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日本郵船の環境イニシアチブとパフォーマンスに関する包括的分析レポート

更新日:2025年4月22日
業種:運輸・情報通信業(5555)

序論

近年、国際社会において気候変動をはじめとする環境問題への関心が高まり、企業活動における環境負荷低減への要請はかつてないほど強まっている。特に、世界の貿易量の大部分を担う海運業界は、温室効果ガス(GHG)排出量の主要な排出源の一つとして認識されており、脱炭素化をはじめとする環境対応が喫緊の経営課題となっている。このような背景の中、日本の大手海運企業である日本郵船株式会社(以下、NIPPON YUSEN)は、ESG(環境・社会・ガバナンス)経営を中核に据え、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを強化している 1。本報告書は、NIPPON YUSENの環境への取り組みを、「気候変動」「資源循環」「生物多様性」の三つの重点分野において包括的に分析し、同社の環境パフォーマンスを評価するための詳細な情報を提供することを目的とする。具体的には、各分野における具体的な取り組み内容、関連するリスクと機会、業界のベストプラクティス、現在直面している課題と今後の推奨事項、さらには競合他社との比較分析や環境スコアのベンチマーキングについて、学術的な視点から深く掘り下げて考察する。

第1部 NIPPON YUSENの環境への取り組み

NIPPON YUSENグループは、ESG経営を成長戦略の中核と位置づけ、「安全」「環境」「人材」を3つのマテリアリティ(重要課題)として特定している 3。環境分野においては、特に「気候変動対策」「海洋環境・生物多様性保全」「大気汚染防止」を重要課題と捉え、これらに「資源循環(サーキュラーエコノミー)」を加えた領域で積極的な活動を展開している 5。同社は、これらの課題解決に向けた具体的な方針、目標を設定し、技術開発や運航効率の改善、ステークホルダーとの共創を通じて、地球と人類の持続可能な発展への貢献を目指している 5

1.1 気候変動への対応

NIPPON YUSENは、気候変動を最重要経営課題の一つと認識し、国際海運におけるGHG排出量削減に向けて野心的な目標を設定し、多岐にわたる取り組みを推進している 6

1.1.1 方針と目標

NIPPON YUSENグループは、GHG排出削減の長期目標として「2050年までのネット・ゼロエミッション達成」を掲げている 2。これは、国際海事機関(IMO)が2023年に改定したGHG削減戦略における「2050年頃までのネットゼロ」目標 9 とも整合するものである。さらに、2023年11月に発表された「NYK Group Decarbonization Story」においては、より野心的な中期目標として、Scope1およびScope2の合計排出量について「2030年度までに2021年度比で45%削減」という絶対量目標を設定した 4。これは、従来の効率目標(輸送単位あたりの排出量削減、SBT認定取得済み 14)から、パリ協定の1.5℃目標との整合性をより強く意識した絶対量削減へと舵を切ったことを示している 4。これらの目標達成は、既存技術の積み上げだけでは困難であり、将来の技術革新の積極的な活用とステークホルダーとの共創が不可欠であると認識されている 4

1.1.2 具体的な取り組みと技術導入

NIPPON YUSENは、目標達成に向けてハード・ソフト両面からのアプローチを推進している。

まず、船舶のエネルギー効率向上策として、省エネ性能に優れた船舶の導入を継続的に進めている 14。また、既存船に対しても、船体改造や付加物の搭載による燃費改善策を積極的に展開している 16。運航面では、船舶パフォーマンス管理システム「SIMS2」や運航支援システム「IBISプロジェクト」などを活用したビッグデータ解析に基づき、最適配船や減速運航を含む省エネ運航を追求している 14。これらの取り組みは、燃料消費量とGHG排出量の直接的な削減に寄与する。

次に、将来のゼロエミッション実現に向けた中核的な取り組みとして、代替燃料への転換を強力に推進している。特にアンモニア燃料に注力しており、世界初のアンモニア燃料タグボート(A-Tug)の実証運航に成功し、2025年3月には実運航を通じて最大約95%のGHG排出削減を達成したことを発表した 18。これは、アンモニアが船舶用次世代燃料として有力な選択肢であることを実証する画期的な成果である。さらに、国産エンジンを搭載したアンモニア燃料アンモニア輸送船(AFAMGC)の建造契約を締結し 21、アンモニア燃料供給船(ABV)の基本設計承認(AiP)を取得するなど 22、アンモニア燃料のサプライチェーン構築にも積極的に関与している。メタノール燃料に関しても、世界最大級のメタノール燃料自動車専用船を発注・導入しており 24、LNG燃料船についても、バイオメタンや合成メタンへの移行を見据えたブリッジソリューションとして導入を進めている 14。これらの代替燃料導入は、2050年ネットゼロ達成に向けたロードマップの根幹をなすものである 16

加えて、風力推進技術の開発も進めており、硬翼帆システム「セイルアシスト」を搭載した石炭専用船の実証実験や、より大型の風力推進装置を搭載した自動車運搬船の開発に取り組んでいる 24。これは、エネルギー効率改善のさらなる手段として期待される。

陸上部門においても、ターミナルにおける環境対応型荷役機器の導入や陸上電力供給(AMP)の利用促進、LED照明「きらりLED」の開発・導入、オフィスや倉庫での省エネ活動、再生可能エネルギー(太陽光発電、風力発電)の導入などを推進している 7。グループ会社である郵船ロジスティクスと共同で、顧客のScope3排出量削減を支援するプラットフォームを導入するなど 25、サプライチェーン全体での脱炭素化にも貢献している。

これらの技術開発や導入を支える資金調達面では、グリーンボンドやトランジションボンド、サステナビリティ・リンク・ローンなどのサステナブルファイナンスを積極的に活用している 5

1.1.3 情報開示とエンゲージメント

NIPPON YUSENは、気候変動に関する情報開示とステークホルダーエンゲージメントを重視している。2018年にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明し、TCFDコンソーシアムにも加入 14、統合報告書(NYKレポート)やサステナビリティレポート、ウェブサイト等を通じてTCFD提言に沿った情報開示を段階的に進めている 5。GHG排出量データ(Scope1, 2, 3)については、算定の信頼性を高めるため、独立した第三者保証を取得している 14。国際的な環境NGOであるCDPに対しては、2007年から継続的に回答しており、気候変動分野において2018年から5年連続で最高評価である「Aリスト」企業に選定されるなど 14、その取り組みと透明性は国際的にも高く評価されている。さらに、社内での気候変動リテラシー向上のため、「Climate Fresk」などの教育プログラムを導入し、全従業員が気候変動問題を「自分事」として捉え、具体的な行動を促す企業風土の醸成に努めている 6

1.2 資源循環(サーキュラーエコノミー)への取り組み

NIPPON YUSENは、資源の有効活用と廃棄物削減を通じて、循環型社会の形成に貢献することを目指している 24。特に、船舶のライフサイクル全体における環境負荷低減に注力している。

1.2.1 方針と目標

サーキュラーエコノミーの実現を環境方針の一つとして掲げ、船舶の調達、運航、処分の各段階における取り組みを推進している 5。具体的な数値目標の設定は確認されていないが、廃棄物削減と再資源化率の向上を継続的に目指していると考えられる 24

1.2.2 具体的な取り組み

中心的な取り組みは、環境負荷の少ない船舶解撤(シップリサイクル)の推進である。NIPPON YUSENは、船舶解撤に関する香港条約(シップリサイクル条約)の発効(2025年6月)に先駆けて、独自の解撤方針とヤード選定基準を設け、環境・安全・人権に配慮した解撤を実践してきた 32。認証ヤードリストや解撤実績を公開し、透明性を確保している 5。さらに、2024年9月には、オオノ開發株式会社と共同で、国内における環境配慮型船舶リサイクル事業の事業化検討を開始したことを発表した 33。この計画では、国内最大級のドライドックを備え、油などの有害物質の海洋流出を防ぐ陸上解体方式を採用し、高効率な資源回収と適正な廃棄物処理を目指すものであり、国内での良質な鉄スクラップ供給による脱炭素化促進と循環型経済への貢献が期待される 33

船舶以外の事業活動においても、事業所における廃棄物の適正な分別・リサイクルを徹底している 24。また、郵船ロジスティクスグループとしても、サプライチェーン全体での環境負荷低減と資源効率向上を目指した取り組みを進めている 26

1.2.3 技術導入事例

シップリサイクルにおけるドライドック方式の採用 33 や、解体ヤード敷地内での高効率焼却発電施設の計画 33 は、資源循環と環境負荷低減を両立させる技術的アプローチと言える。また、レゾナックとの協業による、使用済みプラスチックをリサイクルして製造されたアンモニアを船舶燃料として供給する世界初の試み 34 は、廃棄物リサイクルと代替燃料開発を結びつける革新的な取り組みである。

1.3 生物多様性の保全

NIPPON YUSENは、事業活動が海洋環境や生物多様性に与える影響を認識し、その保全に積極的に貢献する方針を明確にしている 5

1.3.1 方針と目標

「日本郵船グループ 環境ビジョン」において、「海洋環境・生物多様性保全」を重点課題の一つに掲げている 35。2023年12月にはTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)フォーラムに参画し、TNFD提言に基づく情報開示(TNFDレポート)を開始した 5。さらに、2024年11月には「ネイチャーポジティブ宣言」を発表し、生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せるための具体的な行動を約束するとともに、「生物多様性のための30by30アライアンス」にも参画した 5。具体的な数値目標は設定されていないものの、これらの枠組みへの参加は、生物多様性保全へのコミットメントを強化するものである。

1.3.2 具体的な取り組み

海洋生態系への影響を低減するため、複数の具体的な対策を実施している。

第一に、外来種の越境移動防止策として、バラスト水管理条約に対応したバラスト水処理装置の早期導入を進め、2019年3月末時点で100隻への搭載を完了している 32。また、生物付着防止のため、船底クリーニングを頻繁に実施している 32

第二に、船舶からの排水・廃棄物管理を徹底している。機関室等から発生する油性混合物(ビルジ)の発生量を大幅に削減する独自の仕組みを開発し、自社船に採用するとともに、IMO(国際海事機関)における国際的なガイドライン化にも貢献した 35

第三に、海洋哺乳類への影響にも配慮している。水中騒音による影響やクジラ類との衝突リスクを認識し、航行速度の調整や航路選定における配慮を行っていると考えられる(具体的な対策の詳細は限定的) 35。競合であるMSCがクジラ保護のために航路変更を実施している事例 39 も参考になるだろう。

第四に、科学的知見の集積に貢献している。運航船を活用した外洋での環境DNA(eDNA)サンプリングを実施し、収集したデータを学術機関に提供することで、海洋生態系の把握と保全研究に協力している 37。これは、ANEMONEコンソーシアムなどの産官学連携を通じて行われている 40

第五に、陸域における生物多様性保全活動も行っている。静岡県御殿場市に「ゆうのもり」を開設し、森林再生に取り組むことで、30by30目標(陸と海の30%以上を健全な生態系として保全する目標)の達成に貢献することを目指している 37。また、国内外での植樹活動も継続している 14

これらの取り組みは、事業活動に伴う生物多様性への負の影響を最小化するとともに、自然資本の回復(ネイチャーポジティブ)に貢献しようとするNIPPON YUSENの姿勢を示している。

第2部 環境要因に関するリスクと機会

NIPPON YUSENの事業活動は、気候変動、資源制約、生物多様性の損失といった地球規模の環境課題と密接に関連しており、これらは同社にとって重要なリスクであると同時に、新たな事業機会をもたらす要因ともなっている 7

2.1 潜在的リスク

NIPPON YUSENが直面する可能性のある環境関連リスクは、主に「移行リスク」と「物理的リスク」に大別され、それぞれ規制、市場、評判、財務、オペレーションといった側面で影響を及ぼしうる。

2.1.1 移行リスク

移行リスクは、低炭素経済への移行に伴って生じるリスクであり、政策・法規制の変更、技術の変化、市場の変化、評判の変化などが含まれる 7

規制リスクとしては、IMOにおけるGHG排出規制の段階的強化が最も重要である。2023年に改定されたIMO GHG戦略では、2030年、2040年の中間目標と2050年頃のネットゼロ目標が設定され、今後、燃料のGHG強度基準(GHG Fuel Standard)や炭素価格付けメカニズム(Maritime GHG Emissions Pricing Mechanism)といった具体的な規制措置(中期対策)が導入される見込みである 9。これらの規制強化は、既存船舶の運航制限や早期廃船(座礁資産化)、省エネ・低炭素技術への追加投資、代替燃料への転換コスト増大などを引き起こす可能性がある 7。特に、NIPPON YUSENが注力するアンモニア燃料については、安全性やN2O排出に関する規制が将来的に導入される可能性も考慮する必要がある。また、EU ETS(排出量取引制度)の海運セクターへの適用拡大 41 や、各国の炭素税導入、燃料規制(SOx規制、NOx規制など) 7 も、運航コストの増加要因となる。

市場リスクとしては、荷主や消費者の環境意識の高まりによる「グリーン輸送」への需要シフトが挙げられる。環境性能の低い船舶やサービスは、市場での競争力を失う可能性がある 46。BCGの調査によれば、荷主の多くがゼロカーボン輸送に対して割増料金を支払う意欲を示しており、特に「フロントランナー」と呼ばれる先進的な荷主は、規制圧力よりも顧客需要を重視してグリーン輸送を選択している 46。NIPPON YUSENがこの需要を取り込めなければ、機会損失となる。また、物流市場全体の変化、例えば地産地消の進展やリサイクル技術の向上による輸送需要の変化もリスク要因となりうる 7

評判リスクとしては、環境規制への対応の遅れや環境事故(油濁、大気汚染、生態系破壊など)が発生した場合、企業のブランドイメージや社会的信用が大きく損なわれる可能性がある 35。特に、化石燃料の使用に対する社会的な批判の高まり 7 や、不適切な船舶解撤 33 などは、投資家や顧客、地域社会からの評価低下につながり、資金調達や事業継続に悪影響を及ぼす可能性がある。ESG投資の拡大に伴い、投資家からのエンゲージメント圧力も高まっている 47

技術リスクとしては、代替燃料技術(特にアンモニア)の開発・実用化の遅延やコスト超過、インフラ整備の遅れなどが挙げられる。特定の技術に過度に依存することは、将来的な技術的陳腐化のリスクも伴う。

2.1.2 物理的リスク

物理的リスクは、気候変動による直接的な物理現象の変化によって生じるリスクであり、異常気象の激甚化や海面上昇などが含まれる 7

急性リスクとしては、台風やハリケーンの強大化、集中豪雨による洪水などが、港湾施設や物流拠点、船舶運航そのものに被害を与え、サプライチェーンの寸断を引き起こす可能性がある。Maerskの報告書でも、異常気象による物流混乱の増加が指摘されている 51

慢性リスクとしては、海面上昇による港湾機能の低下や沿岸インフラへの影響 53、気温上昇による船舶機器への影響、干ばつによる河川水位低下に伴う内陸水運への影響などが考えられる。また、気候変動による海洋酸性化や海水温上昇は、海洋生態系や漁業資源に影響を与え、NIPPON YUSENが依存する自然資本(例:洪水緩和機能など 54)を劣化させるリスクもある。

2.2 ビジネス機会

一方で、環境課題への対応は、NIPPON YUSENにとって新たなビジネス機会を創出する可能性も秘めている 7

技術開発とイノベーションは、競争優位性を確立する好機となる。アンモニア燃料船 18 やメタノール燃料船 24、風力推進システム 24、船舶のDX(デジタルトランスフォーメーション)による運航効率化技術 14 などの開発・導入を他社に先駆けて進めることで、環境規制への適合とコスト削減を両立し、市場での差別化を図ることができる 7。特に、ゼロエミッション船「NYKスーパーエコシップ2050」 15 で示されたような先進技術の実用化は、将来の市場をリードする可能性を秘めている。

グリーン輸送需要の拡大は、高付加価値サービスの提供機会となる。環境性能の高い船舶フリートを整備し、顧客のScope3排出量削減に貢献するソリューション(例:GHG排出量可視化ツール「CO2 e-calculator」26、カーボン・インセッティング 13)を提供することで、環境意識の高い荷主を獲得し、新たな収益源を確保できる 46。BCGの分析では、グリーン物流市場は2030年までに3500億ドル規模に達する可能性が示唆されている 47

新規事業分野への進出も重要な機会である。NIPPON YUSENは、グリーンビジネスグループを新設し、洋上風力発電支援事業や潮流発電、代替燃料(水素、アンモニア、バイオマスなど)の輸送・供給事業 7、CCUS(CO2回収・利用・貯留)関連事業(液化CO2輸送 60)など、脱炭素化に関連する新たな市場への参入を積極的に進めている。これらの事業は、既存の海運事業とのシナジーも期待でき、将来の成長ドライバーとなりうる。環境配慮型の船舶リサイクル事業 33 も、新たな収益機会と循環型経済への貢献を両立する取り組みである。

資金調達面では、サステナブルファイナンスの活用 5 により、有利な条件での資金調達や投資家層の拡大が期待できる。環境パフォーマンスと連動した融資(サステナビリティ・リンク・ローン)などは、企業の環境コミットメントを強化するインセンティブにもなりうる 61

リスク管理と機会創出を一体的に捉え、環境変化への適応力を高めることが、NIPPON YUSENの持続的な成長にとって不可欠である。TCFDやTNFDといったフレームワークを活用したシナリオ分析やリスク評価 5 は、そのための重要なツールとなる。

第3部 業界動向とベンチマーキング

海運業界全体が脱炭素化という大きな変革期にある中、NIPPON YUSENの取り組みを評価し、今後の戦略を検討する上で、業界の先進事例や競合他社の動向、そして客観的な環境評価指標を用いたベンチマーキングは不可欠である。

3.1 海運業界における環境先進企業のベストプラクティス

世界の主要海運企業は、GHG排出削減を中心に様々な環境対策を推進している。以下に、主要な競合他社の取り組み事例を挙げる。

A.P. Moller - Maersk(デンマーク)は、業界に先駆けて2040年までのネットゼロ目標を掲げ、特にメタノール燃料船への大規模な投資を進めている 51。2024年には世界初のメタノール燃料大型コンテナ船「Ane Mærsk」を就航させ、既存船のメタノール燃料への改造(Maersk Halifax)も実施した 51。グリーンメタノールの安定調達にも注力し、2027年までに二元燃料船隊の需要の半分以上をカバーする長期契約を締結している 51。また、科学的根拠に基づく目標設定イニシアチブ(SBTi)からネットゼロ目標を含むGHG削減目標の認証を取得しており 62、顧客向けに排出量削減ソリューションも提供している。

MSC(Mediterranean Shipping Company、スイス)は、世界最大のコンテナ船社であり、非公開企業ながらも2050年までのネットゼロを目指している 39。LNG燃料船への投資を積極的に行っており、2023年末時点で15隻の二元燃料LNG船を運航、2027年までには100隻以上の二元燃料船(主にLNG)を保有し、船隊容量の約20%を占める計画である 39。既存船の省エネ改修(約300隻)やAIを活用した運航最適化、ターミナルでの電化推進にも取り組んでいる 39。また、クジラ保護のために特定の海域で航路を変更するなど、生物多様性保全にも具体的な行動を示している 39。クルーズ部門(MSC Cruises)でもLNG船導入や陸上電力利用、水資源管理、eDNA調査などを進めている 64

CMA CGM(フランス)も2050年ネットゼロを目標とし、2030年までに-30%、2040年までに-80%(2008年比)という中間目標を設定している 68。同社はLNG燃料船への早期投資で知られるが、近年はメタノール燃料船への投資も拡大しており、2029年までに153隻のe-methane/e-methanol対応船を保有する計画である 68。バイオ燃料の利用も積極的に推進しており、顧客向けにACT+という低炭素輸送ソリューションを提供している 68。2023年にはGHG排出量を前年比で100万トン削減したと報告している 69。生物多様性保全では、海洋生物保護のための基金支援や音響ブイによるクジラ接近警報システムへの協力を行っている 68

Hapag-Lloyd(ドイツ)は、2045年までのネットゼロ運航を目標に掲げている 71。同社もLNG二元燃料船への投資を進めており、2023年には最初の3隻(23,600TEU級)が就航した 72。バイオ燃料の利用も拡大しており、2023年には20万トン以上を燃料補給した 72。顧客向けに排出量削減オプション「Ship Green」を提供している 72。既存船150隻以上を対象とした大規模な効率改善プログラム(Fleet Upgrade Program)も実施中である 71。また、Maerskと新たな提携「Gemini Cooperation」を開始し、信頼性の高いネットワーク構築を目指している 62

COSCO SHIPPING Holdings(中国)は、2050年頃までのネットゼロを目標としている 74。同社もメタノール二元燃料船を発注しており 74、バイオ燃料の実証実験も行っている 74。港湾事業(COSCO SHIPPING Ports)においては、GHG排出量を2022年から半減させたと報告している 75。陸上電力の使用促進やデジタル技術を活用した効率化にも取り組んでいる 74

これらの事例から、業界のベストプラクティスとしては、(1)明確な長期(ネットゼロ)および中期GHG削減目標の設定(SBTi認証取得が望ましい)、(2)代替燃料(LNG、メタノール、バイオ燃料、アンモニア等)への多額の投資と二元燃料船の導入、(3)既存船の徹底的なエネルギー効率改善、(4)デジタル技術を活用した運航最適化、(5)顧客との連携によるScope3削減ソリューションの提供、(6)サステナブルファイナンスの活用、(7)生物多様性保全への具体的な行動(航路変更、科学調査協力等)、(8)透明性の高い情報開示(CDP、サステナビリティレポート)などが挙げられる。NIPPON YUSENの取り組みは、特にアンモニア技術開発とCDP評価において先進性が見られるが、メタノール船投資ではMaerskやCMA CGMが先行し、LNG船投資ではMSCやCMA CGMが大規模に進めている状況である。

3.2 競合他社の環境戦略・実績分析

NIPPON YUSENの主要な競合他社は、Maersk, MSC, CMA CGM, COSCO, Hapag-Lloydなど、世界のコンテナ船腹量ランキング上位を占める企業群である 78。これらの企業は、前述の通り、それぞれ異なる技術的重点や投資戦略をもって脱炭素化に取り組んでいる。

Maerskはメタノール、MSCとCMA CGMはLNGからメタノールへのシフト、Hapag-LloydはLNGとバイオ燃料、COSCOもメタノールとバイオ燃料に注力している傾向が見られる。NIPPON YUSENのアンモニアへの強いコミットメントは、これらの競合とは異なる独自のアプローチであり、成功すれば大きな差別化要因となる可能性がある一方、技術的・経済的リスクも相対的に高いと言える。

資源循環に関しては、各社とも船舶リサイクルに関する方針を表明しているが、NIPPON YUSENが計画する国内での環境配慮型リサイクル事業 33 は、実現すれば特筆すべき取り組みとなる可能性がある。

生物多様性については、各社ともバラスト水管理や汚染防止といった基本的な対策は実施しているが、MSCのクジラ保護のための航路変更 39 やCMA CGMの海洋保護基金支援 68、NIPPON YUSENのeDNA調査協力 37 など、企業によって特色ある活動が見られる。TNFDへの対応状況も、今後の比較ポイントとなるだろう。

3.3 環境スコアのベンチマーキング

企業の環境パフォーマンスを客観的に比較する上で、第三者評価機関によるESGスコアは重要な指標となる。主要な評価機関であるCDPとSustainalyticsのスコアに基づき、NIPPON YUSENと主要競合他社の状況を比較する。なお、MSCI ESG Ratingsについては、対象企業の具体的なスコア情報が公開されている情報源からは確認できなかった 82。また、非公開企業であるMSCについては、CDPやSustainalyticsの公開評価対象となっていないため、直接的なスコア比較は困難である 83

CDPは、企業の気候変動、水セキュリティ、森林に関する情報開示と取り組みを評価する国際的な非営利団体である 85。スコアはA(リーダーシップ)、B(マネジメント)、C(認識)、D(情報開示)の段階で評価され、最高評価がAリストとなる 87。NIPPON YUSENは、気候変動分野において2024年評価(2023年実績)で5年連続となる「Aリスト」評価を獲得しており、これは世界的に見ても極めて高いレベルの取り組みと透明性が認められていることを示す 29。これは、TCFD提言に沿った情報開示、明確な経営層のコミットメント、GHG排出削減への積極的な取り組み、多様なステークホルダーとの連携などが総合的に評価された結果である 30。一方、競合他社の2024年評価(2023年実績)を見ると、CMA CGMは「A-」評価を獲得しており、これもリーダーシップレベルの高い評価である 69。Hapag-Lloydは2021年に初めてCDP評価に参加し「B」評価を得ており 93、その後のスコア推移は公開情報からは確認できなかったが、継続的に取り組みを進めている 71。COSCO SHIPPING Ports(COSCOグループの港湾部門)は2023年評価で「B」評価であった 94。Maerskについては、CDPへの回答状況や最新スコアに関する公開情報が見当たらなかったが 96、過去には高評価を得ていた可能性があり、SBTi認証取得など取り組み自体は進んでいる 63。CDPスコアを見る限り、NIPPON YUSENは気候変動に関する情報開示とパフォーマンスにおいて、業界トップクラスの評価を維持していると言える。

Sustainalyticsは、企業のESGリスクを評価する機関であり、リスクスコアが低いほどパフォーマンスが高いとされる 99。リスクレベルは「Negligible(無視できる)」「Low(低い)」「Medium(中程度)」「High(高い)」「Severe(深刻)」の5段階で評価される 99。2025年初頭時点のデータによると、NIPPON YUSENのESGリスクスコアは17.4で「Low Risk(低リスク)」に分類され、運輸業界(Transportation Industry Group)383社中47位と評価されている 101。これは、同社がESGリスクに適切に対応していることを示唆する。主要競合他社と比較すると、Maerskは15.2(Low Risk、19位) 102、Hapag-Lloydは17.0(Low Risk、42位) 103 であり、NIPPON YUSENはこれら欧州のトップ企業とほぼ同等の低リスク評価を受けているものの、わずかに後塵を拝している。一方、COSCO SHIPPING Holdingsは22.3(Medium Risk、163位) 104、CMA CGMは20.4(Medium Risk、110位) 105 と評価されており、NIPPON YUSENはこれら競合に対して明確に優位なポジションにある。Sustainalyticsの評価は、企業のリスク管理能力を重視する傾向があり 99、NIPPON YUSENのリスク管理体制(Management of ESG Material Risk)は「Strong(強固)」と評価されている点も注目される 101

これらのスコアは、NIPPON YUSENが環境パフォーマンスと情報開示において業界内で高い水準にあることを示している。特にCDPでの継続的なAリスト評価は、同社の気候変動への取り組みが国際的に認められている証左である。Sustainalyticsの評価では、欧州トップ企業に僅差で続くものの、アジアの主要競合に対しては優位性を示しており、全体として良好なポジショニングにあると言える。ただし、MSCのような非公開企業の評価が限定的である点は、業界全体の完全な比較を難しくしている。このような第三者評価は、投資家や顧客からの信頼獲得、企業価値向上に直結するため 87、今後も高い評価を維持・向上させていくことが重要である。

第4部 課題と提言

NIPPON YUSENは環境分野で先進的な取り組みを進めている一方で、海運業界全体が直面する脱炭素化の巨大な挑戦や、資源循環・生物多様性保全における新たな要請など、克服すべき課題も多く存在する。本章では、NIPPON YUSENが現在直面している主要な課題を分析し、持続可能な成長を確実にするための今後の推奨事項を考察する。

4.1 NIPPON YUSENが直面する現在の課題

4.1.1 脱炭素化への挑戦

NIPPON YUSENが掲げる野心的なGHG削減目標(2030年までに45%削減、2050年ネットゼロ)の達成には、いくつかの大きな課題が存在する 4

第一に、必要となる投資規模とそのペースである。目標達成には、アンモニア燃料船やメタノール燃料船などの次世代燃料船への大規模な新規投資、既存船への省エネ・代替燃料対応改修、そして燃料供給インフラへの投資が不可欠である 7。これらの投資は莫大な額に上ると予想され、近年の好調な業績 8 を背景としても、継続的な資金確保と効率的な配分が課題となる。特に、IMOの中期対策導入(2027年頃発効予定) 9 を見据えると、今後数年間でゼロエミッション船への転換を急速に進める必要があり 12、その投資ペースは前例のないものとなる可能性がある。

第二に、中核技術であるアンモニア燃料の成熟度とスケーラビリティに関するリスクである 18。NIPPON YUSENはアンモニア燃料技術で先行しているが、大型外航船を含む多様な船種への適用、エンジンの長期信頼性確保、安全性(毒性対策)、N2O(亜酸化窒素、強力な温室効果ガス)排出(スリップ)の抑制、そして最も重要な点として、再生可能エネルギー由来のグリーンアンモニアの大量かつ安価な生産と世界的な供給・バンカリングインフラの構築には、依然として大きな技術的・経済的ハードルが存在する 16。これらの課題解決が遅れれば、目標達成の遅延やコスト増につながる。

第三に、代替燃料の安定調達とコストである。グリーンアンモニア、グリーンメタノール、持続可能なバイオ燃料などの次世代燃料は、現時点では生産量が限られており、コストも高い 46。今後、海運業界だけでなく、航空業界など他分野との需要競争が激化する可能性があり、十分な量を競争力のある価格で確保できるかは不透明である。燃料価格の変動は、運航コストと収益性に直接影響を与える。

第四に、規制の不確実性である。IMO 9 やEU 41 の規制動向は明確化しつつあるものの、GHG排出価格付けメカニズムの詳細や燃料基準の具体的な内容、施行時期、そして各国・地域ごとの規制の差異など、依然として不透明な要素が残っている 7。これらの不確実性は、長期的な投資判断を難しくする要因となる。

第五に、Scope3排出量の管理である。NIPPON YUSEN自身の排出量(Scope1, 2)だけでなく、用船(チャーター船)の運航、外部委託する陸上・航空輸送、そして燃料の生産から輸送まで(Well-to-Tank)を含むサプライチェーン全体の排出量(Scope3)の削減が求められる 14。これは、顧客、燃料供給業者、物流パートナーなど、多数の関係者との緊密な連携とデータ共有、協力体制の構築を必要とする複雑な課題である 25

4.1.2 資源循環・生物多様性保全における課題

資源循環と生物多様性保全の分野においても、いくつかの課題が存在する。

シップリサイクルに関しては、計画中の国内リサイクル事業 33 を成功裏に立ち上げ、事業として軌道に乗せることが課題である。環境・安全基準が高い一方で、既存の海外(主に南アジア)の解撤ヤードとのコスト競争力や、大型船を継続的に受け入れるための物流・処理能力の確保などが課題となりうる。

資源循環の取り組みを船舶リサイクル以外にも広げ、グループ全体の物流事業(倉庫、陸上輸送、梱包材など)においてサーキュラーエコノミーの原則を本格的に導入・実践していくことも課題である 26。これには、既存のプロセスやサプライチェーンの見直し、新たなビジネスモデルの検討が必要となる。

生物多様性に関しては、TNFD提言に基づく情報開示 5 を実質的なものにするための課題がある。自然関連のリスクと機会、事業活動による依存と影響を定量的に評価・把握するための方法論は、世界的にまだ発展途上であり 61、信頼性の高いデータ収集と分析、そしてそれを経営戦略や意思決定に具体的に結びつけることが求められる。特に、広大な海洋における船舶運航が生物多様性に与える影響(水中騒音、航路上の生態系へのインパクトなど)を網羅的かつ正確に把握するためのデータ収集は依然として困難である 35

4.2 今後の推奨事項

NIPPON YUSENがこれらの課題を克服し、環境分野でのリーダーシップを維持・強化し、持続可能な成長を実現するために、以下の戦略的行動を推奨する。

4.2.1 気候変動対策の強化

第一に、代替燃料戦略の加速と多様化である。アンモニア燃料技術 18 の研究開発と実証を強力に推進し続けると同時に、メタノール燃料船の導入 24 や次世代バイオ燃料の活用、特定の用途(例:短距離航路)における水素燃料の可能性検討など、複数の選択肢を並行して追求することで、単一技術への依存リスクを低減し、柔軟性を確保すべきである。また、燃料供給パートナーとの連携を強化し、グリーン燃料のサプライチェーン構築に主体的に関与することが重要である 7

第二に、エネルギー効率の最大化である。新造船における最新の省エネ設計の採用はもちろんのこと、既存船に対する効率改善策(船体コーティング、空気潤滑システム、風力推進装置の導入検討 15 など)への投資を継続・拡大すべきである 16。SIMS/IBIS 14 などのデジタル技術を活用した運航最適化も、さらなる深掘りが求められる。エネルギー効率の向上は、燃料消費量と排出量を即時に削減し、将来の燃料価格変動に対する耐性を高める最も確実な手段の一つである。

第三に、Scope3排出削減に向けた連携強化である。顧客(荷主)との対話を深め、ニーズに応じた低炭素輸送ソリューション(例:NIPPON YUSENのカーボンアカウンティング/インセッティングツール 13)の提供を拡大する。郵船ロジスティクス 25 をはじめとする物流パートナー、燃料供給業者、港湾当局など、バリューチェーン全体の関係者と協力し、データ共有や共同での排出削減プロジェクトを推進すべきである。

第四に、CDR(二酸化炭素除去)クレジットの戦略的活用である。計画されている高品質なCDRクレジットの調達 109 を、ネットゼロ目標達成に向けた補完的手段として位置づけ、その利用方針や選定基準、貢献度について透明性高く情報開示し、信頼性を確保することが重要である。

4.2.2 資源循環と生物多様性保全の推進

第一に、国内船舶リサイクル事業の実現と展開である。オオノ開發との連携 33 を着実に進め、計画されている国内リサイクル施設を、環境・安全・人権に関する高い基準を満たすモデルケースとして確立すべきである。将来的には、この高基準リサイクルサービスを他社にも提供する可能性も検討する価値がある。

第二に、資源循環の取り組みの拡大である。船舶関連にとどまらず、倉庫業務における梱包材の削減・再利用、陸上輸送における廃棄物削減、オフィスでの資源リサイクル徹底など、ロジスティクス事業全体にサーキュラーエコノミーの考え方を統合し、具体的なプログラムを策定・実行すべきである。調達段階においても、循環型設計の原則を考慮することが望ましい。

第三に、TNFDへの対応深化である。初期のTNFDレポート発行 5 に留まらず、自然関連のリスク・機会・依存・影響に関する分析結果を、事業戦略、投資判断、リスク管理プロセスへ本格的に組み込むべきである。可能な限り定量的な指標を設定し、その進捗を継続的に監視・開示することが求められる。

第四に、生物多様性モニタリングと保全活動の強化である。eDNAサンプリング 37 やその他のモニタリング手法を拡充し、科学的データに基づいた具体的な保全策を講じるべきである。例えば、クジラなどの重要生息域における航行速度の調整や航路の最適化(競合他社の事例 39 も参考に)、目標を定めた海洋・陸上生態系保全プロジェクトへの支援・参画などが考えられる。「ゆうのもり」 37 での森林再生も継続・拡大が期待される。

4.2.3 ESG情報開示とステークホルダーエンゲージメントの向上

第一に、透明性におけるリーダーシップの維持である。TCFD、TNFD、そして将来的にはISSB(国際サステナビリティ基準審議会)やESRS(欧州サステナビリティ報告基準)といったグローバルスタンダードに整合した、高品質かつ透明性の高い情報開示を継続すべきである。CDPにおけるAリスト評価の維持 30 は、その重要な指標となる。

第二に、積極的なコミュニケーションである。目標達成に向けた進捗状況、直面している課題、そして戦略的な変更(例:2030年目標の更新 4)について、投資家、顧客、規制当局などのステークホルダーに対して、その背景や理由を含めて明確かつ積極的にコミュニケーションを図るべきである。特に、アンモニア燃料への注力といった戦略的選択については、その合理性とリスク管理策を丁寧に説明することが求められる。

第三に、グリーンソリューションに関する顧客エンゲージメントの強化である。荷主の環境意識やニーズは多様化しており 46、グリーン輸送に対する支払い意欲も異なる。顧客セグメント(例:BCGの分類するラガード、フォロワー、フロントランナー 46)ごとのニーズを深く理解し、それぞれに適したソリューションやコミュニケーション戦略を展開することで、グリーン市場での機会を最大化すべきである。

これらの課題への対応と提言の実行を通じて、NIPPON YUSENは環境変化への適応力を高め、持続可能な社会への貢献と企業価値の向上を両立させることができると期待される。特に、野心的な脱炭素目標の達成と、資源循環・生物多様性保全におけるリーダーシップの発揮は、同社の将来にとって極めて重要な戦略的要素となるだろう。

結論

本報告書では、NIPPON YUSENの環境への取り組みを、「気候変動」「資源循環」「生物多様性」の三つの側面から包括的に分析した。

日本郵船の環境パフォーマンスと業界内ポジショニングの総括

分析の結果、NIPPON YUSENはESG経営を深く根付かせ、環境課題に対して極めて意欲的な目標を設定し、多岐にわたる具体的な取り組みを推進していることが明らかになった。特に気候変動対策においては、「2050年ネットゼロ」および「2030年45%削減(2021年度比)」という野心的な絶対量目標を掲げ 2、その達成に向けた中核技術としてアンモニア燃料船の開発・実証で世界をリードするポジションを築いている 18。また、TCFDやTNFDといった国際的なフレームワークを早期に採用し 5、CDP気候変動で5年連続「Aリスト」評価を獲得するなど 30、情報開示の透明性においても業界最高水準にある。資源循環では、環境配慮型の国内船舶リサイクル事業というユニークな構想を進めており 33、生物多様性保全においても、ネイチャーポジティブ宣言や30by30アライアンスへの参画、eDNA調査協力などを通じて積極的な姿勢を示している 5

業界内でのポジショニングを見ると、SustainalyticsのESGリスク評価では欧州のトップ企業(Maersk, Hapag-Lloyd)に僅差で続く「低リスク」評価であり 101、アジアの主要競合(COSCO, CMA CGM)に対しては明確な優位性を示している 104。CDP評価でのリーダーシップ 30 も考慮すると、NIPPON YUSENは環境パフォーマンスとガバナンスにおいて、グローバルな海運業界の中でも先進的な企業グループの一つとして位置づけられる。ただし、代替燃料戦略においては、メタノールやLNGに注力する競合他社とは異なるアンモニア中心のアプローチを取っており、その成否が今後の競争力を左右する可能性がある。

持続可能な成長に向けた展望と戦略的重要性

NIPPON YUSENが直面する最大の課題は、極めて野心的な脱炭素目標を、技術的・経済的な不確実性が高い中で計画通りに達成することである。アンモニア技術の確立、グリーン燃料の安定供給、莫大な投資資金の確保、そしてScope3排出量の削減には、自社努力に加え、業界内外のステークホルダーとの強力な連携・共創が不可欠となる。資源循環や生物多様性に関しても、先進的な方針や宣言を具体的な事業活動に落とし込み、測定可能な成果として示していくことが求められる。

これらの環境課題への対応は、単なるコストやリスクではなく、NIPPON YUSENにとって新たな成長機会でもある 7。技術革新による競争優位性の確立、グリーン輸送市場の獲得、脱炭素関連の新規事業展開は、将来の企業価値を大きく向上させる可能性を秘めている。

結論として、NIPPON YUSENが今後も持続的な成長を遂げるためには、環境リーダーシップを維持・強化し続けることが不可欠である。脱炭素化への挑戦を成功させ、資源循環と生物多様性保全への貢献を深めることは、社会的責任を果たすだけでなく、変化する市場環境の中で競争力を確保し、未来に必要な価値を創造するための核心的な経営戦略そのものであると言える 1。同社の今後の取り組みとその成果が、海運業界全体の持続可能な未来に向けた道筋を示すことが期待される。

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  106. 海運業界~脱炭素化に伴う環境変化と戦略の方向性 - 三井住友銀行,  https://www.smbc.co.jp/hojin/report/investigationlecture/resources/pdf/3_00_CRSDReport122.pdf

  107. How to Navigate the 2024 CDP Reporting Changes - SCS Global Services,  https://www.scsglobalservices.com/blog/how-to-navigate-the-2024-cdp-reporting-changes

  108. INSIGHTS & NEWS | 郵船ロジスティクス - Yusen Logistics,  https://www.yusen-logistics.com/jp_ja/insights-news?block_config_key=news_filter_list%3AGYpViiFsurOgdQBPmOnsxG3n3K03pc50X-3RjQzYEA0&tags%5B136%5D=136&page=55

  109. 「二酸化炭素除去(CDR)」をScope1削減と同等な手段と位置付け | 日本郵船株式会社,  https://www.nyk.com/news/2025/20250127_01.html