GX RESEARCH
更新日: 2025/5/26

日東電工

6988.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
環境スコア310
売上
915,139百万円
総資産
1,251,087百万円
営業利益
139,132百万円

COR(売上高炭素比率)

年間CO2排出量(kg)÷ 売上高(百万円)
Scope1+2
574kg
Scope3
2,946kg

COA(総資産炭素比率)

年間CO2排出量(kg)÷ 売上高(百万円)
Scope1+2
420kg
Scope3
2,155kg

Scope1

事業者自らによる直接排出
289,000t-CO2
2023年実績

Scope2

エネルギー消化に伴う間接排出
236,000t-CO2
2023年実績

Scope3

事業者の活動に関連する他社の排出
2,696,000t-CO2
2023年実績

スコープ3カテゴリー別データ

カテゴリー2021年度2022年度2023年度
1購入した製品・サービス
654,000
1,268,000
(614,000)
1,201,000
(67,000)
2資本財
86,000
127,000
(41,000)
209,000
(82,000)
3燃料・エネルギー関連活動
67,000
76,000
(9,000)
78,000
(2,000)
4輸送・配送(上流)
6,000
74,000
(68,000)
101,000
(27,000)
5事業から発生する廃棄物
32,000
152,000
(120,000)
130,000
(22,000)

国際イニシアティブへの参加

check
SBT
check
RE100
EV100
EP100
check
UNGC
30by30
check
GXリーグ

ガバナンス・フレームワーク開示

check
サステナビリティ委員会
check
TCFD・IFRS-S2
TNFD
潜在的環境財務コスト(シナリオ別試算)
2023年度排出量データ: スコープ1(289,000t)、 スコープ2(236,000t)、 スコープ3(270万t)
低コストシナリオ
想定単価: 3,000円/t-CO₂
スコープ1:8.7億円
スコープ2:7.1億円
スコープ3:80.9億円
総額:96.6億円
売上高比率:1.06%
中コストシナリオ
想定単価: 5,000円/t-CO₂
スコープ1:14.4億円
スコープ2:11.8億円
スコープ3:134.8億円
総額:161.1億円
売上高比率:1.76%
高コストシナリオ
想定単価: 10,000円/t-CO₂
スコープ1:28.9億円
スコープ2:23.6億円
スコープ3:269.6億円
総額:322.1億円
売上高比率:3.52%
※潜在的環境財務コストは、仮想的なカーボンプライシングシナリオをもとに算出した参考値です。

環境への取り組み

気候変動への取り組み強化に向け 国際的イニシアチブ「SBT」申請、「RE100」加盟 ~活動加速により、CO2排出量目標を前倒し~

Nittoグループは、ESG(環境・社会・ガバナンス)を経営の中心に置き、社会課題の解決と経済価値の創造の両立を目指しています。地球温暖化を中心とした気候変動は、人類共通の課題であり、豊かな地球を次世代へ承継していくためにも、解決していく必要があります。このたび、脱炭素活動を加速させるため、再生可能エネルギーの社会実装を促進する「RE100」への加盟とともに、自社だけではなく、サプライチェーン全体での環境負荷ゼロに向け、SBT認定を申請いたしました。 2022年5月には、「Nittoグループカーボンニュートラル2050」※3を宣言し、2023年に公表した中期経営計画の中でも、未財務目標として「CO2排出量の削減」を掲げております。2050年でのカーボンニュートラルの確実な実現に向け、製造工程において排出が避けられないCO2の回収・除去するネガティブエミッション技術開発とともに、様々な施策を実行してきた結果、470ktonの目標の前倒し達成が見えてまいりました。気候変動防止への取り組み強化のため、2030年での目標として「排出量400kton」を新たに設定いたしました。

気候変動関連のリスク・機会

※掲載情報は公開資料をもとに作成しており、全てのリスク・機会を網羅するものではありません。 より詳細な情報は企業の公式発表をご確認ください。

リスク

移行リスク

脱炭素社会への移行に伴う複数のリスクを認識しています。具体的には、環境規制強化による既存製品の販売困難化や規制遵守コストの増加、低炭素化への対応遅延による事業継続リスクが挙げられます 。また、資源循環の観点からは、資源価格の高騰や調達難によるコスト増・操業停止リスク、廃棄物処理・リサイクル技術革新の遅れによる競争力低下も懸念されます 。生物多様性保全への対応不足は、規制コスト増に加え、市場や顧客からの信頼失墜による受注減少に繋がる可能性があります 。   

物理的リスク

気候変動に伴う物理的なリスクとして、異常気象の激甚化によるインフラ被害を認識しています。特に、自社拠点やサプライチェーンにおける生産・物流ネットワークの途絶リスクを重要視しており、これが事業継続性に影響を与える可能性を考慮しています 。具体的な影響額の試算は示されていませんが、グローバルに展開する製造拠点とサプライチェーンを持つ同社にとって、物理的リスクへの備えは不可欠な要素です。   

機会

環境課題への対応を事業機会と捉えています。脱炭素化では、GHG削減要求に応える環境配慮型生産ラインへの転換による生産性向上や、EV向け部材などの低炭素製品・サービスの提供拡大が期待されます 。資源循環では、リサイクル技術(例:テープ分離技術)の確立による資源循環事業の拡大や、廃棄物削減によるコスト削減が見込まれます 。生物多様性保全に関連し、有害物質の分離・除去技術やネイチャーポジティブ製品への需要増も機会として認識しています 。独自制度「PlanetFlags™/HumanFlags™」認定製品(2030年度売上比率目標50%以上 )の開発推進は、これらの機会を具体化する戦略です 。

目標

環境分野で具体的な目標を設定しています。気候変動では、2050年カーボンニュートラル(Scope 1+2)、2030年までにScope 1+2排出量を40万トン(2020年度比46.3%削減)、Scope 3排出量を146万トン(2022年度比25%削減) を目指し、RE100にも加盟しました 。資源循環では、2030年までに廃棄プラスチックリサイクル率60%以上、サステナブル原材料調達比率30%以上(国内)を目標としています 。生物多様性保全については、グループ全体の定量目標は未設定ですが、汚染防止や有害物質管理に重点を置いています 。

環境アナリストレポート

日東電工株式会社の環境イニシアチブおよびパフォーマンスに関する包括的分析:気候変動、資源循環、生物多様性への焦点

1. 序論 (Introduction)

  • 1.1 背景と目的 (Background and Purpose) 日東電工株式会社(以下、Nitto)は、粘着・塗工技術をコアとし、工業用テープ、光学フィルム、機能性材料、さらにはライフサイエンス関連製品に至るまで、多岐にわたる高付加価値製品をグローバルに製造・販売する企業である 。同社は世界各地に拠点を持ち、その技術力と製品群はエレクトロニクス、自動車、住宅、インフラ、医療など幅広い産業分野で不可欠な役割を果たしている 。  

    近年、企業価値評価やステークホルダーからの期待において、環境(Environment)、社会(Society)、ガバナンス(Governance)のESG要素が急速に重要性を増しており、NittoグループもESGを経営の中核に据える方針を打ち出している 。これは、持続可能な社会の実現と経済価値の創出を両立させるという現代企業に課せられた責務を認識し、事業活動を通じて積極的に貢献しようとする姿勢の表れである。  

    本報告書は、Nittoの環境への取り組みと実績について、特に重要課題(マテリアリティ)として特定された「脱炭素社会の実現」(気候変動対策)、「循環型社会の実現」(資源循環への貢献)、および「生物多様性の保全」の3分野に焦点を当て、包括的かつ学術的な水準での分析を行うことを目的とする 。  

    最終的な目標は、同社の環境スコア算出に必要な詳細情報を収集し、そのパフォーマンスを業界内でベンチマークすること、さらには現在直面している課題を特定し、将来に向けた戦略的提言を行うことにある。本報告書は日本語で記述され、利用者からの指示に基づき、一切の表形式を用いず、全てのデータは文章による記述、または必要に応じて箇条書き形式で提示される [User Query]。

  • 1.2 報告書の構成と方法論 (Report Structure and Methodology) 本報告書は以下の構成で進められる。まず序論に続き、第2章でNittoの具体的な環境への取り組みと実績を詳述する。第3章では、環境要因に関連する潜在的なリスクと事業機会を分析する。第4章では、同業他社の先進事例や競合企業の環境パフォーマンスとの比較を通じて、Nittoの立ち位置を明らかにする(ベンチマーキング)。第5章では、これまでの分析を踏まえ、現状の課題を評価し、改善に向けた提言を行う。最後に第6章で結論を述べる。

    分析にあたっては、Nittoが開示している統合報告書 、サステナビリティデータブック 、公式ウェブサイト上の情報 を主要な情報源とした。加えて、競合企業の報告書、Sustainalytics、MSCI、CDPといったESG評価機関のデータ、および業界分析レポートを参照した。特に、パフォーマンスデータについては、最新の状況を反映するため、主に2023年度(2023年4月1日~2024年3月31日)のデータに基づいている 。  

    前述の通り、本報告書では表形式の使用を避け、全ての定量的データや比較分析結果は、本文中の記述、あるいは箇条書きによって明瞭に示される [User Query]。

2. 日東電工の環境への取り組みと実績 (Nitto Denko's Environmental Initiatives and Performance)

  • 2.1 環境マネジメント体制 (Environmental Management Structure) Nittoグループの環境経営は、「未来世代へ豊かな地球を引き継ぐために、私たちの地球を守る」という環境基本方針に基づいている 。この方針の下、サプライチェーン全体での環境負荷ゼロを目指し、自然との調和を図りながら循環型社会の発展に貢献すること、環境関連情報の積極的な開示、および環境関連法規の遵守を掲げている 。  

    この方針を実効性あるものにするため、Nittoは多層的なガバナンス体制を構築している。最高意思決定機関である取締役会が、環境経営方針や中期経営計画における環境関連の重要目標に関する最終決定、および取り組みへの支援に対する責任を負い、四半期ごとに目標の進捗状況に関する報告を受け、監督を行う 。その下部組織として、社長執行役員CEOを議長とする経営戦略会議が環境ガバナンス体制の中核を担い、環境方針や指標に基づき具体的な施策を審議・決定し、リスク・機会の管理と取り組みの進捗を毎月モニタリングする 。さらに、環境担当役員を委員長とするグローバルグリーン委員会が、ESG管掌部門、調達部門、事業部門、地域統括と連携し、環境課題解決に向けた戦略策定と施策の実行推進を担う体制となっている 。環境推進担当役員、専門機能部門(環境担当部署)、各事業体内の環境部門が、それぞれのレベルで具体的な活動を推進する構造である 。この階層的な構造は、トップレベルのコミットメントが現場レベルの実行へと繋がることを意図しているが、その有効性は各階層間の円滑なコミュニケーションと実行力に依存する側面がある。  

    環境マネジメントシステムの効果的な運用のため、NittoはISO 14001認証を取得している(国内全事業所および主要国内グループ会社は2001年3月までに取得完了、海外拠点も順次取得中) 。この国際規格は、PDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルの実践、環境パフォーマンスの向上、汚染の予防、法規制遵守を含む環境活動を体系的に進めるための枠組みを提供する 。  

    さらにNittoは、環境や人々の暮らしへの貢献度が特に高い製品を認定する独自制度「PlanetFlags™/HumanFlags™」を導入している 。これは、サステナビリティへの取り組みを具体化し、研究開発段階からESG目標との連携を図る重要な仕組みである 。実際に、この原則に合致しない新規R&Dプロジェクトは開始しない方針が示されており 、2030年度までにこれらの認定製品カテゴリーの売上高比率を50%以上に引き上げるという野心的な目標も設定されている 。この制度の導入と目標設定は、Nittoがコンプライアンスを超えて、サステナビリティを将来の収益源と結びつけ、事業の中核的なイノベーションに組み込もうとする戦略的な転換を示唆している。  

  • 2.2 気候変動対策 (Climate Change Actions)

    • 戦略と目標 (Strategy and Targets): Nittoグループは、気候変動を人類共通の喫緊の課題と捉え、「Nittoグループ カーボンニュートラル2050」を2022年5月に宣言し、2050年度までに事業活動における温室効果ガス(GHG)排出量(Scope 1+2)の実質ゼロを目指している 。 この長期目標達成に向けた中間目標として、2030年度までにScope 1+2のCO2排出量を40万トン/年(2020年度比46.3%削減)に削減することを掲げている 。当初の目標(2023年統合報告書記載の2030年目標47万トン )から上方修正されており、取り組みの加速がうかがえる。実際、最近の発表では、当初2030年目標であった47万トンを5年前倒しで2025年度に達成する見込みであると言及されており、計画を上回るペースで進捗していることが示唆される 。 さらに、サプライチェーン全体での脱炭素化にも貢献するため、2030年度までにScope 3排出量を146万トン(2022年度比25%削減)に削減する目標も設定している 。 これらの目標達成を加速するため、環境関連投資額を当初計画の600億円から800億円へと増額修正している 。また、最近では、再生可能エネルギー100%を目指す国際イニシアチブ「RE100」への加盟と、科学的根拠に基づく目標設定(SBT)の認証申請を行ったことを発表しており、取り組みを一層強化する姿勢を示している 。  

    • 具体的取り組み (Specific Initiatives): Nittoは多岐にわたる具体的な施策を通じてGHG排出削減に取り組んでいる。

      • 省エネルギー: 製造プロセスにおけるエネルギー効率改善や、拠点全体での継続的な省エネ活動を推進している 。  

      • 再生可能エネルギー導入: 2005年から太陽光発電システムの導入を開始し、2025年度までの完了を目指している 。2022年度末時点で、国内8MW、海外6MWの発電能力を有している 。RE100への加盟により、今後は事業活動で使用する電力の100%再生可能エネルギー化を目指す 。  

      • プロセス革新: 製造工程におけるエネルギー消費と溶剤使用量を削減するため、UV硬化技術や水系粘着剤などを用いた無溶剤化技術の確立に取り組んでいる 。  

      • 電化・水素利用: 新たな排出削減アプローチとして電化を検討するとともに、東北事業所では太陽光発電由来の電力でグリーン水素を製造し、水素ボイラーで利用する技術を導入している 。  

      • CO2回収・利用: 製造工程で不可避的に排出されるCO2を分離・貯留・転換するネガティブエミッション技術の開発を進めており、2023年3月には滋賀事業所に実証設備を導入した 。  

      • サプライチェーン(Scope 3): Scope 3排出量の算定プロセス確立(2025年度完了目標)を進めるとともに、大学と連携して製品のカーボンフットプリント算定ガイドライン策定に取り組んでいる 。  

      • グリーンビルディング: 豊橋事業所において、エネルギー消費量を105%削減するZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)認証を取得したオフィス棟「LINCS」を完成させた 。  

      • 物流効率化: 輸送トラックの待機時間短縮(2021年度19.6分→2022年度14.2分)やモーダルシフト(2022年度に前年比65トンのCO2削減)により、物流段階での排出削減も図っている 。  

    • 実績 : Nittoの気候変動対策における2023年度の主要な実績は以下の通りである。  

      • Scope 1+2 CO2排出量(マーケット基準): 525千トン(2022年度の571千トン、2021年度の649千トンから着実に減少)

      • Scope 1 排出量: 289千トン(2022年度の299千トンから減少)

      • Scope 2 排出量(マーケット基準): 236千トン(2022年度の271千トンから減少)

      • 総エネルギー消費量: 2,016,407 MWh(2022年度の1,938,591 MWhからは増加したが、2021年度の2,113,800 MWhからは減少)

      • 再生可能エネルギー使用量: 346,563 MWh(2022年度の290,789 MWhから増加)

      • 再生可能エネルギー比率(総エネルギー消費量比): 17%(2022年度の15%、2021年度の6%から着実に向上)

      • Scope 3 排出量: 2,696千トン(2022年度の2,622千トンから増加)

    • 分析 (Analysis): NittoはScope 1およびScope 2排出量の削減において著しい進捗を示しており、目標達成を前倒しする勢いである 。この削減は、再生可能エネルギー導入率の着実な向上(2021年度6%→2023年度17%)と強く関連しているように見える 。RE100への加盟は、特にScope 2排出量削減を今後さらに加速させ、2050年のカーボンニュートラル目標達成に向けた重要な推進力となることが期待される 。  

      一方で、Scope 3排出量は依然として大きな課題である。2023年度には前年度から増加しており 、その排出量(2,696千トン)はScope 1+2(525千トン)を大幅に上回っている 。算定方法の精緻化(2025年度完了目標 )を進めているとはいえ、2030年までに25%削減という目標 を達成するには、現在報告されている物流効率化 などの取り組みに加え、原材料調達(上流)や製品使用・廃棄(下流)における影響を低減するための、より踏み込んだサプライチェーン全体でのエンゲージメントと技術革新が不可欠となる。  

      また、総エネルギー消費量は2022年度に減少した後、2023年度には微増している 。これは、省エネルギー対策 を進めているものの、生産量の変動やその他の要因が効率化による削減効果を相殺している可能性を示唆する。無溶剤化プロセス導入 などはエネルギー集約度の低減を目指すものであるが、グループ全体のエネルギー消費動向に対するこれらの施策のインパクトを継続的に監視し、再生可能エネルギー導入と並行して、エネルギーマネジメントへの注力を続ける必要がある。  

  • 2.3 資源循環への貢献 (Resource Circulation Actions)

    • 戦略と目標 (Strategy and Targets): Nittoは、天然資源の消費抑制と効率的な利用・リサイクルを推進することにより、循環型社会の実現を目指している 。この分野における主要な目標として、以下を設定している。  

      • 2030年度目標: 廃棄プラスチックのリサイクル率60%以上 。  

      • 2030年度目標: サステナブル原材料調達比率30%以上(当初は国内から開始) 。  

      • 将来的目標: 資源循環プラントの建設によるZLD(Zero Liquid Discharge:液体排出ゼロ)の実現 。  

    • 具体的取り組み (Specific Initiatives): 資源循環の実現に向けて、Nittoは技術開発からプロセス改善、調達に至るまで、多角的な取り組みを進めている。

      • リサイクル技術開発: 粘着テープを構成素材(フィルム、粘着剤)に分離しリサイクルする基盤技術を2022年度に確立。2023年度には量産化に向けた実証設備の導入を計画している 。  

      • 工程内リサイクル: 粘着テープ製造工程から発生するPETフィルム等を回収し、梱包用テープのフィルム基材として再利用している 。  

      • サステナブル原材料の利用: フィルム基材や粘着剤、包装材などに、リサイクル材やバイオマス材を主原料・副資材として積極的に採用している 。  

      • 溶剤削減・回収: Nitto Belgium NVでは省エネ型溶剤回収装置を導入(エネルギー消費30%削減見込み)。新規工場でも溶剤リサイクルシステムを導入している 。  

      • 水資源の再利用: 滋賀事業所では、RO(逆浸透)膜などの水処理技術を活用し、工場排水の再利用を推進。2023年3月時点で排水利用率90%を達成した 。将来的にはZLDプラントの導入も計画している 。  

      • プロセス液のリサイクル: メンブレン事業部の膜処理技術を活用し、製造に使用するプロセス液のリサイクルも行っている 。  

      • グリーン調達: 環境保全に配慮した調達を推進するため、基本方針と具体的な基準(グリーン調達基準書)を定め、サプライチェーン全体での環境負荷低減に努めている 。  

    • 実績 : 2023年度の資源循環に関する主要な実績は以下の通りである。  

      • 廃棄物等総排出量: 119千トン(2022年度の145千トン、2021年度の144千トンから大幅に減少)

      • 廃棄物リサイクル率(全体): 73%(2022年度の84%、2021年度の82%から顕著に低下)

      • 最終処分量(埋立またはエネルギー回収なしの焼却): 32千トン(2022年度の23千トン、2021年度の25千トンから増加)

      • 廃棄プラスチックリサイクル率: 2023年度のデータは提供されていない 。2022年度は46% 、2021年度は47% 。2030年度目標は60% 。  

      • サステナブル原材料調達比率: 2023年度のデータは提供されていない 。2022年度は17%(国内)。2030年度目標は30% 。  

      • 総取水量: 5,806千m³(2022年度の6,034千m³から減少)。内訳: 市水・工水 3,488千m³、地下水 2,318千m³。

      • 総排水量: 5,149千m³(2022年度の5,147千m³とほぼ同水準)。

      • 水リサイクル率: 29%(2023年度データが初めて提供された )。  

    • 分析 (Analysis): 2023年度の廃棄物関連データには、注目すべき矛盾点が存在する。廃棄物総排出量は大幅に減少したにもかかわらず、全体のリサイクル率も急激に低下し、結果として最終処分量が増加している 。この現象については、提供された資料内では明確な説明がなされていない 。考えられる要因としては、廃棄物の組成がリサイクルしにくいものへと変化した可能性、外部のリサイクル市場の受け入れ能力や経済性の変化、あるいはリサイクル可能性に影響を与える内部プロセスの変更などが挙げられるが、Nittoによる原因究明と説明が求められる。この傾向は、循環型社会の実現という目標 に逆行するものであり、根本的な問題が解決されない場合、2030年の廃棄プラスチックリサイクル率60%達成 に対してもリスクとなり得る。  

      廃棄プラスチックリサイクル率については、2030年目標(60%)は野心的であるが、2021-22年度の実績は46-47%にとどまっており 、2023年度のデータは開示されていない。目標達成は、開発中のテープ分離技術 の成功と普及、そして外部環境要因に大きく依存すると考えられる。2023年度の全体リサイクル率の低下 は、この分野の進捗にも不確実性をもたらしており、目標達成には大幅な加速が必要である。  

      水管理に関しては、取水量の削減 や滋賀事業所における高い再利用率(90%)の達成 など、肯定的な傾向が見られる。グループ全体の水リサイクル率(2023年度29%)が初めて開示されたこと は、将来的な進捗追跡とZLD(液体排出ゼロ)という目標 に向けた改善のベースラインを提供する点で評価できるが、29%という数値はグループ全体での更なる取り組みの余地が大きいことを示している。  

  • 2.4 生物多様性の保全 (Biodiversity Conservation Actions)

    • 戦略と目標 (Strategy and Targets): Nittoグループは、「社会や自然と調和し、持続可能な未来の実現を優先する」という基本姿勢(The Nitto Wayの一部)を掲げている 。生物多様性保全に関するマテリアリティ項目としては、「生物多様性の保全」が特定されており 、特に大気・水質・土壌汚染の防止と有害物質の適正管理に重点が置かれている 。しかし、気候変動や資源循環分野に見られるような、グループ全体での具体的な定量的目標(例:保全面積、影響評価に基づく指標など)は、提供された情報からは確認できない。  

    • 具体的取り組み (Specific Initiatives): Nittoの生物多様性保全への取り組みは、主に以下の活動を通じて行われている。

      • 汚染防止: 大気・水質・土壌汚染を引き起こす可能性のある汚染物質や有害物質の管理を徹底している 。化学物質管理は独立した重点分野としても位置づけられている 。具体例として、VOC(揮発性有機化合物)排出量は、プロセス溶剤の変更や溶剤回収効率の向上により、2022年度に2020年度比で53%削減された 。  

      • 植林活動: ベトナムでの「未来への願いを込めた植樹」活動(1,000本植樹)などが実施されている 。各拠点での個別の環境活動も行われていることが示唆されている 。  

      • 環境意識向上: 環境デー(毎週木曜日、国内拠点)や環境ウィーク(6月5日の世界環境デーに合わせて実施)などを通じて、従業員の環境意識向上を図っている 。  

      • 間接的貢献: 脱炭素化や資源循環への取り組みは、環境負荷全体の低減を通じて、間接的に生物多様性保全に貢献する。

    • 実績 (Performance): 提供された資料(を含む)には、土地利用変化、生息地回復面積、種への影響評価といった、グループ全体の具体的な生物多様性に関する指標は含まれていない。管理は内部KPIによって行われていると述べられている 。VOC排出量の削減実績 は、大気汚染防止という側面で関連する。  

    • 分析 (Analysis): 生物多様性は、Nittoが注力する3つの環境分野の中で、具体的なグループ全体の目標設定や報告されているパフォーマンス指標の点で、最も発展途上にあるように見受けられる。取り組みは、ベトナムでの植林 のような地域限定的な活動や、汚染防止 に重点が置かれており、提供された資料からは包括的な戦略が明確には読み取れない。マテリアリティ項目として挙げられているものの 、気候変動対策(CO2排出量 kton)や資源循環(廃プラリサイクル率 %)のような具体的なグループ目標が欠如している。のパフォーマンスデータも、排出量、エネルギー、水、廃棄物に集中しており、生物多様性のセクションは存在しない。内部KPIによる管理 は、外部に対する透明性を欠く。  

      現状では、生物多様性への主な貢献は、汚染物質(VOC 、有害物質 )や全体的な環境負荷(気候変動、廃棄物)を削減することによる間接的なものに留まっていると考えられる。土地利用、サプライチェーンが生息地に与える影響、あるいは機会として挙げられている「ネイチャーポジティブ製品の提供」 など、より直接的な戦略は、まだ十分に策定されていないか、あるいは報告されていない可能性がある。「生物多様性に配慮した技術・ノウハウの蓄積による新市場・事業モデルの創出」 という機会認識は存在するものの、現時点での具体的な取り組み規模を示す証拠は乏しい。  

3. 環境関連のリスクと機会 (Environmental Risks and Opportunities)

  • 3.1 リスク分析 (Risk Analysis) Nittoは、環境課題への対応遅延がもたらす事業上のリスクを明確に認識している。マテリアリティ分析 を通じて特定された主なリスクは以下の通りである。  

    • 気候変動関連リスク: 脱炭素社会への対応遅延による事業継続困難、環境規制強化に伴う既存製品の販売困難、規制遵守コストの増加などが挙げられる 。  

    • 資源循環関連リスク: 資源価格の高騰や調達困難によるコスト増・操業停止、廃棄物処理やリサイクル技術革新の遅れによる競争力低下、環境規制による原材料調達への影響などが懸念される 。  

    • 生物多様性関連リスク: 大気・水質・土壌汚染によるステークホルダーへの健康被害、環境対策の遅れによる規制遵守コスト増・事業認可取得困難、環境保全に対する市場・顧客の期待に応えられないことによる信頼失墜や受注減少の可能性などが指摘されている 。  

    • サプライチェーンリスク: 気候変動によるインフラ被害からの生産・物流途絶、関連会社や取引先による不正・違法行為に伴うNittoブランドイメージの毀損などもリスクとして認識されている 。  

    これらのリスク認識は、Nittoが環境問題を単なる生態系の問題としてではなく、操業停止、市場アクセス制限、コスト増加といった具体的な事業リスクと直接的に結びつけて捉えていることを示している。マテリアリティ評価 は、これらの認識された脅威を構造化して示しており、環境への取り組みが経営戦略上不可欠であるとの理解を裏付けている。  

  • 3.2 機会分析 (Opportunity Analysis) リスク認識と同時に、Nittoは環境課題への対応を新たな事業機会と捉えている。これは、同社独自の「ニッチトップ戦略」 とも連動するものである。  

    • 気候変動関連機会: GHG削減要求に応える環境配慮型生産ラインへの転換による生産性向上、低炭素製品・サービス(例:EV向け部材)の提供による事業機会拡大、脱炭素化ソリューションの提供などが期待される 。  

    • 資源循環関連機会: 各種資源・材料の循環利用技術・製品への需要増、廃棄物削減・リサイクルによるコスト削減と資源の効率的利用、リサイクル技術(例:テープ分離技術)確立による資源循環事業の拡大、マテリアル循環ソリューションの提供などが挙げられる 。  

    • 生物多様性関連機会: 汚染物質・有害物質の適正管理による地域社会・顧客からの信頼獲得、有害物質の分離・除去・浄化等に貢献する技術・製品への需要増、低炭素・カーボンネガティブ製品提供による事業機会、生物多様性配慮型技術・ノウハウ蓄積による新市場・事業モデル創出、ネイチャーポジティブ製品の提供などが考えられる 。排水処理市場におけるニッチトップクリエーターとしての機会も認識されている 。  

    • イノベーション機会: 顧客の環境負荷低減に貢献する新たな生産技術の開発・導入による競争優位性の獲得 、環境貢献に繋がるバイオマテリアル分野での潜在的可能性 、そしてPlanetFlags™/HumanFlags™認定製品の開発推進 が挙げられる。  

    Nittoが特定しているこれらの事業機会は、低炭素化、循環性、浄化といった環境課題への対応が市場の新たな需要を生み出している現状を反映している 。これらをニッチトップ戦略 と結びつけることで、高付加価値で差別化された製品・サービスを創出しようという意図がうかがえる。CO2回収、テープ分離、水処理、低炭素製品といった具体的な技術開発への注力は、サステナビリティというメガトレンドを事業成長に取り込もうとする戦略の表れである。PlanetFlags™制度 は、この戦略を市場性のある製品へと具体化するための重要なメカニズムとして機能している。  

4. 業界の状況とベンチマーキング (Industry Context and Benchmarking)

  • 4.1 業界のベストプラクティス (Industry Best Practices) Nittoが属する化学・素材業界における環境先進企業の取り組みとして、以下のようなベストプラクティスが挙げられる(主に競合企業の情報に基づく)。

    • 野心的な科学的根拠に基づく目標(SBT): Avery Dennisonなどの企業は、Scope 1&2排出量について1.5℃目標に整合したSBTi(Science Based Targets initiative)承認目標を設定し、Scope 3についても意欲的な目標を掲げている 。Nittoも最近SBT認証を申請した 。  

    • 高い再生可能エネルギー導入率: 先進企業はしばしば高い再エネ比率を報告している(例:Avery Dennisonは2023年度に27%を報告 。ただし、事業モデルや地域構成の違いから単純比較は困難)。  

    • 先進的なサーキュラーエコノミーへの取り組み: リサイクル容易性を考慮した製品設計(例:Avery DennisonのCleanFlake™ )、高いリサイクル材含有率、先進的なリサイクル技術への投資やパートナーシップ(例:Avery DennisonとCirc社の提携 )などが特徴である。  

    • 包括的なScope 3管理: 成熟したプログラムでは、詳細なサプライヤーエンゲージメント、ライフサイクルアセスメント(LCA)、製品カーボンフットプリント算定などが実施されている(例:Avery Dennisonのサプライヤーエンゲージメント )。  

    • 強固な水資源管理(ウォータースチュワードシップ): 水リスクの高い地域に焦点を当てた目標設定(例:Avery Dennison )や、グローバルでの高い水再利用・リサイクル率の達成。  

    • 透明性の高い生物多様性戦略: TNFD(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures:自然関連財務情報開示タスクフォース)などのフレームワークに整合した、具体的な生物多様性行動計画の策定と報告(例:リンテックの熊谷事業所におけるTNFDに基づく取り組み )。  

    • 高いESG評価: 主要なESG評価機関から「低リスク」や「リーダー」格付けを獲得している(例:Avery DennisonはSustainalyticsで「低リスク」、MSCIで「AA」。東レはMSCIで「AAA」)。  

  • 4.2 競合他社分析 (Competitor Analysis) Nittoの製品ポートフォリオ(粘着剤、テープ、フィルム、機能性材料)を考慮すると、主要な競合企業として3M、Avery Dennison、Tesa SE、リンテック、東レなどが挙げられる 。これらの企業の環境への取り組みとESG評価は以下の通りである。  

    • 3M Company:

      • 目標: 2050年カーボンニュートラル、水使用量削減、2025年末までのPFAS製造からの撤退 。Solventum社スピンオフ後は、炭素、水、プラスチックに焦点を当てた目標設定を進めている 。  

      • 実績: 2019年比でGHG排出量59.1%削減、水効率21.4%向上を報告 。  

      • 取り組み: TPG Rise Climate Fundへの投資、各種パートナーシップ(米国エネルギー省Better Buildings、UNFCCC)、サステナブル製品開発(排ガス削減屋根材、軽量化材料)。  

      • ESG評価: Sustainalyticsスコアは43.0で「深刻なリスク(Severe Risk)」。CDP 2023年評価ではWaterが「Not Scored」。Climate/Forestsのスコアは2023/24年について提供情報内では見つからなかった 。MSCI評価はKnowESGによると「AAA」とされているが 、検証が必要。  

    • Avery Dennison Corporation:

      • 目標: Scope 1&2 GHG排出量70%削減(2030年、2015年比)、Scope 3排出量30%削減(2030年、2018年比)、2050年ネットゼロ。紙製品100%認証材(うち70% FSC認証)。埋立廃棄物95%削減(80%リサイクル)。水リスク地域での水効率15%向上 。  

      • 実績(2023年度): Scope 1&2排出量63%削減。再エネ比率27%。水効率9%向上。埋立廃棄物転換率93%(リサイクル率64%)。認証紙96%(FSC認証フェイス材79%)。  

      • 取り組み: サーキュラーエコノミー推進(CleanFlake™、リサイクル材含有、ライナーレス)、再エネ投資、Scope 3削減に向けたサプライヤーエンゲージメント 。  

      • ESG評価: Sustainalyticsスコアは11.0で「低リスク(Low Risk)」。CDP 2023年評価はClimate 'B', Forest 'B', Water 'B' 。MSCI評価は「AA」。  

    • 東レ株式会社 (Toray Industries, Inc.):

      • 目標: 東レグループサステナビリティ・ビジョン(2050年にネットゼロエミッション、資源の持続可能な管理、自然環境の回復)。具体的な目標はCSRロードマップに記載されている可能性が高い 。  

      • 実績(2023年度): Scope 1+2 GHG排出量 495.1万トンCO2eq。再エネ使用量 1.7百万GJ(比率は低い)。取水量 206.8百万トン。埋立廃棄物 1.6万トン 。  

      • 取り組み: 環境配慮型技術・製品(先端材料)の開発、水資源管理に注力 。  

      • ESG評価: Sustainalyticsスコアは22.0で「中リスク(Medium Risk)」。CDP 2023年評価はClimate 'B', Water 'A-' 。MSCI評価は「AAA」。  

    • リンテック株式会社 (Lintec Corporation):

      • 目標: Scope 1&2 CO2排出量75%削減(2030年、2013年度比)、2050年カーボンニュートラル。埋立廃棄物率1%以下(国内)。  

      • 実績(2023年度): Scope 1&2排出量51.4%削減。Scope 3排出量 782千トンCO2。埋立廃棄物率0.47%(国内)。総廃棄物量 2.56万トン(リサイクル量2.18万トン)。  

      • 取り組み: モーダルシフト推進、グリーン電力・太陽光導入、剥離紙リサイクルシステム、VOC削減、熊谷事業所でのTNFD整合の生物多様性保全活動 。  

      • ESG評価: Sustainalyticsスコアは24.5で「中リスク(Medium Risk)」。CDP評価は参加していると言及されているが、スコアは提供情報内では不明 。MSCI評価はMSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数に採用されており 、良好な評価を示唆するが、具体的な格付け(AAA~CCC)は不明 。  

    これらの比較から、NittoはESGリスク評価(Sustainalytics)において、競合他社の中で中位グループに位置していることがわかる。Avery Dennisonは、特にサーキュラーエコノミーやScope 3に関する取り組みと透明性の点で、Nittoよりも進んでいるように見える。東レはMSCI評価が高い一方で、報告されている再エネ利用率は低い。リンテックはCO2削減で顕著な進捗を示し、拠点レベルでの具体的な生物多様性活動も報告している。3Mは「深刻なリスク」評価が示すように、大きなESG課題に直面している。

  • 4.3 環境スコアのベンチマーキング (Environmental Score Benchmarking) 主要なESG評価機関によるNitto及び競合企業の評価状況は以下の通りである。

    • Sustainalytics:

      • Nitto Denko: 25.6(中リスク、化学セクター内591社中139位)。リスク管理(Management)は「Strong」、リスクエクスポージャー(Exposure)は「Medium」と評価されている 。  

      • 競合他社比較: Avery Dennison 11.0(低リスク)、東レ 22.0(中リスク)、リンテック 24.5(中リスク)、3M 43.0(深刻なリスク)。  

    • MSCI:

      • Nitto Denko: 2023年にMSCI ESG Leaders Indexes、MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数、MSCI日本株女性活躍指数(WIN)の構成銘柄に選定されている 。MSCIのESG評価はAAAからCCCの7段階で評価されるが 、Nittoの具体的な格付けは提供された情報からは確認できなかった。しかし、主要なESG指数への採用は、比較的高位の評価(A、AA、AAAのいずれか)を受けていることを示唆する。KnowESGは72/100という数値スコアを報告しているが 、その算出根拠は不明である。  

      • 競合他社比較: Avery Dennison「AA」、東レ「AAA」、リンテックはMSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数に採用 、3MはKnowESGによると「AAA」と報告されているが 、検証が必要。  

    • CDP:

      • Nitto Denko: CDPへの回答を行っていることは言及されているが 、2023年または2024年の具体的なスコア(気候変動、水セキュリティ、フォレスト)は提供された情報からは確認できなかった 。CDPの公開データベースでの確認が必要である。  

      • 競合他社比較: Avery Dennison 2023年評価 B/B/B(気候変動/フォレスト/水)、東レ 2023年評価 B/A-(気候変動/水)、リンテックは参加していると言及 、3M 2023年評価 Water 'Not Scored' 。  

    • その他:

      • Nitto Denko: FTSE Blossom Japan Sector Relative Indexの構成銘柄にも選定されている 。  

    これらの評価から、Nittoは主要なESG指数に採用されるなど、一定水準のESGパフォーマンスが認められていることがわかる。特にMSCIやFTSE Russellといった指数プロバイダーからの評価は良好であると考えられる。しかし、Sustainalyticsのリスク評価では、関連セクターのリーダー企業(Avery Dennisonなど)と比較すると改善の余地があることが示唆されている。また、CDPスコアに関する情報開示が不足している点は、透明性の観点からの課題と言える。

5. 評価と提言 (Assessment and Recommendations)

  • 5.1 現状の課題 (Current Challenges) これまでの分析に基づき、Nittoが環境目標達成と持続的成長に向けて取り組むべき主要な課題を以下にまとめる。

    • Scope 3 排出量管理の具体化: 2030年までに25%削減という目標に対し、Scope 3排出量の規模(Scope 1+2を大幅に上回る)と近年の増加傾向を考慮すると、より具体的かつ実効性のある削減戦略とサプライチェーン全体での協力体制の構築が急務である(分析 2.2)。

    • 廃棄物リサイクル率の回復と安定化: 2023年度に廃棄物総排出量が減少したにも関わらず、全体のリサイクル率が大幅に低下し最終処分量が増加した原因を究明し、是正措置を講じる必要がある。この状況は循環型社会への移行という目標に逆行しており、60%の廃プラリサイクル目標達成にも影響を及ぼしかねない(分析 2.3)。提供資料ではこの低下理由が説明されていない。

    • 生物多様性戦略の明確化と指標設定: グループ全体を対象とした包括的で測定可能な生物多様性戦略、具体的な目標設定、および汚染防止や地域限定活動を超えた透明性の高い報告体制が不足している(分析 2.4)。

    • 再生可能エネルギー導入の加速: 再エネ比率17%(2023年度)は着実な進捗であるが、RE100達成と2050年カーボンニュートラル実現のためには、特にグローバル拠点での導入を加速する必要がある。2023年度の総エネルギー消費量微増も踏まえ、省エネ努力の継続も重要である(分析 2.2)。

    • 競合他社との比較におけるポジショニング: ESG評価は一定水準にあるものの、Sustainalytics評価などでは業界リーダーに後れを取っている。投資家からの評価や競争力維持の観点から、継続的なパフォーマンス向上と、CDPスコア開示などによる透明性向上が求められる(分析 4.2, 4.3)。

  • 5.2 改善に向けた提言 (Recommendations for Improvement) 上記の課題に対応し、Nittoが環境パフォーマンスをさらに向上させるために、以下の行動を推奨する。

    • Scope 3 戦略の強化: 詳細なScope 3削減ロードマップを策定・開示し、特に影響の大きい「購入した製品・サービス」(カテゴリ1)に焦点を当てる。サプライヤーに対し脱炭素化を働きかける強固なエンゲージメントプログラムを導入し、サプライヤーの環境パフォーマンスを調達判断に結び付けることを検討する。正確な製品カーボンフットプリント算定体制を整備・活用する。

    • リサイクル率低下の原因究明と対策: 2023年度の全体リサイクル率低下について徹底的な原因分析(廃棄物組成、市場要因、内部プロセス等)を行い、是正措置を講じる。困難な廃棄物流れに対する新たなリサイクルパートナーシップや技術導入を検討するとともに、工程内での分別を強化する。低下の原因と回復計画について、透明性のある情報開示を行う。廃プラリサイクル率の追跡と年次報告を確実に行う。

    • 包括的な生物多様性行動計画の策定: TNFDやSBTN(Science Based Targets Network)などの国際的枠組みに整合した、グループ全体の生物多様性戦略を策定する。バリューチェーン全体(特に原材料調達)における影響と依存関係に関するベースライン評価を実施する。生息地の保護・回復、持続可能な土地・水利用、ネイチャーポジティブソリューションの推進に関して、具体的(Specific)、測定可能(Measurable)、達成可能(Achievable)、関連性(Relevant)、期限付き(Time-bound)のSMART目標を設定する。PlanetFlags™の認定基準に生物多様性への配慮を組み込む。

    • 再生可能エネルギー転換の加速: RE100達成に向け、PPA(電力購入契約)、VPPA(仮想PPA)、自家発電などを活用した地域別ロードマップを策定し、グローバルに展開する。エネルギー集約型プロセスを中心に、エネルギー効率改善への投資を継続し、総消費量を抑制する。

    • サーキュラーエコノミーへの取り組み強化: テープ分離技術などのパイロットプロジェクトの成功事例をスケールアップさせる。リサイクル材・再生可能原料の使用率向上や、使用済み製品のリサイクル性を高めるための製品設計に関する研究開発投資を増強する。ZLDアプローチを滋賀事業所以外にも展開する。サステナブル原材料調達比率の目標達成に向け、グローバルでの取り組みを積極的に推進・拡大する。

    • ESG情報開示と透明性の向上: CDPスコア(気候変動、水、フォレスト)を年次で公開する。環境パフォーマンスに関するより詳細なデータと背景情報を提供する(特に生物多様性や廃棄物リサイクルの動向について)。環境への取り組みと財務パフォーマンス・企業価値創造との関連性を明確に説明する。

6. 結論 (Conclusion)

本分析の結果、Nitto Denko株式会社がESG経営を重視し、特に環境分野において「カーボンニュートラル2050」達成や、CO2排出量、廃棄プラスチックリサイクル率、サステナブル原材料調達に関する具体的な2030年目標を設定するなど、強いコミットメントを示していることが確認された。

再生可能エネルギー導入の推進によるScope 1およびScope 2排出量の着実な削減や、滋賀事業所における高い水再利用率の達成など、特定の分野では顕著な成果を上げている。

しかしながら、その一方で、Scope 3排出量の管理、2023年度に見られた廃棄物リサイクル率の低下(原因不明)、そして生物多様性に関する包括的戦略と透明性のある指標設定といった課題も浮き彫りになった。ESG評価においても、主要指数への採用など評価される側面はあるものの、競合他社比較では改善の余地が残されている。

結論として、Nittoが「なくてはならない存在であり続けるESGトップ企業」という2030年のありたい姿を実現するためには、特定された課題に真摯に取り組み、本報告書で提言された改善策を実行に移すことが極めて重要である。これにより、環境目標の達成、環境スコアの向上、競争力の強化、そして真のサステナビリティリーダーとしての地位確立に繋がるものと期待される。

レポートに使用されているソース

日東電工のGHG排出量推移

GHG排出量推移

「Scope1」の過去3年の推移

2023年289,000t-CO2
2022年299,000t-CO2
2021年330,000t-CO2

「Scope2」の過去3年の推移

2023年236,000t-CO2
2022年271,000t-CO2
2021年318,000t-CO2

「Scope3」の過去3年の推移

2023年2,696,000t-CO2
2022年2,622,000t-CO2
2021年920,000t-CO2

COR(売上高あたりのCO2排出量)推移

スコープ1+2

スコープ1+2 CORの過去3年推移

2023年574kg-CO2
2022年614kg-CO2
2021年759kg-CO2

スコープ3

スコープ3 CORの過去3年推移

2023年2,946kg-CO2
2022年2,822kg-CO2
2021年1,078kg-CO2

COA(総資産あたりのCO2排出量)推移

スコープ1+2

スコープ1+2のCOA推移

2023年420kg-CO2
2022年494kg-CO2
2021年592kg-CO2

スコープ3

スコープ3のCOA推移

2023年2,155kg-CO2
2022年2,273kg-CO2
2021年841kg-CO2

業績推移

売上推移

2023年9,151億円
2022年9,290億円
2021年8,534億円

純利益推移

2023年1,027億円
2022年1,092億円
2021年971億円

総資産推移

2023年1兆2511億
2022年1兆1536億
2021年1兆945億

すべての会社・業界と比較

環境スコアポジション

日東電工の環境スコアは310点であり、すべての会社における環境スコアのポジションと業界内におけるポジションは下のグラフになります。

すべての会社と比較したポジション

業界内ポジション

日東電工のCORポジション

日東電工におけるCOR(売上高(百万円)における炭素排出量)のポジションです。CORは数値が小さいほど環境に配慮したビジネスであると考えられます。日東電工のスコープ1+2の合計のCORが574kg-CO2であり、スコープ3のCORが2946kg-CO2になります。グラフはGHG排出量のスコープ別に分かれており、すべての会社と業界内におけるそれぞれのポジションを表しています。
全体における日東電工のCORポジション

CORスコープ1+2

CORスコープ3

業界内における日東電工のCORポジション`

CORスコープ1+2

CORスコープ3

日東電工のCOAポジション

日東電工におけるCOA(総資産(百万円)における炭素排出量)ポジションです。COAもCAR同様、数値が小さいほど環境に配慮したビジネスを行っていると考えられます。日東電工のスコープ1+2の合計のCORが420kg-CO2であり、スコープ3のCORが2155kg-CO2になります。グラフはGHG排出量のスコープ別に分かれており、すべての会社と業界内におけるそれぞれのポジションを表しています。
全体における日東電工のCOAポジション

COAスコープ1+2

COAスコープ3

業界内における日東電工のCOAポジション

COAスコープ1+2

COAスコープ3

環境スコアランキング(全社)

集計数:985企業
平均点数:171.8
CDPスコア気候変動勲章
三菱電機
6503.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
505
CDPスコア気候変動勲章
コニカミノルタ
4902.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
500
CDPスコア気候変動勲章
豊田自動織機
6201.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
480
4
古河電気工業
5801.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
470
5
味の素
2802.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
460
6
セコム
9735.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコンサービス業
455
7
ダイキン工業
6367.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
450
8
アイシン
7259.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
450
9
オムロン
6645.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
445
10
フジクラ
5803.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
445

業界別環境スコアランキング

集計数:484企業
平均点数:194.2
CDPスコア気候変動勲章
三菱電機
6503.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
505
CDPスコア気候変動勲章
コニカミノルタ
4902.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
500
CDPスコア気候変動勲章
豊田自動織機
6201.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
480
4
古河電気工業
5801.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
470
5
味の素
2802.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
460
6
アイシン
7259.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
450
7
ダイキン工業
6367.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
450
8
富士通
6702.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
445
9
オムロン
6645.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
445
10
フジクラ
5803.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
445