GX RESEARCH
更新日: 2025/5/1

JFEホールディングス

5411.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
環境スコア270
売上
5,174,632百万円
総資産
5,754,964百万円
営業利益
--

COR(売上高炭素比率)

年間CO2排出量(kg)÷ 売上高(百万円)
Scope1+2
10,571kg
Scope3
4,387kg

COA(総資産炭素比率)

年間CO2排出量(kg)÷ 売上高(百万円)
Scope1+2
9,505kg
Scope3
3,945kg

Scope1

事業者自らによる直接排出
47,400,000t-CO2
2023年実績

Scope2

エネルギー消化に伴う間接排出
7,300,000t-CO2
2023年実績

Scope3

事業者の活動に関連する他社の排出
22,701,000t-CO2
2023年実績

スコープ3カテゴリー別データ

カテゴリー2021年度2022年度2023年度
1購入した製品・サービス
17,244,000
19,750,000
(2,506,000)
19,118,000
(632,000)
2資本財
1,211,000
1,166,000
(45,000)
1,239,000
(73,000)
3燃料・エネルギー関連活動
717,000
736,000
(19,000)
760,000
(24,000)
4輸送・配送(上流)
454,000
450,000
(4,000)
440,000
(10,000)
5事業から発生する廃棄物
58,000
62,000
(4,000)
133,000
(71,000)

国際イニシアティブへの参加

SBT
RE100
EV100
EP100
UNGC
check
30by30
GXリーグ

ガバナンス・フレームワーク開示

check
サステナビリティ委員会
check
TCFD・IFRS-S2
check
TNFD
潜在的環境財務コスト(シナリオ別試算)
2023年度排出量データ: スコープ1(4740万t)、 スコープ2(730万t)、 スコープ3(2270万t)
低コストシナリオ
想定単価: 3,000円/t-CO₂
スコープ1:1422億円
スコープ2:219億円
スコープ3:681億円
総額:2322億円
売上高比率:4.49%
中コストシナリオ
想定単価: 5,000円/t-CO₂
スコープ1:2370億円
スコープ2:365億円
スコープ3:1135億円
総額:3870.1億円
売上高比率:7.48%
高コストシナリオ
想定単価: 10,000円/t-CO₂
スコープ1:4740億円
スコープ2:730億円
スコープ3:2270.1億円
総額:7740.1億円
売上高比率:14.96%
※潜在的環境財務コストは、仮想的なカーボンプライシングシナリオをもとに算出した参考値です。

環境への取り組み

環境配慮型技術の開発

高能率自走式清掃ロボット「GAZMASTAR™-S」を開発

製鉄プロセスでは鉄鉱石や石炭などの塊や粉体を含む原料を扱う設備があり、人手による清掃作業を実施していますが、自動化のニーズが強いことから、塊や粉体など堆積物のある路面での高能率な自動清掃を可能としたロボット「GAZMASTAR™-S」※を開発。 清掃場所に応じて清掃機構の一部を必要に応じて簡単に交換するだけで、狭い場所や小さな段差のある場所などで、高い清掃能力を発揮する。

気候変動関連のリスク・機会

※掲載情報は公開資料をもとに作成しており、全てのリスク・機会を網羅するものではありません。 より詳細な情報は企業の公式発表をご確認ください。

リスク

移行リスク

脱炭素社会への移行に伴う政策・規制強化(炭素税等)によるコスト増加や、低炭素技術開発(カーボンリサイクル高炉、水素還元等)の遅延・コスト超過がリスクとなる。また、市場がグリーン鋼材へ急速にシフトした場合の対応遅れや、原料炭等への継続投資が座礁資産化するリスク、環境対応の遅れによるレピュテーション低下の可能性も認識されている。

物理的リスク

気候変動による異常気象(洪水、台風、渇水等)の激甚化・頻発化を認識している。これにより、国内外の生産拠点やサプライチェーンが影響を受け、設備の損壊、操業停止、原料・資材調達の困難化といったリスクが想定される。特に水リスクに関してはWRI Aqueduct等を用いて評価し、BCP策定やインフラ強化で対応を進めている。

機会

脱炭素化の潮流を重要な成長機会と捉えている。省エネ・高効率化に貢献する高機能鋼材や、マスバランス方式を用いたグリーン鋼材「JGreeX™」の供給拡大による収益機会を見込む。また、JFEエンジニアリングを中心に、再生可能エネルギー発電、廃棄物発電、資源リサイクル関連技術・プラント提供等、社会全体のCO2削減に貢献するソリューション事業の拡大を目指す。

目標

グループ全体で2050年のカーボンニュートラル達成を最終目標とする。中間目標として、鉄鋼事業におけるCO2排出量を2030年度までに2013年度比で30%以上削減、エンジニアリング事業における社会全体のCO2削減貢献量を2030年度に2500万トン以上とする目標を掲げている。資源循環では、鉄鋼スラグ等の副産物リサイクル率99%以上、水の循環利用率90%以上の維持を目指す。

環境アナリストレポート

JFEホールディングスの環境イニシアチブとパフォーマンスに関する包括的分析レポート

要旨

本報告書は、JFEホールディングス株式会社(以下、JFEグループ)の環境に関する取り組みとパフォーマンスについて、「気候変動」「資源循環」「生物多様性」の3つの重点分野に焦点を当て、包括的な分析を行うものである。JFEグループは、「常に世界最高の技術をもって社会に貢献します」という企業理念のもと、サステナビリティを経営の最重要課題の一つと位置づけ、「JFEグループ環境経営ビジョン2050」を策定し、2050年のカーボンニュートラル(CN)達成を目指している 1

気候変動対策においては、鉄鋼事業でのCO₂排出量削減(2030年度30%以上削減目標)と社会全体のCO₂削減貢献を両輪とし、カーボンリサイクル高炉(CR高炉)、水素還元製鉄(H2-DRI)、大型高効率電気炉(EAF)といった超革新技術の開発に挑戦するとともに、省エネ・効率化、転炉スクラップ利用拡大などのトランジション技術も推進している 2。特に、倉敷地区への世界最大級の革新電炉導入決定は、大きな前進である 5。しかし、これらの超革新技術は未だ開発途上であり、巨額の投資(2030年までに1兆円規模)と技術的・経済的な不確実性を伴う 4。また、近年の原料炭への新規投資は、長期的な高炉依存を示唆し、CN目標との整合性や座礁資産リスクに関する疑問も提起されている 7

資源循環に関しては、鉄鋼プロセスにおける副産物(スラグ等)の高い再資源化率(99%超)や水の高い循環利用率(90%超)を達成しており、内部循環は成熟している 9。近年は、廃プラスチックの高炉原料化や、JFEエンジニアリングを通じたペットボトルリサイクル、廃棄物発電など、社会全体の資源循環に貢献する事業を拡大している 10。鉄スクラップの利用拡大とグローバル循環は、EAF移行戦略と密接に関連しており、戦略的な重要性を持つ 9

生物多様性保全では、経団連の宣言を支持し、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)フレームワークを参照したリスク評価(LEAPアプローチ)を開始するなど、戦略的なアプローチへの移行が見られる 13。鉄鋼スラグを活用した藻場再生(マリンブロック®)や製鉄所内ビオトープ設置などの具体的な活動も継続している 13。しかし、TNFD対応は初期段階であり、バリューチェーン全体のリスク評価と具体的な目標設定・開示が今後の課題である 13

競合他社(日本製鉄、POSCO、神戸製鋼所)も同様にCN目標を掲げ、H2-DRIやEAFを中心とした技術開発を進めている 15。ESG評価においては、JFEグループは国内指数での評価は高いものの、Sustainalyticsなどのグローバル評価では依然として「高リスク」とされており、特にPOSCOと比較するとリスク評価に差が見られる 19

JFEグループが持続可能な成長を遂げるためには、技術開発の加速と巨額投資の実行に加え、グリーン鋼材市場の育成、政策支援の獲得、スクラップや水素といった重要資源の戦略的確保、そして生物多様性を含む環境リスク管理の高度化が不可欠である。これらの課題への対応力が、今後の企業価値を左右する重要な要素となる。

1. JFEホールディングスの環境戦略とガバナンス

1.1. 経営理念とサステナビリティの位置づけ

JFEグループは、その企業活動の根幹に「常に世界最高の技術をもって社会に貢献します」という企業理念を掲げている 1。この理念に基づき、同グループはサステナビリティを経営における最重要課題の一つとして明確に位置づけている 1。グループ全体のリソースを最大限に活用し、「環境・社会的持続性」と「経済的持続性」の双方を確立することを目指しており、これにより中長期的な企業価値の向上を図るとともに、持続可能な社会の発展への貢献を追求している 1

特に、2021年度から2024年度を対象とする第7次中期経営計画においては、この期間を「豊かな地球の未来のために、創立以来最大の変革に挑戦」する重要な時期と捉えている 1。この変革の中核には、カーボンニュートラル時代の到来を見据え、その実現に向けた盤石な経営基盤を構築するという強い決意がある 10。代表取締役社長(CEO) 北野嘉久氏は、カーボンニュートラル達成のための超革新技術開発と並行して、グループ事業利益の倍増を目指し、将来の成長投資を進めるための財務基盤強化の必要性を強調している 10。これは、環境課題への対応を単なるコストではなく、成長の機会と捉え、経済的持続性との両立を図ろうとする姿勢の表れである。

1.2. 環境経営ビジョンと重要課題

JFEグループの環境戦略の核心をなすのが、「JFEグループ環境経営ビジョン2050」である 1。このビジョンは、気候変動問題を経営の最重要課題と位置づけ、2050年までにグループ全体でカーボンニュートラルを実現するという野心的な目標を掲げている 1。この目標達成に向け、「鉄鋼事業のCO₂排出量削減」と「社会全体のCO₂削減への貢献」を両輪として、脱炭素化への道筋を示している 1

このビジョンと第7次中期経営計画の方針・施策に基づき、JFEグループは「経営上の重要課題(マテリアリティ)」を特定している 25。この特定プロセスでは、社会からの期待と事業への関連性(社会へのインパクト)という二つの基準を用い、グループの資本投入が社会への負の影響を最小化し、かつJFEグループならではの社会的価値創造を最大化する観点から課題が優先順位付けされている 25。特定された重要課題には、気候変動、資源循環、生物多様性といった環境課題が含まれており、これらに対して具体的な重要業績評価指標(KPI)が設定されている 27。KPIについては、毎年度、前年度の実績評価が行われ、その結果やステークホルダーとの対話を踏まえて見直しが行われるプロセスが確立されており、継続的な改善努力が図られている 27

1.3. 推進体制

JFEグループ全体のサステナビリティへの取り組みを実効性あるものにするため、強固なガバナンス体制が構築されている。その中核となるのが、JFEホールディングス社長を議長とし、副社長(取締役)、執行役員、常勤監査役、各事業会社社長等で構成される「グループサステナビリティ会議」(2023年4月にグループCSR会議から名称変更)である 25。この会議は、グループ全体のサステナビリティに関する方針審議、目標設定、進捗状況の監督・指導を行う最高意思決定機関としての役割を担う 27

「グループサステナビリティ会議」の下部には、コンプライアンス、環境、内部統制、情報セキュリティ、開示検討、企業価値向上に係る各専門委員会が設置されている 27。特に環境に関しては、「グループ環境委員会」が設置され、環境目標の設定、達成状況のチェック、グループ全体の環境パフォーマンス向上、その他環境に関する諸問題の解決に取り組んでいる 28。これらの委員会では、グループとしての方針審議や浸透状況の監督、課題や問題発生時の情報共有が行われる 27

重要な点として、「グループサステナビリティ会議」での審議事項のうち、グループの基本方針、活動計画、重要施策、重要事態発生時の対応など、経営にとって特に重要な課題(気候変動問題など)については、グループ経営戦略会議でも審議され、さらに取締役会に定期的に報告・審議され、取締役会からの指示監督を受ける体制となっている 9。これにより、サステナビリティに関する取り組みが経営戦略と一体化され、取締役会レベルでの適切な監督が確保されている。

また、各事業会社にも「グループサステナビリティ会議」と連携した会議体が設置されており、グループ方針の浸透とCSR意識の醸成が図られている 27。環境マネジメントシステムの国際規格であるISO14001の認証取得も推進されており、JFEスチールとJFEエンジニアリングの全生産拠点、JFE商事の主要国内外事業所で取得済みである(報告対象範囲従業員数に対するカバー率75%、全拠点カバー率58%:2020年時点)28

このような階層的かつ連携の取れた推進体制は、トップレベルのコミットメントと現場レベルでの実践を結びつける上で有効に機能する可能性がある。しかし、その実効性は、特に「経済的持続性」(例:中期計画での利益倍増目標 10)と「環境的持続性」のための大規模投資(例:脱炭素化に向けた1兆円規模の投資 4)との間で潜在的な利益相反が生じた場合に、グループサステナビリティ会議や取締役会がどのように優先順位をつけ、資源配分を行うかにかかっている。長期的な環境目標達成に向けた投資判断が、短期的な経済目標達成の圧力の中で、いかに着実に実行され、そのプロセスが透明性をもってステークホルダーに説明されるかが、このガバナンス体制の真価を問うことになるだろう。

2. 気候変動への取り組み

2.1. 排出削減目標と実績

JFEグループは、気候変動問題を経営の最重要課題と位置づけ、「JFEグループ環境経営ビジョン2050」に基づき、具体的なCO₂排出削減目標を設定している 1。中核となる鉄鋼事業においては、2013年度を基準年として、2024年度末までに18%削減、2030年度までに30%以上の削減を目指し、最終的には2050年のカーボンニュートラル達成を目標としている 2

実績としては、2022年度には2013年度比で約13%の排出削減を達成し、関連するKPI目標をクリアしたと報告されている 29。また、国際的な環境情報開示プラットフォームであるCDPからは、2023年の気候変動分野において「A-」評価を受けており、情報開示と取り組みがある程度評価されていることを示している 30

しかし、外部機関からは、これまでの排出削減の実態について異なる分析も提示されている。例えば、Transition Asiaの分析によれば、2013年度以降の排出削減は、主に生産量の減少によってもたらされたものであり、生産量あたりの排出原単位の改善は限定的であると指摘されている 7。さらに、基準年として鉄鋼生産量が例年になく多かった2013年を選定していることが、削減率を大きく見せる効果を生んでいる可能性も指摘されている 32。これらの分析は、JFEグループが今後、生産活動を維持・拡大しながら実質的な排出削減を進めていく上で、より一層の技術革新と効率改善が不可欠であることを示唆している。

2.2. 主要技術と戦略

JFEグループは、2050年カーボンニュートラル達成に向けて、既存技術の延長線上ではない「超革新技術」の開発と、それらが実用化されるまでの「トランジション技術」の推進、そして社会全体のCO₂削減に貢献する取り組みを多角的に進めている 33

超革新技術 (Ultra-Innovative Technologies):

長期的な脱炭素化の切り札として、以下の3つの主要技術開発に注力している。

  • カーボンリサイクル高炉 (CR高炉):

    高炉から排出されるCO₂を回収し、外部から調達した水素と反応させてメタンを合成、これを高炉の還元材として再利用する技術である 3。高炉単体で約30%のCO₂削減、さらにCCU(CO₂回収・利用)/CCUS(CO₂回収・利用・貯留)技術と組み合わせることでカーボンニュートラルを目指す 3。現在、東日本製鉄所(千葉地区)に内容積150m³のパイロット炉を建設中で、2025年4月の稼働開始、2026年度までの実証試験完了を予定している 3。この技術は既存の高炉設備を活用できる可能性がある一方、メタネーション技術の効率やコスト、CCUSの実現可能性などが課題となる。

  • 水素還元製鉄 (Hydrogen DRI):

    鉄鉱石を還元する際に、従来の石炭や天然ガスの代わりに100%水素を用いることで、原理的にCO₂排出をゼロにする技術である 3。課題としては、安価なグリーン水素の大量供給、還元反応時の炉内温度維持、高品位な鉄鉱石への依存などが挙げられる 3。JFEスチールは、低品位鉱石の利用を可能にするため、BHP社と新たな原料処理技術の開発にも取り組んでいる 3。千葉地区では小型の水素直接還元ベンチ試験炉を建設中で、2024年下期の稼働開始、2026年度までの実証試験完了を目指している 3

  • 大型高効率電気炉 (Large High-Efficiency EAF):

    鉄スクラップや直接還元鉄を電気で溶解して鋼を製造する電気炉は、高炉法に比べてCO₂排出量が大幅に少ない(約1/4)3。JFEグループは、大型化と高効率化(例:「ECOARC®」)を進め、高品質・高機能な鋼材を電炉で製造する技術開発に取り組んでいる 3。具体的な計画として、仙台製造所の電炉能力増強(2024年完了予定、約14万トン/年増)3、千葉地区ステンレス製造プロセスへの電炉導入(最大約45万トン/年削減)3 がある。さらに、西日本製鉄所(倉敷地区)において、既存高炉1基を2027~2030年頃に世界最大規模の革新的な大型高効率電炉(年間生産能力200万トン)へ転換することを決定した。これは総投資額3,294億円(うち政府支援最大1,045億円)の大規模プロジェクトであり、2028年度第一四半期の稼働を目指している 3。この電炉導入は、低炭素な直接還元鉄(HBI)の活用と組み合わせることで、高炉法に匹敵する高品質・高機能鋼材のグリーンな大量供給体制を世界で初めて実現することを目指すものであり、UAEアブダビでの低炭素HBI製造プロジェクトへの参画も決定している 34

これらの超革新技術は、いずれも開発途上であり、実用化には技術的課題の克服とコスト低減が不可欠である。特にCR高炉とH2-DRIは、パイロット段階から商業規模へのスケールアップに大きなハードルが存在する。そのため、これらの技術開発の成否とタイミングは、JFEグループの2050年目標達成における最大のリスク要因の一つと言える。技術開発の遅延や失敗は、移行戦略全体の見直しを迫る可能性がある。

トランジション技術 (Transition Technologies):

超革新技術が確立・普及するまでの移行期間においては、既存プロセスの改善を通じて着実にCO₂排出量を削減していくことが重要となる。

  • フェロコークス:

    コークス製造時に鉄鉱石を配合し、高炉での還元効率を高めることでCO₂排出量を削減する技術 3。実証試験が進められており、原料コスト低減と還元材比低減効果の両立を目指している 12

  • 転炉スクラップ利用拡大:

    高炉で製造される銑鉄の比率を下げ、スクラップ比率を高めることでCO₂を削減する。JFEスチールは、スクラップ溶解促進技術(DRP)を全地区に導入し、2022年度には年間約60万トンのCO₂削減を達成した 3。さらなる技術開発と設備投資により、2030年度には年間約200万トンの削減を目指している 3

  • 省エネ・高効率化:

    高炉操業におけるAI・IoT活用(データサイエンスによる炉況安定化・異常予兆検知「DS技術」など)4、老朽化したコークス炉や熱風炉などの設備更新による効率向上 4、排熱や副生ガスの回収・有効利用などが継続的に進められている 4

  • 低炭素エネルギー転換:

    将来的な水素利用を見据え、LNG(液化天然ガス)供給能力の増強や水素供給インフラの構築も検討されている 4

CCU/CCUS:

排出されたCO₂を回収し、利用または貯留する技術も重要視されている。JFEグループは、回収CO₂からのメタノール合成や、鉄鋼スラグを用いたCO₂固定化などの研究開発を進めている 3。また、マレーシアにおけるCCSバリューチェーン構築に関する共同検討への参加や、CO₂フリー水素利用に関する連携も模索している 3。

グリーン鋼材 (JGreeX™):

製造プロセスにおけるCO₂排出削減量を、マスバランス方式を用いて特定の鋼材製品に割り当てることで、「グリーン鋼材」として供給する取り組みである 3。2022年度には60万トン分のCO₂削減量が第三者認証を取得し、2023年度以降、年間約26万トンの供給能力を持つ見込みである 3。オフィスビル、変圧器、大型ばら積み船など、国内外で採用実績が拡大している 3。この取り組みは、移行期間における低炭素製品への市場ニーズに応え、環境価値を収益につなげるための重要な戦略であるが、マスバランス方式の透明性と、削減努力の実質性が市場から信頼を得られるかが成功の鍵となる。

投資計画:

これらの取り組み、特に超革新技術への移行には巨額の投資が必要となる。JFEグループは、2030年度の30%以上削減目標達成のためには、大型電炉、フェロコークス、スクラップ・還元鉄対策、LNG転換等で、1兆円規模の設備投資・研究開発費が必要になると認識している 4。第7次中期経営計画期間(2021~2024年度)においては、トランジション戦略に関連する投資として3,400億円以上を計画しており 4、2023年度までに既に約3,000億円の投資が承認されている 3。これには、洋上風力発電基礎向けの厚板製造用新連続鋳造機(倉敷地区)なども含まれる 3。

一方で、Transition Asiaは、JFEスチールが日本製鉄とともに2024年8月にオーストラリアの原料炭(製鉄用石炭)への新規投資を発表したことを指摘している 7。これは、長期的に石炭を燃料とする高炉を維持していくコミットメントの再確認と捉えられ、特に投資額あたりのCO₂排出量が過去の石炭投資案件と比較しても高いと分析されている 7。この投資は、2050年カーボンニュートラル目標達成に向けた道筋や、将来的な座礁資産(価値を失う資産)リスクの観点から、グループの脱炭素戦略との整合性について疑問を投げかけている。この点は、JFEグループが技術開発の不確実性に対するヘッジとして高炉依存を維持しているのか、あるいは表明されているよりも緩やかな移行を計画しているのか、ステークホルダーへの説明が求められる部分である。

2.3. 社会全体のCO₂削減への貢献

JFEグループは、自社の排出削減努力と並行して、グループ全体の技術や製品・サービスを通じて社会全体のCO₂削減に貢献することも重要な戦略と位置づけている。

エンジニアリング事業:

JFEエンジニアリングは、再生可能エネルギー発電所の建設・運営(バイオマス、地熱、太陽光、陸上風力など)、高効率な廃棄物発電プラントの提供、カーボンリサイクル技術(例:CO₂からのメタネーション)の開発・普及などを通じて、社会の脱炭素化に貢献している 2。同社は、この分野でのCO₂削減貢献量として、2024年度に1,200万トン、2030年度には2,500万トンという目標を設定している 2。国内外での廃棄物発電プラントの稼働実績も豊富である 10。

鉄鋼事業(エコプロダクト):

JFEスチールは、製品そのものの性能向上を通じて、使用段階でのエネルギー効率改善や軽量化に貢献する「エコプロダクト」の開発・供給に力を入れている 2。代表例としては、電気自動車(EV)のモーター効率向上に不可欠な高機能電磁鋼板、自動車の燃費改善に寄与する超ハイテン(高張力鋼板)、再生可能エネルギーである洋上風力発電設備の大型化に対応する大単重厚板(J-TerraPlate®)などが挙げられる 3。特に電磁鋼板については、需要拡大に対応するため、倉敷地区での能力増強投資や、インドでの合弁会社設立による海外生産体制の構築を進めている 3。

商社事業:

JFE商事は、再生可能エネルギー源であるバイオマス燃料や、低炭素製鉄の鍵となる鉄スクラップの取扱量を拡大している 2。また、JFEスチールが製造するエコプロダクト(特に電磁鋼板)について、グローバルなサプライチェーンマネジメント(SCM)体制と加工機能を強化し、世界中の顧客ニーズに対応することで、間接的に社会のCO₂削減に貢献している 3。

洋上風力発電ビジネス:

日本政府が推進する洋上風力発電の導入拡大を大きな事業機会と捉え、JFEグループ全体でバリューチェーン構築に取り組んでいる 2。具体的には、JFEエンジニアリングによる基礎構造物(モノパイル、ジャケット等)の製造(笠岡市に新工場完成)3、JFEスチールによる基礎用大単重厚板(J-TerraPlate®)の供給 3、JFE商事による鋼材・加工品のSCM構築 3、ジャパンマリンユナイテッドによる浮体式基礎の製作や作業船建造 3、そしてグループ全体のリソースを活用したO&M(運転・保守)サービス提供 3 など、グループの総合力を結集して事業化を推進している。

これらの社会貢献活動は、JFEグループの技術力や事業基盤を活かしたものであり、新たな収益機会の創出にも繋がる可能性がある。特にエンジニアリング事業や洋上風力ビジネスは、今後の成長ドライバーとして期待されている。

3. 資源循環の推進

JFEグループは、鉄が本質的に優れたリサイクル性を持ち、閉ループで無限に再生可能な素材であるとの認識に基づき、資源の有効利用と循環を推進している 9。生産プロセスにおける効率化だけでなく、製品・サービスを通じた社会全体の資源循環への貢献も目指している。

3.1. 目標と実績 (Waste, Water)

資源循環に関する具体的な目標と実績は以下の通りである。

廃棄物・副産物:

  • JFEスチールは、製鉄プロセスから発生するダストやスラッジなどの副産物について、再資源化率99%以上を目標としている 9。2023年度の実績は99.4%であり、高い水準で目標を達成・維持している 9

  • JFEエンジニアリングは、建設現場から発生する廃棄物について、がれき類99.5%以上、汚泥95.0%以上、その他産業廃棄物85.0%以上のリサイクル率を目標としている 9。2023年度実績では、がれき類97.8%、汚泥99.3%、産廃87.1%となり、目標を達成している 9

  • JFEエンジニアリング横浜本社では、オフィス資源のリサイクル率98.0%以上を目標としている 9

水資源:

  • JFEスチールは、工業用水の循環利用率90%以上を目標としている 9。2023年度の実績は93.1%であり、目標を継続して達成している 9

鉄スクラップ:

  • JFE商事は、鉄スクラップのグローバルな取扱量を、2024年度までに2020年度比で5%増加させることを目標としている 9。2023年度実績は、国内向けは増加したものの、海外向けが減少し、全体では2020年度比で5%減となった。目標達成に向け、国内外のネットワーク強化による取引推進を図るとしている 9

これらの目標と実績は、JFEグループが資源循環に対して具体的な指標を設定し、継続的に管理・改善に取り組んでいることを示している。特に製鉄所における副産物と水の循環率は極めて高く、プロセス内部での資源効率が成熟していることを示唆している。

3.2. 具体的な取り組み

JFEグループは、目標達成に向けて多岐にわたる具体的な取り組みを実施している。

  • 副産物 (By-products):

    製鉄プロセスで大量に発生する鉄鋼スラグは、セメント原料や道路の路盤材などの土木材料として有効利用されている 9。さらに、生物共生機能や水質浄化機能を持つ環境修復材としての活用も進められており、「マリンストーン®」や「マリンブロック®」(藻場造成・漁礁用)、「鉄鋼スラグ水和固化体」(港湾工事、洋上風力洗掘防止工用)などが開発・実用化されている 9。また、鉄分を多く含むダストやスラッジは、製鉄プロセス内で原料として再利用されている 9

  • 水資源 (Water):

    製鉄所では冷却等に大量の水を使用するが、使用した水は生物処理や化学処理などの高度な浄化処理を施した上で、可能な限り循環利用するシステムが構築されている 9。これにより、93%を超える高い循環利用率を維持し、新規取水量の削減と排水による環境負荷低減に努めている 9。従業員への節水呼びかけなども行われている 9

  • プラスチック (Plastics):

    JFEスチールは、高炉の還元材の一部として使用済みプラスチックを再利用するケミカルリサイクル技術を導入している 11。これは、廃棄物削減と化石燃料使用量削減に貢献する。また、JFEエンジニアリングは、グループ会社(J&T環境、Jサーキュラーシステム)を通じて、ペットボトルリサイクル事業や、川崎臨海部での首都圏最大級のプラスチックリサイクル施設建設を進めており、プラスチック資源循環法の施行にも対応している 9。さらに、NEDOのグリーンイノベーション基金事業として、ガス化改質と微生物を用いた廃棄物からのエタノール製造技術(Waste-to-Chemical)の開発にも取り組んでいる 12。製品面では、リサイクル可能なスチールカップ「Steelish®」を開発し、使い捨てプラスチック削減に貢献するライフスタイルを提案している 9

  • 鉄スクラップ (Steel Scrap):

    鉄スクラップは電炉製鉄の主要原料であり、脱炭素化戦略において重要性が増している。JFE商事は、国内外の調達・販売ネットワークを強化し、鉄スクラップのグローバルな資源循環を促進している 9。JFEスチールも、転炉や今後拡大する電炉でのスクラップ利用技術の開発と利用量拡大を進めている 3

  • その他:

    JFEエンジニアリングは、廃棄物を燃料として発電する廃棄物発電プラントの建設・運営を国内外で多数手がけており、エネルギー回収と廃棄物削減に貢献している 9。また、食品廃棄物や下水汚泥などをバイオマス燃料に転換する技術・プラントも提供している 9

これらの取り組みから、JFEグループの資源循環戦略は、二つの側面を持っていることがわかる。一つは、製鉄プロセス内部での効率を極限まで高める「内部循環の深化」であり、これは既に高いレベルで達成されている。もう一つは、グループの技術力(特にエンジニアリング)を活用し、プラスチックや一般廃棄物など「社会全体の廃棄物を資源として取り込む事業の拡大」である。後者は、サーキュラーエコノミー市場の成長を取り込む新たなビジネスチャンスであり、今後の成長戦略の一翼を担う可能性がある。

ただし、鉄スクラップに関しては、その戦略的重要性が増している。EAFへの大規模な投資 5 は、高品質なスクラップの安定的な調達が前提となる。JFE商事によるグローバルな取引拡大 9 や、JFEスチールによるリサイクル性の訴求 9 は、この戦略的必要性に基づいている。将来的なスクラップ需給の逼迫や品質劣化は、JFEの低炭素化戦略にとってリスクとなりうるため 36、スクラップ確保に向けた取り組みは、単なる資源循環の枠を超えた重要性を持っている。

4. 生物多様性の保全

JFEグループは、自然資本と生物多様性が持続可能な社会の基盤であるとの認識に基づき、事業活動と自然との調和を目指している 13。経団連の「生物多様性宣言・行動指針」への支持を表明し 13、生物多様性の保全を重要な経営課題の一つとして捉え、事業活動が生態系に与える影響を評価し、最小限に抑える努力を行っている 13

4.1. 方針とコミットメント

JFEグループの生物多様性保全に関する基本的な考え方とコミットメントは、以下の通りである。

  • 基本方針:

    事業活動が生物多様性に与える影響を継続的に把握し、その影響を最小限に抑える努力を行う。生物多様性に貢献する技術・製品・サービスの開発を積極的に推進する。取り組み内容を社会に開示し、地域社会と連携して活動を推進する。全従業員が常に生物多様性に配慮して行動することを基本としている 37

  • TNFD (Taskforce on Nature-related Financial Disclosures) への対応:

    近年、国際的に重要性が高まっているTNFDの提言に注目し、そのフレームワークを参照した情報開示に向けた取り組みを開始している 13

  • LEAPアプローチの適用:

    TNFDが推奨する「LEAP(Locate, Evaluate, Assess, Prepare)アプローチ」を用いた試行的な評価に着手した 13。まずは、影響が大きいと考えられる鉄鋼事業を対象とし、主要な製造拠点(製鉄所)および重要な原材料である鉄鉱石・原料炭のサプライチェーンに焦点を当てて評価を進めている 13

  • 依存性と影響の特定:

    この初期評価を通じて、事業活動が自然に依存している側面(例:製造プロセスにおける水資源、原料調達における気候調整機能)と、自然に影響を与えている側面(例:製造時の水利用・水質汚濁、土地利用、GHG排出、上流サプライチェーンにおける土地・水利用、排出・汚染など)を特定した 13

  • 重要地域の特定:

    主要製造拠点のリスク評価では、東日本製鉄所(千葉、京浜)および西日本製鉄所(倉敷、福山)の近隣に、保護価値の高い地域(保護区や重要生物多様性地域:KBA)が存在することを認識し、これらの地域を将来の評価・対応における優先地域として特定した 13

  • 今後の展開:

    今後は、鉄鋼事業以外の事業も含めて、自社と自然との関係性の整理をさらに進め、TNFDフレームワークに沿った適切な情報開示を目指すとしている 13

TNFDへの対応を開始したことは、JFEグループが生物多様性に関するリスクと機会を、より体系的かつ戦略的に経営に取り込もうとしている姿勢を示すものである。ただし、現状はまだ試行的な評価段階であり、バリューチェーン全体を網羅した詳細な評価、具体的なリスク指標や目標値の設定、そして財務情報との統合といった、TNFDが求めるレベルの情報開示までには、まだ時間を要すると考えられる。この取り組みの深化と、評価結果に基づく具体的な行動計画への落とし込みが、今後の重要な課題となる。

4.2. 具体的な活動

JFEグループは、上記の方針に基づき、様々な具体的な保全活動を展開している。

  • 土地利用・影響評価 (Land Use & Impact Assessment):

    新たな製造拠点の建設や新規事業を開始する際には、関連法令に基づき環境影響評価(アセスメント)を実施し、周辺地域や敷地内の生物多様性の状況を確認し、必要な配慮・保全措置を講じている 13。JFEエンジニアリングでは、建設工事において騒音や排水などが周辺の生物へ与える影響を最小限にする施工方法を提案するなど、生物多様性への配慮を行っている 13。また、既存の製鉄所敷地内やその周辺地域において、生態系のモニタリングや保全活動を地域社会と連携して実施している 13

  • 水リスク管理 (Water Risk Management):

    製鉄プロセスにおける大量の淡水利用は、水源や周辺環境への影響が懸念される重要課題である 13。JFEグループは、気候変動による渇水や洪水のリスク増大を認識し、過去の被害事例や気象予測データ、世界資源研究所(WRI)の「Aqueduct」などのツールを用いて、国内外の製造拠点周辺の水リスク評価を行っている 13。WRIの評価(2024年6月)では、主要製鉄所が「高リスク」以上の地域にはないとされているものの、将来的なリスク(2030年、2040年)を考慮し、代替水源の確保、排水設備の増強、護岸のかさ上げ、BCP(事業継続計画)策定などの対策を強化している 13。また、水質汚濁防止法よりも厳しい協定を地域行政と締結し、さらに厳しい自主管理基準を設定して排水の水質管理(COD排出量管理など)を徹底することで、公共用水域への環境負荷低減に努めている 13

  • 生息地保全・創出 (Habitat Protection/Creation):

    JFEスチールは、製鉄プロセスで発生する鉄鋼スラグを有効活用し、海洋環境の再生に貢献している。横浜市の山下公園沖では、ヘドロが堆積した海底にスラグ製品「マリンブロック®」を設置し、生物付着基盤を創出することで、多様な生物が生息する環境を作り出し、海の自然浄化能力回復を目指す実証実験を横浜市と共同で行っている 13。この取り組みは、COD除去やCO₂削減にも貢献すると試算されている 13。広島県福山市内港でも、スラグ製品「マリンストーン®」を敷設した箇所で海藻の繁茂が確認されている 14。また、知多製造所では、地域の生態系を再現・保全する「ビオトープ知多」を造成し、地域住民向けのホタル観賞会などを開催している 13。JFEエンジニアリング鶴見地区にも、ビオトープ「JFEトンボみち」「トンボ池」が整備され、地域の環境学習の場として活用されている 13

  • 社会貢献活動:

    環境保全活動の一環として、地域社会と連携した植林活動や清掃活動などを推進している 38

これらの活動の中で、特に水リスク管理は、気候変動への適応、資源循環(水の再利用)、そして生物多様性保全(水質維持、水生生態系保護)という3つの重要な環境課題が交差する領域である。JFEグループの水管理に関する取り組み(高度な循環利用、浄化処理、リスク評価と対策)は、これら複数の課題に同時に対応する統合的な環境戦略の中核要素となっていると言える。

5. 環境関連のリスクと機会

JFEグループの事業活動、特に中核である鉄鋼事業は、その性質上、環境要因と密接に関連しており、様々なリスクと機会に晒されている。

リスク (Risks):

  • 規制リスク:

    世界的な脱炭素化の流れの中で、カーボンプライシング(炭素税、排出量取引制度)の導入や強化、環境規制(排出基準、廃棄物処理基準など)の厳格化は、製造コストの増加や操業上の制約につながる可能性がある。特に鉄鋼業は排出量が多いため、規制強化の影響を受けやすい。

  • 市場リスク:

    顧客や社会全体で低炭素・環境配慮型製品への需要が高まる中、これに対応できない場合、製品の競争力が低下し、市場シェアを失うリスクがある。特に、自動車、建設、エネルギー分野など主要な需要家からのサプライチェーン全体での排出削減要求は強まる傾向にある。また、JFEグループが注力するグリーン鋼材(JGreeX™)についても、市場での環境価値評価や価格プレミアムが確立されるかは不確実である 10

  • 物理的リスク:

    気候変動の進行に伴う異常気象(大規模な渇水、洪水、台風、熱波など)の頻発化・激甚化は、国内外の生産拠点における操業停止や設備被害、原材料調達や製品輸送といったサプライチェーンの寸断を引き起こすリスクを高める 13。特に、水資源への依存度が高い製鉄所は渇水リスクに、沿岸部に立地する拠点は洪水や高潮リスクに晒されやすい。

  • 技術リスク:

    2050年カーボンニュートラル達成の鍵を握るCR高炉や水素還元製鉄といった超革新技術の開発が計画通りに進まない、あるいは実用化できてもコストが高止まりするリスクがある 3。特定の技術に依存することのリスクも存在する。

  • 評判リスク:

    設定した環境目標(特にCO₂削減目標)を達成できなかった場合や、環境汚染事故などを起こした場合、投資家、顧客、地域社会、従業員などからの信頼を失い、企業イメージが悪化するリスクがある。また、脱炭素化の流れに逆行すると見なされる可能性のある石炭関連への投資継続なども、批判の対象となり得る 7

  • 財務リスク:

    脱炭素化に向けた超革新技術の開発や設備投資には、1兆円規模ともされる巨額の資金が必要であり 4、その調達と投資回収が大きな財務的負担となるリスクがある。また、将来的に規制強化や市場の変化により、既存の石炭ベースの設備や関連投資(原料炭権益など)が価値を失う「座礁資産」となるリスクも存在する 7

機会 (Opportunities):

  • グリーン技術・製品:

    低炭素鋼材(JGreeX™)や、省エネ・効率化に貢献する高機能鋼材(高性能電磁鋼板、自動車用超ハイテン材など)は、環境意識の高い顧客からの需要を取り込むことで、新たな収益源となり得る 2。環境性能を競争優位性につなげるチャンスがある。

  • エンジニアリング事業:

    JFEエンジニアリングが持つ再生可能エネルギー発電(太陽光、風力、バイオマス、地熱)、廃棄物処理・リサイクル、省エネ、水素関連インフラなどの技術・ノウハウは、脱炭素社会への移行において需要拡大が見込まれる分野であり、グループ全体の成長を牽引する機会となる 3。環境ソリューションプロバイダーとしての地位確立が期待される。

  • オペレーション効率化:

    省エネルギー活動の推進、資源利用効率の改善、プロセスのデジタル化(DX)などは、コスト削減に直結し、収益性向上に貢献する 4

  • ブランドイメージ向上:

    環境問題への先進的な取り組みを積極的に開示し、ステークホルダーとの対話を深めることで、環境先進企業としての評価を高め、企業価値全体の向上につなげることができる 1。ESG投資の呼び込みにも有利に働く。

  • 新規事業:

    成長分野である洋上風力発電関連ビジネスへのグループ全体での参入 3 や、プラスチックリサイクルなどのサーキュラーエコノミー関連事業 10 は、新たな収益の柱となる可能性がある。

これらのリスクと機会を踏まえると、JFEグループが直面する最大の戦略的課題は、脱炭素化に伴う「移行リスクの三角形」、すなわち①巨額の投資負担と技術的な不確実性 4、②グリーン製品(特に鋼材)に対する市場の需要と価格形成の不確実性 10、③カーボンプライシングや規制に関する政策の不確実性、という3つの要素をいかに乗り越えるかにある。これらのリスクは相互に関連しており、例えば政策動向は市場需要を喚起し、技術投資のリスクを低減させうる。市場の要求は技術導入を加速させ、技術革新はコストを下げ政策に影響を与えうる。従って、JFEグループの成功は、これらの外部環境の変化を的確に読み取り、柔軟に戦略を適応させる能力にかかっている。同時に、政策提言 3 などを通じて、自社にとって有利な外部環境形成に主体的に関与していくことも求められる。この複雑な状況下での的確な舵取りが、リスクを最小化し機会を最大化する鍵となる。

6. 業界のベストプラクティス

鉄鋼業界は、世界的に脱炭素化への圧力が高まる中、様々な技術開発や戦略が模索されている。JFEグループの取り組みを評価する上で、国内外の業界における先進的な事例(ベストプラクティス)を参照することは有益である。

6.1. 脱炭素化技術

  • 水素直接還元 (H2-DRI) + 電気炉 (EAF):

    これは、多くの鉄鋼メーカー、特に欧州企業などが長期的なカーボンニュートラル達成に向けた本命技術と見なしているプロセスである 40。天然ガスの代わりにグリーン水素(再生可能エネルギー由来の水素)を用いて鉄鉱石を還元し、得られた還元鉄(DRI)を電気炉で溶解する。原理的にCO₂排出量を大幅に削減できるが、最大の課題は、競争力のある価格でのグリーン水素の大量かつ安定的な供給体制の構築である 40。大規模な再生可能エネルギー発電設備と水素製造・輸送インフラへの投資が必要となる。

  • EAFの高効率化・大型化:

    スクラップベースのEAF製鋼は、既存技術の中では最もCO₂排出量が少ないルートの一つである 40。ベストプラクティスとしては、溶解効率を高める技術(予熱、撹拌など)、不純物除去技術の向上による高品質鋼の製造、炉の大型化による生産性向上が挙げられる 40。また、使用電力の再生可能エネルギー化が不可欠である 41

  • CCUS (Carbon Capture, Utilization, and Storage):

    高炉-転炉法を当面維持する場合や、DRIプロセス(特に天然ガスベース)からのCO₂排出を削減するためには、CCUS技術が重要な選択肢となる 41。大規模な実証プロジェクトが世界各地で進められているが、CO₂の分離・回収コスト、輸送インフラ、そして長期的に安全な貯留場所の確保が大きな課題である。利用(Utilization)としては、化学品原料化などが検討されている 44

  • バイオマス・バイオ炭利用:

    持続可能な方法で調達されたバイオマスや、それを炭化させたバイオ炭を高炉の還元材や焼結工程の燃料として利用し、化石燃料の使用量を削減する取り組みも行われている 44。原料の安定供給と経済性が課題となる。

  • 電化:

    製鉄プロセスにおける加熱工程などを、化石燃料から電気(理想的には再生可能エネルギー由来)に転換する動きも進んでいる 41

6.2. 資源循環

  • スクラップ利用最大化:

    鉄はリサイクル性に優れた素材であり、スクラップの最大限の活用は資源循環と脱炭素化の両面に貢献する 40。ベストプラクティスとしては、①使用済み製品からのスクラップ回収率の向上(特に建設分野や包装材など回収率が低い分野への注力 43)、②高度な選別技術(例:銅などの不純物除去)によるスクラップ品質の向上(アップサイクル)43、③国際的なスクラップ需給動向を踏まえた安定調達戦略の構築 36、④スクラップ処理業者との連携強化やM&Aによるサプライチェーン確保 36 などが挙げられる。

  • 副産物・廃棄物の完全利用:

    製鉄プロセスから発生するスラグ、ダスト、スラッジなどを、単なる再利用にとどまらず、より付加価値の高い製品(高機能建材、環境修復材など)へと転換する取り組みが進んでいる。また、他産業の廃棄物を製鉄プロセスで受け入れたり(例:廃プラスチック)、逆に製鉄所の副産物や排熱を他産業で利用したりする産業共生(Industrial Symbiosis)の取り組みも、地域レベルでの資源効率向上に貢献する 44

  • 水資源管理:

    製鉄所内で使用する水を高度に処理し、可能な限り循環利用するクローズドループシステムの構築・運用は、多くの先進的な工場で実施されている 44。90%以上の循環率が一般的になりつつある 44

  • 製品設計:

    製品のライフサイクル全体での環境負荷を低減するため、耐久性の向上による長寿命化、使用後の解体や分別、リサイクルを容易にする設計(Design for Recycling/Disassembly)を取り入れる動きがある 43

  • マテリアル効率:

    製造プロセスにおける歩留まり(原料から製品になる割合)の向上や、製品設計の工夫による材料使用量の削減(例:高強度材料による軽量化)も、資源消費量削減に貢献する重要な取り組みである 42

6.3. 生物多様性管理 (TNFD)

  • TNFDフレームワークの早期導入と統合:

    自然関連のリスクと機会を経営戦略に統合するため、TNFDフレームワーク(特にLEAPアプローチ)を早期に導入し、事業活動が自然に与える依存度(Dependencies)と影響(Impacts)を評価し、それらに基づくリスクと機会を特定・管理し、具体的な目標を設定して開示することがベストプラクティスとなりつつある 47。気候関連(TCFD)と自然関連(TNFD)の統合的な報告も推奨されている 53

  • サプライチェーンにおけるリスク管理:

    特に鉱物資源(鉄鉱石、石炭など)の採掘は、生物多様性への影響が大きい分野であるため、サプライヤーに対して生物多様性への配慮を求め、エンゲージメントを通じてリスク評価と管理を行うことが重要となる 49。契約条件に見直しを入れるなどの対応も考えられる 52

  • ネイチャーポジティブへの貢献:

    事業活動による影響を最小化するだけでなく、積極的に自然資本の回復・向上に貢献する「ネイチャーポジティブ」を目指す動きが広がっている 54。鉱山跡地の生態系修復、事業所周辺での緑地創出・管理、生態系サービスの維持・向上に配慮した事業運営などが含まれる。

  • ステークホルダーエンゲージメント:

    事業活動が影響を与える可能性のある先住民や地域社会(IPLCs: Indigenous Peoples and Local Communities)の権利を尊重し、彼らの持つ伝統的知識を活用しながら、対話と協働を通じて生物多様性保全を進めることが求められている 49

これらのベストプラクティスと比較すると、JFEグループは多くの認識されている技術経路(H2-DRI、EAF、CCUS)を追求しているものの、一部の先進的な国際的企業(特に欧州勢)は、より早期の高炉フェーズアウトと、国境を越えたパートナーシップ等を通じた大規模なグリーン水素サプライチェーンの確保に重点を置いている傾向が見られる。JFEグループがCR高炉という独自技術にも注力し、かつ近年の原料炭投資 7 を行っている点は、最もアグレッシブなグローバルなベストプラクティス(高炉からの完全な早期離脱とグリーン水素への集中)と比較すると、やや保守的、あるいはリスク分散的なアプローチと見なされる可能性がある。

7. 競合他社分析 (Nippon Steel, POSCO, Kobe Steel)

JFEグループの環境への取り組みを相対的に評価するため、主要な競合他社である日本製鉄株式会社、POSCO(韓国)、株式会社神戸製鋼所の環境戦略とパフォーマンスを比較分析する。

7.1. 環境戦略と取り組みの比較

日本製鉄株式会社 (Nippon Steel):

  • 気候変動:

    JFEと同様、2050年カーボンニュートラル目標と2030年30%削減目標(2013年度比)を掲げている 15。技術戦略もマルチトラックアプローチを採用し、①高炉への水素大量注入技術(「Super COURSE50」で世界最高水準のCO₂削減効果を確認)、②大型電炉での高級鋼製造技術、③水素直接還元製鉄技術、の3つの超革新技術開発を推進している 15。製品・ソリューションによる貢献を「NSCarbolex® Solution」としてブランド化し訴求している点も特徴的である 15。JFEと同様に、海外の原料炭への投資も行っていることが報告されている 7

  • 資源循環:

    鉄鋼プロセス内でのゼロエミッション(最終処分量削減目標設定)を推進し、副産物(スラグ、ダスト等)のリサイクルや、廃プラスチックの処理技術開発にも取り組んでいる 15。水の循環利用率は約90%を維持している 56

  • 生物多様性:

    「30by30アライアンス」に参加し、生物多様性目標達成への貢献を表明している 56。TNFDのLEAPアプローチを適用した評価を開始しており 56、「製鉄所の森づくり(ふるさとの森づくり)」や、スラグ製品を活用した藻場造成(「海の森づくり」)といった独自の活動を長年継続している 15

POSCO (韓国):

  • 気候変動: POSCOグループとして2050年カーボンニュートラル目標を宣言している 17。特に、100%水素を用いる独自の水素還元製鉄技術「HyREX (Hydrogen Reduction Ironmaking)」の開発に注力しており、専門組織(HyREXプロジェクトチーム)を設置して推進体制を強化している 17。CDP評価では、気候変動・水セキュリティともに「A-」を獲得している(2023年)58。TCFDへの支持表明と、それに基づいた気候変動報告書の発行も早くから行っている 58

  • 資源循環: 製鉄副産物のリサイクルに積極的に取り組み、例えばスラグを原料とした肥料(ケイ酸質肥料)は土壌改良やGHG(メタン)削減効果があるとされている 51。水資源に関しても、雨水利用、海水淡水化、下水再利用などを組み合わせ、効率的な利用を図っている 51

  • 生物多様性: TNFDに早期(2022年)に参加し、生物多様性管理へのコミットメントを示している 51。TNFDのLEAPアプローチに基づき、鉄鋼業としての依存度・影響度分析や、事業所周辺のリスク評価を実施している 51。日本製鉄と同様に、製鉄スラグを原料とした人工魚礁「Triton」を開発し、海洋生態系の回復活動に活用している 51。POSCOグループ全体(持株会社のPOSCO Holdings、事業会社・関連会社のPOSCO International, POSCO Future Mなど)でESG経営を推進し、各社がサステナビリティ報告書を発行している点も特徴である 59

株式会社神戸製鋼所 (Kobe Steel):

  • 気候変動: 2050年カーボンニュートラルへの挑戦と、2030年30~40%削減目標(2013年度比)を掲げている 18。技術開発では、低CO₂高炉技術(高炉へのプラスチック・還元材多量投入など)、天然ガスを用いる直接還元鉄技術(自社保有のMIDREX®プロセス、CO₂排出量を20-40%削減可能とされる 37)、電炉活用、CCUSなど、多様な選択肢を追求する方針を示している 18。グループ内の電力事業(石炭火力)におけるCO₂削減も重要な課題であり、高効率化や将来的な混焼・転換も視野に入れている 62。CDP評価はJFEと同様に気候変動・水セキュリティともに「A-」評価を受けている(2021年、2022年発表)63。TCFD提言への支持も表明している 64

  • 資源循環: 「ゼロ・エミッション(埋立廃棄物ゼロ)」活動を継続しており、主要副産物(スラグ、ダスト、スラッジ)のリサイクル率99%を2025年度目標としている 18。水の循環利用率についても、95%以上を維持する目標を掲げている 18

  • 生物多様性: 独自の「KOBELCO生物多様性ガイドライン」を2010年に策定し、活動の指針としている 37。社会貢献活動として「KOBELCO GREEN PROJECT」を展開し、森づくり(植林活動)や環境教育(「コベルコの森の童話大賞」など)を通じて生物多様性保全と意識向上に取り組んでいる 18。TNFDへの具体的な言及は、現時点での公開情報からは限定的である。

表1: 主要鉄鋼メーカーの環境目標・主要技術比較


項目

JFEホールディングス

日本製鉄

POSCO Holdings

神戸製鋼所

2030 CO₂削減目標

≧30% (2013年度比, 鉄鋼事業) 2

30% (2013年度比) 15

(目標値非公開、2050 CNに向けた削減)

30-40% (2013年度比, 生産プロセス) 18

2050目標

カーボンニュートラル 2

カーボンニュートラル 15

カーボンニュートラル 17

カーボンニュートラルへの挑戦 18

主要脱炭素技術 (H2-DRI)

開発中 (小型試験炉) 3, UAEプロジェクト連携 34

開発中 (マルチトラック) 15

HyREX技術開発に注力 17

MIDREX®プロセス保有・活用 37

主要脱炭素技術 (EAF)

大型革新電炉導入決定 (倉敷), 他拠点でも計画 3

大型電炉での高級鋼製造技術開発 (マルチトラック) 15

(高炉代替としての位置づけは限定的か)

電炉活用も選択肢 18

主要脱炭素技術 (高炉改修/水素注入)

CR高炉開発中 (パイロット炉) 3

高炉水素注入技術開発 (Super COURSE50) (マルチトラック) 15

(HyREXに注力)

低CO₂高炉技術開発 18

主要脱炭素技術 (CCUS)

開発・連携模索 3

開発・検討 (マルチトラック)

検討

開発・検討 18

資源循環目標 (水)

循環利用率 ≧90% 9

循環利用率 約90%維持 56

効率利用推進 (雨水、海水淡水化、下水再利用) 51

循環利用率 ≧95% 18

資源循環目標 (副産物)

再資源化率 ≧99% 9

ゼロエミッション推進 (最終処分量削減目標) 15

有効利用推進 (例: スラグ肥料) 51

リサイクル率 99% (主要副産物, 2025年度目標) 18

生物多様性フレームワーク

TNFD参照・LEAP試行評価開始 13

TNFD参照・LEAP適用開始, 30by30 Alliance参加 56

TNFD参加・LEAP評価実施 51

KOBELCO生物多様性ガイドライン 37

この比較から、日本の大手鉄鋼3社(JFE、日本製鉄、神戸製鋼所)と韓国のPOSCOは、いずれも2050年カーボンニュートラルという長期目標を共有し、その達成に向けて水素還元や電炉活用を含む複数の技術開発を進めるという点で、大枠の戦略は類似していることがわかる。これは、各国政府の政策(例:日本のグリーンイノベーション基金 34)による後押しも受けながら、業界全体として共通の技術的課題に取り組んでいる状況を反映している。

しかし、細部では各社の力点やアプローチに違いも見られる。例えば、JFEはCR高炉、日本製鉄は高炉への水素注入、POSCOはHyREXという、それぞれ独自色のある高炉代替・改修技術にも注力している。神戸製鋼所は自社技術であるMIDREX®プロセスを強みとしている。

このような類似した戦略方向性は、将来的にグリーン水素、高品質スクラップ、そして脱炭素化技術開発・実装のための資金といった限られた資源を巡る競争が激化することを示唆している。また、同様の技術を目指す中で、いかに他社よりも早く、効率的に、そして経済的に実現可能な形で技術を確立し、低炭素製品を市場に投入できるかが、各社の競争力を左右する重要な要素となるだろう。資源循環や生物多様性への対応においても、TNFDへの早期対応など、国際的な潮流にいかに迅速に適応していくかが問われている。

8. 環境スコアのベンチマーキング

企業の環境・社会・ガバナンス(ESG)への取り組みは、CDP、MSCI、Sustainalyticsといった外部の評価機関によって評価され、スコアリングされている。これらのスコアは、投資家の投資判断や企業の評判に影響を与えるため、JFEグループの環境パフォーマンスを客観的に把握し、競合他社と比較する上で重要な指標となる。

8.1. 主要評価機関による評価比較

以下に、JFEホールディングスおよび主要競合他社の公表されている主なESG評価・スコアを示す。

JFEホールディングス:

  • CDP (2023年評価): 気候変動、水セキュリティ、サプライヤーエンゲージメントの3分野全てにおいて「A-」評価を獲得している 30。これは、情報開示の網羅性や取り組みがある程度進んでいることを示すリーダーシップレベルの評価である。

  • MSCI: 日本株式を対象とする主要なESG指数である「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」およびグローバルな「MSCI ESGリーダーズ指数」の構成銘柄に選定されている 30。具体的なレーティング(AAA~CCC)は一般公開されていないが、これらの指数に選定されるためには、同業種内で相対的に高いESG評価を得ている必要がある。

  • Sustainalytics: ESGリスクレーティングは「33.4」で、「High Risk(高リスク)」カテゴリーに分類されている(2025年1月更新時点)19。鉄鋼業界内でのランクは157社中40位であり、中位に位置する。リスク管理(Management)の評価は「Average(平均的)」とされている 19

  • その他: 日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が採用する国内株式のESG指数(FTSE Blossom Japan Index、FTSE Blossom Japan Sector Relative Index、S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数など)全てに選定されている 30。また、SOMPOアセットマネジメントの「SOMPOサステナビリティ・インデックス」にも13年連続で選定されている 31。これらの国内指数への選定は、日本市場におけるESG評価の高さを反映している。

日本製鉄:

  • CDP: 近年のスコアに関する明確な公開情報は見当たらないが、過去にはCDP質問書への回答実績がある 67

  • MSCI: JFEと同様に、「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」および「MSCI ESGリーダーズ指数」の構成銘柄に選定されている 67

  • Sustainalytics: ESGリスクレーティングは「31.2」で、「High Risk」カテゴリー(2025年3月更新時点)20。業界ランクは157社中32位と、JFEよりやや上位に位置する。リスク管理の評価は「Strong(強固)」と、JFEより高い評価を得ている 20。ただし、別ソースではリスクスコアが39.6(High Risk)、ランク92/156と報告されており 69、評価時期や基準による変動に留意が必要である。

POSCO Holdings:

  • CDP (2023年評価, POSCOとして): 気候変動、水セキュリティともに「A-」評価 58。JFEと同等の評価レベルである。

  • MSCI: 指数への選定状況に関する明確な公開情報は見当たらない。

  • Sustainalytics: ESGリスクレーティングは「24.0」で、「Medium Risk(中リスク)」カテゴリー(2023年10月更新時点)21。鉄鋼業界内でのランクは157社中6位と、競合他社の中で際立って高い評価を得ている。リスク管理の評価も「Strong」である 21。グループ会社(POSCO International, Future M, DX, M-TECHなど)も個別に評価されており、事業内容によってリスク評価は異なる 70

神戸製鋼所:

  • CDP (2021年, 2022年発表): 気候変動、水セキュリティともに「A-」評価 63。JFE、POSCOと同等の評価レベルである。

  • MSCI: 「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」の構成銘柄に選定されている 74

  • Sustainalytics: ESGリスクレーティングは「36.5」で、「High Risk」カテゴリー(2024年4月更新時点)22。業界ランクは157社中66位。リスク管理の評価は「Strong」である 22

表2: 主要鉄鋼メーカーのESG評価比較


項目

JFEホールディングス

日本製鉄

POSCO Holdings

神戸製鋼所

CDP 気候変動スコア (年)

A- (2023) 30

N/A

A- (2023, POSCO) 58

A- (2021/2022) 64

CDP 水セキュリティスコア (年)

A- (2023) 30

N/A

A- (2023, POSCO) 58

A- (2021/2022) 64

Sustainalytics ESGリスク (スコア)

33.4 (高リスク) 19

31.2 (高リスク) 20

24.0 (中リスク) 21

36.5 (高リスク) 22

Sustainalytics 業界ランク (日付)

40/157 (2025/1) 19

32/157 (2025/3) 20

6/157 (2023/10) 21

66/157 (2024/4) 22

MSCI 主要指数選定

選定 (日本Select Leaders, ESG Leaders) 30

選定 (日本Select Leaders, ESG Leaders) 67

N/A

選定 (日本Select Leaders) 74

FTSE 主要指数選定

選定 (Blossom Japan, FTSE4Good等) 30

選定 (Blossom Japan等)

N/A

選定 (Blossom Japan等) 74

これらの評価結果を比較すると、いくつかの傾向が見て取れる。まず、JFEを含む日本の大手鉄鋼3社は、CDP評価や国内の主要ESG指数(GPIF採用指数)においては、総じて良好な評価を得ている。これは、情報開示の質や、特定の評価基準(例:気候変動対策、ガバナンス体制)において一定の水準を満たしていることを示唆している 30

しかし、SustainalyticsによるESGリスク評価を見ると、日本の3社はいずれも「High Risk」カテゴリーに分類されているのに対し、POSCO Holdingsは「Medium Risk」と評価され、業界内での順位も突出して高い 19。Sustainalyticsのリスク評価は、企業が管理しきれていないESGリスク(Unmanaged Risk)の度合いを測ることに重点を置いている 19。この評価の違いは、いくつかの要因によって説明できる可能性がある。一つは、Sustainalyticsが鉄鋼セクター固有の高い環境負荷や移行リスクをより重く評価しており、その影響が日本の企業により強く反映されている可能性である。もう一つは、POSCOが(少なくともSustainalyticsの評価基準においては)これらのリスクに対する管理体制(Management ScoreがStrong)や事業構成において、日本の競合他社よりも優位にあると見なされている可能性である。JFEのリスク管理評価が「Average」である点も、スコア差の一因かもしれない 19

この評価機関によるスコアの違いは、ESG評価の多面性と、評価機関ごとの方法論や重点項目の違いを浮き彫りにしている。企業は、特定のスコアに一喜一憂するのではなく、複数の評価を参照し、それぞれの評価基準や背景を理解した上で、自社の弱みと強みを把握し、改善につなげていく必要がある。JFEグループにとっては、国内での評価維持に加え、Sustainalyticsのようなグローバルなリスク評価機関からの見方を改善していくことが、今後の課題となりうる。

9. 課題と提言

これまでの分析を踏まえ、JFEグループが環境分野において直面している主要な課題と、それらに対する今後の取り組みの方向性(提言)を以下に示す。

課題 (Challenges):

  • 技術的課題: 2050年カーボンニュートラル達成の鍵となるCR高炉や水素還元製鉄といった超革新技術は、依然として開発・実証段階にあり、技術的な確立、スケールアップ、そして経済性の確保には高い不確実性が伴う 3。これらの技術開発が遅延または失敗した場合、代替となる脱炭素化経路の選択肢は限られ、目標達成が困難になるリスクがある。

  • 経済的課題: 超革新技術への移行には、2030年までに1兆円規模とされる巨額の投資が必要となる 4。この資金をいかに調達し、投資回収の見通しを立てるかが大きな課題である。同時に、グリーン鋼材(JGreeX™)の市場価値が十分に認められ、コスト増を吸収できる価格プレミアムが形成されるか、また需要が十分に拡大するかは不透明である 10。さらに、これらの新技術に不可欠な安価で安定した低炭素エネルギー(再生可能エネルギー電力)やグリーン水素の調達も、国内インフラ整備状況やコストに左右される大きな課題である 6

  • 戦略的課題: 近年行われた原料炭への投資 7 は、長期的なカーボンニュートラル目標との整合性について説明が求められる。高炉依存を継続することによる将来的な座礁資産リスクをどのように管理するかが課題となる。また、これまでのCO₂排出削減が生産量減少に大きく依存しているとの指摘 7 を踏まえ、今後は生産活動を維持・成長させながら排出量を削減していく実質的な脱炭素化を実現する必要がある。

  • サプライチェーン課題: 電炉への移行を進める上で、高品質な鉄スクラップを安定的かつ経済的に確保することが不可欠となるが、世界的な需要増による需給逼迫や品質劣化のリスクが懸念される 36。また、上流の原材料調達(鉄鉱石、原料炭など)においては、採掘に伴う環境負荷や生物多様性への影響、人権問題などのリスク管理強化が求められる(特に生物多様性に関してはTNFD対応の中で重要性が増している)13

  • 生物多様性: TNFDフレームワークへの対応は始まったばかりであり、評価対象をバリューチェーン全体に拡大し、具体的なリスクと機会を特定した上で、測定可能な目標を設定し、具体的な保全・回復活動へと繋げていく必要がある 13。特に、原材料調達段階での影響評価とサプライヤーエンゲージメントの強化が課題となる。

提言 (Recommendations):

  • 技術開発戦略の複線化と加速: 超革新技術(特に有望視される水素還元製鉄と大型高効率電炉)の研究開発・実証を最優先で加速し、早期の技術確立を目指すべきである。同時に、CR高炉などの代替技術開発も継続し、技術的な不確実性に備える複線的なアプローチを維持する。並行して、省エネ、転炉スクラップ利用拡大、既存設備の高効率化といったトランジション技術を最大限に活用し、2030年目標達成への道筋を確実なものにする。

  • 財務戦略と投資家エンゲージメント: 巨額の移行投資に対応するため、グリーンボンド発行などのサステナブルファイナンスを含む多様な資金調達手段を積極的に活用する。政府による補助金や支援制度(例:GX経済移行債 5)を最大限活用するための政策エンゲージメントも強化する。投資家に対しては、移行戦略の進捗、リスク、必要な投資について透明性の高い情報開示を行い、建設的な対話を通じて長期的な視点での理解と支持を求める。

  • グリーン市場の創造と牽引: グリーン鋼材(JGreeX™)の環境価値と性能を需要家(特に自動車、建設、エネルギー分野)に対して積極的に訴求し、共同での製品開発や実証実験などを通じて、需要を喚起・育成する。マスバランス方式の算定根拠や第三者認証に関する透明性を確保し、市場からの信頼を獲得する。

  • 戦略的資源確保: 高品質な鉄スクラップの安定確保に向けて、国内外のサプライヤーとの関係強化、リサイクル技術への投資、あるいは処理業者との連携・M&Aなども視野に入れたサプライチェーン戦略を構築・実行する。将来のグリーン水素についても、国内外の供給パートナー候補との早期の連携構築や、国内インフラ整備に向けた働きかけを強化する。

  • 生物多様性対応の深化: TNFDに基づく自然関連リスク・機会評価を、原材料調達を含むバリューチェーン全体へと速やかに拡大する。評価結果に基づき、具体的なリスク低減策(例:調達方針の見直し、サプライヤーエンゲージメント)と、測定可能な保全・回復目標(例:重要生息地の保全、ネイチャーポジティブ貢献)を設定し、進捗を開示する。

  • ガバナンスと透明性の向上: 環境投資の意思決定プロセス、特に経済性と環境目標との間でトレードオフが生じる可能性のある案件(例:石炭関連投資)について、判断基準や戦略的な位置づけを明確にし、ステークホルダーに対する説明責任を果たす。グループサステナビリティ会議や取締役会における議論の内容や結果について、可能な範囲で透明性を高める。

JFEグループの脱炭素化への道筋は、内部の技術開発努力だけでは完結しない。政策支援の獲得 6、グリーン製品市場の育成 10、そして重要資源(スクラップ、水素など)の確保 6 といった、外部環境への能動的な働きかけが不可欠である。したがって、上記の提言は、内部の研究開発体制強化と並行して、渉外能力、市場開発力、戦略的な資源獲得能力を強化することに重点を置くべきである。

10. 結論

JFEホールディングスは、持続可能な社会への貢献を企業理念に掲げ、気候変動、資源循環、生物多様性という重要な環境課題に対して、包括的な戦略と具体的な取り組みを進めている。特に、2050年カーボンニュートラル達成という野心的な目標に向けた「JFEグループ環境経営ビジョン2050」の策定と、それを支える超革新技術(CR高炉、水素還元製鉄、大型電炉)への挑戦は、同社の強い意志を示すものである。

気候変動対策においては、段階的なCO₂削減目標を設定し、技術開発と設備投資を進めているが、目標達成には超革新技術の確立という高いハードルが存在する。移行期間中の着実な排出削減と、グリーン鋼材市場の開拓が鍵となる。一方で、近年の原料炭投資は、長期戦略との整合性について説明が求められる側面もある。

資源循環においては、製鉄プロセス内部の高い効率性を維持しつつ、廃プラスチック処理や廃棄物発電など、社会全体の循環システムに貢献する事業領域へと拡大を図っている。鉄スクラップの戦略的重要性は、脱炭素化の進展とともに一層高まるだろう。

生物多様性保全に関しても、TNFDフレームワークの導入を開始し、リスクベースのアプローチへと舵を切った点は評価できる。今後は、バリューチェーン全体への評価拡大と、具体的な目標設定・行動への展開が期待される。

競合他社との比較では、日本の大手鉄鋼メーカーは類似した戦略を採用しており、今後の競争は技術実装の速度と効率性、そして資源確保能力にかかっている。ESG評価においては、国内での評価は高いものの、グローバルなリスク評価では依然として課題が残る。

総じて、JFEグループは、鉄鋼業という脱炭素化が困難なセクターにおいて、多大な努力と投資を行っている。しかし、その道のりは平坦ではなく、技術的・経済的な不確実性、市場や政策の動向、そして資源制約といった多くの課題に直面している。持続可能な成長を実現するためには、技術革新への挑戦を継続するとともに、財務戦略、市場戦略、資源戦略を巧みに組み合わせ、リスクを適切に管理し、多様なステークホルダーとの協働を深めていく必要がある。これらの取り組みの進捗を継続的にモニタリングし、戦略を柔軟に見直していくことが、今後のJFEグループの企業価値を左右する上で極めて重要となるだろう。

引用文献

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JFEホールディングスのGHG排出量推移

GHG排出量推移

「Scope1」の過去3年の推移

2023年47,400,000t-CO2
2022年49,000,000t-CO2
2021年51,900,000t-CO2

「Scope2」の過去3年の推移

2023年7,300,000t-CO2
2022年7,100,000t-CO2
2021年7,100,000t-CO2

「Scope3」の過去3年の推移

2023年22,701,000t-CO2
2022年23,184,000t-CO2
2021年20,778,000t-CO2

COR(売上高あたりのCO2排出量)推移

スコープ1+2

スコープ1+2 CORの過去3年推移

2023年10,571kg-CO2
2022年10,648kg-CO2
2021年13,516kg-CO2

スコープ3

スコープ3 CORの過去3年推移

2023年4,387kg-CO2
2022年4,400kg-CO2
2021年4,760kg-CO2

COA(総資産あたりのCO2排出量)推移

スコープ1+2

スコープ1+2のCOA推移

2023年9,505kg-CO2
2022年10,156kg-CO2
2021年11,158kg-CO2

スコープ3

スコープ3のCOA推移

2023年3,945kg-CO2
2022年4,197kg-CO2
2021年3,929kg-CO2

業績推移

売上推移

2023年5兆1746億
2022年5兆2688億
2021年4兆3651億

純利益推移

2023年1,974億円
2022年1,626億円
2021年2,881億円

総資産推移

2023年5兆7550億
2022年5兆5240億
2021年5兆2879億

すべての会社・業界と比較

環境スコアポジション

JFEホールディングスの環境スコアは270点であり、すべての会社における環境スコアのポジションと業界内におけるポジションは下のグラフになります。

すべての会社と比較したポジション

業界内ポジション

JFEホールディングスのCORポジション

JFEホールディングスにおけるCOR(売上高(百万円)における炭素排出量)のポジションです。CORは数値が小さいほど環境に配慮したビジネスであると考えられます。JFEホールディングスのスコープ1+2の合計のCORが10571kg-CO2であり、スコープ3のCORが4387kg-CO2になります。グラフはGHG排出量のスコープ別に分かれており、すべての会社と業界内におけるそれぞれのポジションを表しています。
全体におけるJFEホールディングスのCORポジション

CORスコープ1+2

CORスコープ3

業界内におけるJFEホールディングスのCORポジション`

CORスコープ1+2

CORスコープ3

JFEホールディングスのCOAポジション

JFEホールディングスにおけるCOA(総資産(百万円)における炭素排出量)ポジションです。COAもCAR同様、数値が小さいほど環境に配慮したビジネスを行っていると考えられます。JFEホールディングスのスコープ1+2の合計のCORが9505kg-CO2であり、スコープ3のCORが3945kg-CO2になります。グラフはGHG排出量のスコープ別に分かれており、すべての会社と業界内におけるそれぞれのポジションを表しています。
全体におけるJFEホールディングスのCOAポジション

COAスコープ1+2

COAスコープ3

業界内におけるJFEホールディングスのCOAポジション

COAスコープ1+2

COAスコープ3

環境スコアランキング(全社)

集計数:510企業
平均点数:217.6
CDPスコア気候変動勲章
三菱電機
6503.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
505
CDPスコア気候変動勲章
コニカミノルタ
4902.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
500
CDPスコア気候変動勲章
豊田自動織機
6201.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
480
4
古河電気工業
5801.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
470
5
味の素
2802.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
460
6
セコム
9735.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコンサービス業
455
7
ダイキン工業
6367.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
450
8
アイシン
7259.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
450
9
オムロン
6645.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
445
10
フジクラ
5803.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
445

業界別環境スコアランキング

集計数:229企業
平均点数:255.4
CDPスコア気候変動勲章
三菱電機
6503.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
505
CDPスコア気候変動勲章
コニカミノルタ
4902.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
500
CDPスコア気候変動勲章
豊田自動織機
6201.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
480
4
古河電気工業
5801.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
470
5
味の素
2802.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
460
6
アイシン
7259.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
450
7
ダイキン工業
6367.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
450
8
フジクラ
5803.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
445
9
オムロン
6645.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
445
10
富士通
6702.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
445