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東レ株式会社の環境パフォーマンス分析レポート

更新日:2025年4月30日
東レ3402
業種:製造業(3333)

序論

東レ株式会社の事業概要と本報告書の目的

東レ株式会社(以下、東レ)は、有機合成化学、高分子化学、バイオテクノロジーを基盤とし、ナノテクノロジーを融合させた革新技術・先端材料の創出を通じて、社会の発展と持続可能性の両立に貢献することを目指す総合化学企業グループである1。同社は「新しい価値の創造を通じた社会への貢献」を企業理念として掲げ、その実現に向けた事業活動を展開している1。繊維・テキスタイル、機能化成品、炭素繊維複合材料、環境・エンジニアリング、ライフサイエンスなど多岐にわたる事業分野において、グローバルに事業を展開している2

近年、気候変動、資源枯渇、生物多様性の損失といった地球規模の環境課題が深刻化し、企業に対する環境パフォーマンスへの要求と期待はますます高まっている。このような背景のもと、本報告書は、東レの環境パフォーマンス、特に「気候変動」「資源循環」「生物多様性」という3つの重要分野における取り組みを包括的かつ深く分析することを目的とする。具体的には、同社の環境戦略、目標設定、具体的な施策、達成状況、関連するリスクと機会、業界内での位置づけ、そして今後の課題と推奨される行動について、学術的な視点から詳細に検討する。これにより、東レの環境スコアリングに必要な基礎情報を体系的に整理し、同社の環境経営の実態と将来展望を明らかにすることを目指す。分析の対象期間は主に2023年度(2023年4月~2024年3月)とし、主要な情報源として、同社発行の統合報告書1、CSRレポート7、TCFDレポート9、TNFDレポート10、および関連する公開情報を参照する。

分析対象領域:気候変動、資源循環、生物多様性

本報告書が分析対象とする「気候変動」「資源循環」「生物多様性」の3領域は、現代社会が直面する最も重要な地球環境問題であり、国際的な目標設定(パリ協定、SDGsなど)においても中核的な位置を占めている4。東レグループ自身も、これらの課題を自社の持続可能な成長と社会への貢献を実現するための重要課題(マテリアリティ)として認識し、その解決に向けた取り組みを強化している3

具体的には、2018年に策定された「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」において、2050年に目指す4つの世界として「地球規模での温室効果ガスの排出と吸収のバランスが達成された世界(GHG排出実質ゼロの世界)」、「資源が持続可能な形で管理される世界」、「誰もが安全な水・空気を利用し、自然環境が回復した世界」、「すべての人が健康で衛生的な生活を送る世界」を掲げており、これらは本報告書の分析対象領域と直接的に対応している8。さらに、2023年に特定されたCSRマテリアリティにおいても、「気候変動対策の加速」「循環型社会実現への貢献」「自然環境の回復への貢献」が明記されており、これらの領域が同社のサステナビリティ戦略の中心であることが示されている3

本報告書では、各領域について、東レが設定している具体的な目標、推進している取り組みの内容と実績、それらに関連する潜在的なリスクと事業機会、化学・素材業界における先進的な事例との比較、主要な競合他社(旭化成、三菱ケミカルグループ、帝人)との比較分析、そしてCDP、MSCI、Sustainalyticsなどの外部評価機関によるスコアを用いたベンチマーキングを行う。これにより、東レの環境パフォーマンスを多角的に評価し、今後の課題と改善の方向性を提示する。

第1章 東レの環境戦略とガバナンス

1.1 サステナビリティ・ビジョンと重要課題

東レグループの環境戦略の根幹には、1986年に制定された企業理念「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」が存在する1。この理念は、創業以来の経営思想である「社会への奉仕」を継承し、2020年には「東レ理念」として体系化された4。この理念に基づき、東レは自社の存在意義を「革新技術・先端材料の提供を通じて、世界的課題の解決に貢献すること」と定義している3

この企業理念を具現化するための長期的な指針として、2018年に「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」が策定された8。このビジョンは、2050年を見据え、東レグループが目指すべき4つの世界を描き出している。すなわち、「地球規模での温室効果ガスの排出と吸収のバランスが達成された世界(GHG排出実質ゼロの世界)」、「資源が持続可能な形で管理される世界」、「誰もが安全な水・空気を利用し、自然環境が回復した世界」、そして「すべての人が健康で衛生的な生活を送る世界」である8。これらの目標達成に向け、東レは自社の強みである革新技術と先端材料を活用し、地球規模の課題に対する本質的な解決策を提供することを目指している8

さらに、2023年6月には、これらのビジョンと事業活動を結びつけるための具体的な優先課題として、CSRマテリアリティが見直され、特定された3。これは、社会への貢献に関する5項目と、経営の基盤となる6項目の計11項目から構成される。本報告書の分析対象である「気候変動対策の加速」、「循環型社会実現への貢献」、「自然環境の回復への貢献」は、社会貢献に関するマテリアリティの中核をなしており、東レが環境課題への対応を経営上の最重要課題の一つと位置づけていることを明確に示している3

これらの理念、ビジョン、マテリアリティは、東レがサステナビリティを単なる社会貢献活動としてではなく、事業戦略そのものと一体化させて推進していることを示唆している3。特に、サステナビリティに貢献する事業・製品群を「サステナビリティイノベーション(SI)事業」と定義し、具体的な売上収益目標を設定してその拡大を推進している点は3、環境課題への対応をリスク管理の側面だけでなく、新たな事業機会の創出と捉える積極的な姿勢を裏付けている。琵琶湖湖畔での創業という歴史的背景も、水資源管理をはじめとする環境保全への高い意識につながっている3。企業理念、サステナビリティ・ビジョン、マテリアリティ、そして具体的なSI事業戦略が一貫して「社会貢献」と「価値創造」を結びつけていることは、東レが環境経営を企業価値向上のための重要なドライバーと認識していることを示していると言える。

1.2 環境関連ガバナンス体制

東レグループにおける環境戦略およびサステナビリティ関連施策の効果的な推進と監督のために、明確なガバナンス体制が構築されている。その中核を担うのが、社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」である9。この委員会は、サステナビリティ・ビジョンで設定された目標(2030年度目標など)の進捗管理、関連する重要プロジェクト(SI事業拡大プロジェクトなど)の年次活動計画の審議、実行状況の統括管理、そして気候変動対策をはじめとするサステナビリティ全般に関する重要方針の審議・決定を行う最高意思決定機関として機能している7

サステナビリティ委員会の傘下には、具体的な課題に対応するための専門部会が設置されている。特に「気候変動対策プロジェクト」は、GHG排出量削減に取り組む「GHG削減部会」(旧:気候変動対策部会)、資源循環を推進する「資源循環推進部会」、そして生物多様性・自然資本に対応する「NP(ネイチャーポジティブ)部会」などで構成されている3。これらの部会が連携し、気候変動、資源循環、生物多様性という相互に関連する課題に対して統合的に取り組む体制が整備されている点は注目に値する。これは、環境課題を個別の問題としてではなく、相互依存的なシステムとして捉え、全体最適を目指すアプローチを採用していることを示唆している。

また、グループ全体のリスク管理体制の一環として「リスクマネジメント委員会」が設置されており、気候変動や生物多様性・自然資本に関連するリスクも定期的に特定・評価されている3

これらの委員会や部会での審議・決定事項、およびサステナビリティ・ビジョンの進捗状況は、定期的に取締役会に報告される7。取締役会は、これらの報告に基づき、サステナビリティに関する取り組み状況を監督し、気候変動を含む環境関連の機会とリスクを経営上の重要な判断要素として考慮し、総合的な意思決定を行う役割を担っている7

このように、東レでは、経営トップの強いコミットメント(社長が委員長を務めるサステナビリティ委員会)9と、専門部会による具体的な戦略推進、そして取締役会による監督という、トップダウンとボトムアップ、監督と執行が連携したガバナンス体制が構築されている。この体制は、複雑化する環境課題に対して、迅速かつ効果的に対応し、サステナビリティ戦略を経営に統合していく上で重要な基盤となっていると考えられる。

1.3 TCFDおよびTNFDへの対応

東レグループは、気候変動および自然資本に関する情報開示の国際的なフレームワークであるTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)およびTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)に対して、早期かつ積極的に対応を進めている。

TCFD提言に対しては、2019年5月に賛同を表明し、TCFDコンソーシアムにも参画している21。気候変動が事業に与える影響(機会とリスク)を評価するため、TCFD提言に沿ったシナリオ分析(1.5℃、2℃、4℃シナリオを検討)を実施し21、その結果を含む気候変動への対応状況をまとめた「東レグループTCFDレポート」を定期的に発行している。最新版は2024年6月発行のVer. 2.1である7。このレポートでは、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標といったTCFDの4つの開示推奨項目に沿って、詳細な情報が開示されている。

自然資本と生物多様性に関しては、TNFD提言への対応を迅速に進めている。2024年1月にはTNFD提言への賛同を表明し、TNFD Early Adopterとして登録するとともに、TNFDフォーラムにも参画している11。さらに、2024年12月には、TNFD提言に基づき、グループの生物多様性・自然資本への対応をまとめた「東レグループTNFDレポートVer.1」を発行した7。これは、国内の化学繊維メーカーとしては初めての発行であり23、同分野における先進的な取り組みを示すものである。このレポートでは、TNFDが推奨するLEAPアプローチ(Locate, Evaluate, Assess, Prepare)3を用いて、事業活動と自然資本との依存関係や影響、リスクと機会の評価・分析が行われている。

これらのTCFDおよびTNFDへの積極的な対応は、東レが気候変動および自然資本に関するリスクと機会を経営上の重要課題として深く認識し、その情報を透明性高く開示することで、投資家をはじめとするステークホルダーとの建設的な対話を図ろうとする姿勢を示している。特に、まだフレームワークが比較的新しいTNFDへの迅速な対応10は、生物多様性・自然資本の分野においてもリーダーシップを発揮しようとする意欲の表れと解釈できる。シナリオ分析21やLEAPアプローチ3といった具体的な分析手法の採用は、リスクと機会の定量的・定性的な評価を深化させ、より実効性のある戦略策定につなげようとする取り組みを示唆している。

第2章 気候変動への対応

2.1 目標とコミットメント

2.1.1 GHG排出削減目標(Scope 1, 2, 3)

東レグループは、気候変動問題を最重要課題の一つと捉え、パリ協定の目標達成に貢献するため、温室効果ガス(GHG)排出量削減に関する具体的な目標を設定している。自社の事業活動に伴う直接排出(Scope 1)および間接排出(Scope 2)については、2050年までにカーボンニュートラル(排出実質ゼロ)を達成するという長期目標を掲げている7。この長期目標に向けた中期目標として、2030年度までに、生産活動におけるGHG排出量の売上収益原単位を2013年度比で50%以上削減することを目指している3。さらに、日本国内の事業所におけるGHG排出量については、絶対量で2030年度に2013年度比40%以上削減するという、より野心的な目標も設定している3

サプライチェーン全体での排出量(Scope 3)に関しても、その重要性を認識し、削減に向けた取り組みを進めている。特に排出量の大きいカテゴリー1(購入した製品・サービス)については、主要サプライヤーとのエンゲージメントを通じて削減方針を共有し、具体的な削減策を推進している7。ただし、現時点ではグループ全体としてのScope 3排出量に関する具体的な数値目標は、公開されている情報からは明確には確認されていない3。しかしながら、原料のバイオ化やリサイクル推進などを通じて、サプライチェーン全体のGHG排出量削減を進める方針は示されている3

2.1.2 サステナビリティイノベーション事業目標

東レグループは、気候変動対策を事業機会と捉え、自社の技術力を活かして社会全体のGHG排出削減に貢献することを目指している。その中核となるのが「サステナビリティイノベーション(SI)事業」である3。SI事業には、再生可能エネルギー関連素材、水素関連部材、モビリティ軽量化に貢献する炭素繊維、CO2分離膜など、気候変動対策に直接的に貢献する製品・技術が含まれる。

東レは、このSI事業の拡大に関する具体的な数値目標を設定している。売上収益については、2025年度に1兆6,000億円3、2030年度には2013年度比で4.5倍に拡大することを目指している7。さらに、これらのSI製品・サービスの提供を通じて、顧客や社会全体のGHG排出量削減に貢献する効果(CO2削減貢献量)についても目標を設定しており、2025年度までに2013年度比で15倍3、2030年度までには同25倍に拡大することを目指している7。これらの目標は、東レが自社の排出削減努力(Scope 1, 2, 3)と並行して、事業活動そのものを通じて気候変動問題の解決に貢献するという、両面からのアプローチを重視していることを示している。

2.2 具体的な取り組み

2.2.1 省エネルギーと再生可能エネルギー導入

東レグループは、自社のGHG排出量削減の基本として、エネルギー効率の向上と再生可能エネルギーの導入を積極的に推進している。省エネルギー活動については、エネルギー原単位を年率2%低減することを努力目標とし3、一部事業所では年率1%以上の削減を継続的な目標として設定している26。具体的には、エネルギー消費量の大きい設備の運転管理基準を最適化し、効率的な運転を追求する26とともに、生産プロセス全体の改善13を通じて、エネルギー利用の効率化と無駄・ロスの削減に取り組んでいる。

再生可能エネルギーの導入に関しては、国内外の工場敷地内に太陽光発電設備を積極的に設置している3。2023年度には滋賀事業場での増設や海外拠点での新増設が行われた7。また、東京本社、名古屋支店、大阪本社などでは、使用する電力を実質的に再生可能エネルギー100%に切り替える取り組みも進めている3。さらに、エネルギー源の脱炭素化に向けて、石炭火力からの転換を進めており、インドネシアのグループ会社2拠点では石炭火力発電を停止し、購入電力や代替燃料への切り替えを実施した7。将来的には、電化を進めるとともに、電化が困難な熱エネルギー需要に対しては、水素、アンモニア、合成燃料、バイオマスといったカーボンニュートラルな燃料の活用を検討している3。東海工場では、ボイラー燃料としてカーボンニュートラルな汚泥燃料の混焼も実施されている3

2.2.2 プロセス改善と技術革新

エネルギー効率改善に加え、東レは生産プロセスそのものの革新や、排出削減を促進する仕組みの導入にも注力している。革新的な低GHG排出生産技術の開発や、既存生産プロセスの更なる高効率化に向けた研究開発を継続的に行っている3

また、GHG排出削減に向けた投資や活動を経済的に後押しする仕組みとして、社内カーボンプライシング(ICP)制度を導入している3。この制度は、省エネルギー投資やGHG削減活動に対するインセンティブとして機能するだけでなく、新規設備投資の採算性評価や気候変動関連リスクの分析においても、炭素コストを内部的に考慮するための参考値として活用されている3。2024年度の社内炭素価格は1トンあたり10,000円に設定されており7、脱炭素化に向けた意思決定を促進するツールとなっている。

2.2.3 サプライチェーンにおける排出削減

東レグループは、自社(Scope 1, 2)だけでなく、サプライチェーン全体(Scope 3)でのGHG排出量削減の重要性を認識し、多岐にわたる取り組みを進めている。排出量が大きいカテゴリー1(購入した製品・サービス)については、主要な原料サプライヤーとの連携を強化し、サプライヤーが供給する原材料のカーボンフットプリント(CFP)削減に向けた対話や協働を進めている3。具体的には、サプライヤーの削減計画や目標、課題などを共有し、削減に向けた取り組みを共同で推進している9

また、原材料調達の段階で、バイオマス由来原料3やリサイクル原料3への転換を積極的に進めることで、上流(アップストリーム)での排出量削減を図っている。

下流(ダウンストリーム)においては、自社が提供する製品・サービスを通じて顧客や社会全体の排出削減に貢献することを目指している。特に、軽量でありながら高強度という特性を持つ炭素繊維複合材料は、航空機や自動車の軽量化に貢献し、燃費向上や電費改善を通じて使用段階でのCO2排出量削減に寄与する13。これは、前述のSI事業13の中核的な取り組みの一つである。

さらに、業界横断的な連携や情報共有の場として、GXリーグに参画している3。GXリーグでは、自社の排出削減目標や実績、カーボンニュートラルに向けた取り組みに関する情報を公開するとともに、他の参画企業との意見交換やネットワーキングを通じて、共通課題の解決や新たなビジネス機会の創出に向けた活動を行っている14

2.3 実績と進捗

東レグループの気候変動対策に関する目標達成に向けた進捗状況は、2023年度の実績において着実な成果を示している。生産活動におけるGHG排出量の売上収益原単位は、2013年度比で36%削減され、2030年度目標である50%以上削減に向けて前進している3。同様に、日本国内のGHG排出量(絶対量)も2013年度比で26%削減されており、2030年度目標の40%以上削減に向けた取り組みが進んでいる3

気候変動対策と事業成長を結びつけるサステナビリティイノベーション(SI)事業に関しても、目標達成に向けた進捗が見られる。2023年度のSI事業売上収益は1兆3,115億円に達し、2025年度目標の1兆6,000億円達成に向けて順調に推移している3。また、バリューチェーン全体へのCO2削減貢献量は、2013年度比で10.3倍となり、2025年度目標の15倍、2030年度目標の25倍に向けて拡大している3

再生可能エネルギー導入の具体的な進捗としては、太陽光発電設備の導入が進んでおり、2023年度の設備能力増加率は2022年度比で101%と、目標(同10%増)を大幅に上回る結果となった3

外部評価機関による評価として、国際的な非営利組織CDPによる2023年の気候変動分野の評価は「B」であった3。これは、気候変動に関するリスクと機会の認識、ガバナンス体制の整備、排出削減に向けた行動など、一定レベルの管理(マネジメントレベル)が行われていることを示す評価である30。しかしながら、最高評価である「Aリスト」(リーダーシップレベル)34には達しておらず、目標設定の野心性、Scope 3への取り組み、再生可能エネルギー導入の更なる加速などの面で、改善の余地があることを示唆している36

総じて、東レは気候変動に関する目標達成に向けて着実な進捗を見せているものの、特に絶対量での排出削減やサプライチェーン全体での取り組み(Scope 3)、そしてリーダーシップレベルの評価獲得に向けては、更なる努力と戦略の深化が求められる状況にあると言える。SI事業の成長がCO2削減貢献量の拡大に直結していることから、この事業分野での継続的な技術革新と市場展開が、今後の気候変動目標達成における重要な鍵を握ると考えられる。

第3章 資源循環への貢献

3.1 目標とコミットメント

東レグループは、持続可能な社会の実現に向け、資源の有効活用と循環型経済(サーキュラーエコノミー)への移行を重要な経営課題と位置づけている。サステナビリティ・ビジョンにおいては、「資源が持続可能な形で管理される世界」の実現を2050年に向けた目標の一つとして掲げている8

このビジョンの下、具体的な目標として、まず自社の生産活動における廃棄物管理の高度化を目指している。廃棄物のリサイクル率については、高い水準を維持・向上させることを目標としており、2023年度には86%以上、2025年度には87%以上を達成することを目指している3

さらに、事業活動を通じて資源循環に貢献することも重視している。サステナビリティイノベーション(SI)事業においては、リサイクル素材やバイオマス由来素材の活用、製品の長寿命化など、資源循環に貢献する製品・サービスの売上収益拡大を目指している3。また、主要なポリマーであるPET(ポリエチレンテレフタレート)およびナイロンについて、リサイクル原料やバイオマス由来原料、CO2利用原料などの再生資源等の使用比率を、2030年度までに20%に引き上げるという具体的な目標を設定している7。これらの目標は、東レが自社の環境負荷低減だけでなく、社会全体の資源循環システムの構築に貢献しようとする強い意志を示している。

3.2 具体的な取り組み

3.2.1 リサイクル技術とシステム(マテリアル・ケミカル)

東レグループは、資源循環型社会の実現に向けて、独自の技術力とパートナーシップを活かしたリサイクル技術の開発と社会実装を積極的に推進している。その取り組みを紹介する特設サイト「GO CIRCULAR」16では、製品の生産・販売・消費を担う「動脈産業」と、使用済み製品の回収・再資源化を担う「静脈産業」との連携の重要性を強調し39、共創パートナー38と共に「リサイクルの環」を構築・拡大していく姿勢を示している。

東レは、物理的な性質を維持したまま再生利用するマテリアルリサイクル(MR)と、化学的に分解して原料に戻すケミカルリサイクル(CR)の両方に取り組んでおり38、多様な素材ポートフォリオに対応した幅広いリサイクルソリューションを提供している。

具体的な事例として、繊維分野では、リサイクル素材ブランド「&+®(アンドプラス)」を展開している39。このブランドでは、回収されたPETボトルを原料とする繊維41や、漁網をケミカルリサイクルして再生したナイロン繊維42、さらにはユニクロとの協業により、使用済みダウン製品から羽毛を効率的に分離・回収し、新たなダウン製品の素材として再利用する循環型システム42などを開発・提供している。

樹脂分野では、リサイクル樹脂製品の統合ブランド「Ecouse™(エコユース)」を展開し、ABS樹脂、ナイロン樹脂、PBT樹脂、PPS樹脂など幅広い製品ラインナップを揃えている39。これらには、製造工程で発生する端材など(プレコンシューマー材)だけでなく、使用済み製品由来の材料(ポストコンシューマー材)も活用されている43。具体的なシステムとしては、家電リサイクル法に基づき回収されたエアコン室内機ファン(ガラス繊維強化AS樹脂)を、独自の異物除去・材料ブレンド技術により新品同等の物性を持つファンに再生するマテリアルリサイクルシステムが挙げられる43。さらに、ケミカルリサイクル技術の開発も進んでおり、本田技術研究所(Honda)と共同で、使用済み自動車部品(ガラス繊維配合ナイロン6樹脂)を亜臨界水を用いて解重合し、原料モノマーであるカプロラクタムに再生する技術の実証実験を進めている3。また、耐熱性や耐薬品性に優れるスーパーエンジニアリングプラスチックであるPPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂についても、ケミカルリサイクル技術の開発と供給体制構築を進めている42

フィルム分野では、顧客の製造工程で使用されたPETフィルムを回収し、再びフィルム用原料として循環再利用するリサイクルシステム「Ecouse®ルミラー®」を実用化している3。これにより、化石由来樹脂の使用量削減とCO2排出量削減(従来品比最大50%)に貢献している42

炭素繊維分野においても、リサイクル炭素繊維(rCF)の活用を推進している3。航空機(ボーイング787)の主翼製造工程で発生する端材を回収・リサイクルし、そのrCFがLenovo社のノートパソコン筐体に採用されるなど、具体的な製品化事例も生まれている3。東レは、炭素繊維の特性(耐熱性、耐紫外線性、非吸湿性)を活かし、独自の「マテリアルECOシステム」構築を目指している42

これらのリサイクルプロセスにおける信頼性と透明性を確保するため、ブロックチェーン技術を活用したトレーサビリティシステムの構築も検討されている42。旭化成などが同様のプラットフォーム構築を進めている事例44もあり、素材業界全体での関心が高まっている分野である。

3.2.2 バイオマス由来原料の活用

東レグループは、化石資源への依存度を低減し、カーボンニュートラルな社会への移行に貢献するため、再生可能な植物資源などを原料とするバイオマス由来材料の開発と利用拡大にも注力している。

代表的な製品として、植物由来PET(ポリエステル)「エコディア® PET」がある3。これは、従来の石油由来PETと同等の品質・性能を維持しつつ、原料の一部(モノマーであるエチレングリコール)をサトウキビの廃糖蜜など、再生可能な植物由来資源から製造したものに置き換えた素材である45。現在、量産されているのは原料の30%が植物由来の部分バイオマスPETであるが、将来的にはテレフタル酸も植物由来とし、100%植物由来PETの実現を目指して開発が進められている45。植物由来PETは、原料となる植物が成長過程でCO2を吸収するため、焼却時に排出されるCO2が地球温暖化ガスとしてカウントされない(カーボンニュートラル)という利点がある45。東レは、原料のトレーサビリティ確保にも努めている45

PET以外にも、様々な素材でバイオマス化を進めている。非可食バイオマス(食料と競合しない植物資源)から糖を製造する糖化プロセスの技術実証を進めており42、将来的にはこの糖を起点として様々なバイオベース化学品を製造するサプライチェーンの構築を目指している3。具体的には、バイオマス由来の不織布15や、バイオマスABS樹脂、バイオマスPPS樹脂42などの開発・供給も行っている。これらのバイオマス由来製品の供給においては、サプライチェーン上でバイオマス由来原料と化石由来原料が混合される場合でも、その投入割合に応じてバイオマス由来特性を製品に割り当てる「マスバランス方式」を採用し、ISCC PLUSなどの国際認証を取得することで、透明性と信頼性を確保している42。これらのバイオマス関連の取り組みは、「ecodear®(エコディア)」という統合ブランドの下で展開されている39

3.2.3 廃棄物削減と製品設計

資源循環への貢献は、リサイクルやバイオマス化だけでなく、そもそも廃棄物の発生を抑制すること(リデュース)も重要である。東レグループは、生産活動における廃棄物削減にも継続的に取り組んでいる。各事業場では、産業廃棄物処理計画を策定し、発生量の抑制と削減目標を設定している26。具体的な取り組みとして、製造工程で発生する副生廃液をボイラー燃料として有効活用したり26、発生した屑品を他の用途で再利用したりするなど、3R(リデュース、リユース、リサイクル)を推進している19。その結果、多くの事業場で廃棄物の再資源化率99%以上を意味する「ゼロエミッション」を達成している26

また、製品設計の段階から資源循環を意識することも重要である。東レは、リサイクルしやすい製品設計に貢献する素材の開発にも取り組んでおり、例えば食品包装材などで、異なる素材を組み合わせるのではなく単一素材(モノポリマー)で構成することでリサイクル性を高める「モノマテリアル化」を推進している3。さらに、製品自体の耐久性を向上させることで、製品寿命を延ばし、廃棄物の発生頻度を低減することにも貢献している3

3.3 実績と進捗

東レグループの資源循環に関する取り組みは、具体的な成果として現れている。自社の生産活動における廃棄物リサイクル率は、目標である86%以上を達成し、2023年度には87.0%という高い水準を記録した3。これは、生産現場における継続的な廃棄物削減と再資源化の努力が実を結んだ結果と言える。

事業を通じた貢献としては、サステナビリティイノベーション(SI)事業において、資源循環に貢献する製品群の売上収益が着実に増加している3。具体的な製品ブランドとしては、リサイクル素材を活用した「Ecouse®」39および「&+®」41、バイオマス由来素材を活用した「ecodear®」39が市場に展開され、様々な用途で採用が進んでいる。例えば、ボーイング787の製造工程で発生した炭素繊維端材をリサイクルしたrCFがLenovo社のノートパソコンに採用された事例3は、高度なリサイクル技術が実用化され、サプライチェーン全体での資源循環に貢献していることを示している。

これらの実績は、東レが多様な素材(繊維、樹脂、フィルム、炭素繊維)に対応可能な高度なリサイクル技術(特にケミカルリサイクル)とバイオマス技術を保有し、それを強みとしていることを裏付けている。また、Honda40やユニクロ42といった異業種のパートナーとの連携を通じて、技術を社会実装し、実効性のある循環型サプライチェーンを構築しようとする戦略が明確に見て取れる。「GO CIRCULAR」38というプラットフォームを通じて、この戦略と取り組みを積極的に外部に発信し、更なるパートナーシップの拡大を目指している点も特徴的である。

一方で、課題も存在する。廃棄物リサイクル率は高い水準を達成しているものの、基幹ポリマーにおける再生資源等の使用比率目標(2030年度20%)7達成に向けては、リサイクル原料やバイオマス原料の更なる利用拡大が必要となる。特に、高品質な再生原料の安定的な確保や、コスト競争力の維持、そして複雑化するサプライチェーンにおけるトレーサビリティの確保などが、今後の重要な課題となると考えられる。

第4章 生物多様性の保全

4.1 方針とコミットメント

東レグループは、事業活動が依存し、また影響を与える自然資本、特に生物多様性の保全を、気候変動対策や資源循環と並ぶ地球環境問題の重要テーマと位置づけている11。その取り組みの基盤となるのが、2010年12月に制定された「東レグループ生物多様性基本方針」である17。この方針では、「生物多様性が生み出す自然の恵みに感謝し、生物多様性の保全とその持続可能な利用に努めると共に、生物多様性の保全に資する製品・技術の開発と普及を通じて社会に貢献する」という基本的な考え方が示されている11

さらに、具体的な行動指針として以下の5項目が定められている11。第一に、事業活動に伴う生物多様性への影響に配慮し、保全と持続可能な利用に努めること。第二に、環境に配慮した製品・技術の開発に努め、その提供・普及を通じて生物多様性の保全に貢献すること。第三に、遺伝資源に関する国際的な取り決め(カルタヘナ議定書、名古屋議定書など47)を踏まえ、公正な利用に努めること。第四に、サプライチェーンにおける生物多様性への影響に配慮し、自然との共生に努めること。第五に、生物多様性に関する社員の意識向上に努め、ステークホルダーとのコミュニケーションを通じて、生物多様性を育む社会作りに貢献すること。

これらの基本方針と行動指針は、同社のサステナビリティ・ビジョンにおける「誰もが安全な水・空気を利用し、自然環境が回復した世界」8の実現に向けたコミットメントを具体化するものである。近年、国際的に注目が高まっているTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)提言に対しても、早期に賛同を表明し11、国内化学繊維メーカーとして初めてTNFDレポートを発行するなど7、生物多様性分野における情報開示と取り組み強化への強い意欲を示している。

4.2 具体的な取り組み

4.2.1 事業活動における影響配慮

東レグループは、自社の事業活動が生物多様性に与える影響を低減するため、製品・技術開発から生産プロセス、化学物質管理に至るまで、多岐にわたる配慮を行っている。まず、事業そのものを通じて生物多様性の保全に貢献することを目指している。具体的には、安全・安心な飲料水の製造や下廃水の再利用を可能にする水処理膜技術3、大気汚染を抑制し清浄な空気環境を提供するフィルター関連素材3など、環境負荷低減に貢献する製品・技術の開発と普及を進めている3

生産活動においては、環境リスクの未然防止と低減に努めている。全ての新製品開発時には製品安全審査を、設備投資時には環境リスク調査を実施し、製造時に規制対象物質が環境基準を超えて排出されないことを確認している3。また、新たに土地を利用する際には、関連法規の遵守はもちろん、立地場所における希少生物の生息状況や市民団体等からの要望の有無などを事前に調査し、生物多様性への影響を評価している3。化学物質管理も重要な要素であり、PRTR法対象物質やVOC(揮発性有機化合物)の排出量削減48、排水管理基準の遵守による水質汚濁防止26、排ガス中のNOx(窒素酸化物)削減などの大気汚染防止対策26に継続的に取り組んでいる3

4.2.2 自然資本への依存度・影響度評価(TNFD/LEAP)

生物多様性への影響をより科学的かつ体系的に評価し、対策の優先順位を決定するため、東レグループはTNFD提言が推奨するLEAPアプローチ(Locate, Evaluate, Assess, Prepare)3に基づいた分析を開始している。TNFDレポートVer.111では、その初期段階の評価結果が報告されている。

評価ツールとして「ENCORE(Exploring Natural Capital Opportunities, Risks and Exposure)」3などを用いて、自社事業が生態系サービス(水資源供給など)にどの程度依存しているか(依存度)、また事業活動が環境にどのような影響を与えているか(インパクトドライバー:水利用、汚染物質排出など)を評価した。その結果、東レグループの主要事業(繊維、樹脂・ケミカル、フィルム、医薬・医療など)においては、特に地下水や地表水といった水資源への依存度および水利用に伴う影響度が大きいこと、そして水質汚染、土壌汚染、大気汚染といった汚染物質排出による影響度が大きい可能性が確認された3

これらの評価結果を踏まえ、気候変動対策プロジェクト傘下に設置されたNP(ネイチャーポジティブ)部会3が中心となり、気候変動対策(GHG削減部会)や資源循環(資源循環推進部会)の取り組みとも連携しながら、生物多様性・自然資本に関する依存、影響、機会、リスクをより詳細に特定・評価し、優先的に取り組むべき課題とその対策を検討・推進していく体制を整えている11

4.2.3 緑化保全と地域貢献活動

東レグループは、事業所周辺の自然環境保全と生物多様性向上に貢献するため、敷地内の緑化活動にも積極的に取り組んでいる。「東レグループ緑化基本方針」17に基づき、単に緑地面積を確保するだけでなく、地域の自然生態系に近い樹林方式(いわゆる「鎮守の森方式」11)での緑化を推進し、「森に囲まれた工場」17を目指している。三島工場では約50年にわたり育成された樹林が広がり17、グループ全体で約20万平方メートルの緑化実績がある17

特筆すべき事例として、愛知県東海市にある東海工場などが、地域の他企業11社と協力して長年にわたり維持・管理してきた緑地帯「知多半島グリーンベルト」が、2023年に環境省の「自然共生サイト」(OECM:保護地域以外で生物多様性保全に資する地域)として認定されたことが挙げられる3。これは、企業の緑地が地域の生物多様性保全に貢献していることを示す具体的な成果である。

また、「良き企業市民」として、地域社会と連携した環境保全活動も展開している。工場敷地内での水辺ビオトープの造成(地域の学生との連携)17、市区町村やNPO法人と協力した河川・海岸の清掃活動や植樹活動17などが継続的に実施されている。さらに、次世代を担う子どもたちへの環境教育にも力を入れており、自社製品や技術を題材とした出張授業51や、体験型の「青空サイエンス教室」11などを通じて、環境問題や科学技術への関心を高める活動を行っている。

4.2.4 サプライチェーンにおける配慮

生物多様性への影響は、自社の事業活動だけでなく、原材料の調達から製品の廃棄に至るサプライチェーン全体で考慮する必要がある。東レグループは、サプライチェーンにおける生物多様性配慮にも取り組みを進めている。

まず、原材料調達においては、生物由来原料(パーム油、木材パルプなど)の使用状況を定期的に把握し、その調達が生物多様性に与える影響について、製品開発段階で確認するルールを運用している17。特にパーム油については、森林破壊や人権問題との関連が指摘されることから、重点フォロー原料と位置づけ、RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)認証品の利用やサプライヤーへの働きかけを推進している17

サプライヤー全体に対しては、「東レグループCSR調達行動指針」11の中で生物多様性への配慮や環境影響の最小化などを求め、その遵守状況を確認するためのCSR調達アンケートを定期的に実施している19。また、「東レグリーン調達ガイドライン」11に基づき、環境負荷物質の管理も徹底している。

さらに、自社の調達活動においても環境配慮を進めており、オフィスで使用するコピー用紙などに再生紙を積極的に利用するグリーン購入を推進している17ほか、紙コップの使用削減など、日常的な資源節約にも取り組んでいる17

4.3 実績と進捗

東レグループの生物多様性保全に関する取り組みは、いくつかの具体的な成果として現れている。前述の「知多半島グリーンベルト」が環境省の「自然共生サイト」として認定されたこと3は、地域生態系への貢献が外部から評価された顕著な事例である。また、事業活動を通じた貢献として、水処理膜による水処理貢献量は着実に増加しており、2023年度には2013年度比で2.7倍に達した7。これは、安全な水へのアクセス向上や水資源の保全を通じて、間接的に水生生物の生息環境維持にも貢献していると考えられる。

サプライチェーンにおける取り組みとしては、パーム油を使用している油剤の主要サプライヤーに対する調査が計画されており、持続可能な調達に向けた具体的なアクションが進められている段階にある7

最も重要な進捗の一つは、TNFDレポートVer.1の発行10である。これにより、東レは自社の自然資本への依存度と影響度に関する初期評価結果を公表し、今後の取り組みの方向性を示すとともに、ステークホルダーとの対話の基盤を構築した。

全体として、東レは生物多様性分野において、方針策定、外部イニシアチブへの参加、具体的な保全活動(緑化、水処理技術貢献)、そしてTNFD対応によるリスク・依存度評価の開始など、多岐にわたる取り組みを進めている。水処理技術18やフィルター技術15といった本業の強みを活かした貢献と、工場緑化11やサプライチェーン管理17といった直接的な保全活動を両輪で進めるアプローチが特徴的である。ただし、TNFD/LEAPアプローチに基づく評価はまだ初期段階であり3、今後はこの評価結果を踏まえた、より具体的な数値目標(KPI)の設定と、それに基づく行動計画の策定・実行、そして進捗状況の開示が期待される。

第5章 環境関連のリスクと機会

東レグループは、気候変動、資源制約、生物多様性の損失といった地球環境問題が、自社の事業活動に対して様々なリスクをもたらす一方で、新たな事業機会を創出する可能性も認識している3。TCFDレポートやTNFDレポートなどを通じて、これらのリスクと機会を特定・評価し、経営戦略に反映させる取り組みを進めている。

5.1 気候変動関連リスク・機会

気候変動に関しては、TCFD提言に沿ったシナリオ分析21などを通じて、リスクと機会の定量的・定性的な評価が行われている3

認識されている主要なリスクとしては、まず「移行リスク」が挙げられる3。これは、低炭素社会への移行に伴う政策、法規制、技術、市場の変化によって生じるリスクである。具体的には、炭素税の導入や排出量取引制度などのカーボンプライシング強化によるコスト増加が懸念されている。1.5℃シナリオの世界では、炭素税負担が年間850億円程度に達する可能性があると試算されている22。また、再生可能エネルギーへの転換に伴うエネルギーコストの上昇もリスクとして認識されており、年間600億円程度のコスト増の可能性が指摘されている22。さらに、主要な市場である自動車産業における電動化の加速は、従来の内燃機関関連素材(エンジン部品、排ガス処理関連部材など)の需要減少につながる可能性があり、関連事業が2,000億円規模で縮小するリスクがあると分析されている22。化石資源由来の原料や燃料の価格高騰リスクも存在する3

次に、「物理リスク」も重要である3。これは、気候変動による気象パターンの変化や異常気象の頻発・激甚化によって引き起こされる直接的な損害や影響のリスクである。台風や豪雨、洪水などの自然災害の増加は、国内外に多数存在する工場の操業停止やサプライチェーンの寸断を引き起こす可能性がある3。また、干ばつや渇水による水不足は、製造プロセスに大量の水を必要とする化学産業にとって深刻な操業リスクとなり得る。東レグループでは、特に水リスクについて詳細な評価を行っており、以前は影響大と評価していた取水制限リスクについて、国内拠点が用水使用量の大部分(約80%)を占めることなどを考慮し、影響度は「中程度」に見直しているが、依然として重要なリスクと認識している22

一方で、気候変動は新たな事業機会ももたらす3。低炭素社会への移行は、再生可能エネルギー(風力発電ブレード用炭素繊維、太陽電池部材など)3、水素エネルギー(水電解用部材、燃料電池材料など)3、電気自動車(軽量化素材、電池材料など)3といった分野での需要を急増させる。東レが強みを持つ高機能素材(炭素繊維、高機能ポリマー、分離膜など)は、これらの分野で不可欠であり、SI事業の拡大を通じて大きな成長機会が見込まれる。また、省エネルギー性能の高い製品や、CO2分離・回収・利用・貯留(CCUS)に関連する技術・製品3に対するニーズも高まる。さらに、環境意識の高まりは、環境負荷の低い製品や、積極的に情報開示を行う企業に対する顧客や投資家からの評価を高め、ブランド価値向上や資金調達における優位性につながる可能性がある3

5.2 資源循環関連リスク・機会

資源循環に関しても、リスクと機会の両側面が存在する3。リスクとしては、循環型経済への移行に対応できない場合、市場での競争力を失う「機会損失」のリスクがある3。例えば、リサイクル材の使用義務化や、バイオマスプラスチックへの需要シフトに対応できなければ、顧客を失う可能性がある。また、廃棄物に関する規制強化や処理コストの上昇も、事業運営上のリスクとなり得る3

しかし、資源循環への移行は、東レにとって大きな事業機会でもある。バイオマス由来原料を使用したプラスチック42や、使用済み製品から再生されたリサイクル素材41に対する市場の需要は拡大しており、これらの分野での技術開発と製品供給は新たな収益源となり得る3。東レが持つ多様なポリマー技術とケミカルリサイクル技術40は、従来リサイクルが困難であった素材の再資源化を可能にし、新たな価値を創出する可能性がある。また、廃棄物の発生抑制に貢献する高耐久性製品や、効率的なリサイクルシステムそのものをソリューションとして提供することも、事業機会となり得る38

5.3 生物多様性関連リスク・機会

生物多様性の損失と自然資本の劣化も、東レの事業活動に影響を与えるリスクと機会をもたらす3。リスクとしては、まず事業活動が依存する自然資本、特に水資源の劣化や枯渇リスクが挙げられる3。TNFD/LEAPアプローチによる評価でも、水資源への高い依存度が指摘されており3、取水制限などは直接的な操業リスクとなる。また、生産活動に伴う水質汚濁、土壌汚染、大気汚染3や、工場建設などによる土地利用の変化が、地域の生態系に負の影響を与え、企業の評判を損なうリスク(評判リスク)も存在する。さらに、パーム油などの生物由来原料の調達においては、その生産過程における森林破壊や人権侵害といった問題がサプライチェーンリスクとなる可能性がある17。今後、生物多様性保全に関する規制が強化される可能性もリスク要因である。

機会としては、東レが持つ技術が生物多様性保全に貢献できる可能性がある。例えば、高性能な水処理膜技術3は、安全な水の供給や廃水処理を通じて水環境を改善し、水生生物の保全に貢献する。同様に、空気浄化フィルター3は、大気汚染を低減し、生態系への影響を緩和する可能性がある。これらの環境保全に貢献する技術・製品の市場は、ネイチャーポジティブ(自然再興)への関心の高まりとともに拡大することが予想され、新たな事業機会となり得る。また、生態系保全に配慮した製品開発や、自然共生サイトの認定3などの取り組みは、企業のブランドイメージ向上や、環境意識の高い顧客・投資家からの評価獲得につながる可能性がある。

総じて、東レは気候変動、資源循環、生物多様性の各分野において、リスクと機会を認識し、経営戦略に反映させようとしている。特に気候変動リスクについては定量的な評価も進んでおり3、機会面では自社の技術力を核としたSI事業3や循環型ソリューション38の提供を成長戦略の中心に据えている点が特徴的である。生物多様性に関するリスク・機会の分析は、TNFD対応11を通じて今後さらに深化していくことが期待される。

第6章 業界動向と競合分析

6.1 化学・素材業界における環境先進事例

化学・素材業界は、その事業特性上、エネルギー多消費型であり、化石資源への依存度が高いことから、環境課題への対応が強く求められている。近年、業界全体としてカーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー、ネイチャーポジティブに向けた取り組みが加速しており、以下のような先進的な事例が見られる。

気候変動対策においては、製造プロセスにおけるエネルギー効率の改善が継続的なテーマである。エチレンプラントにおけるLNG(液化天然ガス)冷熱の利用や、分解炉の高効率化、熱回収技術の向上などが進められている52。また、電解ソーダ製造におけるイオン交換膜法の導入や改良による電力消費量の削減も重要な取り組みである52。さらに、将来的な脱炭素化を見据え、燃料を石炭や天然ガスからバイオマスや水素、アンモニアなどへ転換する動き54や、ナフサ分解炉自体のカーボンニュートラル化(電化や水素燃焼など)に向けた技術開発52も活発化している。加えて、自社の排出削減(Scope 1, 2)だけでなく、サプライチェーン全体での排出量、特に原材料調達(Scope 3 カテゴリー1)の削減に向けた取り組みも重視されるようになっている55

資源循環の分野では、使用済みプラスチックのリサイクル技術開発が急速に進んでいる。従来のマテリアルリサイクルに加え、化学的に分解してモノマーや油に戻すケミカルリサイクル技術が注目されており、廃プラスチックの油化58(三井化学、ENEOSなど)、マイクロ波を用いた分解技術59(BASFなど)、メタノールを利用した分解技術60(三菱ケミカルなど)といった多様なアプローチが実証・事業化されつつある。また、再生可能な生物資源を原料とするバイオプラスチックの開発も活発であり、サトウキビ由来のバイオポリエチレン(PE)61(Braskemなど)や、非可食バイオマスからのバイオポリプロピレン(PP)製造技術61(三井化学など)、植物由来原料100%を目指すバイオPET62、生分解性を持つポリ乳酸(PLA)62やPHA(ポリヒドロキシアルカノエート)61などが開発・市場投入されている。製品設計においては、リサイクルを容易にするための単一素材化(モノマテリアル化)41や、再生材の利用拡大64(アパレル業界のNIKE、UNIQLO、patagoniaなどの取り組みも参考になる)が進んでいる。

生物多様性・ネイチャーポジティブに関しては、企業が自然資本への依存度と影響度を評価し、事業戦略に統合する動きが出始めている66。積水化学68のように、ネイチャーポジティブ実現に向けた具体的なビジョンや戦略を策定する企業も現れている。具体的な取り組みとしては、サプライチェーンにおける持続可能な原材料調達(森林認証材の利用など)66、環境負荷低減に貢献する製品開発66、事業所敷地内での緑化やビオトープ設置による生態系保全68、そして地域固有種への配慮や生態系ネットワークの維持・回復(生態系ブリッジ)68などが挙げられる。

これらの動向から、化学・素材業界においては、自社の環境負荷低減努力に加え、革新的な技術開発(ケミカルリサイクル、バイオマス利用、CO2利用など)と、サプライヤーや顧客、異業種との連携を通じて、バリューチェーン全体でのサステナビリティ向上を目指す動きが主流となっていることがわかる。特に、気候変動対策と資源循環、そして生物多様性保全を統合的に捉え、事業機会の創出につなげようとする戦略が重要性を増している。

6.2 主要競合他社の環境戦略と取り組み

東レと同様に、先端材料や機能化学品などをグローバルに展開する主要な競合他社として、旭化成株式会社、三菱ケミカルグループ株式会社、帝人株式会社が挙げられる。これらの企業も、気候変動、資源循環、生物多様性といった環境課題に対して積極的に取り組んでおり、その戦略と具体的な活動は東レのパフォーマンスを評価する上で重要な比較対象となる。

6.2.1 旭化成株式会社

旭化成グループは、「環境との共生」をグループビジョンに掲げ、サステナビリティを経営の根幹に据えている69

気候変動対策では、2050年のカーボンニュートラル達成を長期目標とし、中期目標として2030年度までにGHG排出量(Scope 1+2)を2013年度比で30%以上削減することを目指している69。この目標達成に向け、自社が保有する水力発電所(9ヶ所)やバイオマス発電設備(延岡地区での混焼)の活用69、省エネルギー推進、アルカリ水電解システムやCO2分離・回収といった将来技術の開発・社会実装70、インターナルカーボンプライシング(ICP)の導入70などを進めている。また、事業ポートフォリオ転換も視野に入れ、環境貢献製品の売上高比率向上(2030年度にGHG削減貢献量を2020年度比2倍以上)も目標としている70。外部評価としては、CDPの2023年調査で気候変動・水セキュリティともに「B」評価を取得27、MSCI ESGレーティングでは2024年に最高評価の「AAA」を獲得している27。SustainalyticsによるESGリスク評価は「Medium Risk」(20.2)で、化学業界591社中42位と比較的良好な評価である75

資源循環に関しては、廃プラスチックの埋め立てゼロを目指す目標を掲げている48。具体的な取り組みとして、建材事業におけるヘーベルパネルの広域認定制度を利用した回収・リサイクル48や、住宅建設現場における廃棄物ゼロエミッションの達成・継続48が挙げられる。化学物質管理にも注力しており、PRTR法対象物質やVOC排出量を大幅に削減している48。さらに、マイクロ波化学株式会社と共同でポリアミド66(ナイロン66)のケミカルリサイクルに関する共同実証試験を開始するなど48、先進的なリサイクル技術開発にも取り組んでいる。加えて、産業系廃棄物の排出から回収・再生までのプロセスを追跡する「資源循環デジタルプラットフォーム」の構築を進めており、トレーサビリティ向上にも注力している44

生物多様性保全については、「生物多様性保全に関する行動指針」を定め、事業活動と生物多様性との関わりを把握し、従業員の意識啓発を図っている77。静岡県富士市にある「あさひ・いのちの森」は、地域の原風景再生を目指して造成された約1ヘクタールの人工林であり、生物多様性保全の象徴的な取り組みとなっている76。この森は、2023年に環境省の「自然共生サイト」に認定された77。原材料調達においては、新規利用・変更時に生物多様性への影響調査を実施している77。また、従業員参加型の「まちもり」アクションを通じて、事業所緑地の価値向上と従業員の意識向上を図っている76。地域貢献活動として植樹活動も継続している77。さらに、旭化成住工などが参加する「生物多様性びわ湖ネットワーク」は、「日本自然保護大賞2021」を受賞するなど、外部連携による保全活動も評価されている27

6.2.2 三菱ケミカルグループ株式会社

三菱ケミカルグループ(MCG)は、「KAITEKI」(人、社会、そして地球の心地よさがずっと続いていくこと)という独自のコンセプトを掲げ、サステナビリティ経営を推進している25

気候変動対策では、2050年のカーボンニュートラル達成を目指し、中期目標として2030年度までにGHG排出量(Scope 1+2)を2019年度比で29%削減することを掲げている25。具体的な削減策として、自家発電設備の燃料転換(石炭ボイラー停止など)25、再生可能エネルギー由来電力の導入拡大25、省エネルギー活動の推進25などを実施している。将来技術としては、アブダビで太陽光と水を利用し、CO2を原料としたポリプロピレン製造の事業化検討を進めている25。外部評価では、CDPの2023年調査(2025年2月時点情報)で気候変動・水セキュリティともに「A-」評価と高い評価を受けている81。MSCI ESGレーティングでは「AA」評価(2023年11月時点)74、SustainalyticsによるESGリスク評価は「High Risk」(31)で、化学業界590社中286位となっている84

資源循環においては、プラスチック循環を重要なテーマと位置づけ、マテリアルリサイクルとケミカルリサイクルの両面から取り組んでいる25。特にケミカルリサイクルでは、ENEOS株式会社と共同で、茨城事業所に国内最大規模(年間2万トン処理能力)の廃プラスチック油化設備を建設中である25。また、花王株式会社とは「リサイクリエーション」というコンセプトの下、使用済み詰め替えパウチフィルムのケミカルリサイクル事業化を進めている58。バイオプラスチックの開発・活用25や、製品ライフサイクル全体での環境負荷を評価するLCA(ライフサイクルアセスメント)の活用25、カーボンフットプリント(CFP)算定体制の確立25にも力を入れている。廃棄物削減目標として、国内事業所の最終処分量を2025年度までに2019年度比で50%削減することを掲げている25

生物多様性保全に関しては、「生物多様性保全に関する基本方針」に基づき、事業活動に伴う影響低減と貢献活動を実施している50。環境リスクおよび環境負荷の低減を通じて生物多様性への影響を抑えるとともに、事業所近隣の清掃活動(例:滋賀事業所でのびわ湖・余呉湖一斉清掃への参加50)や、事業所内の緑地保全による自然環境保護に取り組んでいる50。環境会計を導入し、環境保全コストと効果の把握にも努めている50

6.2.3 帝人株式会社

帝人グループは、「未来の社会を支える会社」を長期ビジョンに掲げ、特に「地球環境を守る会社」として環境貢献に注力している88

気候変動対策では、2050年度までに自社排出(Scope 1+2)のネット・ゼロ実現を目標とし、中期目標として2030年度までに2018年度比で30%削減を掲げている88。さらに、サプライチェーン排出量(Scope 3 カテゴリー1の一部)についても、2030年度までに2018年度比15%削減を目指している88。特徴的な目標として、2030年度までに自社のCO2削減貢献量(製品使用段階での顧客の排出削減効果)を、グループ全体のCO2総排出量(Scope 1+2+上流Scope 3)以上にすることを目指している点が挙げられる88。具体的な取り組みとしては、自家火力発電設備の脱石炭化(例:松山事業所での石炭ボイラーから天然ガス焚きコージェネレーションシステムへの転換90)、再生可能エネルギー導入の推進(2050年度100%目標91)、省エネルギー推進、インターナルカーボンプライシング(ICP)制度の導入・活用91などがある。外部評価については、過去にMSCI ESGレーティングで最高評価「AAA」を獲得した実績がある92。SustainalyticsによるESGリスク評価は「Medium Risk」(25.1)で、化学業界591社中124位となっている95。CDP評価に関する最新情報は提供資料からは確認できなかった。

資源循環に関しては、埋立廃棄物量の削減目標(売上高原単位で2030年度に2018年度比20%改善)を設定している88。製品面では、リサイクルポリエステル素材や植物由来原料を使用した素材の開発、高性能タイヤ補強材(パラ系アラミド繊維「トワロン」)のリサイクル技術開発などを進めている88。特に「トワロン」については、リサイクル率25%(2030年目標)を掲げ、ケミカルリサイクル技術の開発にも長期視点で取り組んでいる96。また、富士通株式会社と共同で、リサイクル炭素繊維を用いた自転車フレームの資源循環プロセスにおけるトレーサビリティと環境価値を可視化する実証プロジェクトを実施するなど97、ブロックチェーン技術などを活用した先進的な取り組みも行っている。

生物多様性保全については、製品ライフサイクル全体での配慮と環境負荷低減を図る方針を示している98。事業活動が生物多様性に与える影響要素を可視化した「生物多様性喪失リスクマップ」を作成し、影響を認識した上で保全活動を展開している98。具体的な活動として、サプライチェーンにおけるグリーン調達の推進98や、海外(バングラデシュ)での植林活動「テイジンの森」プロジェクト98などが挙げられる。

6.3 環境スコアのベンチマーキング

主要なESG評価機関であるCDP、MSCI、Sustainalyticsによる評価スコアは、企業の環境パフォーマンスと情報開示の質を外部視点から測る上で重要な指標となる。東レおよび主要競合他社(旭化成、三菱ケミカルグループ、帝人)のスコアを比較分析することで、相対的な強みと課題を把握することができる。

まず、CDP評価について見ると、2023年調査結果(一部は2024年または2025年時点の情報に基づく)では、東レは気候変動分野で「B」、水セキュリティ分野で「A-」評価であった29。これに対し、旭化成は気候変動「B」、水セキュリティ「B」27、三菱ケミカルグループは気候変動「A-」、水セキュリティ「A-」81であった(帝人の最新スコアは不明)。この結果から、水セキュリティに関しては東レと三菱ケミカルグループが高いレベルにある一方、気候変動に関しては三菱ケミカルグループがやや先行し、東レと旭化成は同等の「マネジメントレベル」にあることがわかる。CDP評価は、目標設定の野心性、具体的な削減活動の実績、リスク管理プロセス、ガバナンス体制、そして情報開示の包括性や透明性などが総合的に評価される30。東レが気候変動で「Aリスト」を目指すには、目標達成に向けた更なる取り組みの加速や、Scope 3を含む包括的な情報開示の強化が必要と考えられる。

次に、MSCI ESGレーティングを見ると、旭化成が2024年時点で最高評価の「AAA」を獲得している27。東レ41および帝人92も過去に「AAA」評価を獲得した実績があり、高いレベルにある。三菱ケミカルグループは「AA」評価(2023年11月時点)であった74。MSCI ESGレーティングは、同一業種内での相対評価であり99、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)の3つの柱にわたる複数のキーイシュー(特にガバナンスは全企業で評価)99に基づいて評価される。旭化成が高い評価を維持している背景には、気候変動対策や生物多様性保全活動に加え、コーポレートガバナンスや人権・労働慣行など、ESG全般にわたる継続的な取り組みが評価されている可能性がある27。東レが最高評価を維持・向上させるためには、環境分野だけでなく、社会・ガバナンス分野も含めた総合的な取り組みの強化と情報開示が重要となる。

最後に、Sustainalytics ESGリスク評価を見ると、企業が直面するESGリスクの大きさと、それに対する管理能力を評価する絶対評価に近い指標である100。2024-2025年時点の評価では、旭化成が「Medium Risk」(20.2、業界42位/591社)75と最もリスクが低いと評価されている。次いで東レが「Medium Risk」(22、業界63位/591社)75、帝人が「Medium Risk」(25.1、業界124位/591社)95、そして三菱ケミカルグループが「High Risk」(31、業界286位/590社)84と評価されている。Sustainalyticsのリスク評価は、「リスクへのエクスポージャー(晒され度)」と「リスク管理能力」の二つの側面から構成される102。三菱ケミカルグループのリスク評価が高い背景には、事業ポートフォリオに起因する固有のリスクエクスポージャーが高い一方で、リスク管理能力自体は「Strong」または「Average」と評価されている可能性がある84。東レは旭化成に次いでリスクが低いと評価されているが、さらなるリスク低減のためには、特定されたマテリアルESGイシューに対する管理策の強化が求められる。

これらのベンチマーキング結果を総合すると、東レは特に水セキュリティ分野や過去のMSCI評価において高い競争力を示している一方で、気候変動対策の進捗(特にCDP評価)やSustainalyticsによるリスク評価においては、旭化成などの競合他社に対して若干の改善の余地が見られる。評価機関によって評価の視点や重点項目が異なるため30、一概に優劣をつけることは難しいが、東レがESG評価全体でトップ層の評価を獲得し、持続可能な企業価値向上を実現するためには、気候変動対策(特に絶対量削減とScope 3)、資源循環(再生材利用率向上)、生物多様性(目標設定と行動計画)、そしてこれらに関連するリスク管理と情報開示の更なる高度化が重要となる。

第7章 課題と提言

7.1 東レの環境パフォーマンス評価

本報告書における分析を通じて、東レグループの環境パフォーマンスは、明確なビジョンと戦略に基づき、着実な進捗を見せている一方で、いくつかの課題も抱えていることが明らかになった。

強みとしては、まず、企業理念1からサステナビリティ・ビジョン8、マテリアリティ3へと一貫した戦略が構築され、サステナビリティが事業活動と統合されている点が挙げられる。特に、サステナビリティイノベーション(SI)事業3を設定し、具体的な目標を掲げて推進していることは、環境課題解決を事業機会と捉える先進的な姿勢を示している。第二に、水処理膜技術18をはじめとする環境関連技術における高い競争力である。これは、CDP水セキュリティ評価における「A-」29という高評価にも表れている。第三に、資源循環分野における多様な素材(繊維、樹脂、フィルム、炭素繊維)に対応したリサイクル技術(特にケミカルリサイクル)の開発力と、パートナーシップを通じた社会実装への意欲38である。第四に、TNFDへの早期対応10や自然共生サイト認定3など、生物多様性分野における先進的な取り組みを開始している点も評価できる。

一方で、弱みまたは今後の課題としては、第一に、気候変動対策におけるGHG排出量の絶対量削減、特に国内目標(2030年度40%以上削減)達成に向けた道筋の具体化と加速が必要である点3。第二に、Scope 3排出量削減に関する具体的な数値目標の設定と、サプライヤーエンゲージメントの更なる強化3。第三に、CDP気候変動評価が「B」にとどまっており29、リーダーシップレベルへの向上に向けた取り組みが必要な点。第四に、資源循環における再生材・バイオマス材の利用率向上(2030年度目標20%)に向けた取り組み強化7。第五に、生物多様性分野において、TNFD/LEAPアプローチ3に基づくリスク・依存度評価を踏まえた、具体的な目標(KPI)設定と行動計画の策定・開示がこれからの段階である点。

これらの強みと弱みを踏まえ、東レの環境パフォーマンスは、業界内で競争力のあるレベルに達しているものの、トップリーダーとしての地位を確立・維持するためには、課題分野における取り組みを一層強化する必要があると言える。

7.2 現在の課題

前項の評価に基づき、東レが現在直面している主要な環境関連の課題を以下のように整理できる。

気候変動分野においては、第一に、Scope 1およびScope 2排出量の絶対量削減の加速が挙げられる。原単位での削減は進んでいるものの3、特に国内における絶対量削減目標達成には、省エネの深掘り、再生可能エネルギー導入の更なる拡大、そして将来的には革新的な低炭素プロセスの導入が必要となる。第二に、Scope 3排出量、特に影響の大きいカテゴリー1(購入した製品・サービス)の削減に向けた取り組みの具体化である。現状では具体的な数値目標が不明確であり、サプライヤーとの連携を強化し、実効性のある削減計画を策定・実行することが急務である3。第三に、これらの取り組みの成果を外部に示し、CDP気候変動スコアを現在の「B」から「A」レベルへと引き上げることが、投資家や顧客からの信頼を得る上で重要となる。

資源循環分野においては、第一に、再生材およびバイオマス由来原料の利用率向上である。2030年度に20%という目標7は野心的であり、高品質な再生原料の安定確保、バイオマス原料のサプライチェーン構築、そしてコスト競争力の維持が課題となる。第二に、開発を進めているケミカルリサイクル技術40の商業化に向けたスケールアップとコスト低減である。実証段階から本格的な事業展開へと移行させるためには、技術的課題の克服と経済性の両立が不可欠である。第三に、複雑化するリサイクルサプライチェーンにおけるトレーサビリティの確保である。ブロックチェーンなどの技術活用42も含め、信頼性の高い循環システムの構築が求められる。

生物多様性分野においては、第一に、TNFD/LEAPアプローチに基づくリスク・依存度評価3の結果を、具体的な経営戦略や事業活動に落とし込むことである。評価結果に基づき、優先的に取り組むべき課題を特定し、測定可能な目標(KPI)を設定し、それに基づいた行動計画を策定・開示することが次のステップとなる。第二に、サプライチェーン全体での生物多様性への配慮を深化させることである。原材料調達におけるリスク評価と管理を強化し、サプライヤーに対する働きかけを具体化していく必要がある17

これらの分野横断的な課題として、環境関連技術の開発・導入、設備投資を継続的に拡大していくための資金確保、国内外で強化される環境規制への的確な対応、そしてESG評価機関からの評価を維持・向上させるための継続的な努力と情報開示の充実が挙げられる。

7.3 今後の重点分野と推奨される行動

特定された課題に対応し、東レが持続可能な成長と企業価値向上を実現するためには、以下の分野に重点を置き、具体的な行動を加速させることが推奨される。

第一に、気候変動対策の更なる強化である。再生可能エネルギーの導入目標を引き上げ、特に自家発電比率の高い海外拠点3での導入を加速させるべきである。同時に、省エネルギー活動の継続的な深掘りと、現在開発中の革新的な低炭素生産プロセスやカーボンニュートラル燃料(水素、アンモニア等3)への転換に向けた研究開発・実証を前倒しで進めることが望ましい。サプライチェーン(Scope 3)に対しては、主要サプライヤーとの協働による具体的な削減ロードマップを策定・公表し、その実行を支援する体制を構築すべきである。社内カーボンプライシング(ICP)3についても、価格設定の見直しや適用範囲の拡大などを通じて、より戦略的に活用し、低炭素化投資を促進することが有効である。

第二に、サーキュラーエコノミーの推進力の強化である。有望なケミカルリサイクル技術(ナイロン640、PPS42など)については、実証段階から商業プラントへの移行を加速させ、早期の事業化を目指すべきである。同時に、マテリアルリサイクルの適用範囲拡大と品質向上にも継続的に取り組む必要がある。バイオマス由来原料42に関しては、非可食原料からの安定的な調達ルートを確立し、製品ポートフォリオにおけるバイオマス比率を着実に高めていくことが重要である。製品開発においては、設計段階からリサイクル性や解体性を考慮する「エコデザイン」の考え方を徹底し、モノマテリアル化3などを推進すべきである。また、業界団体や自治体、他企業と連携し、効率的な回収・リサイクルインフラの構築にも積極的に貢献することが期待される。

第三に、ネイチャーポジティブへの具体的な貢献である。TNFD/LEAPアプローチによる評価結果3に基づき、生物多様性に関する具体的な目標(例:水使用量原単位の更なる改善、特定地域における生態系保全への貢献度、持続可能な認証原料の調達比率など)とKPIを設定し、その達成に向けた行動計画を策定・開示することが急務である。特にリスクが高いと評価された水資源管理については、取水量の削減、排水水質の管理強化、水リサイクル率の向上などを通じて、より高度な管理体制を構築すべきである。サプライチェーンにおいては、原材料調達における生物多様性デューデリジェンスを導入・実施し、リスクの高いサプライヤーに対するエンゲージメントを強化することが求められる。また、「自然共生サイト」3などの自社保有地の保全活動を継続・拡大するとともに、その知見を活かした地域貢献活動を深化させることも重要である。

第四に、情報開示とエンゲージメントの強化である。環境パフォーマンスに関するデータの透明性を一層向上させることが求められる。特に、Scope 3排出量のカテゴリー別内訳と算定根拠、生物多様性に関する目標(KPI)と実績値、TCFD/TNFD提言に基づく詳細なリスク・機会分析結果などを、統合報告書3やサステナビリティレポート7、ウェブサイト等で積極的に開示していくべきである。また、CDP29、MSCI41、Sustainalytics75といったESG評価機関や、機関投資家との建設的な対話を継続・強化し、フィードバックを経営改善に活かすとともに、自社の取り組みや戦略を的確に伝え、適切な評価を得られるよう努めることが重要である。

これらの提言を実行に移すことで、東レは環境課題への対応を強化し、リスクを低減するとともに、新たな事業機会を捉え、持続可能な社会の実現に貢献し、企業価値を一層高めることができると期待される。競合他社の動向50も踏まえつつ、自社の強みである技術力を最大限に活かし、課題分野を着実に改善していくことが、今後の持続的成長の鍵となるであろう。

結論

分析結果の要約と環境スコアリングへの示唆

本報告書では、東レ株式会社の環境パフォーマンスについて、「気候変動」「資源循環」「生物多様性」の3つの重要分野を中心に、その戦略、目標、取り組み、実績、リスク・機会、そして競合他社との比較分析を行った。

分析の結果、東レは企業理念に基づくサステナビリティ・ビジョンを掲げ、環境課題への対応を事業戦略と一体化させて推進していることが確認された。特に、サステナビリティイノベーション(SI)事業を通じて、自社の技術力を活かし、気候変動緩和や資源循環に貢献する製品・サービスを提供し、これを成長ドライバーと位置づけている点は高く評価できる。水処理技術や炭素繊維、各種リサイクル技術、バイオマス素材開発など、個別の取り組みにおいても先進的な事例が見られた。また、TNFDへの早期対応など、新たな環境課題に対する感度も高い。

一方で、GHG排出量の絶対量削減目標達成に向けた道筋の具体化、Scope 3排出量管理の強化、資源循環における再生材利用率の向上、生物多様性に関する具体的な目標設定と行動計画策定など、更なる取り組みが求められる課題も明らかになった。CDP、MSCI、Sustainalyticsといった主要なESG評価機関によるスコアにおいても、分野によって強みと改善点が見られ、競合他社との比較においても、トップレベルの評価を維持・向上させるためには継続的な努力が必要であることが示唆された。

これらの分析結果は、東レの環境スコアを評価する上で、以下のような示唆を与える。ポジティブな要因としては、明確なビジョンと戦略、SI事業による貢献、水関連技術・評価、多様なリサイクル技術、TNFDへの早期対応などが挙げられる。一方で、ネガティブな要因または注意すべき点としては、気候変動分野での絶対量削減とScope 3目標の具体性、CDP気候変動スコア、再生材利用率、生物多様性KPIの未設定などが考えられる。

東レは、その高い技術力とグローバルな事業基盤を活かし、環境課題解決に貢献する大きなポテンシャルを有している。本報告書で特定された課題に真摯に取り組み、目標達成に向けた行動を加速させるとともに、その進捗状況と成果を透明性高く開示していくことで、環境スコアの向上はもちろん、ステークホルダーからの信頼を高め、持続可能な企業価値を創造していくことが期待される。

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