カテゴリー | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 |
---|---|---|---|
1購入した製品・サービス | 5,801,000 | 5,073,000 (▼728,000) | 4,643,000 (▼430,000) |
2資本財 | 158,000 | 217,000 (▲59,000) | 201,000 (▼16,000) |
3燃料・エネルギー関連活動 | 161,000 | 154,000 (▼7,000) | 132,000 (▼22,000) |
4輸送・配送(上流) | 375,000 | 382,000 (▲7,000) | 366,000 (▼16,000) |
5事業から発生する廃棄物 | 20,000 | 19,000 (▼1,000) | 20,000 (▲1,000) |
※掲載情報は公開資料をもとに作成しており、全てのリスク・機会を網羅するものではありません。 より詳細な情報は企業の公式発表をご確認ください。
データがありません
住友ゴム工業株式会社(以下、住友ゴム工業)は、持続可能な社会の実現に向け、環境課題への対応を経営の重要課題と位置づけています。本セクションでは、特に「気候変動への対応」「資源循環の推進」「生物多様性の保全」の3分野における同社の具体的な施策、目標、実績を詳細に分析します。
住友ゴム工業は、地球温暖化の進行を喫緊の課題と捉え、カーボンニュートラルの実現に向けた多角的な取り組みを推進しています。
具体的な施策とプログラム
カーボンニュートラルへのコミットメント: 2050年までにスコープ1(自社での直接排出)およびスコープ2(他社から供給された電気・熱の使用に伴う間接排出)におけるカーボンニュートラル達成を長期目標として掲げています 。この目標達成に向け、短期・中期的な施策が展開されています。
水素エネルギーの先駆的活用: 住友ゴム工業の気候変動戦略における特筆すべき点は、福島県にある白河工場での水素エネルギーの活用です。タイヤ製造におけるエネルギー多消費工程である加硫工程の熱源に水素を利用する実証実験を進め、日本初となる製造時(スコープ1、2)カーボンニュートラルタイヤの量産を実現しました 。さらに、2025年4月からは工場内で水素を製造する取り組みを開始する予定であり 、これはエネルギー源の脱炭素化に向けた先進的な技術投資と言えます。この水素への重点投資は、再生可能電力の調達を主軸とする競合他社(例:ブリヂストン、グッドイヤー)と比較して、独自性の高いアプローチであると同時に、潜在的なリスクも内包しています。工業用熱源としての水素技術は発展途上であり、コスト競争力やインフラ整備の進展に依存するため、実行リスクが伴います。一方で、この戦略が成功すれば、特にエネルギー集約的な加硫工程において独自の脱炭素化経路を確立し、将来的に再生可能電力の供給制約や価格高騰が生じた場合に競争優位性をもたらす可能性も秘めています。
再生可能エネルギー導入拡大: 水素エネルギー以外にも、再生可能エネルギーの導入を積極的に進めています。中国(2022年)およびタイ(2023年)の工場への大規模太陽光発電設備の設置 、コージェネレーションシステムの拡大、再生可能エネルギー由来電力の調達 などが実施されています。2023年度には、再生可能エネルギー由来の電力総使用量が626,009 MWHに達しました 。
省エネルギー活動: 各製造拠点において、継続的な省エネルギー活動が実施されており、これは排出量削減の基盤となる取り組みです 。
サプライチェーン排出量削減 (スコープ3): 自社操業以外の排出量、すなわちスコープ3排出量の削減にも着手しています。サステナブル原材料の使用拡大、サプライヤーとの連携強化(エンゲージメント)、物流効率化などを通じて、サプライチェーン全体での排出量削減を目指しています 。具体的なスコープ3削減目標の設定は、同社の環境戦略が直接的な事業活動の範囲を超えて広がっていることを示しています 。
TCFD提言への準拠: 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に基づき、気候変動が事業に及ぼすリスクと機会に関する情報開示を進めており、ステークホルダーに対する透明性を高めています 。
SBT認定目標: 2030年に向けた温室効果ガス排出削減目標は、科学的根拠に基づく目標設定イニシアチブ(SBTi)からSBT認定を受けており、その目標の妥当性と意欲度が国際的に認められています 。
製品による貢献: タイヤの軽量化や転がり抵抗の低減、ロングライフ化を進めることで、製品使用段階(スコープ3、カテゴリ11)におけるCO2排出量削減に貢献しています 。また、2024年秋に発売予定のオールシーズンタイヤに採用される「アクティブトレッド」技術は、路面状況に応じてゴムの性能が変化し、タイヤ交換頻度を減らすことで省資源化にも寄与します 。
社内啓発活動: 「サステナビリティチャレンジ」キャンペーンなどを通じて、従業員の環境意識向上と具体的な行動変容を促しています 。
内部炭素価格付け (ICP): 2023年に正式導入され(参照価格:10,000円/t-CO2)、CO2排出に影響を与える全ての投資案件の評価に活用されています 。
目標と実績
スコープ1・2目標: 2030年までに2017年比で55%削減(当初目標の50%から引き上げ)、2050年までにカーボンニュートラル達成 。この目標引き上げは、水素利用などの初期の取り組みが奏功し、より深い削減への道筋が見えてきたことによる自信の表れと考えられます。
スコープ3目標 (2030年まで):
カテゴリ1(購入した製品・サービス): 2021年比25%削減 。
カテゴリ4(上流の輸送・流通): 2021年比10%削減 。
2023年度 温室効果ガス排出量実績:
スコープ1 + スコープ2 (ロケーション基準): 1,034,000 t-CO2e 。
スコープ1 + スコープ2 (マーケット基準): 729,000 t-CO2e 。
スコープ3 (合計): 37,167,000 t-CO2e 。
このうち、カテゴリ11(販売した製品の使用)が30,957,000 t-CO2e、カテゴリ1(購入した製品・サービス)が4,643,000 t-CO2eと大半を占めています 。
主な達成事項: 2023年に日本初の製造時(スコープ1、2)カーボンニュートラルタイヤの量産を実現 。
2030年目標への進捗: 2023年のマーケット基準スコープ1・2排出量(729 ktCO2e)は、2017年基準値と比較して55%削減目標に対する進捗を評価する必要があります。2022年時点での2017年比6%削減という実績 を考慮すると、目標達成には今後、排出削減ペースの大幅な加速が求められます。また、スコープ3排出量がスコープ1・2排出量(マーケット基準)の約51倍に達しているという事実は 、同社のカーボンフットプリント削減において、製品の効率改善(転がり抵抗、軽量化 )とサステナブル原材料の利用拡大 がいかに重要であるかを浮き彫りにしています。現状のスコープ3削減目標(カテゴリ1で-25%、カテゴリ4で-10%)は、スコープ1・2の目標(-55%)と比較して、相対的に緩やかであるとの見方もできます。
住友ゴム工業は、有限な資源の有効活用と廃棄物削減を目指し、サーキュラーエコノミー(循環型経済)への移行を推進しています。
具体的な施策とプログラム
循環型ビジネス構想「TOWANOWA」: タイヤ事業を中心に、サプライチェーン全体での循環型ビジネスモデルの確立を目指す独自の構想です 。RFIDなどで収集したタイヤのデータと生産・利用データを連携させ、資源効率の向上とCO2削減、さらにはエンドユーザーへのフィードバック提供を目指しており、単なる製品製造・販売を超えたサービス化への移行を示唆しています。
サステナブル原材料の利用拡大: タイヤ、スポーツ用品、産業品において、バイオマス材料やリサイクル材料などのサステナブル原材料の使用率を高める意欲的な目標を設定し、開発を進めています 。これはスコープ3カテゴリ1の排出削減と資源枯渇問題に直接的に対応するものです。
リトレッドタイヤ(更生タイヤ)の推進: 使用済みタイヤのトレッドゴム(路面との接地面)を貼り替えて再利用するリトレッドタイヤの販売本数増加目標を設定し、資源の有効活用と顧客のコスト削減に貢献しています 。
RFID搭載タイヤ: タイヤ個体を識別可能にするRFIDタグを搭載した市販用タイヤを発売しました 。これにより、品質保証の高度化、トレーサビリティ向上、リサイクルの促進、そして「TOWANOWA」構想の実現が期待されます。この技術導入は、タイヤのライフサイクル全体を管理し、最適化する能力を高める戦略的な動きです。
廃棄物ゼロエミッション: 国内外の多数の生産拠点で「完全ゼロエミッション」(再資源化率100%かつ埋立処分量ゼロ)を達成・維持しています 。これは、廃棄物の分別、削減、リサイクル経路の確保に関する高度な内部プロセスが存在することを示しています。
プラスチック使用量削減: タイヤラベル、包装材、販促ツールなどに使用されるプラスチック量の削減目標を設定し、テニスボール容器のプラスチック製蓋廃止などの具体的な取り組みを進めています 。
先進的リサイクル技術開発: LanzaTech社との共同開発により、工場などから排出される廃棄物由来のガスを微生物による発酵プロセスを経て、新たなゴム原料(イソプレン)に転換する技術開発に取り組んでいます 。これは、従来の物理的なリサイクル手法(マテリアルリサイクル)に加え、化学的なリサイクル(ケミカルリサイクル)による資源循環の可能性を追求するものです。
目標と実績
サステナブル原材料比率目標:
タイヤ: 2030年までに40%、2050年までに100% 。
スポーツ用品: ゴルフボール(練習用)20% (2030年)、全ゴルフボール100% (2050年)。テニスボール100% (2030年開始)、全テニスボール100% (2050年) 。
産業品 (重量比): 2030年までに40%、2050年までに100% 。
サステナブル原材料比率実績 (2023年度): タイヤにおける比率は38% 。これは2030年の40%目標達成に向けて順調な進捗を示しています。(参考:2022年の全製品平均は33% )。競合他社の目標と比較すると、ブリヂストン(2030年40%) と同水準ですが、ピレリ(最良製品で2030年>80%、全体で40%) やミシュラン(2030年40%、2050年100%)、グッドイヤー(2030年までに100%サステナブル材料タイヤ) の最も意欲的な目標には及ばない可能性があります。
プラスチック使用量削減目標: 2030年までに2019年比40%削減 。2022年には2021年比で4.5%削減を達成 。
ゼロエミッション達成拠点: 2023年度に国内外の関係会社を含む24の生産拠点で完全ゼロエミッションを達成 。(2022年度の23拠点から増加 )。
廃棄物関連データ (2023年度): 総排出量: 32,110トン 。リサイクル率: 上記24拠点においては実質100% 。
RFID搭載タイヤ: 2023年10月より発売開始 。
住友ゴム工業は、事業活動が依存し、影響を与える自然資本、特に生物多様性の保全にも注力しています。
具体的な施策とプログラム
TNFDへの対応: 自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の提言に賛同し、2023年12月に「TNFD Adopter」として登録されました 。これは、事業活動における自然への依存度、影響、リスク、機会を体系的に評価・開示していくというコミットメントを示すものです。この動きは、従来の個別的な保全活動から、より戦略的かつ包括的な自然関連リスク管理へと移行していることを示唆しています。
自然関連リスク評価: ENCOREなどのツールを用いて、各事業における自然関連リスク・機会のスクリーニングを実施し、特にタイヤ事業における天然ゴム調達が自然への依存度・影響度ともに高いことを確認しています 。
持続可能な天然ゴム調達:
SNR方針: 持続可能な天然ゴムに関するグローバルプラットフォーム(GPSNR)の枠組みを反映した「持続可能な天然ゴム(SNR)方針」を策定し、サプライチェーン全体での取り組みを推進しています 。
RubberWay®の導入: 天然ゴムサプライチェーンに特化した環境・社会的リスク評価・管理ツール「RubberWay®」を導入し、サプライヤーのリスク評価と改善活動を支援しています 。SPOTT(Sustainability Policy Transparency Toolkit)の情報によると、同社は2023年のCDP質問書(森林、水、気候変動)を提出しています 。
GPSNRへの参画: GPSNRに積極的に参画し、業界動向の把握と持続可能な天然ゴムの普及に貢献しています 。
トレーサビリティと森林破壊防止: 森林破壊を伴わない方法で生産された天然ゴムの調達を目指し、トレーサビリティの強化に取り組んでいます 。SPOTTは、同社が自然生態系の保護を支援するコミットメント および森林破壊ゼロのコミットメント を有していることを指摘しています。
生物多様性保全活動: 国内8拠点(工場、本社、テストコース)において、フジバカマの移植やオオムラサキ、アユモドキの保護など、合計20種の絶滅危惧種・希少種の保全活動を直接的に実施しています 。岡山テストコース内での森林育成 、植樹活動(2023年: 17,945本)、苗木の提供(2023年: 7,368本) なども継続しています。
水資源保全: 水使用量の削減目標を設定するとともに、水リスクが高い拠点においては2050年までに水リサイクル率100%を目指しています 。トルコ工場では既に100%リサイクルを達成・維持しています 。2023年度の総取水量は1,155万立方メートルでした 。SPOTTは、水使用原単位改善に関する期限付きコミットメントが存在することを確認しています 。
目標と実績
SNR方針遵守目標: 主要取引先を対象に2030年まで、全取引先へは2050年までに適用拡大 。
水リサイクル目標: 水リスクの高い拠点で2050年までに100%達成 。
達成事項: TNFD Adopter登録(2023年12月)。RubberWay®の活用開始 。保全活動・植樹活動の継続実施 。
実績データ (2023年度): 総取水量: 11,550,000 m³ 。植樹: 17,945本、苗木提供: 7,368本 。
外部評価からの示唆: SPOTTの評価では、住友ゴム工業は方針(Policy)のスコアと比較して、実践(Practice)のスコアが相対的に低い傾向にあります 。例えば、森林破壊ゼロのコミットメントは存在するものの、そのモニタリングや全サプライヤーへの適用に関する証拠が不明確である、あるいは生物多様性保護に関するサプライヤーへの一般的なコミットメントはあるものの、明確な「方針」としての適用が見られない、といった指摘があります 。これは、方針の意図と、複雑な天然ゴムサプライチェーン全体における検証済み実践との間にギャップが存在する可能性を示唆しています。また、水管理については、トルコ工場のような先進事例 はあるものの、総取水量(11.55百万m³) だけでは全体的な効率性や目標達成に向けた進捗を評価するには不十分であり、生産量あたりの原単位や、事業展開地域の水ストレスレベルとの比較といった文脈情報が必要です。
住友ゴム工業の事業活動は、気候変動、資源制約、生物多様性の損失といった地球規模の環境課題と密接に関連しており、これらは潜在的なリスクであると同時に、新たな事業機会をもたらす要因ともなり得ます。
住友ゴム工業が直面する可能性のある主な環境関連リスクは以下の通りです。
移行リスク:
規制リスク: 森林破壊に関連する製品(特に天然ゴム)の販売規制 、タイヤに使用される原材料やタイヤ摩耗粉塵(TRWP)に関する規制 、取水に関する規制 の強化による対応コストの増加。特にEUの森林破壊防止規則(EUDR)は天然ゴム調達に直接的な影響を与えます 。タイヤ用老化防止剤6PPD(特定の水生生物への有害性が指摘されている) やスポーツ用人工芝からのマイクロプラスチック流出 に関する規制導入・強化の可能性。炭素価格制度や排出量ペナルティ導入による操業コストの増加 。コンプライアンス違反に伴う賠償責任や行政処分のリスク 。
市場リスク: 環境負荷の高い製品に対する消費者の購買意欲低下 。低燃費・EV用タイヤやサステナブル原材料比率の高いタイヤ開発における競争激化 。地球温暖化や降雪量減少に伴う冬用タイヤ需要の変化 。気候変動の影響やサステナビリティ要求の高まりによる原材料価格の変動・高騰 。
技術リスク: 環境配慮型材料やプロセス(水素利用、高度リサイクル技術など)の研究開発に伴うコスト増加 。特定の技術(例:水素)への投資が、代替技術と比較して費用対効果や拡張性で劣った場合の資産価値毀損(座礁資産化)リスク。
評判リスク: 環境対応の遅れや、森林破壊などのネガティブな環境影響への関与が認識された場合のブランドイメージ毀損、ESG評価の低下、顧客離反 。投資家や金融機関からの投資引き揚げ(ダイベストメント)リスク 。ゴム農園開発時の生態系への影響に対する市民団体等からの反対運動や賠償責任発生のリスク 。
物理リスク:
台風や洪水などの自然災害の激甚化・頻発化による、生産工場やサプライチェーン(特に天然ゴム産地)への被害、物流の寸断、生産停止、復旧コストの増加 。グッドイヤーは気象関連の操業リスク評価を明示的に行っています 。
その他のリスク:
マイクロプラスチック汚染源としてのTRWPに対する社会的な懸念の高まり 。
使用化学物質(例:6PPD)の環境・健康影響に関する問題提起 。
一方で、環境課題への対応は、住友ゴム工業にとって以下のような事業機会を創出します。
製品・サービス:
環境配慮型タイヤ(低燃費、EV専用、サステナブル原材料高比率)への需要拡大 。住友ゴム工業もこの分野に注力しています 。
気候変動(温暖化・暖冬傾向)に伴うオールシーズンタイヤ市場の拡大 。同社のアクティブトレッド技術はこの市場をターゲットとしています 。
TRWP削減のための耐摩耗性向上タイヤや軽量化タイヤなど、環境課題解決に貢献する製品による差別化 。
リトレッドタイヤ事業の拡大 。
「TOWANOWA」構想やタイヤセンシング技術「SENSING CORE」を活用した、タイヤのライフサイクル管理サービスや効率改善ソリューションの展開 。
自然保護・再生に貢献する製品・サービスの創出 。例として、歴史的建造物を保護する制振ダンパーが挙げられています 。
資源効率:
製造プロセスにおけるエネルギー効率(水素、再エネ、省エネ活動)および資源効率(サステナブル材料、廃棄物削減、水リサイクル)の向上によるコスト削減 。
市場:
EV市場の成長に伴うタイヤ需要の獲得 。
リサイクル製品や循環型ソリューション(例:廃タイヤリサイクル事業)への需要増加への対応 。
持続可能な農業慣行への投資を通じた天然ゴムの生産性向上 。
財務:
優れたESGパフォーマンスを背景とした、サステナブルファイナンス(グリーンボンド、サステナビリティ・リンク・ローンなど)による有利な資金調達機会の拡大 。ブリヂストン・アメリカスがサステナビリティ・リンク・ローンを活用した事例があります 。
評判:
サステナビリティやネイチャーポジティブへの貢献を通じて、ブランド価値、顧客ロイヤルティ、人材獲得・維持能力を向上 。良好なESG評価(例:住友ゴム工業のMSCI評価「A」、EcoVadis評価「シルバー」)はこれに寄与します。
これらのリスクと機会を分析すると、特に原材料(サステナブル性、森林破壊との関連、6PPD等の化学物質)と製品ライフサイクル(TRWP、リサイクル)に関する規制や市場の要求が、統合的な製品設計とサプライチェーン管理を必要とする複合的なプレッシャーとなっていることが分かります。住友ゴム工業は、調達(SNR方針 )、研究開発(サステナブル材料、耐摩耗性)、そして新しいビジネスモデル(TOWANOWA )を連携させる包括的なアプローチが求められています。また、EVへの移行は、特殊で高付加価値なタイヤへの需要増という大きな機会 をもたらす一方で、競合他社(グッドイヤー、ピレリ、コンチネンタルなど)も注力しており、迅速な製品ポートフォリオの転換と生産能力の適応が求められる厳しい競争環境でもあります。さらに、水素利用 やLanzaTech社との連携による先進リサイクル技術 は、成功すれば大きな差別化要因となり得ますが、スケールアップやコスト競争力の面で不確実性を伴う技術的な賭けでもあります。
住友ゴム工業の取り組みを評価する上で、同業他社の先進的な環境戦略や実践例を把握することは有益です。以下に主要な競合企業の取り組みを分野別に示します。
意欲的なネットゼロ目標: 多くの競合他社がSBTi認定を受けたネットゼロ目標を掲げています(ピレリ: 2040年 、グッドイヤー: 2050年 、ブリヂストン: 2050年 、コンチネンタル: 2050年 、ミシュラン: 2050年 )。特にピレリの2040年目標は業界内で最も野心的です 。
高い再生可能エネルギー導入率: 競合他社は100%再生可能電力(グッドイヤー目標2030年 、ピレリ目標2025年 、コンチネンタル生産拠点では達成済み )および再生可能エネルギー(グッドイヤー目標2040年 )の導入を積極的に進めています。ブリヂストンは2023年度に69%の再生可能エネルギー消費率を報告しています 。
サプライヤーエンゲージメント: サプライヤーに対して気候目標設定を働きかける動きが活発です(例:ピレリは主要サプライヤーに2025年までのSBTi目標設定を要求 、ブリヂストン 、グッドイヤー もサプライヤーエンゲージメントを実施、コンチネンタルは2050年ネットゼロ目標にサプライチェーンを含む )。CDPはコンチネンタル とブリヂストン のサプライヤーエンゲージメントを「A」評価しています。
使用段階排出削減のための製品革新: 全ての主要競合が、EVや燃費向上のための低転がり抵抗・軽量タイヤ開発を強調しています(例:ブリヂストン「ENLITEN」、ミシュラン「グリーンタイヤ」、グッドイヤー「EcoReady」、ピレリ「PZero E」、コンチネンタル「EcoContact」、横浜ゴム「BluEarth」)。
高いサステナブル原材料目標/製品: 競合他社はサステナブル原材料比率の向上に注力しています。グッドイヤーは90%デモタイヤと70%市販タイヤを開発し 、2030年までに100%を目指しています 。ピレリは「PZero E」で55%超を達成し 、最良製品で2030年までに80%超を目標としています 。ミシュランは2030年40%、2050年100%目標、ブリヂストンは2030年40%目標 、横浜ゴムは2030年30%(40%視野)目標 、コンチネンタルは2050年までに100%を目指しています 。
先進的なリサイクルへの取り組み: ケミカルリサイクルや代替材料(例:ブリヂストンのグアユール研究 、コンチネンタルの米籾殻や再生PET利用 )の開発が進められています。
リトレッド事業の重視: ブリヂストンはリトレッド事業を強力に推進し、2026年までに約50%のリトレッド率を目指しています 。グッドイヤーもリトレッドを強調しています 。
サーキュラーエコノミーの枠組み: ミシュランの「All Sustainable」アプローチ 、コンチネンタルの2050年目標における明確な循環経済へのコミットメント 、ブリヂストンの循環型ビジネスモデルの組み込み など、戦略レベルでの統合が見られます。
強力な天然ゴム方針とトレーサビリティ: ミシュランは高いトレーサビリティ(加工工場まで100%、プランテーション/地域レベルも高水準)と詳細な調達情報開示で先行しています 。ブリヂストンは小規模農家支援プログラムやWWFとのパートナーシップを通じて、持続可能な慣行とトレーサビリティ向上に取り組んでいます 。グッドイヤーもGPSNRを通じた関与や農家トレーニング支援を行っています 。ピレリはFSC™認証天然ゴムに注力し、認証済みF1タイヤや市販タイヤを発売しています 。
森林破壊ゼロコミットメントとモニタリング: ミシュラン 、ブリヂストン 、グッドイヤー 、ピレリ 、コンチネンタル など、主要競合はGPSNR等と連携し、明確な森林破壊ゼロコミットメントを掲げています。先進企業はモニタリングシステムの導入を進めていますが、SPOTTは一部企業で実践面のギャップを指摘しています。
ウォータースチュワードシップ: 水リスク評価と、特に水ストレス地域における取水量削減に注力しています(例:ブリヂストンの水管理計画 、ピレリの削減目標 、ミシュランの削減実績 )。ブリヂストンはCDP水セキュリティで「A」評価を獲得しています 。
ネイチャーポジティブ/TNFDへの対応: 先進企業はネイチャーポジティブ(自然再生)への貢献を目指し、TNFDのようなフレームワークとの整合性を図っています(ブリヂストンはネイチャーポジティブに言及 、ミシュラン やコンチネンタル はCSRDを通じて整合性を確保している可能性が高い)。
これらのベストプラクティスと比較すると、住友ゴム工業は多くの分野で意欲的な目標を掲げているものの、特にスコープ3目標の野心度 、サステナブル原材料比率の目標値 、天然ゴムのトレーサビリティと検証済み実践 、そして第三者機関によるESG評価 において、ピレリ、ミシュラン、ブリヂストンといったリーダー企業に後れを取っている側面が見受けられます。業界全体の傾向として、サプライチェーン上流(原材料)と下流(製品使用)を含むスコープ3排出量への対応が極めて重要視されており、サプライヤーエンゲージメントやサステナブル材料革新が共通の重点分野となっています。生物多様性に関しては、方針策定だけでなく、天然ゴムサプライチェーンにおけるトレーサビリティ確保と持続可能性の検証済み実践を示すことが、リーダーシップの鍵となっています。
これまでの分析を踏まえ、住友ゴム工業が現在直面している主要な課題と、今後の環境パフォーマンス向上に向けた推奨事項を以下に示します。
脱炭素化の加速: 2030年までのスコープ1・2排出量55%削減目標 の達成には、水素技術の成功裏のスケーリングと再生可能エネルギー導入の継続的な拡大が不可欠ですが、コストや技術的な障壁に直面する可能性があります。2022年時点での進捗(2017年比6%削減) を考慮すると、目標達成への道のりは険しいと言えます。
スコープ3排出量への対応: 総排出量の大部分(約97%) を占めるスコープ3に対し、現在設定されている削減目標(カテゴリ1で-25%、カテゴリ4で-10%) は、その重要性に比して十分とは言えない可能性があります。抜本的な削減は、サステナブル原材料の導入と製品使用段階での効率改善に大きく依存します。
サステナブル原材料のスケールアップ: タイヤで38%(2023年) という進捗は良好ですが、2030年40%、2050年100%という目標 の達成には、継続的な技術革新、サステナブルな原料(バイオマス、リサイクル素材、LanzaTech技術由来素材など )の安定供給確保、そして従来素材や競合製品に対するコスト競争力の維持が必要です。
サプライチェーン(天然ゴム)の透明性と持続可能性の確保: SNR方針策定 やRubberWay®導入 といった取り組みにも関わらず、全サプライヤーにおける森林破壊ゼロや生物多様性保護の完全なトレーサビリティと遵守状況の検証は依然として課題です(SPOTT評価による示唆)。EUDRなどの規制強化はこの課題をさらに顕在化させるでしょう 。
新たなリスク(TRWP、化学物質)への対応: TRWP や特定の化学物質(例:6PPD) に関する社会的な懸念や規制の可能性に対し、先を見越した研究開発と製品改良が求められます。
競争圧力: より野心的な目標、迅速なイノベーション、高いESG評価を持つ競合他社 との競争において優位性を保つためには、継続的な改善努力と効果的な進捗状況の発信が不可欠です。横浜ゴムは技術・生産面での停滞による競争力低下への危機感を表明しています 。
上記の課題を踏まえ、住友ゴム工業が今後注力すべき主要分野と具体的な行動を以下に提案します。
推奨事項1: スコープ3戦略と目標の強化: スコープ3排出削減に向けた、より包括的で意欲的なロードマップを策定・実行する。特に影響の大きいカテゴリ1(購入した製品・サービス)とカテゴリ11(販売した製品の使用)に重点を置く。
行動提案: 2030年のサステナブル原材料比率目標(タイヤ40%)の引き上げを検討する。低転がり抵抗・軽量化技術の研究開発を強化する。サプライヤーに対し、ピレリの事例 のように、明確な削減目標の設定を求め、達成に向けた支援策を提供し、調達判断とサプライヤーの気候変動パフォーマンスを連携させる。
推奨事項2: 水素戦略の加速とリスク分散: 水素技術開発 を継続しつつも、技術的・経済的リスクを低減するため、電化、高効率従来型燃料、再生可能エネルギー電力購入契約(PPA)の拡大など、他の脱炭素化経路も並行して積極的に検討・投資する。
行動提案: 水素と代替技術の技術経済性評価を徹底的に実施する。多様な再生可能エネルギー源を確保する。水素導入のマイルストーンや課題について、透明性をもって情報開示を行う。
推奨事項3: 天然ゴムサプライチェーンにおける検証の強化: SNR方針の採用に留まらず、サプライチェーン全体での遵守状況を検証し、実証する体制を強化する。
行動提案: RubberWay® を活用しつつ、トレーサビリティシステムへの投資をさらに強化する。サプライヤーに対する第三者監査の範囲と頻度を拡大する。ミシュラン のように、農園・地域レベルまでのトレーサビリティ達成率や森林破壊ゼロ検証の進捗状況を公表する。ピレリ のように、調達する天然ゴムのFSC認証取得を検討する。SPOTT が指摘するギャップに対処する。
推奨事項4: 製品ライフサイクル影響への積極的対応: TRWP削減(材料科学、トレッド設計)および懸念される化学物質(6PPD等) の代替に関する研究開発を強化する。「TOWANOWA」構想とRFID技術 を最大限活用し、使用済みタイヤの効果的な回収・リサイクルシステムを構築・拡大する。
行動提案: TRWP削減に関する具体的な目標を設定・公表する。業界団体(例:TIP )と連携し、研究や解決策開発を進める。「TOWANOWA」と連携した回収・リサイクルスキームの実証実験を行い、スケールアップを目指す。
推奨事項5: ESG情報開示と評価の向上: サステナビリティ報告における透明性とデータ粒度を向上させる。特にスコープ3の進捗、水使用原単位、生物多様性に関する検証結果について詳細を開示する。MSCI、サステイナリティクス、CDPなどの評価機関と積極的に対話し、認識されているギャップに対処し、評価向上を目指す(住友ゴム工業のサステイナリティクス評価17.8は良好だが、リーダー企業には及ばない )。
行動提案: GRI、SASB、TCFD、そして将来的にはTNFDのフレームワークに完全に準拠した報告を行う。全ての主要目標について、明確な基準値と進捗状況の追跡情報を提供する。評価機関からの照会に包括的に対応する。ブリヂストン やミシュラン など、先進企業の開示内容をベンチマークとする。
住友ゴム工業の環境パフォーマンスを相対的に評価するため、主要なグローバル競合企業の環境戦略、目標、実績を分析します。
主要グローバル競合企業: ブリヂストングループ、ミシュラングループ、グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー、コンチネンタルAG、ピレリ & C. S.p.A.、横浜ゴム株式会社、ハンコックタイヤ&テクノロジー株式会社などが挙げられます 。その他、Maxxis/Cheng Shin、Zhongce Rubber、Sailun Group、東洋ゴム工業なども重要なプレイヤーです 。
市場における位置づけ: 住友ゴム工業は世界有数のタイヤメーカーであり、ある情報源によれば2023年の売上高で世界第6位にランクされています 。ブリヂストン、ミシュラン、グッドイヤー、コンチネンタル、ピレリといったTier 1メーカーと直接競合しています 。
以下に、主要競合企業の環境関連情報を要約します(データは主に2023年度または最新の入手可能な情報に基づきます)。
ブリヂストン:
戦略: 「Bridgestone E8 Commitment」を軸に、サステナブルなソリューションカンパニーへの変革を推進。循環経済(特にリトレッド)と持続可能な天然ゴム調達を重視 。
目標: 2050年カーボンニュートラル(スコープ1・2)、2030年50%削減(スコープ1・2、2011年比)、2030年再生・再生可能材料40%(2050年100%)、顧客使用段階でのCO2削減貢献目標 。
実績 (2023年度): スコープ1・2(製造拠点、マーケット基準): 1,888千tCO2e、スコープ3: 99,201千tCO2e、サステナブル材料比率: 39.6%、総取水量: 63,990千m³、総廃棄物量: 286千トン、リサイクル率: 95%、再エネ比率: 69% 。CDP評価: 気候変動A、水セキュリティA 。MSCI評価: AAA 。サステイナリティクス評価: 12.1(低リスク)。
ミシュラン:
戦略: 「All-Sustainable」アプローチに基づき、人・利益・地球のバランスを追求。イノベーション、ハイテク素材、持続可能なモビリティ、天然ゴムの持続可能性に注力 。
目標: 2050年ネットゼロ(スコープ1・2・3)、2030年スコープ1・2排出量50%削減(2019年比)、2030年物流CO2排出量15%削減、2030年サステナブル材料40%(2050年100%)。
実績 (2023年度): スコープ1・2排出量: 2019年比28%超削減、物流CO2排出量: 2019年比25%削減。水使用原単位: 2.90 m³/トン 。CDP質問書(気候変動・水・森林)提出済み(2023年)。サステイナリティクス評価: 11.4(低リスク)。MSCI評価あり 。SPOTT評価で高いトレーサビリティを示す 。
グッドイヤー:
戦略: 「Better Future」フレームワークに基づき、サステナブル材料、サーキュラリティ、気候変動対策、責任ある調達を推進 。
目標: 2050年バリューチェーン全体でネットゼロ、2030年スコープ1・2排出量46%削減(2019年比)、2030年スコープ3(特定カテゴリ)排出量28%削減、2030年までに100%サステナブル材料タイヤ、2030年100%再エネ電力(2040年100%再エネ)。
実績 (2023年度): スコープ1・2排出量: 21.9%削減(2019年比)、スコープ3排出量: 6.9%削減(2019年比)、再エネ電力比率: 37%、90%サステナブル材料デモタイヤ、70%市販タイヤ発売 。スコープ1・2排出量: 2,526千tCO2e、総取水量: 24,837千m³、総廃棄物量: 242千トン、リサイクル率: 77% 。CDP評価(2023年): 気候変動B、水セキュリティB、森林 未評価 。サステイナリティクス評価: 16.5(低リスク)。MSCI評価あり 。
コンチネンタルAG:
戦略: 包括的なサステナビリティフレームワークに基づき、2050年までにカーボンニュートラル、排出ゼロモビリティ・産業、循環経済、責任あるバリューチェーンを目指す 。
目標: 2050年カーボンニュートラル(スコープ1-3)、2040年操業カーボンニュートラル(スコープ1・2)、2050年までに100%サステナブル材料 。
実績: 2020年末より生産拠点で100%再エネ電力を達成 。CDP評価(2023年データ/2024年発表): 気候変動A、水セキュリティB、サプライヤーエンゲージメントA 。MSCI評価: A 。サステイナリティクス評価: 17.6(低リスク)または24.6(中リスク)の報告あり(要確認)。EcoVadis評価: ゴールド 。2023年度の定量的データは報告書参照要(アクセス不可 )。
ピレリ & C. S.p.A.:
戦略: ハイバリューセグメントに特化し、プレミアムタイヤにおけるサステナビリティを先導。脱炭素化の加速、自然保護を重視 。
目標: 2040年ネットゼロ(スコープ1-3)、2030年カーボンニュートラル(スコープ1・2)、2030年サステナブル材料80%超(最良製品)、2030年取水量60%削減(2015年比)、FSC™認証天然ゴム重視 。
実績 (2023年度): スコープ1・2排出量: 471千tCO2e(2015年比-51%)、スコープ3排出量: 3,007千tCO2e、サステナブル材料比率: >55% (PZero E)、23% (全生産量)、水使用原単位: 5.4 m³/トン(2015年比-31%)。CDP評価: 気候変動Aリスト 。サステイナリティクス評価: 8.2(ネグリジブルリスク)。S&P Global評価: トップ1% 。MSCI評価あり 。
横浜ゴム:
戦略: 「未来への思いやり(Caring for the Future)」をスローガンに、脱炭素化、循環経済、自然との共生(YOKOHAMA千年の杜)を推進 。
目標: 2050年カーボンネットゼロ、2030年スコープ1・2排出量40%削減(2019年比)、2030年サステナブル原材料比率30%超(40%視野)。
実績 (2023年度): スコープ1排出量: 563千tCO2e、スコープ2排出量: 465千tCO2e、スコープ3排出量: 26,661千tCO2e、サステナブル材料比率: 27.9% (ただし0.6%との報告もあり、要確認)、総取水量: 9,164千m³、総廃棄物量: 54.6千トン、リサイクル率: 約93% 。CDP評価: 気候変動Aリスト(2023年、2024年報告)。サステイナリティクス評価: 18.5(低リスク)。MSCI評価あり 。EcoVadis評価: シルバー 。
競合分析からは、タイヤ業界全体でネットゼロ、サステナブル材料、循環経済、持続可能な天然ゴムといった主要な環境テーマへの取り組みが共通して見られる一方で、目標の野心度や報告されているパフォーマンス、外部評価には大きなばらつきが存在することが明らかになりました。特に、ピレリの2040年ネットゼロ目標やグッドイヤーの100%サステナブル材料タイヤ目標は際立っています。また、ミシュラン、コンチネンタル、ピレリといった欧州企業は、より統合されたサステナビリティ戦略を持ち、高い評価を得ている傾向が見られます。これは、欧州における早期かつ厳格な環境規制が背景にある可能性が考えられます。さらに、コンチネンタルや横浜ゴムのデータに見られるように、情報源によるデータの不整合も存在し、一次情報源からの最新かつ検証済みデータの利用と、第三者機関評価の限界を認識することの重要性を示唆しています。
住友ゴム工業および主要競合企業の環境スコア・評価を比較することで、同社の相対的なポジションを明確にします。データは可能な限り最新のものを記載します。
サステイナリティクス (Sustainalytics): ESGリスク評価スコアは 17.8 であり、「低リスク」カテゴリーに分類されます。自動車部品業界内では247社中65位、グローバル全体では15,171社中2,930位と評価されています。リスクへの「エクスポージャー(晒され度合い)」は「中程度」、リスク管理能力は「強固」とされています(最終更新日: 2024年3月20日)。Morningstarが提供する同データに基づく評価も17.82(低リスク)です(2025年2月5日時点)。
CDP: 2023年データに基づき、森林、水、気候変動に関する質問書を提出済みです 。具体的なスコア(A, B, Cなど)は提供された情報からは特定できませんが、後述の競合他社のスコアが比較の参考となります。
MSCI: ESG評価は 「A」 を獲得しています 。また、「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」の構成銘柄にも選定されています 。
SPOTT (天然ゴム): 総合スコアは 48.5% です(最終更新日: 2025年3月)。内訳は、環境: 39.17%、社会: 49.72%、ガバナンス: 47.58%です。製造業者としてのスコアは48.47%と評価されています 。方針(58.8%)と比較して実践(32.1%)のスコアが低い点が特徴です 。
EcoVadis: 「シルバー」 評価を獲得しています(2023年2月)。
その他: FTSE4Good Index Series、FTSE Blossom Japan Index、FTSE Blossom Japan Sector Relative Indexの構成銘柄に選定されています 。日経SDGs経営調査では4つ星評価を獲得しています(2023年11月)。
以下に、主要な第三者評価機関による住友ゴム工業と競合他社のスコアを比較します。
サステイナリティクス ESGリスク評価 (スコアが低いほど低リスク):
ピレリ: 8.2 (ネグリジブルリスク) - 業界リーダー
ミシュラン: 11.4 (低リスク) - 業界リーダー
ブリヂストン: 12.1 (低リスク) - 業界リーダー
グッドイヤー: 16.5 (低リスク)
ハンコック: 16.6 (低リスク)
住友ゴム工業: 17.8 (低リスク)
アポロタイヤ: 18.0 (低リスク)
横浜ゴム: 18.5 (低リスク)
コンチネンタルAG: 17.6 (低リスク) または 24.6 (中リスク) (※評価に差異あり)
その他の主要企業(中リスク): Shandong Linglong (22.2) , Balkrishna Industries (22.4) , Qingdao Sentury (22.9) , Sailun Group (26.3) など。
CDP (気候変動 2023年評価):
Aリスト企業 (リーダーシップレベル): ブリヂストン (A) , ピレリ (A) , 横浜ゴム (A) , コンチネンタル (A) 。
その他のスコア: グッドイヤー (B) 。ミシュラン (提出済み、スコア要外部確認) 。
住友ゴム工業: 提出済み 、スコア要外部確認。
CDP (水セキュリティ 2023年評価):
Aリスト企業: ブリヂストン (A) 。
その他のスコア: グッドイヤー (B) , コンチネンタル (B) 。
住友ゴム工業、ミシュラン: 提出済み 、スコア要外部確認。
CDP (森林 2023年評価):
グッドイヤー (未評価) 。
住友ゴム工業、ミシュラン: 提出済み 、スコア要外部確認。
MSCI ESG評価 (AAAが最高評価):
ブリヂストン: AAA
コンチネンタル: A
住友ゴム工業: A
ミシュラン、グッドイヤー、ピレリ、横浜ゴム: 評価は存在する可能性が高いが、提供情報内では特定できず。
SPOTT (天然ゴム - %が高いほど良い):
ミシュラン: メーカー評価 80.25% - リーダー
グッドイヤー: メーカー評価 54.91%
住友ゴム工業: メーカー評価 48.47%
これらのベンチマーク結果から、住友ゴム工業のESG評価(サステイナリティクス「低リスク」、MSCI「A」)は全体的に良好であり、グローバルな競合他社の中で中上位に位置づけられるものの、ピレリ、ミシュラン、ブリヂストンといった複数の評価プラットフォームでトップクラスと評価される企業群からは明確な差があることが示唆されます。特にサステイナリティクスのスコア比較では、この傾向が顕著です。また、MSCIで「A」評価を獲得している一方で、CDP評価(具体的なスコアは不明ながら、競合のAリスト入り状況から推測)やSPOTTスコア(48.5%)は、特に検証済み実践や、気候変動以外の分野(水、森林)における開示・パフォーマンス面で、リーダー企業と比較して改善の余地がある可能性を示しています。SPOTTスコアの内訳が方針策定に比べて実践面の評価が低いことも、この点を裏付けています。評価機関ごとに方法論や重点分野が異なるため(例:サステイナリティクスはESGリスク、MSCIは相対比較、CDPは特定テーマ、SPOTTは天然ゴム調達)、単一のスコアに依存せず、複数の評価軸から総合的に判断することが重要です。
本分析の結果、住友ゴム工業は気候変動、資源循環、生物多様性の各分野において、明確な目標設定と具体的な取り組みを進めており、一定の成果を上げています。特に、製造工程における水素エネルギーの先駆的な導入や、多数の生産拠点での廃棄物ゼロエミッション達成、TNFDへの早期対応などは、同社の先進性を示すものです。
しかしながら、グローバルな競合他社との比較においては、いくつかの課題も浮き彫りになりました。第一に、総排出量の大部分を占めるスコープ3排出量に対する削減目標の野心度や、サステナブル原材料比率の目標値において、業界トップランナーと比較すると見劣りする可能性があります。第二に、持続可能な天然ゴム調達に関する方針は整備されているものの、サプライチェーン全体でのトレーサビリティ確保と遵守状況の検証済み実践を示すという点では、更なる強化が求められます。第三に、サステイナリティクスやSPOTTなどの外部評価において、ピレリ、ミシュラン、ブリヂストンといったリーダー企業との間に差が見られ、特に実践面や特定の環境テーマにおけるパフォーマンス・開示の向上が期待されます。
これらの課題に対応し、持続的な成長と企業価値向上を実現するためには、以下の点が重要と考えられます。
スコープ3排出削減戦略の強化: サプライヤーエンゲージメントの深化と、製品使用段階での排出削減に繋がる技術革新(低燃費化、軽量化、長寿命化)を加速させる。
技術ポートフォリオのリスク管理: 水素技術への投資を継続しつつも、他の脱炭素化オプション(電化、再エネPPA等)も並行して推進し、リスクを分散させる。
天然ゴムサプライチェーンの透明性・実効性向上: トレーサビリティシステムへの投資を強化し、第三者検証を伴う形で、森林破壊ゼロや生物多様性保全の遵守状況を実証・開示する。
製品ライフサイクル全体での環境負荷低減: TRWPや懸念化学物質への対応を強化し、「TOWANOWA」構想を具体化することで、使用済み製品の回収・リサイクル体制を確立する。
ESG情報開示の質向上と評価機関との対話: 国際的な報告フレームワークへの準拠度を高め、特にスコープ3や生物多様性に関する定量的かつ検証可能な情報を拡充し、評価機関との建設的な対話を通じて評価向上を図る。
住友ゴム工業がこれらの課題に積極的に取り組み、先進的な環境戦略を実行していくことで、サステナビリティを競争優位性の源泉とし、変化の激しい市場環境においても持続的な成長を達成することが期待されます。
2023年 | - |
2022年 | - |
2021年 | - |
2023年 | 729,000t-CO2 |
2022年 | 848,000t-CO2 |
2021年 | 1,108,000t-CO2 |
2023年 | 37,167,000t-CO2 |
2022年 | 39,642,000t-CO2 |
2021年 | 41,034,000t-CO2 |
スコープ1+2 CORの過去3年推移
2023年 | 619kg-CO2 |
2022年 | - |
2021年 | 1,008kg-CO2 |
スコープ3 CORの過去3年推移
2023年 | 31,567kg-CO2 |
2022年 | - |
2021年 | 37,349kg-CO2 |
スコープ1+2のCOA推移
2023年 | 575kg-CO2 |
2022年 | - |
2021年 | 904kg-CO2 |
スコープ3のCOA推移
2023年 | 29,341kg-CO2 |
2022年 | - |
2021年 | 33,492kg-CO2 |
2023年 | 1兆1774億円 |
2021年 | 1兆987億円 |
2020年 | 9,360億円 |
2023年 | 370億円 |
2021年 | 94億円 |
2020年 | 295億円 |
2023年 | 1兆2667億円 |
2021年 | 1兆2252億円 |
2020年 | 1兆862億円 |
すべての会社と比較したポジション
業界内ポジション
CORスコープ1+2
CORスコープ3
CORスコープ1+2
CORスコープ3
COAスコープ1+2
COAスコープ3
COAスコープ1+2
COAスコープ3