GX RESEARCH

電通グループの環境イニシアチブとパフォーマンスに関する包括的分析レポート

更新日:2025年4月30日
業種:サービス業(9999)

1. はじめに

本報告書は、株式会社電通グループ(以下、電通グループ)の環境への取り組みとパフォーマンスについて、特に「気候変動」「資源循環」「生物多様性」の3つの重点分野に焦点を当て、包括的な分析を行うものである。広告・マーケティング業界におけるグローバルリーダーとして、電通グループが直面する環境課題への対応は、企業価値の持続可能性だけでなく、社会全体のサステナビリティ推進においても重要な意味を持つ。本分析は、同社の具体的な環境戦略、目標、施策、実績データを詳細に検討し、潜在的なリスクと機会、業界のベストプラクティス、現在の課題と今後の推奨事項を明らかにすることを目的とする。さらに、主要競合他社の環境パフォーマンスとの比較分析を通じて、電通グループの立ち位置を客観的に評価し、環境スコアリングに必要な詳細情報を提供することを目指す。分析にあたっては、同社が公開する統合報告書、ESGデータブック、TCFDレポート、公式ウェブサイト情報、および第三者評価機関のデータを参照した 1

2. 電通グループの環境への取り組み

電通グループは、「困難な社会課題を解決する未来のアイデアを生み出していく」ことをサステナビリティ戦略の中心に据え、2024年には「2030サステナビリティ戦略」を更新した 3。この戦略は、単に持続可能であることにとどまらず、未来の可能性を創造することを目指している 7。ESG目標は中期経営計画にも組み込まれ、グループサステナビリティ委員会(GSC)が戦略の進捗と5つの重要課題への取り組み状況を管理している 3

2.1. 気候変動

気候変動は、電通グループが短期、中期、長期にわたって事業に影響を与えると認識している重要な課題である 10。顧客、サプライヤー、消費者、その他のステークホルダーに重大な影響を与える可能性があるため、バリューチェーン全体での温室効果ガス(GHG)排出削減にコミットしている 10。同社は気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言を支持し、グループ全体での情報開示を推進している 10

2.1.1. 温室効果ガス排出削減目標と実績

電通グループは、気候変動の最悪の影響を防ぐため、世界の気温上昇を産業革命前と比較して1.5℃に抑えることに整合したネットゼロ目標を設定している 10。具体的な目標として、2040年までにバリューチェーン全体(スコープ1、2、3)でネットゼロGHG排出を達成することを掲げている 14。これには、2030年までにスコープ1、2、3の絶対排出量を2019年基準年比で46.2%削減するという短期目標と、2040年までにバリューチェーン全体の絶対排出量を90%削減するという長期的な深層脱炭素化目標が含まれる 3。これらの目標は、Science Based Targets initiative(SBTi)によってSBTi Corporate Net Zero Standardに準拠しているとして検証されている 13。2019年の基準年において、スコープ3排出量は総GHG排出量の約94%を占めている 13

実績として、2023年には、社用車のハイブリッド車および電気自動車への移行継続や、東京・汐留の電通本社ビルの100%再生可能エネルギーへの切り替えなどの取り組みにより、スコープ1および2の排出量(マーケット基準)は基準年比で46.2%削減された 14。これは短期目標の前倒し達成を示唆するものである。具体的な排出量データ(単位:tCO2e)を見ると、スコープ1+2排出量は2019年の33,962トンから2023年には18,261トンへと大幅に減少している 14。しかし、スコープ3排出量は2019年の374,884トンに対し、2023年は422,651トンと増加した 14。この増加は主にカテゴリ1(購入した物品・サービス)の増加によるものであり、スコープ1、2、3を合計した総排出量は2019年の408,846トンから2023年には440,911トンへと増加している 14。このスコープ3排出量の増加は、グループ全体の排出量削減における主要な課題であることを示している 14

2.1.2. 再生可能エネルギー利用

電通グループは、RE100に整合したコミットメントとして、2030年までに100%再生可能エネルギーを達成することを目標としている 3。ここでの再生可能エネルギーとは、再生可能資源から発電された電力を指す 13。2023年には、東京・汐留の電通本社ビルにおける100%再生可能エネルギー調達への切り替えなどの取り組みにより、世界の再生可能エネルギー比率を2022年の35.6%から55.3%へと大幅に向上させた 13。総電力消費量65,485,764 kWhに対し、再生可能エネルギー使用量は36,207,570 kWhであった 14。隣接市場からの再生可能エネルギー購入を含めると、調整後の再生可能エネルギー率は59.0%となる 14。2020年には既に100%再生可能エネルギーで事業を運営するという目標を達成したとの記述もあるが 7、これは特定の地域や先行的な取り組みを指す可能性があり、2023年の実績値(55.3%)がグループ全体の現状を示していると考えられる。

2.1.3. 具体的な取り組み

電通グループは、GHG排出削減と再生可能エネルギー利用目標達成のため、多岐にわたる具体的な取り組みを実施している。特に注目されるのは、マーケティングコミュニケーション活動に関連するサプライチェーンのGHG排出量を可視化し削減することを目的とした「マーケティングの脱炭素化イニシアチブ」である 7。これは2023年に日本で開始され、関連する全てのステークホルダーを巻き込み、グローバル基準との互換性を確保しながら業界全体の理想的な状態を議論することを目指している 8。英国の広告制作分野におけるカーボン可視化ツールを提供するAdGreenとの覚書締結も含まれる 15

また、クリエイティブ制作の脱炭素化を目指し、2024年にはサステナビリティに焦点を当てた次世代撮影スタジオ「STUDIO ANZEN FACTORY」を2拠点開設した 14。このスタジオでは、100%再生可能エネルギーを調達し、2025年までに撮影廃棄物のリサイクル率90%(将来的には100%)を目標としている 14

データ管理の強化も進められており、SalesforceのNet Zero Cloudプラットフォームの利用をグループ全体で拡大し、GHG関連データを一元管理することを目指している 14。これは2024年までに完了する予定である 14。さらに、2024年にはグループ全体の調達管理プロジェクトを開始し、サプライヤーから高品質なデータを取得し、サプライチェーンにおける排出量削減を推進する計画である 14

TCFD提言に沿った気候関連リスクと機会の評価・開示も継続的に行われている 2。2023年および2024年にはシナリオ分析を実施し、異常気象による物理的リスクや低炭素経済への移行に伴うリスク・機会を評価している 10。これらの分析結果は、統合報告書や年次のCDP気候変動質問書を通じて開示されている 21

2.2. 資源循環

電通グループは、資源消費の削減と資源利用効率の向上を環境方針に含めており、事業活動における環境負荷低減を目指している 16

2.2.1. 廃棄物削減とリサイクル

電通グループは、事業運営における廃棄物と水の使用量を削減することを目指している 14。具体的な数値目標は設定されていないものの、廃棄物データは毎年収集・公開されている 16。2023年のグループ全体の総廃棄物量は2,170,007 kgであり、2019年の6,456,545 kgから継続的に減少傾向にある 16

リサイクル率については、地域差が見られる。日本では、2023年のリサイクル率は62.3%であった。これは2019年の74.1%、2020年の80.6%から低下しているものの、依然として比較的高い水準を維持している 16。一方、海外事業におけるリサイクル率は2023年に23.7%と、前年の46.5%から大幅に低下した 16。この低下は、海外事業におけるリサイクル廃棄物量が2022年の594,000 kgから2023年には270,000 kgへと大幅に減少したこと、および埋立廃棄物量が増加したことが主な要因と考えられるが、その具体的な背景については公開情報からは特定できなかった 16。この国内外でのリサイクル率の差異と近年の低下傾向は、今後の課題として注視する必要がある。

2.2.2. 具体的な取り組み

資源循環を促進するための具体的な取り組みとして、電通グループ(日本では電通)は、リサイクル、回収、購入のサイクルを促進する資源循環プラットフォーム「Owarasenai De」を開発した 14。これは、廃棄物処理を行う静脈産業と天然資源を利用する動脈産業を消費者を介してデジタルで繋ぐことを目的としている 14。2023年11月からは、中台ホールディングス、明治、ローソンと共に2ヶ月間の実証実験が行われた 14

また、電通プロモーショングループでは、環境負荷低減を意識した素材開発や制作物へのサステナブル素材活用を推進している 23。これには、企業活動で不要になった素材を創造的に再利用し環境負荷を削減するアップサイクルプラットフォーム「で、おわらせないPROJECT」への参加も含まれる 23

前述の「STUDIO ANZEN FACTORY」では、撮影廃棄物のリサイクル率90%(2025年目標)を掲げている 14。さらに、サプライヤーに対しても、環境配慮を含む行動規範(グループサプライヤー行動規範、日本調達ガイドライン)を定め、持続可能なサプライチェーン構築を目指している 14

博報堂DYホールディングスの事例として、TBWA\HAKUHODOが開発した、廃棄されるホタテ貝殻を主原料としたヘルメット「Shellmet」は、地域廃棄物を活用した持続可能な素材開発の好例である 24

2.3. 生物多様性

電通グループは、昆明・モントリオール生物多様性枠組で設定された「2050年までに自然と共生する」という世界的なビジョンに基づき、生物多様性保全への取り組みを進めている 14

2.3.1. 方針と取り組み

2023年、電通グループはTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の提言に基づき、グローバルなバリューチェーン全体における自然資本への依存度と影響に関する高レベル評価を実施した 14。この評価では、上流バリューチェーンにおける直接的な影響と依存度は比較的低いとされたものの、自然に対してポジティブな影響を与えうるいくつかの領域が特定された 14

この評価結果に基づき、電通グループはGHG排出量、自然、関連ステークホルダーへの配慮を調達方針に含めること、自然を考慮した事業ガイドラインを策定することなどを今後の取り組みとして挙げている 14。また、事業運営における水使用量と廃棄物の削減、従業員が自然の価値をより理解・認識するための機会やプログラムの提供、多様な顧客との接点を持つ業界特性を活かした、顧客企業のネイチャーポジティブ化を支援するソリューションの開発・提供、自然のポジティブな側面を含む持続可能な消費を奨励する活動を通じた意識向上なども計画している 14

具体的なサービスとして、電通は自然資本データを豊富に持つスタートアップ企業Nature Think Inc.と提携し、「Check Butterfly」サービスを開発した 14。これは、企業の自然関連活動を科学的・ビジネス的観点から統合的に分析・可視化し、生態系や生物多様性への影響と、ブランディングなどの事業活動との関連性を評価するものである 14

さらに、小規模分散型水循環システムの開発・マーケティングを行うスタートアップWOTA CORP.を支援しており、これにはWOTAの水循環システムの社会実装促進や、2023年のDentsu SGP Ventures Fundを通じた投資が含まれる 14

また、電通グループは2024年3月にTNFDフォーラムに機関サポーターとして参加し、金融・ビジネス界が自然関連の依存度、影響、リスク、機会を評価・報告・行動することを可能にし奨励するというフォーラムのミッションとビジョンに賛同している 14。サプライヤー行動規範においても、生物多様性は環境側面の一つとして言及されており、サプライヤーに対する期待事項に含まれている 16

3. 環境要因に関連する潜在的リスクと機会

電通グループは、TCFD提言に沿ったシナリオ分析を通じて、気候変動に関連するリスクと機会を特定・評価している 10。これらのリスクと機会は、事業戦略や財務パフォーマンスに影響を与える可能性がある。

3.1. リスク分析

特定されたリスクは、物理的リスクと移行リスクに大別される。

物理的リスクとしては、異常気象(洪水、暴風雨、台風、熱波など)の頻度と深刻度の増加が挙げられる 10。これらは、電通グループのオフィスや物理的資産への損害、従業員やサプライチェーンへの影響、事業継続性の阻害につながる可能性がある 10。特に、高炭素排出シナリオ(IPCC SSP5-8.5)下では、極端な暑熱、強風・暴風雨、水ストレス、山火事のリスクが2030年、2050年にかけて「高」または「非常に高」レベルに増大すると予測されている 10。サプライチェーンへの影響としては、サプライヤーの物理的資産への損害による物品・サービスの納入遅延、データセンターの停止、輸送ルートの寸断などが考えられ、代替調達やアウトソーシングによる運用コスト(OpEx)増加のリスクがある 10

移行リスクとしては、規制、市場、評判、技術、法務に関連するものが特定されている 10。低炭素経済への移行に伴う規制強化(炭素税導入、開示要件の増加など)は、コンプライアンスコストの増加や事業運営コストの上昇につながる可能性がある 10。特に広告業界においては、「アドバタイズド・エミッション(広告によって誘発される消費に伴う排出量)」の開示・対応への圧力が高まる可能性も指摘されている 21。市場の変化としては、消費者行動や嗜好が気候変動に配慮した製品・サービスへとシフトすることにより、既存のクライアントの事業や広告需要に影響が出る可能性がある 10。また、高排出産業のクライアントとの取引は、電通グループの評判リスクを高める可能性がある 10。さらに、グリーンウォッシング(環境配慮を装う欺瞞的な表示)に対する監視強化もリスク要因である 21。グリーンウォッシングは、消費者の信頼を損ない、法的な挑戦や規制当局からの罰金、評判の失墜につながる可能性がある 26

3.2. 機会分析

一方で、気候変動への対応は電通グループにとって重要な事業機会も創出する。低炭素社会への移行は、新たな市場やセクター(電気自動車、持続可能な消費財など)の出現を促し、これらの分野のクライアントに対する広告・マーケティング支援の需要を高める可能性がある 10。電通グループは、クライアントのサステナビリティ戦略を製品、サービス、コミュニケーションに統合するソリューションを提供することで、これらの機会を捉えることができる 11

具体的には、クライアントの低炭素移行を支援するコンサルティングやソリューション提供、持続可能な製品・サービスのプロモーション支援などが考えられる 10。例えば、広告からの排出量を削減するための新技術導入をクライアントに提案・支援することも機会となりうる 10。また、サステナビリティに関する専門知識やソリューション提供能力を高めることは、環境意識の高いクライアントや人材を引きつける要因となり、ブランド価値向上にも寄与する 10。電通グループが持つ多様なステークホルダー(企業、政府、市民社会)を繋ぐ力は、社会全体のサステナビリティ推進に貢献する上で大きな強みとなり得る 7

4. 業界のベストプラクティス

広告・マーケティング業界および関連分野において、先進的な企業は気候変動、資源循環、生物多様性に関する様々な取り組みを進めている。

4.1. 気候変動対策

競合他社であるPublicis Groupe、WPP plc、Omnicom Groupなども、SBTiに整合したGHG排出削減目標を設定し、再生可能エネルギー導入を進めている。例えば、WPPは2025年までにスコープ1・2排出量を84%削減(2019年比)、再生可能エネルギー100%達成を目標とし、2024年時点でスコープ1・2排出量82%削減、再生可能エネルギー率93%を達成している 27。Publicis Groupeも2030年までに50%、2040年までに90%の排出削減目標(SBTi検証済み)を掲げている 28。Omnicom GroupもSBTi承認済みの目標(2030年までにスコープ1・2・3を46.2%削減)を持ち、2023年時点で30.2%の削減を達成している 29。これらの企業は、自社の事業運営における排出削減に加え、クライアントの脱炭素化支援やサプライヤーエンゲージメントにも注力している 27

4.2. 資源循環と持続可能な生産

広告制作プロセスにおける環境負荷低減は業界全体の課題である。Ad Net Zeroのような業界イニシアチブは、持続可能な広告制作のためのベストプラクティスを提唱している 34。具体的には、地元での撮影による移動排出量の削減、廃棄物管理(堆肥化、リサイクル、寄付)、小道具やセットの再利用・リサイクル可能な設計、エネルギー効率の高い照明(LED)や機材の使用、水の再利用可能なボトルの使用、持続可能なケータリング(地産地消、肉の制限)、不要なデータの削除や効率的なデータストレージ(LTOテープなど)などが挙げられる 34。デジタル広告においては、キャンペーンタイミングの最適化(低エネルギー需要時間帯の活用)、アセットの圧縮と軽量化、ストリーミング配信の活用、データ使用量の最適化などがカーボンフットプリント削減に繋がる 37。IKEAのARを活用したバーチャルショールームは、カタログ制作を大幅に削減し、デジタルファーストアプローチによる廃棄物削減の好例である 40

4.3. 生物多様性保全

生物多様性への取り組みは、広告業界においてはまだ比較的新しい分野であるが、重要性が増している。Publicis Groupeは2023年から2024年にかけて生物多様性への影響分析を実施し、大きな影響は確認されなかったものの、陸域への影響(232 MSAppbと評価)を認識し、分析を継続するとしている 28。TNFDのようなフレームワークを活用し、自然への依存度と影響を評価し、科学的根拠に基づく目標を設定、進捗を開示することが求められている 26

他業界では、循環経済モデルの導入が進んでいる。Patagoniaの「Worn Wear」プログラム(修理・再販) 41、IKEAの家具買取り・再販プログラム 41、H&Mの古着回収・リサイクル 43、Unileverの詰め替えステーションやリサイクル材利用 41 などが代表例である。これらの取り組みは、製品のライフサイクル全体を通じて資源効率を高め、廃棄物を削減することを目指している。広告業界も、クライアントのこのような取り組みを支援したり、自社の事業プロセスに循環型思考を取り入れたりすることが期待される。例えば、キャンペーンで使用した素材のリサイクル・アップサイクルや、循環型ビジネスモデルを採用するクライアントとの連携強化などが考えられる 45

5. 電通グループの現在の課題と提言

電通グループは気候変動対策を中心に積極的な取り組みを進めているが、いくつかの課題も抱えている。

5.1. 現在の課題

最大の課題の一つは、スコープ3排出量の管理である。2023年にはスコープ1・2排出量が目標達成ペースで削減された一方で、スコープ3排出量は基準年比で増加した 14。特に、購入した物品・サービス(カテゴリ1)と出張(カテゴリ6)の排出量が増加しており 14、サプライチェーン全体での排出量把握と削減策の実行が急務である。グループ全体の排出量の大部分を占めるスコープ3の管理には、サプライヤーとの連携強化と、より精緻なデータ収集・分析基盤が不可欠となる 14

資源循環においては、海外事業におけるリサイクル率の大幅な低下(2023年)が懸念材料である 16。この原因究明と改善策の実施が求められる。廃棄物全体の削減は進んでいるものの、リサイクル率の向上、特に海外拠点における標準化された廃棄物管理プロセスの確立が課題と言える。

生物多様性に関しては、TNFDへの賛同や影響評価の実施など、取り組みを開始している段階にある 14。しかし、具体的な目標設定や、事業活動を通じたポジティブインパクト創出に向けた施策の具体化はこれからの課題である。Check Butterflyのようなソリューション提供は進んでいるが、グループ全体の事業プロセスへの統合や、より広範な生態系への配慮を示す行動計画が期待される。

また、広告業界特有のリスクとして、グリーンウォッシングへの加担回避がある 25。サステナビリティに関するコミュニケーションが増加する中で、クライアントの環境主張の正当性を吟味し、誤解を招く表現を避けるための社内体制やガイドラインの徹底が重要となる 14。電通グループも「サステナビリティコミュニケーションガイド2023」を公開するなど対策を進めているが 14、継続的な注意が必要である。

5.2. 今後の提言

上記の課題を踏まえ、電通グループが今後注力すべき領域として以下を提言する。

第一に、スコープ3排出量削減に向けたサプライヤーエンゲージメントの抜本的強化である。2024年に開始された調達管理プロジェクト 14 を通じて、主要サプライヤーに対する排出量データの提出要請、削減目標設定の奨励、協働での削減プロジェクト実施などを推進すべきである。特に排出量が多いカテゴリ(購入サービス、メディアバイイング、出張)に重点を置くことが効果的である。Salesforce Net Zero Cloud 14 の活用によるデータ精度向上と管理体制強化も継続する必要がある。

第二に、資源循環における国内外の取り組み格差の是正である。海外拠点のリサイクル率低下の原因を特定し、グローバルで標準化された廃棄物管理プロセスと目標を設定・導入することが望ましい。廃棄物削減とリサイクル率向上に向けた従業員教育や、サステナブル素材の利用促進(特に制作物において)も強化すべきである。

第三に、生物多様性に関するコミットメントの具体化である。TNFD提言に基づく評価・開示を深化させるとともに、生物多様性保全に貢献するための具体的な数値目標(例:自然再生プロジェクトへの貢献、生物多様性に配慮した調達比率など)を設定し、行動計画に落とし込むことが重要である。開発したソリューション(Check Butterflyなど)の積極的な活用と、事業活動全体でのネイチャーポジティブへの貢献を目指すべきである。

第四に、グリーンウォッシング防止策の継続と進化である。サステナビリティコミュニケーションガイドの浸透に加え、クライアントの環境主張を検証するプロセスを強化し、従業員向けの研修を充実させる必要がある。透明性と誠実性を担保したコミュニケーションを通じて、社会からの信頼を維持・向上させることが不可欠である。

6. 競合分析

電通グループの環境への取り組みを評価する上で、主要な競合他社の動向を把握することは重要である。ここでは、Publicis Groupe、WPP plc、Omnicom Group、および国内の主要競合である博報堂DYホールディングスを取り上げる。

6.1. 主要競合企業の特定

グローバルな広告・マーケティング業界における主要プレイヤーとして、Publicis Groupe(フランス)、WPP plc(英国)、Omnicom Group(米国)が挙げられる。これらは電通グループと同様に、世界規模で事業を展開し、多様なサービスを提供している。日本国内においては、博報堂DYホールディングスが最大の競合相手となる。

6.2. 競合企業の環境への取り組み

各社とも、気候変動対策を最重要課題の一つと位置づけ、SBTiに準拠したGHG排出削減目標を設定し、再生可能エネルギー導入を進めている点で共通している 24。WPPはスコープ1・2排出量削減と再エネ導入で高い目標を掲げ、着実な進捗を示している 27。Publicis Groupeも野心的な削減目標を持ち、ESG全般で高い評価を得ている傾向がある 28。Omnicom GroupもSBTi承認目標を持ち、排出削減を進めている 29。博報堂DYホールディングスも、スコープ1・2・3の削減目標と再エネ導入目標を設定し、進捗を開示している 24

資源循環や生物多様性に関しては、各社とも取り組みを進めているものの、気候変動対策ほどの詳細な目標やデータ開示は限定的である場合が多い。WPPは廃棄物削減やプラスチック排除に取り組んでいるが、データの一貫性に課題があるとしている 33。Publicis Groupeは生物多様性影響評価を実施している 28。博報堂DYホールディングスは廃棄物削減・リサイクル率目標を持ち、進捗を報告しているが、生物多様性に関する具体的な目標はまだ見られない 24

全体的に、業界大手は気候変動対策で先行しており、スコープ3排出量管理やサプライヤーエンゲージメント、クライアントへのサステナブルソリューション提供が共通の焦点となっている。資源循環や生物多様性は、今後の取り組み強化が期待される分野である。

7. 環境スコアのベンチマーキング

外部評価機関によるESGスコアは、企業の環境パフォーマンスを客観的に比較・評価する上で有用な指標となる。

7.1. 評価機関とスコア

主要なESG評価機関として、CDP(旧Carbon Disclosure Project)、MSCI、Sustainalyticsなどが挙げられる。CDPは気候変動、水、森林に関する企業の環境情報開示を評価し、AからFのスコアを付与する 50。MSCI ESGレーティングはAAAからCCCの7段階で評価する 52。Sustainalytics ESGリスクレーティングは、企業が直面するESGリスクの大きさを0点(リスクなし)からの数値で示し、リスクレベル(無視可能、低、中、高、深刻)に分類する 53

7.2. 電通グループの評価

電通グループの評価は近年向上傾向にある。MSCI ESGレーティングは、2024年にBBBから「A」へと格上げされた 52。Sustainalytics ESGリスクレーティングも、2019年以来初めて「低リスク」評価となり、スコアは13.2(2025年3月時点)と評価された 52。これは、ガバナンス構造の改善や情報開示の強化が高く評価された結果である 52。CDPについては、2023年のTCFDレポートで年次提出に言及があるものの 21、2023年または2024年の具体的な気候変動スコアは提供された情報からは確認できなかった。ただし、業界全体としてはB評価以上がリーダーと見なされる傾向がある 58

7.3. 競合他社の評価

競合他社の評価を見ると、Publicis GroupeとWPP plcは特に高い評価を得ている。Publicis GroupeはMSCIでAA(2020年時点)またはA(2022年時点)、Sustainalyticsで「無視可能リスク」(9.7)、CDPでB評価を受けている 59。WPP plcもMSCIでAA、Sustainalyticsで「無視可能リスク」(9.1)、CDPでB評価(2023年)となっている 63。Omnicom GroupはMSCIでBBB 58、Sustainalyticsで「無視可能リスク」(14.6)と評価されている 55。博報堂DYホールディングスは、Sustainalyticsで「低リスク」(19.3、2024年7月時点) 66、CDPでB評価(2024年) 67、S&P Global ESGスコアで32(2023年) 68 と評価されている。

これらのスコアを比較すると、電通グループはMSCIとSustainalyticsで近年評価を向上させ、WPPやPublicisといったトップランナーに近づきつつあることがわかる。特にSustainalyticsのリスク評価ではOmnicomよりも良好な評価を得ている。博報堂DYホールディングスと比較すると、Sustainalyticsでは電通グループの方がリスクが低いと評価されているが、CDPでは同等のB評価である。ただし、評価機関や評価時期によってスコアは変動するため、継続的なモニタリングが必要である。

8. 結論

本分析の結果、電通グループは気候変動対策を軸に、環境への取り組みを強化していることが確認された。SBTi承認済みの野心的なGHG排出削減目標(2040年ネットゼロ、2030年46.2%削減)を設定し、スコープ1・2排出量削減と再生可能エネルギー導入において着実な進捗を示している 13。特に、マーケティング活動の脱炭素化やサステナブルな制作スタジオの設立など、自社の事業特性を活かしたユニークな取り組みは注目に値する 14

一方で、課題も存在する。総排出量の大部分を占めるスコープ3排出量は依然として増加傾向にあり、サプライチェーン全体での管理強化が不可欠である 14。資源循環においては、海外拠点のリサイクル率向上が急務であり、生物多様性に関しては、方針策定から具体的な行動計画への移行が求められる 14

競合他社との比較では、電通グループは近年ESG評価を向上させており、業界リーダーに追随する動きを見せている 52。しかし、Publicis GroupeやWPPといったトップ企業は依然として高い評価を維持しており、継続的な努力が必要である 59

今後、電通グループが持続的な成長を達成し、社会全体のサステナビリティに貢献するためには、スコープ3排出量削減への注力、資源循環におけるグローバルな取り組みの標準化、生物多様性保全活動の具体化、そして透明性の高いコミュニケーションを通じたグリーンウォッシングリスクの回避が鍵となる。B2B2S(Business-to-Business-to-Society)企業として 2、クライアントや社会全体の持続可能な変革を支援する役割を果たすことが、同社の企業価値向上に不可欠であると言える。

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