カテゴリー | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 |
---|---|---|---|
1購入した製品・サービス | 492,022 | 677,336 (▲185,314) | 596,452 (▼80,884) |
2資本財 | 12,647 | 14,936 (▲2,289) | 18,452 (▲3,516) |
3燃料・エネルギー関連活動 | 871 | 882 (▲11) | 894 (▲12) |
4輸送・配送(上流) | 38,778 | 61,641 (▲22,863) | 48,433 (▼13,208) |
5事業から発生する廃棄物 | 45 | 40 (▼5) | 31 (▼9) |
アシックスジャパンは、子どもの健全育成を目指す「ONE FUTURE PROJECT」の一環で、リサイクルへの理解やモノづくりを学べる新コンテンツ「エコボッチャ」を開発。遊びを通じて環境意識向上を図る。
※掲載情報は公開資料をもとに作成しており、全てのリスク・機会を網羅するものではありません。 より詳細な情報は企業の公式発表をご確認ください。
低排出製品(GEL-LYTE III CM 1.95: 1.95kg CO2e )開発による市場獲得。CDP気候変動「A」評価 等によるブランド価値向上。資源効率改善によるコスト削減。修理・再販 等の新規循環型ビジネスモデル構築。
アシックス社(以下、アシックス)は、「健全な身体に健全な精神があれかし(Anima Sana In Corpore Sano)」という創業哲学を企業活動の根幹に据えている 1。この理念は、人々の心身の健康を支えるためには、スポーツを行う健全な地球環境が不可欠であるという認識へと繋がり、同社のサステナビリティ活動の基盤を形成している 2。この哲学は、単に製品を通じて健康を促進するだけでなく、事業活動全体を通じて地球環境の保全に貢献するという、より広範な社会的責任へと昇華されている。
アシックスの長期ビジョン「VISION2030」および「中期経営計画2026」において、サステナビリティは事業戦略の中核的なテーマとして明確に位置づけられている 6。特に「中期経営計画2026」では、サステナビリティへの取り組みをさらに加速させる方針が示されており、短期的な財務目標の達成と並行して、長期的な環境・社会価値の創造を目指す姿勢がうかがえる 9。この戦略的統合は、サステナビリティを単なるコンプライアンスやCSR活動としてではなく、企業価値向上のための重要なドライバーと捉えていることを示唆している。
同社のサステナビリティ戦略は、「人と地球(People and Planet)」という2つの柱から構成されるフレームワークに基づいている 7。このフレームワークは、人々の心身の健康向上と地球環境の保護という2つの目標を両立させるための具体的なターゲット、行動計画、パートナーシップを規定しており、アシックスのサステナビリティ活動全体を構造化し、方向性を示している。
アシックスは、ステークホルダーおよび自社事業にとって最も重要なサステナビリティ課題を特定するため、マテリアリティ分析を毎年更新し、3年ごとに包括的なレビューを実施している 7。2023年には、欧州企業サステナビリティ報告指令(CSRD)の要件も見据え、企業が社会・環境に与える影響(アウトサイド・イン)と、サステナビリティ課題が企業にもたらすリスク・機会(インサイド・アウト)の両側面を評価するダブルマテリアリティ評価を実施した 7。この評価を通じて、「気候変動への対応」「循環型ビジネス」「生物多様性と水の管理」が重要課題として特定されており、本報告書の分析対象となる分野の戦略的重要性が確認できる 7。
アシックスが欧州でのCSRD適用(2025年)およびグローバルでの適用(2028年)に先駆けて2023年にダブルマテリアリティ評価を導入したことは 7、サステナビリティ報告における先進的な取り組みであり、戦略的な先見性を示すものと言える。これは、変化する規制環境への早期対応だけでなく、サステナビリティに関するリスクと機会をより包括的に把握し、経営戦略に活かそうとする積極的な姿勢の表れと考えられる。このような早期の対応は、透明性の向上を通じてステークホルダーからの信頼を高め、結果として競争優位に繋がる可能性を秘めている。
また、アシックスの創業哲学に深く根差した「心身の健康」が特に重要なマテリアルなトピックとして強調されている点は注目に値する 4。これは、製品の提供を通じて人々の健康に貢献するという直接的な価値提供に加え、地球環境の健全性がその基盤であるというメッセージを発信する上で、強力なブランドナラティブを構築する可能性を秘めている。しかしながら、この「心身の健康」という理念が、製品の機能的便益を超えて、例えば非毒性素材へのより積極的な投資、地域社会の健康に配慮したクリーンな製造プロセス、あるいはスポーツを行う場としての自然環境保全へのより踏み込んだ気候変動対策など、具体的な環境行動へといかに力強く結びついているかは、本報告書において批判的に検証されるべき点である。
本報告書は、アシックスの環境イニシアチブおよびパフォーマンスを「気候変動への対応」「資源循環の推進」「生物多様性の保全」という3つの主要分野において包括的に分析・評価し、環境スコアリングに資する詳細な情報を提供することを目的とする。具体的には、各分野におけるアシックスの戦略、目標、具体的取り組み、実績データを詳細に検討し、関連するリスクと機会を特定する。さらに、アパレル・フットウェア業界におけるベストプラクティスや主要競合他社の動向との比較を通じて、アシックスの現在地を明らかにし、直面する課題と今後の持続可能性向上に向けた提言を行う。
本報告書の構成は以下の通りである。第2章では気候変動への対応、第3章では資源循環の推進、第4章では生物多様性の保全に関するアシックスの取り組みをそれぞれ詳述する。第5章では、業界全体の環境課題と先進事例を概観し、主要競合他社との比較分析を行う。第6章では、アシックスが直面する環境課題を分析し、具体的な提言を提示する。最後に第7章で、アシックスの環境パフォーマンスに関する総括的評価と、環境スコアリングに向けた主要な示唆を述べる。
アシックスは、地球環境保全を事業継続における重要課題と認識し、気候変動に対して野心的な目標と戦略を掲げている。その中核となるのが、「2050年CO2ネットゼロ」達成という長期目標である 2。この目標は、世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して1.5∘Cに抑えるというパリ協定の努力目標と整合するものであり、その達成に向けた道筋は科学的根拠に基づく目標設定イニシアチブ(SBTi)によって認定されている 7。特筆すべきは、アシックスがスポーツ用品メーカーとして世界で初めてSBTiの認定を取得した企業であるという点であり 3、これは気候変動問題への早期からの強いコミットメントを示すものである。
2030年までの中間目標として、事業活動における直接的なCO2排出量(スコープ1および2)とサプライチェーンにおける間接的なCO2排出量(スコープ3の一部)をそれぞれ2015年比で63%削減すること、そして事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギー由来とすることを掲げている 3。これらの具体的かつ測定可能な目標は、アシックスの気候変動戦略の進捗を評価する上での明確な基準となる。特に、サプライチェーン全体での排出量削減目標は、アパレル・フットウェア業界において排出量の大部分を占める傾向にあるスコープ3への取り組みの重要性を認識していることを示している。
また、アシックスは気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に早期から賛同を表明し、気候変動が事業に与えるリスクと機会に関する情報開示を積極的に進めている 13。2020年のサステナビリティレポートでは、具体的なリスクとして炭素税導入や原材料価格の高騰、自然災害による物流網の寸断などを、機会として研究開発を通じた新製品・サービスの開発などを挙げていた 18。TCFD提言に基づく情報開示は、投資家を含むステークホルダーに対し、企業の気候変動への対応力と戦略の透明性を示す上で不可欠である。
アシックスによるSBTiの早期認定とTCFDへの賛同は、気候変動ガバナンスとリスク管理に対する積極的な姿勢を示すものと評価できる。2020年の報告書に記載されたシナリオ分析(2∘Cおよび4∘Cシナリオ) 18 以降、TCFD提言に沿った情報開示とシナリオ分析を継続していることが確認されている 16。しかし、最新のサステナビリティレポート等を通じて、現在どのような前提(例えば、1.5∘Cシナリオや、オーストラリア証券投資委員会(ASIC)が要求するような複数の温度上昇シナリオ 19)に基づいたシナリオ分析が行われ、それが現在の事業戦略にどのように具体的に反映されているのかを詳細に検証することが、アシックスの戦略的レジリエンスを評価する上で重要となる。
事業所における再生可能エネルギー100%化目標(2030年まで)7 は重要な一歩であるが、アシックスの環境負荷全体の65%以上を占めるサプライチェーンにおける排出量 12、特にエネルギー消費量の多い製造委託工場での再生可能エネルギー導入が加速されなければ、全体としてのCO2排出量削減効果は限定的となる可能性がある。この点に関して、アシックスは「戦略的な主要フットウェアサプライヤーにおける再生可能エネルギー調達の拡大」をアクションプランに掲げており 12、2023年末時点でフットウェアの戦略的1次生産委託工場の90%が再生可能エネルギー調達計画を策定・順次導入しているとの報告がある 4。この取り組みの範囲(「戦略的」の定義、対象となるサプライヤーの割合)と実質的な進捗度合いが、スコープ3排出量削減目標達成の鍵を握る。
アシックスは、設定した気候変動目標の達成に向けて、多岐にわたる具体的な取り組みを推進し、着実な成果を上げている。
スコープ1および2(事業活動からの直接排出およびエネルギー使用に伴う間接排出)のCO2排出量については、2023年末時点で2015年比29.8%の削減を達成した 4。この削減は、LED照明への切り替え、社用車のハイブリッド化といった省エネルギー施策の推進や、太陽光発電設備の導入など再生可能エネルギーの利用拡大によってもたらされたものである 22。
スコープ3(サプライチェーンにおけるその他の間接排出)については、2023年末時点で2015年比21.6%の削減を達成している 4。スコープ3の目標は「購入した製品・サービス」および「販売した製品の廃棄処理」などを対象としており 12、これらの間接的な排出量をいかに効果的に削減していくかが課題となる。サプライチェーンにおける排出量削減の具体的な進捗として、フットウェアの戦略的1次生産委託工場の80%が1.5∘C水準の削減目標を設定・開示し、90%が再生可能エネルギー調達計画を策定し順次導入を進めている 4。この取り組みはスコープ3排出量削減の柱の一つであり、アシックスがサプライヤーと協働して気候変動対策を推進していることを示している。
製品面では、環境配慮型製品の開発が積極的に進められている。特に、製品ライフサイクルにおける温室効果ガス排出量が市場の同等製品と比較して最も少ないスニーカーの一つとして「GEL-LYTE™ III CM 1.95」を開発・発売したことは、技術革新を通じた排出量削減の象徴的な事例である 4。この製品で得られた知見を活かし、CO2フットプリント表示対象製品の拡大も計画されており 12、消費者に対する製品の環境情報透明化への意識がうかがえる。
製造段階における環境負荷管理も強化されており、サプライヤーエンゲージメントを通じて、製造時の環境負荷を低減する製品設計や、再生可能エネルギーの利用率向上、エネルギー効率の良い設備・車両の導入などを奨励している 2。
サプライヤーエンゲージメントにおける「戦略的」サプライヤーの定義や、これらのサプライヤーがアシックスの総取引量に占める割合、そして再生可能エネルギー導入計画の実際の進捗状況(計画策定から実行への移行度合い)に関するより詳細な情報が、スコープ3排出量削減の実質的な効果を評価する上で不可欠である。現状の報告 4 だけでは、サプライチェーン全体における排出削減インパクトを正確に把握するには限界がある。
「GEL-LYTE™ III CM 1.95」のような低排出製品の開発 4 やカーボンフットプリント表示の拡大 8 は、環境意識の高い消費者に訴求し、ブランドイメージを向上させる機会を提供する。しかし、これらの革新的製品がアシックスの製品ポートフォリオ全体の中でどの程度の割合を占めるようになるのか、また、カーボンフットプリント表示が一般消費者の購買行動にどの程度影響を与えるのかは、今後の市場動向とアシックスの戦略展開を見守る必要がある。これらのイニシアチブの広範な展開には、コスト面や技術的課題の克服も伴うであろう。
アシックスは、TCFD提言に基づき、気候変動が事業に及ぼす物理的リスクおよび移行リスクと、それらに伴う事業機会の特定と評価を継続的に実施している 7。2020年のサステナビリティレポートでは、リスクとして炭素税の導入、原材料価格(石油価格)の上昇、自然災害による物流網の寸断などを、機会として研究開発やイノベーションを通じた新製品・サービスの開発を挙げていた 18。
シナリオ分析については、2020年時点で2∘Cおよび4∘C上昇シナリオに基づき、ステークホルダーの期待に応えられない場合の「レピュテーションリスク」が最大のリスクであると結論付けていた 18。アシックスはその後もシナリオ分析を継続していると言及しており 16、最新の分析結果とそれが現在の事業戦略にどのように反映されているかを確認することが重要である。特に、ASIC(オーストラリア証券投資委員会)がオーストラリアの報告企業に対して1.5∘Cシナリオおよび2∘Cを大幅に超えるシナリオの使用を義務付けていること 19 や、CSRDへの対応準備を進めていることを踏まえると 7、より詳細かつ複数のシナリオに基づいた分析が求められる。
特定されたリスクと機会は、事業戦略に反映されている。例えば、サプライチェーンの強靭化、サステナブル製品市場の拡大などがその具体例として考えられる 16。
2020年のTCFD開示で「レピュテーションリスク」が最大のリスクと特定されたことは 18、アシックスが野心的な目標を設定し、その進捗を透明性高くコミュニケーションすることの重要性を浮き彫りにしている。特に、CDP気候変動評価で「Aリスト」企業としての評価を維持・向上させるためには 13、ステークホルダーの期待に応え続ける必要がある。目標未達や透明性の欠如は、ブランドロイヤルティや投資家の信頼を損なう可能性があるため、進捗、課題、適応戦略に関する堅牢な報告が不可欠である。
アシックスが欧州のCSRDおよびESRSへの対応準備を進めていることは 7、TCFD提言に基づくシナリオ分析をさらに深化させ、気候関連リスクを財務報告により正式に統合していく動きを加速させるであろう。これは、定性的な記述から、より定量的な財務影響評価へと移行することを意味する。このプロセスは、データ収集や分析手法の確立といった課題を伴う一方で、リスク管理体制の高度化や投資家からの信頼獲得といった機会をもたらす。製品環境フットプリントカテゴリー規則(PEFCR)はCSRDで義務付けられてはいないものの、ファッション製品の環境影響を一貫性のある方法で報告するのに役立つツールとなり得る 29。
アシックスの気候変動への取り組みは、国際的な非営利団体CDPによる評価において、最高評価である「Aリスト」を獲得している 7。これは、同社の気候変動戦略の野心性、リスク管理の適切性、情報開示の透明性が国際的に高く評価されていることを示す重要な指標である。
主要な競合他社と比較すると、Pumaも気候変動、水セキュリティ、森林の各分野でリーダーシップレベル(AまたはA-)の評価を受けている 30。Nikeは2021年に気候変動でA-評価 32、2022年にはB評価であった 33。Adidasは2021年に気候変動でB評価を受けている 34。New Balanceは2023年に気候変動でB評価であった 35。これらのスコアは、アシックスが気候変動分野において業界をリードするポジションにあることを示唆している。
この比較から、アシックスとPumaが気候変動に関する情報開示とパフォーマンスにおいて、競合他社よりも高い評価を得ていることがわかる。CDPのスコアは投資判断にも影響を与えるため、このリーダーシップはアシックスにとって重要な無形資産と言える。
アシックスは、地球環境への負荷低減と持続可能な事業活動の実現に向け、資源循環型ビジネスモデルの構築を重要な戦略目標として掲げている 2。これは、製品のライフサイクル全体を通じて、使用する資源を削減し、製品をより長く使用できるようにし、使用済み製品や素材を回収・再利用することで、CO2排出量を含む環境負荷を低減することを目指すものである。
この戦略を具体化するため、アシックスは以下の主要目標を設定している。
2030年までに、シューズおよびスポーツウェア製品に使用するポリエステル素材を100%リサイクルポリエステルに転換する 7。
2030年までに、主要3地域(欧州・アメリカ・日本)において、製品および素材を再利用またはリサイクルするためのテイクバックプログラム(製品回収プログラム)を導入する 7。
2023年までに、自社の事業活動から発生する廃棄物の98%を再利用またはリサイクルする 7。
これらの目標達成を支えるため、アシックスは「サステナブル素材方針」「リサイクル素材方針」「サステナブルパッケージング方針」といった関連方針を策定し、製品開発から販売、廃棄に至る各段階での具体的な指針としている 8。これらの方針は、素材選択、生産プロセス、包装設計における環境配慮を体系的に推進するための基盤となる。
アシックスは、資源循環型ビジネスモデルへの移行に向けて、多岐にわたる具体的な取り組みを推進している。
サステナブル素材の利用拡大は、その中核をなす取り組みの一つである。特にリサイクルポリエステルの採用を積極的に進めており、2021年春夏シーズンからは主要なパフォーマンスランニングシューズの新製品の95%以上にリサイクルポリエステルを使用している 39。2023年時点での全ポリエステル消費量に占めるリサイクルポリエステルの割合は40%を超えている 8。目標である2030年までの100%転換に向けて、さらなる拡大が期待される。ポリエステル以外にも、バイオベース素材の活用や、Leather Working Group (LWG) 認証を受けたレザーの調達 39、そしてBetter Cotton Initiative (BCI) を通じた持続可能な綿花の調達(2025年までに100%調達目標)7 など、環境負荷の低い素材への切り替えを進めている。
製品設計においては、耐久性の向上に加え、リサイクルしやすい設計思想が取り入れられている 37。その代表例が、2024年に発売されたランニングシューズ「NIMBUS MIRAI」である 10。このシューズは、アッパーとソールが接着剤なしで接合されており、容易に分別してリサイクルできるよう設計されている。これは、使用済み製品の素材価値を最大限に活かすための重要なイノベーションである。
廃棄物の削減と再利用に関しては、バリューチェーン全体での取り組みが見られる。原材料調達段階から生産委託工場における製造プロセスでの廃棄物削減努力に加え 6、直営店ではエネルギー効率の高い店舗設計や店舗備品の再利用が推進されている 7。また、製品の梱包材についても、FSC認証紙やリサイクル紙の使用を推奨し、使い捨てプラスチックの排除を目指すなど、環境負荷の低減に努めている 7。2023年の目標であった事業所からの廃棄物の98%再利用・リサイクルについては、その達成状況に関する具体的なデータの開示が待たれる。
製品の回収とリサイクルを促進するため、複数のプログラムが展開されている。米国およびカナダでは、オンラインで購入したアシックス製品の梱包箱を再利用して古着などを慈善団体に寄付できる「Give Back Box」プログラムを実施している 43。また、サイズ不適合などで返品された使用頻度の低いシューズを割引価格で再販売する「ROAD TESTEDプログラム」や 43、オランダではリサイクル企業「ReAct Sustains」と提携し、再利用・再販売できない不良品や返品製品のリサイクルを行っている 43。日本国内では、店頭で回収した古着を原料の一部に使用したエコバッグ「GREEN BAG」を製造・販売し、その収益の一部を子供たちの健全育成活動に寄付するという循環型の取り組みも行われている 8。
さらに、テキスタイル製造における持続可能性とトレーサビリティを推進する国際的なシステムであるBluesign®システムパートナーとの連携を強化し、将来的にはほぼ全ての素材をBluesign®システムパートナーサプライヤーから調達することを目指している 39。
アシックスが掲げる2030年までのリサイクルポリエステル100%使用目標 7 は野心的であり、業界のトレンドとも合致する。しかし、2023年時点で40%超という実績 8 からは、目標達成までにまだ大きな隔たりがあることがわかる。この目標達成の実現可能性、潜在的な課題(例えば、リサイクル原料の品質、コスト、供給安定性、特に繊維から繊維へのリサイクル技術の成熟度)、そして中間目標の設定状況などを詳細に分析する必要がある。アパレル業界全体として、繊維から繊維へのリサイクルの規模拡大には課題があり 45、現状ではPETボトル由来のリサイクルポリエステルが多くを占めるが、これは厳密にはダウンサイクルであり、飲料業界のサーキュラーエコノミーへの取り組みとも競合する可能性がある 45。アシックスがこの目標達成のために、どのような調達戦略(繊維to繊維 vs PETボトル由来)、革新的リサイクル技術への投資を計画しているのかが注目される。
様々な製品回収・リサイクルプログラム(Give Back Box, Road Tested, ReAct Sustains, GREEN BAG)43 は資源循環に向けた積極的なステップであるが、地理的範囲や対象製品においてやや断片的な印象も受ける。アシックス、そして業界全体の課題は、これらの取り組みをグローバルに一貫性があり、経済的にも実行可能な循環システムへとスケールアップさせることである。2030年までに「3地域で製品回収プログラムを導入する」という目標 37 は、アシックスのグローバル市場全体を考慮すると、やや控えめな目標設定である可能性も否定できない。特に、欧州などで導入が進む拡大生産者責任(EPR)制度 45 を踏まえると、より包括的なグローバル回収・リサイクルインフラの構築に向けた長期的なビジョンが求められる。
資源循環の推進は、アシックスにとって多くの機会をもたらす一方で、いくつかのリスクも伴う。
リスクとしては、まず、リサイクル素材を含むサステナブルな原材料の価格変動や供給不安定性が挙げられる。また、使用済み製品の効率的な回収・分別・再資源化を実現するための社会的なリサイクルインフラが未整備である地域も多く、企業努力だけでは限界がある。さらに、消費者の環境意識の高まりは追い風となるものの、製品の長期使用、修理、適切な分別・回収といった循環型経済への積極的な参加を促すためには、継続的な啓発活動と行動変容を促す仕組みづくりが不可欠である 45。
機会としては、まず製品イノベーションを通じたブランド価値の向上が挙げられる。「NIMBUS MIRAI」のようなリサイクル可能な製品の開発は 10、環境意識の高い消費者に訴求し、アシックスの先進的なイメージを強化する。次に、資源効率の改善によるコスト削減も期待できる。原材料の使用量削減や廃棄物処理コストの低減は、直接的に収益性の向上に貢献する。さらに、製品の修理サービス 7 や再販プラットフォームの構築は、新たなビジネスモデルを確立し、顧客との長期的な関係を構築する機会となる 37。Dr. Martensなどの他ブランドでは、既に再販事業が展開されている例もある 41。
「NIMBUS MIRAI」のようなリサイクルを前提としたシューズの開発 10 は、技術的に大きな進歩である。この機会を最大限に活かすためには、製品設計の革新性だけでなく、使用済み製品を大規模に回収し、実際にリサイクルするための実行可能なビジネスモデルを構築することが鍵となる。これには、効率的な回収物流システムの確立、高度な分別・解体技術、そして再生素材を高品質な製品へと再利用するための加工技術など、多くの課題を克服する必要がある。アシックスが「NIMBUS MIRAI」や同様の将来製品のライフサイクル管理、特に使用済み製品の回収と再資源化プロセスをどのように計画しているのか、その具体策が注目される。
アシックスは、事業活動と自然環境との相互依存性を認識し、生物多様性の保全をグローバル環境方針の重要な一部として位置づけている 7。同社は、天然資源の調達、水資源の消費、繊維の染色といった事業活動が生物多様性に与える影響を理解し、その負の影響を最小限に抑えるための戦略を推進している。
具体的なコミットメントとして、アシックスはLeather Working Group (LWG) のメンバーであり、またThe Fashion Pactにも加盟している 7。これらを通じて、2030年までに森林破壊ゼロおよび持続可能な森林管理を支援し、LWGが掲げる100%土地転換フリー・森林破壊フリーのレザー調達目標に賛同している。これらの国際的なイニシアチブへの参加は、業界全体での課題解決に向けた協調的な姿勢を示すものである。
生物多様性への影響をより科学的かつ体系的に評価し、対策を講じるため、アシックスはSBTs for Natureが提供するAR3Tフレームワーク(Avoid:影響の回避、Reduce:影響の低減、Regenerate/Restore:生態系の再生・回復、Transform:システムの変革)の活用を計画している 7。このフレームワークは、事業活動が生物多様性に与える影響をプロジェクトレベルで特定し、具体的な行動計画を策定するための指針となる。
水管理戦略も生物多様性保全の重要な要素と捉えられており、水消費量の削減と排水の適切な管理を通じて、水資源への負荷を低減することを目指している 7。特に、水ストレスの高い地域での事業活動においては、水リスクの認識と対策が不可欠である。
アシックスは、生物多様性保全戦略に基づき、具体的な取り組みを多方面で展開している。
水消費量の削減においては、フットウェアの主要な1次サプライヤーにおいて、シューズ1足あたりの水使用量を2015年比で20%削減するという2023年の目標に対し、実際には30.2%の削減を達成し、目標を上回る成果を上げた 4。これは、サプライヤーとの協働による節水努力の賜物と言える。さらに、アパレル生産における水使用量を削減するため、ソリューションダイ(原液着色)技術の導入を進めている。この技術は、従来の染色方法と比較して約33%の節水効果があるとされる 7。
持続可能な原材料調達も、生物多様性への負荷を低減するための重要な取り組みである。製品や包装材におけるリサイクル素材の利用拡大 7 や、前述の持続可能な綿花の調達 7 は、バージン天然資源への依存を減らし、農地拡大等に伴う生態系への圧力を緩和することに貢献する。
廃棄物管理においては、アシックス基準を満たす第三者機関による適切な廃棄物処理を行うとともに、欧州のFastFeetGrinded社などのパートナーと協働し、使用済み製品の再利用やリサイクルを推進している 23。これにより、廃棄物の最終処分量を削減し、環境汚染リスクを低減することを目指している。
直接的な生態系保全活動として、2023年には「Run for Reforestation Challenge」を実施し、5万人以上の参加者を得て、主にインドネシアに5万本の植樹を行った 4。このような活動は、生物多様性の回復に直接貢献するとともに、従業員や消費者の環境意識向上にも繋がる。
フットウェアサプライヤーにおける水使用量削減目標の達成 7 は評価できるが、次の重要なステップは、これらの目標を他の水集約的なプロセス(例えば、ソリューションダイのさらなる普及を超えたアパレル染色全般、Tier2サプライヤーにおける素材加工など)へと拡大し、水質汚染防止についてもより包括的に取り組むことである。アパレル生産、特に染色工程は大量の水を消費し 40、排水による水質汚染も大きな課題である 40。現状では、排水管理については言及されているものの、具体的な汚染物質削減目標は明確に示されていない。
アシックスがLWGの2030年までの森林破壊フリーレザー調達目標にコミットしていること 7 は意義深い。しかし、アパレル業界は、木材パルプ由来の再生セルロース繊維(MMCFs)や、一部地域での綿花栽培地の拡大など、レザー以外にも広範な森林破壊リスクを抱えている 45。アシックスの生物多様性戦略は、これらのより広範な原材料リスクにも包括的に対応する必要がある。同社は綿花を使用しており 12、MMCFsも使用している可能性があるため、レザーだけでなく、リスクの高い全ての原材料について森林破壊リスクを透明性をもって評価し、調達方針とトレーサビリティ確保策を詳述することが求められる。AR3Tフレームワーク 40 は、このプロセスを導く上で有効なツールとなるはずである。
アシックスの事業活動は、生物多様性に関連する様々なリスクと機会に直面している。
リスクとしては、まず、水資源や綿花、天然ゴム、皮革といった天然素材への依存が挙げられる 40。気候変動や環境破壊による生態系サービスの劣化は、これらの資源の安定供給を脅かし、原材料価格の高騰や調達難といった事業リスクに繋がる可能性がある。また、生物多様性保全に関する規制強化や、サプライチェーンにおける環境・社会問題に対するステークホルダーの関心の高まりも、対応が不十分な場合にはレピュテーションリスクや事業コスト増加のリスクとなり得る 45。
一方、機会としては、持続可能な調達体制の構築によるブランドイメージの向上が期待できる。LWG認証レザーやBCIコットン、リサイクル素材などの積極的な採用は 39、環境意識の高い消費者からの評価を高める。また、水使用量削減技術(ソリューションダイなど)の導入 40 や資源効率の改善は、コスト削減にも繋がる。さらに、「Run for Reforestation Challenge」のような生態系保全への直接的な貢献 4 は、従業員のエンゲージメント向上や、地域社会・NGOとの良好な関係構築といった、無形の価値創造にも貢献する。
アシックスがSBTs for NatureのAR3Tフレームワークを採用する方針であること 7 は、より科学的根拠に基づいた実効性の高い生物多様性戦略を構築するための積極的な一歩と評価できる。今後の鍵となるのは、このフレームワークをバリューチェーン全体、特に影響の大きい原材料調達において、いかに具体的で測定可能、かつインパクトのある行動へと転換できるかである。現状の開示では、「影響の回避(Avoid)」(例:森林破壊フリーレザーへの取り組み)や「影響の低減(Reduce)」(例:水使用量削減、持続可能な綿花調達)に関する取り組みは見られるものの、「生態系の再生・回復(Restore/Regenerate)」や「システムの変革(Transform)」といった側面に関する具体的な計画や実績はまだ詳細に示されていない 7。例えば、調達地域における生態系再生プロジェクトへの投資や、既存の枠組みを超える革新的な業界連携などが、今後の焦点となるであろう。
アパレル・フットウェア業界は、グローバルなサプライチェーンと大量生産・消費モデルを背景に、地球環境に対して多大な負荷を与えている。業界全体の温室効果ガス排出量は、世界の総排出量の2%から4%を占めると推定され 45、水消費、水質汚染、有害化学物質の使用、マイクロプラスチック汚染、そして特にファストファッションの隆盛に伴う大量の繊維廃棄物問題など、課題は山積している 29。これらの課題は、気候変動の加速、生態系の劣化、人の健康への悪影響など、広範な問題を引き起こしている。
このような状況を受け、各国・地域で規制強化の動きが活発化している。欧州連合(EU)では、企業のサステナビリティ情報開示を標準化するCSRD(企業サステナビリティ報告指令)およびESRS(欧州サステナビリティ報告基準)が導入されつつあり 7、製品の環境フットプリントを評価するためのPEFCR(製品環境フットプリントカテゴリー規則)の策定も進んでいる 29。さらに、製品のライフサイクル全体に対する生産者の責任を問う拡大生産者責任(EPR)制度の導入も、繊維製品を対象に検討・実施され始めている 45。これらの規制は、企業に対して環境負荷の透明性向上と具体的な削減努力を求めるものであり、対応できない企業にとっては事業継続上のリスクとなり得る。アシックスはCSRDへの対応準備を進めていることが確認されている 7。
このような厳しい事業環境の中、先進的な企業は環境課題への対応を競争優位の源泉と捉え、革新的な取り組みを進めている。例えば、アウトドアアパレル企業のPatagoniaは、製品の長寿命化、修理サービスの提供、古着の再販プログラム(Worn Wear)といった循環経済モデルの推進に加え 52、環境負荷の低い素材(リサイクル素材、リジェネラティブ・オーガニック・コットンなど)への転換、2025年までのバージン石油由来素材の全廃目標など、野心的な目標を掲げている 53。また、売上の1%を環境保護団体に寄付する「1% for the Planet」の共同設立など、環境アクティビズムにも積極的に関与している 52。
CSRDやEPR制度といった規制の強化 7 は、アパレル業界におけるサステナビリティへの取り組みを、単なる自主的な活動から事業戦略の根幹に関わる必須事項へと変容させる大きな推進力となっている。アシックスがCSRDへの対応を早期から準備していることは評価できるが 7、業界全体の課題は、情報開示の先にある、繊維廃棄物やマイクロプラスチック汚染といった問題に大規模かつ実質的に対処するための事業運営の変革である。
「サーキュラリティ(循環性)」は業界のキーワードとなっているが、ファッションにおける真のサーキュラリティ(大規模な繊維から繊維へのリサイクル、製品寿命の大幅な延長、経済的に実行可能な再利用・修理モデルの確立)は、まだ初期段階にあると言わざるを得ない 41。アシックスが「NIMBUS MIRAI」のようなリサイクル可能なシューズを開発していることは先進的な取り組みであるが 10、業界全体としては、リサイクルインフラの構築や循環型消費パターンの定着に向けた協調的な努力が不可欠である。Fashion for Goodイニシアチブ 41 や、Adidasが参加するT-REXプロジェクト 54 のような連携がその一例である。
アシックスの環境パフォーマンスを客観的に評価するためには、主要な競合他社との比較が不可欠である。以下に、気候変動、資源循環、生物多様性の各分野における主要企業の目標と取り組み、および第三者機関によるESG評価を概観する。
気候変動目標と進捗:
多くの主要スポーツアパレル企業はSBTi認定の温室効果ガス削減目標を設定し、再生可能エネルギー導入を進めている。
Nike: 2025年までに自社事業での再生可能エネルギー100%を目指し、2023年度には96%を達成。スコープ1・2排出量を2020年比で69%削減(2023年度)56。スコープ3排出量削減も目標に掲げているが、依然として大きな課題である 56。
Adidas: 2050年ネットゼロ目標、2025年までにサステナブル素材90%使用目標。2024年にはスコープ1・2排出量を17%、スコープ3排出量を20%削減したと報告 54。
Puma: 2030年までにスコープ1・2排出量90%削減(2017年比)、スコープ3排出量33%削減目標(SBTi認定)。2025年までに主要工場での再生可能エネルギー使用率40%目標 30。
New Balance: 2030年までにスコープ1・2排出量60%削減、スコープ3(カテゴリ1,4)排出量50%削減目標(2019年比、SBTi認定)。2025年までに自社事業での再生可能エネルギー100%目標に対し、2022年に98%達成 35。
Mizuno: 2050年ネットゼロ目標。2030年までにスコープ1・2排出量50.4%削減、スコープ3(カテゴリ1,12、付加価値あたり)排出量58.1%削減目標(2018年比、SBTi認定)22。
Patagonia: 2040年ネットゼロ目標(スコープ1,2,3排出量90%削減)。自社施設での再生可能エネルギー100%目標 53。
資源循環への取り組み:
リサイクル素材の使用率向上、製品回収プログラムの導入、廃棄物削減が各社共通のテーマとなっている。
Nike: リサイクルポリエステルやサステナブルコットンを積極的に使用。再生レザー「Flyleather」開発。製品回収・再販プログラム「Nike Refurbished」を展開 56。
Adidas: リサイクルポリエステル使用率99%(可能な範囲で)。100%リサイクル可能なランニングシューズ「FUTURECRAFT.LOOP」のパイロットプログラム実施 54。
Puma: 2030年までにリサイクルポリエステル100%、リサイクルコットン20%使用目標。循環型設計基準の確立を目指す 61。
New Balance: 2025年までにリサイクルポリエステル50%、100%優先調達コットン・レザー目標。アジアTier1フットウェア工場での埋立廃棄物ゼロ目標 62。
Patagonia: 「Worn Wear」プログラムによる修理・再販。2025年までにバージン石油由来素材を全廃し、リサイクルポリエステルやリジェネラティブ・オーガニック・コットンなどの優先素材のみを使用する目標 52。
生物多様性への配慮:
持続可能な素材調達方針の策定、水管理の強化、森林破壊防止へのコミットメントなどが主な取り組みである。
Nike: 水効率改善、リジェネラティブ農業による素材調達を推進 56。
Adidas: 2030年までの森林破壊フリーレザー調達をコミット 54。
Puma: SBT for Nature設定目標。森林破壊フリーレザー調達目標。主要素材の100%認証・リサイクル化目標 61。
New Balance: 森林破壊防止、リジェネラティブ農業の役割を模索 62。
Mizuno: 自然資本・生物多様性への理解深化と報告体制構築を目指す 64。
Patagonia: リジェネラティブ・オーガニック・コットンの採用など、土壌の健康と生物多様性を重視した素材調達を推進 53。
競合他社の多くもリサイクルポリエステルや再生可能エネルギーに関する同様の目標を掲げている中で、アシックスのCDP気候変動「A」評価は際立っている。しかし、業界全体として、特にスコープ3排出量の実質的な削減と大規模な循環型システムの構築が最大の課題であり、真の差別化要因となるであろう 45。Patagoniaは、製品の長寿命化、修理、そして環境アクティビズムを重視する独自のビジネスモデルにより、他社とは異なるアプローチで持続可能性を追求している 52。
SustainalyticsのESGリスクレーティングでは、アシックス、Adidas、Nike、Pumaはいずれも「テキスタイル・アパレル」産業に分類されているが 68、Mizunoは「耐久消費財」に分類されている 74。この「テキスタイル・アパレル」という広範なカテゴリー内でも、パフォーマンス・アスレチックウェア(アシックス、Nikeなど)とファストファッションやラグジュアリーブランドとでは、主要なリスクや機会が異なる可能性がある。アシックスは、「製品とサービスの品質」および「イノベーション」を重要課題として掲げており 1、これはアスリートのニーズに応えるという同社のブランド特性と合致する。この特性を活かし、耐久性が高く環境負荷の低い高性能製品の開発を推進することが、独自のサステナビリティ戦略を構築する上での強みとなり得る。
アシックスは環境パフォーマンス向上に向けて多くの先進的な取り組みを行っているが、依然としていくつかの重要な課題に直面している。
第一に、サプライチェーン全体、特にスコープ3排出量のさらなる削減と、Tier2以降のサプライヤーにおける環境管理の徹底である。アシックスの環境負荷の大部分(65%以上)はサプライチェーンの製造段階で発生しており 12、スコープ3排出量の削減は業界全体の大きな課題でもある 45。主要サプライヤーとの連携は進んでいるものの、より広範なサプライヤーネットワーク、特に素材生産などに関わる間接的なサプライヤーまで管理を拡大し、実質的な排出量削減に繋げることは容易ではない。
第二に、資源循環型ビジネスモデルの本格的なスケールアップと経済的実行可能性の確保である。製品回収システムの広範な展開(現状の3地域目標は限定的である可能性 37)、回収された製品・素材の効率的かつ高品質なリサイクル技術の確立、そしてそれに伴うコスト管理は、業界共通の難題である 41。特に、繊維から繊維へのクローズドループ・リサイクルの技術的・経済的ハードルは高い。
第三に、生物多様性への影響評価と具体的な保全活動の強化である。アシックスはAR3Tフレームワークの活用計画を示しているが 7、現状ではまだ「生物多様性への影響をよりよく理解する過程」にあり、具体的な行動計画の策定途上であると認識される。特に、染色工程などにおける水質汚染防止策の強化 47 や、綿花、皮革、再生セルロース繊維といった影響の大きい原材料調達におけるトレーサビリティの向上と、原産地レベルでの環境・社会配慮の徹底が求められる。
第四に、急速に変化する国際的な規制環境への適応と、それに伴う情報開示の高度化である。CSRDやEPR制度など、欧州を中心に新たな規制が次々と導入されており 7、これらに迅速かつ的確に対応し、透明性の高い情報開示を継続していく必要がある。
第五に、消費者への環境意識啓発とサステナブルな消費行動の促進である。製品へのCO2フットプリント表示拡大 12 はその一環であるが、環境配慮型製品の選択や製品の長期使用、適切な廃棄・リサイクルといった消費者の行動変容を広範に促すことは、企業単独の努力では限界がある。
これらの課題に取り組む上で、アシックスはサステナビリティ投資のコストと複雑性、そして株主からの財務パフォーマンスへの期待とのバランスを考慮する必要がある。特に、スポーツ用品業界が経済の不確実性や地政学的リスクに直面している状況下では 76、このバランス取りはより一層重要となる。アシックスは良好な財務実績を維持しているが 8、サプライチェーンの抜本的な脱炭素化や循環型システムの構築には多大な投資が必要となるため、これらの投資がもたらす長期的な価値(リスク軽減、ブランド価値向上、イノベーション機会創出など)をステークホルダーに対して明確に説明し、理解を得ることが不可欠である。
また、生物多様性戦略の実効性は、綿花、皮革、木材パルプ由来の再生セルロース繊維(使用している場合)といったリスクの高い原材料について、農場や森林といった原産地レベルまでの堅牢なトレーサビリティを確保し、サプライチェーンの初期段階における慣行に影響を与えることができるかどうかに大きく左右される。これはアパレル業界にとって非常に困難な課題として知られている。アシックスは皮革(LWG)40 や綿花(BCI)39 に関してトレーサビリティ向上に取り組んでおり、TrusTraceシステムも活用しているが 39、全てのリスクの高い素材について原産地レベルまでの完全なトレーサビリティを確立し、影響を管理することは、AR3Tフレームワーク 40 の効果的な実践のためにも不可欠である。
アシックスが環境パフォーマンスをさらに向上させ、持続可能な社会の実現に貢献するために、以下の具体的提言を行う。
気候変動対策の深化:
スコープ3排出量削減目標達成に向け、サプライヤー支援プログラムを質・量ともに強化する。具体的には、省エネ・再エネ導入に関する技術指導、共同での設備投資や長期的な購入契約を通じた資金的インセンティブの提供などを検討する。
革新的な低炭素素材(例:バイオベース素材、炭素回収利用技術を活用した素材など)や、エネルギー効率の高い生産プロセス技術への研究開発投資を拡大する。
資源循環型ビジネスモデルの確立と拡大:
現在計画中の3地域での製品回収プログラム 37 を早期に実現するとともに、将来的にはアシックスが事業展開する全ての主要市場をカバーするグローバルな製品回収・リサイクルシステムを構築し、回収率・リサイクル率に関するより野心的な目標を設定する。
日本の一部製品で実施している修理サービス 7 をグローバルに拡充し、製品の長寿命化を促進する。
企業間(B2B)での繊維廃棄物リサイクルループの構築や、他業界との連携によるアップサイクルプロジェクトなどを検討し、廃棄物の価値を最大限に引き出す。
生物多様性保全活動の本格化:
AR3Tフレームワークに基づき、アシックスのバリューチェーンが特に大きな影響を与えている地域や生態系を特定し、具体的な保全・再生プロジェクト(例:原材料調達地域での森林再生、水質改善活動など)を開始する。その際には、地域コミュニティや専門機関との連携を重視する。
サプライチェーンにおける水質汚染削減に関する具体的な数値目標(例:排水基準の強化、有害化学物質排出量削減目標など)を設定し、進捗を定期的に開示する。
皮革に加え、綿花、木材パルプ由来繊維など、生物多様性への影響が大きい全ての主要天然素材について、森林破壊フリーおよび生態系転換フリーの調達方針を策定し、原産地までのトレーサビリティ確保に向けた取り組みを強化する。
情報開示とガバナンスの強化:
TCFD提言に基づくシナリオ分析を深化させ、特に1.5∘Cシナリオへの対応戦略をより具体的に示すとともに、気候変動が事業財務に与える影響の定量的な評価・開示を試みる。
CSRD/ESRSへの完全準拠に向けた社内体制の整備とデータ収集プロセスを加速する。
サステナビリティ関連のリスクと機会を取締役会レベルで定期的に議論し、経営戦略への統合をより一層強化する。
ステークホルダーエンゲージメントの推進:
消費者に対して、製品の環境負荷情報(カーボンフットプリント、リサイクル素材使用率など)をより分かりやすく提供し、サステナブルな製品選択を促進するためのコミュニケーションを強化する。
投資家やESG評価機関、NGOなど、多様なステークホルダーとの建設的な対話を継続し、サステナビリティ戦略の策定・実行プロセスへのフィードバックを積極的に取り入れ、透明性を向上させる。
これらの提言は、アシックスが既に築き上げてきたサステナビリティへの取り組みを基盤としつつ、地球環境問題の緊急性と社会からの期待の高まりに応え、真のリーディングカンパニーへと進化するための一助となることを目指すものである。
本報告書における分析の結果、アシックス社は「健全な身体に健全な精神があれかし」という創業哲学に基づき、サステナビリティを事業戦略の重要な柱と位置づけ、気候変動、資源循環、生物多様性の各分野において先進的な目標設定と具体的な取り組みを推進していることが確認された。
気候変動対応においては、スポーツ用品メーカーとして世界で初めてSBTi認定を取得し、2050年ネットゼロ目標を掲げるなど、業界をリードする意欲を示している。スコープ1・2排出量削減では着実な進捗が見られ、CDP気候変動評価で最高位の「Aリスト」を獲得したことは特筆に値する。サプライヤーエンゲージメントを通じたスコープ3排出量削減にも着手しているが、その広範性と実効性の向上が今後の鍵となる。TCFD提言に基づく情報開示とリスク管理体制も整備されつつある。
資源循環の分野では、リサイクルポリエステルの全面的な採用目標や、製品回収プログラムの導入、リサイクル可能な製品設計(例:「NIMBUS MIRAI」)など、多岐にわたるイニシアチブを展開している。しかし、これらの取り組みをグローバル規模でスケールアップし、経済的にも持続可能な循環型ビジネスモデルを確立するには、まだ多くの課題が残されている。
生物多様性の保全に関しては、LWGやFashion Pactへの加盟、森林破壊フリーレザー調達へのコミットメントなど、方針レベルでの取り組みは進んでいる。水使用量削減では目標を達成するなど具体的な成果も見られるが、AR3Tフレームワークの本格的な導入や、サプライチェーン全体での影響評価と具体的な保全活動の展開はこれからの段階と言える。
総じて、アシックスは環境パフォーマンスにおいて業界内で先進的なポジションにあり、特に気候変動目標の野心性と情報開示の透明性においてはリーダーシップを発揮している。創業哲学とサステナビリティ戦略の一貫性も高く評価できる。一方で、サプライチェーン全体での環境負荷削減の深化、資源循環システムの本格的な構築、生物多様性保全活動の具体化といった点では、さらなる努力とイノベーションが求められる。
本分析結果は、アシックス社の環境スコアリングにおいて以下の点を考慮すべきことを示唆している。
ポジティブな評価要因:
SBTi認定を受けた野心的な気候変動目標(2050年ネットゼロ、2030年63%削減)と、CDP気候変動「Aリスト」評価。
TCFD提言への早期賛同と、ダブルマテリアリティ評価の導入など、情報開示とリスク管理への積極的な姿勢。
リサイクルポリエステル100%化目標や、リサイクル設計製品(NIMBUS MIRAI)の開発など、資源循環への強いコミットメント。
フットウェアサプライヤーにおける水使用量削減目標の達成。
LWGやFashion Pactへの加盟を通じた業界連携。
スコアリングにおける注意点・さらなる検証が必要な点:
スコープ3排出量削減の進捗と、サプライヤーエンゲージメントの実効性(特にTier2以降)。
製品回収プログラムのグローバルな展開規模と回収・リサイクル率の実績。
生物多様性方針に基づく具体的な行動計画の策定状況と、AR3Tフレームワークの適用度合い。特に、影響の大きい原材料(綿花、森林由来素材等)に関するトレーサビリティと保全策。
TCFDシナリオ分析の最新状況と、気候関連リスク・機会の財務的影響に関する定量的な評価。
廃棄物削減目標(事業所廃棄物98%再利用・リサイクル)の2023年末実績。
今後のアシックス社の情報開示においては、特にスコープ3排出量削減の具体的なロードマップと進捗、資源循環型ビジネスモデルの経済的実現性、そして生物多様性保全に関する定量的な目標と成果に注目することが、同社の環境パフォーマンスを継続的に評価する上で重要となる。CSRD/ESRSへの対応準備が進む中で、これらの領域における情報開示の質と量がさらに向上することが期待される。
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SUSTAINABILITY - PUMA Annual Report 2024, 5月 7, 2025にアクセス、 https://annual-report.puma.com/2021/downloads/puma-ar-2021_sustainability.pdf
PUMA SE - Company ESG Risk Rating - Sustainalytics, 5月 7, 2025にアクセス、 https://www.sustainalytics.com/esg-rating/puma-se/1008294904
Company ESG Risk Ratings and scores - Sustainalytics, 5月 7, 2025にアクセス、 https://www.sustainalytics.com/esg-ratings
Mizuno Corp. ESG Risk Rating - Sustainalytics, 5月 7, 2025にアクセス、 https://www.sustainalytics.com/esg-rating/mizuno-corp/1008753800
ESG Ratings - MSCI, 5月 7, 2025にアクセス、 https://www.msci.com/zh/esg-ratings/issuer/nike-inc/IID000000002144314
Sporting Goods 2025 - McKinsey & Company, 5月 7, 2025にアクセス、 http://www.mckinsey.com/~/media/mckinsey/industries/retail/our%20insights/sporting%20goods%20industry%20trends/2025/sporting-goods-2025-the-new-balancing-act-turning-uncertainty-into-opportunity-v3.pdf
Sporting Goods industry trends 2025 | McKinsey, 5月 7, 2025にアクセス、 https://www.mckinsey.com/industries/retail/our-insights/sporting-goods-industry-trends
Summary of Consolidated Financial Statements For the Fiscal Year Ended December 31, 2024 (Japan GAAP) | ASICS, 5月 7, 2025にアクセス、 https://assets.asics.com/system/libraries/3964/Summary%20of%20Consolidated%20Financial%20Statements%20For%20the%20Fiscal%20Year%20Ended%20December%2031,%202024%20%28Japan%20GAAP%29.pdf
2023年 | 3,581t-CO2 |
2022年 | 3,034t-CO2 |
2021年 | 3,082t-CO2 |
2023年 | 18,077t-CO2 |
2022年 | 21,032t-CO2 |
2021年 | 19,389t-CO2 |
2023年 | 720,414t-CO2 |
2022年 | 818,549t-CO2 |
2021年 | 589,390t-CO2 |
スコープ1+2 CORの過去3年推移
2023年 | 38kg-CO2 |
2022年 | - |
2021年 | 46kg-CO2 |
スコープ3 CORの過去3年推移
2023年 | 1,263kg-CO2 |
2022年 | - |
2021年 | 1,216kg-CO2 |
スコープ1+2のCOA推移
2023年 | 42kg-CO2 |
2022年 | - |
2021年 | 53kg-CO2 |
スコープ3のCOA推移
2023年 | 1,388kg-CO2 |
2022年 | - |
2021年 | 1,387kg-CO2 |
2023年 | 5,705億円 |
2021年 | 4,846億円 |
2020年 | 4,041億円 |
2023年 | 353億円 |
2021年 | 199億円 |
2020年 | 94億円 |
2023年 | 5,190億円 |
2021年 | 4,251億円 |
2020年 | 3,458億円 |
すべての会社と比較したポジション
業界内ポジション
CORスコープ1+2
CORスコープ3
CORスコープ1+2
CORスコープ3
COAスコープ1+2
COAスコープ3
COAスコープ1+2
COAスコープ3