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ」への貢献を目標として掲げ、具体的な行動計画を策定・実行している。

    • 自然資本関連プロジェクトへの直接投資・基金設立: 森林再生、湿地保全、持続可能な農業・漁業など、自然資本の維持・向上に直接貢献するプロジェクトへの投資や、専門ファンドの設立・参加を行う事例がある。

    • ステークホルダーとの協働: NGO、地域社会、研究機関などと連携し、生物多様性保全活動やモニタリング、情報共有などを共同で実施している。

  • 統合的アプローチ:

    • サステナビリティ・リンク・ファイナンス: 環境・社会目標(SPTs: Sustainability Performance Targets)の達成度に応じて金利等の条件が変動するサステナビリティ・リンク・ローン/ボンドを発行し、コミットメントを強化している。

    • 包括的な非財務情報開示: 統合報告書やサステナビリティレポートに加え、ESGデータブック等の形式で、環境・社会・ガバナンスに関する網羅的な定量・定性データを体系的に開示し、透明性と比較可能性を高めている 。  

    • 専門組織・体制の強化: サステナビリティ推進やESG課題対応を専門とする部署を設置し、経営層の関与のもとで全社的な取り組みを推進している。

これらの先進事例は、NECキャピタルソリューションが今後、環境パフォーマンスをさらに向上させていく上で、重要なベンチマークとなるだろう。

5. 現状の課題と将来への提言

これまでの分析を踏まえ、NECキャピタルソリューションが環境パフォーマンスをさらに向上させる上で直面している主要な課題と、それに対する将来への提言を以下に示す。

5.1. NECキャピタルソリューションが直面する環境課題

同社は気候変動対応や資源循環において着実な成果を上げている一方で、更なる進化に向けていくつかの課題に直面している。

  • Scope 3 排出量の算定精度向上と削減目標設定の必要性: 前述の通り、同社のGHG排出量の大部分はScope 3、特にリース資産(カテゴリー13)と投融資先(カテゴリー15)に由来する。現在、算定精度の向上に取り組んでいる段階であり、これらの排出量に対する科学的根拠に基づく具体的な削減目標(SBT認定など)の設定には至っていない。サプライチェーン全体での脱炭素化を実現するためには、この課題への対応が急務である。

  • 生物多様性への取り組みの深化と事業統合: 現在の生物多様性への取り組みは、社会貢献活動である「わくわく子どもの池プロジェクト」 が中心であり、事業活動との直接的な関連性や、リスク・機会の評価(TNFDフレームワーク等に基づく)とその情報開示が限定的である 。気候変動(TCFD)や資源循環(再生PC) と比較して、生物多様性分野の戦略的な取り組みは発展途上にあると言える。親会社NECの先進的な取り組み や、金融業界におけるTNFD対応の潮流 を踏まえると、この分野の強化が求められる。  

  • 再生可能エネルギー目標達成の加速と更なる展開: 保有発電容量の目標(2026年3月期100MW)達成に向けて進捗中だが、2024年3月期実績は59MWと僅かに未達であり、目標達成には取り組みの加速が必要である。また、100MW達成後の更なる目標設定や、多様な再生可能エネルギー源(風力、地熱等)への展開、海外事業との連携強化なども今後の課題となる。

  • サーキュラーエコノミー事業のスケールアップと多様化: 再生PCプログラム は有望な取り組みであるが、これを他のICT機器や、さらに多様な製品分野へと拡大し、事業としてスケールアップさせていく必要がある。リースを起点とした、より高度な循環型ビジネスモデル(リマニュファクチャリング、PaaSなど)の開発も課題である。  

  • 総合的なESG評価の向上: CDP気候変動でA-という高い評価を得ている一方で、SustainalyticsによるESGリスク評価は「Medium Risk」であり、競合のオリックスや東京センチュリー(Low Risk)と比較して相対的にリスクが高いと評価されている 。この評価ギャップの要因を分析し、改善していく必要がある。気候変動以外のESG要素、例えば生物多様性への対応の遅れ、Scope 3管理の課題、あるいは本報告書の範囲外であるガバナンスや社会側面などが影響している可能性が考えられる。  

5.2. 環境パフォーマンス向上のための重点分野と推奨行動

上記の課題を踏まえ、同社が環境パフォーマンスをさらに向上させるために重点的に取り組むべき分野と、具体的な推奨行動を以下に提案する。

  • Scope 3 削減戦略の具体化と実行:

    • PCAF等の国際基準に基づき、リース資産(Cat 13)および投融資先(Cat 15)からの排出量算定の精度をさらに高める。

    • 算定結果に基づき、科学的根拠のあるScope 3削減目標(SBT認定取得を視野に)を設定する。

    • 主要な排出源となっている顧客企業や投融資先に対し、脱炭素化に向けたエンゲージメント(対話、情報提供、協働)を強化する。

    • 低炭素・循環型技術や事業へのファイナンス比率を高める具体的な目標を設定し、ポートフォリオ全体の移行計画(Transition Plan)を策定・開示する。

  • TNFDフレームワークの段階的導入と生物多様性戦略の策定:

    • 親会社NECの知見も活用しつつ、TNFDのLEAPアプローチ 等を用いて、自社の事業活動(特に不動産関連、インフラ関連ファイナンス等)およびバリューチェーンにおける自然関連リスクと機会の特定・評価を開始する。

    • 評価結果に基づき、生物多様性に関する具体的な方針、目標、行動計画を策定し、情報開示を開始・拡充する。

    • 生物多様性への配慮を、新規の投融資案件の審査プロセスや既存ポートフォリオの管理に組み込むことを検討する。

  • 再生可能エネルギー投資の加速と多様化:

    • 保有発電容量100MW目標の達成に向け、M&Aや国内外のパートナー企業との連携を強化し、開発・取得案件を加速させる。

    • 太陽光発電に加え、風力、地熱、バイオマスなど、多様な再生可能エネルギー源への投資を検討する。

    • 系統安定化に貢献する蓄電池事業への投資・ファイナンスを、国内および海外(特に北米)でさらに強化する。

  • 循環型ビジネスモデルの開発と推進:

    • 再生PCプログラムの成功要因を分析し、他のICT機器(サーバー、ネットワーク機器等)や、医療機器、産業機械など、他の製品分野への横展開を検討・推進する。

    • リース契約を起点とした、製品のサービス化(PaaS)、シェアリング、サブスクリプションモデルなどの新たな循環型ビジネスモデルを開発・実証する。

    • 製品メーカー、リサイクル事業者、ITベンダーなど、異業種のパートナーとの連携を強化し、循環型エコシステムの構築を目指す。

  • ESG情報開示の質と量の向上:

    • 統合報告書 やウェブサイト における情報開示に加え、ESGデータブックのような形式で、環境・社会・ガバナンスに関する網羅的かつ経年比較可能な非財務データを集約し、開示することを検討する。これにより、ステークホルダーの評価・分析の利便性を高める。  

    • Sustainalyticsをはじめとする主要なESG評価機関との対話を強化し、評価手法や評価結果の背景にある要因への理解を深め、改善に向けたフィードバックを積極的に活用する。

    • 気候変動(CDP A-)における強みを維持しつつ、生物多様性、Scope 3管理、人的資本、ガバナンスなど、相対的に取り組みが遅れている、あるいは開示が不十分な分野に関する情報開示を強化する。

これらの提言を実行に移すことにより、同社は環境リスクへの耐性を高め、新たな事業機会を獲得し、持続可能な社会の実現に貢献するとともに、企業価値の更なる向上を実現できると考えられる。

6. 競合他社分析と比較ベンチマーキング

NECキャピタルソリューションの環境パフォーマンスを客観的に評価するためには、同業である主要なリース・ファイナンス企業との比較が不可欠である。ここでは、代表的な競合企業としてオリックス株式会社(以下、オリックス)、三菱HCキャピタル株式会社(以下、三菱HCキャピタル)、東京センチュリー株式会社(以下、東京センチュリー)を取り上げ、各社の環境戦略と取り組み、および外部評価機関による環境スコアを比較分析する。

6.1. 主要競合企業の環境戦略と取り組み

  • オリックス: 多角的な事業展開を行うオリックスは、サステナビリティを経営の根幹に据え、特に環境・エネルギー分野に注力している 。

    • 気候変動: グローバルな再生可能エネルギー事業者としての地位を確立しており、2030年3月期までに稼働中の再エネ発電設備容量を10GW(ネット)に拡大する目標を掲げている 。GHG排出量については、Scope1+2で2030年3月期までに50%削減(2020年度比)、2050年3月期までに実質ゼロを目指す目標を設定し、TCFD提言に基づく情報開示も行っている 。  

    • 資源循環: 廃棄物処理・再資源化事業(埼玉県寄居町のゼロエミッション施設、バイオガス発電施設運営等)や、不用物リユース・リサイクルサポート事業などを通じて、サーキュラーエコノミーの推進に貢献している 。中古太陽光パネルの再販なども手掛ける 。  

    • 生物多様性: 環境方針に生物多様性保全への配慮を明記。すみだ水族館・京都水族館の運営を通じた啓発・保全活動や、マンション開発における生物多様性配慮(ABINC認証参考)などを実施 。環境負荷の高い特定セクターへの投融資削減目標設定や、生物多様性に悪影響を与える事業への新規取引禁止方針を持つ 。TNFDへの具体的な対応状況は不明。  

     

  • 三菱HCキャピタル: 三菱UFJリースと日立キャピタルの統合により誕生した同社は、「脱炭素社会の推進」と「サーキュラーエコノミーの実現」を環境分野のマテリアリティ(重要課題)として特定し、取り組みを進めている 。

    • 気候変動: GHG排出量目標として、Scope1+2で2030年度までに55%削減(2019年度比)、2050年度までにネットゼロを掲げている 。TCFD提言への賛同を表明し、リスク・機会分析を開示している 。SBT認定の有無は不明。再生可能エネルギー関連ビジネスを機会として捉え、事業拡大を検討している 。  

    • 資源循環: リース満了品の二次利用(リファービッシュ・リユース)やパーツアウト事業を推進 。具体的な目標として、リース物件等から生じる廃プラスチックの有効利用率を2030年度までに100%にすることを掲げ、実績を開示している 。中古機械・PCの売却実績も大きい 。  

    • 生物多様性: 生物多様性に関する具体的な方針やTNFDへの対応状況に関する情報は限定的である 。環境方針全体の中で配慮する姿勢は示されているが、特化した戦略や目標は見当たらない。  

     

  • 東京センチュリー: 「脱炭素社会への貢献」と「持続可能な資源利用への対応」をマテリアリティとして掲げ、環境経営を推進している 。

    • 気候変動: TCFD提言に賛同し、太陽光発電、航空機リース、オートリースの各事業について詳細なシナリオ分析結果を開示している点が特徴的である 。Scope1, 2, 3のGHG排出量を詳細に算定・開示している 。インターナルカーボンプライシング(ICP)を試行導入している。SBT認定の有無は不明。再生可能エネルギー事業(京セラとのJV等)も展開 。  

    • 資源循環: IT機器のリファービッシュ事業に注力し、中古PCの販売実績が大きい 。FMVリースやITADサービスを通じて、資産の有効活用と適正処分を支援している 。プラスチック使用製品の削減にも取り組んでいる 。具体的な数値目標の設定状況は不明。  

    • 生物多様性: 環境基本方針に生物多様性保全への貢献を明記。具体的な活動として、公益財団法人オイスカを通じた海岸林再生、子供の森計画、富士山の森づくり、マングローブ植林などのプロジェクトを支援している 。2024年には経団連生物多様性宣言イニシアチブへ参画した 。TNFDへの具体的な対応状況は不明。  

     

6.2. 環境スコア(CDP, Sustainalytics, MSCI等)の比較分析

外部評価機関によるスコアは、各社の環境パフォーマンスを客観的に比較する上で有用な指標となる。ただし、評価機関ごとに評価方法論や重点分野が異なる点に留意が必要である。

  • CDP 気候変動:

    • NECキャピタルソリューション: A-

    • オリックス: B  

    • 三菱HCキャピタル: B  

    • 東京センチュリー: B この比較からは、NECキャピタルソリューションが気候変動分野において、主要な競合他社よりも一歩進んだ取り組みと情報開示を行っていると評価されていることが明確にわかる。A-評価はリーダーシップレベルを示しており、同社の強みと言える。  

  • CDP 水セキュリティ:

    • NECキャピタルソリューション: スコア不明

    • オリックス: スコア不明

    • 三菱HCキャピタル: C  

    • 東京センチュリー: C- 水セキュリティに関しては、NECキャピタルソリューションの評価状況が確認できなかった。競合他社はB評価以下であり、業界全体として気候変動ほどの注力はされていない可能性も示唆されるが、水リスクは地域によっては重要性が高いため、今後の開示が望まれる。  

  • Sustainalytics ESG Risk Rating: (スコアが低いほどリスクが低い)

    • NECキャピタルソリューション: 25.8 (Medium Risk)  

    • オリックス: 19.7 (Low Risk)  

    • 三菱HCキャピタル: 24.6 (Medium Risk)  

    • 東京センチュリー: 17.2 (Low Risk) Sustainalyticsの評価では、NECキャピタルソリューションはオリックスや東京センチュリーよりもリスクが高いと評価されており、三菱HCキャピタルと同程度のリスクレベルとなっている。業界内(Traders & Distributors)での順位も189社中126位と相対的に低い 。これは、CDP気候変動での高評価とは対照的な結果である。  

  • MSCI ESG Rating: (AAAが最高評価)

    • NECキャピタルソリューション: 評価不明

    • オリックス: AA

    • 三菱HCキャピタル: BBB

    • 東京センチュリー: AA MSCIの評価でも、NECキャピタルソリューションの状況は確認できなかった。オリックスと東京センチュリーはAAという高い評価を得ている一方、三菱HCキャピタルはBBBにとどまっている。  

これらのスコア比較から、重要な示唆が得られる。NECキャピタルソリューションは、CDP気候変動においては競合他社をリードする評価を得ているものの、Sustainalyticsのようなより広範なESGリスクを評価する機関からは、必ずしもトップレベルとは見なされていない。このギャップが生じる理由は、SustainalyticsやMSCIが、気候変動だけでなく、生物多様性、資源循環、水、さらにはガバナンスや社会側面(人権、労働慣行など)を含む、より多岐にわたるESG要素と、それらに対するリスク管理体制全体を総合的に評価するためであると考えられる。

特に、本分析で指摘された生物多様性への取り組みの相対的な遅れ(事業統合の観点)や、Scope 3排出量管理の課題などが、総合的なESGリスク評価に影響を与えている可能性がある。競合であるオリックスと東京センチュリーは、SustainalyticsとMSCIの両方で高い評価(Low Risk / AA)を獲得しており、これは彼らが気候変動だけでなく、他のESG分野においてもバランスの取れた、あるいは先進的な取り組みを進めている可能性を示唆している。三菱HCキャピタルは、SustainalyticsではNECキャピタルソリューションと同程度のリスク評価だが、MSCIでは評価が低い。

このベンチマーキング結果は、NECキャピタルソリューションにとって、気候変動対応という強みを維持・発展させつつ、他のESG分野、特に生物多様性への戦略的対応、Scope 3排出量の管理・削減、そして包括的なリスク管理体制の強化と、それらに関する透明性の高い情報開示を進めることによって、総合的なESG評価の向上を目指す必要性があることを強く示唆している。

7. 結論

本報告書では、NECキャピタルソリューション株式会社の環境イニシアチブとパフォーマンスについて、「気候変動」「資源循環」「生物多様性」の3分野を中心に包括的な分析を行った。

同社は、「CSV経営」および「次世代循環型社会をリードするSolution Company」というビジョンに基づき、環境課題への取り組みを経営の重要課題と位置づけ、積極的な活動を展開している。特に、気候変動対応においては、2041年3月期のScope1+2排出量実質ゼロという野心的な目標を掲げ、TCFD提言に沿った情報開示を進めるとともに、CDP気候変動調査で2年連続「A-」評価を獲得するなど、業界内でも先進的な取り組みが外部からも評価されている。また、資源循環に関しても、リース事業の特性を活かした高いリサイクル率(98-99%)の達成や、NECパーソナルコンピュータと連携した「メーカー保証付き再生PC」プログラムの開始など、具体的な成果と戦略的な進化が見られる。DBJ環境格付における19年連続の最高ランク取得も、長年にわたる環境経営への真摯な取り組みを裏付けている。

一方で、課題も存在する。GHG排出量の大部分を占めるScope 3(特にリース資産と投融資先)については、算定精度の向上は進められているものの、具体的な削減目標の設定と達成に向けた戦略は今後の重要な課題である。生物多様性に関しては、社会貢献活動としての取り組みは見られるが、事業活動との関連性評価やリスク・機会分析(TNFDフレームワーク等に基づく)、そして戦略的な保全活動への展開は、気候変動や資源循環分野と比較して今後の強化が期待される領域である。

競合他社との比較においては、気候変動分野でのリーダーシップが確認された一方で、Sustainalyticsなどの総合的なESGリスク評価では、オリックスや東京センチュリーといった競合に後れを取っている側面も見られた。これは、気候変動以外のESG要素(生物多様性、Scope 3管理、ガバナンス、社会側面等)における取り組みや開示の差が影響している可能性が高い。

環境スコアリングの観点からは、以下の点が示唆される。

  • 強み: 気候変動対応におけるリーダーシップ(CDP A-、目標設定、TCFD開示)、資源循環における高い実績(リサイクル率)、長年の環境経営実績(DBJ格付)は、スコアにおいてポジティブに評価される要素である。

  • 課題・改善点: Scope 3排出量の目標設定と削減実績、生物多様性に関する戦略的な取り組みとTNFDに沿った情報開示の具体性、そして総合的なESGリスク管理体制の強化と透明性の向上が、今後のスコア向上において重要な鍵となる。

結論として、NECキャピタルソリューションは、環境課題に対して真摯に取り組み、特に気候変動と資源循環において顕著な成果を上げている。今後は、これらの強みを維持・発展させつつ、Scope 3排出量管理と生物多様性保全という課題に戦略的に取り組み、より包括的で透明性の高い情報開示を進めることで、環境パフォーマンスを一層向上させ、持続可能な社会の実現への貢献と企業価値の向上を両立していくことが期待される。

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