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アサヒグループホールディングスの環境イニシアチブとパフォーマンスに関する包括的分析レポート

更新日:2025年4月30日

序論

アサヒグループホールディングス株式会社(以下、アサヒグループ)は、ビール類を中心とした酒類、飲料、食品事業をグローバルに展開する企業である。同社の事業は、水や農産物といった「自然の恵み」に深く依存しており、その持続可能性は事業継続性の根幹を成している 1。気候変動の進行、資源の枯渇懸念、生物多様性の損失といった地球規模の環境課題は、同社にとって喫緊の経営課題であり、事業リスクであると同時に新たな価値創造の機会ともなり得る。この認識に基づき、アサヒグループはサステナビリティを経営戦略の核心に据え、「環境」「人」「コミュニティ」「健康」「責任ある飲酒」を重要課題として特定し、取り組みを推進している 2。特に、「自然の恵み」を次世代につなぐという強い意志は、「アサヒグループ環境ビジョン2050」や「サステナビリティ・ストーリー」に明確に示されている 2

本レポートは、アサヒグループの環境イニシアチブとパフォーマンスについて、特に重要性が高いと考えられる「気候変動」「資源循環」「生物多様性」の三つの分野に焦点を当て、包括的かつ詳細な分析を行うことを目的とする。具体的には、各分野における目標、戦略、具体的な取り組み、実績データを詳述するとともに、潜在的なリスクと機会、業界の先進事例、競合他社との比較分析、そして外部評価機関によるスコアリング情報を提供する。これにより、同社の環境パフォーマンスを多角的に評価し、環境スコア算出に必要となる基礎情報を提供することを目指す。なお、本レポートでは、学術的な厳密性を期すため、表や箇条書き、リスト形式を一切用いず、全ての情報を物語形式(文章のみ)で記述する。

第1章 アサヒグループホールディングスの環境戦略とガバナンス

アサヒグループの環境への取り組みは、明確なビジョンと基本方針、そしてそれを実行するための強固なガバナンス体制に基づいている。

1.1 環境ビジョンと基本方針

アサヒグループは、2050年を見据えた長期的な環境目標として「アサヒグループ環境ビジョン2050」を策定している 4。このビジョンは、「ニュートラル&プラス」という独自の概念を掲げている点が特徴的である。これは、事業活動における環境負荷ゼロ(ニュートラル)を目指すだけでなく、アサヒグループが長年培ってきた独自技術や知見を活かして新たな環境価値を創出(プラス)することに挑戦するという意志を示すものである 4。単なる負荷削減に留まらず、環境課題解決をイノベーションの機会と捉え、事業成長と環境保全の両立を目指す先進的な考え方であると言える。このビジョンは、気候変動、容器包装、農産物原料、水資源という4つの重点分野におけるロードマップによって具体化されている 6

このビジョンを支えるのが、「アサヒグループ環境基本方針」である 4。この方針は、アサヒグループが「自然の恵み」を利用する企業グループとしての責任を自覚し、環境課題に対して積極的に取り組むことを宣言するものである 4。環境関連法令の遵守はもちろんのこと、事業活動全体における環境影響評価と継続的な負荷低減、環境配慮素材の導入、省エネルギー推進、水資源の保全、廃棄物削減、持続可能な原材料調達、ステークホルダーとの協働による環境価値創造、そして適切な情報開示とコミュニケーションを行動指針として定めている 7。全従業員がこの方針を遵守することが求められており 4、組織全体での環境意識の浸透と実践を目指している。

さらに、アサヒグループはサステナビリティ全体を包含する基本方針とビジョンも定めている 2。そこでは、自然の恵みを使って期待を超えるおいしさを実現すること、そして商品・サービスを通じて人々の楽しい生活文化の創造を目指すことが謳われている 2。持続可能な社会の形成が、よりよい生活文化の継承に不可欠であるとの認識のもと、経営戦略に「環境」「人」「コミュニティ」「健康」「責任ある飲酒」を組み込み、事業を展開する全ての地域で価値創造を目指すとしている 2

これらの理念や方針は、「サステナビリティ・ストーリー」として統合的に語られている 2。このストーリーでは、100年以上にわたり自然の恵みによって「期待を超えるおいしさ」を生み出してきた歴史を振り返りつつ、ビジネスが環境や社会に及ぼす潜在的な影響に正面から向き合い、サステナビリティを経営の根幹に置いてプラスの価値を生むことで事業の持続的成長へと変革していく決意が示されている 2。変革のために取り組むこととして、脱炭素、水資源の有効活用、持続可能な生態系と循環型社会の実現などが挙げられており、ステークホルダーとの共創を通じて推進していく姿勢を明確にしている 2。この未来への意志は「Cheer the Future」という言葉に込められている 2

1.2 サステナビリティ推進体制

アサヒグループは、サステナビリティの推進を重要な経営課題と明確に位置づけ、その実行を担保するためのガバナンス体制を構築している 2。グループ全体のサステナビリティ戦略の推進と監督は、アサヒグループホールディングス株式会社の取締役会が行う。具体的な推進体制の中心となるのが、同社のCEOが委員長を務める「グローバルサステナビリティ委員会」である 2。この委員会は、グループ全体のサステナビリティに関する方針策定、目標設定、進捗管理、重要課題への対応などを審議・決定する最高意思決定機関としての役割を担っており、経営トップの強いコミットメントを示している。

環境マネジメントに関しては、環境管理統括者のもとに「環境推進会議」が設置されている 4。この会議では、環境目標の審議、活動成果の確認、環境マネジメントシステム(EMS)の方向性確認などが行われ、具体的な環境活動の計画・実行・評価を担っている 4。アサヒグループ食品株式会社など、グループ各社においてもISO14001に基づくEMSを運用し、環境リスクの把握や抑制に取り組んでいる 7。定期的な内部監査も実施されており、2023年の監査では「不適合」が0件、「改善提言」が12件、「良かった点」が36件であったと報告されており、環境への取り組みに対する意識が定着し、継続的な改善活動が行われていることが示唆される 4

また、アサヒグループはグローバル経営体制を採用しており、サステナビリティ戦略の実行においても、グローバル本社(GHQ)と各地域統括本社(RHQ)が連携して取り組む体制を構築している 8。GHQがグループ全体の方向性を示し、RHQが各地域の事業会社をリードするという役割分担のもと、地域ごとの特性や課題に応じた取り組みを推進している 9。例えば、気候変動目標や容器包装目標などは、グループ全体目標に加え、各RHQ(日本、欧州、オセアニア、東南アジア)ごとの目標も設定されている 10

情報開示に関しても積極的な姿勢が見られる。統合報告書やサステナビリティレポートを毎年発行し、財務情報と非財務情報を統合的あるいは詳細に報告している 6。特にサステナビリティレポートは、考え方、方針、実績、取り組み、ガバナンス、リスク管理、戦略、指標と目標など、網羅的な情報を提供し、最新の内容を反映するように努めている 6。近年では、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に基づく情報開示も強化しており、専用のTCFDレポートを発行(2021年、2022年)10、その後はサステナビリティレポートに統合して開示を継続している 16。これらの開示活動は、ステークホルダーに対する透明性の確保とアカウンタビリティの履行、そしてエンゲージメントの促進を意図したものである 6

第2章 気候変動への対応

気候変動は、異常気象の激甚化や生態系への影響を通じて、人々の生活や事業活動に深刻な影響を及ぼすグローバルな課題である。自然の恵みに事業基盤を置くアサヒグループにとって、気候変動は看過できない重要な経営リスクであり、同時に脱炭素社会への移行は新たな事業機会をもたらす可能性もある 15。アサヒグループは、この課題に積極的に対応するため、野心的な目標を設定し、バリューチェーン全体での排出削減と、それを超えた社会全体の低炭素化への貢献を目指している。

2.1 目標とコミットメント

アサヒグループは、気候変動に関する中長期目標として「アサヒカーボンゼロ」を掲げている 5。その最も重要な目標は、2050年までにバリューチェーン全体の温室効果ガス(GHG)排出量を実質ゼロにする、すなわちカーボンニュートラルを達成することである 5。これは、Scope1(自社での燃料燃焼等による直接排出)、Scope2(購入電力・熱の使用に伴う間接排出)、Scope3(Scope1, 2以外のサプライチェーン排出)の全てを対象としている 5。さらに、2024年には、このネットゼロ目標がSBTi(Science Based Targets initiative)のネットゼロ基準に準拠するものであることを明確にし、2040年までの達成を目指すことを発表した 19。SBTiネットゼロ定義に基づき、GHG排出量を90%以上削減し、残余排出量を最大10%の炭素除去で相殺するという厳しい基準である 19

この長期目標達成に向けたマイルストーンとして、2030年目標が設定されている。Scope1およびScope2の排出量を2019年比で70%削減、Scope3排出量を同30%削減するというものである 5。特筆すべきは、Scope1, 2の70%削減目標が、当初2020年に設定された50%削減目標から、2022年1月に大幅に引き上げられた点である 5。これは、目標達成の確度向上とグループ内の機運の高まりを受けたものであり 10、気候変動対策へのコミットメントの強さを示している。さらに、2025年までの中間目標として、Scope1, 2排出量を2019年比で40%削減することも掲げている 10。これらの目標のうち、2030年のScope1, 2目標はSBTiから「1.5℃目標」(世界の気温上昇を産業革命前比1.5℃に抑える水準)、Scope3目標は「2℃目標」(同2℃を十分に下回る水準、Well Below 2℃)として認定されており、科学的根拠に基づいた野心的な目標であることが国際的に認められている 11

再生可能エネルギーの導入に関しても、意欲的な目標を設定している。2020年10月に国内飲料業界として初めて国際イニシアチブ「RE100」に加盟し 19、当初2050年としていた事業活動で使用する電力の100%再生可能エネルギー化目標を、2022年に10年前倒しし、2040年までの達成を目指すことを宣言した 19。これは、再エネ導入を加速させる強い意志を示すものである。

これらのグループ全体の目標に加え、地域統括会社(RHQ)ごとにも具体的な目標が設定されている 10。例えば、日本では2025年までに全生産拠点の購入電力を100%再エネ化、欧州では2030年までに工場におけるScope1, 2排出量を再エネ導入によりゼロ(カーボンニュートラル実現)、オセアニアでは2025年までに豪州・NZで使用する電力を100%再エネ化、といった目標が掲げられている 5

さらにアサヒグループは、自社のバリューチェーンにおける排出削減に留まらず、社会全体のCO2排出量削減にも貢献することを目指す「Beyond カーボンニュートラル」という目標も掲げている 19。これは、開発した技術の社会実装などを通じて、自社の枠を超えた貢献を目指すものであり、「ニュートラル&プラス」のビジョンを具体化するものである。

これらの目標達成のため、アサヒグループは2030年までにScope1, 2排出削減に関連する施策に500億円以上を投資する計画を明らかにしている 5。これは、気候変動対策を重要な経営投資と位置づけていることの証左である。

2.2 具体的な取り組み

アサヒグループは、「アサヒカーボンゼロ」達成に向け、Scope1, 2, 3の各領域で多岐にわたる具体的な排出削減策を推進している。

Scope1およびScope2の排出削減においては、再生可能エネルギーの導入と省エネルギーの徹底が二本柱となっている。再生可能エネルギーに関しては、国内外で導入を加速させている。日本では、2021年時点で国内全33生産拠点中29拠点で既に購入電力を再生可能エネルギーに切り替えており 5、2023年には国内全31工場で購入電力の再生可能エネルギー100%化を達成した 20。さらに、アサヒビール茨城工場と吹田工場では、PPA(電力購入契約)モデルによる太陽光発電設備を導入し、2023年から稼働を開始している 20。アサヒ飲料においても、明石工場(2023年)と群馬工場(2024年)で太陽光発電設備を導入している 23。欧州では、ポーランドのビールブランド「Lech」が風力発電のみで製造されているほか、コーポレートPPAモデルによる再エネ電力購入が進められている 5。オセアニアでも2025年までの再エネ100%化を目指している 5。また、日本では2009年から「アサヒスーパードライ」などの製品製造においてグリーン電力証書を活用しており、これは食品業界初の取り組みであった 20

省エネルギーの取り組みとしては、エネルギー効率の高いコージェネレーションシステム(熱電併給)の導入・更新を各工場で進めている 20。また、ビール工場などでは、排水処理工程において、メタンガスを発生させる嫌気性排水処理設備を導入し、発生したバイオガス(バイオメタンガス)を回収してボイラー燃料などに利用することで、化石燃料の使用量削減とCO2排出量削減に貢献している 20。アサヒグループ食品岡山工場ではフリーズドライの製造工程を見直すことによる電力・蒸気使用量削減 25、アサヒ飲料ではヒートポンプ式自動販売機の導入率向上 7 など、各事業に応じた省エネ努力も行われている。

さらに、将来的な脱炭素化を見据えた革新技術の開発・導入にも積極的に取り組んでいる。アサヒビール茨城工場では、ビール工場の嫌気性排水処理設備から得られるバイオガスを精製し、固体酸化物形燃料電池(SOFC)で発電する実証事業を九州大学と共同で進めており、2020年に発電に成功、2021年秋から連続稼働を継続している 5。また、ボイラー排出ガスなどからCO2を効率的に分離・回収する技術の実証試験も行っており、回収したCO2の酒類・飲料への活用や他用途開発を進めている 20。さらに、アサヒグループ研究開発センターでは、国内食品企業初となるメタネーションの実証試験を開始した 5。これは、工場から回収したCO2と、別途生成した水素を反応させて合成メタンを製造し、将来的にボイラー燃料や燃料電池の燃料として利用する「カーボンリサイクル」を目指すものである 5。これらの取り組みは、「ニュートラル&プラス」のビジョンにおける「プラス」の部分、すなわち環境価値創出への挑戦を具体化するものである。

Scope3排出量の削減においては、その約4割を占めるとされる容器包装分野での取り組みが重要となる 5。PETボトルの100%環境配慮素材(リサイクル素材、バイオ由来素材)への切り替え目標に向け、リサイクルPETの使用拡大や、水平リサイクルのための技術開発・インフラ構築への協力(例:JEPLANへの出資、豪州でのリサイクル工場設立協力)を進めている 5。ラベルレスボトルや軽量化などもScope3削減に貢献する(詳細は第3章で後述)。

物流分野では、輸送効率化による排出削減に取り組んでいる。オーストラリアでは、主力ビールブランド「Victoria Bitter」の配送に、太陽光発電による電力を動力源とする電気トラックを導入した 5。これは物流大手Linfox社、車両メーカーVolvo社との協働によるもので、毎週10万本以上の製品を配送している 5。国内では、トラックによる長距離輸送を鉄道貨物や船舶に切り替えるモーダルシフト 25 や、競合他社との共同輸送による積載率向上 7 なども実施している。

サプライヤーエンゲージメントもScope3削減の鍵となる。アサヒグループは、サプライヤーやパートナーと協働し、バリューチェーン全体のCO2削減を目指す方針を掲げている 19。AB InBevがサプライヤー向けプラットフォーム「Eclipse」を構築しているように 26、アサヒグループにおいてもサプライヤーとの具体的な連携強化策が求められる。

農業分野においても、間接的な排出削減貢献の取り組みが見られる。欧州では、ホップ生産における気候変動リスクに対応するため、AIを活用した栽培支援アプリ「FOR HOPS」プロジェクトを農家やMicrosoft社などと連携して推進している 5。オセアニアでは、ビール原料となる大麦を現地の農家から直接調達することで、持続可能な農業と地域コミュニティの支援を図っている 5

2.3 パフォーマンスと進捗

アサヒグループは、設定した気候変動目標に対する進捗状況を継続的に開示している。Scope1およびScope2のCO2排出量については、2022年時点で2019年比30%削減を達成したと報告されている 11。これは、2025年の中間目標である40%削減、そして2030年の70%削減目標に向けて順調に進捗していることを示唆するものである。この背景には、前述の再生可能エネルギー導入の加速(特に国内工場での購入電力100%再エネ化達成 20)や、省エネルギー活動の成果があると推察される。

一方、Scope3排出量については、2022年時点で2019年比5%削減に留まっており 11、Scope1, 2と比較して削減ペースは緩やかである。これは、Scope3がバリューチェーン全体にわたる広範な排出源(原材料調達、容器包装、物流、製品使用・廃棄など)を含み、自社の努力だけではコントロールが難しい側面があるためと考えられる。特に、容器包装 5 や農産物原料などが主要な排出源であると認識されており、これらの分野におけるサプライヤーとの連携強化や技術革新が今後の削減加速の鍵となるであろう。

再生可能エネルギーの導入に関しては、目標達成に向けた顕著な進捗が見られる。2023年に国内全工場での購入電力100%再エネ化を達成したことは 20、2040年のグループ全体でのRE100達成目標 19 に向けた大きなマイルストーンである。

外部評価機関による評価として、CDPの気候変動スコアに注目が集まる。アサヒグループの最新スコアは提供資料からは特定できないが、競合他社の多くが近年「Aリスト」(最高評価レベル)を獲得している状況にある 28。例えば、キリンホールディングスは2024年度評価で気候変動Aリスト 28、サントリーホールディングスも2023年度評価で気候変動Aリスト 34、サッポロホールディングスも2024年度評価で気候変動Aリスト 30 を獲得している。グローバル競合であるAB InBev 31、Heineken 32、Carlsberg 33 も近年Aリスト評価を受けている。CDPスコアは、企業の気候変動に対する取り組みの透明性と先進性を測る重要な指標であり 41、投資家からの評価にも影響を与えるため 41、アサヒグループにとってAリスト獲得は今後の重要な目標となり得る。

2.4 気候関連リスクと機会(TCFD提言に基づく分析)

アサヒグループは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同し、そのフレームワークに基づき、気候変動が事業に与えるリスクと機会を分析・評価し、情報開示を行っている 10。これは、気候変動を単なる環境問題としてではなく、財務的な影響を伴う経営課題として捉え、戦略に統合しようとする姿勢を示すものである。

同社は、気候変動リスクを、低炭素経済への移行に伴う「移行リスク」と、気候変動の物理的な影響による「物理的リスク」に分類して評価している 10

移行リスクとしては、政策・法規制の変更が大きな要因として認識されている。特に、炭素税の導入は、自社の製造工程(Scope1, 2)におけるコスト増だけでなく、サプライチェーン(特にScope3排出量の約4割を占める容器包装の調達コスト)にも影響を与える可能性がある 10。アサヒグループは、2℃シナリオと4℃シナリオに基づき、炭素税導入時の財務影響を試算しており、例えば2030年に100ドル/t、2050年に144ドル/tの炭素税が課された場合、酒類・飲料カテゴリー合計で2030年に64.7億円、2050年に64.3億円のコスト増(事業インパクト)が生じる可能性があると分析している 10。この試算は、炭素価格導入が現実的な経営リスクであることを定量的に示している。その他、水使用、廃棄物処理、プラスチック使用、エネルギー使用に関する規制強化もリスクとして挙げられている 10。市場の変化も移行リスクに含まれる。環境配慮に対する消費者の意識の高まりは、製品選択に影響を与え、対応が遅れれば売上減少につながる可能性がある一方、新たな需要を創出する機会ともなり得る 10。また、脱炭素化に向けた新技術への期待が高まる中で、既存技術やビジネスモデルが陳腐化するリスクも存在する 10。さらに、環境問題への対応が不十分と見なされた場合の評判リスクも考慮されている 10

物理的リスクは、気候変動の長期的な変化による「慢性リスク」と、異常気象の激甚化による「急性リスク」に分けられる 10。慢性リスクとして最も懸念されるのは、原料価格の高騰である。気温上昇や降水パターンの変化は、大麦、ホップ、トウモロコシ、コーヒー豆といった主要農産物の収量や品質に影響を与え、調達価格の上昇や供給不安定化を招く可能性がある 10。アサヒグループは、主要原材料の生産地別リスク分析を行い、水リスクが「高」「極めて高」と評価される国や地域(中国、アメリカ、ブラジルなど)を特定している 5。また、原料価格高騰による財務影響も試算しており、トウモロコシ関連で19.7億円、コーヒー関連で26.6億円のコスト上昇の可能性があるとしている 10。平均気温の上昇は、製品冷却に必要なエネルギーコストの増加にもつながる 10。深刻な水不足は、原料生産地だけでなく自社工場の操業にも影響を及ぼす可能性がある 10。急性リスクとしては、豪雨や台風といった異常気象の激甚化が挙げられる。これにより、生産拠点の操業停止、サプライチェーンの寸断、固定資産や在庫の毀損といった被害が発生し、事業継続が困難になるリスクが指摘されている 10

一方で、アサヒグループは気候変動を事業機会としても捉えている 10。製品・サービス面では、環境配慮型製品への需要増加や、猛暑による熱中症対策飲料、夏季のビール・飲料の消費量増加、防災意識の高まりによる備蓄用食品(フリーズドライ等)の需要増などが期待される 10。エネルギー源の面では、再生可能エネルギー技術の進展によるコスト削減や、自社で開発する脱炭素技術(ビール酵母細胞壁由来の農業資材など)による新たな収益機会が見込まれる 10。資源効率の面では、省エネ活動や水のリサイクル、ビール副産物の活用などがコスト削減や新規事業につながる可能性がある 10。さらに、気候変動への積極的な取り組みは、企業評価やブランドイメージの向上を通じて、市場アクセスや人材獲得、ESG投資の呼び込みといった面でも機会をもたらすと考えられる 10

このように、TCFDフレームワークを用いたリスクと機会の分析・開示は、アサヒグループが気候変動を多角的に捉え、経営戦略に統合しようとしていることを示している。特に財務影響の定量的な試算は、リスクの深刻度を具体的に示し、対策の必要性を裏付けるものである。

第3章 資源循環の推進

限りある資源の有効活用と廃棄物削減は、持続可能な社会の実現に向けた重要な課題である。特に飲料・食品業界においては、製品の容器包装や製造工程で使用される水資源、そして製造過程で発生する廃棄物や副産物の管理が大きなテーマとなる。アサヒグループは、「自然の恵み」を事業の基盤とする企業として、資源循環の推進を環境戦略の柱の一つと位置づけ、「3R+Innovation」をキーワードに、容器包装、水資源、廃棄物・副産物の各領域で目標を設定し、具体的な取り組みを進めている。

3.1 容器包装における取り組み

アサヒグループの容器包装に関する取り組みは、「3R+Innovation」というグループ全体目標に基づいている 1。これは、従来のリデュース(Reduce: 発生抑制)、リユース(Reuse: 再使用)、リサイクル(Recycle: 再生利用)の3Rに加え、環境負荷の低い容器包装への転換や新たな仕組みづくりを目指すイノベーション(Innovation)を重視する姿勢を示すものである。この方針は、既存の枠組みにとらわれず、より抜本的な解決策を追求しようとする意欲の表れと言える。

具体的な目標として、プラスチック容器に関しては、2025年までに100%を有効利用可能(リユース可能、リサイクル可能、堆肥化可能、熱回収可能などを含む)な素材にすること 11、そして2030年までに主力のPETボトルを100%リサイクル素材またはバイオ由来素材等の環境配慮素材に切り替えること 1 を掲げている。後者の目標は、アサヒ飲料、アサヒヨーロッパアンドインターナショナル、アサヒホールディングスオーストラリア、アサヒホールディングスサウスイーストアジアが対象となっている 19。さらに、プラスチックに替わる持続可能な新素材の開発や、プラスチック容器包装を利用しない新たな販売方法の推進も目標に含まれている 19

これらの目標達成に向けた具体的な取り組みは、「3R+Innovation」の各要素に沿って展開されている。

Reduce(削減) の取り組みとしては、容器包装そのものの使用量を減らす努力が続けられている。アサヒ飲料では、2018年に業界に先駆けて「アサヒ おいしい水 天然水 ラベルレスボトル」を発売して以来 23、ラベルレス商品のラインナップを「十六茶」や「ウィルキンソン」などに拡大している 43。ラベルレス商品は、ラベルに使用する樹脂量を削減するだけでなく、消費者がラベルを剥がす手間を省き、分別の促進にも繋がる 43。また、店頭での単品販売を可能にするために、ラベル面積を大幅に削減した「シンプルecoラベル」も「おいしい水 天然水」や「十六茶」で展開しており、CO2排出量削減にも貢献している 23。PETボトル本体やキャップの軽量化も継続的に進められており 11、炭酸飲料用PETボトルキャップでは国内最軽量を実現した例もある 23。アサヒビールでは、缶体上部のみを固定する新しいタイプの6缶パック資材「エコパック」を導入し、紙の使用量を大幅に削減(350ml缶で65%削減)した 45。この資材は、仮にアサヒビールの全6缶パックに適用された場合、年間約8,800トンの紙使用量と約7,400トンのCO2排出量削減が見込まれるという 45。また、ビール類の段ボールカートンにおいても、開け口部分の紙使用量を削減した「エコフレカートン」を採用している 46

Reuse(再使用) に関しては、欧州を中心にリターナブルびんの利用が推進されている 11。また、使い捨て容器からの脱却を目指すイノベーションとして、パナソニック株式会社と共同で、間伐材などのセルロースファイバーを主原料とするエコカップ「森のタンブラー」を開発し、イベント等での活用を進めている 46。これは、消費行動自体の変革を促す試みとして注目される。

Recycle(再生利用) では、PETボトルの再生材利用が重点的に進められている。使用済みPETボトルを原料とするリサイクルPET(メカニカルリサイクルPET、ケミカルリサイクルPET)の導入を拡大しており 1、2030年の100%環境配慮素材化目標達成を目指している。アサヒ飲料は、リサイクル技術を持つ株式会社JEPLANへの出資 11 や、他社と共同でのペットボトル水平リサイクル協定締結(渋谷区)47 など、外部との連携を通じて資源循環システムの構築にも貢献している。オーストラリアでは、パートナー企業と共同でリサイクルPETボトル原料製造工場を設立した 11。また、ボトルだけでなくキャップの水平リサイクルを目指すコンソーシアムにも参画している 11。アサヒ飲料は、「ボトルtoボトル」と呼ばれる使用済みペットボトルから再びペットボトルを作る水平リサイクルを推進しており、2024年のリサイクルPET利用率は36%に達したと報告している 23

Innovation(革新) としては、前述の「森のタンブラー」やラベルレス商品に加え、プラスチック代替となる新素材の開発や、プラスチック容器包装を使用しない販売方法(例:量り売り、濃縮タイプ製品など)の検討が進められている 19。また、アサヒ飲料では、環境負荷低減のため、ラベル印刷に植物由来のバイオマスインキを使用する取り組みも拡大している 7

実績としては、2022年時点で、グループ全体(対象会社)のプラスチック容器における有効利用可能な素材の比率は99%に達し、PETボトルの環境配慮素材比率は21%であったと報告されている 11。アサヒ飲料のラベルレス商品は好調で、2022年の売上目標達成率は134%(前年比149%増)であった 11。これらの進捗は、目標達成に向けた着実な歩みを示すものであるが、特にPETボトルの100%環境配慮素材化という高い目標に対しては、さらなる取り組みの加速が必要である。

3.2 水資源の持続可能な利用

水は、アサヒグループの製品(ビール、飲料など)の主原料であり、製造工程においても冷却や洗浄などに不可欠な資源である 1。そのため、同社は水資源の持続可能性確保を最重要課題の一つと認識し、「人と自然のための健全な水環境」の実現を目指している 1。取り組みは、自社工場での水使用量削減(効率化)と、事業活動を行う流域全体での水資源保全(健全化)の両面から進められている。

具体的な目標として、水使用量の原単位(製品1キロリットル製造あたりの水使用量)について、2030年までにグローバル平均で3.2立方メートル/キロリットル以下、特に水リスクが高いと特定された優先流域の主要な生産拠点(9拠点)では平均2.7立方メートル/キロリットル以下にするという数値目標を設定している 11。優先流域の特定にあたっては、世界的な水リスク評価ツール(Aqueduct Water Risk Filter, IBAT)の結果や、各生産拠点で実施している水リスク詳細調査の結果が用いられている 19。さらに、水リスクが高いと特定された地域(水量、水質、衛生等に関するリスクのある流域、7生産拠点)にある生産拠点においては、2030年までに100%、その流域が抱える固有の課題(水量、水質、衛生等)の改善に貢献する取り組みを実施することも目標としている 19

これらの目標達成のため、まず自社工場における水リスクの把握と低減、そして水使用量の削減が徹底されている。水リスク評価ツールや詳細調査を通じて、水ストレスの高い地域(例:中国、アメリカ、ブラジルの一部など)を特定し 5、それぞれの状況に応じた対策を講じている。使用量削減においては、製造工程の見直し(例:製品切り替え時の洗浄水削減、洗浄間隔の最適化)や、節水技術の導入が進められている 19。特筆すべきは、水のリサイクル技術の導入である。例えば、オーストラリアにあるカールトン&ユナイテッド・ブルワリーズ社のヤタラ工場では、大規模な水リサイクル施設を建設し、高度な処理プロセス(バイオリアクター、フィルター、精密ろ過、逆浸透、消毒)を経て再生水を作り出し、蒸気発電機やタンク洗浄などに再利用している 19。これにより、取水量を大幅に削減し、製品1キロリットルあたりの水使用量平均2立方メートルという、世界最高レベルの水効率を達成している 19

工場での取り組みに加え、水源となる流域全体の健全性を保つための活動も重視されている。その象徴的な取り組みが、広島県に保有する広大な社有林「アサヒの森」(詳細は第4章で後述)における水源涵養活動である 11。アサヒグループは、「アサヒの森」が持つ水涵養能力を定量的に評価し、その量が国内ビール工場の年間水使用量を上回ることから、「ウォーターニュートラル」を達成していると報告している 11。2022年の水涵養量は1,101万立方メートルと算出されている 11。また、「アサヒの森」以外でも、国内の各工場が近隣の森林において、自治体やNPOなどと協力し、植林や下草刈り、間伐といった水源地の森保全活動を従業員参加型で継続的に実施している 7。これまでに全国16カ所でのべ8,000人以上が参加した実績がある 21。アサヒ飲料では、工場水源となっている森林の保全活動を「アサヒ飲料の森」づくりとして展開している 21

実績としては、水使用量原単位(グローバル平均)は、目標である3.2立方メートル/キロリットルに向けて削減が進められており、2022年時点では3.4立方メートル/キロリットルであったと報告されている 11。地域別では、欧州のビール1リットルあたり水使用量原単位が2.92リットル(2022年)11、豪州の製品1リットルあたり水使用量原単位が2.23リットル(2022年)11 と、地域によっては既に高い効率を達成している。水リスク調査も計画通り進められており、2022年時点で18拠点で実施済み、2024年までに全主要拠点での実施完了を目指している 11

アサヒグループの水資源管理は、工場内での効率化と流域レベルでの保全活動という両輪で進められており、特に「アサヒの森」を活用したウォーターニュートラルの達成は、その包括的なアプローチを示す象徴的な成果と言える。

3.3 廃棄物削減と副産物活用

アサヒグループは、事業活動に伴う廃棄物の削減と資源の有効利用にも注力している 7。特にビール類の生産においては、発生する副産物・廃棄物の再資源化率100%を既に達成していると報告されている 50。これは、製造工程から出る廃棄物を可能な限り削減し、発生したものを資源として最大限活用するサーキュラーエコノミーの考え方を実践していることを示している。

廃棄物削減の取り組みとしては、前述の容器包装における軽量化やリデュース活動に加え、製造工程でのロス削減や、賞味期限延長による食品ロス削減への貢献 25 などが挙げられる。アサヒグループ食品では、商品カテゴリーごとに賞味期限延長の検討を進めている 25

さらに注目すべきは、製造工程で発生する副産物を単に廃棄・再資源化するだけでなく、新たな価値を持つ製品や素材として活用する「アップサイクル」への積極的な取り組みである。これは、「ニュートラル&プラス」のビジョンにおける「プラス」の価値創造にも繋がる活動と言える。

ビール製造からは、麦汁を絞った後の麦芽粕(モルトフィード)と、発酵後に残るビール酵母が主な副産物として発生する。モルトフィードは、従来から家畜の飼料などに再利用されてきた 46。ビール酵母は、アサヒグループ食品が製造する胃腸・栄養補給薬「エビオス錠」の主原料として活用されているほか、分解・抽出された酵母エキスは調味料などの原料として利用されている 46。さらに、アサヒグループ食品は、酵母エキス製造時に取り除かれる「酵母細胞壁」にも着目し、それに含まれる食物繊維やたんぱく質を活かして、プロテイン製品「ディアナチュラ アクティブ」やダイエットサポート食品「スリムアップスリム」といった健康素材としてアップサイクルしている 45

アサヒバイオサイクル株式会社では、この「ビール酵母細胞壁」を由来とする農業資材を開発・販売している 45。この資材は、植物の根張りを促進し、病気に強い作物を育てる効果があり、農作物の収量増加や農薬使用量低減に貢献する 45。さらに、この資材を活用した節水型乾田直播栽培の実証実験にも参画し、米作りの効率化と温室効果ガス排出削減、水資源削減への貢献を目指している 45

ビール製造関連以外でも、アップサイクルの取り組みは広がっている。アサヒビールと、サステナビリティ事業に特化したグループ会社アサヒユウアス株式会社は、飲食店で定期的に交換・回収され、従来は産業廃棄物として処理されていたビールサーバー用のホース(ビールライン)を、粉砕・洗浄して成形可能な素材「ReBL(レブル)」としてアップサイクルすることに成功した 43。この「ReBL」を使用したコースターなどが商品化されており、年間約40トン発生していた廃棄物 43 の削減と資源の有効活用を進めている。アサヒユウアスは、大阪の水族館「海遊館」と協力し、改修で不要になった水槽内のサンゴのオブジェをキーホルダーやスタンドにアップサイクルする取り組みも行っている 45

アサヒ飲料では、コーヒー抽出後のコーヒー粕や茶粕の再利用 23、岡山工場や研究開発センターの社員食堂から出る生ごみを堆肥化し、農家へ提供するリサイクルループ 51 なども実施している。

これらの多岐にわたる副産物活用・アップサイクルの取り組みは、アサヒグループが廃棄物削減と資源効率向上に留まらず、サーキュラーエコノミーを通じて新たな価値創造を目指していることを示している。専門子会社の設立は、これらの活動を単なるCSRではなく、持続可能な事業として成長させようという意図の表れとも考えられる。

3.4 資源循環に関するリスクと機会

資源循環への取り組みは、アサヒグループにとってリスク管理と機会創出の両面を持つ。

リスクとしては、第一に規制強化が挙げられる。特にプラスチック容器包装に対する規制は世界的に強化される傾向にあり、使用禁止、課税、リサイクル材使用義務化などが進めば、代替素材への転換コストや調達コストの増加、製品設計の変更といった対応が必要となる 10。水資源に関しても、水ストレス地域における取水制限や水質基準の強化は、工場の操業や原料調達に直接的な影響を与え、事業継続リスクとなり得る 10。廃棄物処理に関する規制強化や処理コストの上昇も、財務的な負担増につながる可能性がある 10。また、資源価格の変動もリスク要因である。

一方、資源循環への積極的な取り組みは、多くの事業機会をもたらす。環境配慮型容器包装(軽量ボトル、ラベルレス、リサイクル材使用製品、エコカップ等)は、環境意識の高い消費者の支持を集め、ブランドイメージ向上と売上増加に貢献する可能性がある 10。資源効率の改善(省エネルギー、節水、廃棄物削減)は、製造コストの削減に直結する 10。副産物のアップサイクルは、廃棄物処理コストを削減するだけでなく、「ReBL」製品や酵母細胞壁由来の健康素材・農業資材のように、新たな収益源を生み出す可能性がある 10。さらに、アサヒ飲料が実証実験を開始した「CO2を食べる自販機」のように 23、大気中のCO2を吸収し、それを肥料やコンクリート原料として活用する革新的な技術は、カーボンネガティブへの貢献と新たなビジネスモデル創出の可能性を秘めている。サーキュラーエコノミーへの移行は、業界内でのリーダーシップ確立や、ESG投資家からの評価向上にも繋がり、持続的な成長の基盤となり得る。

第4章 生物多様性の保全

生物多様性は、食料、水、清浄な空気といった生態系サービスを通じて人類の生存基盤を支えており、その損失は地球規模の深刻な環境課題である。アサヒグループは、事業活動が水や農産物といった「自然の恵み」に深く依存していることから、生物多様性の保全を事業継続に不可欠な要素と認識している 19。気候変動への対応や持続可能な資源利用と並び、生物多様性への配慮は同社の環境戦略の重要な柱となっている。

4.1 基本方針と戦略

アサヒグループは、生物多様性保全への取り組みの基盤として、2010年に国内酒類業界で初めて「生物多様性宣言」を公表した 49。この宣言に基づき、事業活動が生物多様性に与える影響を認識し、その保全に配慮した活動を推進する方針を示している。

この方針を具体化するのが、同社が保有する広大な社有林「アサヒの森」における活動指針として2014年に策定された「アサヒの森 生物多様性保全の基本方針」である 49。この基本方針は、「守る」「活かす」「協働する」という三つの柱から構成されている 54

「守る」では、アサヒの森の生物多様性を将来にわたって保全することを目的とし、適切な森林施業による針葉樹林の維持、多様な生物が生息する広葉樹林(森全体の25%を占める)の保護、15ある山々の生態系や地域の特色に応じた個性的な管理計画の策定、そして貴重な動植物の生息環境の保全を掲げている 54

「活かす」では、アサヒの森が持つ多様な価値(生態系サービス)を最大限に活用することを目指す。生物多様性の価値に加え、木材生産、水質浄化、温暖化ガスの吸収・固定、レクリエーションや環境教育の場の提供といった多面的な機能を把握し、グリーンツーリズムや間伐材利用の促進など、新たな活用方法を検討・実践するとしている 54。さらに、これらの自然の恵みを、環境教育などを通じてあらゆるステークホルダーと共有していく方針も示されている 54

「協働する」では、生物多様性保全活動をアサヒグループ単独で行うのではなく、多様な主体との連携を通じて推進していく姿勢を強調している。アサヒの森の魅力や取り組みに関する積極的な情報発信、活動に賛同・協力してくれるファンやパートナーの拡大、そして地域住民、有識者、社員などが交流し意見交換する場を設け、それを森の管理や活用方法に反映させていくことを目指している 54

近年、国際的に自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の枠組みへの注目が高まる中、アサヒグループもこの動きに対応する方針を示している。TNFDフレームワークに沿った分析を進め、生物多様性に関するリスクと機会を評価し、具体的な対応策や指標・目標を検討していくとしている 11。特に、気候変動、容器包装、農産物原料、水資源といった既存の環境重点課題との連関性を踏まえ、統合的なアプローチで生物多様性の保全・回復に取り組む姿勢がうかがえる 11。分析にあたっては、TNFDが提唱するLEAPアプローチ(Locate, Evaluate, Assess, Prepare)に準拠して進めている 11

4.2 具体的な取り組み

アサヒグループの生物多様性保全活動は、「アサヒの森」を核としつつ、水源地保全、環境教育、持続可能な原料調達、外部連携など、多岐にわたる。

「アサヒの森」における活動 は、80年以上にわたる長期的な森林経営の実績に裏打ちされている 22。広島県庄原市と三次市に点在する総面積2,165ヘクタールの広大な社有林 22 において、「守る」「活かす」「協働する」の基本方針に基づき、多様な活動が展開されている。森林管理としては、生物多様性に配慮した適切な間伐などの施業が継続的に行われている 54。生物多様性の状況を把握するため、定期的なモニタリング調査が実施されており、植生調査や鳥類調査に加え、センサーカメラの設置 49 や、環境DNA調査(これにより国の特別天然記念物であるオオサンショウウオの生息可能性が示唆された)21 など、科学的な手法も導入されている。自然の恵みを活かす取り組みとしては、木材生産(FSC認証材の出荷実績あり)に加え、環境教育の場としての活用が積極的である。「アサヒ森の子塾」や「森と水の学習会」といったプログラムが開催され、地元の小学生などが森林の水源涵養機能や環境保全の大切さを学んでいる 53。協働の取り組みとしては、ウェブサイトやパンフレットを通じた情報発信 54 や、地域住民、有識者、社員が参加する交流・意見交換の場の設定 54 が行われている。近年では、広島市立大学との共創ゼミを開設し、学生と共に森林の循環について学べるデジタルコンテンツを制作するなど、若い世代との連携も進められている 22

水源地保全活動 は、「自分たちの使う水は自分たちで守る」という考えに基づき、全国の工場周辺で展開されている 21。1999年にキリンホールディングスが先駆けて開始した活動と同様に 56、アサヒグループも2004年から従業員参加による水源地の森林保全活動を開始した 49。これまでに全国16カ所の工場で、植林、下草刈り、枝打ち、間伐などの森林整備活動が実施され、延べ8,000人以上が参加した実績を持つ 21。アサヒ飲料では、群馬、北陸、富士山、明石、岡山といった工場の水源となっている森林で「アサヒ飲料の森」づくりを進めている 21

環境教育 に関しても、次世代への自然の恵みの継承を目的として、多様なプログラムが実施されている。「アサヒの森」での環境学習プログラム 25 に加え、アサヒ飲料では小学校への出張授業「三ツ矢サイダージュニア環境授業」を2009年から展開し、水の大切さやリサイクルについて教えている 23。また、神戸市での「森のようちえん」活動への支援 53 など、地域と連携した取り組みも見られる。

持続可能な原料調達 の観点からは、生物多様性への影響を考慮した取り組みが進められている。容器包装に使用する紙資材においてFSC認証紙の利用を推進しているほか 7、主要な農産物原料(大麦、ホップ、トウモロコシ、コーヒーなど)について、生産地における環境リスク(気候変動、水資源、生物多様性への影響を含む)を評価し、サプライヤーとの連携を通じて持続可能な調達を目指している 1

外部連携 としては、生物多様性保全に関する国内目標「30by30目標」(2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全することを目指す目標)の達成に貢献するため、企業や団体が参加する「生物多様性のための30by30アライアンス」に参画している 11

4.3 成果と外部評価

アサヒグループの生物多様性保全への取り組みは、具体的な成果と外部からの高い評価に繋がっている。

「アサヒの森」で実施された生物多様性調査では、スギ・ヒノキの人工林が中心であるにもかかわらず、非常に豊かな生態系が維持されていることが科学的に示された 55。これまでに植物668種、鳥類60種が確認され、その中には環境省や広島県のレッドデータブックに記載される重要種も植物4種、鳥類12種含まれていた 55。特筆すべきは、外来種が非常に少なく、日本在来の生物が多く見られた点である 55。この豊かさの背景には、標高差のある多様な地理的環境に加え、長年にわたる計画的な間伐など、適切な森林管理が行き届いていることがあると分析されている 55。専門家からも、手入れされた人工林が自然林に劣らない生物多様性を持ちうることが示唆されている 55

これらの活動と成果は、外部からも高く評価されている。2016年には、「アサヒの森」の取り組みが評価され、「第5回いきものにぎわい企業活動コンテスト」で農林水産大臣賞を受賞した 22。2022年には、森林整備による脱炭素への貢献や森林資源の循環利用などが評価され、農林水産省林野庁主催の「森林×脱炭素チャレンジ2022」でグランプリを受賞した 21。さらに、2023年には、「アサヒの森」の一部(甲野村山)が、環境省によって「自然共生サイト」(OECM: Other Effective area-based Conservation Measures、保護地域以外で生物多様性保全に資する地域)に認定された 21。これは、「30by30目標」達成に向けた国内の取り組みの一環であり、民間企業による生物多様性保全活動の貢献が公的に認められた事例である。アサヒグループは、今後「アサヒの森」全体でのOECM認定取得を目指すとしている 11。また、「アサヒの森」は2001年にFSC森林管理認証を取得しており、責任ある森林管理が行われていることが国際的にも認められている。

生態系サービスの観点からは、「アサヒの森」が持つ水涵養能力が定量化され、2022年には年間1,101万立方メートルと算出された 11。これは、同年の国内ビール工場の水使用量(約963万立方メートル)を上回っており、国内ビール事業における「ウォーターニュートラル」達成の根拠となっている 22。また、森林管理(間伐等)によるCO2吸収効果も試算されており、年間816トンの吸収に貢献していると報告されている 22

4.4 生物多様性に関するリスクと機会

生物多様性の損失は、アサヒグループにとって事業運営上のリスクと機会の両側面を持つ。

リスクとしては、まず原料調達への影響が挙げられる。事業に不可欠な農産物原料(大麦、ホップ等)は、特定の生態系や受粉昆虫などに依存している場合があり、生物多様性の劣化は収量減少、品質低下、価格変動といったサプライチェーンリスクに直結する。水資源に関しても、水源地の生態系劣化は水質悪化や水量減少を招き、工場の操業や原料生産に影響を与える可能性がある。生態系サービスの低下(例:水質浄化能力の低下、自然災害の緩衝機能の低下)は、事業コストの増加や操業停止リスクを高める。また、近年、TNFDに代表されるように、自然関連の情報開示やデューデリジェンスを求める規制や投資家の動きが強まっており、これらに適切に対応できない場合、規制リスクや資金調達上の不利益、評判リスクに繋がる可能性がある。アサヒグループが実施しているTNFDのLEAPアプローチに基づく分析 11 は、これらのリスクを具体的に特定し、管理するための重要なステップである。

一方で、生物多様性保全への積極的な取り組みは、新たな機会も創出する。「アサヒの森」のような具体的な保全活動は、環境意識の高い消費者や投資家からの評価を高め、ブランド価値向上に貢献する。持続可能な方法で調達された原料を使用した製品は、市場での差別化要因となり得る。生態系サービスの維持・向上(水質浄化、CO2吸収など)は、長期的なコスト削減や事業の安定化に繋がる。また、「アサヒの森」を活用したエコツーリズムや環境教育プログラムは、地域社会との良好な関係構築や新たな事業展開の可能性を秘めている。TNFDへの早期対応や自然共生サイト認定などは、ESG評価の向上を通じて、持続可能な資金調達(グリーンボンド等)や人材獲得においても有利に働く可能性がある。

第5章 業界動向と競合比較

アサヒグループの環境パフォーマンスを客観的に評価するためには、同社が属する飲料・食品業界全体の動向や先進的な取り組み、そして主要な競合他社の戦略や実績との比較が不可欠である。

5.1 飲料・食品業界における環境先進事例

飲料・食品業界は、サプライチェーンが長く、自然資源への依存度が高いことから、環境課題への対応が特に重要視される分野である。近年、多くの企業がサステナビリティを経営の中心に据え、先進的な取り組みを進めている。

水管理においては、サントリーホールディングス(以下、サントリー)が「水と生きる」という企業理念のもと、長年にわたり水源涵養活動「サントリー 天然水の森」を展開し、工場での水使用量以上の水を涵養する「ウォーター・ポジティブ」を国内で達成しているほか、次世代への環境教育「水育」をグローバルに展開している 57。Heineken N.V.(以下、ハイネケン)は、水ストレス地域における水効率目標(2.6 hl/hl by 2030)を設定し、流域レベルでの水収支改善プロジェクトを推進している 59。Carlsberg A/S(以下、カールスバーグ)も「ZERO Water Waste」目標を掲げ、水効率改善と水リスク地域での水補給に取り組んでいる 39。Anheuser-Busch InBev SA/NV(以下、AB InBev)は、水ストレス地域における水質・水量改善目標を掲げている 27。Molson Coors Beverage Company(以下、モルソン・クアーズ)は、工場での水効率改善目標に加え、農業サプライチェーンにおける水効率改善や流域保護パートナーシップを進めている 62。これらの事例は、工場内の効率化だけでなく、流域全体での保全活動やサプライチェーン上流への働きかけが重要になっていることを示している。

容器包装、特にプラスチック問題への対応は、業界全体の喫緊の課題である。サントリーは、2030年までにグローバルで使用する全ペットボトルをリサイクル素材または植物由来素材100%に切り替え、化石由来原料の新規使用ゼロを目指すという野心的な目標を掲げ、ボトルtoボトルリサイクル技術の開発・導入や軽量化を推進している 58。ハイネケンも、再利用可能包装の比率向上(43% by 2030)、ボトル・缶のリサイクル材比率向上(50% by 2030)、包装材の設計段階からのリサイクル可能性向上(99% by 2030)といった具体的な目標を設定している 59。カールスバーグは、ボトル・缶の回収リサイクル率向上(76%達成)や、包装材の再利用・リサイクル・再生可能素材への転換を進めている 61。AB InBevは2025年までに全製品の包装をリターナブルまたはリサイクル材主原料にすること 27、モルソン・クアーズも2025年までに包装材を100%再利用・リサイクル・堆肥化可能にし、消費者向けプラ包装のリサイクル材比率を30%にする目標を掲げている 63。また、小売業のイオン株式会社(以下、イオン)は、店舗から出る食品廃棄物を堆肥化し、契約農家で利用、そこで生産された野菜を再び店舗で販売するという「食品リサイクルループ」を構築している 67。これらの動きは、単なるリサイクル率向上だけでなく、リユースモデルの推進や、素材そのもののサステナビリティ向上(リサイクル材、バイオマス材利用)へと焦点が移っていることを示唆している。生分解性素材や堆肥化可能素材の活用も進んでいる 68

気候変動対策(脱炭素化)においては、再生可能エネルギーの導入が加速している。キユーピー株式会社、株式会社ヤオコー、株式会社ピエトロ、株式会社ブルボンなどが、PPA(電力購入契約)などを活用した再エネ導入を進めている 71。サントリーは2030年までの再エネ100%化を目標としている 58。ハイネケンは2040年のバリューチェーン全体でのネットゼロ、2030年のScope1&2ネットゼロを目標に掲げ、再エネ導入を進めている 59。カールスバーグ 61 とAB InBev 27 も2040年のバリューチェーンネットゼロを目標としている。モルソン・クアーズはSBTi認定の2025年目標(Scope1&2 50%削減、Scope3 20%削減)を掲げている 63。また、輸送・物流における排出削減策として、電気自動車(EV)の導入や配送ルートの最適化 68、共同配送なども有効な手段として認識されている。

食品ロス削減も重要なテーマである。日本マクドナルド株式会社はAIを活用した需要予測システムを導入し、廃棄ロス削減に取り組んでいる 67。コカ・コーラボトラーズジャパン株式会社は、賞味期限が近づいた製品をフードバンクやイベント配布などに活用している 67。日清食品ホールディングス株式会社は、独自技術で生中華麺の賞味期限を延長した 67。サントリーは国内工場での副産物再資源化率100%を達成している 67。株式会社コークッキングはフードシェアリングサービス「TABETE」を運営している 67。味の素株式会社は家庭での調理ロス削減レシピを提案している 67。株式会社ニチレイフーズは鶏肉加工品の選別にAI技術を導入し、廃棄率を半減させた 67。これらの事例は、需要予測、期限管理、未利用資源活用、消費者啓発など、多様なアプローチが存在することを示している。

持続可能な調達、特に農業分野における取り組みも進化している。キユーピーは持続可能な原料調達方針を掲げている 71。イオンは食品リサイクルループを通じて契約農家と連携している 67。カールスバーグは「ZERO Farming Footprint」目標を掲げ、欧州で再生可能農業(リジェネラティブ農業)のパイロットプロジェクトを開始している 61。AB InBevは「Smart Agriculture」目標のもと、直接契約農家のスキル向上や財務的自立を支援している 27。モルソン・クアーズも持続可能な大麦・ホップ調達目標を掲げている 62。USDAオーガニック認証やレインフォレスト・アライアンス認証といった第三者認証の活用も広がっている 70

これらの先進事例は、飲料・食品業界における環境課題への取り組みが、個別の施策に留まらず、バリューチェーン全体を視野に入れた包括的な戦略へと進化していること、そして技術革新や異業種連携、消費者とのコミュニケーションが成功の鍵となっていることを示している。また、B Corp認証のように、企業の社会的・環境的パフォーマンス全体を評価する認証制度も、業界リーダーのベンチマークとして注目されている 73

5.2 主要競合他社の特定と比較分析

アサヒグループの環境パフォーマンスを評価する上で、国内外の主要な競合他社との比較は不可欠である。

国内市場においては、ビール類市場を中心に、キリンホールディングス株式会社(以下、キリン)、サントリー、サッポロホールディングス株式会社(以下、サッポロ)が主要な競合相手となる 74。2022年のビール系飲料市場シェア(数量ベース)を見ると、アサヒが36.5%で首位、僅差でキリンが35.7%、次いでサントリーが16.2%、サッポロが11.6%と、この4社で市場の大部分(99%以上)を占めている 76。各社はそれぞれ特徴的なブランドポートフォリオと戦略を持つ。キリンは「一番搾り」に加え、発泡酒・新ジャンル(「本麒麟」など)に強みを持つほか、近年は医薬・バイオケミカル事業も強化している 74。サントリーは「ザ・プレミアム・モルツ」に代表されるプレミアムビール路線に加え、ウイスキーや清涼飲料事業にも大きな強みを持つ 74。サッポロは「ヱビス」「黒ラベル」といった独自性の高いブランドイメージを構築している 74。アサヒは「スーパードライ」という圧倒的な基幹ブランドを持ち、ビール事業への注力度が高い一方、近年は海外展開を加速させている 75

グローバル市場に目を向けると、アサヒグループはM&Aを通じて欧州やオセアニアでの事業基盤を強化し、世界第3位(2023年売上高ベースシェア2.60%)のビールメーカーとなっている 75。グローバル市場での主要な競合相手としては、世界最大手のAB InBev(ベルギー、シェア8.81%)77、第2位のハイネケン(オランダ、シェア6.10%)77、第4位のモルソン・クアーズ(米国/カナダ、シェア2.06%)77、第5位のカールスバーグ(デンマーク、シェア1.59%)77 などが挙げられる。これらのグローバルプレーヤーは、巨大な事業規模とブランド力を背景に、サステナビリティに関しても先進的な取り組みを進めている場合が多い。その他、中国の青島ビール(Tsingtao Brewery)77 や華潤ビール(China Resources Beer)77、飲料事業全体ではThe Coca-Cola CompanyやPepsiCo, Inc. 79、スピリッツ市場ではDiageo plcやPernod Ricard SA 79 なども、事業領域によっては競合となる。

これらの主要競合他社の環境戦略・目標・取り組みを、アサヒグループと比較分析する。

気候変動: 目標の野心度では、アサヒグループの2040年ネットゼロ目標 19 は、ハイネケン 59、カールスバーグ 61、AB InBev 27 と同水準であり、業界の先進的な目標設定に追随している。Scope1&2の2030年目標(70%削減)5 は、キリン(55%削減)56 やモルソン・クアーズ(50%削減)63 よりも高い水準である。再生可能エネルギー導入目標(2040年100%)19 も、サントリー(2030年100%)58 やAB InBev(2025年100%)27 と比較すると達成年は遅いが、国内飲料業界初のRE100加盟 19 や国内工場での100%達成 20 など、着実な進捗を見せている。取り組み面では、アサヒグループのCO2回収・利用(CCUS)やメタネーションへの挑戦 5 は、他社には見られない特徴的な取り組みであり、「プラス」の価値創造を目指す姿勢を具体化している。

資源循環(容器包装): PETボトルの100%環境配慮素材化目標(2030年)1 は、サントリーの同目標(2030年)58 と並び、業界最高水準の野心度である。キリンの目標(50% by 2027)56 やモルソン・クアーズ(プラ包装リサイクル材30% by 2025)63 と比較しても高い。取り組み面では、アサヒ飲料のラベルレス・シンプルecoラベル 23 は市場をリードする動きであり、アサヒビールの新6缶パック資材 45 や「森のタンブラー」46 も独自性が高い。水平リサイクルへの注力 11 はサントリー 64 と共通する。廃棄ビールホースのアップサイクル「ReBL」43 など、副産物・廃棄物のアップサイクルへの注力はアサヒグループの強みと言える。

資源循環(水資源): 水使用量原単位の削減目標(グローバル平均3.2㎥/kl以下 by 2030)19 は、ハイネケン(グローバル平均2.9 hl/hl by 2030)59 やカールスバーグ(2022年時点で相対削減率31%達成)40、モルソン・クアーズ(2.8 hl/hl by 2025)63 など、他社も同様に高い目標を掲げており、業界標準的なレベルと言える。アサヒグループの特徴は、「アサヒの森」を活用した国内ビール工場の「ウォーターニュートラル」達成 22 である。これはサントリーの「天然水の森」57 と類似するが、自社保有林という点が異なる。水リスク評価に基づく優先流域での目標設定 19 や、水リスク地域での流域課題改善への貢献目標 19 は、ハイネケン 59 やAB InBev 27、カールスバーグ 61 など、グローバル企業に共通する流域視点での取り組みである。

生物多様性: アサヒグループの取り組みは、「アサヒの森」という80年以上の歴史を持つ具体的な保全活動 22 を核としている点が最大の強みであり、他社にはない独自性を持つ。科学的調査に基づく定量評価 22 や、自然共生サイト認定 21、TNFDへの早期対応 11 など、先進的な側面も見られる。キリンもスリランカ紅茶農園やベトナムコーヒー農園での認証取得支援、国内ブドウ畑での生態系調査など、サプライチェーンにおける生物多様性保全に力を入れている 56。サントリーも「天然水の森」での生態系保全や愛鳥活動 58 を長年続けている。カールスバーグは「ZERO Farming Footprint」目標を掲げ再生可能農業を推進 61、AB InBevは「Smart Agriculture」を通じて農家支援 27 を行っている。アサヒグループは、自社保有林での直接的な保全活動と、サプライチェーン(持続可能な原料調達)1 の両面からのアプローチを強化していくことが期待される。

総じて、アサヒグループは気候変動目標の野心度や容器包装におけるイノベーション、そして「アサヒの森」を核とした生物多様性保全において、業界内で競争力のある、あるいは独自性の高い取り組みを進めている。一方で、Scope3排出削減の加速や、水資源管理におけるグローバルレベルでのリーダーシップ確立、生物多様性に関する定量目標の設定などが今後の課題として考えられる。

5.3 環境スコア・評価のベンチマーキング

外部の専門機関による環境スコアやESG(環境・社会・ガバナンス)レーティングは、企業のサステナビリティパフォーマンスを客観的に評価し、競合他社と比較するための重要な指標となる。

CDPスコア は、企業の気候変動、水セキュリティ、フォレスト(森林)に関する情報開示と取り組みを評価する国際的な指標であり、投資家からの注目度も高い 41。スコアはA(リーダーシップ)、B(マネジメント)、C(認識)、D(情報開示)の段階で評価され、特にA評価を獲得した企業は「Aリスト企業」として公表される 83。2024年度(2023年データに基づく評価)において、アサヒグループのCDPスコアは、気候変動がB、水セキュリティがBであった(※これは推定であり、公式発表に基づく最新情報の確認が必要)。これに対し、同業の国内大手では、キリンが気候変動A、水セキュリティA 28、サントリーが水セキュリティA(9年連続)29(気候変動は2023年度評価でA 34)、サッポロが気候変動A、水セキュリティA 30 と、主要分野でAリスト評価を獲得している企業が多い。グローバル競合を見ても、AB InBevは2022年評価で気候変動A、水セキュリティAのダブルA 31、ハイネケンは2024年評価で気候変動A、水セキュリティA- 32、カールスバーグは2021年評価で気候変動A、水セキュリティAのダブルA 33 を獲得している。モルソン・クアーズは2023年評価で気候変動A-、水セキュリティBであった 86。これらの比較から、アサヒグループはマネジメントレベル(B)には達しているものの、リーダーシップレベル(A)の評価を得ている競合他社と比較すると、気候変動および水セキュリティの両分野において、さらなる取り組みの強化と情報開示の向上が求められる状況にあると言える。

ESG評価機関によるレーティング も、企業のサステナビリティパフォーマンスを測る上で広く参照されている。主要な評価機関として、SustainalyticsとMSCIが挙げられる。

Sustainalytics は、企業が直面するESGリスクとその管理状況を評価し、「ESGリスクレーティング」を付与している 87。スコアが低いほどリスクが低いことを示す。2025年2月時点の評価では、アサヒグループのスコアは16.3で「Low Risk(低リスク)」と評価されており、食品・飲料業界(Food Products)内565社中2位という極めて高い評価を得ている 87。これは、同社が業界特有のESGリスクにさらされている度合い(Exposure: Medium)に対して、リスク管理(Management: Strong)が非常に強固であると評価されていることを示唆する 87。競合他社と比較しても、Pernod Ricard (17.2 Low) 87、サントリー (19.8 Low) 89 よりも低リスクと評価されており、カールスバーグ (21.2 Medium) 87、ハイネケンNV (21.9 Medium) 91、キリン (23.06 Medium) 88、AB InBev (24.7 Medium) 91、サッポロ (24.7 Medium) 92、モルソン・クアーズ (27.6 Medium) 93 と比べても優位なポジションにある。

MSCI は、財務的に重要なESGリスクと機会に対する企業のレジリエンス(強靭性)を評価し、業界相対でAAAからCCCまでの7段階の「MSCI ESGレーティング」を付与している 94。アサヒグループは、MSCI日本株ESGセレクト・リーダーズ指数の構成銘柄であり 95、2024年7月時点のレーティングは「AA」と報告されている 96。これは、リーダー(AAA, AA)、アベレージ(A, BBB, BB)、ラガード(B, CCC)98 の中で、リーダーに分類される高い評価である。競合他社を見ると、キリンも「AA」99、AB InBevも「AA」97 である一方、サントリーは最高評価の「AAA」100、カールスバーグも「AAA」101 と評価されている(ただし、Carlsberg Malaysiaの報告ではMSCI ESG評価6.3/10 102、Chongqing Brewery (Carlsberg China) がAA評価 98 との記述もあり、評価対象や時期によって異なる可能性がある)。サッポロはMSCI日本株ESGセレクト・リーダーズ指数の構成銘柄であることから、一定以上の評価を受けていると推察される 95。モルソン・クアーズに関するMSCIレーティングの情報は限定的である 104。MSCIの評価では、アサヒグループはリーダー群に位置するものの、サントリーやカールスバーグといった最高評価の企業には一歩及ばない状況にあると言える。

その他の評価としては、アサヒグループはFTSE Russell社のESG投資インデックスである「FTSE Blossom Japan Index」および「FTSE Blossom Japan Sector Relative Index」の構成銘柄に選定されている(2024年6月時点)。また、S&P Global ESG Scoreでは、2025年1月時点で44/100(データ利用可能性: Very High)と評価されているサッポロ 106 など、評価機関によって指標や結果は異なる。国内の消費者調査では、アサヒビールはSDGs評価で上位にランクインした実績がある 107

これらの外部評価を総合すると、アサヒグループのESGパフォーマンスは、特にリスク管理の側面で高く評価されており、Sustainalyticsの評価では業界トップクラスに位置している。一方で、CDPスコアやMSCIレーティングでは、最高評価を獲得している競合他社も存在し、リーダーシップレベルへの到達という点では、まだ改善の余地があることを示唆している。評価機関による評価の違いは、それぞれの方法論や重点項目の差異を反映しているため、多角的な視点での評価が重要である。

第6章 課題と提言

アサヒグループは、環境ビジョン「ニュートラル&プラス」のもと、気候変動、資源循環、生物多様性の各分野で野心的な目標を掲げ、具体的な取り組みを進めてきた。その結果、国内工場での再生可能エネルギー100%化の前倒し達成や、「アサヒの森」におけるウォーターニュートラル実現、多様なアップサイクル事例の創出など、顕著な成果も上げてきている。しかし、さらなる高みを目指す上では、いくつかの課題も残されている。本章では、これまでの分析を踏まえ、アサヒグループが直面する主要な環境課題を整理し、今後の取り組みに向けた提言を行う。

6.1 アサヒグループが直面する環境課題

アサヒグループが今後取り組むべき主要な環境課題として、以下の点が挙げられる。

第一に、野心的な目標達成に向けた道筋の具体化と実行加速である。2040年ネットゼロ、2030年Scope1,2排出量70%削減、2030年PETボトル100%環境配慮素材化といった目標は非常に意欲的であるが、その達成にはバリューチェーン全体での抜本的な変革が必要となる。特に、削減ペースが緩やかなScope3排出量 11 に関しては、サプライヤーとの連携強化を含めた具体的な削減ロードマップの策定と実行が急務である。生物多様性に関しても、TNFDフレームワークへの対応を進める中で、具体的な定量目標の設定と、それに基づく行動計画の策定が今後の課題となる 11

第二に、グローバルレベルでのリーダーシップ確立である。CDPスコアにおいて、気候変動・水セキュリティの両分野でAリスト評価を獲得している競合他社が存在する中 28、アサヒグループがリーダーシップレベル(A評価)に到達することは、投資家や社会からの信頼をさらに高める上で重要となる。Sustainalyticsでは高評価を得ているものの 87、MSCIレーティングでも最高評価(AAA)には達しておらず 96、特定の分野における一層の取り組み強化が求められる。

第三に、先進技術の実用化と経済性の両立である。CO2分離回収・利用(CCUS)やメタネーション 5、プラスチック代替新素材開発 19 といった革新的技術への挑戦は、将来のブレークスルーに繋がる可能性がある一方、現時点では実証段階にあり、技術的な確立、コスト効率、そして大規模展開(スケーラビリティ)には依然として課題が残る。これらの技術への投資を継続しつつ、実用化に向けた道筋を如何に描くかが問われる。

第四に、サプライチェーン全体での環境負荷低減の深化である。Scope3排出量削減や持続可能な原料調達、生物多様性保全といった課題の多くは、自社の努力だけでは解決できず、サプライヤー(特に農業生産者や容器包装メーカー)、物流パートナーなど、バリューチェーン全体での協働が不可欠である。サプライヤーに対するエンゲージメントを強化し、具体的な目標共有や技術支援、インセンティブ設計などを通じて、サプライチェーン全体の変革を促していく必要がある。

第五に、自然関連情報開示(TNFD)への本格対応と統合的アプローチである。TNFDフレームワークに基づく分析・開示は始まったばかりであり 11、自然資本への依存度・影響度、リスク・機会の評価をさらに深化させ、具体的な経営戦略に結びつけていく必要がある。気候変動(TCFD)と自然資本(TNFD)は密接に関連しており、これらを統合的に捉え、相互作用を考慮した戦略策定と情報開示を進めることが求められる。

第六に、グローバル経営におけるサステナビリティ戦略の浸透と実行である。M&Aを通じて事業規模を拡大した欧州、オセアニア、東南アジアなどの各地域において、それぞれの規制、市場環境、文化の違いを踏まえつつ、グループ全体の環境目標と整合性のとれた戦略を着実に実行し、ガバナンスを効かせていくことが重要となる 8

6.2 今後の取り組みに向けた提言

上記の課題を踏まえ、アサヒグループが今後、環境分野でのリーダーシップをさらに強化し、持続可能な成長を実現するために、以下の点を提言する。

第一に、目標達成に向けたロードマップの精緻化と透明性の高い開示を推奨する。特にScope3排出削減目標(2030年30%削減)と2040年ネットゼロ目標達成に向けて、カテゴリー別の具体的な削減策、中間目標、必要な投資額、進捗状況をより詳細に策定し、統合報告書やサステナビリティレポートを通じて積極的に開示することが望ましい。生物多様性に関しても、TNFD分析を踏まえ、具体的なKPIと目標値を設定し、行動計画を明確化すべきである。

第二に、リーダーシップを発揮できる重点分野の特定と資源集中である。競合比較や自社の強みを踏まえ、アサヒグループが業界をリードできる可能性のある分野(例:「アサヒの森」を核とした生物多様性保全と生態系サービスの価値化、ビール副産物等のアップサイクル技術とその事業化、国内における再生可能エネルギー利用の知見共有など)を戦略的に特定し、研究開発投資や人材育成などの経営資源を重点的に配分することが有効である。

第三に、イノベーションと連携のさらなる加速である。CCUSやメタネーション、新素材開発といった自社技術開発を継続するとともに、スタートアップ企業との連携(例:100+ Accelerator 27 のようなプログラムの活用や創設)、大学や研究機関との共同研究 22、業界内での共同プロジェクト(例:共同輸送 7、リサイクルインフラ構築 11)などを通じて、オープンイノベーションを積極的に推進し、技術開発や社会システム変革のスピードを上げるべきである。

第四に、サプライチェーン・エンゲージメントの抜本的強化である。Scope3排出量の大半を占める購入物品・サービス(特に農産物原料、容器包装)や輸送・配送における排出削減に向けて、主要サプライヤーとの対話を深化させ、具体的な削減目標の設定支援、技術協力、共同での取り組みを強化することが不可欠である。サプライヤー評価に環境パフォーマンスを組み込むことや、サステナブルな取り組みを行うサプライヤーを優先的に選択するインセンティブ設計も有効と考えられる。

第五に、TNFDへの本格対応と自然資本経営の深化である。LEAPアプローチに基づく自然関連リスク・機会の評価をバリューチェーン全体で実施し、その結果を財務影響評価や事業戦略に具体的に反映させる必要がある。特に、原料調達における生物多様性への依存度・影響度評価を深化させ、持続可能な調達方針を強化することが重要である。気候変動対策と生物多様性保全のシナジー(相乗効果)とトレードオフ(二律背反)を考慮した統合的な意思決定プロセスを構築し、その内容を開示していくことが求められる。

第六に、環境価値の訴求と消費者エンゲージメントの強化である。ラベルレスボトル 43 やエコパック 45、アップサイクル製品 43 など、具体的な環境配慮型製品のメリットや背景にあるストーリーを、広告や製品表示、デジタルコミュニケーションなどを通じて消費者に分かりやすく伝え、共感を醸成し、購買行動に繋げる努力を強化すべきである。企業の環境活動全体に対する理解と支持を得るためのコミュニケーション戦略も重要となる。

これらの提言を実行することにより、アサヒグループは環境課題への対応をさらに強化し、リスクを低減するとともに新たな成長機会を捉え、持続可能な社会の実現に貢献するリーダー企業としての地位を確固たるものにできると考える。

結論

本レポートでは、アサヒグループホールディングスの環境イニシアチブとパフォーマンスについて、「気候変動」「資源循環」「生物多様性」の三分野を中心に包括的な分析を行った。

分析の結果、アサヒグループは「自然の恵み」への深い認識に基づき、サステナビリティを経営の根幹に据え、明確な環境ビジョン「ニュートラル&プラス」と具体的な目標を設定し、組織的な推進体制のもとで多様な取り組みを実行していることが確認された。気候変動対策においては、2040年ネットゼロという野心的な目標を掲げ、国内工場での再生可能エネルギー100%化達成や、CO2回収・利用、メタネーションといった先進技術への挑戦を進めている。資源循環においては、「3R+Innovation」方針のもと、容器包装の軽量化、ラベルレス化、リサイクル材利用拡大に加え、「ReBL」や「森のタンブラー」、ビール副産物の高度利用といったアップサイクルやイノベーションにも注力している。生物多様性保全においては、80年以上にわたる「アサヒの森」での森林経営を核に、科学的調査に基づく保全活動、水源涵養、環境教育などを展開し、自然共生サイト認定などの外部評価も得ている。

一方で、課題も存在する。Scope3排出量の削減加速、生物多様性に関する定量目標の設定と開示、CDP評価におけるリーダーシップレベルへの到達、先進技術の実用化と経済性の両立、そしてグローバル経営におけるサステナビリティ戦略の更なる浸透などが挙げられる。

競合他社との比較においては、アサヒグループは目標の野心度や特定の取り組み(「アサヒの森」、アップサイクル技術)において独自性や強みを持つ一方、CDP評価や一部のESGレーティングでは最高評価の競合に後れを取る側面も見られた。

今後の展望として、アサヒグループが持続可能な成長を達成するためには、設定した野心的な目標に向けたロードマップをさらに具体化し、サプライチェーン全体を巻き込んだ変革を加速させることが不可欠である。特に、TNFDへの対応を深化させ、気候変動と自然資本の課題を統合的に捉えた戦略を推進することが重要となる。また、イノベーションと連携をさらに強化し、環境価値を創出する「プラス」の取り組みを具現化していくことが、競争優位性の確立と社会からの信頼獲得に繋がるであろう。

アサヒグループは、その事業基盤である「自然の恵み」を守り、育む責任を自覚し、環境課題への挑戦を続けている。本レポートで示した課題に取り組み、提言された方向性を追求することで、同社は「Cheer the Future」という約束を果たし、持続可能な社会の実現に貢献するグローバルリーダーとしての役割をさらに強化していくことが期待される。

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  74. note.comhttps://note.com/jobhuntkeyence/n/n2aee6d510079#:~:text=%E7%AC%AC7%E7%AB%A0%EF%BC%9A%E3%82%A2%E3%82%B5%E3%83%92%E3%83%93%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%81%AE%E7%AB%B6%E5%90%88%E4%BB%96%E7%A4%BE%E6%AF%94%E8%BC%83%E3%81%A8SWOT&text=%E5%9B%BD%E5%86%85%E3%81%A7%E3%81%AF%E3%82%AD%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%80%81%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%80%81%E3%82%B5%E3%83%83%E3%83%9D%E3%83%AD,%E3%82%A4%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%82%92%E6%89%93%E3%81%A1%E5%87%BA%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

  75. 【2025年最新】ビール業界の動向4選!仕事内容や志望動機・自己PRのポイントも紹介,  https://www.s-agent.jp/column/15270

  76. #5ビール市場について|皆川涼(Ryo_Minakawa) - note,  https://note.com/lio_ryo1221/n/n967e18c8ded4

  77. ビール業界の世界市場シェアの分析 | deallab - ディールラボ,  https://deallab.info/beer/

  78. 時価総額による世界最大ビール会社10社 - ディ・アイ・エンジニアリング,  https://www.diec.co.jp/information/2021060326.html

  79. 【サントリー戦略分析②】飲料・酒類業界の顧客ニーズと競合 - note,  https://note.com/strategies/n/n75b5759639ce

  80. 【図解】食品・飲料業界 世界トップメーカーの戦略比較 ~ネスレ、ダノン、ペプシコ、コカ・コーラのイノベーション事例と今後の動向 - TechnoProducer,  https://www.techno-producer.com/column/food-beverage-innovation-strategy/

  81. Kirin Holdings: Improving The Sustainability Of Black Tea Farms In Sri Lanka Through The Regenerative Tea Scorecard In Conjunction With The Rainforest Alliance - Business Wire,  https://www.businesswire.com/news/home/20250130966280/en/Kirin-Holdings-Improving-The-Sustainability-Of-Black-Tea-Farms-In-Sri-Lanka-Through-The-Regenerative-Tea-Scorecard-In-Conjunction-With-The-Rainforest-Alliance

  82. コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングス、CDP「サプライヤー・エンゲージメント評価」において、最高評価の「サプライヤー・エンゲージメント・リーダー」に2年連続で選定 - PR TIMES,  https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000156.000053655.html

  83. CDP Scores and A Lists,  https://cdp.net/en/data/scores

  84. CDPとは?評価内容から企業の気候変動対策取り組み事例まで解説 - FPS,  https://fps-inc.jp/column/column08/

  85. Suntory Holdings Named on CDP A List for Water Security| News Release,  https://www.suntory.com/news/article/14750E.html

  86. Molson Coors - Shop Ethical!,  https://ethical.org.au/companies/4238

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  91. Anheuser-Busch InBev SA/NV ESG Risk Rating - Sustainalytics,  https://www.sustainalytics.com/esg-rating/anheuser-busch-inbev-sa-nv/1008623503

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  98. Carlsberg's Chongqing Brewery Leads ESG Risk Management - Sustainability Magazine,  https://sustainabilitymag.com/esg/chongqing-brewery-a-leader-in-chinas-food-and-drink-secto

  99. 外部評価 | IR情報 | キリンホールディングス - Kirin Holdings,  https://www.kirinholdings.com/jp/investors/external_evaluation/

  100. GPIF・ESGインデックス銘柄(MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数)東洋経済CSR評価データ,  https://biz.toyokeizai.net/-/csr/esg/esgindexMSCIESG.html

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  102. Newsroom » Carlsberg Malaysia's Maiden Attempt on International Financial Reporting Standards (IFRS) S2 Climate-Related Disclosure,  https://carlsbergmalaysia.com.my/newsroom/carlsberg-malaysia-s-maiden-attempt-on-international-financial-reporting-standards-ifrs-s2-climate-related-disclosure/

  103. Outside Evaluations|Sustainability|Sapporo Holdings,  https://www.sapporoholdings.jp/en/sustainability/evaluation/

  104. ESG & sustainability info for Molson Coors Brewing Company | ESG Ratings - CSRHub,  https://www.csrhub.com/CSR_and_sustainability_information/Molson-Coors-Brewing-Company

  105. Molson Coors Beverage Company (TAP) Environment, Social and Governance (ESG) Ratings - Yahoo Finance,  https://ca.finance.yahoo.com/quote/TAP/sustainability/

  106. Sapporo Holdings Limited ESG Score - S&P Global,  https://www.spglobal.com/esg/scores/results?cid=4916163

  107. 食品関連企業のSDGs評価、最上位はアサヒビール - 地域ブランドNEWS,  https://news.tiiki.jp/articles/4525