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出光興産の環境パフォーマンスに関する包括的分析レポート

更新日:2025年4月30日
業種:製造業(3333)

序論

出光興産の事業概要と環境課題への取り組みの重要性

出光興産株式会社(以下、出光興産)は、燃料油、基礎化学品、高機能材、電力・再生可能エネルギー、資源という5つの主要事業領域を柱とし、日本のエネルギー供給と素材産業において重要な役割を担う企業である 1。同社は1世紀以上にわたり、「人間尊重」を経営の原点に据え 2、社会への貢献を目指してきた。しかしながら、その事業ポートフォリオの中心が石油精製や石炭事業であることから、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出をはじめとする環境負荷が必然的に伴う構造となっている。現代社会においては、気候変動問題への対応、資源の枯渇、生物多様性の損失といった地球規模の環境課題が深刻化しており、エネルギー・素材産業に対する脱炭素化や循環型社会への移行要請は日増しに強まっている 3

このような背景の中、出光興産は自社の持続可能性と社会全体の持続可能性を両立させるべく、大きな変革期を迎えている。同社は2030年のビジョンとして「責任ある変革者」、2050年のビジョンとして「変革を形に」を掲げ、従来の化石燃料中心の事業構造から、低炭素・脱炭素エネルギー、資源循環ソリューション、地域社会のニーズに応える「スマートよろずや」といった新たな事業領域への転換を目指す、意欲的な事業ポートフォリオ改革を推進している 1。この変革は、単に環境規制に対応するだけでなく、気候変動や資源問題といった社会課題の解決を通じて新たな企業価値を創造しようとする、同社のサステナビリティ経営への強いコミットメントを示すものである 3

本報告書は、出光興産がこの変革期において、特に重要となる「気候変動」「資源循環」「生物多様性」という3つの環境分野で、どのような戦略を掲げ、具体的な取り組みを進め、どのような成果を上げているのかを深掘りし、客観的な視点からそのパフォーマンスを評価することを目的とする。エネルギー・素材産業におけるリーディングカンパニーの一つである同社の環境への取り組みを詳細に分析することは、同社自身の持続的成長可能性を測る上で不可欠であるだけでなく、日本の産業界全体の環境対応の動向を理解する上でも重要な意義を持つ。

本報告書の目的と構成

本報告書の主たる目的は、出光興産の環境イニシアチブとパフォーマンスを、「気候変動」「資源循環」「生物多様性」の3分野に焦点を当てて包括的に分析し、同社の環境スコアリングや戦略評価に資する詳細かつ客観的な情報を提供することにある。分析にあたっては、同社が開示している具体的な取り組み内容や目標、実績データに加え、事業活動に伴う潜在的なリスクと機会、同業他社や業界における先進的な環境対策(ベストプラクティス)、主要な競合他社の環境戦略とパフォーマンス、そして出光興産が現在直面している課題と今後の推奨事項まで、多岐にわたる項目を網羅的に扱う。

報告書の構成は以下の通りである。第1部では、出光興産が「気候変動」「資源循環」「生物多様性」の各分野において、どのような戦略・方針を掲げ、具体的な施策を実行し、どのような実績を上げているかを詳述する。第2部では、これらの環境要因に関連するリスクと機会を分析するとともに、業界のベストプラクティスや主要な競合他社(ENEOSホールディングス、コスモエネルギーホールディングス等)との比較を通じて、出光興産の取り組みの相対的な位置づけや特徴を明らかにする。また、CDP、MSCI、Sustainalyticsといった外部評価機関による環境スコアやレーティングのベンチマーキングも行う。第3部では、これまでの分析を踏まえ、出光興産が環境分野で直面している主要な課題を整理し、今後の持続的なパフォーマンス向上に向けた具体的な推奨事項を提示する。

本報告書全体を通じて、データ、比較、ベンチマークの結果は全て文章形式で記述し、読者の理解を助けるために表や箇条書き形式は一切使用しない。また、引用する情報源については、巻末の参考文献リストにおいて、番号、引用元タイトル、そして改行した上でURLを記載するという指定された書式を遵守する。これにより、学術的な水準を担保しつつ、客観性と透明性の高い分析を提供することを目指す。

第1部:出光興産の環境への取り組みと実績

1.1 気候変動への対応

1.1.1 戦略と目標

出光興産は、気候変動問題を経営上の最重要課題の一つと認識し、2050年までにカーボンニュートラル(CN)を達成するという長期目標を掲げている 7。この壮大な目標に向けた道筋として、複数の中期目標を設定している。特に重要なのは、Scope1(直接排出)およびScope2(間接排出、エネルギー起源)の温室効果ガス排出量を、2030年度までに2013年度比で46%削減するという目標である 7。さらに、供給するエネルギー単位あたりの炭素排出量を示す指標であるCarbon Intensityについても、2030年度までに2020年度比で10%削減、2040年度までには同50%削減するという目標を設定している 7。これらの目標は、同社が気候変動対策に対して具体的なコミットメントを示している証左と言える。

気候関連の情報開示に関しては、国際的な枠組みであるTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に2020年に賛同を表明し、以降、提言に沿った情報開示を継続している 7。近年では、ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)が公表したIFRS S2(気候関連開示基準)のフレームワークも念頭に置きながら、開示内容のさらなる拡充を進める方針を示しており、ステークホルダーとの対話を通じた取り組みの加速を目指している 7

同社の気候変動戦略の中核をなすのは、事業ポートフォリオそのものを変革していくという強い意志である。具体的には、「CNX(Carbon Neutral Transformation)センター化構想」を推進し、従来型の化石燃料供給拠点であった製油所や事業所を、SAF(持続可能な航空燃料)、水素、アンモニアといった次世代エネルギーや、リサイクル原料を用いた製品などの供給拠点へと転換していく計画である 3。この転換を通じて、化石燃料事業からの収益比率を2030年度までに50%以下に引き下げるという目標も掲げている 7。このトランジション戦略は、単に自社の排出量を削減するだけでなく、サプライチェーン全体での低炭素化に貢献することを目指すものであり、経済産業省が示す石油分野や化学分野のロードマップとも整合性を図っている 4。さらに、この変革プロセスにおいては、地域経済や雇用への影響にも配慮し、地域社会との共存共栄を目指す「ジャスト・トランジション」の観点も重視している点が特徴的である 4

同社が掲げる2030年度のScope1+2排出量46%削減目標 7 は意欲的である一方、2023年度時点での削減実績は14.6% 7 に留まっており、目標達成には大きな隔たりが存在する。このギャップを埋めるためには、既存の省エネルギー対策 7 に加え、計画中のSAF 7、アンモニア 7、CCUS 7 といった大規模な新規事業からの貢献が不可欠となる。これは、目標達成がこれらの新技術・事業の計画通りの進捗と効果発現に強く依存していることを示唆しており、計画の遅延や予期せぬコスト増加は、目標未達のリスクに直結する可能性がある。

また、国内の石油業界においては他社に先駆けて、Scope3(バリューチェーン排出量、特にカテゴリ11「販売した製品の使用」)を含む定量的な指標としてCarbon Intensityを設定している点は評価に値する 4。しかしながら、Scope3カテゴリ11が同社の総排出量の大部分を占めている現状 8 を考慮すると、Carbon Intensityの削減目標(2030年度に2020年度比▲10%) 7 だけでは、サプライチェーン全体での排出削減インパクトとしては限定的となる懸念もある。今後、製品ポートフォリオの転換による排出削減効果をより具体的に定量化するなど、Scope3削減に向けた一層踏み込んだ戦略や目標設定が求められる可能性がある。

1.1.2 具体的な取り組み

出光興産は、設定した戦略と目標を達成するため、多岐にわたる具体的な取り組みを推進している。

低炭素燃料の供給拡大は、その柱の一つである。航空業界の脱炭素化に不可欠とされるSAFについては、千葉事業所内に年間10万キロリットルの生産能力を持つ製造設備の建設を進めており、2026年の供給開始を予定している 7。さらに、2030年には国内で年間50万キロリットルの生産体制を構築するという中間目標を掲げている 7。既にバイオディーゼル燃料の顧客への供給も開始している 7。また、将来のクリーンエネルギーとして期待されるアンモニアに関しては、徳山事業所および周南コンビナート地区において、東ソー、トクヤマ、日本ゼオンと連携し、2030年までに年間100万トン超のカーボンフリー燃料アンモニア供給体制を確立することを目指している 7。e-メタノールについても重点事業として開発を進めている 7。さらに、バイオマス燃料として「出光グリーンエナジーペレット」(ブラックペレット)の製造・供給体制の構築も進めている 4。これらの取り組みは、INPEXと共同でカーボンクレジットを活用し、サプライチェーン全体でカーボンニュートラル化されたジェット燃料を全日本空輸(ANA)へ供給した事例 9 にも繋がっている。

前述のCNXセンター化構想は、これらの低炭素燃料供給を実現するための基盤となる。既存の製油所や事業所が持つインフラや技術、人材を最大限活用しつつ、それぞれの拠点の立地特性や地域の需要に応じた形で、次世代エネルギーの製造・供給拠点へと転換を図るものである 4。これにより、コンビナート全体のカーボンニュートラル化にも貢献することを目指している。

エネルギー効率の改善、すなわち省エネルギーへの取り組みも継続的に強化されている。千葉事業所では、船舶燃料の低硫黄規制に対応するため、重油直接脱硫装置(RH装置)の効率化改造工事を実施した 7。徳山事業所では、高効率ナフサ分解炉を新設し、2021年2月に商業運転を開始した。この新設炉は、従来の分解炉と比較して約30%の省エネルギー効果があり、年間約1万6千トンのCO₂削減に寄与するとされている 7。国内の油槽所17拠点などでは、再生可能エネルギー由来の電力利用を拡大している 7。さらに、ノルウェーのスノーレ海上油田においては、世界初の試みとして浮体式洋上風力発電による電力を供給し、操業におけるCO₂排出量削減に貢献している 7

再生可能エネルギー電源の開発も積極的に進められている。バイオマス発電では、土佐グリーンパワー、福井グリーンパワーへの出資や京浜バイオマス発電所の展開に加え、徳山バイオマス発電所が2023年1月に営業運転を開始した 7。徳山では、国産の間伐材や製材端材の利用を中長期的に目指し、地域の木質バイオマス材利活用推進協議会にも参画している 7。地熱発電では、秋田県湯沢市において、INPEX、東京電力リニューアブルパワーと共同で出力1.5万キロワットのかたつむり山発電所の建設を進めており、2027年3月の運転開始を予定している 7。オーストラリアでは、マッセルブルック石炭鉱山の採掘跡地を利用した揚水発電プロジェクトの事業化検証をAGLエナジー社と共同で開始した 7。国内では、徳島県に国内初となる2メガワットの次世代営農型太陽光発電所を建設するなど 6、多様な再生可能エネルギー源の開発に取り組んでいる。

CO₂の回収・有効活用・貯留(CCUS)技術は、カーボンニュートラル実現に向けた重要な選択肢の一つと位置づけられている。出光興産は、北海道電力、石油資源開発と共同で、北海道苫小牧エリアにおけるCCUSの実現に向けた共同検討を開始した 7。2030年度までの事業立ち上げを目指し、CO₂排出地点、回収設備、輸送パイプライン、貯留適地調査などを進めている。さらに、回収したCO₂を単に貯留するだけでなく、資源として活用し、合成燃料を製造することにも挑戦する計画である 7

これらの主要な取り組みに加え、省エネ効果の高いボイラ制御最適化システム「ULTY-V plus™」を顧客に提供したり 7、環境性能を高めた大型原油タンカー(VLCC)の建造を決定したり 6、水素エンジンの開発を手掛けるスタートアップ企業へ出資したり 6、ENEOS、SUBARU、トヨタ自動車、マツダ、三菱重工業とともにカーボンニュートラル燃料である合成燃料の活用に向けた連携を開始したり 12 するなど、気候変動対応に資する多角的な活動を展開している。

1.1.3 実績データ

出光興産の気候変動に関するパフォーマンスを示す定量データとして、まず温室効果ガス排出量の実績が挙げられる。2023年度におけるScope1排出量は13,487千トン-CO2e、Scope2排出量は473千トン-CO2であった 8。Scope1とScope2を合計した排出量は13,960千トン-CO2eとなり、これは基準年である2013年度と比較して14.6%の削減に相当する 7。Scope3排出量については、カテゴリ11(販売した製品の使用)が最も大きく、2023年度の実績は117,297千トン-CO2であった 8。Scope1、2、3を全て合計した総排出量は、2023年度で131,257千トン-CO2eと報告されている 8

供給エネルギーの低炭素化度を示すCarbon Intensityについては、2023年度の実績は2020年度比で1.1%の削減となった 7。これは、2030年度目標である10%削減に向けては、まだ道半ばであることを示している。

一方で、自社の事業活動を通じて社会全体のCO₂削減に貢献した量を示す「CO₂削減貢献量」も算定・開示している。2023年度の実績としては、再生可能エネルギー発電による貢献量が、太陽光発電で200千トン-CO₂、風力発電で17千トン-CO₂、地熱発電で16千トン-CO₂、バイオマス発電で214千トン-CO₂、合計で447千トン-CO₂であった 7。また、顧客に提供しているボイラ制御最適化システム「ULTY-V plus™」による削減貢献量は1,101千トン-CO₂と算定されている 7

これらの実績データを見ると、Scope1+2排出量は2022年度の14,459千トン-CO2eから2023年度の13,960千トン-CO2eへと着実に減少していることが確認できる 8。しかしながら、2030年度の46%削減目標(2013年度比)を達成するために必要な年平均の削減ペースと比較した場合、現状の削減ペースは十分とは言えない可能性がある。これは、先に述べたように、目標達成が計画中の大規模プロジェクト(SAF、アンモニア、CCUS等)の早期かつ大規模な効果発現に大きく依存している状況を裏付けている。現時点で算定されているCO₂削減貢献量 7 だけでは目標達成は困難であり、これらの大型投資が計画通りに進捗し、期待される削減効果を発揮することが極めて重要となる。

1.2 資源循環の推進

1.2.1 戦略と目標

出光興産は、持続可能な社会の実現に向けて、資源循環の推進を重要な経営課題と位置づけている。その基本的な考え方として、天然資源の消費を抑制し、環境への負荷を可能な限り低減する循環型社会の実現への貢献を掲げている 13。具体的には、再生可能な資源はその再生能力の範囲内で再利用し、再生能力のない資源については最大限有効な形で消費するとともに、長期的には使用を抑制しつつ再生可能な別の資源へシフトしていく方針である 13

この方針に基づき、既存事業および将来取り組む全ての事業において、資源の効率的な活用、廃棄物の最小化、そしてリサイクルや再利用を促進することを戦略の柱としている 13。これにより、環境負荷の低減と同時に、原料の安定調達にも繋げることを目指している。特にリサイクルに関しては、経済性を十分に考慮し、コストが成り立つ範囲で需要を取り込む枠組みを構築し、サーキュラーエコノミーを実践していく考えである 13

具体的な定量目標としては、まず、主力の石油事業におけるゼロエミッション、すなわち廃棄物の最終処分率を1%以下に維持・継続することを掲げている 13。加えて、近年社会的関心が高まっているプラスチック問題に対応するため、使用済みプラスチックのリサイクル量を2025年度までに年間2万トンにするという目標を設定している 13

これらの目標達成と循環経済への移行を加速するため、出光興産は経済産業省が主導する産官学連携パートナーシップ「サーキュラーパートナーズ」にも参画している 13。これは、個々の企業の努力だけでは達成が困難な循環経済の実現に向けて、ライフサイクル全体の関係者との連携を強化し、取り組みを拡張していくという同社の姿勢を示すものである。

1.2.2 具体的な取り組み

出光興産は、資源循環に関する戦略と目標に基づき、複数の具体的な取り組みを推進している。中でも特に注力しているのが、使用済みプラスチックのリサイクルである。

同社が開発・推進しているのは、「HiCOP(ハイコップ)」と呼ばれる独自の油化ケミカルリサイクル技術である 14。これは、回収した使用済みプラスチックを触媒を用いた接触分解方式により加熱・分解し、原油に相当する性状の「生成油」を製造する技術である。この生成油を、既存の石油精製装置や石油化学装置に投入し、精製・分解などのプロセスを経て、再びプラスチックを含む化学製品などの原料として再資源化する 14。この技術の利点は、マテリアルリサイクルが困難な混合プラスチックや汚れたプラスチックも原料として利用できる可能性がある点、そして既存のインフラを有効活用できる点にある 15

このHiCOP技術の商業化に向けて、現在、千葉事業所に隣接するエリアで、年間処理能力2万トンの油化ケミカルリサイクル装置の建設が進められており、2025年度の商業運転開始を目指している 13。このプロジェクトは、技術開発を共同で進めてきた環境エネルギー株式会社との合弁会社「ケミカルリサイクル・ジャパン株式会社」を通じて実施される 13。原料となる使用済みプラスチックの安定的な調達は事業化の鍵となるため、大手リサイクラーとの協業も検討されている 15

将来的には、千葉での事業モデル確立後、他のグループ製油所・事業所への油化装置の展開や、さらには全国の自治体が抱える廃プラスチック問題の解決策として、グループ外での装置建設も視野に入れ、全国規模での大規模な事業展開を目指すとしている 15。この取り組みは、製油所・事業所を単なるエネルギー製造拠点から、低炭素・資源循環エネルギーハブへと転換していくという同社のCNXセンター化構想とも連動している 16

具体的な連携事例も複数生まれている。医薬品メーカーである中外製薬とは、同社工場から排出される使用済みプラスチックをHiCOP技術で再資源化する実証実験を開始した 11。海運大手の商船三井とは、海洋プラスチックごみを回収し、油化ケミカルリサイクルする実証実験に着手している 17。家電メーカーの三菱電機とは、出光興産が製造するバイオマス由来の化学品を原料としたバイオマスプラスチックを、三菱電機の家電製品(空調機器、冷蔵庫)に使用することを目指し、連携を開始した 6。また、グループ会社のPSジャパン株式会社は、バンダイナムコグループが推進する「ガンプラリサイクルプロジェクト」にケミカルリサイクルの側面から参画し、使用済みプラモデルのランナー(枠)を原料とした製品化を目指している 13

プラスチック以外にも、資源循環に向けた取り組みが進められている。太陽光発電の普及に伴い、将来的な大量廃棄が懸念される使用済み太陽光パネルについては、グループ会社のソーラーフロンティア株式会社がリサイクル技術の開発を進めている 13。パネルに含まれるガラスや金属などの有用資源を効率的に回収し、90%以上のマテリアルリサイクル率を達成する技術の確立を目指し、2024年度の事業化を計画している 13

電気自動車(EV)の普及に不可欠なリチウムイオン電池、特に同社が開発を進める全固体リチウム電池についても、将来的な廃電池の増加と、それに伴うリチウムなどの希少資源の需給逼迫を見据え、リサイクルスキームの検討を開始している 13。これにより、将来的に全固体電池のバリューチェーン全体の付加価値向上を目指す考えである。この分野では、固体電解質の量産化に向けた小型実証設備の能力増強や、中間原料である硫化リチウムの大型製造装置の建設決定など、事業化に向けた動きも活発化している 6

さらに、気候変動対策とも密接に関連するが、CO₂そのものを資源として捉え、有効活用する「カーボンリサイクル」の研究開発も行っている。一つは、産業廃棄物に含まれるカルシウムなどを利用してCO₂を固定化し、炭酸塩として再利用する技術開発であり、宇部興産(当時)、日揮ホールディングスなどとの「CCSU研究会」やNEDOの委託事業を通じて進められている 13。もう一つは、独自開発の触媒を用いたガス拡散電極により、水とCO₂から直接、化学品や燃料などの有用物質を高効率で製造するCO₂電解還元技術の開発である 13。再生可能エネルギー由来の電力を用いることで、CO₂の再利用によるカーボンニュートラル社会への貢献を目指している。

これらの資源循環に関する取り組み、特に中核となるケミカルリサイクル事業の商業化においては、多面的な課題が存在する。年間2万トンという目標 13 は具体的であるが、その達成はHiCOP技術の安定稼働とスケールアップ 15 に加え、①原料となる品質・量の両面で多様な使用済みプラスチックをいかに安定的に確保するか 15、②生成される油の品質を安定させ、既存の精製・化学装置で効率的に処理できるか、③最終製品であるリサイクル化学品や燃料油の市場をいかに開拓し、経済性を確保するか 13、といった複数のハードルを越える必要がある。特に、原料調達と市場形成は、技術開発とは異なる側面を持つ課題であり、自治体やリサイクラー、需要家となる企業との強固なパートナーシップ構築(11 など)が、事業の成否を左右する重要な要素となる。

また、既存の石油精製・石油化学装置を活用できる点 14 は、初期投資の抑制や早期事業化の観点からは大きな強みである。しかし、これは同時に、リサイクルプロセスが既存インフラの処理能力やプロセス適合性といった制約を受ける可能性も内包している。将来的に、より大規模な事業展開 15 を目指す際には、既存設備の能力増強や改修、あるいはリサイクル専用ラインの新設といった追加的な投資が必要となる可能性があり、その際の投資対効果や経済合理性が改めて問われることになるだろう。

1.2.3 実績データ

出光興産の資源循環に関する定量的な実績として、まず廃棄物関連のデータが挙げられる。グループ全体の総廃棄物排出量は、2021年度に236,263トン、2022年度に225,375トン、2023年度には242,238トンであった 8。このうち、リサイクルされた量は、2021年度が113,599トン、2022年度が106,908トン、2023年度が115,369トンとなっている 8

目標として掲げているゼロエミッション(最終処分率1%以下)の達成状況を見ると、廃棄物の最終処分率は、2021年度が0.035%、2022年度が0.011%と極めて低い水準で推移していた 8。しかし、2023年度には0.791%へと上昇しており、目標値である1%は下回っているものの、前年度までと比較すると顕著な増加が見られる 8。この最終処分率の上昇に関して、その具体的な要因(一時的な事象によるものか、構造的な変化か、特定の事業活動や拠点が関連しているのか等)についての詳細な分析と説明が、今後の目標達成に向けた取り組みの透明性と信頼性を確保する上で重要となる。

プラスチック資源循環に関連して、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」への対応として、事業所等から排出される廃プラスチックの削減にも取り組んでいる。その排出量は、2021年度の1,074トンから、2022年度には836トン、2023年度には739トンへと着実に削減されている 13。これは、政府が掲げる「2030年までにワンウェイプラスチックを累積25%排出抑制する」というマイルストーン達成に向けた取り組みの一環である 13

1.3 生物多様性の保全

1.3.1 戦略と方針

出光興産は、事業活動と自然環境との調和を重視する企業文化を背景に、生物多様性の保全をサステナビリティ経営における重要な要素と位置づけている。その根底には、創業者である出光佐三が提唱した「産業と自然が融和する緑豊かな公園工場」という理念があり、最初の製油所建設計画時から、生産拠点周辺の自然環境保全に取り組んできた歴史がある 19

現在では、「出光グループ サステナビリティ方針」の下で、事業活動による環境リスクを低減し、自然環境の保全と循環型社会の実現に貢献することを明記している 19。この方針を補完し、生物多様性分野における具体的な行動指針として「生物多様性ガイドライン」を定めている 20。このガイドラインでは、①自社の事業活動が生物多様性に与える影響を正確に把握し、負の影響は低減、正の影響は増加に努めること、②新規事業等の検討にあたっては生物多様性の観点での影響を十分に考慮すること、③劣化した生態系の回復に貢献すること、④保全された生態系の拡大に貢献すること、⑤生物多様性に関する環境教育・啓発を推進すること、⑥関連する取り組みの開示を強化し、ステークホルダーとの対話・協働を拡大すること、などが謳われている 20

近年、国際的に重要性が高まっている自然関連財務情報開示の動きにも対応している。TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の提言に対応するため、2024年度から4年間の計画で、同タスクフォースが推奨するLEAPアプローチ(Locate:発見、Evaluate:診断、Assess:評価、Prepare:準備)を用いた分析に着手した 20。このアプローチに基づき、自社の事業活動が自然資本にどのように依存し、どのような影響を与えているか、そしてそれに伴うリスクと機会は何かを評価し、順次開示を拡充していく方針である。初期評価として、ENCORE(自然資本に関するリスク・機会評価ツール)を用いて事業プロセスごとの依存度・影響度を分析した結果、特に影響が大きいと考えられる燃料油事業と石炭事業を高優先度事業として特定している 20。現在は直接操業拠点を中心に分析を進めているが、今後は原材料調達などの上流から製品使用・廃棄といった下流まで、バリューチェーン全体へと分析範囲を拡大することも検討している 20

1.3.2 具体的な取り組み

出光興産は、上記の方針に基づき、多様な生物多様性保全活動を実践している。特に、創業以来の理念を体現する工場緑地の管理・活用は、その中核的な取り組みの一つである。

国内に4箇所ある製油所・事業所(北海道、千葉、愛知、徳山)では、合計で約240ヘクタール(東京ドーム約50個分)にも及ぶ広大な緑地を維持・管理している 21。これらの緑地は、単に工場と周辺地域との緩衝帯として機能するだけでなく、地域の生態系ネットワークの一部として、多様な生物の生息・生育空間を提供している。

北海道製油所では、厳しい気象条件下で緑化を進め、約12,000本の樹木を育成してきた 20。構内にはビオトープも整備され、鳥類、トンボ類、植物などの継続的なモニタリング調査が実施されている 20。地域貢献活動も活発で、小学生向けの環境学習イベント「出光生きもの調査隊」の開催や、春には構内の八重桜並木を一般公開している 20。また、林野庁の「法人の森林」制度を活用した「出光アッペナイ水源の森林」の管理 20 や、苫小牧市の自生種であるハスカップの保護・育成を目的とした「ハスカップバンク」への参画 20 など、地域社会との連携も深い。これらの活動が評価され、SEGES(社会・環境貢献緑地評価システム)の最高位認証の一つであるExcellent Stage 3を取得し 21、さらに環境省の「自然共生サイト」にも認定されている 20

千葉事業所では、操業開始時からグリーンベルトを中心とした緑地を整備・管理しており、近年では地域の本来の植生である「郷土の森」を目標に、外来種から日本自生種への植え替え活動などを実施している 20。近隣小学校向けの環境教育の場としても活用されている 21。2024年度からは千葉県の「法人の森事業」に関する協定を締結し、「出光千葉の森」として県有林の森林整備にも取り組んでいる 20。また、東京湾の環境再生を目的とした「東京湾環境一斉調査」にも継続的に参加し、水質調査などを実施している 23

愛知事業所では、設備建設時の環境アセスメントで確認された環境省準絶滅危惧種の植物「ミゾコウジュ」を保護するため、約70平方メートルの保護区を設けて保全活動を続けている 20。地域の行政、企業、大学などが連携して生物多様性の向上を目指す「命をつなぐPROJECT」にも主要メンバーとして参画しており 20、SEGESの最高評価であるSuperlative Stageを取得、「緑の殿堂」にも認定されている 20。周辺企業とともに「知多半島グリーンベルト」としても登録されている 20

徳山事業所では、地域連携を重視した活動が特徴である。絶滅危惧Ⅱ類に指定されているナベヅルの越冬地である周南市八代地区において、市が進める「ツルのねぐらづくり」のボランティア活動に毎年参加・協力している 20。また、地域の自然環境保全を目的とした「まちと森と水の交流会」にも参加している 20

グループ会社の西部石油株式会社 山陽小野田事業所では、厚東川工業用水利用者協議会の一員として、秋吉台国定公園の貴重な草原環境を守り育むための活動(山焼き、草刈りなど)に参画している 20

これらの工場緑地における取り組みは、国内の工場緑地管理における先進事例の一つと言える。SEGES認証 20 や自然共生サイト認定 20 といった外部からの高い評価は、その質の高さを裏付けている。地域特性に応じた多様な活動(希少種保護、地域連携、環境教育)を展開しており、これらの活動を通じて得られた知見やノウハウを体系化し、国内外の他の事業拠点や、将来的にはサプライチェーン上のパートナー企業へも展開・共有していくことは、より広範な生物多様性への貢献に繋がる可能性がある。

工場緑地以外にも、事業活動が生物多様性に与える影響を低減するための取り組みが行われている。燃料油の海上輸送においては、バラスト水管理条約に基づき、外来生物による生態系の攪乱を防ぐため、全管理船舶にバラスト水処理装置を搭載している 20。また、油濁事故による海洋汚染を防止するため、船体を二重構造(ダブルハル)化するなどの対策も講じている 20。船舶からの排ガスに含まれる大気汚染物質を削減するため、排ガス再循環システム(EGR)やSOxスクラバーの導入も進めている 20。陸上の貯蔵タンク(油槽所)においては、揮発性有機化合物(VOC)の排出を削減するため、タンク構造の改良(固定屋根式から浮き蓋式へ)やVOC回収装置の設置を進めている 20。また、油水分離槽の設置による水質汚濁防止対策や、土壌汚染対策法に基づいた土壌汚染調査も実施している 20。石炭事業においては、鉱山での採掘が終了した後の土地に対し、表土を戻し、原状と同じ種類の植物を植栽して生態系の回復を図るリハビリテーション活動を実施している 20

国際的なイニシアチブへの参加や連携も進めている。2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として保全することを目指す国際目標「30by30」の達成に貢献するため、日本国内で設立された「生物多様性のための30by30アライアンス」に発足当初から参画している 20。また、ブルーカーボン(海洋生態系によるCO₂吸収・貯留)など、自然由来の脱炭素化や生物多様性評価に関する検討会にも、東京海上アセットマネジメントや商船三井などと共に参加している 24

TNFDへの対応を開始したこと 20 は、生物多様性に関するリスクと機会の評価を深化させる上で重要な一歩である。現状の取り組みは、工場敷地内や直接的な操業に関連するものが中心に見受けられるが 20、今後はLEAPアプローチに基づき、原材料調達(特に影響が大きいとされる石炭 20 や、将来的に利用拡大が見込まれるバイオマス燃料の原料調達 6 など)から、製品の利用・廃棄に至るバリューチェーン全体での自然への依存度、影響、リスク、機会を評価し、その結果に基づいた具体的な対応策を開示していくことが、より包括的で信頼性の高い生物多様性戦略の構築に繋がるだろう。特に、初期評価で高優先度と特定された燃料油事業および石炭事業における、サプライチェーン上流・下流での影響評価が今後の鍵となる。

1.3.3 実績と評価

出光興産の生物多様性保全に関する取り組みは、外部機関からも一定の評価を受けている。特に工場緑地の管理活動は高く評価されており、SEGES(社会・環境貢献緑地評価システム)において、北海道製油所がExcellent Stage 3、愛知事業所が最高評価であるSuperlative Stageを取得し、さらに愛知事業所は「緑の殿堂」にも認定されている 20。また、北海道製油所は、その緑地が生物多様性保全に貢献しているとして、環境省の「自然共生サイト」に認定され、その区域はOECM(保護地域以外で生物多様性保全に資する区域)として国際データベースにも登録されている 20

情報開示の面では、国連環境計画世界自然保全モニタリングセンター(UNEP-WCMC)が管理するウェブサイト「Protected Planet」などを活用し、自社の主要な事業拠点が、生物多様性の観点で特に配慮が必要な地域(保護地域など)とどの程度近接しているかを把握し、リスク認識に努めている 25

しかしながら、生物多様性保全活動の具体的な成果を示す定量的な実績データ、例えば、保全管理している緑地の面積の推移、そこに生息する希少種の個体数の変化、生態系サービスの評価結果などについては、現時点で公開されているESGデータブック 8 やサステナビリティサイト 20 の情報だけでは限定的である。TNFD対応を進める中で、今後はこれらの定量的な指標と目標の設定、およびその進捗状況に関する開示の充実が期待される。

第2部:リスク、機会、および業界比較分析

2.1 環境関連のリスクと機会

2.1.1 気候変動関連

出光興産は、気候変動に関連するリスクと機会をTCFDのフレームワークに基づき認識し、開示している 7

リスクとしては、大きく「移行リスク」と「物理リスク」を特定している。移行リスクには、①低炭素社会への移行に伴う国内の化石燃料需要の減少、②再生可能エネルギーや代替燃料技術の革新によるエネルギー価格や資源価格の低下、③政府によるカーボンプライシング(炭素税や排出量取引制度など)の本格導入によるコスト増加、④化石資源採掘事業(特に石炭)に対する規制強化や金融機関による投融資姿勢の厳格化、⑤炭素排出量が多い企業に対する社会的な評価の低下(ブランドイメージの毀損)などが挙げられる 7。これらのリスクに対し、同社は石炭鉱山の生産規模縮小や、ステークホルダーとの対話継続・強化といった対応策を講じている 7。物理リスクとしては、①気候変動に伴う異常気象(大型台風、集中豪雨、高潮など)の激甚化や海面上昇による、沿岸部に立地する製油所・事業所・油槽所などへの被害や操業停止リスク、②異常降水や台風の頻発化などによる陸上・海上輸送網への影響と、それに伴うサプライチェーンの寸断リスクを認識している 7。これらに対しては、浸水壁の設置といったハード対策や、防災マニュアルの充実といったソフト対策、供給維持に向けたサプライチェーンの強靭化などで対応を進めている 7

一方で、気候変動はリスクだけでなく、新たな事業機会ももたらすと認識している。主な機会としては、①化石燃料に代わる低・脱炭素エネルギーへの需要拡大(例:固体燃料としての出光グリーンエナジーペレット、ガス体燃料としてのアンモニア・水素、液体燃料としてのSAFやバイオ・合成燃料)、②低炭素燃料・原料の供給拠点としての国内製油所・事業所の重要性拡大(CNXセンター化構想、バイオ化学品の製造・供給)、③カーボンニュートラル社会の実現に貢献する製品や素材(例:軽量化素材、高効率デバイス材料)への需要増加、④次世代蓄電池(特に全固体電池)の需要拡大、⑤EV(電気自動車)普及に伴う関連事業(高性能潤滑油、充電インフラ、メンテナンスサービス、超小型EVへの参画など)、⑥再生可能エネルギー(太陽光、風力、地熱、バイオマス、水力など)への需要拡大と多様な電源開発、⑦分散型エネルギーシステムの進化とVPP(仮想発電所)制御サービスなどの需要拡大、⑧循環型社会実現に向けたリサイクル事業(使用済みプラスチック、ソーラーパネル、リチウム電池)の本格的な拡大などが挙げられる 7

出光興産が認識しているリスク(例:化石燃料需要の減少、規制強化) 7 は、見方を変えれば、そのまま事業機会(例:代替燃料への需要増、カーボンニュートラル貢献製品への需要増) 7 に直結している。このリスクと機会の表裏一体の関係性は、同社が進める事業ポートフォリオの転換 3 が、単なるリスク回避策ではなく、新たな成長機会を積極的に追求する戦略でもあることを明確に示している。この転換戦略をいかに迅速かつ的確に実行できるかが、将来のリスクを最小限に抑え、機会を最大限に活かすための鍵となるだろう。

2.1.2 資源循環関連

資源循環の分野においても、リスクと機会の両側面が存在する。

リスクとしては、まず事業の経済性確保が挙げられる。特にケミカルリサイクルなどの新規事業においては、原料となる廃棄物の収集・運搬・前処理コスト、リサイクルプロセス自体のコスト、そして生成されたリサイクル製品の販売価格などを考慮した上で、事業として採算が成り立つような枠組みを構築する必要がある 13。市場原理だけでは成立が難しい場合もあり、政策的な支援や需要家との長期契約なども重要となる可能性がある。また、技術面での課題(例:多様な廃棄物に対応できる安定したプロセス、高いリサイクル効率)や、原料となる使用済みプラスチックなどを安定的かつ十分な量で確保するという原料調達面での課題も存在する 13。これらの課題解決には、自社単独での取り組みには限界があり、関連技術を持つ企業やリサイクラー、自治体、需要家など、バリューチェーン上の様々な関係者との連携・協働が不可欠となる 13

機会としては、まず、天然資源の消費抑制と環境負荷低減に貢献することで、持続可能な社会の実現に寄与できるという社会的な意義がある 13。また、再生可能な資源やリサイクル原料を事業のサプライチェーンに組み込むことで、資源価格の変動リスクを低減し、原料の安定調達に繋げることができる 13。特に、使用済みプラスチックを油化して原油の代替として利用するケミカルリサイクルは、この観点から重要である。さらに、CO₂を資源として再利用するカーボンリサイクル技術が確立できれば、地球温暖化対策に直接的に貢献できる新たな事業領域を開拓できる可能性がある 13。これらの取り組みは、環境意識の高い消費者や投資家からの評価を高め、企業価値の向上にも繋がることが期待される 13

資源循環、特にケミカルリサイクル 13 やソーラーパネルリサイクル 13 といった比較的新しい分野においては、技術開発から原料回収、製品化、そして市場形成に至るまで、バリューチェーン全体での連携が成功の鍵を握る。出光興産自身もこの連携の必要性を強く認識しており 13、実際に中外製薬 11、商船三井 17、三菱電機 18 など、多くの企業との具体的な連携を進めている。これらのパートナーシップの質と量が、今後、事業をスケールアップさせ、持続可能なビジネスモデルとして確立できるかどうかを左右する重要な要因となるだろう。

2.1.3 生物多様性関連

生物多様性の分野におけるリスクと機会については、出光興産はTNFDのLEAPアプローチを用いた評価を開始した段階であり、現時点での具体的なリスク・機会の特定と開示は限定的である 20。しかし、同社の事業内容や立地などを考慮すると、潜在的なリスクと機会はいくつか想定される。

リスクとしては、まず事業活動、特に資源開発(石炭採掘など)や大規模なインフラ建設(製油所、発電所、パイプラインなど)が、直接的・間接的に生態系や生物の生息地へ負の影響を与える可能性が挙げられる。これには、生息地の破壊・分断、水質・土壌汚染、外来種の侵入などが含まれる。また、生物多様性に関する国内外の規制が今後強化される可能性や、生物多様性への配慮を欠いた事業活動に対する社会的な批判やレピュテーションの低下といったリスクも考えられる。サプライチェーン上流における原材料調達(例:バイオマス燃料の原料となる農産物や林産物)においても、その生産過程における森林破壊や土地利用転換などが生物多様性損失に繋がるリスクが存在する。

機会としては、まず、工場緑地の適切な管理や生態系回復への貢献といった積極的な保全活動を通じて、企業イメージやブランド価値を向上させることが考えられる 20。地域社会との良好な関係を構築し、従業員の環境意識を高める効果も期待できる。北海道製油所が認定された「自然共生サイト」 20 のような取り組みは、企業の環境貢献を具体的に示すものとして評価される。将来的には、生物多様性保全に貢献する技術や製品・サービス(例:環境負荷の少ない農薬、生態系モニタリング技術)の開発・提供や、ネイチャーポジティブ(自然再興)に貢献する市場への参入なども機会となり得る。ブルーカーボンや生物多様性クレジットといった新しい市場メカニズムへの関与も、新たな価値創造に繋がる可能性がある 24

TNFDへの対応に着手したこと 20 は評価できるが、気候変動分野(TCFD対応)と比較すると、生物多様性に関するリスクと機会の特定・評価・開示はまだ初期段階にあると言える。特に、バリューチェーン全体、とりわけ影響が大きいとされる上流の資源調達段階 20 における具体的なリスクと機会を早期に評価し、その結果を経営戦略や事業計画に統合していくことが、将来的な規制強化や市場からの要請(例:投資家によるエンゲージメント)に的確に対応し、持続的な成長を確保する上で重要となる。

2.2 業界ベストプラクティスとの比較

2.2.1 気候変動対策

出光興産の気候変動対策を、業界の先進的な取り組み(ベストプラクティス)と比較評価する。

まず、SAF(持続可能な航空燃料)に関しては、欧米のエネルギーメジャーや専業企業が大規模な生産能力増強を計画・実行している。例えば、フィンランドのNesteは、再生可能燃料のリーディングカンパニーとして、シンガポールやロッテルダムの拠点で大規模な増産投資を行い、2023年末までに年間150万トンのSAF生産能力を確保し、さらに2027年には年間220万トンまで拡大する計画である 26。Shell、BP、TotalEnergiesといった欧州メジャーも、既存製油所の転換や新規建設によりSAF生産能力の拡大を進めている 28。これらの多くは、廃食油や動物性油脂などを原料とするHEFA(Hydroprocessed Esters and Fatty Acids)技術を基盤としている 29。欧州連合(EU)がSAFの混合義務化目標(2030年に5%、2050年に63%)を掲げていることも、これらの動きを後押ししている 28。出光興産が掲げる2030年の国内年間50万キロリットル(約40万トン)の生産体制構築目標 7 は、国内市場においては意欲的であるが、Nesteなどのグローバルリーダーと比較すると、規模の面ではまだ差がある。ただし、国内でのサプライチェーン構築や需要創出という観点からは重要な取り組みと言える。

次に、CCUS(CO₂回収・有効活用・貯留)については、世界的に多くのプロジェクトが計画・進行中であり、特に北米や欧州では政府の支援を受けた大規模なクラスター形成の動きが見られる 30。ExxonMobilやShellなどのメジャー企業は、自社の排出源だけでなく、他産業からのCO₂も回収・貯留するハブ事業への投資を拡大している。CCSは、電化や水素化が困難な産業(セメント、鉄鋼など)の脱炭素化や、エネルギー安定供給とカーボンニュートラルを両立させる上で不可欠な技術と位置づけられている 30。出光興産が北海道電力、石油資源開発と共同で進める苫小牧エリアでのCCUS検討 7 は、国内における先進的な取り組みの一つであるが、事業化目標(2030年度)や想定される貯留規模(年間600~1,200万トンを目指す国の目標の一部を担う可能性) 30 を考慮すると、グローバルな大規模プロジェクトと比較した場合、まだ初期段階にある。今後の技術開発、コスト低減、法整備、そして社会的な受容性の確保が事業化の鍵となる。

水素・アンモニアのサプライチェーン構築に関しても、国内外でエネルギー企業、化学企業、商社などが連携し、製造・輸送・利用に至るバリューチェーン構築に向けた動きが活発化している。出光興産が徳山・周南地区で目指す年間100万トン超のアンモニア供給体制 7 は、地域の産業競争力強化と脱炭素化に貢献する重要な取り組みであるが、海外からの大規模なクリーンアンモニア調達を目指す他のプロジェクトとの連携や競争の中で、いかに安定供給と経済性を両立させるかが課題となる。

2.2.2 資源循環

資源循環、特にケミカルリサイクルの分野では、欧米の大手化学・エネルギー企業が先行して技術開発と商業化を進めている。

BASFは「ChemCycling®」プロジェクト 32 を推進し、熱分解技術(Pyrolysis)を用いて混合プラスチック廃棄物や廃タイヤから得られる熱分解油を、自社の統合生産拠点(Verbund)に投入し、マスバランス方式で認証されたリサイクル製品(Ccycled®製品)を幅広い用途(包装材、自動車部品、医療用など)に供給している 32。Quantafuel、ARCUS、Pyrum、New Energyといった技術パートナーとの連携により、原料となる熱分解油の供給体制を構築し、商業規模での展開を進めている 33。Dow Chemicalも、ケミカルリサイクル技術への投資やスタートアップ企業との連携を進めている 34。Shellは、イタリアのRES社が建設中の熱分解プラント(年間2万トンの廃プラ処理、1.5万トンの熱分解油生産)から生産される熱分解油の全量を購入する契約を締結した 35。Nesteは、廃プラスチックだけでなく、廃タイヤ由来の熱分解油を自社製油所で処理し、新たなプラスチックや化学品の原料として供給する実証にも成功している 36。BPも、英国で熱分解技術を用いたプラスチックリサイクルプロジェクトを計画している 38

これらのグローバル企業の動きと比較すると、出光興産がHiCOP技術 15 を用いて目指す年間2万トンの処理能力 13 は、商業化の第一歩として位置づけられる規模である。BASFのように多様な用途への展開や、Nesteのように多様な廃棄物への適用といった点で、今後の技術開発と事業展開のポテンシャルを探る必要がある。一方で、出光興産の強みは、既存の石油精製・石油化学インフラを有効活用できる点 15 にあり、これは効率的な事業立ち上げに繋がる可能性がある。国内の化学業界全体としても、ケミカルリサイクルの社会実装に向けた技術開発や連携が進められており 5、出光興産はその中で重要な役割を担うことが期待される。

プラスチック資源循環に関しては、日本国内では「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」(プラ新法)が施行され、排出抑制、再商品化、再生材利用の促進が求められている 13。出光興産の廃プラスチック排出量削減の取り組み 13 は、この法制度への対応の一環である。他社のリサイクル目標や実績との比較においては、各社の事業内容や報告範囲が異なるため単純比較は難しいが、ケミカルリサイクルによる2万トン/年目標 13 は、国内における具体的な数値目標として注目される。

2.2.3 生物多様性保全

生物多様性保全の分野では、特に工場緑地の管理・活用において先進的な事例が見られる。

トヨタ自動車は、「自然と共生する工場」をコンセプトに、各工場でビオトープの造成・管理、地域固有種の保全(例:堤工場のウシモツゴ、ミナミメダカ)、生態系モニタリング、地域住民や専門家との連携、植樹活動などを積極的に展開している 41。堤工場の「びおとーぷ堤」は環境省の「自然共生サイト」にも認定されており 41、その取り組みは国内外から高く評価されている。

サントリーホールディングスは、「天然水の森」活動を通じて、水源涵養機能の維持・向上と生物多様性の保全を両立させる取り組みを長年にわたり実施している 44。科学的なモニタリング調査に基づき、森林の状況に応じた適切な管理(間伐、植樹、下草刈り、獣害対策など)を行い、多様な生物が生息できる豊かな森づくりを目指している 45。地域固有の遺伝子に配慮した苗木づくりや、猛禽類(ワシ・タカ)の子育て支援 47、水田ビオトープでの有機農法支援 45 など、多岐にわたる活動を展開している。

これらの先進事例と比較すると、出光興産の工場緑地管理 20 は、SEGES認証 20 や自然共生サイト認定 20 を受けている点、地域特性に応じた多様な活動(希少種保護、地域連携、環境教育)を展開している点などで、国内トップレベルの実践と言える。特に、北海道製油所や愛知事業所の取り組みは、トヨタやサントリーの事例にも匹敵する先進性を持っている。今後は、これらの拠点で培われた知見やノウハウを他の拠点へ横展開するとともに、生態系サービスの定量的な評価や、より具体的な保全目標の設定などが期待される。

TNFD/LEAPアプローチの適用に関しては、まだ比較的新しい枠組みであるため、業界横断的なベストプラクティスは確立されていない状況である。しかし、日産化学 48 や東京海上ホールディングス 49 など、一部の先進企業がLEAPアプローチを用いた分析と開示を開始している。これらの企業は、バリューチェーンにおける自然への依存・影響を特定し、優先地域や重要課題を絞り込み、リスク・機会評価を進めている。出光興産もLEAPアプローチの適用に着手した 20 ことは前向きな動きであり、今後はこれらの先行事例も参考にしながら、分析の深度化と開示の具体化を進めることが求められる。TNFDが公表した石油・ガスセクター向けの業種別ガイダンス 50 を活用し、セクター特有の課題(例:土地利用変化、水ストレス、排出物・廃棄物による影響など)に対応した評価と開示を行うことも有効であろう。

これらのベストプラクティスとの比較から、出光興産は気候変動対策や資源循環の分野では、グローバルな先行企業を追随しつつ、自社の強みを活かした独自のアプローチを確立していく必要があることが示唆される。例えば、SAFやCCUSでは技術導入や規模拡大が課題となる一方、ケミカルリサイクルにおける既存インフラ活用 15 やCNXセンター構想 7 は独自性を発揮できる可能性がある。生物多様性の分野では、既に高いレベルにある工場緑地管理 20 をさらに発展させ、TNFD対応を通じてバリューチェーン全体での取り組みを強化することが、差別化と企業価値向上に繋がる可能性がある。

2.3 主要競合他社との比較分析

2.3.1 競合企業の特定

出光興産の事業領域、特に国内における石油製品の精製・販売(元売り事業)および基礎化学品事業を考慮すると、主要な競合企業としてENEOSホールディングス株式会社(以下、ENEOS)およびコスモエネルギーホールディングス株式会社(以下、コスモエネルギー)が挙げられる 51。これら3社は、国内燃料油市場において大きなシェアを有し、製油所運営、サービスステーション網展開、石油化学事業など、多くの面で事業が重複している。国際石油開発帝石株式会社(INPEX)も、上流(開発・生産)に強みを持つものの、エネルギー供給企業として競合関係にある 51

石油化学分野に限定すれば、製品群によっては三菱ケミカルグループ、三井化学株式会社、住友化学株式会社といった総合化学メーカーも競合となりうる 5。また、出光興産グループのPSジャパン株式会社は、ポリスチレン市場において他のメーカーと競合している 56。本分析では、特に事業構造や市場での競合関係が強いENEOSとコスモエネルギーを主要な比較対象とする。

2.3.2 競合企業の環境戦略と取り組み

ENEOSは、石油元売り業界のリーディングカンパニーとして 54、「エネルギー・素材の安定供給」と「カーボンニュートラル社会の実現」の両立を掲げ、サステナビリティへの取り組みを強化している 57。気候変動対策としては、2040年度のカーボンニュートラル達成(Scope1+2)を目標とし、省エネルギーの推進、CCUS、水素サプライチェーン構築(国内外での製造・輸送・利用)、合成燃料の開発・製造、SAFの製造・供給、再生可能エネルギー事業の拡大(洋上風力など)といった多岐にわたる取り組みを進めている 58。資源循環に関しても、廃プラスチックの油化・原料化技術(ケミカルリサイクル)の開発や、バイオマスプラスチック原料の製造・供給などに取り組んでいる 58。生物多様性については、具体的な方針や取り組みがサステナビリティ報告書等で開示されていると考えられるが、提供された情報からは詳細を確認できなかった 58。ENEOSはグループ内にENEOSマテリアル 57 やENEOSリニューアブル・エナジー 59 といった専門事業会社を有し、それぞれの分野での取り組みを加速させている点も特徴である 58

コスモエネルギーは、「地球と人間と社会の調和と共生」をグループ理念に掲げ、CSR経営、サステナブル経営を重視している 60。気候変動対策では、2050年のカーボンネットゼロ宣言を行い 63、その実現に向けたロードマップを策定している。特に再生可能エネルギー事業に注力しており、陸上・洋上風力発電事業を国内外で積極的に展開している点が強みである。SAFについても、自社製油所での生産に向けた検討や供給体制構築を進めている。資源循環や生物多様性に関する具体的な取り組みについては、マテリアリティ(重要課題)として認識し、環境負荷低減や環境保全活動を進めている 62 が、提供された情報からはENEOS同様、詳細な内容は確認できなかった 63。コスモエネルギーの特徴として、非財務情報(ESGデータ)の収集・管理プロセスをシステム化し、データドリブンなサステナブル経営を推進しようとしている点が挙げられる 60

出光興産の取り組みと比較すると、3社ともにカーボンニュートラル目標を掲げ、SAF、水素・アンモニア、CCUS、再生可能エネルギー、ケミカルリサイクルといった次世代技術・事業への投資を進めている点で共通している。ただし、重点領域やアプローチには差異も見られる。例えば、再生可能エネルギーでは、出光が地熱やバイオマス、営農型太陽光など多様な電源開発を進める 7 のに対し、コスモは風力発電に特に強みを持つ 63。ケミカルリサイクルでは、出光が自社技術(HiCOP)を軸に商業化を目指す 15 のに対し、ENEOSも独自の技術開発を進めている。目標の野心度や投資規模、具体的なロードマップの開示状況なども比較検討する上で重要なポイントとなる。

2.3.3 環境スコアのベンチマーキング

外部のESG評価機関によるスコアやレーティングは、企業の環境パフォーマンスを客観的に比較・評価する上での参考情報となる。

CDP(旧Carbon Disclosure Project)は、企業の気候変動、水セキュリティ、フォレストに関する情報開示を評価する国際的なNGOである。CDP気候変動スコアに関して、過去のランキング情報などを見ると、出光興産、ENEOS、コスモエネルギーの評価は変動しており、必ずしも一貫した序列があるわけではない 64。例えば、2023年のWorld Benchmarking Alliance(WBA)による石油・ガス企業の低炭素化移行ランキング(CDPの評価手法ACTを採用)では、コスモエネルギーが15位と躍進した一方、ENEOSは25位、出光興産は32位と評価された 70。GXリーグのウェブサイトに掲載されている情報によれば、出光興産のCDP気候変動スコアは「B」評価となっている 71。これらの情報は、評価対象年や評価手法によって結果が異なる可能性がある点に留意が必要である。

MSCI ESG Ratingsは、企業のESGリスクと機会への対応力を評価する指標である。出光興産は、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も採用する「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」の構成銘柄に選定されており 72、一定のESG評価を得ていることがうかがえる。コスモエネルギーも、FTSE Russell社のESG指数「FTSE4Good Index Series」に長年選定されている 74。ただし、MSCIによる具体的なレーティング(AAA~CCC)や、3社の直接比較に関する公開情報は限定的である 69

Sustainalytics ESG Risk Ratingsは、企業が直面するESGリスクの大きさ(エクスポージャー)と、そのリスク管理能力を評価する指標である。2023年から2025年初頭にかけての評価(評価時期は各社で異なる)を見ると、出光興産はESGリスクレーティングが41.0で「Severe(深刻)」、業種(Refiners & Pipelines)内ランクは190社中141位であった 77。コスモエネルギーも41.3で「Severe」、業種内ランクは191社中148位と評価されている 78。一方、ENEOSは31.3で「High(高い)」、業種内ランクは191社中62位となっており、出光興産やコスモエネルギーと比較してリスク評価がやや良好であった 79

これらのスコアやレーティングは、評価機関の評価基準や重点項目、評価時期によって結果が変動するため、絶対的な評価として捉えるべきではない。しかし、複数の評価を参照することで、出光興産のESGパフォーマンスが、国内の主要競合他社やグローバルな同業他社と比較して、どの程度の水準にあるのか、また、どのような分野に強みや弱みがあるのかについて、一定の示唆を得ることができる。特にSustainalyticsの評価 77 では、出光興産とコスモエネルギーが「Severe」リスクと評価されており、これはグローバルな同業他社と比較した場合、ESGリスク管理の面で改善の余地が大きいことを示唆している。WBAランキング 70 においても、出光興産は中位以下の評価に留まっている。これらの評価は、具体的な環境対策の取り組み内容だけでなく、情報開示の質と量、リスク管理体制、コーポレートガバナンスなども総合的に反映されるため、出光興産にとっては、これらの側面も含めたESGパフォーマンス全体の向上と、その成果を外部のステークホルダーに対して効果的に伝達していくコミュニケーション戦略が、今後の評価改善に向けて重要となる。特に、Sustainalyticsなどの評価において相対的に低い評価を受けている要因(例えば、炭素関連リスク、排出物・排水・廃棄物管理など)を特定し、具体的な改善策を講じることが、スコア向上に直接的に繋がる可能性がある。

第3部:課題と提言

3.1 出光興産が直面する環境課題

これまでの分析を踏まえ、出光興産が環境分野において直面している主要な課題を以下に整理する。

気候変動対応においては、最も大きな課題は、掲げている野心的な温室効果ガス削減目標(2030年度にScope1+2で2013年度比46%削減)と、現時点での実績(2023年度で同14.6%削減)との間に存在する大きなギャップをいかに埋めるかである 7。目標達成は、計画中のSAF、アンモニア、CCUSといった大規模な次世代エネルギー・技術プロジェクトの計画通りの実行と効果発現に大きく依存しているが、これらのプロジェクトには技術的な不確実性、高額な投資コスト、事業化までの期間といった実行リスクが伴う 7。また、総排出量の大部分を占めるScope3排出量、特に製品使用段階での排出削減に向けた、より具体的かつ効果的な戦略の深化も課題である。これらの大規模投資を支えるためのトランジションファイナンス 4 を継続的に確保していくことも重要となる。

資源循環の分野では、中核と位置づける油化ケミカルリサイクル事業(HiCOP) 15 の商業化に向けた課題が多い。技術的な安定稼働に加え、原料となる多様な組成の使用済みプラスチックを、安定的かつ目標とする規模(2万トン/年)で確保できるかどうかが大きな課題である 13。また、生成されるリサイクル製品(化学品、燃料油)の品質を確保し、需要家を開拓して経済的に持続可能な事業モデルを確立することも不可欠である 13。ソーラーパネルや全固体電池のリサイクルについても、技術開発から事業化への道筋を具体化し、必要な投資判断を行っていく必要がある 13

生物多様性の保全に関しては、TNFD対応に着手したものの 20、バリューチェーン全体、特に影響が大きいと考えられる上流の資源調達(石炭、将来的なバイオマス原料など)におけるリスクと機会の評価を深化させ、具体的な対応策に繋げていくことが今後の課題である。また、先進的な工場緑地管理を行っている一方で、その保全効果を示す定量的な目標設定や進捗状況の開示はまだ十分とは言えず、透明性の向上が求められる。

これらの分野横断的な課題として、事業ポートフォリオの転換に伴う巨額の投資(2030年までにCN関連で8,000億円規模) 7 を、適切なタイミングで実行し、確実に回収していくという経営判断の難しさがある 3。また、ESG評価機関からの評価(特にSustainalyticsなど) 77 を向上させる必要性や、環境パフォーマンスに関する情報開示、特に定量データの網羅性と透明性をさらに高める必要性も指摘できる。そして、これらの変革を推進するためには、従業員の意識改革や新たなスキルセットの獲得といった組織・人材面での対応も不可欠となる 2

3.2 今後の推奨事項

上記の課題を踏まえ、出光興産が今後、環境パフォーマンスをさらに向上させ、持続的な企業価値創造に繋げていくために推奨される事項を以下に提案する。

気候変動対応に関しては、まず、目標達成の鍵を握る大規模プロジェクト(SAF、アンモニア、CCUS等)について、技術開発、コスト、スケジュール等に関するリスク管理体制を一層強化し、その進捗状況や課題について、ステークホルダーに対する透明性の高い情報開示を継続することが重要である。Scope3排出削減に向けては、製品ポートフォリオ転換戦略(例:低炭素製品比率の向上目標設定など)をより具体化し、その効果を定量的に示すとともに、必要に応じてCarbon Intensity目標の見直しも検討すべきである。同時に、既存事業である製油所等における省エネルギー投資や燃料転換など、足元の排出削減努力も着実に継続・強化していく必要がある。

資源循環分野では、ケミカルリサイクル事業の原料となる使用済みプラスチックの安定確保に向けて、複数の自治体やリサイクラーとの連携を強化・多様化し、広域的な回収ネットワークの構築を目指すべきである。また、リサイクル製品の品質向上とコスト低減を進めるとともに、需要家となる企業との共同での用途開発や長期契約などを通じて、安定した市場を創出していく必要がある。ソーラーパネルや電池リサイクルについては、技術開発の進捗を踏まえつつ、事業化に向けた具体的なロードマップと投資計画を早期に策定し、実行に移すことが望ましい。

生物多様性保全については、TNFD/LEAPアプローチに基づく分析を加速させ、特にリスクが高いと想定されるバリューチェーン上流(資源調達地域など)における依存度・影響度・リスク・機会評価の結果を具体的に開示すべきである。その上で、生物多様性に関する定量的な目標(例:「No Net Loss(損失ゼロ)」や「Net Positive Impact(正味プラス効果)」を目指すコミットメント、具体的な指標設定)を導入し、その達成に向けたモニタリング体制を強化することが推奨される。既に高い評価を得ている工場緑地管理のノウハウやベストプラクティスは、国内外の他の事業拠点へ積極的に展開していくべきである。

情報開示とエンゲージメントの強化も不可欠である。ESGデータブックや統合報告書において、特に生物多様性や資源循環の詳細(例:リサイクル原料の使用率、保全活動による生態系指標の変化など)に関する定量データの網羅性を向上させるべきである。CDP、MSCI、Sustainalyticsといった主要なESG評価機関との対話を強化し、評価基準や重点項目を理解した上で、自社の取り組みや進捗状況を的確に伝え、評価改善に向けた戦略的なアプローチをとることが有効である。さらに、投資家、顧客、地域社会といった多様なステークホルダーとの建設的な対話を継続し、同社の環境戦略や事業ポートフォリオ転換に対する理解を深め、協働を促進していくことが重要となる。

結論

分析結果の要約と将来展望

本報告書では、出光興産の環境パフォーマンスについて、「気候変動」「資源循環」「生物多様性」の3分野を中心に包括的な分析を行った。分析の結果、同社がこれらの環境課題に対して具体的な目標を設定し、事業ポートフォリオの転換と連動させながら、多岐にわたる意欲的な取り組みを推進していることが明らかになった。特に、既存の製油所・事業所を次世代エネルギー供給拠点へと転換する「CNXセンター化構想」、独自の油化技術「HiCOP」を核としたケミカルリサイクル事業の商業化、そして創業以来の理念に基づく先進的な工場緑地の管理・保全活動は、同社の環境戦略における注目すべき柱である。

一方で、いくつかの課題も浮き彫りになった。気候変動分野では、意欲的な2030年削減目標と現状の実績との間に乖離があり、目標達成は将来の大規模プロジェクトの成否に大きく依存している。資源循環分野では、ケミカルリサイクル事業の経済性確立と原料の安定確保が大きなハードルとなっている。生物多様性分野では、TNFD対応を通じたバリューチェーン全体でのリスク・機会評価の深化と、定量的な目標設定・開示の充実が今後の課題である。また、主要な競合他社であるENEOSやコスモエネルギーとの比較、あるいはグローバルなベストプラクティスとの比較においては、分野によって先行している側面と、さらなる改善が求められる側面の両方が見られた。Sustainalyticsなどの外部ESG評価においても、改善の余地が示唆されている。

出光興産は現在、「責任ある変革者」として、化石燃料依存からの脱却と持続可能なエネルギー・素材供給体制への移行という、極めて困難かつ重要な挑戦の途上にある。この変革を成功させ、長期的な企業価値向上を実現するためには、本報告書で指摘した環境課題への取り組みを一層加速・深化させることが不可欠である。技術開発、巨額の投資、事業モデルの構築、そして組織文化の変革といった多岐にわたる要素を統合し、リスクを適切に管理しながら新たな事業機会を確実に捉えていく、戦略的かつ着実な実行力が求められる。同社が掲げる「人間尊重」の理念に基づき、環境と社会に対する責任を果たしつつ、未来に向けた「変革を形に」していくためには、今後も継続的な努力と、ステークホルダーに対する透明性の高い情報開示、そして建設的な対話が不可欠となるだろう。その進捗を引き続き注視していく必要がある。


引用文献

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