株式会社七十七銀行(以下、七十七銀行)は、宮城県および東北地方を主要な営業基盤とする地域金融機関である 1。同行は、140年以上の歴史を持ち、「地域の繁栄を願い、地域社会に奉仕する」という行是を掲げ、地域経済の発展に深く貢献してきた 2。地域の中小企業や個人顧客に対する金融サービスの提供を通じて、地域社会の持続的な成長を支える重要な役割を担っている。
近年、世界的に気候変動、資源枯渇、生物多様性の損失といった環境課題が深刻化しており、金融機関、特に地域経済と密接な関係を持つ地方銀行に対して、これらの課題解決への貢献と持続可能な社会の実現に向けた役割発揮が強く求められている 5。金融機関は、投融資活動を通じて社会・経済システム全体に影響を与える存在であり、環境リスクを管理し、環境保全に資する事業機会を創出することが、自身の持続可能性確保にも繋がるという認識が広がっている。
本レポートは、七十七銀行が展開する環境イニシアチブとそのパフォーマンスについて、「気候変動」「資源循環」「生物多様性」という3つの主要な環境側面から包括的かつ深く掘り下げて分析することを目的とする。この分析は、同行の環境パフォーマンスを評価し、将来的な環境スコアリングに必要な詳細情報を提供することを目指すものである。
具体的には、以下の項目について詳細な分析を行う。
各環境側面における具体的な取り組みとプログラムの内容
環境要因に関連して七十七銀行が直面する可能性のある潜在的リスクと事業機会
金融業界における環境に関する先進的な取り組み事例
七十七銀行が現在直面している課題と、今後注力すべき分野や行動に関する推奨事項
主要な競合他社の環境イニシアチブとパフォーマンスに関する比較分析
競合他社が開示している環境スコアや評価結果に基づくベンチマーキング情報
本レポートは、学術的な視点に基づき、公開情報や提供された資料から得られる客観的なデータと分析結果を提示し、七十七銀行の環境への取り組み状況を多角的に評価する。なお、レポート全体を通じて表形式でのデータ表示は避け、必要な情報は本文中での記述、あるいは箇条書き形式で示すこととする。
七十七銀行のサステナビリティへの取り組みは、その経営戦略の中核に位置づけられている。同行は、「地域の繁栄を願い、地域社会に奉仕する」という創業以来の行是に基づき、「七十七グループのSDGs宣言」を策定している 2。この宣言は、グループ全体でSDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けて取り組むことで、地域の未来を創造し、持続可能な社会の実現を目指すというコミットメントを示している 3。
さらに、2030年度までの10年間を計画期間とする長期経営計画「『Vision 2030』~未来を切り拓くリーディングカンパニー~」においても、サステナビリティへの貢献が重要な柱とされている 3。この計画では、金融・非金融両面でのソリューション提供を通じて、ステークホルダーと共に宮城・東北から活躍のフィールドを切り拓くことを目指しており、その過程で環境・社会課題の解決に取り組む姿勢を明確にしている。
これらの戦略を実行するため、同行は強固な推進体制を構築している。経営トップのコミットメントを示すものとして、頭取を委員長とする「サステナビリティ委員会」が設置されている 4。この委員会は、サステナビリティ推進に関する重要事項を審議・報告し、その結果を経営戦略やリスク管理に反映させる役割を担う。2023年度には3回開催され、取締役会への報告を通じて、取締役会がサステナビリティへの取り組み状況を監督する体制が確立されている 9。実務推進部署としては、総合企画部内に「サステナビリティ推進室」が設置され、サステナビリティに関わる企画・立案体制の強化と施策推進の実効性確保を図っている 2。
具体的な行動計画として、毎年度「SDGs実践計画」を策定し、PDCAサイクルを回すことで、取り組みの継続的な改善と進捗管理を行っている 2。また、同行グループが取り組むべき重要課題(マテリアリティ)を特定しており、その中には「気候変動・災害への対応」が明確に含まれている 4。これは、気候変動問題への対応が経営上の重要課題であるとの認識を示すものである。
七十七銀行は、マテリアリティの一つとして「気候変動・災害への対応」を掲げ、多岐にわたる取り組みを推進している 9。
目標と実績:
自社排出量: 同行は、自社の事業活動に伴う温室効果ガス(GHG)排出量削減に関して、具体的な目標を設定している。2030年度までにグループ全体のCO2排出量を2013年度比で46%削減するという目標を掲げていた 3。注目すべきは、2023年度時点で既にこの目標を上回る49.8%の削減を達成していることである 9。この達成には、省エネルギー設備の導入や、再生可能エネルギー由来電力の利用(報告書上ではCO2排出量を「0」として算定)などが寄与している 9。さらに、2030年度までのカーボンニュートラル実現を目指すという、より野心的な目標も示されている 10。
ファイナンスド・エミッション: 近年、金融機関の気候変動への影響を評価する上で、自社排出量(Scope 1, 2)だけでなく、投融資先の排出量(Scope 3 カテゴリ15、ファイナンスド・エミッション)の把握と削減が極めて重要視されている。七十七銀行もこの潮流に対応し、ファイナンスド・エミッションの把握に着手している 9。2023年度の開示では、国内公共債投資や個人向け融資等を除く計測対象ポートフォリオにおけるファイナンスド・エミッションを約4,504千トン-CO2と算定・報告している 9。これは、同行の自社排出量と比較して桁違いに大きな規模であり、気候変動に対する同行の真の影響とリスクが主に投融資ポートフォリオに存在することを示唆している。同行は、国際的な算定基準であるPCAFスタンダードに準拠した算定を目指しており、今後、算定範囲の拡大や精度の向上が期待される 10。
サステナブルファイナンス目標: 同行は、環境・社会課題解決に貢献する投融資、すなわちサステナブルファイナンスの拡大にも目標を設定している。2030年度までに、環境、医療、創業・事業承継支援、SDGs取り組み支援等を含むサステナブルファイナンスの累計実行額として1.2兆円を目指すという目標を表明している 11。
金融商品・サービス:
気候変動対策を金融面から支援するため、七十七銀行は多様なサステナビリティ関連の金融商品・サービスを提供している。
77SDGs支援ローン: SDGs達成に貢献する取り組みを行う事業者を支援するローン。2023年度の実績は14億円 9。
77Seven Goals: SDGsに関連する定型目標を設定し、その達成度に応じて金利を優遇する融資商品。2023年度の実績は55億円 9。顧客企業の例として、中古車販売におけるハイブリッド車販売促進などが挙げられる 12。
77サステナビリティ・リンク・ローン: 顧客企業が設定するサステナビリティ・パフォーマンス目標(SPTs)の達成状況に応じて融資条件(金利等)が変動するローン。企業のCSR戦略と連携し、目標達成を後押しする。国際的な原則や環境省のガイドラインに準拠したフレームワークとして第三者評価も取得している 13。2023年度の実績は132億円 9。
77ポジティブ・インパクト・ファイナンス: 国際原則等に基づき、事業活動が環境・社会・経済にもたらすポジティブなインパクトとネガティブなインパクトを包括的に評価し、ポジティブ・インパクトの向上を支援するファイナンス。2024年3月に導入された 9。
77SDGs私募債(寄付型/カーボン・オフセットコース): 宮城県や仙台市と連携し、発行額の一部を地域の環境保全活動等へ寄付する、あるいはJ-クレジット等を用いてカーボン・オフセットを行う私募債。2024年4月に導入された 9。仙台市へのJ-クレジット寄付実績もある 15。
77オープン型グリーン外貨定期預金: 預け入れられた資金を再生可能エネルギー事業等のグリーンプロジェクトへの融資に活用する外貨定期預金 9。
これらの商品は、顧客企業がSDGsや脱炭素化に取り組むことを金融面から後押しし、低炭素社会への移行を支援することを目的としている 3。
顧客支援:
融資商品に加え、非金融面での顧客支援も強化している。
GHG排出量算定・可視化支援: 取引先のGHG排出量算定を支援するツール「77脱炭素ナビゲーター」を株式会社ウェイストボックスと提携して導入 9。さらに、NTTデータ社のGHG排出量可視化プラットフォーム「C-Turtle® FE」を導入し、投融資先の一次データに基づいた、より精度の高いファイナンスド・エミッション算定と分析、そして顧客エンゲージメントの強化を図っている 10。これは東日本の金融機関で初の導入事例であった 10。加えて、顧客企業自身が排出量を算定し、同行とデータ連携できる「C-Turtle」の提供についてもNTTデータと業務提携を締結しており 18、サプライチェーン全体での排出量可視化と削減推進を支援する体制を構築している。
コンサルティング・情報提供: SDGsに関するコンサルティングサービス(「77SDGs支援サービス」)を提供しており、2023年度には83件の実績がある 8。また、株式会社イトーキとの業務提携により、カーボンクレジットの活用支援業務も開始している 9。さらに、自治体や企業、金融機関向けに気候変動への取り組み事例を紹介する「脱炭素セミナー」を開催するなど、啓発活動にも注力している 19。
これらの顧客支援策は、特にGHG排出量算定や削減策のノウハウが不足しがちな中小企業にとって重要であり、同行がファイナンスド・エミッション削減という目標を達成する上でも不可欠な要素となる。
TCFD提言への対応:
七十七銀行は、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に早期に賛同を表明している(2021年7月)3。TCFD提言に基づき、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標に関する情報を積極的に開示している 9。特に戦略面では、シナリオ分析等を通じて気候変動に関連するリスクと機会の特定・評価に努め、それらを「SDGs実践計画」に反映させることで、リスクの最小化と機会の最大化を図っている 9。
連携・その他:
エネルギー事業者との連携: 東北電力株式会社との間で「カーボンニュートラルの推進に関する連携協定」を締結(2023年4月)し、相互のソリューションを活用して地域のカーボンニュートラル実現と持続的な発展に貢献することを目指している 20。これは同行にとって初のカーボンニュートラル推進に関する連携協定であった 20。
特定事業への融資方針: 環境・社会への負の影響を与える可能性のある事業に対する融資方針として、「特定事業等に対する融資方針」を制定している 2。この中で、石炭火力発電所の新規建設への融資は原則として行わない方針を明確にしている(高効率なリプレースメント案件は慎重に検討)21。
地域特性に応じた取り組み: 環境省の支援事例として、宮城県沿岸部におけるブルーカーボン等を通じた「ブルーエコノミー」の構築支援が挙げられており 22、地域の特性や資源を活かした気候変動対策にも取り組んでいることがうかがえる。
これらの多角的な取り組みは、七十七銀行が気候変動問題を重要な経営課題と捉え、自社の事業活動と投融資活動の両面から対策を強化していることを示している。特に、ファイナンスド・エミッションの把握と削減に向けたツールの導入や顧客支援体制の構築は、今後の気候変動戦略において中心的な役割を果たすと考えられる。ただし、その実効性を高めるためには、算定・分析能力の継続的な向上、そして特に中小企業を含む多様な顧客との効果的なエンゲージメントが鍵となるだろう。
七十七銀行は、「環境方針」の中で、省エネルギー、省資源、リサイクル活動の推進を通じて環境負荷の軽減に努めることを掲げている 23。しかし、気候変動対策と比較すると、資源循環に関する具体的な取り組みや定量的な目標・実績に関する情報は、提供された資料からは限定的である。
方針と取り組み:
同行の環境方針には、リサイクル活動推進への言及があるものの 23、具体的な行内活動、例えば廃棄物削減率、リサイクル率、ペーパーレス化の進捗度合い、水使用量の削減目標などに関する詳細なデータは開示されていない。
金融を通じた支援:
資源循環への貢献は、主に金融サービスを通じて間接的に行われている可能性がある。
中古マンションの再生事業(リノベーション費用)への融資スキームは、既存ストックの有効活用を促進するものであり、資源循環の観点からも意義があると考えられる 13。
顧客企業が行う資源効率化や廃棄物削減の取り組み(例:自動車整備における中古部品・リビルド品の活用 12、食品加工工場等における食品残渣の堆肥化リサイクル 24、小売業におけるPETボトルリサイクルループの構築 25 など)を、前述の「77SDGs支援ローン」9 やその他の金融商品・コンサルティングサービスを通じて支援している可能性が考えられる。
現状では、資源循環が独立した戦略的柱として明確に位置づけられ、専用の金融商品や具体的な目標が設定されているというよりは、SDGs支援や環境配慮型経営支援といった、より広範な枠組みの中で間接的に推進されている側面が強いように見受けられる。世界的にサーキュラーエコノミー(循環経済)への移行が重要視される中、今後はこの分野における戦略の明確化、具体的な目標設定、および関連する金融サービスの開発・提供が期待される領域である。
生物多様性の保全は、気候変動と並び、地球環境の持続可能性における喫緊の課題として認識が高まっている。七十七銀行もこの課題への対応に着手し始めている。
方針と枠組み:
TNFDフォーラムへの参画: 同行は、2024年5月に「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)フォーラム」への参画を表明した 26。TNFDは、企業が自然に関連するリスクと機会を評価し、開示するための国際的な枠組みであり、このフォーラムへの参画は、同行が自然資本や生物多様性に関する課題への取り組みを本格化させ、情報開示を強化していく意思を示すものである。
地域自然資本の認識: 同行は、主要な営業基盤である東北地方が、緑豊かな森林や日本有数の水産資源を誇るなど、豊かな自然資本を有していることを認識しており、地域の自然環境や生物多様性の保全がマテリアリティである「気候変動・災害への対応」にとっても不可欠であると考えている 26。
ネガティブスクリーニング: 「特定事業等に対する融資方針」において、違法な森林伐採や生物多様性を著しく毀損する可能性のあるパーム油農園開発など、環境、特に生物多様性に重大な負の影響を及ぼす恐れのある特定の案件については、融資を行わないという方針(ネガティブスクリーニング)を定めている 21。
具体的活動:
環境方針において地域社会の環境保全活動推進への言及 23 や、全国銀行協会の資料で環境保全活動に取り組む銀行として名前が挙げられている 28 ものの、生物多様性の保全に特化した具体的なプロジェクトへの投融資実績や、行内での保全活動に関する詳細な情報は、提供された資料からは確認できなかった。
TNFDフォーラムへの参画 26 は重要な一歩であるが、現時点では具体的な行動計画や目標設定、情報開示はこれからの段階にあると考えられる。生物多様性への影響や依存度の評価は複雑であり、金融機関にとっても比較的新しい取り組み分野である。今後、TNFDが提言するLEAPアプローチ(自然との接点の発見、依存と影響の診断、リスクと機会の評価、対応準備と報告)などを活用し、自社の事業活動および投融資ポートフォリオが自然資本や生態系サービスに与える影響と依存度を評価し、それに基づいたリスク管理体制の構築や、生物多様性保全に貢献するポジティブ・インパクト・ファイナンス等の機会創出に向けた戦略策定が期待される。
地域金融機関である七十七銀行は、その事業活動において、気候変動をはじめとする環境要因から生じる様々なリスクと機会に直面している。
移行リスク: 低炭素社会への移行が進む過程で生じるリスク。
炭素関連資産エクスポージャー: 同行の投融資ポートフォリオに含まれる、化石燃料関連産業やその他GHG排出量が多い産業(炭素関連資産)は、将来的な政策変更(炭素税導入、排出量規制強化など)や技術革新、市場の変化によって価値が毀損するリスクがある 5。特に、取引先企業の脱炭素化が遅れた場合、大手企業との取引減少などにより事業継続が困難になる可能性も指摘されている 5。
規制強化リスク: 環境規制の強化は、取引先のコスト増加や競争力低下を招き、結果として銀行の信用リスク(貸倒れリスク)を増大させる可能性がある。
市場リスク: 消費者の環境意識の高まりや低炭素技術の普及により、環境対応が遅れた企業の製品・サービスへの需要が減少し、市場シェアを失うリスクがある。これは、当該企業への融資の焦げ付きリスクを高める。
評判リスク: 環境問題への対応が不十分であると社会的に認識された場合、投資家からの評価低下、預金者や地域社会からの信頼失墜、優秀な人材の獲得難といった評判リスクに繋がる可能性がある。
物理的リスク: 気候変動の進行に伴う物理的な影響によるリスク。
自然災害の激甚化: 同行の主要営業基盤である東北地方は、台風、豪雨、洪水、猛暑といった異常気象の影響を受けやすい地域でもある。気候変動によりこれらの自然災害が激甚化・頻発化すれば、取引先の事業所やサプライチェーンの寸断、保有資産(不動産担保など)の価値毀損、地域経済全体の停滞などを通じて、銀行の信用リスクやオペレーショナルリスクが増大する可能性がある 9。
データ・評価の難しさ:
気候変動の影響や低炭素化への移行経路は、将来の政策、技術革新、社会全体の行動変容など、多くの不確実な要素に左右されるため、リスクと機会を正確に評価することは本質的に困難である 5。
影響は広範かつ複雑な経路で波及し、地域、産業、個々の企業によってリスク・機会の現れ方が異なる 5。
評価に必要な分析手法や、特に中小企業を含む多数の取引先からの詳細かつ信頼性の高いデータ(例:GHG排出量の一次データ)を入手・管理することにも課題がある 5。
一方で、環境課題への対応は、七十七銀行にとって新たな事業機会をもたらす可能性も秘めている。
グリーン/サステナブルファイナンス市場の拡大:
再生可能エネルギー発電所の建設・導入(例:洋上風力 30、営農型太陽光発電 21)、企業の省エネルギー設備投資、低炭素技術の研究開発、電気自動車(EV)普及支援 22 など、脱炭素化や環境保全に資する分野での資金需要が増大しており、これらに対する投融資機会が拡大している 9。同行が掲げる1.2兆円のサステナブルファイナンス目標 11 は、この機会を捉えようとする意欲の表れである。
サステナビリティ・リンク・ローン、グリーンボンド引受、ポジティブ・インパクト・ファイナンスといった、環境・社会課題解決に特化した金融商品の提供を拡大することで、新たな収益源を確保し、顧客との関係性を強化できる 9。
ESG関連コンサルティング・ソリューション提供:
取引先企業、特に中小企業においては、脱炭素化戦略の策定、GHG排出量の算定・可視化、環境関連リスクへの対応、新たな環境配慮型事業の展開などに関するノウハウやリソースが不足している場合が多い。こうしたニーズに応えるコンサルティングサービス(例:「77SDGs支援サービス」8、「77脱炭素ナビゲーター」9、C-Turtleプラットフォーム提供 18)は、新たな手数料収入の機会となる 5。
省エネ機器の導入支援や環境配慮型製品を開発する企業とのビジネスマッチングなども、顧客の環境対応を支援し、銀行の付加価値を高める機会となる 31。
企業価値・ブランドイメージ向上:
環境問題へ積極的に取り組み、その成果を発信することは、ESG投資家からの評価向上、環境意識の高い顧客層の獲得、従業員のエンゲージメント向上、そして地域社会からの信頼獲得に繋がり、長期的な企業価値向上に貢献する。
地域経済活性化との連携:
地域の脱炭素化(例:東北電力との連携 20)や環境保全(例:ブルーエコノミー支援 22、J-クレジット寄付 15)を金融面・非金融面から支援することは、地域経済の持続可能性を高め、ひいては銀行自身の事業基盤を強化することに繋がる 11。地域金融機関としての特性を活かし、地域循環共生圏の創出などに貢献することも重要な機会である 11。
七十七銀行にとって、地域への深いコミットメントは強みである一方、その地域が抱える特定の環境リスク(物理的リスクや、地域産業構造に起因する移行リスク)へのエクスポージャーが集中するという側面も持つ。例えば、東北地方の基幹産業である農林水産業や、特定の製造業などが気候変動の影響を強く受けた場合、同行のポートフォリオにも影響が及ぶ可能性がある。したがって、地域密着戦略を進めつつも、リスク分散の観点からポートフォリオ管理を高度化していくことが、長期的なレジリエンス確保のために重要となるだろう。
七十七銀行の取り組みを評価し、今後の方向性を検討する上で、国内外の金融業界における環境に関する先進的な事例(ベストプラクティス)を参照することは有益である。
気候変動対策:
ファイナンスド・エミッション管理: 多くの先進的な金融機関は、投融資ポートフォリオ全体のGHG排出量(ファイナンスド・エミッション)を、国際基準であるPCAFスタンダード 32 に基づいて算定・開示している。さらに、科学的根拠に基づく削減目標イニシアチブ(SBTi)等の枠組みを活用し、ポートフォリオ全体またはセクター別の削減目標(例:パリ協定の目標と整合する水準)を設定し、その達成に向けた具体的な移行計画を策定・実行している。
エンゲージメント戦略: 単に排出量を算定するだけでなく、排出量が多いセクターや主要な投融資先企業に対し、体系的なエンゲージメント(対話)戦略を策定・実行している。エンゲージメントを通じて、企業の脱炭素化計画の策定支援、具体的な行動変容の促進、進捗状況のモニタリングを行い、必要に応じて投融資判断に反映させる体制を構築している事例が見られる 16。
革新的な金融商品・サービス: グリーンローンやグリーンボンドに加え、企業の移行戦略全体を支援するトランジション・ファイナンス、生物多様性保全や自然資本再生に貢献するプロジェクトを対象とした融資、個人の環境配慮行動を促進するグリーン預金など、多様化・高度化するニーズに応える革新的な金融商品を開発・提供している。
データとテクノロジー活用: 気候変動リスク(物理的リスク・移行リスク)をより精緻に分析・評価するため、AIや地理空間情報などの先進技術を活用したリスク評価モデルを導入している。また、顧客企業に対して、排出量算定ツールだけでなく、サプライチェーン排出量管理や削減策シミュレーションなどの高度なデータ分析サービスを提供している事例もある。
資源循環:
サーキュラーエコノミー・ファイナンス: 従来の「取って、作って、捨てる」リニアエコノミーから脱却し、資源を循環させるビジネスモデル(製品の長寿命化設計、修理・再製造・再利用の促進、シェアリングエコノミー、廃棄物ゼロ化など)を専門的に評価し、支援するための融資プログラムや評価フレームワークを導入している。セブン&アイグループと日本コカ・コーラ社による「完全循環型ペットボトル」のような、企業連携によるクローズドループ・リサイクルの構築を金融面から支援する動きもある 25。
サプライチェーン全体での効率化支援: 投融資先の企業だけでなく、そのサプライヤーも含めたサプライチェーン全体での資源効率改善(例:原材料調達の見直し、製造プロセスの最適化、物流効率化)を支援する金融・非金融サービスを提供している。
自社オペレーションの高度化: 自社の事業活動における資源消費(水、紙、プラスチックなど)や廃棄物発生量について、野心的かつ具体的な削減目標(例:廃棄物ゼロ、再生材利用率向上)を設定し、その達成状況を詳細に開示している。
生物多様性:
TNFD/SBTNへの対応: TNFD提言 26 に基づき、自社の事業活動や投融資ポートフォリオが自然資本や生態系サービスにどの程度依存し、どのような影響を与えているかを、LEAPアプローチ等を用いて詳細に評価・開示している。さらに、科学的根拠に基づく自然関連目標(SBTN: Science Based Targets for Nature)の考え方を取り入れ、生物多様性の損失を食い止め、回復させる「ネイチャーポジティブ」に貢献するための具体的な目標設定を検討・開始している。セブン&アイ・ホールディングスはTNFD Adoptersに登録し、LEAPアプローチを用いた分析結果を開示している 33。
ポジティブ・インパクト創出: ネガティブスクリーニング(有害な事業への融資回避)に留まらず、生物多様性の保全や生態系の回復に積極的に貢献するプロジェクト(例:持続可能な認証を取得した農林水産業、植林・森林再生事業、流域管理、自然由来のインフラ整備など)に対する投融資(ネイチャーポジティブ・ファイナンス)を拡大している。
セクター別方針の強化: 特に自然への依存度や影響度が大きいと考えられるセクター(例:農業、林業、漁業、食品、鉱業、インフラ建設など)に対して、より詳細な投融資方針を策定している。これには、サプライチェーンにおけるトレーサビリティ確保、国際的な認証基準の遵守、生物多様性への影響評価の実施などを融資実行の条件とするデューデリジェンス要件の強化が含まれる場合がある。
これらの先進事例は、七十七銀行が今後、気候変動対策をさらに深化させるとともに、資源循環や生物多様性といった分野での取り組みを本格化させていく上で、重要なベンチマークとなり得る。
七十七銀行の環境イニシアチブとパフォーマンスを相対的に評価するためには、競合他社との比較分析が不可欠である。
七十七銀行の競合相手は、地理的な観点や事業規模、提供サービスなどによって多岐にわたる。
地域内競合: 宮城県内においては、七十七銀行は預金・貸出金シェアで圧倒的な地位を築いている(メインバンクシェア56.5%)1。仙台銀行(じもとホールディングス傘下、シェア12.8%)や杜の都信用金庫(シェア6.1%)などが存在するが、規模には大きな差がある 1。より広域の東北地方に目を向けると、フィデアホールディングス(荘内銀行、北都銀行。将来的には岩手県第2位の東北銀行も統合協議中)、きらやか銀行(じもとホールディングス傘下)、岩手銀行(岩手県トップシェア)、秋田銀行(秋田県トップシェア)、山形銀行(山形県トップシェア)、東邦銀行(福島県トップシェア)などが、地域経済における主要な競合金融機関となる 1。
地域外大手地銀: 全国の地方銀行の中で、事業規模や先進的な取り組みで比較対象となりやすいのは、千葉銀行(千葉県トップシェア)、静岡銀行(静岡県トップシェア)、横浜銀行(コンコルディア・フィナンシャルグループ傘下、神奈川県トップシェア)、福岡銀行(ふくおかフィナンシャルグループ傘下、福岡県トップシェア)、京都銀行(京都府トップシェア)といった大手地方銀行である 1。これらの銀行は、ESG/サステナビリティへの取り組みにおいても先行している場合が多く、ベンチマーキングの対象として重要である。
その他の競合: 上記に加え、全国展開するメガバンク(三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行)は、特に大企業取引や富裕層向けサービスにおいて競合する。また、近年台頭しているネット銀行やフィンテック企業も、特定の金融サービス(決済、個人向けローンなど)において競争相手となりつつある 29。さらに、地域によっては信用金庫・信用組合も重要な競合相手となる 1。
(注:以下の分析は、提供された資料の範囲と一般的な業界動向に基づくものであり、詳細な比較には各社の最新のサステナビリティ報告書等の外部情報の参照が必要です。)
七十七銀行の競合となりうる主要な地方銀行の多くも、近年、環境問題への取り組みを強化している。特に気候変動に関しては、TCFD提言への賛同表明は大手地銀を中心に急速に進み、現在では多くの地方銀行が開示を行っている 5。
例えば、東北地方の競合を見ると、フィデアHD傘下の銀行や岩手銀行なども、地域特性を踏まえた再生可能エネルギー導入支援や、取引先の環境経営支援に取り組んでいると考えられる。大手地銀に目を向けると、千葉銀行や横浜銀行、福岡銀行などは、より早期からTCFD対応を進め、ファイナンスド・エミッションの算定・開示範囲拡大や、セクター別分析、具体的な削減目標の設定などに着手している可能性がある。また、グリーンボンドの発行・引受実績や、独自のサステナブルファイナンス商品のラインナップにおいても、先行している場合がある。
資源循環や生物多様性に関しては、業界全体としても取り組みはまだ発展途上であるが、一部の先進的な銀行では、サーキュラーエコノミーに特化した融資制度の創設や、TNFDフレームワークに基づく情報開示の試行、生物多様性保全に資するプロジェクトへの融資事例などが見られ始めている。七十七銀行がTNFDフォーラムに参画したことは評価できるが 26、具体的な取り組み内容においては、一部の競合に対してキャッチアップが必要な段階にある可能性も考えられる。
(注:以下の分析は、提供された資料の範囲と一般的な業界動向に基づくものであり、具体的なスコアや評価結果は、CDP、MSCI ESG Ratings、Sustainalytics等の外部評価機関のデータベースを参照する必要があります。)
外部のESG評価機関による評価は、企業の環境パフォーマンスを客観的に比較する上で重要な指標となる。七十七銀行および主要な競合他社の環境関連スコアや格付けを比較することで、同行の相対的な強みや弱みを把握することができる。
一般的に、地方銀行のESG評価は、メガバンクや一部の大手地銀と比較すると、まだ改善の途上にあるケースが多いとされる 5。特に、気候変動に関するリスク管理プロセスや、投融資ポートフォリオ全体での環境影響評価、サプライチェーンを含むScope 3排出量の開示などが評価向上のポイントとなることが多い。
例えば、CDP(気候変動に関する情報開示を評価する国際NGO)のスコアを見ると、多くの金融機関がスコアリングを受けている。七十七銀行のスコアが、競合する東北地方の銀行や、ベンチマークとなる大手地銀と比較してどのレベルにあるか(リーダーシップレベルのA/A-、マネジメントレベルのB/B-、認識レベルのC/C-、情報開示レベルのD/D-)、また、どの評価項目(ガバナンス、リスク管理、戦略、排出量・目標など)で特に評価されているか、あるいは課題があるとされているかを把握することが重要である。同様に、MSCIやSustainalyticsといった他の評価機関による格付け(例:AAA~CCC、リスクレーティング等)や、特定のテーマ(例:化石燃料ファイナンス、生物多様性リスク)に関する評価結果も比較分析の対象となる。
これらの外部評価を継続的にモニタリングし、評価機関からのフィードバックを分析することで、七十七銀行は自社の取り組みの改善点を特定し、より効果的な環境戦略を推進していくことが可能となる。
七十七銀行は、環境問題、特に気候変動に対して積極的に取り組みを進めているが、さらなるパフォーマンス向上と持続的な成長のためには、いくつかの課題に対処し、戦略を進化させる必要がある。
データ収集・管理の高度化とファイナンスド・エミッション管理: ファイナンスド・エミッションの算定・管理は、気候変動戦略の中核である。しかし、特に多様な業種・規模の中小企業を含む多数の取引先から、GHG排出量に関する質の高い一次データを効率的かつ正確に収集・管理することは大きな課題である 5。現状の算定範囲 9 から、より広範な資産クラスへの拡大と、算定精度の向上が求められる。また、算定結果を具体的な削減目標やエンゲージメント戦略に繋げていくための分析能力も強化が必要である。
資源循環・生物多様性戦略の具体化: 気候変動対策と比較して、資源循環と生物多様性に関する取り組みは、まだ戦略的な位置づけや具体的な目標設定、行動計画が明確ではないように見受けられる。環境方針での言及 23 やネガティブスクリーニング 21、TNFDフォーラムへの参画 26 は重要なステップであるが、これらを具体的な投融資判断基準や金融商品開発、情報開示に繋げていく必要がある。
ESG統合の深化: サステナビリティ委員会や推進室の設置 2 は進んでいるものの、ESG要素を日常的な融資審査プロセス、リスク管理体制、事業戦略策定へより深く、体系的に統合していくことが求められる。これには、行内の関連部署間の連携強化や、行員の意識改革、専門知識を持つ人材の育成が不可欠である 37。また、提供しているサステナブルファイナンス商品が実際にどのような環境・社会インパクトを生み出しているのかを測定・評価する手法の確立も課題である。
顧客エンゲージメントの実効性向上: 「77脱炭素ナビゲーター」や「C-Turtle」の導入 9 は顧客支援の重要なツールであるが、特にリソースやノウハウが限られる中小企業に対して、これらのツール活用を促し、具体的な環境対応(排出量削減、資源効率改善など)に繋げるためのエンゲージメント(対話・支援)の実効性をいかに高めるかが課題となる 7。提携パートナー(東北電力、NTTデータ、イトーキ等)との連携効果を最大化しつつ、連携に伴うリスク管理も必要となる 9。
地域特性とリスク集中への対応: 東北地方の経済・社会・環境特性に根差した戦略は同行の強みであるが、同時に、特定の物理的リスク(自然災害等)や、地域産業構造に起因する移行リスクへのエクスポージャーが集中する可能性も内包している。地域経済の持続可能性を高める取り組みを進めつつ、ポートフォリオ全体のリスク分散やレジリエンス強化の観点からの戦略も必要となる。
上記の課題を踏まえ、七<x_bin_5>銀行が今後、環境パフォーマンスをさらに向上させ、持続可能な金融機関としての地位を確立するために、以下の事項に注力することを推奨する。
ファイナンスド・エミッション管理の強化と目標設定:
PCAFスタンダードに基づき、ファイナンスド・エミッションの算定対象となる資産クラス(例:上場株式、事業法人向け融資、商業用不動産、住宅ローン等)を段階的に拡大し、算定の網羅性と精度を高める。
算定結果に基づき、ポートフォリオ全体、あるいは特に排出量の多いセクター(例:エネルギー、運輸、製造業など)に対して、科学的根拠に基づく削減目標(中間目標および2050年ネットゼロ目標)の設定を検討する。
「C-Turtle FE」や「C-Turtle」等のツール 10 を最大限活用し、データ収集・分析基盤を継続的に強化するとともに、分析結果をリスク管理やエンゲージメント戦略に反映させるプロセスを確立する。
資源循環・生物多様性戦略の策定と実行:
TNFDのLEAPアプローチ等を参考に、自社の事業活動および投融資ポートフォリオにおける自然への依存度(例:水資源、土地利用、生態系サービス)と影響(例:汚染、生息地破壊)に関する評価を体系的に実施する。
評価結果に基づき、自然関連リスク(物理的リスク、移行リスク、システムリスク)を特定し、具体的なリスク管理策(例:セクター別方針の強化、デューデリジェンス項目の追加)を導入する。
生物多様性保全や自然資本再生に貢献する事業(例:持続可能な農林水産業、環境再生型事業)への投融資機会(ポジティブ・インパクト創出)を特定し、関連する金融商品の開発や支援策を検討する。
資源循環に関しては、行内オペレーションにおける具体的な資源削減目標(例:廃棄物削減率、リサイクル率、水使用量削減率)を設定・開示するとともに、サーキュラーエコノミーに貢献するビジネスモデルを持つ企業への融資基準を明確化し、支援を強化する。
TNFD提言に沿った情報開示を段階的に拡充する。
顧客支援メニューの拡充と高度化:
中小企業向けに、GHG排出量算定支援 9 に留まらず、具体的な削減策(省エネルギー診断、再生可能エネルギー導入支援、サプライチェーン排出量管理支援、資源効率改善策等)の導入に関するコンサルティング機能を強化する。
環境関連の補助金・助成金制度に関する情報提供や申請支援、環境技術を持つ企業や専門家とのビジネスマッチング 31 など、非金融面でのサポートメニューを拡充する。
顧客の業種や規模、環境対応のステージに応じた、テーラーメイドの支援アプローチを開発・導入する。
人材育成と組織文化醸成:
全行員を対象としたESG/サステナビリティに関する基礎研修に加え、営業担当者、融資審査担当者、リスク管理担当者など、関連性の高い部署の行員に対して、より専門的な研修プログラム(例:サステナブルファイナンス商品知識、環境リスク評価手法、顧客とのESG対話スキル、TNFD/PCAF等の最新動向)を継続的に実施する 37。
サステナビリティへの貢献が企業価値向上に繋がるという意識を組織全体で共有し、行員一人ひとりが自律的に環境課題に取り組む企業文化を醸成する。
情報開示の質の向上:
TCFDおよびTNFDのフレームワークに基づき、気候関連および自然関連のリスクと機会に関するシナリオ分析の結果、具体的な管理プロセス、指標と目標(KPI)、およびその進捗状況について、より詳細かつ定量的な情報を、統合報告書やサステナビリティレポート等を通じて積極的に開示する。
ファイナンスド・エミッションやサステナブルファイナンスの実績、資源循環に関する指標など、主要な環境パフォーマンスデータの透明性を高める。
本レポートでは、株式会社七十七銀行の環境イニシアチブとパフォーマンスについて、気候変動、資源循環、生物多様性の3つの側面から分析を行った。
分析の結果、七十七銀行は、サステナビリティを経営の重要課題と位置づけ、専門部署(サステナビリティ推進室)や委員会(サステナビリティ委員会)を設置し、全社的な推進体制を構築していることが確認された 2。特に気候変動対策においては、TCFD提言への早期賛同 3、自社CO2排出量の大幅な削減達成 9、多様なサステナブルファイナンス商品(77SDGs支援ローン、77サステナビリティ・リンク・ローン、77ポジティブ・インパクト・ファイナンス等)の提供 9、そして顧客のGHG排出量算定・可視化を支援する先進的なツール(77脱炭素ナビゲーター、C-Turtle FE/C-Turtle)の導入 9 など、積極的かつ具体的な取り組みを進めている点は高く評価される。
一方で、今後の課題も明らかになった。第一に、金融機関としての最大の環境インパクト領域であるファイナンスド・エミッションに関して、算定・管理体制のさらなる高度化と、具体的な削減目標の設定が求められる。自社排出量の削減実績は顕著であるが 9、ポートフォリオ全体の排出量規模 9 を踏まえれば、今後は投融資を通じた排出削減への貢献がより重要となる。第二に、資源循環および生物多様性に関する取り組みは、気候変動分野と比較して、まだ戦略の具体性や目標設定、実績開示の面で発展途上にある。TNFDフォーラムへの参画 26 を契機に、これらの分野での取り組みを本格化させることが期待される。第三に、特に中小企業を含む多様な顧客に対する環境対応支援(エンゲージメント)の実効性をいかに高めていくかが、地域金融機関としての役割発揮とリスク管理の両面から重要となる。
競合他社との比較(記述形式での要約)においては、七十七銀行は気候変動分野、特に顧客支援ツールの導入などにおいて先進的な側面も見られるものの、一部の大手地方銀行やメガバンクが先行するファイナンスド・エミッションの目標設定や管理、あるいは生物多様性に関する具体的な投融資方針策定などの面では、さらなる向上の余地があると考えられる。
以上の分析を踏まえ、七十七銀行が環境パフォーマンスを継続的に向上させ、持続可能な社会の実現に貢献し、ひいては自身の企業価値を高めていくためには、以下の点が特に重要となる。
ファイナンスド・エミッションの目標設定と管理強化: 算定基盤を強化し、科学的根拠に基づく削減目標を設定・公表する。
自然関連リスク・機会への対応具体化: TNFDの枠組みを活用し、生物多様性・自然資本に関するリスク評価と対応策、ポジティブ・インパクト創出戦略を策定・実行する。資源循環に関する目標設定と取り組みも強化する。
顧客支援の高度化: ツール提供に留まらず、中小企業等のニーズに応じたコンサルティングや非金融サポートを拡充し、実質的な環境パフォーマンス改善に繋げる。
人材育成と情報開示の拡充: ESGに関する専門人材を育成し、組織全体のリテラシーを向上させる。TCFD・TNFDに基づき、透明性の高い情報開示を推進する。
七十七銀行は、地域に根差した金融機関として、東北地方の豊かな自然資本や地域経済の特性を踏まえつつ、気候変動、資源循環、生物多様性といった地球規模の環境課題に対応していくことが求められる。本レポートで提示した課題と推奨事項に取り組むことを通じて、同行が「地域の繁栄を願い、地域社会に奉仕する」という行是を未来に向けて体現し、持続可能な地域社会の実現をリードする存在となることを期待する。
地銀再編で地元シェア5割超が21行に増加=全国153万6,402社「2021年 企業のメインバンク」調査 | TSRデータインサイト | 東京商工リサーチ, 4月 21, 2025にアクセス、 https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1190867_1527.html
統合報告書 2022 サステナビリティの推進, 4月 21, 2025にアクセス、 https://www.77bank.co.jp/pdf/77bank/disclosure/2022rpt_05.pdf
04 ESG・SDGs - 七十七銀行, 4月 21, 2025にアクセス、 https://www.77bank.co.jp/pdf/77bank/2021_12ir_04.pdf
七十七銀行[8341] - CSR レポート[企業の社会的責任] | Ullet(ユーレット), 4月 21, 2025にアクセス、 https://www.ullet.com/%E4%B8%83%E5%8D%81%E4%B8%83%E9%8A%80%E8%A1%8C/%E6%A6%82%E8%A6%81/type/csr
中小企業の脱炭素に向けた 地方銀行の役割 - 日本総研, 4月 21, 2025にアクセス、 https://www.jri.co.jp/file/report/researchfocus/pdf/14827.pdf
地域金融機関に求められる気候変動対応支援の強化, 4月 21, 2025にアクセス、 https://www.jri.co.jp/file/report/other/pdf/14801.pdf
岐路に立つ地銀のビジネス戦略 - 日本総研, 4月 21, 2025にアクセス、 https://www.jri.co.jp/file/report/researchfocus/pdf/13962.pdf
七十七銀行 | 企業アウトサイドイン事例 | SDGs Outside-in Series, 4月 21, 2025にアクセス、 https://outside-in.jp/case/77bank/
環境・気候変動への対応 - 七十七銀行, 4月 21, 2025にアクセス、 https://www.77bank.co.jp/sustainability/tcfd.html
七十七銀行にGHG排出量可視化プラットフォーム「C-Turtle® FE」を導入 | NTTデータグループ, 4月 21, 2025にアクセス、 https://www.nttdata.com/global/ja/news/topics/2024/043000/
(様式第2-1) 2023年6月 ESG融資の目標達成の推進についての表明書 株式会社七十七, 4月 21, 2025にアクセス、 https://epc.or.jp/wp-content/uploads/2023/06/77bk2-1.pdf
七十七銀行・SDGs定型目標型融資「77 Seven Goals」の取組みについて掲載されました, 4月 21, 2025にアクセス、 https://corp.otoron.jp/2024/03/%E4%B8%83%E5%8D%81%E4%B8%83%E9%8A%80%E8%A1%8C%E3%83%BBsdgs%E5%AE%9A%E5%9E%8B%E7%9B%AE%E6%A8%99%E5%9E%8B%E8%9E%8D%E8%B3%87%E3%80%8C77-seven-goals%E3%80%8D%E3%81%AE%E5%8F%96%E7%B5%84%E3%81%BF%E3%81%AB/
七十七銀行にて社会課題解決を目的とする「77サステナビリティ・リンク・ローン」を活用し、3億円資金調達いたしました - 【公式】株式会社レジデンシャル不動産, 4月 21, 2025にアクセス、 https://e-resi.jp/news/2024/02/4777/
七十七銀行より 「77サステナビリティ・リンク・ローン(包括評価型)」が 実施されました - PR TIMES, 4月 21, 2025にアクセス、 https://prtimes.jp/a/?c=2296&r=2265&f=d2296-2265-abf595b7642ebd861d364c1ddbb8a273.pdf
七十七銀行よりカーボンクレジットが贈呈されました - 仙台市, 4月 21, 2025にアクセス、 https://www.city.sendai.jp/prj-daiichi/carboncredit.html
地方銀行における 環境・気候変動問題への取り組み, 4月 21, 2025にアクセス、 https://www.chiginkyo.or.jp/assets/kankyo_20240515.pdf
七十七銀行にGHG排出量可視化プラットフォーム「C-Turtle®FE」を導入 - PR TIMES, 4月 21, 2025にアクセス、 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000159.000016308.html
七十七銀行の投融資先企業へGHG排出量可視化プラットフォーム「C-Turtle®」を提供, 4月 21, 2025にアクセス、 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000165.000016308.html
CO2排出減策、企業が学び合う 仙台で脱炭素セミナー、東北電力などが取り組み例紹介, 4月 21, 2025にアクセス、 https://kahoku.news/articles/20250120khn000060.html
東北電力株式会社と株式会社七十七銀行によるカーボンニュートラルの推進に関する連携協定の締結について~地域社会・地域企業の脱炭素実現に向けて, 4月 21, 2025にアクセス、 https://www.tohoku-epco.co.jp/news/normal/1234789_2558.html
05 ESG・SDGs - 七十七銀行, 4月 21, 2025にアクセス、 https://www.77bank.co.jp/pdf/77bank/2021_06ir_05.pdf
ESG地域金融実践ガイド - 環境省, 4月 21, 2025にアクセス、 https://www.env.go.jp/content/000220316.pdf
環境方針 | 七十七銀行, 4月 21, 2025にアクセス、 https://www.77bank.co.jp/sustainability/kankyou_houshin.html
地域食品資源循環ソリューション - NTTビジネスソリューションズ, 4月 21, 2025にアクセス、 https://www.nttbizsol.jp/service/foodwaste-recyclingsolution/
明日にいいこと × 資源の循環 | サステナビリティ - セブン&アイ・ホールディングス, 4月 21, 2025にアクセス、 https://www.7andi.com/sustainability/statement/adgallery/ce/
「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)フォーラム」への参画について News Release 2024 年, 4月 21, 2025にアクセス、 https://www.77bank.co.jp/pdf/newsrelease/2024/24052201_tnfd.pdf
七十七銀行【8341】の人的資本 - キタイシホン, 4月 21, 2025にアクセス、 https://kitaishihon.com/company/8341/human-capital
自然保護 | 取り組みテーマ別 | 一般社団法人 全国銀行協会, 4月 21, 2025にアクセス、 https://www.zenginkyo.or.jp/abstract/eco/ecomap/theme/nature/
人口減少時代、地域金融機関はどう変わるべき? 第2回, 4月 21, 2025にアクセス、 https://www.mri.co.jp/knowledge/column/20240110_2.html
気候変動対応を「チャンス」と捉えた 地域金融機関による取組事例集 - 環境省, 4月 21, 2025にアクセス、 https://www.env.go.jp/content/000213039.pdf
取引先の脱炭素化に向けた 地域金融機関の取組み - 日本銀行, 4月 21, 2025にアクセス、 https://www.boj.or.jp/finsys/c_aft/data/aft221031a2.pdf
地方銀行における 環境・気候変動問題への取り組み, 4月 21, 2025にアクセス、 https://www.chiginkyo.or.jp/assets/kankyo_20230517.pdf
『TNFD』提言に沿った自然関連情報開示について | 企業 | セブン&アイ・ホールディングス, 4月 21, 2025にアクセス、 https://www.7andi.com/company/news/release/202409031500.html
【地銀:業界研究】大手5行(千葉銀行・静岡銀行・横浜銀行・福岡銀行・京都銀行)を比較!業績比較・ランキング・平均年収・社風/強みの違い - ONE CAREER(ワンキャリア), 4月 21, 2025にアクセス、 https://www.onecareer.jp/articles/454
【2025年最新】地方銀行業界の動向6選!仕事内容や志望動機・自己PRのポイントも紹介, 4月 21, 2025にアクセス、 https://www.s-agent.jp/column/16020
銀行業の競争度と地域金融への影響 - 公正取引委員会, 4月 21, 2025にアクセス、 https://www.jftc.go.jp/cprc/events/cprcseminars/index_files/126th-cprcseminar.pdf
2023 七十七銀行統合報告書 - 札幌証券取引所, 4月 21, 2025にアクセス、 https://www.sse.or.jp/wp-content/uploads/2023/08/20230831_83410ESG.pdf