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積水ハウス株式会社:環境イニシアチブ、パフォーマンス、および業界ベンチマーキングに関する包括的分析レポート

更新日:2025年5月1日
業種:建設業(2222)

序論

本報告書の目的と構成の概説

本報告書は、積水ハウス株式会社(以下、積水ハウス)の環境経営、特に「気候変動」「資源循環」「生物多様性」の3分野における取り組み、パフォーマンス、リスク・機会、および業界内での位置づけを、学術的視点から包括的に分析することを目的とする。建設・住宅業界は、その事業活動を通じて地球環境に多大な影響を与えるセクターであり、持続可能な社会の実現に向けた企業の責任はますます重要になっている。本分析を通じて得られる知見は、積水ハウスの環境スコアリング評価や、今後の持続可能な経営戦略策定に資する詳細な情報を提供することを目指すものである。報告書の構成として、まず第1部では積水ハウスが展開する具体的な環境戦略と主要なイニシアチブについて、気候変動、資源循環、生物多様性の各分野に分けて詳述する。続く第2部では、同社が直面する可能性のある環境関連のリスクと機会を分析し、国内の主要競合企業との比較、業界全体のベストプラクティス、さらには外部ESG評価機関による評価結果を用いたベンチマーキングを行う。最後に第3部では、現在同社が抱える環境課題を特定し、それらを踏まえた戦略的提言を行うと共に、本報告書全体の結論を述べる 1

積水ハウスは、企業価値創造に向けた経営戦略や財務・非財務情報を統合的に報告する媒体として、2021年度より従来の統合報告書とサステナビリティレポートを融合した「Value Report」を発行している 5。これは、ESG(環境・社会・ガバナンス)経営と企業価値創造の連関性を重視する現代的な企業報告の潮流に沿ったものであり、ステークホルダーに対する透明性の高い情報開示を目指す姿勢を示すものである 3。同社の「Value Report 2024」は、第4回「日経統合報告書アワード2024」において最高評価であるグランプリS賞を受賞しており、その情報開示の質と内容は高く評価されている 9

積水ハウスの事業概要と建設・住宅業界における環境課題の文脈

積水ハウスは、戸建住宅事業を中核に、賃貸住宅、分譲マンション、リフォーム、不動産フィー、都市開発、さらには海外事業まで幅広く展開する日本を代表する大手住宅メーカーである 11。建設・住宅業界は、その性質上、大量の資源を消費し、建設・解体プロセス及び建物の運用段階で多くの廃棄物と温室効果ガス(GHG)を排出する産業である 16。したがって、気候変動の緩和と適応、資源の枯渇防止と循環利用の促進、そして生物多様性の損失阻止といった地球規模の環境課題に対して、この業界が果たすべき役割と責任は極めて大きい。

特に日本国内においては、2050年カーボンニュートラルの達成という国家目標が掲げられており、エネルギー消費量の約3割を占める建築物分野での取り組みが急務とされている 18。これを受け、2025年4月からは原則全ての新築住宅・非住宅建築物に対して省エネルギー基準への適合が義務付けられる予定であり、さらに2030年度以降に新築される住宅・建築物については、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)またはZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)基準の水準の省エネルギー性能確保が目指されている 18。加えて、住宅のライフサイクル全体でのCO2排出量をマイナスにするLCCM(ライフサイクルカーボンマイナス)住宅への関心も高まっている 19。また、自社の直接排出(Scope1, 2)だけでなく、サプライチェーン全体でのGHG排出量(Scope3)、特に資材調達(カテゴリ1)や販売した製品の使用(カテゴリ11)に伴う排出量の算定と削減が、企業にとって重要な課題となっている 21

このような業界背景において、省エネルギー基準の義務化やZEH普及政策といった規制強化は、積水ハウスのように高い技術力を持ち、ZEH普及などで先行している企業にとっては、市場での競争優位性をさらに高め、シェアを拡大する好機となり得る。一方で、これらの基準への対応が遅れる企業にとっては、市場からの退出を迫られるリスクともなり得るだろう。日本政府が2025年に省エネ基準適合を義務化し、2030年以降の新築住宅にZEH水準の性能を求める方針であること 18、そして積水ハウスが既に戸建住宅において極めて高いZEH普及率を達成していること 13 を踏まえると、規制強化は同社の標準仕様が市場標準となる方向へと作用する可能性があり、これは高い技術力と先行投資が競争優位に直結する状況を示唆している。

さらに、建設・住宅業界におけるGHG排出量の大部分がサプライチェーン排出量(Scope3)、特に資材調達に関連するカテゴリ1と、顧客が居住する際のエネルギー消費に関連するカテゴリ11によって占められているという事実は、これらの領域における削減努力が業界全体のカーボンニュートラル達成に向けた鍵であることを示している。建設業界ではScope3排出量が全体の過半、時には9割を占めるとの指摘もあり 22、積水ハウス自身のデータからもScope3カテゴリ11の排出量が大きいことが示唆されている 13。したがって、低炭素素材の調達推進やサプライヤーとの協働による排出削減(カテゴリ1対策)、そしてZEHやLCCM住宅の更なる普及(カテゴリ11対策)が、同社及び業界全体の持続可能性にとって不可欠な戦略となる。

第1部:積水ハウスの環境戦略と主要イニシアチブ

1. 気候変動への対応

積水ハウスは、企業の社会的責任として、また持続的な成長のための経営課題として、気候変動問題に早期から取り組んできた。1999年には業界に先駆けて「環境未来計画」を発表し、環境憲章と環境基本方針を制定、環境対応を統合的に管理する体制を構築した 15。その後も段階的に取り組みを強化し、2008年には住宅のライフサイクル全体におけるCO2排出量ゼロを目指す「2050年ビジョン」を宣言し、脱炭素経営へと明確に舵を切った 15。この長期ビジョンは、同社の気候変動に対する基本的な考え方とコミットメントを示すものである。

1.1. 温室効果ガス排出削減目標(SBT 1.5℃目標)と進捗

積水ハウスは、パリ協定の目標達成に貢献するため、科学的根拠に基づく削減目標(SBT: Science Based Targets)を設定し、その達成に向けて取り組んでいる。具体的には、事業活動に伴う直接・間接排出量(Scope 1およびScope 2)について、2030年までに2013年度比で75%削減するという目標を掲げている 41。これは、当初設定していた50%削減目標 40 を、2022年度に達成したことを受けて、より野心的な水準へと上方修正したものである 41。この目標修正は、これまでの削減努力が計画以上に進展していること、特に後述する再生可能エネルギー導入(RE100)の前倒し達成が見込まれること 41 などが背景にあると考えられる。これは、同社の気候変動対策に対する強い意志と、目標達成に向けた実行能力の高さを示唆している。

サプライチェーン排出量(Scope 3)に関しても、SBT認定を受けた目標を設定している。特に排出量の大きい「販売した製品の使用」(カテゴリ11)については、2030年までに2013年度比で55%削減を目指す 41。2023年度実績では、既に56%削減を達成しており、目標を上回る進捗を見せている 41。このカテゴリ11における大幅な削減達成は、同社が強力に推進してきたZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及戦略が、居住時のエネルギー消費量削減という形で直接的な成果を上げていることを明確に示している。ZEHは、高い断熱性能と太陽光発電などの創エネルギー設備により、居住時のエネルギー消費を実質ゼロにすることを目指す住宅であり 13、積水ハウスの戸建住宅におけるZEH普及率は95% 41 と極めて高い水準にあることから、カテゴリ11の削減実績はZEH普及の直接的な結果であると合理的に推測できる。これは、製品ライフサイクル全体での排出量削減において、ZEH化がいかに重要な役割を果たすかを強調するものである。

その他のScope 3カテゴリ、特に「購入した製品・サービス」(カテゴリ1)についても、サプライヤーとの協働を通じて削減を目指している 15。サプライヤーに対してSBT水準の目標設定を働きかけるなどのエンゲージメント活動を進めている 47。これらの目標は、全体としてSBTイニシアチブから、気候変動による世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して1.5℃に抑える努力目標(1.5℃目標)に整合するものとして認定を受けている 41

1.2. 再生可能エネルギー導入戦略(RE100)の推進状況

積水ハウスは、事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際的なイニシアチブ「RE100」に、2017年に建設業界としては日本で初めて加盟した 13。当初の目標は2040年までの100%達成、中間目標として2030年までに50%達成であった 40。しかし、その後の取り組みは目覚ましく、2023年度実績において既に事業活動で使用する電力の86%を再生可能エネルギー由来のものに切り替えており、最終目標である100%達成は当初計画より10年ほど前倒しできる見込みであると報告されている 41

このRE100目標の大幅な前倒し達成見込みには、「積水ハウスオーナーでんき」という同社独自のスキームが大きく貢献していると考えられる。これは、顧客である住宅オーナーを巻き込んだユニークな再生可能エネルギー調達モデルであり、その有効性が実証されていると言える。具体的には、同社が過去に販売した太陽光発電搭載住宅のうち、固定価格買取制度(FIT)の買取期間が満了した住宅(卒FIT住宅)のオーナーから、余剰電力を市場価格よりも有利な条件で買い取り、それを自社の事業所などで使用するという仕組みである 12。このスキームは、再生可能エネルギーの調達コストを抑制しつつ 12、オーナーにとっては売電収入が増加するというメリットを提供することで、顧客満足度の向上にも繋がっている 12。積水ハウスの高いZEH普及率 41 は、将来的に卒FITを迎える住宅、すなわち買取可能な余剰電力の供給源が豊富に存在することを意味しており、これがRE100目標達成を加速させる大きな要因となっていると推測される。

1.2.1. 「積水ハウスオーナーでんき」等による再エネ調達

「積水ハウスオーナーでんき」は、同社が推進するRE100達成のための重要な柱の一つである。この仕組みでは、積水ハウスが施工した太陽光発電システム搭載住宅等のオーナーから、FIT制度の買い取り期間が満了(卒FIT)した余剰電力を、提携する小売電気事業者が買い取り、積水ハウスグループのオフィス、工場、住宅展示場、さらには施工現場などで利用する 12。特筆すべきは、その買取価格であり、例えば1kWhあたり11円といった、地域の電力会社が提示する一般的な卒FIT電力の買取価格(通常7~9円程度)よりも高く設定されている点である 12。これにより、住宅オーナーは売電収入を増やすことができ、顧客満足度の向上に寄与する。一方で、積水ハウス側も、小売電気事業者との大規模かつ長期的な契約を通じて調達スキームを最適化することにより、従来の電力購入コストと比較して負担を増やすことなく、再生可能エネルギー由来の電力を安定的に確保できる構造を構築している 12。この取り組みは、顧客との良好な関係性を基盤として、自社のScope 2排出量削減と再生可能エネルギー導入目標達成を同時に推進する、先進的かつ効果的な事例として評価できる 15

1.3. ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及展開

積水ハウスは、脱炭素社会の実現に向けた最重要戦略の一つとして、ZEHの普及に注力している。ZEHは、住宅の高断熱化と高効率設備の導入による「省エネ」、及び太陽光発電システム等による「創エネ」を組み合わせることで、年間の一次エネルギー消費量の収支を正味(ネット)でゼロ以下にすることを目指す住宅である 14。同社は2013年からZEHブランド「グリーンファースト ゼロ」を市場に投入し、その普及を強力に推進してきた 13

ZEHの推進は、単に環境負荷を低減するだけでなく、居住者にとっても多くのメリットをもたらす。高い断熱性能は、夏涼しく冬暖かい快適な室内環境を実現し、部屋間の温度差が原因で起こるヒートショックのリスクを低減するなど、健康面での効果も期待できる 13。また、省エネと創エネにより光熱費を大幅に削減できる経済的メリットも大きい 12。さらに、太陽光発電と蓄電池を組み合わせることで、停電時にも電力を確保できるレジリエンス(防災力)の向上にも貢献する 45。積水ハウスのデータによれば、ZEH比率の向上は、住宅の平均販売単価の上昇や会社全体の営業利益率の改善とも連動しており 12、環境性能という付加価値が市場で評価され、企業の収益性にも貢献していることが示唆される。このように、ZEHの推進は、環境貢献、顧客価値向上(快適性、経済性、安全性)、そして企業価値向上(収益性、ブランドイメージ)を同時に実現する、持続可能なビジネスモデルとして機能していると言える。

1.3.1. 戸建住宅における高いZEH比率の達成

積水ハウスの戸建住宅におけるZEH普及の実績は目覚ましい。2023年度においては、北海道を除く地域での請負・建売住宅を合わせたZEH比率が95%に達した 41。これは、日本政府が掲げる「2030年度以降に新築される住宅について、ZEH基準の水準の省エネルギー性能を確保する」という目標 18 を大幅に前倒しで達成していることを意味する 13。ZEHの発売を開始した2013年度からの累積供給棟数は、2023年3月末時点で76,509棟に上る 13。また、ZEH化と並行して、エネルギー自給自足型住宅の実現に向けた蓄電池の導入も積極的に推進しており、2023年度の新築戸建住宅における蓄電池(V2H含む)の契約ベース採用率は87%と、非常に高い水準となっている 45。これは、顧客のエネルギーに対する意識の高まりと、災害への備えとしてのレジリエンス強化へのニーズを反映したものと考えられる。

1.3.2. 賃貸・分譲集合住宅へのZEH適用拡大

積水ハウスは、戸建住宅で培ったZEHの技術とノウハウを、賃貸住宅や分譲マンションといった集合住宅分野にも積極的に展開している。賃貸住宅ブランド「シャーメゾン」においては、「シャーメゾンZEH」として、入居者が太陽光発電のメリット(売電収入や停電時の電力利用)を直接享受できる「住戸ZEH」方式を中心に推進している 14。これは、単に建物全体のエネルギー収支をゼロにする「住棟ZEH」よりも入居者への訴求力が高く、物件価値の向上や長期的な安定経営に繋がると考えられている 15。2023年度の実績では、ZEH Ready以上の基準を満たす賃貸住戸の受注比率は76%(15,191戸)に達した 41

分譲マンションブランド「アトラス」シリーズにおいてもZEH化は進んでおり、日本初の全住戸ZEH分譲マンションを供給するなど、業界をリードする取り組みが見られる 51。2023年度には、ZEH Oriented以上の基準を満たす分譲マンションの販売比率は100%(16棟873戸竣工)を達成し、累積供給戸数も1,458戸(27棟)となった 41。賃貸住宅や分譲マンションにおけるZEH化の推進は、より多くの居住者にZEHのメリット(光熱費削減、快適性向上)を提供すると同時に、都市部におけるCO2排出量削減に大きく貢献するものであり、ZEH普及の裾野を広げる上で重要な戦略と位置づけられる 15

1.4. LCCM(ライフサイクルカーボンマイナス)住宅への先進的取り組み

積水ハウスは、ZEHのさらに先を見据えた取り組みとして、LCCM(ライフサイクルカーボンマイナス)住宅にも早くから注目してきた。LCCM住宅とは、居住時のエネルギー消費(運用段階)だけでなく、資材製造・建設段階から、将来の解体・廃棄段階に至るまでの住宅の全ライフサイクルを通じて、CO2排出量の収支をマイナスにすることを目指す、極めて先進的な環境配慮型住宅の概念である 27。これは、運用時のエネルギー収支ゼロを目指すZEHよりも、さらに包括的で高いレベルの環境性能を要求される 55

積水ハウスは、2011年から大阪ガスと共同で実証実験住宅「スマートエネルギーハウス」の居住実験を開始し、この住宅において、2012年に(一財)建築環境・省エネルギー機構(IBEC)が創設した「LCCM住宅認定制度」の第1号認定を取得した 59。この実証実験では、燃料電池、太陽電池、蓄電池の「3電池連携」とHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)による最適制御、高断熱・高気密仕様などにより、大幅な省エネ・CO2削減効果と光熱費削減効果(収支プラス転換)が確認された 64

LCCM住宅は、国のエネルギー政策や住宅政策のロードマップにおいても、2050年のカーボンニュートラル社会実現に向けた重要な要素として位置づけられており、将来的な普及が期待されている 31。積水ハウスによる早期からのLCCM住宅への取り組みと認定取得実績は、同社の技術的リーダーシップと、長期的な環境ビジョン「ライフサイクルCO2ゼロ」40 を具現化しようとする強い意志を示すものである。

ただし、LCCM住宅の本格的な普及には課題も存在する。ZEH以上に高性能な断熱材や大容量の太陽光発電システム、場合によっては建設時のCO2排出量が少ない木材の活用 56 などが求められるため、一般的に初期建設コストが高くなる傾向がある 56。また、ライフサイクル全体のCO2排出量を算定・評価するための専門的なノウハウが必要であり、対応可能な設計者や施工事業者が限られるという側面もある 57。さらに、LCCM住宅のメリットや不動産市場における適正な評価がまだ十分に確立されていないという課題も指摘されている 19。これらの課題を克服し、LCCM住宅を社会に広く普及させていくためには、技術開発によるコスト低減、補助金制度の活用 57、そして消費者や市場に対する価値の浸透が不可欠となるだろう。

1.5. TCFD提言に基づく気候関連財務情報開示

積水ハウスは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に早期から賛同し、気候変動が自社の事業活動や財務状況に与える影響について、積極的な情報開示を行っている 5。TCFD提言は、企業に対し、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標という4つの側面から気候関連情報を開示することを推奨するものである。

同社は、気候変動に伴うリスクとして、物理的リスクと移行リスクの両面を認識し評価している。物理的リスクとしては、台風や豪雨、猛暑といった異常気象の激甚化による、自社工場や開発中の分譲地、管理物件等への直接的な被害、それに伴う工期の遅延やサプライチェーンの寸断、建設現場における熱中症などの労働災害リスクを挙げている 41。具体的な対策として、ハザードマップに基づく土地購入前のリスク評価の義務付けや、建築計画における被害軽減策の導入、事業継続計画(BCP)の策定と定期的な見直しなどを実施している 41。例えば、浸水リスクが指摘される関東工場については、被害損失は保険加入により対応済みであることを確認している 44

移行リスクとしては、炭素税の導入や排出量取引制度の強化といった政策・規制の変更に伴うGHG排出コストの増加、省エネルギー基準の厳格化による設計・建設コストの上昇や既存物件の資産価値低下、環境意識の高まりやESG投資の拡大に伴う市場の変化(例:環境性能の低い物件の競争力低下)、そして企業の環境パフォーマンスに対する評価低下によるレピュテーションリスクや資金調達コストの上昇などを認識している 41

これらのリスクを評価する上で、積水ハウスは将来の気候変動シナリオ(例えば、世界の平均気温上昇が1.5℃または4℃に達するシナリオ 44)を用いた分析を行い、自社の事業戦略の頑健性を評価している。その結果として、同社は、これまで進めてきたZEH化や再生可能エネルギー導入(RE100)といった脱炭素化への先行的な取り組みが、これらのリスクに対する耐性を高めており、現時点においては気候変動による致命的な財務的影響を受ける可能性は低いと結論付けている 44

さらに、積水ハウスのTCFD開示の特徴は、リスク分析に留まらず、気候変動への対応がもたらす事業機会についても積極的に言及している点にある。ZEHやZEBの受注増加、それに伴う賃貸事業収益の向上、断熱改修や再生可能エネルギー設備(燃料電池、蓄電池等)を含む脱炭素リフォーム市場の拡大、RE100推進に伴うエネルギーコスト削減の可能性(特に「積水ハウスオーナーでんき」による低コスト調達)、自社工場における計画的な脱炭素化投資の容易さ、さらには気象災害の多発に伴うインフラ関連工事や廃棄物処理事業の増加といった機会を特定し、これらを成長戦略に結びつけようとしている 41。これは、同社が気候変動対応を単なるリスク管理やコスト要因として捉えるのではなく、むしろ新たな価値創造と持続的な成長を実現するための重要なドライバーとして位置づけていることを示している。環境戦略と事業戦略が不可分一体であり、プロアクティブな環境経営が企業価値向上に直接貢献し得るとの経営判断が明確に示されていると言えるだろう。

2. 資源循環の実現

建設業は、その事業プロセスにおいて大量の天然資源を消費し、同時に多くの廃棄物を排出する産業であるという特性を持つ 16。資源枯渇や廃棄物処理の問題が地球規模で深刻化する中、積水ハウスは、この課題に対する強い問題意識を持ち、創業初期から廃棄物の削減(Reduce)、再利用(Reuse)、再資源化(Recycle)の3Rを推進し、資源の有効活用と循環型社会の構築に貢献することを目指してきた 43

2.1. ゼロエミッションシステムの確立と4部門での達成

積水ハウスの資源循環への取り組みの中核を成すのが、「ゼロエミッションシステム」である。これは、同社の事業活動から発生する産業廃棄物について、単純焼却や埋立処分を行わず、全量を何らかの形で再利用・再資源化することを目指す仕組みである 16。同社は、このゼロエミッションを、まず2002年に部材生産工場で達成し、その後、新築施工現場(2005年)、アフターメンテナンス(2006年)、そして自社物件リフォーム施工現場(2007年)へと段階的に対象範囲を拡大し、主要な4部門において達成を実現した 41

この高度な資源循環体制を支えているのが、全国約20か所に設置された自社運営の「資源循環センター」である 16。各建設現場等から排出される廃棄物は、まず現場で27種類に分別され、これらの資源循環センターに集約される。センターでは、さらに専門的な知見に基づき60~80種類程度にまで細かく再分別され、それぞれの素材特性に応じた最適なリサイクルプロセスへと回される 16

特筆すべきは、積水ハウスが導入している独自の「廃棄物実測システム」である 16。回収される全ての分別袋にはQRコード付きのラベルが貼付され、これにより、どの現場から、どのような種類の廃棄物が、どれだけの量排出されたかという情報がリアルタイムで集計・分析される。この詳細なデータは、単にリサイクル率を管理するためだけでなく、廃棄物の発生状況を正確に把握し、その情報を設計・開発部門や生産工程へとフィードバックすることで、廃棄物そのものの発生を抑制する(リデュース)ための改善活動にも繋げられている 16。自社で資源循環センターを運営し、このようなデータ駆動型のアプローチを採用している点は、廃棄物管理のトレーサビリティを確保し、継続的な改善サイクルを回す上で極めて重要な基盤となっている。これにより、単なるリサイクル率の向上に留まらず、資源効率の最大化と環境負荷の最小化に向けた統合的な取り組みが可能となっているのである 16

2.1.1. 資源循環センターを通じた高度な分別・再資源化

積水ハウスの資源循環センターでは、施工現場での一次分別(27種類)を経た廃棄物を、さらに高度なレベルで分別するプロセスが確立されている。センターに搬入された廃棄物は、熟練した作業員や機械によって、木くず、石膏ボード、金属くず、プラスチック類、ガラスくず、紙くずなど、最大で60~80種類程度にまで細かく仕分けられる 16。この徹底した分別作業が、後工程でのリサイクルの質を高め、より価値の高い再生材を生み出すための鍵となっている。

分別された各廃棄物は、それぞれの特性に応じて最適な方法で再資源化される。例えば、金属くずは有価物として売却され、資源として再利用される 73。木くずはチップ化されて燃料やボード原料に、石膏ボードは粉砕されてセメント原料や地盤改良材に、廃プラスチック類はマテリアルリサイクル(原料としての再利用)やサーマルリカバリー(熱エネルギー回収)に活用される。特に、マテリアルリサイクルが困難な可燃性の廃棄物については、RPF(Refuse derived Paper and Plastic Fuel)と呼ばれる固形燃料を製造し、製紙工場などで化石燃料の代替として利用することで、エネルギーとしての再資源化(サーマルリカバリー)も実現している 73。このRPF化は、廃棄物の容積を大幅に削減(約9分の1)できるため、輸送効率の向上とそれに伴うCO2排出量の削減にも寄与する 73。こうした多岐にわたるリサイクル手法を組み合わせることで、積水ハウスは4部門における再資源化率100%を継続的に達成している 73

なお、関東資源循環センターは、単なる廃棄物処理施設としてだけでなく、住まいのサーキュラーエコノミー移行に向けた研究開発や実証実験の場としても位置づけられており、外部からの視察も受け入れるなど、情報発信拠点としての役割も担っている 16

2.2. 「House to House」プロジェクトによる循環型住宅への移行戦略

積水ハウスは、これまでの廃棄物ゼロエミッションの達成を基盤としつつ、さらに一歩進んだ資源循環のあり方を目指して、「House to House」と名付けられた野心的なプロジェクトを推進している 16。このプロジェクトが目指すのは、2050年までに、住宅を構成する部材の全てをリサイクル由来の材料(リサイクル部材、リユース部材、リニューアブル部材を含む)で賄う「循環する家」を実現することである 16。住宅一棟あたりに使われる部材は3万点以上にも及ぶとされ 16、これら全てを持続可能な資源利用のサイクルに乗せるためには、まさに「つくり方から、つくりなおす」 16 発想の転換と、バリューチェーン全体を巻き込んだ変革が必要となる。

この「House to House」プロジェクトは、従来の廃棄物管理(フローの最適化)の枠を超え、製品(住宅)とその構成部材(ストック)そのものの循環性を追求するものであり、本格的なサーキュラーエコノミーへの移行戦略として位置づけられる 17。地球の限りある資源を大切にし、役割を終えた家の部材が解体・回収され、再び新たな家の資源として生まれ変わり、未来の暮らしを支え続けるという、理想的な循環モデルの構築を目指している 16

この壮大な目標の実現は、積水ハウス一社の努力だけでは到底達成し得ない。住宅を構成する多種多様な部材の循環利用を実現するためには、それらの部材を供給する数多くのサプライヤーとの広範かつ深いレベルでの協働が不可欠となる 16。特に、使用済み製品を回収し、再び同じ製品の原料として利用する「水平リサイクル」 76 は、資源価値を高く維持できる理想的な循環形態であるが、その実現には技術的なハードルが高い。製品の設計段階からリサイクルを考慮した素材選定や構造設計(Design for Circularity)を行う必要があり、これにはサプライヤーとの緊密な連携が欠かせない。また、回収された使用済み部材を効率的に分別し、不純物を除去して再生原料化するための新たなリサイクル技術の開発や、その技術を社会実装するための設備投資も必要となるだろう。積水ハウスが既に実現している水平リサイクルの事例(インシュレーションボード、給水給湯配管、プチプチ® 76)は、特定のサプライヤー(大建工業、ブリヂストン、川上産業)との連携によって達成されており、このアプローチを3万点以上の全部材に展開していくことの困難さと重要性を示唆している。

2.2.1. 水平リサイクル実現に向けたサプライヤーとの協働

「House to House」プロジェクトの重要な柱の一つが、水平リサイクルの推進である。水平リサイクルとは、使用済みの製品や生産工程から出る端材などを回収し、化学的な処理を伴わずに、再び同じ種類の新しい製品の原材料として利用するリサイクル手法を指す 76。これにより、資源の価値を最大限に維持しながら循環させることが可能となる。

積水ハウスは、この水平リサイクルの実現に向けて、主要なサプライヤーとの連携を強化している。具体的な成功事例としては、まず、建築現場で使用される断熱材の一種であるインシュレーションボードについて、大建工業株式会社と協働し、使用済みボードを回収・再資源化して再びインシュレーションボードの原料とする水平リサイクルループを構築したことが挙げられる 78。また、株式会社ブリヂストンとは、住宅の給水給湯設備に使われる樹脂配管について、生産工程で発生する端材や、将来的には解体現場から回収される使用済み配管を原料として、再び新しい配管を製造する水平リサイクルの技術を確立した 76。さらに、梱包材として広く使われる気泡緩衝材「プチプチ®」についても、製造元である川上産業株式会社と協力し、使用済みのプチプチ®を回収・再生し、再び積水ハウス向けのプチプチ®として供給するループリサイクルを推進している 77

これらの先行事例に加え、積水ハウスは現在、他の10社以上のサプライヤーとも、建材のリサイクル技術開発や循環利用に向けた具体的な検討を進めていると報告されている 78。また、サプライヤーに対して、リサイクルしやすいように分別が容易な製品仕様を共同で開発したり、そのような仕様での調達を依頼したりといった働きかけも行っている 41。例えば、過去にはリサイクルが困難だった水道用配管の保温材について、サプライヤーとの協議を通じて接着方法を変更し、手で容易に分解・分別できる仕様へと改良した結果、それが業界標準の一つとなったという事例もある 70。これらの取り組みは、「House to House」の実現に向けたサプライヤーとのパートナーシップの重要性を示すものである。

2.3. 廃棄物削減・リサイクル実績と今後の目標

積水ハウスは、長年にわたるゼロエミッションシステム運用と改善活動を通じて、着実な廃棄物削減と高いリサイクル率を達成してきた。例えば、戸建住宅1棟を建設する際に発生する廃棄物の量は、1999年時点では平均3.3トンであったが、継続的な発生抑制努力により、現在では約半分の1.6トンにまで削減することに成功している 72

グループ全体の廃棄物管理状況を見ると、2023年度には、オフィス、工場、施工・解体現場などから排出された廃棄物の総量は1,144千トンであった。このうち、1,128千トンがリサイクルされ、リサイクル率は98.6%という高い水準を維持している。直接埋立処分された非リサイクル廃棄物は16千トンに留まった 41。これは、前述の4部門におけるゼロエミッション達成 41 がグループ全体のパフォーマンスにも反映されていることを示している。

今後の目標としては、短期・中期的な数値目標に加え、より長期的な視点での目標が設定されている。最も重要な目標は、2050年までに「House to House」プロジェクトを完遂し、「循環する家」を実現することである 16。また、サプライチェーン全体での資源循環を推進するため、主要サプライヤーに対して廃棄物ゼロエミッション目標の設定を働きかけ、その目標設定率を2026年度までに90%に引き上げるという目標も掲げている 79。これらの目標達成に向けて、引き続き資源循環センターの高度化、リサイクル技術の開発、サプライヤーとの連携強化などを進めていくものと考えられる。

3. 生物多様性の保全

積水ハウスは、事業活動が土地利用や資源調達を通じて生物多様性や自然資本に依存し、また影響を与えていることを深く認識している 41。この認識に基づき、単に事業活動による生態系への負の影響を最小化する(No Net Loss)だけでなく、積極的に生態系の価値を高め、自然を回復させる「ネイチャー・ポジティブ」 41 を目指すことを、環境戦略の重要な柱の一つとして位置づけている。その中核となる取り組みが、20年以上にわたり継続されている「5本の樹」計画である。

3.1. 「5本の樹」計画:20年以上にわたる継続と実績

「5本の樹」計画は、積水ハウスが2001年から開始した独自の庭づくり・まちづくりのコンセプトであり、その根底には日本の原風景である里山への学びがある 43。計画の基本的な考え方は、「3本は鳥のために、2本は蝶のために、地域の在来樹種を中心に植える」というものである 43。これは、単に緑を増やすだけでなく、その地域の気候風土に適応し、地域の生態系(特に鳥類や蝶類などの指標生物)と深いつながりを持つ在来種を選ぶことで、生物多様性の保全に実質的に貢献することを目指している 43

この計画は、個々の住宅の庭づくりにおいて顧客と共に進められる。積水ハウスは、顧客に対して在来種の重要性や、庭が地域の生態系の一部となることの意義を説明し、理解と協力を得ながら植栽を進めている 86。その結果、2001年の開始以来、年間約80万本以上のペースで植栽が続けられ、2023年度末時点での累積植栽本数は1,984万本という膨大な数に達している 41。この取り組みは戸建住宅だけでなく、集合住宅や大規模なまちづくりプロジェクトにおける緑地計画にも取り入れられ、日本全国の都市緑化と生物多様性保全に貢献している 87

「5本の樹」計画の成功と持続性は、単なる企業の環境活動という枠を超え、顧客である住宅オーナーを広く巻き込んだ、大規模な市民参加型の生態系保全活動としての側面を持っている点にその特徴がある。実際に庭づくりを行ったオーナーからは、「朝、鳥の声で目覚める」「庭に蝶が来るようになった」といった、自然とのふれあいを通じた暮らしの豊かさを実感する声が寄せられている 87。このような顧客自身の体験価値が、計画への参加意欲を高め、その継続性を支える重要な動機付けとなっていると考えられる。また、積水ハウスが独自に作成・提供している「庭木セレクトブック」 87 は、地域ごとに適した在来樹種の情報や、それぞれの樹木が呼び寄せる可能性のある鳥や蝶の種類などを分かりやすく解説しており、顧客が主体的に庭づくりに参加するための知識を提供し、計画への理解とエンゲージメントを深める上で重要な役割を果たしている。

3.1.1. 生態系ネットワーク形成への貢献

「5本の樹」計画が目指すのは、個々の庭を美しく彩るだけでなく、それらの緑が点から線へ、そして面へと繋がり、都市全体に生態系ネットワーク(エコロジカル・ネットワーク)を形成することである 93。都市部では、開発によって緑地が分断され、生物の移動が妨げられることが生態系劣化の一因となっている。個々の住宅の庭に在来種を中心とした緑を創出し、それらが街路樹や公園、河川敷などの既存の緑と連携することで、鳥や昆虫などが移動し、生息できる空間(コリドー)が生まれ、都市全体の生物多様性の基盤が強化されることが期待される 94

近年、他の大手住宅メーカーも同様のコンセプトに基づく緑化活動を推進している。例えば、旭化成ホームズの「まちもり」 93 や大和ハウス工業の「みどりをつなごう!」 82 なども、在来種の活用や階層構造(高木・中木・低木・地被植物の組み合わせ)による生物多様性への配慮を重視している。これらの企業の取り組みが連携し、相乗効果を生み出すことができれば、都市部における生物多様性の保全と回復に、より大きなインパクトを与える可能性があるとの指摘もある 98

3.2. 生物多様性効果の定量的評価:琉球大学・シンクネイチャーとの連携

積水ハウスは、「5本の樹」計画が実際にどの程度生物多様性の保全に貢献しているのかを客観的かつ科学的に示すため、琉球大学理学部久保田研究室および同大学発のスタートアップ企業である株式会社シンク・ネイチャーと共同で、その効果を定量的に評価する手法の開発に取り組んだ 81。これは、これまで定性的に語られることが多かった企業の緑化活動や生物多様性保全への貢献度を、具体的な数値データに基づいて評価しようとする、世界でも先駆的な試みであった 88

この共同研究では、シンク・ネイチャーが保有する日本全国の生態系に関するビッグデータ(植生、鳥類、蝶類などの分布情報)とAI(機械学習)技術を活用し、積水ハウスが20年以上にわたって蓄積してきた「5本の樹」計画に基づく膨大な植栽データ(樹種、本数、位置情報)を解析した 89。具体的には、特定の樹種がどのような鳥や蝶を引き寄せるかという相関関係をデータに基づいて分析し、植栽パターンと生物多様性指標(例:指標種の出現確率や種数)との関係性をモデル化した 89

この定量評価の結果、いくつかの重要な知見が得られた。まず、「5本の樹」計画に基づき在来種を中心に植栽することで、従来の園芸品種や外来種を中心とした庭づくりと比較して、地域の在来樹種の多様性が平均で約10倍(5種から50種へ)に増加し、これが生物多様性の基盤強化に繋がっている可能性が示された 81。さらに、この植栽パターンは、住宅地に飛来する鳥類の種類数を約2倍(平均9種から18種へ)、蝶類の種類数を約5倍(平均1.3種から6.9種へ)に増加させる効果があることもシミュレーションによって示唆された 81。特に生物多様性の劣化が著しいとされる三大都市圏(関東・近畿・中京)においては、「5本の樹」計画の推進により、生物多様性が最も高かったとされる1977年当時のレベルの約30%まで回復する効果が確認されたという 81

この生物多様性の「定量評価」の実現は、極めて重要な意味を持つ。従来、企業の環境活動の効果、特に生物多様性への貢献は、その価値を客観的に示すことが難しく、主観的なアピールや社会貢献活動の一環として捉えられがちであった 90。しかし、定量的なデータに基づいて効果を示すことができれば、その活動の価値を客観的に証明し、目標設定や進捗管理、さらには効果測定を科学的に行うことが可能となる 87。近年、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース) 41 の提言など、企業に対して自然資本や生物多様性に関するリスクと機会の情報開示を求める動きが国際的に強まる中、このような定量的な評価データは、企業の環境パフォーマンスを評価し、それを企業価値(財務価値)に結びつける上で不可欠な要素となりつつある 88。積水ハウスによるこの世界初の都市部における生物多様性定量評価の事例とその方法論の公開は、他の企業や団体が同様の取り組みを進める上での重要な参照点となり、業界全体の取り組みレベルの向上に貢献する可能性を秘めている。

3.3. ネイチャー・ポジティブ方法論の構築と公開

積水ハウスは、琉球大学およびシンク・ネイチャーとの共同研究を通じて構築した生物多様性効果の定量評価の仕組みを、「ネイチャー・ポジティブ方法論」として体系化し、2021年に一般に公開した 87。この方法論は、生物多様性ビッグデータとAIを活用して、植栽活動などが生態系に与える影響(特に鳥類や蝶類への効果)を定量的に評価・可視化するための一連の手順を示すものである 89

この方法論が公開されたことにより、積水ハウス以外の企業や地方自治体、NPO/NGO、さらには個人に至るまで、自らが行う緑化活動や自然保全活動の生物多様性への貢献度を、科学的根拠に基づいて評価し、より効果的な活動計画の策定や目標設定を行うことが可能になった 87。これは、都市部における生物多様性保全の取り組みを加速させ、社会全体でネイチャー・ポジティブを目指す上で、非常に価値のある貢献と言える。

さらに、積水ハウスはシンク・ネイチャーとの連携を深化させ、2023年には「生物多様性ネットゲインとその算出方法の標準化」を目指す共同推進協定を締結した 85。「生物多様性ネットゲイン」とは、単に開発などによる生物多様性の損失を補う(No Net Loss)だけでなく、積極的に生物多様性を増加させることを意味する。この協定に基づき、両者は、住宅地への植樹などを通じて実際に生物多様性をどれだけ増やせるかを定量的に評価し、その算出方法を標準化することを目指している 85。この取り組みが成功すれば、開発事業などにおいて、より明確なネイチャー・ポジティブ目標の設定と達成度評価が可能となり、生物多様性保全の取り組みが一層促進されることが期待される。

3.4. OECM(保護地域以外で生物多様性保全に資する地域)認定と今後の展開

生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」では、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全するという目標(30by30目標)が掲げられた 102。この目標達成に向けて、従来の国立公園などの保護地域(Protected Areas)だけでなく、民間企業や地域コミュニティなどが管理する土地であっても、生物多様性の保全に貢献している地域を評価し、保全地域としてカウントしていく仕組み(OECM: Other Effective area-based Conservation Measures)の重要性が認識されている 84

日本においても、環境省がこのOECMの考え方に基づき、「自然共生サイト」認定制度を2023年度から開始した 102。これは、「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」を国が認定するものであり、認定されたサイトはOECMとして国際データベースへの登録が進められる 102

積水ハウスは、この制度の第1回認定において、大阪市北区の梅田スカイビル敷地内にある企業緑地「新・里山」(ウェスティンホテル大阪、ダイハツディーゼル新梅田シティ、野村不動産と共同保有・管理)が「自然共生サイト」としての認定評価を取得した 91。この緑地は、「5本の樹」計画の理念に基づき、地域の生態系に配慮した植栽や管理が行われており、都市部における生物多様性保全のモデルケースとして評価されたものである 91

このOECM認定は、「5本の樹」計画のような民間の自主的な取り組みが、国の、ひいては国際的な生物多様性保全目標(30by30)の達成に貢献するものであることを公的に認めるものであり、企業の環境活動の社会的価値を高める上で大きな意味を持つ。積水ハウスは、この認定を契機として、さらにOECM認定サイトの拡大を目指すとともに、個々の住宅の庭など、都市部に点在する小規模な緑地の集合体が全体として生態系ネットワークを形成し、生物多様性保全に貢献するという「ネットワーク型OECM」という概念を提唱し、その実現可能性を探っている 81。もしこの概念が確立され、制度的に認められるようになれば、都市に住む市民一人ひとりの庭づくりが国際的な保全目標達成に貢献する道が開かれ、日本ならではの官民一体となった、あるいは市民参加型の新しい生物多様性保全の形が生まれる可能性がある 81

3.5. TNFD提言に基づく自然関連情報開示

気候変動に関するTCFDと同様に、自然資本や生物多様性に関するリスクと機会、及びそれらに対する企業の対応状況について、投資家等が適切な評価を行えるようにするための情報開示フレームワークとして、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)が2023年9月に最終提言を発表した 100。企業活動が自然環境に与える影響や依存度、それらに伴うリスク(例:原材料調達難、規制強化、評判低下)と機会(例:生態系サービスの活用、環境配慮型製品・サービスの需要増、ブランド価値向上)を開示することが求められている。

積水ハウスは、TNFDの提言にも対応を進めており、最新の統合報告書「Value Report 2024」には、TNFDの開示推奨項目に沿った情報が含まれている 41。具体的には、ガバナンス体制、戦略、リスクと影響の管理、指標と目標について、自然関連の情報を開示している。特にリスクと機会の分析においては、同社の事業にとって重要性の高い自然への依存(例:木材、鉱物資源、水資源)と影響(例:土地利用変化、GHG排出、廃棄物)を特定し、それらが事業戦略や財務計画に与える潜在的な影響を評価している 41。例えば、木材調達に関しては、調達先の森林が生態学的に重要な地域にないか、違法伐採や森林破壊のリスクがないかなどを評価し、独自の「木材調達ガイドライン」 43 に基づく持続可能な調達を推進していることが示されている 41。また、「5本の樹」計画による生物多様性保全への貢献や、定量評価の取り組みなども、TNFDの枠組みの中で報告されている 41

同業他社、例えば住友林業 112 や大和ハウス工業 114 などもTNFDフォーラムへの参画や提言に沿った情報開示の試行を進めており、建設・住宅業界全体として、自然関連課題への対応と情報開示の重要性が高まっていることがうかがえる。積水ハウスのTNFDへの早期対応は、環境経営の先進性を示すと共に、投資家やその他のステークホルダーとの建設的な対話を促進する上で有効であると考えられる。

第2部:リスク、機会、および業界比較分析

4. 環境関連のリスクと機会の分析

積水ハウスの事業活動は、地球規模の環境変動や社会からの要請の変化に伴う様々なリスクに晒される一方で、環境課題への積極的な対応を通じて新たな事業機会を創出する可能性も秘めている。TCFDやTNFDのフレームワークに基づき、気候変動、資源循環、生物多様性に関連する主要なリスクと機会を分析する。

4.1. 気候変動に伴う物理的リスクと移行リスク評価

気候変動は、積水ハウスの事業に対して物理的リスクと移行リスクの両面から影響を及ぼす可能性がある。

物理的リスクとしては、近年の気候変動に伴う異常気象、すなわち台風の強大化、集中豪雨の頻発、猛暑日の増加などが挙げられる 69。これらは、同社が保有・管理する工場、建設中の現場、開発分譲地、賃貸物件などに直接的な被害(浸水、損壊等)をもたらし、事業継続を脅かす可能性がある 41。また、建設工事においては、悪天候による工期の遅延や、猛暑下での作業に伴う熱中症などの労働災害リスクも増大する 41。さらに、気候変動はサプライチェーンにも影響を及ぼし、資材の調達遅延や価格変動を引き起こす可能性も指摘されている 44。積水ハウスはこれらのリスクを認識し、ハザードマップを活用した立地評価、建物の耐災害設計の強化、BCP(事業継続計画)の策定・更新、現場での熱中症対策などを実施している 41。特に、浸水リスクが想定される関東工場については、保険による財務的カバーが可能であることを確認済みである 44

移行リスクは、低炭素社会への移行に伴う政策、法規制、技術、市場、評判の変化に関連するリスクである。具体的には、カーボンプライシング(炭素税や排出量取引制度)の導入・強化によるGHG排出コストの増加、省エネルギー基準の段階的な引き上げに伴う設計・建設コストの増加、既存の非省エネ建築物の資産価値の低下などが想定される 41。また、ESG投資の拡大に伴い、環境パフォーマンスが低い企業は投資家からの評価が低下し、資金調達が不利になる(資本コストが上昇する)リスクも存在する 44。さらに、消費者の環境意識の高まりにより、ZEHやZEBに対応できない住宅・建築物は市場での競争力を失う可能性もある 41。積水ハウスは、これらの移行リスクに対して、ZEH/ZEB化の推進、再生可能エネルギー導入(RE100)、サプライヤーとの連携による排出削減といった先行的な取り組みが、リスクを最小化する上で有効であると評価している 44

注目すべきは、積水ハウスがこれらのリスク評価において、自社のプロアクティブな環境戦略が単にリスクを軽減するだけでなく、むしろ新たな事業機会を創出する要因となっていると捉えている点である 41。TCFDレポートでは、リスクを認識しつつも「財務的な影響は少ない」「致命的な影響は現時点にない」と評価し 44、その根拠としてZEH化やRE100への早期取り組みを挙げている。同時に、機会分析においては、これらの取り組みがZEH/ZEB受注増、賃貸事業収益増、脱炭素リフォーム増、再エネ調達コスト削減などに繋がると評価している 41。これは、リスク対応策が同時に事業機会の獲得策としても機能しており、環境戦略が事業成長と企業価値向上に貢献するという、ポジティブな自己評価と経営判断を示していると言えるだろう。

4.2. 自然資本・生物多様性に関するリスク評価

気候変動と並び、自然資本の劣化と生物多様性の損失も、積水ハウスの事業活動に影響を与える重要なリスク要因である。TNFD提言に沿った開示情報 41 によれば、同社は物理的リスクと移行リスクの両面から自然関連リスクを認識している。

物理的リスクとしては、事業活動に不可欠な自然資源の供給不安定化が挙げられる。具体的には、気候変動や持続可能でない利用による森林劣化に伴う木材調達の不安定化、鉱物資源(例:鉄鉱石、アルミニウム原料等)の枯渇や採掘地域の環境変化による調達難、水ストレス地域における水資源の利用制限や調達コスト増などが想定される 41。また、生態系の劣化は、自然災害(例:洪水、土砂災害)の緩衝能力を低下させ、事業所や建設現場への被害リスクを高める可能性もある 41

移行リスクとしては、自然保護に関する規制強化や社会的な要請の高まりが挙げられる。例えば、生態学的に重要な地域における鉱物資源採掘の制限強化、サプライチェーン全体での環境負荷(森林破壊、水質汚染、廃棄物等)低減への圧力、消費者の環境意識向上に伴う環境配慮型製品への需要シフト(対応できない場合の市場シェア喪失)、そして環境・社会への配慮が不十分と見なされた場合のステークホルダー(投資家、顧客、地域社会等)からの信用失墜やブランドイメージ低下などが考えられる 41

これらのリスクに対し、積水ハウスは特に木材調達において具体的な対応を進めている。2007年に独自の「木材調達ガイドライン」を制定し 43、合法性・持続可能性が確認された木材(フェアウッド)の調達を推進している。ガイドラインでは、トレーサビリティの確保、違法伐採木材の不使用、森林認証材の優先利用などを定めている。さらに、2030年までに天然林における森林破壊ゼロ(ゼロ・デフォレステーション)を達成するという目標を掲げ 111、サプライチェーンにおける人権侵害も一切認めない方針を示している 111。これは、木材という主要原材料の調達リスクを管理すると同時に、企業の社会的責任を果たす上でも重要な取り組みである。

木材調達リスクへの対応は、積水ハウスの事業継続性にとって不可欠であると同時に、同社が長年推進してきた「5本の樹」計画のような生物多様性保全活動との戦略的な整合性を図る上でも鍵となる。持続可能な森林から調達された木材を使用することは、自社の環境負荷を低減するだけでなく、「5本の樹」計画が目指す生態系保全の理念とも合致する。このような一貫した姿勢は、環境意識の高い顧客や投資家からの信頼を高め、リスク低減とブランド価値向上の両面に寄与すると考えられる。

4.3. 環境経営を通じた事業機会の創出

積水ハウスは、環境課題への対応を単なるリスク管理やコスト要因としてではなく、新たな事業機会を創出し、持続的な成長を実現するための重要なドライバーとして捉えている 4。同社は、社会課題解決に貢献する製品・サービスを「サステナビリティ貢献製品」と位置づけ、その売上高拡大を経営目標の一つに掲げている 1。気候変動、資源循環、生物多様性といった環境分野における取り組みは、以下のような具体的な事業機会に繋がる可能性がある。

4.3.1. ZEH/ZEB、グリーンビルディング市場の成長性

世界的な脱炭素化の流れと、日本国内における省エネルギー規制の強化(2025年省エネ基準適合義務化、2030年ZEH/ZEB水準目標) 18 を背景に、ZEHやZEBといった高性能な省エネ建築物の市場は今後さらなる拡大が見込まれる。積水ハウスが戸建住宅や集合住宅において達成している高いZEH普及率 41 は、この成長市場における明確な競争優位性を示すものである。

また、オフィスビルや商業施設などにおいては、CASBEE、DBJ Green Building、BELSといった国内認証や、LEED、WELLなどの国際的なグリーンビルディング認証を取得する動きが活発化している 115。これらの認証は、建物の環境性能や快適性、健康性を客観的に示す指標として、テナント誘致や不動産価値評価において重要性を増している。特に、J-REITや私募ファンドといった機関投資家がESG投資の観点から認証取得物件を重視する傾向が強まっており 115、GRESB(Global Real Estate Sustainability Benchmark)評価への参加も増加している 115。複数の実証研究によれば、グリーンビルディング認証を取得した物件は、非認証物件と比較して賃料が高く(賃料プレミアム)、空室率が低く、結果として資産価値も高く評価される傾向があることが示されている 118。これは、建物の環境性能が直接的に経済的価値に結びつくことを示唆しており、環境配慮型建築への投資が、単なるコスト負担ではなく、将来的なリターンを生む可能性があることを意味する。積水ハウスは、自社開発物件におけるグリーンビルディング認証取得を推進しており 119、この市場動向を捉えた事業展開が可能である。

4.3.2. 環境技術開発とブランド価値向上

積水ハウスが長年にわたり培ってきたZEH/LCCM関連技術、ゼロエミッションシステムや「House to House」に代表される資源循環技術、そして「5本の樹」計画とその定量評価手法といった生物多様性保全に関する先進的な技術やノウハウは、他社との差別化を図る上で重要な競争優位性の源泉となる 12。これらの技術開発への継続的な投資は、将来の市場変化や規制強化に対応するための基盤を強化する。

さらに、これらの先進的な取り組みと、それらを裏付ける高い環境パフォーマンス(例:高いZEH率、RE100前倒し達成見込み、高いリサイクル率)、そして積極的かつ透明性の高い情報開示(例:Value Report、TCFD/TNFDレポート)は、社外からの評価向上に直結する。CDPにおけるトリプルA評価の獲得 120 や、DJSI World Indexへの長期連続選定 122、MSCIやSustainalyticsといった主要なESG評価機関からの高評価及び関連インデックスへの組み入れ 123 は、その証左である。これらの高い評価は、企業のブランド価値を高め、環境意識の高い顧客からの支持を集めるだけでなく、ESG投資を重視する投資家からの信頼を獲得し、有利な条件での資金調達を可能にする。また、企業の環境への取り組みは、就職先を選ぶ学生など将来の人材にとっても重要な判断基準となっており、優秀な人材の獲得・維持にも貢献すると考えられる 120

5. 業界のベストプラクティスと規制・市場動向

積水ハウスの環境への取り組みを評価し、今後の戦略を展望する上で、同社が属する建設・住宅業界全体の動向、特に他の先進企業の取り組み(ベストプラクティス)や、業界を取り巻く規制・市場の変化を理解することが不可欠である。

5.1. 国内建設・住宅業界における環境先進企業の取り組み事例

日本の建設・住宅業界においては、積水ハウス以外にも、多くの企業が環境課題に対して先進的な取り組みを進めている。特に主要な競合企業である大和ハウス工業、住友林業、旭化成ホームズ、さらには大手ゼネコン各社(大成建設、大林組、清水建設、鹿島建設など)の動向は注目に値する。

  • 大和ハウス工業: 積水ハウスと同様に、ZEH/ZEB化を強力に推進し、高い普及率を誇る 119。RE100も達成済み 119。サプライヤーとの連携による排出削減(ゼロエミダイアログ等 79)や、木材調達における森林破壊ゼロ方針 80、生物多様性保全活動(「みどりをつなごう!」コンセプト 82、自然共生サイト認定 107)にも注力している 79

  • 住友林業: 「木」を活かした事業展開が特徴であり、木造建築による炭素固定効果を前面に出している 130。独自のBF(ビッグフレーム)構法 130 を活用したLCCM住宅の商品化 130 や、国内外での森林経営を通じた持続可能な資源管理と生物多様性保全 137 に強みを持つ。CDP評価、特に気候変動分野で長年にわたり最高評価を獲得している 140

  • 旭化成ホームズ: 主力商品である鉄骨造の「ヘーベルハウス」において、高性能断熱材(ネオマフォーム 142)などを活用したZEH化を推進 143。RE100も達成済み 144。資源循環においては、新築現場からの産業廃棄物ゼロエミッション達成 73 や、使用済みユニフォームのケミカルリサイクル 73、ヘーベル廃材のリサイクル 148 などに取り組む。生物多様性保全では、研究施設「あさひ・いのちの森」での知見を活かした「まちもり」 93 を展開し、自然共生サイト認定も受けている 108

  • 大手ゼネコン各社: 建築物の設計・施工段階における環境負荷低減に注力。ZEB/ZEHの設計・施工実績を積み重ねるとともに、施工現場でのCO2排出量削減(省燃費運転、軽油代替燃料やバイオディーゼル燃料の利用、電動重機の導入検討、現場での再生可能エネルギー利用など 20)、サプライチェーン排出量(Scope3)の算定と削減に向けた取り組み 22、低炭素コンクリートなどの環境配慮型資材の利用、木造・木質建築技術の開発と普及 20 などを進めている。

これらの事例から、業界全体として、脱炭素化(特にZEH/ZEB化、再エネ導入、Scope3削減)、資源循環(廃棄物削減、リサイクル)、生物多様性保全(緑化、持続可能な調達)が共通の重要課題として認識され、各社が独自の強みを活かしながら多様なアプローチで取り組んでいる状況がうかがえる。

5.2. 脱炭素化、資源循環、生物多様性保全に関する模範的実践

業界全体の取り組みの中から、特に模範的(ベストプラクティス)と考えられる実践例を整理すると、以下のようになる。

脱炭素化:

  • ZEH/ZEB/LCCMの標準化・普及: 新築物件におけるZEH/ZEBを標準仕様とし、さらにLCCM住宅の開発・供給を進める。

  • RE100達成と再エネ調達の多様化: 事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーに転換する。その手段として、自社施設への太陽光発電設置(自家消費)、PPA(電力購入契約)、証書購入に加え、顧客(卒FIT住宅)や地域からの電力買取など、多様な調達方法を組み合わせる。

  • SBT認定とサプライチェーン連携: 科学的根拠に基づく野心的なGHG削減目標(SBT 1.5℃目標)を設定・認定取得し、その達成に向けてサプライヤーにも目標設定や排出削減への協力を要請・支援する。

  • 木造・木質建築の推進: 炭素固定効果が高く、製造時のエネルギー消費が少ない木材を構造材や内装材として積極的に利用する技術開発と普及。

  • 低炭素素材・工法の採用: 製造時のCO2排出量が少ないグリーン鋼材や低炭素コンクリート、リサイクル材などの利用拡大。施工段階でのエネルギー効率改善(ICT活用、電動建機等)。

資源循環:

  • 建設廃棄物ゼロエミッション: 生産・施工・解体現場から発生する廃棄物の分別を徹底し、再資源化率100%(単純焼却・埋立ゼロ)を達成・維持する。

  • 水平リサイクルの推進: 使用済み製品・部材を回収し、再び同種の製品の原料として利用するクローズドループリサイクルを、サプライヤーと連携して構築・拡大する。

  • 解体材の高度利用: 解体時に発生する混合廃棄物から有用な資源を回収・再生する技術開発と、再生材の利用用途拡大。

  • 長寿命化設計とストック活用: 建物の耐久性を高め、メンテナンスやリフォーム・リノベーションを容易にする設計思想(スケルトン・インフィル等)を取り入れ、既存建物の有効活用(コンバージョン、リノベーション)を促進する。

  • 循環型サプライチェーン構築: 設計段階から廃棄・リサイクルを考慮し(エコデザイン)、サプライヤーと共に資源循環を前提とした部材開発や調達システムを構築する。

生物多様性保全:

  • 在来種活用と生態系配慮型緑化: 地域の生態系に適した在来種を中心に、多様な生物(鳥、昆虫等)の生息空間となるような階層構造を持つ緑地(ビオトープ等)を創出・管理する。

  • OECM(自然共生サイト)認定取得と活用: 自社保有林、工場緑地、開発地内の緑地などを活用し、生物多様性保全に貢献する管理を行い、自然共生サイトの認定を取得。これを環境教育や地域貢献活動の場としても活用する。

  • 持続可能な原材料調達: 木材、鉱物資源、水資源などの調達において、サプライチェーン全体でのトレーサビリティを確保し、森林破壊や生態系破壊、人権侵害に繋がらない、持続可能な調達方針を策定・遵守する(例:森林認証材の利用、フェアウッド調達)。

  • TNFDに基づく情報開示とネイチャー・ポジティブへの貢献: 事業活動の自然への依存度・影響度を評価し、リスクと機会を特定・開示する。生物多様性の損失を止め、回復させるネイチャー・ポジティブに貢献する具体的な目標と行動計画を策定・実行する。

これらのベストプラクティスは、積水ハウスを含む業界各社が目指すべき方向性を示すものである。

5.3. 日本の住宅・建築物に関する省エネ規制強化とZEH/LCCM普及政策

日本の住宅・建築物を取り巻く環境規制、特に省エネルギーに関する規制は、近年段階的に強化される傾向にある。これは、2050年カーボンニュートラル目標達成に向けた国の政策方針を反映したものである。

最も大きな変化は、2022年6月に公布された改正建築物省エネ法により、これまで適合義務の対象外であった住宅や小規模建築物を含む、原則全ての新築建築物に対して、2025年4月1日から省エネルギー基準への適合が義務付けられることである 18。この省エネ基準は、断熱性能(断熱等性能等級4以上)と一次エネルギー消費量(一次エネルギー消費量等級4以上)の両方を満たす必要がある 25。これにより、日本の新築建築物の省エネ性能の最低レベル(ボトムアップ)が大きく引き上げられることになる。

さらに国は、2030年度以降に新築される住宅・建築物について、ZEH・ZEB基準の水準の省エネルギー性能の確保を目指すという、より高い目標を掲げている 18。この目標達成に向け、誘導基準や住宅トップランナー制度における目標水準の引き上げ、そして省エネルギー基準自体の段階的なレベルアップが、遅くとも2030年度までに実施される予定である 18。住宅トップランナー制度は、特に大手住宅事業者に対して、市場平均よりも高い省エネ性能目標の達成を求めるものであり、業界全体の技術開発と性能向上を牽引する役割を担っている 18

また、ZEHの普及目標として、2030年までに新築住宅の平均でZEHを実現すること 19、そして2030年には新築戸建住宅の6割に太陽光発電設備が設置されることを目指す方針も示されている 18。ZEHや、さらにその先のLCCM住宅 19 の普及を後押しするため、国や地方自治体による補助金制度(例:「住宅省エネ2024キャンペーン」 18、LCCM住宅整備推進事業(過去実施) 67 など)も設けられている。

これらの規制強化や政策目標は、住宅・建設業界に対して、より高性能な省エネ技術の開発と導入、再生可能エネルギー設備の積極的な採用、そして将来的にはライフサイクル全体での環境負荷低減を強く促すものである。積水ハウスのように、既に国の目標水準を上回るZEH普及率を達成し 13、LCCM住宅にも取り組んでいる企業にとっては、これらの政策動向は自社の技術的優位性を活かす追い風となる可能性がある。一方で、基準への対応が遅れている事業者にとっては、事業継続への大きなプレッシャーとなるだろう。政策動向を的確に捉え、技術開発やサプライチェーン管理、商品戦略に反映させていくことが、今後の企業の競争力を左右する重要な要素となる。

5.4. グリーンビルディング認証とESG投資の動向

近年、建築物の環境性能を客観的に評価し、認証する「グリーンビルディング認証制度」の重要性が高まっている。日本では、建築物の環境性能を総合的に評価する「CASBEE(建築環境総合性能評価システム)」 115 や、省エネルギー性能に特化した「BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)」 116、そして日本政策投資銀行(DBJ)が環境・社会への配慮を評価する「DBJ Green Building認証」 115 などが広く普及しており、これらの認証取得件数は特に2018年以降、増加傾向にある 115。これらに加え、国際的な認証制度である米国の「LEED(Leadership in Energy and Environmental Design)」 115 や、建物利用者の健康性・快適性に焦点を当てた「WELL認証」 115 の取得事例も、日本国内で徐々に増えている 115

この背景には、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の拡大がある。投資家、特にJ-REIT(不動産投資信託)や私募ファンドといった機関投資家は、投資判断において対象不動産の環境性能やサステナビリティへの配慮を重視するようになっている 115。GRESB(Global Real Estate Sustainability Benchmark)は、不動産セクターのESGパフォーマンスを評価する代表的なベンチマークであり、日本からの参加者(特にJ-REIT)は近年急増している 115。グリーンビルディング認証の取得は、GRESB評価においても有利に働くため、不動産所有者や運用会社にとって認証取得のインセンティブとなっている。

さらに、グリーンビルディング認証の取得は、単なる環境貢献のアピールに留まらず、経済的なメリットにも繋がり始めている。複数の調査研究によれば、認証を取得したオフィスビルや住宅は、非認証物件と比較して、賃料が高く(賃料プレミアム)、稼働率が高く(空室率が低い)、結果として売買価格も高く評価される傾向が示されている 118。例えば、日本のオフィス市場に関する研究では、CASBEE認証物件で約3.6%、DBJ Green Building認証物件で約4.4%の賃料プレミアムが確認されたとの報告もある 118。住宅においても、DBJ認証物件で賃料が年々高く評価される傾向が見られる 118

これらの動向は、建築物の環境性能が、エネルギーコスト削減や快適性向上といった直接的な効果だけでなく、不動産の市場価値そのものに影響を与える重要な要素として認識されつつあることを示している。これは、環境配慮型建築への投資が、コストではなく、将来的なリターン(賃料収入増、資産価値向上)を生み出す可能性があることを意味し、建設・不動産業界全体のサステナビリティへの取り組みを経済合理性の面からも後押しする力となっている。積水ハウスを含む住宅メーカーやデベロッパーにとって、グリーンビルディング認証の取得は、環境貢献と事業性の両立を図る上で、ますます重要な戦略的要素となるだろう。

6. 主要競合企業との比較分析

積水ハウスの環境パフォーマンスと戦略をより客観的に評価するためには、同業の主要な競合企業との比較分析が不可欠である。ここでは、国内大手住宅メーカーである大和ハウス工業株式会社、住友林業株式会社、旭化成ホームズ株式会社を主な比較対象とし、各社の環境戦略、具体的な取り組み、そしてESG評価における相対的な位置づけを検討する 49

6.1. 大和ハウス工業、住友林業、旭化成ホームズ等の環境戦略比較

比較対象となる大手3社(大和ハウス工業、住友林業、旭化成ホームズ)も、積水ハウスと同様に、サステナビリティを経営の重要課題と位置づけ、統合報告書やサステナビリティレポート等を通じてESGに関する情報を積極的に開示している 127。各社とも、気候変動対策(脱炭素化)、資源循環、生物多様性保全を環境戦略の柱としており、SBT認定の取得やRE100への加盟(住友林業を除く)など、国際的なイニシアチブにも積極的に参画している点は共通している。しかし、各社の事業特性や強みを反映し、重点を置く分野や具体的なアプローチには差異が見られる。

  • 大和ハウス工業: 幅広い事業領域(住宅、商業施設、物流施設、ホテル等)を持つ総合力を活かし、ZEH/ZEB化を全事業分野で推進している点が特徴である 119。再生可能エネルギー事業にも注力し、自社グループの電力需要を上回る発電量を持つ 119。サプライヤーとの連携による排出削減(サプライヤーのSBT目標設定率向上目標 119)や、廃棄物ゼロエミッションへの取り組み 79、生物多様性保全(「みどりをつなごう!」 82、自然共生サイト認定 107)にも力を入れている。

  • 住友林業: 「木」に関するバリューチェーン(森林経営から木材建材、住宅建築、木質バイオマス発電まで)をグローバルに展開している点が最大の強みである 140。木材の炭素固定効果を活かした住宅建築(BF構法 130)や、LCCM住宅の開発・普及 130 に注力している。森林経営を通じた持続可能な資源管理と生物多様性保全 137 も重要なテーマである。CDP評価、特に気候変動とフォレスト分野で高い評価を得ている 140

  • 旭化成ホームズ: ALCコンクリート・ヘーベルを用いた鉄骨造住宅「ヘーベルハウス」を主力商品とする 142。その特性を活かしつつ、高性能断熱材(ネオマフォーム)の採用などによりZEH化を推進 143。RE100も達成済み 144。資源循環では、新築現場の廃棄物ゼロエミッション達成 73 や、独自の取り組みとして使用済みユニフォームのケミカルリサイクル 73、ヘーベル廃材のリサイクル 148 などを行っている。生物多様性保全では、研究施設「あさひ・いのちの森」 93 で得た知見を活かした植栽提案「まちもり」 93 を展開している。

このように、各社は共通の環境課題認識を持ちつつも、自社の事業構造や技術的背景に基づいた独自の戦略を展開していることがわかる。

6.2. 気候変動対策(目標、ZEH/LCCM、再エネ)における比較

気候変動対策における各社の取り組みを具体的に比較すると、以下の点が挙げられる。

  • GHG削減目標: 主要4社(積水ハウス、大和ハウス工業、住友林業、旭化成ホームズ)はいずれもSBT認定を取得しており、科学的根拠に基づいた削減目標を設定している 41。特に積水ハウスは、Scope 1+2の削減目標を当初の50%から75%(2013年度比)へと上方修正しており 41、より野心的な目標を掲げている。大和ハウス工業もSBT 1.5℃未満水準の認定を受けている 162

  • ZEH普及: 戸建住宅におけるZEH普及率では、積水ハウス(95% 41)と大和ハウス工業(97% 119)が業界をリードしている。住友林業や旭化成ホームズもZEH化を推進しているが 131、具体的な普及率の比較データは限定的である。賃貸住宅や分譲マンションへのZEH適用拡大も各社が進めており、積水ハウス 41、大和ハウス工業 119、旭化成ホームズ 144 が具体的な取り組みや実績を開示している。

  • LCCM住宅: 積水ハウスは2012年にLCCM住宅認定第1号を取得しており 62、この分野での先駆者と言える。住友林業は、木造建築の利点(建設時のCO2排出量削減、炭素固定)を活かしたLCCM住宅商品を積極的に展開している 130。大和ハウス工業もLCCM住宅プロジェクトを推進している 19。旭化成ホームズもLCCMのコンセプトモデルなどを発表している 61。LCCM住宅は、建設時のCO2排出量も評価対象となるため、製造時の排出量が比較的少ないとされる木造が有利との見方がある 56。この点で、木材バリューチェーンに強みを持つ住友林業のアプローチは特徴的である。一方、鉄骨造を主力とする積水ハウス、大和ハウス工業、旭化成ホームズにとっては、高断熱化や再生可能エネルギー導入に加え、サプライチェーンにおける低炭素化(例:低炭素鋼材の利用)が一層重要な課題となる可能性がある。

  • 再生可能エネルギー(RE100): 積水ハウス 41、大和ハウス工業 119、旭化成ホームズ 144 の3社がRE100に加盟し、目標達成または達成に向けた高い進捗を示している。住友林業はRE100には加盟していないものの、自社施設での再エネ導入や木質バイオマス発電事業などを通じて再生可能エネルギーの利用を推進している。積水ハウスが展開する「積水ハウスオーナーでんき」 12 は、顧客参加型のユニークな再エネ調達モデルとして、他社には見られない特徴的な取り組みである。

総じて、気候変動対策においては各社とも高いレベルで取り組んでいるが、ZEH普及率では積水ハウスと大和ハウスが先行し、LCCM戦略においては住友林業が木材活用の強みを前面に出しているなど、戦略上の力点の違いが見て取れる。

6.3. 資源循環(ゼロエミッション、リサイクル)における比較

資源循環に関する取り組みを比較すると、以下の点が特徴的である。

  • ゼロエミッション: 積水ハウスは主要4部門(工場、新築、アフター、リフォーム)でゼロエミッション(単純焼却・埋立ゼロ)を達成済みである 41。旭化成ホームズも新築現場からの産業廃棄物についてゼロエミッションを達成している 73。大和ハウス工業も「工場デポ」システムなどを活用し、ゼロエミッションを目指す取り組みを推進している 79。住友林業については、木材資源の有効活用(カスケード利用など)に重点が置かれている可能性が高いが、建設廃棄物全体のゼロエミッション達成状況に関する具体的な情報は限定的である(要確認 169)。

  • リサイクル: 各社ともリサイクルには力を入れているが、そのアプローチには違いが見られる。積水ハウスは「House to House」プロジェクトを掲げ、使用済み住宅部材を再び新しい住宅の部材として利用する水平リサイクルを、サプライヤーと連携して推進している点が際立っている 16。これは、製品そのものの循環を目指す、より本質的なサーキュラーエコノミーへの挑戦と言える。旭化成ホームズは、ヘーベル廃材のリサイクル 148 や、使用済みユニフォームのケミカルリサイクル 73 など、特定の素材や廃棄物に対するリサイクル技術の開発・導入に特徴がある。大和ハウス工業は、廃プラスチックのマテリアルリサイクル率向上目標を設定するなど 79、具体的な目標管理を行っている。住友林業は、木材の特性を活かし、建材としての利用からボード類、最終的には燃料へと段階的に利用するカスケード利用を推進していると考えられる。

積水ハウスの「House to House」プロジェクトは、他社の取り組みと比較して、住宅という製品ライフサイクル全体を見据え、部材レベルでの完全な循環を目指す点で、より長期的かつ野心的なサーキュラーエコノミー戦略であると評価できる。他社は、現時点では廃棄物管理の高度化や、特定の素材・廃棄物のリサイクル技術確立に重点を置いている傾向が見られる。積水ハウスの戦略は、成功すれば住宅産業全体のビジネスモデル変革に繋がる可能性を秘めているが、その実現にはサプライヤーとのより一層の連携強化と技術革新が不可欠となるだろう。

6.4. 生物多様性保全(緑化、OECM等)における比較

生物多様性保全に関する取り組みにおいても、各社は共通の課題認識を持ちつつ、それぞれ特徴的な活動を展開している。

  • 緑化計画: 在来種の活用を重視した緑化計画は、大手住宅メーカーに共通するトレンドとなっている。積水ハウスの「5本の樹」計画 43、旭化成ホームズの「まちもり」 93、大和ハウス工業の「みどりをつなごう!」 82 は、いずれも地域の生態系に配慮し、生物多様性の向上に貢献することを目指している。住友林業も、緑化事業や森林経営を通じて生物多様性に配慮した取り組みを行っている。

  • 定量評価: 生物多様性保全効果の定量評価については、積水ハウスが琉球大学およびシンク・ネイチャーとの連携により、世界に先駆けて手法を開発・公開した点でリードしている 89。これに対し、大和ハウス工業もシンク・ネイチャーと連携し、自社の緑化活動の効果検証に着手しており 97、今後、業界内で定量評価の取り組みが広がる可能性がある。

  • OECM/自然共生サイト: OECM(保護地域以外で生物多様性保全に資する地域)への貢献を目指す動きも活発化しており、積水ハウス 102、大和ハウス工業 107、住友林業 137、旭化成ホームズ 108 の主要4社すべてが、自社保有林や事業所緑地などで環境省の「自然共生サイト」認定を取得している。これは、生物多様性保全が業界共通の重要課題として認識され、具体的なアクションに繋がっていることを示している。

大手住宅メーカー各社が同様に在来種活用やOECM認定に取り組んでいる現状は、生物多様性保全が単なる社会貢献活動ではなく、事業戦略上も重要な要素となっていることを示唆している。積水ハウスによる定量評価手法の先行開発と公開は、業界全体の取り組みレベルを引き上げ、より科学的根拠に基づいた効果的な保全活動を促進する上で、重要な役割を果たす可能性がある。また、企業間の連携(例:3社共同での効果検証 98)が進めば、都市全体の生物多様性向上に対して、より大きな相乗効果を生み出すことも期待される。

7. ESG評価に基づくベンチマーキング

企業の環境・社会・ガバナンス(ESG)への取り組みは、投資家や金融機関、顧客、従業員など、様々なステークホルダーからの評価に影響を与える。CDP、MSCI、Sustainalyticsといった外部のESG評価機関による評価は、企業のサステナビリティパフォーマンスを客観的に比較・評価するための重要な指標となる。ここでは、積水ハウスのESG評価を概観し、主要競合企業との比較を通じて、同社の相対的な位置づけを考察する。

7.1. CDP、MSCI、Sustainalytics等による積水ハウスの評価概要

積水ハウスは、主要なESG評価機関から一貫して高い評価を得ている。

  • CDP: 国際的な環境情報開示プラットフォームであるCDPの評価において、積水ハウスは特に卓越した成果を示している。2023年度評価では、「気候変動」「フォレスト(森林)」「水セキュリティ」の3つの環境テーマすべてにおいて、最高評価である「Aリスト」企業に選定された 120。3分野すべてでAリスト評価を獲得する「トリプルA」は、世界でも極めて少数の企業に限られており、同社の環境パフォーマンスと情報開示の透明性が国際的に最高水準にあることを証明するものである。2024年度評価においても、フォレスト及び水セキュリティ分野でAリストに選定されている 121。また、サプライチェーン全体での気候変動対策への取り組みを評価する「サプライヤーエンゲージメント評価(SER)」においても、高評価が期待される 163

  • MSCI: 大手ESG評価機関であるMSCIによる評価においても、積水ハウスは高い評価を維持している。具体的なレーティング(例:AAA~CCCの7段階評価)の最新情報は公開資料からは確認が限定的だが、同社はMSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数 123 やMSCI日本株女性活躍指数(WIN)164 など、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が採用する主要な国内ESGインデックスの構成銘柄に選定され続けている 123。これは、同社のESG全般にわたる取り組みが、厳しい基準を満たしていることを示唆している。

  • Sustainalytics: 別の主要ESG評価機関であるSustainalyticsによるESGリスクレーティング(リスクが低いほどスコアが低い)においても、積水ハウスは良好な評価を得ている。2024年時点の評価では、ESGリスクレーティングは16.0であり、「Low Risk」カテゴリーに分類されている。これは、同社が属するHomebuilders(住宅建設)業界79社中11位、評価対象となるグローバル企業全体(約1.5万社)の中でも上位約13%に位置する、優れたパフォーマンスである 124。また、同社がスポンサーを務める積水ハウス・リート投資法人も、Sustainalyticsから8.2という極めて低いリスクレーティング(「Negligible Risk」カテゴリー、不動産業界996社中38位)を得ており、グループ全体でのESGへの取り組みが高く評価されていることがうかがえる 165

  • その他の評価: 上記以外にも、ダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インデックス(DJSI)の「World Index」構成銘柄に13年連続で選定される 122 など、国際的に認知された複数のESGインデックスに継続的に選定されている。また、国内においても、「日経統合報告書アワード」でグランプリS賞を受賞する 9 など、情報開示の質やESG経営の実践が高く評価されている。

これらの社外からの評価は、積水ハウスがESG、特に環境分野において、グローバルレベルで見てもトップクラスのパフォーマンスを発揮していることを客観的に示している。

7.2. 主要競合企業とのESGスコア比較と考察

積水ハウスのESG評価を主要競合企業(大和ハウス工業、住友林業、旭化成ホームズ)と比較すると、そのリーダーシップが一層明確になる。

  • CDP評価: 積水ハウスの「トリプルA」達成 120 は、競合他社と比較して突出した成果である。大和ハウス工業 125 と住友林業 140 も、気候変動分野ではAリスト評価の常連であり、極めて高いレベルにあるが、フォレストや水セキュリティを含む3分野すべてでのAリスト達成は、現時点では積水ハウスのみである。旭化成ホームズについては、旭化成グループ全体としての評価となるため直接的な比較は難しいが、グループとしてSBT認定取得 144 やRE100達成 145 など、気候変動対策には積極的に取り組んでいる。このCDP評価における差は、積水ハウスが気候変動対策だけでなく、森林資源や水資源といった自然資本に関する課題に対しても、包括的かつ高いレベルで取り組み、その情報を透明性高く開示していることを示唆している。

  • MSCI評価: MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数には、積水ハウス 123、大和ハウス工業 123、住友林業 123 がいずれも構成銘柄として選定されており、MSCI評価においても、これらの企業は国内トップレベルのESGパフォーマンスを持つ企業グループとして認識されていると言える。旭化成ホームズ(旭化成グループとして)も同様に主要インデックスに含まれる可能性が高い。レーティングの細かな差異については、公開情報が限定的であるため断定はできないが、各社とも高評価を得ていると考えられる。

  • Sustainalytics評価: 積水ハウスのESGリスクレーティング(16.0 Low, 業界11位/79) 124 は、業界内で優れたポジションにあることを示している。競合他社の最新スコアに関する公開情報は限られているが、積水ハウスがこの評価においてもリーダーグループの一角を占めていることは確実視される。

これらのESG評価結果を総合的に考察すると、積水ハウスは、特にCDP評価において競合他社に対して明確な優位性を示しており、環境情報開示の質と実際のパフォーマンスの両面で卓越していると評価できる。これは、同社が長年にわたり推進してきた、気候変動、資源循環、生物多様性にわたる包括的かつ先進的な環境戦略と、それを支える実行力、そして透明性の高いコミュニケーションが、外部の専門機関からも高く評価されていることの証左である。MSCIやSustainalyticsの評価においても、競合他社と共に業界トップグループに位置しており、ESG経営全般において高いレベルを維持していることが確認できる。この高いESG評価は、同社の企業価値向上、リスク管理能力、そして持続可能な社会への貢献意欲を示す重要な指標となっている。

第3部:課題、提言、および結論

8. 積水ハウスが直面する環境課題と克服への取り組み

積水ハウスは、環境経営において業界をリードする多くの成果を上げてきた一方で、さらなる高みを目指す上で克服すべき課題も存在する。特に、サプライチェーン全体での排出削減、サーキュラーエコノミーへの完全移行、LCCM住宅の本格普及、生物多様性保全効果の最大化といった領域においては、継続的な努力とイノベーションが求められる。

8.1. サプライチェーン排出量(Scope3)削減の加速化

積水ハウスのGHG排出量全体を見ると、自社の事業活動に伴うScope 1, 2排出量よりも、サプライチェーン上で発生するScope 3排出量の方がはるかに大きいと推測される(特にカテゴリ11「販売した製品の使用」とカテゴリ1「購入した製品・サービス」)。Scope 1, 2については75%削減という野心的な目標を掲げ、RE100の前倒し達成も見込まれるなど、着実な進捗を見せている 41。カテゴリ11についても、ZEH普及により大幅な削減を達成している 41。しかし、残る主要な排出源であるカテゴリ1(購入した製品・サービス)、すなわち資材の製造段階等における排出量の削減は、今後の大きな課題である。

この課題に対し、積水ハウスはサプライヤーエンゲージメントを強化する方針を打ち出している。具体的には、2030年までに主要サプライヤーの80%にSBT(科学的根拠に基づく目標)を設定してもらうことを目標として掲げ 47、サプライヤー向けの勉強会を開催するなど 15、協働での削減活動を開始している 46。プレハブ建築協会の一員として、業界共通の算定手法やエンゲージメント方法の検討にも参画している 49

しかし、サプライヤーエンゲージメントを実効性のあるものにするためには、単に目標設定を要請するだけでなく、より踏み込んだ支援と連携が必要となる。サプライヤー、特に中小企業にとっては、GHG排出量の算定自体が負担となる場合や、削減策の導入に必要な技術・資金が不足している場合も考えられる 49。したがって、算定ツールの提供や研修会の実施 49 に加え、具体的な削減技術に関する情報提供、低炭素素材やプロセスの共同開発、場合によってはグリーン調達基準の強化と連動したインセンティブの付与やファイナンス支援なども検討する必要があるだろう。サプライヤーとの信頼関係を基盤に、共に削減目標達成を目指すパートナーシップを構築することが、Scope 3削減加速化の鍵となる。

8.2. 「House to House」実現に向けた技術的・経済的課題

2050年までにリサイクル部材のみで「循環する家」を実現するという「House to House」プロジェクト 16 は、積水ハウスのサーキュラーエコノミー戦略の中核を成す、極めて意欲的な目標である。しかし、その実現には多くの技術的・経済的な課題が存在する。

技術的な課題としては、まず、住宅を構成する3万点以上 16 もの多種多様な部材・素材について、それぞれ効率的かつ高品質なリサイクル技術(特に水平リサイクル)を確立する必要がある。現状では、水平リサイクルが実現できているのはインシュレーションボードや給水給湯配管など一部の部材に限られている 76。異種材料が複合された部材の分離・分解技術、再生材に含まれる不純物の除去技術、再生材を用いた製品の品質・性能保証技術など、克服すべき技術的ハードルは多い。また、解体現場から発生する使用済み部材を効率的に回収し、品質を維持しながら分別・処理するシステムの構築も不可欠である 78

経済的な課題としては、リサイクル部材のコスト競争力が挙げられる。現状では、多くの場合、リサイクル材はバージン材(新品の原料から作られた材料)よりもコストが高くなる傾向がある。リサイクル技術の開発・導入や、回収・分別システムの構築・運用にも多大な投資が必要となる。これらのコストを吸収し、リサイクル部材を用いた住宅が市場で受け入れられる価格で提供できるようになるためには、技術革新によるコスト削減、規模の経済の実現、そしてリサイクル材利用に対する政策的な支援(補助金、税制優遇、規制など)が重要となる可能性がある。

「House to House」は、単なるリサイクル技術の集合体ではなく、製品設計(リサイクルしやすい設計)、サプライチェーンマネジメント、回収・物流システム、そしてビジネスモデルそのものの変革を伴う、壮大なシステムチェンジへの挑戦である。その実現には、サプライヤーはもちろん、解体業者、リサイクル事業者、研究機関、行政など、多様なステークホルダーとの連携・協働、そして長期的な視点に立った研究開発投資が不可欠となるだろう。

8.3. LCCM住宅の市場普及とコスト競争力

LCCM住宅は、ライフサイクル全体でのカーボンマイナスを実現する究極の環境配慮型住宅として期待されるが、その市場普及にはいくつかの課題が存在する。

最大の課題は、やはり初期建設コストの高さである 56。LCCM住宅は、ZEH基準を上回る断熱性能、より大容量の太陽光発電システム、場合によっては蓄電池などの高性能な設備・仕様が求められるため、一般的な住宅やZEH住宅と比較して、建築費用が20~30%程度高くなるケースが多いとされる 57。この初期コストの負担が、消費者にとって導入の大きな障壁となっている。国の補助金制度 57 はこの負担を軽減する上で有効だが、補助金に頼らない形でのコスト競争力の向上が、本格的な普及には不可欠である。

また、LCCM住宅の価値が、消費者や不動産市場で十分に認識・評価されていないという課題もある 19。LCCM住宅は、光熱費の大幅な削減 56 や、一年を通じた快適な居住環境 56、高いレジリエンスといったメリットを提供するが、これらの長期的な便益や、ライフサイクル全体での環境貢献度といった価値が、住宅価格に適切に反映される市場メカニズムはまだ成熟していない。消費者の環境意識の高まり 66 や、将来的な炭素価格の導入などを背景に、LCCM住宅の価値が正当に評価されるよう、積極的な情報発信と市場啓発が必要となる。

さらに、技術的な側面として、LCCM認定に必要なライフサイクルCO2排出量の算定・評価が複雑であることや 66、太陽光発電量を最大化するための屋根形状の制約 56 など、設計上の課題も存在する。また、LCCM住宅の設計・施工に対応できる専門知識を持つ事業者がまだ限られている点 57 も、普及のボトルネックとなり得る。

積水ハウスは、LCCM認定第1号を取得するなど 62、この分野で先行している。今後は、技術開発によるコストダウン、ライフサイクル価値の訴求力強化、設計・施工ノウハウの標準化などを通じて、LCCM住宅の市場形成をリードしていく役割が期待される。

8.4. 生物多様性保全活動の更なる展開と効果最大化

積水ハウスの「5本の樹」計画は、20年以上の継続と定量評価の実現により、都市における生物多様性保全の先進的なモデルとなっている。今後の課題は、この取り組みをさらに発展させ、その効果を最大化していくことである。

具体的には、まず「5本の樹」計画の質的な向上と地理的な拡大が挙げられる。共同開発した「生物多様性可視化提案ツール」 81 を全国の設計・営業現場に導入・活用することで、個々の敷地条件に応じて生物多様性保全効果を最大化できる植栽提案を標準化し、計画全体の効果を高めることが期待される。また、この考え方を、戸建住宅だけでなく、都市開発事業や海外の住宅事業にも積極的に展開していくことで、より広範なエリアでの生物多様性への貢献が可能となる。

次に、OECM(自然共生サイト)認定の活用と連携強化が重要となる。「新・里山」での認定実績 102 を活かし、他の自社保有緑地や開発プロジェクトにおいても認定取得を目指すとともに、「ネットワーク型OECM」 81 の実現に向けた具体的な戦略を策定し、その有効性を実証していく必要がある。これには、地域の自治体、NPO/NGO、研究機関、そして地域住民との連携・協働が不可欠となる 90。パートナーシップを通じて、地域全体の生態系ネットワーク構築に貢献するモデルを創り上げることが期待される。

さらに、開発した「ネイチャー・ポジティブ方法論」 87 の普及促進と、その応用範囲の拡大も重要なテーマである。住宅業界だけでなく、他の産業セクターや公共事業などにおいても、この方法論が活用されるよう働きかけることで、社会全体の生物多様性リテラシー向上と保全活動の質の向上に貢献できる可能性がある。

生物多様性保全活動の効果を最大化するためには、自社単独での取り組みには限界がある。科学的知見(大学等との連携 88)、地域社会との協働、行政との連携、そして同業他社を含む企業間連携 90 といった、多様なステークホルダーとのパートナーシップを強化し、オープンな姿勢で知見や資源を共有していくことが、今後の展開において不可欠となるだろう。

9. 積水ハウスへの戦略的提言

これまでの分析を踏まえ、積水ハウスが環境経営のリーダーシップをさらに強化し、持続的な企業価値向上と社会への貢献を両立させていくために、以下の4つの戦略的提言を行う。

9.1. サプライヤー・エンゲージメントを通じたScope3削減の具体化

Scope3排出量、特にカテゴリ1(購入した製品・サービス)の削減を加速するため、サプライヤーエンゲージメント戦略をより具体化し、実行レベルを深化させるべきである。単にSBT目標の設定を要請するだけでなく、サプライヤーの規模、業種、技術レベル、排出削減ポテンシャルなどを考慮した、テーラーメイド型の支援プログラムを展開することが有効である。具体的には、省エネ診断や削減技術に関する情報提供・研修会の実施、低炭素素材やプロセスの共同研究開発プロジェクトの立ち上げ、導入コストに対するファイナンス支援(例:グリーンローンや補助金申請サポート)などが考えられる。特に、主要な資材(鋼材、セメント、ガラス、断熱材、樹脂製品など)については、低炭素版(例:グリーン鋼材、低炭素セメント)の調達比率に関する具体的な目標を設定し、サプライヤーと共にその達成に向けたロードマップを策定・推進することが望ましい。また、Scope3カテゴリ1の排出量算定においては、業界標準のデータベース利用から、サプライヤーから提供される一次データ(実際の排出量データ)に基づく算定への移行を進め、算定の精度と削減効果の透明性を高めるべきである。この過程で得られた知見や課題を、プレハブ建築協会などを通じて業界内で共有し、算定手法の標準化やベストプラクティスの普及に貢献することも期待される 49

9.2. サーキュラーエコノミー移行に向けた研究開発と事業化の推進

「House to House」プロジェクトによる2050年「循環する家」の実現という目標達成に向けて、具体的なロードマップと中間目標(マイルストーン)を策定し、進捗状況を定期的に開示することが重要である。膨大な数の部材の中から、リサイクル技術開発やサプライチェーン構築の難易度、環境負荷削減効果、経済性などを考慮し、優先的に取り組むべき部材・素材群(例:主要構造材、外壁材、断熱材、内装材、設備機器など)を特定し、研究開発リソースを重点的に投下すべきである。特に、品質劣化を伴わずに繰り返しリサイクル可能な水平リサイクル技術の開発と社会実装を加速させる必要がある。同時に、解体現場における効率的かつ高精度な部材分別・回収技術、回収された部材の品質評価・管理基準、そして再生材のトレーサビリティを確保するシステムの開発・導入も不可欠である。さらに、製品設計の段階から、将来の解体、分別、リユース、リサイクルを容易にする「サーキュラーデザイン(Design for Circularity)」の考え方を導入し、これを自社の設計標準とするとともに、サプライヤーに対しても同様の設計思想に基づく部材開発・供給を要請していく必要がある。将来的には、リサイクル部材を活用した住宅の性能や価値が市場で正当に評価される仕組みづくりや、循環型ビジネスモデル(例:製品サービス化、リース、シェアリング)の導入可能性についても検討を進めるべきである。

9.3. ネイチャー・ポジティブ戦略の深化とOECM等外部連携の活用

生物多様性保全におけるリーダーシップをさらに強化するため、「5本の樹」計画で培った知見、定量評価手法、そして「ネイチャー・ポジティブ方法論」を、国内の都市開発事業や海外事業へと積極的に展開し、その貢献範囲をグローバルに拡大すべきである。特に、海外においては、現地の生態系特性や法規制、文化などを十分に考慮した上で、地域に適したネイチャー・ポジティブ戦略を構築・実践することが求められる。国内においては、「ネットワーク型OECM」の実現に向けた具体的な連携モデルを構築し、実証プロジェクトを通じてその有効性を示すとともに、政策提言などを通じて制度化を働きかけることが期待される。これには、地域の自治体、NPO/NGO、研究機関、地域住民など、多様なステークホルダーとの積極的な対話と協働が不可欠である。また、TNFDに基づく情報開示については、自然関連リスクと機会が事業や財務に与える具体的な影響(財務的影響評価)の分析を深化させ、その結果を経営戦略やリスク管理プロセスに統合するとともに、投資家をはじめとするステークホルダーとのエンゲージメントを強化し、建設的な対話を通じて企業価値向上に繋げていくべきである。

9.4. 環境価値と経済価値の統合的訴求による企業価値向上

積水ハウスが創出する環境価値(ZEH/LCCMによるCO2削減、資源循環、生物多様性保全など)と、それがもたらす経済価値(顧客にとっての光熱費削減、快適性・健康性の向上、レジリエンス強化、資産価値維持・向上、企業にとってのブランド価値向上、競争優位性確保、リスク低減など)を、より統合的かつ具体的に、ストーリー性を持って訴求するコミュニケーション戦略を強化すべきである。統合報告書「Value Report」 9 はその中核となるツールであるが、ウェブサイト、広告、営業活動、IR活動など、あらゆる顧客・投資家接点において、この統合的な価値提案を一貫して発信することが重要である。特に、LCCM住宅や「House to House」のような先進的な取り組みについては、その長期的な便益や社会的な意義を分かりやすく伝え、市場の理解と評価を醸成していく必要がある。また、CDP、MSCI、SustainalyticsなどのESG評価機関との継続的な対話を通じて、自社の取り組み内容やパフォーマンスが評価基準に照らして適切に理解・反映されるよう努めることも重要である。さらに、長年培ってきた環境技術やノウハウ、顧客基盤、ブランド力を活用し、例えば、家庭向けエネルギーマネジメントサービス、再生可能エネルギー電力供給サービス(「オーナーでんき」の拡大・発展)、企業向け環境コンサルティング、あるいは循環型社会に対応した新たなリフォーム・リノベーション事業など、環境課題解決に貢献する新規事業領域への展開可能性を積極的に検討することも、将来の成長に向けた有効な戦略となり得るだろう。

10. 結論

10.1. 積水ハウスの環境パフォーマンスとリーダーシップの総括

本報告書における分析の結果、積水ハウス株式会社は、気候変動の緩和と適応、資源循環の実現、そして生物多様性の保全という、現代社会が直面する重要な環境課題に対して、長年にわたり真摯に取り組み、業界をリードする多くの先進的な成果を上げてきたことが明らかになった。

気候変動分野においては、早期からの脱炭素ビジョンの設定、科学的根拠に基づく野心的なGHG削減目標(SBT 1.5℃目標)の策定と着実な進捗、業界に先駆けたRE100への加盟と目標達成の前倒し見込み、そして国内トップクラスのZEH普及率達成など、具体的なパフォーマンスは高く評価される。特に、顧客参加型の再生可能エネルギー調達スキーム「積水ハウスオーナーでんき」は、独自性と実効性を兼ね備えた優れたイニシアチブである。

資源循環分野では、主要4部門における廃棄物ゼロエミッションの達成と、それを支える自社資源循環センター網及びデータ駆動型の管理システムは、業界の模範となる高度な廃棄物管理体制を示している。さらに、2050年目標として掲げる「House to House」プロジェクトは、製品ライフサイクル全体での完全循環を目指す、極めて先進的かつ本質的なサーキュラーエコノミーへの移行戦略であり、同社の強い意志と長期的な視座を象徴している。

生物多様性分野においては、20年以上にわたる「5本の樹」計画の継続と1,900万本を超える植栽実績は特筆に値する。さらに、琉球大学及びシンク・ネイチャーとの連携による世界初の都市部における生物多様性効果の定量評価手法の開発と「ネイチャー・ポジティブ方法論」としての公開は、科学的根拠に基づいた保全活動の推進と、その価値の可視化において画期的な成果である。自然共生サイト(OECM)認定の取得も、その取り組みが公的にも評価されていることを示している。

これらの多岐にわたる先進的な取り組みと高いパフォーマンスは、CDPにおけるトリプルA評価、DJSI World Indexへの長期連続選定、MSCIやSustainalyticsからの高評価といった、主要な外部ESG評価機関からの卓越した評価によっても裏付けられており、積水ハウスが環境経営において国内のみならず、グローバルに見てもトップレベルのリーダーシップを発揮していることを明確に示している。

10.2. 持続可能な社会構築への貢献と将来展望

積水ハウスの環境への取り組みは、単に自社のリスクを管理し、企業価値を高めるだけでなく、建設・住宅業界全体の環境意識の向上と技術革新を牽引し、日本が目指す2050年カーボンニュートラルや、国際社会が目指すネイチャー・ポジティブ(自然再興)の実現に向けて、重要な貢献を果たすものである。

しかし、そのリーダーシップを維持・発展させ、持続可能な社会の構築にさらに貢献していくためには、本報告書で指摘したような課題、すなわちサプライチェーン全体を巻き込んだScope 3排出量の削減加速化、「House to House」実現に向けた技術的・経済的障壁の克服、LCCM住宅の市場普及、そして生物多様性保全活動の地理的・質的拡大といった課題に対して、果敢に挑戦し続ける必要がある。

今後は、これまでの成功体験に安住することなく、常にイノベーションを追求し、サプライヤー、顧客、地域社会、研究機関、行政、さらには同業他社といった多様なステークホルダーとの連携・協働(パートナーシップ)を一層強化していくことが求められる。環境価値と経済価値を両立させるESG経営をさらに深化させ、その成果を透明性高く社会に発信し続けることで、積水ハウスは、"「わが家」を世界一幸せな場所にする"というグローバルビジョンの実現 9 に向けて、持続的な企業価値の向上と、より良い社会・地球環境の実現への貢献を両立させていくことが期待される。

引用文献

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  98. 住宅メーカー3社の協働が、都市の生物多様性を多面的に再生――シンク・ネイチャーが実証、世界初の事例に | サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan,  https://www.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/1224200_1501.html

  99. お客様と共に20年、「5本の樹」計画で都市の生物多様性保全推進 ~生物多様性の財務価値化の幕開け、ネイチャー・ポジティブ方法論を公開~ | ニュースリリース | 企業・IR・ESG・採用 | 積水ハウス,  https://www.sekisuihouse.co.jp/company/topics/topics_2021/20211126/

  100. 2本は蝶のために――積水ハウス「5本の樹」計画の生物多様性回復効果の可視化進む,  https://www.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/1223251_1501.html

  101. 民間企業のネイチャー・ポジティブ活動に関する支援ツール開発: 生物多様性ビックデータと人工知能を基にした企業のESG評価 | 琉球大学,  https://www.u-ryukyu.ac.jp/news/30620/

  102. 積水ハウス他3社の企業緑地「新・里山」、環境省「自然共生サイト」の認定評価を取得,  https://www.sekisuihouse.co.jp/company/topics/topics_2023/20231006/

  103. 旭化成ホームズ 環境省の「生物多様性のための30by30アライアンス」に参加 - PR TIMES,  https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000038.000073738.html

  104. 自然共生サイト認定 - 大和リース,  https://www.daiwalease.co.jp/approach/kyousei.html

  105. OECMとは?企業が認定を得るメリットや事例をわかりやすく解説!,  https://www.bluedotgreen.co.jp/column/esg/oecm/

  106. 【日本】環境省、自然共生サイト第1弾認定結果発表。OECMデータベースに登録,  https://sustainablejapan.jp/2023/10/11/ocem/96046

  107. 大和ハウスグループの2プロジェクトが環境省「自然共生サイト」の認定評価を取得,  https://www.daiwahouse.co.jp/about/release/house/20241018164159.html

  108. 環境省による生物多様性保全のしくみ 自然共生サイトに「あさひ・いのちの森」認定 - PR TIMES,  https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000092.000073738.html

  109. 生物多様性保全への対応(TNFDへの対応) - 日本郵政,  https://www.japanpost.jp/sustainability/environment/biological_diversity.html

  110. 積水ハウス、統合報告書「VALUE REPORT 2024」公開のお知らせ,  https://kyodonewsprwire.jp/release/202407123573

  111. ESGデータ(追加開示) - 積水ハウス,  https://www.sekisuihouse.co.jp/library/company/sustainable/download/2023/value_report/20240131_additional_disclosure.pdf

  112. 生物多様性 | 環境 - サステナビリティ | 住友商事,  https://sumitomocorp.disclosure.site/ja/themes/27

  113. 「TNFD Early Adopter」に登録~ネイチャーポジティブ経営を加速~ | 住友林業株式会社のプレスリリース - PR TIMES,  https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000057.000052275.html

  114. 「サステナビリティレポート2024」発行(ニュースレター) | 大和ハウス工業株式会社のプレスリリース,  https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002144.000002296.html

  115. 取得件数から見る日本のグリーンビルディング認証の将来性| JLL記事,  https://www.joneslanglasalle.co.jp/ja/trends-and-insights/investor/number-of-acquisitions-of-green-building-certification-in-japan

  116. グリーンビルディングの需給動向から考える脱炭素時代のオフィス市場 Ⅰ - ノムコム,  https://www.nomu.com/cre-navi/trend/20230222.html

  117. グリーンビルディングとは?事例やメリットと日本で普及しない理由も解説,  https://www.spaceshipearth.jp/greenbuilding/

  118. 【話題提供】グリーンインフラと グリーンビルデングについて - 国土交通省,  https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/environment/content/001717242.pdf

  119. 気候変動の緩和と適応 - 大和ハウス工業,  https://www.daiwahouse.co.jp/sustainable/csr/pdfs/2024/env_ClimateChange.pdf

  120. CDPスコアとは?企業価値向上の鍵を握る仕組みと情報開示の進め方 - Persefoni,  https://www.persefoni.com/ja/blog/cdp-score-disclosure-and-corporate-value

  121. 積水ハウス、CDP フォレストと水セキュリティの2分野で「Aリスト」選定,  https://kyodonewsprwire.jp/release/202502063915

  122. サステナビリティレポート2024 - 積水化学工業,  https://www.sekisui.co.jp/sustainability_report/

  123. GPIF・ESGインデックス銘柄(MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数)東洋経済CSR評価データ,  https://biz.toyokeizai.net/-/csr/esg/esgindexMSCIESG.html

  124. Sekisui House, Ltd. ESG Risk Rating - Sustainalytics,  https://www.sustainalytics.com/esg-rating/sekisui-house-ltd/1008751941

  125. ESGインデックス・社外評価|サステナビリティ - 大和ハウス工業,  https://www.daiwahouse.co.jp/sustainable/esg/index.html

  126. 大和ハウスグループの2プロジェクトが環境省「自然共生サイト」の認定評価を取得(ニュースレター),  https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002194.000002296.html

  127. サステナビリティレポート|ライブラリ - 大和ハウス工業,  https://www.daiwahouse.co.jp/sustainable/library/csr_report/?page=from_header

  128. 大和ハウス工業【1925】GHG排出量推移・環境スコア | GXリサーチ,  https://gx-research.com/companies/6120001059662

  129. 1月 1, 1970にアクセス、 https://www.daiwahouse.co.jp/sustainable/csr/pdfs/2024/env_Harmony.pdf

  130. 環境フラッグシップ「LCCM住宅」発売 ~木造の利点を活かし炭素を固定 ライフサイクル全体でもCO2削減~ | 住友林業,  https://sfc.jp/information/news/2022/2022-04-21.html

  131. 住友林業、環境フラッグシップモデル「LCCM(ライフサイクルカーボンマイナス)住宅」発売,  https://www.jutakutenjijo.com/knowledge/3068

  132. 鳥取に「LCCM住宅」初のモデルハウス/住友林業 | 最新不動産ニュースサイト「R.E.port」,  https://www.re-port.net/article/news/0000070529/

  133. LCCM住宅 脱炭素社会を実現する高効率設備の家づくり - 住友林業,  https://sfc.jp/ie/lineup/lccm/

  134. 住友林業、環境フラッグシップモデル「LCCM住宅」発売 - 新建ハウジング,  https://www.s-housing.jp/archives/271795

  135. 住友林業:LCCM住宅発売、年間100棟受注目指す | SMART HOUSE READERS,  https://www.smarthouse-readers.com/news/news.php?s=8817

  136. 住友林業、大容量太陽光搭載・LCCM住宅を発売 CO2収支マイナス - ECO信頼サービス,  https://eco-shinrai-service.com/%E4%BD%8F%E5%8F%8B%E6%9E%97%E6%A5%AD%E3%80%81%E5%A4%A7%E5%AE%B9%E9%87%8F%E5%A4%AA%E9%99%BD%E5%85%89%E6%90%AD%E8%BC%89%E3%83%BBlccm%E4%BD%8F%E5%AE%85%E3%82%92%E7%99%BA%E5%A3%B2%E3%80%80co2%E5%8F%8E/

  137. 国内社有林・海外植林地の生物多様性保全 - 住友林業,  https://sfc.jp/information/sustainability/environment/biodiversity/inforest.html

  138. 生物多様性保全に関する方針 - 住友林業,  https://sfc.jp/information/sustainability/environment/biodiversity/

  139. 富士山「まなびの森」 環境省「自然共生サイト」に認定~住友林業で2か所目・自然林再生活動を評価 - PR TIMES,  https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000129.000052275.html

  140. 社外からの評価 - 住友林業,  https://sfc.jp/information/sustainability/evaluation/

  141. 住友林業 9年連続「気候変動Aリスト」入り CDP2024で最高評価 - PR TIMES,  https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000148.000052275.html

  142. 心地よい暮らしがいつまでも|太陽光パネルを標準搭載 | ヘーベルハウス - 旭化成,  https://www.asahi-kasei.co.jp/hebel/technology/thermal-insulation/zeh.html/

  143. SDGs7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」現状の問題点や取り組み - SDGs CONNECT,  https://sdgs-connect.com/archives/441

  144. 気候変動の緩和・気候変動への適応・エネルギー消費量の削減|With Environment - 旭化成,  https://www.asahi-kasei.co.jp/j-koho/sustainable/environment/climate_change/index.html/

  145. 「Sustainability Report 2024」を公開 | 旭化成ホームズ株式会社のプレスリリース - PR TIMES,  https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000145.000073738.html

  146. 気候変動 | 環境 | サステナビリティ | 旭化成株式会社 - Asahi Kasei Corporation,  https://www.asahi-kasei.com/jp/sustainability/environment/climate_change/

  147. 使用済みユニフォームの処分方法について ガス化ケミカルリサイクル手法を採用 - PR TIMES,  https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000096.000073738.html

  148. 汚染防止と資源循環 | 環境 | サステナビリティ | 旭化成株式会社 - Asahi Kasei Corporation,  https://www.asahi-kasei.com/jp/sustainability/environment/resources/

  149. 生物多様性保全 | 環境 | サステナビリティ | 旭化成株式会社 - Asahi Kasei Corporation,  https://www.asahi-kasei.com/jp/sustainability/environment/biodiversity/

  150. 持続可能な環境配慮型社会の実現 - 大成建設サステナビリティ,  https://www.taisei-sx.jp/environment/tgt/

  151. 建設業で活かせるカーボンニュートラル事例集 - CO2可視化削減プラットフォーム「EcoNiPass」情報サイト,  https://econipass.com/construction_industry_carbon_neutral_case_studies/

  152. 別紙1 <一般部門・中小規模建築物部門の採択プロジェクト一覧> 野村不動産株式会社,  https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001420334.pdf

  153. 「環境に配慮している」企業ランキング1位はトヨタ自動車。2位住友林業〈企業版SDGs調査〉,  https://news.tiiki.jp/articles/4830

  154. 10月は住生活月間 - 一般社団法人 住宅生産団体連合会,  https://www.judanren.or.jp/publication/journal_pdf/k1807.pdf

  155. PDFダウンロード|住友林業 - Scribd,  https://www.scribd.com/document/841419444/PDF%E3%82%BF-%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%88-%E4%BD%8F%E5%8F%8B%E6%9E%97%E6%A5%AD

  156. サステナビリティ - 住友林業,  https://sfc.jp/information/sustainability/

  157. PDFダウンロード|住友林業,  https://sfc.jp/information/sustainability/pdf/

  158. サステナビリティレポート2024|サステナビリティ|旭化成 ...,  https://www.asahi-kasei.co.jp/j-koho/sustainable/report/index.html/

  159. Sustainability Report 2024 - 旭化成,  https://www.asahi-kasei.co.jp/j-koho/sustainable2024_A4.pdf

  160. 環境スコアランキング(CDP気候変動スコア:A企業) | GXリサーチ,  https://gx-research.com/scores?cdp_score_climate=8

  161. 旭化成グループ 生物多様性保全の取り組み「あさひ・いのちの森」 360度動画で森を散策!,  https://www.youtube.com/watch?v=XmahttDT_wo

  162. セカンドオピニオン | 大和ハウス工業株式会社 | 格付投資情報センター,  https://www.r-i.co.jp/news_release_suf/2024/03/news_release_suf_20240322_jpn.pdf

  163. サプライヤーエンゲージメント評価とは? 気になる概要をサクッと解説!,  https://www.bluedotgreen.co.jp/column/cdp/ser/

  164. 社外からの評価 〈451〉 - 住友林業,  https://sfc.jp/information/sustainability/pdf/pdf/2024_report_07.pdf

  165. Sekisui House Reit, Inc. - Company ESG Risk Rating - Sustainalytics,  https://www.sustainalytics.com/esg-rating/sekisui-house-reit-inc/1283661779

  166. Sekisui-House-Reit_Green-Bond-Frameworok_SPO_Final_Japanese.pdf - Sustainalytics,  https://www.sustainalytics.com/corporate-solutions/sustainable-finance-and-lending/published-projects/project/sekisui-house-reit-inc/sekisui-house-reit-inc-green-bond-framework-second-party-opinion-japanese/sekisui-house-reit-green-bond-frameworok-spo-final-japanese-pdf

  167. 外部評価・ データ集 - 大和ハウス工業,  https://www.daiwahouse.co.jp/sustainable/csr/pdfs/2020/ExternalEvaluation.pdf

  168. 積水ハウス、統合報告書「Value Report 2023」公開のお知らせ,  https://kyodonewsprwire.jp/release/202306086225

  169. 1月 1, 1970にアクセス、 https://sfc.jp/information/sustainability/pdf/pdf/2024_report.pdf