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TNFD

TNFD開示フレームワーク
概要と解説

自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)のフレームワークは、ISSBやTCFDなど他のグローバル基準と整合性が取れています。TNFD開示提言は、4つの概念的な基礎、6つの一般的要求事項、 開示提言(4つの柱)、14の開示推奨事項から構成されており、これらに関連するガイダンスが発行されています。 また、GRI(Global Reporting Initiative)などの基準との言語や構造、アプローチとの整合性や、 GBF(Global Biodiversity Framework)のゴール及びターゲットとの一致についても強調されています。

TNFDフレームワークの全体像

TNFDフレームワークの構成要素

  • 1

    4つの概念的な基礎

  • 2

    6つの一般的要求事項

  • 3

    開示提言(4つの柱)

  • 4

    14の開示推奨事項

  • 5

    関連するガイダンス

TNFDとその他のフレームワークの整合性

TNFDは以下のフレームワークと整合性を持って開発されています:

  • ISSBやTCFDのアプローチとの整合性

  • GRI(Global Reporting Initiative)などの基準との言語や構造の整合性

  • GBF(Global Biodiversity Framework)のゴール及びターゲットとの一致

  • 科学的根拠に基づく自然関連目標(SBTN)との連携

ポイント:TNFDは既存のフレームワークや基準と意図的に整合性を取ることで、 企業や金融機関が一貫した枠組みで自然関連の開示を行えるよう設計されています。

TNFDガイダンスの概要

Getting started with adoption of the TNFD recommendations

本ガイダンスでは、TNFD導入には複数の経路があるが、最初の一歩を踏み出すことが重要であり、 TNFDをスタートする上で考慮すべき主要ステップと、TNFDの4つの柱に沿った評価および開示を準備するための 実務的な対応方法が記載されています。

TNFDをスタートするための6つの方法

  • 1TNFD開示提言 - サステナビリティレポートのグローバル基準と整合がとられ、GBFのゴールとターゲットにも沿った14の開示提言
  • 2追加ガイダンス - Guidance for corporates on science-based targets for nature、Guidance on scenario analysis 等
  • 3TNFDフォーラムへの参加 - TNFDフォーラムメンバーとなることで、様々なリソースや学習の機会を得ることが可能
  • 4ナレッジハブ - 自然関連問題に関するリソースやウェビナー、学習資料等のコレクション
  • 5ツールカタログ - 自然関連問題の開示や評価に役立つツールやデータセットのカタログ
  • 6採用意思の登録 - TNFD提言を採用する意思の登録

Recommendations of the Taskforce on Nature-related Financial Disclosures

本ガイダンスでは、TNFD開示提言(4つの柱と14の開示推奨事項)の解説および追加ガイダンスの概要、 自然関連の依存関係、影響、リスク、機会の測定(測定指標と目標)について記載されています。 気候変動リスクと環境リスクは、世界の経営陣が対峙する今後10年間で最も重大なリスクとして認識されているにもかかわらず、 依然として、ほとんどの企業、投資家、金融機関は、自然に関する依存関係、影響、リスク、機会を理解しておらず、 戦略や資本配分の決定において自然を十分に考慮していない点を指摘しています。

本ガイドラインの附属書では、コアグローバル開示指標及び追加グローバル開示指標の例が詳細に示されています。 TNFDにおける指標は評価指標と開示指標があり、計7つの指標が設けられています。

Guidance on biomes

バイオームとは、熱帯雨林、外洋、砂漠、湖など、世界中の様々な場所に存在する生態系のことを指します。 本ガイダンスでは、特定の種類の生態系(バイオーム)における自然関連の依存関係、影響、リスク、機会の特定、 評価、開示について記載されています。

Guidance on scenario analysis

シナリオ分析は、TNFD開示推奨項目の「戦略C」およびLEAPアプローチの「Assess」フェーズに該当する リスク評価ツールに位置づけられています。自然シナリオは気候シナリオと異なり、 1.5℃目標のような地球規模の単一的に合意された指標がないため、さまざまな不確実性を説明しながら もっともらしい未来を設定する探索的なシナリオとなっています。

ベータ版0.4からの主な変更点

TNFDバージョン1.0の主な変更点

TNFD開示提言の変更点

  • 「リスクとインパクトの管理D」が削除され、「ガバナンスC」が追加された
  • 「優先付け」や「バリューチェーン」のワードが追加され、ISSB等で使用されている言葉との整合性が強調されている
  • LEAPアプローチを通したエンゲージメントでは、影響を受けるステークホルダーに加え、「先住民族」、「地域社会」が追加された
  • 開示提言(ガバナンス、戦略、リスクとインパクトの管理、測定指標とターゲット)とLEAPアプローチの各項目との関係性が示された

LEAPアプローチの変更点

スコーピング

事業会社と金融機関の分けが無くなり、全組織に対するスコーピングが示された。ベータ版0.4のLocateで求められていた地域の優先順位付けが、スコーピングフェーズで要求されている。

Locate

優先地域を特定する作業がなくなり、セクターやバリューチェーン、地理的位置の3つのフィルターが設けられ、中程度または高い依存関係と影響を持つ可能性のある活動等にスクリーニングをかけるステップが踏まれている。

Evaluate

インパクトドライバーの特定や、組織が自然に与えるマイナスだけではなくプラスの影響が新たに求められた。

Assess

リスクと機会の管理プロセスと関連要素をどのように適合させることができるかが新たに求められた。

TNFD開示提言の4つの柱

ガバナンス

自然関連の依存、インパクト、リスク、機会に関する組織のガバナンスを開示する。

主な開示推奨項目:
  • 自然関連の依存、インパクト、リスク、機会に関する取締役会の監督について説明
  • 自然関連の依存、インパクト、リスク、機会の評価と管理における経営者の役割について説明
  • 自然関連の依存、インパクト、リスク、機会に対する組織の評価と対応において、先住民族、地域社会、影響を受けるステークホルダーに関する組織の人権方針とエンゲージメント活動について説明

戦略

自然関連の依存、インパクト、リスク、機会が、組織の事業、戦略、財務計画に与える実際および潜在的なインパクトを開示する。

主な開示推奨項目:
  • 組織が短期、中期、長期にわたって特定した、自然関連の依存、インパクト、リスク、機会について説明
  • 自然関連の依存、インパクト、リスク、機会が、組織のビジネスモデル、バリューチェーン、戦略、財務計画に与えた影響について説明
  • 自然関連のリスクと機会に対する組織の戦略のレジリエンスについて、さまざまなシナリオを考慮して説明

リスクとインパクトの管理

組織が自然関連の依存、インパクト、リスク、機会をどのように特定し、評価し、優先付けし、監視するために使用するプロセスを開示する。

主な開示推奨項目:
  • 直接操業における自然関連の依存、インパクト、リスク、機会を特定し、評価し、優先付けするための組織のプロセスを説明
  • 上流と下流のバリューチェーン並びに投資先の活動及び拠点における自然関連の依存、インパクト、リスク、機会を特定し、評価し、優先付けするための組織のプロセスを説明
  • 自然関連の依存、インパクト、リスク、機会を管理するための組織のプロセス、これらに対応する対策を説明

測定指標とターゲット

自然関連の依存、インパクト、リスク、機会を評価し、管理するために使用される測定指標とターゲットを開示する。

主な開示推奨項目:
  • 組織が戦略およびリスク管理プロセスに沿って、重大な自然関連リスクと機会を評価し、管理するために使用している測定指標を開示
  • 自然に対する依存とインパクトを評価し、管理するために組織が使用する測定指標を開示
  • 組織が自然関連の依存、インパクト、リスク、機会を管理するために使用しているターゲットと目標、それらと照合した組織のパフォーマンスを記載

TNFDフレームワークの14の開示推奨事項

TNFDフレームワークバージョン1.0では、4つの柱(ガバナンス、戦略、リスクとインパクトの管理、測定指標とターゲット)に基づく14の開示推奨事項が示されています。 これらの項目は、組織が自然関連のリスクと機会を評価し、管理するための包括的な枠組みを提供します。

ガバナンス

Gov-A

自然関連の依存、インパクト、リスク、機会に関する取締役会の監督について説明

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Gov-B

自然関連の依存、インパクト、リスク、機会の評価と管理における経営者の役割について説明

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Gov-C

自然関連の依存、インパクト、リスク、機会に対する組織の評価と対応において、先住民族、地域社会、影響を受けるステークホルダーに関する組織の人権方針とエンゲージメント活動について説明

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戦略

Strat-A

組織が短期、中期、長期にわたって特定した、自然関連の依存、インパクト、リスク、機会について説明

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Strat-B

自然関連の依存、インパクト、リスク、機会が、組織のビジネスモデル、バリューチェーン、戦略、財務計画に与えた影響について説明

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Strat-C

自然関連のリスクと機会に対する組織の戦略のレジリエンスについて、さまざまなシナリオを考慮して説明

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リスクとインパクトの管理

RM-A

直接操業における自然関連の依存、インパクト、リスク、機会を特定し、評価し、優先付けするための組織のプロセスを説明

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RM-B

上流と下流のバリューチェーン並びに投資先の活動及び拠点における自然関連の依存、インパクト、リスク、機会を特定し、評価し、優先付けするための組織のプロセスを説明

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RM-C

自然関連の依存、インパクト、リスク、機会を管理するための組織のプロセス、これらに対応する対策を説明

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測定指標とターゲット

MT-A

組織が戦略およびリスク管理プロセスに沿って、重大な自然関連リスクと機会を評価し、管理するために使用している測定指標を開示

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MT-B

自然に対する依存とインパクトを評価し、管理するために組織が使用する測定指標を開示

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MT-C

組織が自然関連の依存、インパクト、リスク、機会を管理するために設定しているターゲットと目標、それらと照合した組織のパフォーマンスを開示

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MT-D

生態系の回復、保全または持続可能な利用に関する組織のアプローチと活動に関するターゲットと指標を開示

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MT-E

組織が自然に対するインパクトの場所を分析するために使用する手法、基準、前提条件、データソースを詳述

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TNFDと他のフレームワークの整合性

TNFDとISSBフレームワークの整合性

共通の基礎概念

TNFDとISSBは以下の基礎概念を共有することで整合性を高めています。

  • 重要性の評価に関するアプローチ
  • エンタープライズ・バリュー・クリエーション
  • ガバナンス、戦略、リスク管理、指標の4つの柱
  • バリューチェーン全体を対象とする視点
  • 短期・中期・長期の時間軸による評価

開示要素の整合

TNFDの推奨開示はISSBの基準と以下の点で整合しています。

  • ガバナンス構造と経営者の責任
  • 戦略とビジネスモデルへの影響
  • リスク特定・評価・管理プロセス
  • 測定指標とターゲット設定
  • シナリオ分析の活用方法

TNFDとTCFDの相互関係

フレームワークの相互関係

TNFDはTCFDに基づいた構造を採用し、以下の点で相互補完的関係にあります。

  • 気候と自然の関連性に対する統合的アプローチ
  • 共通の開示構造(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標とターゲット)
  • バリューチェーン全体を考慮した包括的視点
  • シナリオ分析の活用による将来予測

TNFDの追加的側面

TNFDはTCFDの基盤の上に、自然固有の要素を追加しています。

  • 依存関係(Dependencies)とインパクト(Impacts)の両方を評価
  • LEAPアプローチによる体系的な分析手法の提供
  • 地域・地形特性に基づく評価の重要性
  • 自然界のポジティブなインパクト創出に関する考慮

統合的なサステナビリティ報告に向けて

TNFDは他のフレームワーク(TCFD、ISSB、GRI、SBTNなど)と整合性を持ちながら、自然関連の開示に特化した指針を提供しています。これにより、企業は様々な報告要件に対して効率的に対応しながら、包括的なサステナビリティ戦略を構築することが可能になります。

整合性の確保

各フレームワーク間の共通用語と概念を活用し、一貫した報告アプローチを構築

効率的な開示

重複する要素を特定し、データ収集と報告プロセスを合理化することで効率を向上

戦略的価値の創出

気候と自然の相互関連性を理解し、総合的なリスク管理と機会創出につなげる

TNFDフレームワーク活用のメリット

組織にとってのビジネス価値

  • 🛡️

    リスク管理の強化

    自然関連の依存とインパクトを理解することで、サプライチェーンを含む重要なリスクを早期に特定し対応

  • 🤝

    投資家との信頼関係構築

    投資家の期待に応える透明性の高い開示により、資金調達や株主との関係を強化

  • 💡

    市場機会の発見

    自然資本保全に貢献する製品・サービスの開発を通じて、新たな収益源を創出

  • ⚖️

    規制への先行対応

    今後強化される自然関連の規制や開示要請に先行して対応し、リスクを軽減

  • 🔄

    レジリエンスの構築

    シナリオ分析を通じて将来の変化に対する準備を整え、事業の継続性を確保

シナリオ分析アプローチ

TNFDでは、将来の不確実性に対処するためのシナリオ分析が推奨されています。これにより、組織は様々な未来の状況下での戦略のレジリエンスを評価できます。

推奨されるシナリオ分析ステップ

  1. 重要な自然関連の依存とインパクトを特定
  2. 複数の将来シナリオを選択または作成
  3. 各シナリオ下での潜在的な結果を評価
  4. 戦略的対応オプションの検討と優先順位付け
  5. モニタリングと見直しの計画策定
シナリオタイプ
  • 政策・規制シナリオ
  • 技術変化シナリオ
  • 市場変化シナリオ
  • 生態系変化シナリオ
利用可能なシナリオ
  • IUCNグローバルシナリオ
  • IPBESシナリオ
  • WEFリスクレポート
  • カスタムシナリオ

TNFDフレームワーク活用のロードマップ

1

準備段階

  • 組織内の認識と理解の向上
  • 既存の取り組みと連携ポイントの特定
  • 初期評価の実施
2

評価段階

  • 依存とインパクトの詳細分析
  • リスクと機会の特定と優先順位付け
  • シナリオ分析の実施
3

実装段階

  • 戦略とガバナンスへの統合
  • 開示内容と指標の決定
  • データ収集プロセスの確立
4

継続段階

  • 報告と開示の実施
  • ステークホルダーとの対話
  • 継続的な見直しと改善

TNFDフレームワークの採用フェーズ

Phase 1

準備フェーズ

  • 組織内の準備と認識の向上
  • 依存、インパクト、リスク、機会の初期評価
  • 自然関連の問題の戦略的重要性の検討
  • 初期のアクションプランの策定
  • TNFDのフォーラムへの参加(推奨)
Phase 2

採用フェーズ

  • TNFDフレームワークに対する正式な採用意図の表明
  • LEAPアプローチなどの分析ツールの適用
  • 依存、インパクト、リスク、機会の詳細分析
  • シナリオ分析の実施
  • 開示プロセスの確立と実装
Phase 3

高度化フェーズ

  • データ収集・分析の高度化
  • リスク管理プロセスへの完全統合
  • 目標と測定指標の精緻化
  • ステークホルダーとの積極的対話
  • 継続的改善と拡大の実施

TNFDフレームワーク採用のメリット

ビジネス上のメリット

  • 自然関連リスクの特定と管理による事業継続性の向上
  • 資源効率の向上によるコスト削減
  • 投資家や顧客との信頼関係強化
  • 新たな市場機会の発見と持続可能な製品・サービスの開発
  • 規制遵守体制の強化とリスク低減

実装上の考慮点

  • 組織全体の関与と適切なリソース配分が重要
  • 段階的なアプローチによる着実な実装
  • データ収集体制の構築と継続的な質の向上
  • 外部専門家や関連団体との連携と知見の活用
  • 生物多様性と気候変動の相互関連性への注目

TNFDフレームワークに関するよくある質問

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