カテゴリー | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 |
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1購入した製品・サービス | 351,365 | 406,638 (▲55,273) | 1,095,515 (▲688,877) |
2資本財 | 154,343 | 147,464 (▼6,879) | 140,793 (▼6,671) |
3燃料・エネルギー関連活動 | 21,349 | 26,955 (▲5,606) | 26,712 (▼243) |
4輸送・配送(上流) | 11,082 | 11,045 (▼37) | 10,160 (▼885) |
5事業から発生する廃棄物 | 5,578 | 5,355 (▼223) | 5,405 (▲50) |
脱炭素に関する膨大なトピックに対し、企業のニーズに合わせた研修を提供する「脱炭素カスタム研修」。各種製造装置や精密機械などの製造を行うグローバル機械メーカー・住友重機械工業は、社長含む経営陣に対して本サービスを活用した。サステナビリティ領域で、外部対応だけでなく社員教育も行ってきたサステナビリティ推進部の責任者に、活用に至った背景や活用後の効果・反響、今後の方針を聞いた。
※掲載情報は公開資料をもとに作成しており、全てのリスク・機会を網羅するものではありません。 より詳細な情報は企業の公式発表をご確認ください。
省エネ・高効率製品(「サステナビリティプラス製品」認定制度 等)の開発・販売は競争優位に繋がる。再エネ関連機器、CCUS、環境プラント 、電動化・自動化技術といった脱炭素・環境貢献分野は大きな成長機会である。資源循環に貢献する製品・サービス(リマニュファクチャリング等 )や、自社の省エネ・廃棄物有価物化 によるコスト削減も機会となる。
本報告書は、住友重機械工業株式会社(以下、SHI)の環境への取り組みとそのパフォーマンスについて、「気候変動」「資源循環」「生物多様性」という3つの重点分野を中心に、包括的な分析を行うことを目的とする。この分析は、同社の環境スコア算出に必要となる詳細な情報を提供するとともに、学術的レベルでの評価に基づき、将来に向けた戦略的な提言を行うことを目指すものである。分析にあたっては、主に同社が公開している最新の統合報告書、サステナビリティ関連情報、ウェブサイト情報などを参照するが、必要に応じて過去のデータや情報源も活用する 。
SHIは、変減速機やプラスチック機械などのメカトロニクス分野、油圧ショベルやクレーンなどの建設機械分野、さらには産業機械、物流・建設、エネルギー・ライフライン分野など、極めて多岐にわたる事業を展開する総合機械メーカーである 。これらの広範な事業活動は、製造プロセスにおけるエネルギー消費(Scope 1, 2排出)、原材料や水などの資源利用、廃棄物の発生、そして顧客が使用する製品のライフサイクル全体における環境負荷(特にScope 3排出)といった側面から、気候変動、資源循環、生物多様性といった地球規模の環境課題と密接に関連している。特に、重工業としての特性上、自社の事業活動に伴う直接的な排出量だけでなく、製品使用段階でのエネルギー消費や排出量が環境影響の大部分を占めるケースが多く、バリューチェーン全体での環境負荷低減が重要な経営課題となっている 。
本報告書は、以下の構成でSHIの環境への取り組みを詳述する。まず、気候変動、資源循環、生物多様性の各分野における具体的な目標、取り組み、実績を分析する。次に、これらの環境要因に関連する潜在的なリスクと事業機会を考察する。さらに、同業他社との比較分析や業界における先進的な環境慣行(ベストプラクティス)を提示し、SHIの現状における立ち位置を明らかにする。その上で、同社が直面している環境課題を評価し、今後のパフォーマンス向上に向けた具体的な提言を行う。なお、本報告書では、ユーザーからの指示に基づき、表形式によるデータ表示は避け、全ての定量的なデータ、比較、目標、実績、ベンチマーキング結果などは、本文中での記述、あるいは必要に応じて箇条書きやリスト形式を用いて明確に提示する。
SHIグループは、深刻化する気候変動問題への対応を経営の重要課題と認識し、長期的な目標として2050年までにグループ全体でのカーボンニュートラル(CO2排出量実質ゼロ)達成を目指すことを取締役会で決議している 。この長期目標達成に向けた中間指標として、具体的な数値目標を設定している。具体的には、製品製造時のCO2排出量(Scope 1およびScope 2)について、2030年までに2019年度比で50%削減することを目標としている。また、製品使用時のCO2排出量(Scope 3 カテゴリ11:販売した製品の使用)についても、同じく2030年までに2019年度比で30%削減する目標を掲げている 。
Scope 3排出量、特に製品使用時(カテゴリ11)の排出量は、SHIのライフサイクル全体のCO2排出量の大部分、具体的には2022年度実績で全体の99.0%を占めていることが報告されている 。この点を考慮すると、カテゴリ11に対する30%削減目標は重要な一歩であるものの、ライフサイクル全体でのカーボンニュートラル達成という最終目標から見れば、更なる削減努力や目標の深掘りが必要となる可能性が考えられる。また、SHI自身もカテゴリ11以外のScope 3排出量について実態把握を進め、今後の目標設定を検討するとしていることから 、将来的にはより広範なScope 3カテゴリを対象とした目標設定と削減活動の展開が期待される。
SHIグループは、設定した目標達成に向けて、多岐にわたる具体的な取り組みを推進している。
省エネルギー活動: 日常業務におけるエネルギー効率の改善、省エネルギー設備の積極的な導入、設備の待機電力削減策の実施、生産計画に合わせた工場の一斉休止日の設定などを継続的に行っている 。これらの活動の成果として、エネルギー消費量の効率を示すエネルギー生産性(売上高/エネルギー消費量)は、国内拠点において2022年度に2019年度比で9.2%向上、海外拠点においては同17.3%向上し、それぞれ設定していた年間目標(3%向上)を大幅に達成した 。
再生可能エネルギーの利用: 事業活動における再生可能エネルギーの利用拡大も進めている。具体的には、工場建屋への太陽光発電設備の導入を進めるとともに、再生可能エネルギー由来の電力購入を積極的に行っている。2023年度には、グローバル全体で68,202MWh分の再生可能エネルギー電力を購入した実績がある 。これは、省エネ施策による年1%程度の排出量削減効果や太陽光発電の導入状況を考慮しながら、2050年カーボンニュートラル実現に向けた計画的な取り組みの一環として位置づけられている 。
燃料転換: 製造プロセスにおけるCO2排出量削減のため、使用燃料の転換も実施している。例えば、圧延ロール生産プロセスで使用される全ての熱処理炉において、燃料を従来の重油からよりCO2排出係数の低い液化天然ガス(LNG)へ転換する取り組みを進めた結果、活動前の2017年度と比較してエネルギー原単位を15%向上させ、CO2排出量を27%削減するという大きな成果を上げている 。
グリーン物流: 製品輸送に伴うCO2排出量の削減にも注力している。輸送効率の改善(積載率の向上・最適化)や共同配送(混載便)の有効活用などを通じて、無駄の排除と効率化を図っている。その結果、国内輸送における輸送重量あたりのCO2排出量を示す輸送原単位(t-CO2/重量)は、2023年度に2019年度比で8.1%削減となり、目標(2019年度以下維持)を達成した 。2022年度の実績は同5.9%削減であった 。
排出量実績: 一方で、国内拠点におけるScope 1およびScope 2のCO2排出総量については、2022年度の実績が2019年度比で2.3%の削減に留まり、年度目標としていた3%削減には届かなかった 。これは、前述のような各種削減施策による効果(約4%削減と試算)があったものの、それを上回る生産量の増加や新工場棟の稼働開始などの増要因が影響したためと分析されている 。この事実は、事業の成長と環境負荷の絶対量削減を両立させることの難しさを示唆している。エネルギー生産性(効率)は向上しているものの、総量削減目標の達成には至っておらず、再生可能エネルギー導入の更なる加速や、燃料転換のような抜本的なプロセス革新の重要性がより一層高まっている状況がうかがえる。
製品を通じた貢献: SHIグループは、自社の排出量削減(責務)だけでなく、製品やサービスを通じて社会全体の脱炭素化に貢献することも重視している 。その一環として、製品の環境性・社会性を11項目で評価し、一定基準(80点以上)を満たした製品を「サステナビリティプラス製品」、特に優れた製品(90点以上)を「スーパーサステナビリティプラス製品」として認定する独自の制度を運用している 。これにより、環境負荷低減に貢献する製品の開発・普及を促進している。
TCFD提言への賛同と情報開示: 気候変動関連のリスクと機会に関する情報開示の重要性を認識し、2021年10月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言への賛同を表明した 。以降、TCFDが推奨する開示フレームワーク(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)に沿った情報開示の充実に取り組んでおり、ステークホルダーへの透明性向上に努めている 。
SHIグループは、持続可能な資源利用と循環型社会の実現に向けて、資源循環に関する具体的な目標を設定し、活動を推進している。
廃棄物排出量: 廃棄物排出量(有害廃棄物を含む)については、売上高原単位での削減目標を設定している。国内拠点では、2017年度から2019年度の3年間平均以下の排出量水準を維持することを目標としている。海外拠点では、2019年度比での削減率目標(例:2023年度目標は4%削減)を設定している 。
ゼロエミッション: 廃棄物の最終処分量削減にも注力しており、国内の製造拠点においては、廃棄物排出量に占める埋め立て処分量の割合(埋立率)が0.5%未満の状態を「ゼロエミッション」と定義し、その達成・維持を目標としている 。海外拠点においては、非埋立率95%以上を目標としている 。
水使用量: 水資源の保全に関しても目標を設定している。国内拠点では、水使用量を2017年度から2019年度の3年間平均以下に維持することを目標としている。海外拠点では、水使用量の売上高原単位を2019年度の水準以下に維持することを目標としている 。
これらの目標達成のため、SHIグループは以下のような取り組みを実施し、成果を上げている。
廃棄物削減・リサイクル: 3R(リデュース:発生抑制、リユース:再使用、リサイクル:再資源化)に、再生可能資源への転換(Renewable)を加えた「3R+Renewable」を意識した活動をグループ全体で推進している 。具体的には、廃棄物の分別徹底によるリサイクル率向上、製造工程の見直しによる発生抑制、再利用可能な資源の活用などを実施している。例えば、従来は産業廃棄物として処理していたショットブラスト工程で発生する粉塵(ショット粉屑)を有価物として売却する取り組みや、ろ過装置を用いて試運転で使用した油を再利用するなどの改善活動が排出量削減に貢献している 。
実績(廃棄物・ゼロエミッション): これらの取り組みの結果、2023年度の廃棄物排出量原単位は、国内拠点で29.0%削減(対2017-19年度平均)、海外拠点で21.6%削減(対2019年度比)となり、それぞれ目標を達成した 。また、国内のゼロエミッションに関しても、2023年度の国内全製造所(6製造所7工場)および製造所外グループ会社(9社)全体での埋立率は0.03%となり、2011年度以降継続してゼロエミッションを達成している 。海外拠点に関しては、2023年度の非埋立率は3.7%であったと報告されており、「目標を達成し」との記述がある 。ただし、目標値が95%以上であることから、この記述には補足説明や解釈が必要となる可能性がある。国内・海外を合算した2023年度の埋立率は2.0%であった 。国内での高い実績は維持されている一方で、海外拠点のパフォーマンス向上や、より高度なリサイクル(例:マテリアルリサイクル率の向上)は今後の課題となり得る。
水資源管理: 水使用量のモニタリングを継続的に実施し、削減活動に取り組んでいる 。節水設備の導入や工程での水利用効率改善などを進めた結果、2022年度の実績では、国内拠点の水使用量は2017-19年度平均比で3.9%削減、海外拠点の水使用量原単位は2019年度比で13.1%削減となり、それぞれ目標を達成した 。水リスク(渇水、洪水、水質汚染などによる事業活動への影響)に対する認識も示されており 、今後は特に水ストレスの高い地域における事業展開を踏まえた、より詳細なリスク評価と対応策の開示が求められる可能性がある。
プラスチック資源循環: 近年、世界的に関心が高まっているプラスチック問題にも対応を進めている。グループ全体での廃プラスチック排出量および売上高原単位を管理対象としている 。2023年度のSHI単体でのプラスチック廃棄物排出量は1,243トンであった 。プラスチック製梱包材については、3R+Renewableの推進を掲げている。また、具体的な取り組み事例として、大崎本社で使用済みとなったポリカーボネート製のパーテーションを廃棄せずにリサイクル業者へ引き渡し、再資源化したケースが挙げられる 。今後は、製品部材へのリサイクル材適用拡大や、サプライチェーン全体を意識した活動(例:調達段階での環境配慮)も検討していく方針である 。プラスチック資源循環促進法への対応も含め、特定素材に対する取り組みは、今後さらに強化されるべき領域と考えられる。
SHIグループは、事業活動が自然資本や生態系サービスに依存し、また影響を与えうることを認識し、生物多様性の保全にも取り組む姿勢を示している。
環境方針: グループの環境方針において、「事業活動に伴う自然・生態系への影響に配慮し、生物多様性の保全を図ります」と明確に謳っている 。これは、環境マネジメントシステムの運用・改善や環境関連法令遵守と並ぶ、重要な方針の一つとして位置づけられている 。
イニシアチブへの賛同: 企業の立場から生物多様性保全の問題に取り組む意思とその行動指針を示した「経団連生物多様性宣言イニシアチブ」に賛同している 。
サプライチェーンへの要請: サプライヤーに対しても、生物多様性保全への配慮を求めている。グループの「CSR調達ガイドライン」において、生物多様性保全に関する項目を設け、取引先にも協力を要請している 。
これらの⽅針に基づき、SHIグループは以下のような活動を⾏っている。
拠点管理: 各製造拠点において、敷地内の緑地管理や植樹活動を推進している 。また、環境汚染予防の観点から、適正な排水管理や廃棄物管理(排出量・物質管理)を実施している 。特徴的な例として、東京都西東京市にある田無製造所では、構内の森林の一部を「発想の森」と名付け、市民の憩いの場として開放しており、地域貢献にも繋げている 。
地域貢献活動: 事業拠点のある地域社会と連携した保全活動にも参加している。東京都品川区の大崎本社では、勝島運河沿いの防潮堤に花畑を作る「しながわ花海道」プロジェクトに参画し、地元商店街や近隣企業と共に種まき活動を行った 。また、CO2吸収量が多く成長の早い「早成桐」の植林活動にも参加している 。愛媛製造所の新居浜工場では、市の公共施設愛護事業活動として工場周辺の清掃ボランティアを実施し、多くの廃棄物を回収した実績がある 。
製品・プロセス関連: 事業活動のプロセスや製品においても、生物多様性への配慮を意識した取り組みが見られる。例えば、輸送時の梱包材について、木材梱包の削減や、生態系への影響が懸念される海洋プラスチック問題への間接的な貢献としてプラスチック使用量の削減に取り組んでいる 。また、製品へのリサイクル素材の適用や、環境負荷低減に貢献する処分方法の適用なども、生物多様性保全に繋がる活動として挙げられている 。
サプライチェーン: 前述の通り、CSR調達ガイドラインを通じて、サプライヤーに対しても生物多様性保全への協力を働きかけている 。
現状の開示情報からは、SHIの生物多様性への取り組みは、主に事業拠点周辺の環境美化活動、地域社会との連携、環境方針におけるコミットメント表明、サプライヤーへの協力要請といった側面に重点が置かれているように見受けられる 。一方で、原材料調達(特に鉱物資源など)、大規模な土地利用、製品のライフサイクル全体といった、事業活動の根幹部分が生物多様性に与える直接的・間接的な影響(依存度とインパクト)に関する体系的な評価(例えば、ライフサイクルアセスメントにおける生物多様性フットプリントの算定など)や、その評価に基づいた具体的なリスク管理策、あるいは「ネイチャーポジティブ」のような国際的な目標達成に貢献するための定量的な目標設定については、現時点での公開情報からは詳細を読み取ることが難しい。今後の情報開示の充実が期待される領域である。
SHIグループの事業活動は、気候変動、資源制約、生物多様性の損失といった地球規模の環境課題と深く関わっており、それに伴うリスクと機会が存在する。
環境要因に関連する潜在的なリスクは、規制強化や市場変化に伴う「移行リスク」と、気候変動の物理的な影響による「物理的リスク」に大別される。
移行リスク (Transition Risks):
政策・法規制リスク: 各国・地域におけるカーボンプライシング(炭素税、排出量取引制度など)の導入・強化、製品や事業所に対する排出基準・エネルギー効率基準の厳格化、資源循環関連法規(例:プラスチック規制、リサイクル義務化)の強化などが挙げられる。これらは、製造コストの増加、研究開発投資の増大、製品仕様の変更要求などを通じて、事業運営に影響を与える可能性がある 。また、TCFD提言 など、気候関連の情報開示要求への対応が不十分な場合、投資家からの評価低下や資金調達への悪影響を招くリスクもある 。
市場リスク: 顧客や社会全体の環境意識の高まりにより、低炭素・環境配慮型製品への需要が急速にシフトする可能性がある。この変化に対応できない場合、市場シェアの低下や既存製品の陳腐化といったリスクに直面する。また、競合他社がより先進的な環境技術や製品を市場に投入することで、相対的な競争力が低下するリスクも存在する 。
技術リスク: 低炭素社会への移行に必要な技術(例:製造プロセスの電化、水素・アンモニア利用、CCUS:二酸化炭素回収・利用・貯留技術など)の開発・導入が遅れたり、あるいは先行投資した技術が期待通りの成果を上げられなかったりするリスクがある。
評判リスク: 設定した環境目標が未達に終わった場合(例:2022年度の国内CO2排出量目標未達 )、環境事故が発生した場合(例:2022年度に6件発生し目標未達 )、あるいはサプライチェーン上で環境問題(児童労働や強制労働などの人権問題と並び、生物多様性破壊なども含む)が発覚した場合などに、企業のブランドイメージや社会的信用が毀損されるリスクがある。ESG評価機関からの評価も重要であり、例えばEcoVadis社から「ブロンズ」評価を受けていること は、改善の余地があることを示唆しており、低評価が継続すれば評判リスクに繋がりうる。
物理的リスク (Physical Risks):
急性リスク: 気候変動の進行に伴い、台風の強大化、集中豪雨の頻発化、大規模な洪水など、異常気象の激甚化が予測されている。これらは、生産拠点や物流網の操業停止、設備の物理的な損壊、サプライチェーンの寸断などを引き起こし、事業継続に深刻な影響を与えるリスクがある。
慢性リスク: 平均気温の上昇は、工場などにおける冷却コストの増加や、従業員の労働環境悪化に繋がる可能性がある。また、海面上昇は、沿岸部に位置する生産拠点や港湾施設の機能に長期的なリスクをもたらす。さらに、渇水リスクの高い地域では、事業に必要な水資源の確保が困難になる可能性も指摘されている 。生物多様性の損失は、水質浄化能力の低下や、特定の原材料(天然由来の素材など)の供給不安定化といった形で、生態系サービス(自然の恵み)の劣化を通じて間接的に事業に影響を与えるリスクも考えられる。
SHIはTCFD提言に賛同し 、気候関連リスクを認識していることを示しているが、提供された情報からは、具体的な気候変動シナリオ(例:1.5℃シナリオ、4℃シナリオなど)に基づいたリスク分析の結果や、それが財務に与える潜在的な影響の定量的な評価に関する詳細な開示は限定的であるように見受けられる。特に、物理的リスクの拠点ごとの評価や、サプライチェーン全体を通じたリスク(移行リスク・物理的リスク双方)に関する詳細な分析と対応策の開示は、投資家や金融機関などからの要求が今後さらに高まる可能性が高い分野である 。EcoVadisのブロンズ評価 も、一部にはこうしたリスク管理や情報開示の側面における改善の必要性を反映している可能性がある。
一方で、環境課題への対応は、新たな事業機会の創出にも繋がる。
製品・サービス:
高効率・省エネルギー製品: 従来から強みを持つ産業機械、建設機械、精密機械などにおいて、さらなる省エネルギー化や高効率化を実現した製品の開発・販売は、顧客のコスト削減と環境負荷低減に貢献し、競争優位性を高める機会となる 。前述の「サステナビリティプラス製品」認定制度 は、こうした製品開発を後押しする取り組みと言える。
脱炭素関連技術・製品: 再生可能エネルギー関連機器(例:風力発電向け大型ギアボックス、関連部品)、エネルギー貯蔵システム(例:蓄電池関連技術)、CCUS関連技術・機器など、脱炭素社会の実現に不可欠な分野での技術開発・製品提供は、大きな成長機会となりうる。
環境プラント・ソリューション: 廃棄物処理・リサイクル施設、水処理施設、大気汚染防止装置など、環境保全に直接貢献するプラントやシステムの需要は、世界的な環境規制強化の流れの中で拡大が見込まれる 。
資源循環貢献製品: 製品設計段階からのリサイクル材利用率向上、製品寿命の長期化、修理・アップグレードサービスの提供、使用済み製品の回収・リマニュファクチャリング(再製造)など、サーキュラーエコノミー(循環経済)の実現に貢献する製品やサービスモデルの開発・提供も、新たな価値創造の機会となる 。
電動化・自動化: 建設機械や産業機械の電動化(例:電動射出成形機、電動ショベル)、自動化・自律化技術の導入は、顧客の生産性向上と環境負荷低減(特に現場での排出量削減)を両立させるソリューションとして、市場での需要が高まっている。
オペレーション効率化: 自社の事業活動における省エネルギー活動や資源利用効率の改善は、光熱費や原材料費の削減に直結し、コスト競争力の強化に繋がる 。また、廃棄物として処理していたものを有価物として売却するなど 、廃棄物管理の高度化が新たな収益源となる可能性もある。
市場・ブランド価値: 環境課題への先進的な取り組みは、企業のブランドイメージや社会的評価を高める。これにより、環境意識の高い顧客や投資家からの支持を得やすくなり、優秀な人材の獲得においても有利に働く可能性がある。CDPやMSCIなどのESG評価の向上は、企業価値全体の向上にも貢献しうる 。
SHIは「サステナビリティプラス製品」認定制度 などを通じて、環境配慮型製品の開発・販売を推進している姿勢を示しているが、これらの製品群が具体的にどの程度の市場機会を捉え、グループ全体の収益や成長に貢献しているのかを示す定量的な情報開示は、現時点では限定的である。脱炭素化やサーキュラーエコノミーへの移行を真に加速させるためには、既存製品の改良に留まらず、次世代エネルギー関連技術や高度なリサイクル技術といった革新的な技術・ソリューションへの戦略的な研究開発投資が不可欠である。こうした投資の方向性、進捗状況、そして具体的な成果を明確に発信していくことが、将来の事業機会を最大限に活かすための鍵となるだろう。
SHIの環境への取り組みを評価し、今後の方向性を検討する上で、同業他社との比較や業界における先進的な事例(ベストプラクティス)を把握することは極めて重要である。
SHIが事業を展開する重工業、産業機械、建設機械などの分野における主要な競合企業としては、国内外に多数の企業が存在する。
特定:
国内では、三菱重工業、川崎重工業、IHIといった総合重工業メーカー、およびコマツ、クボタといった建設機械・産業機械メーカーなどが主要な競合相手として挙げられる 。
海外では、スイスのLiebherr社、日立建機(日立グループからは独立したが、建設機械分野での比較対象として重要)、米国のCaterpillar社などの建設機械メーカー、ドイツのSiemens社、米国のGE社、スイスのABB社などの産業機械・重電メーカーが、事業領域に応じて競合関係にあると考えられる 。
比較分析: これらの競合企業は、多くがSHIと同様にグローバルに事業を展開しており、ESG(環境・社会・ガバナンス)情報の開示にも積極的に取り組んでいる。比較分析にあたっては、各社が公開しているサステナビリティレポート、統合報告書、ウェブサイト情報、CDP(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)への回答などを調査し、以下の観点から比較検討を行う必要がある。
目標設定: カーボンニュートラル達成目標年、Scope 1, 2, 3の具体的な削減目標値と基準年、再生可能エネルギー導入目標(比率や絶対量)、廃棄物削減目標(原単位、リサイクル率、最終処分量)、水使用量削減目標などを比較する。
具体的な取り組み: 各社が注力している技術開発(例:水素関連技術、電動化技術)、再生可能エネルギー導入の手法(例:PPA契約、自己託送)、サーキュラーエコノミー戦略の具体性(例:リマニュファクチャリング事業の規模)、生物多様性影響評価の手法や保全活動の内容などを比較する。
パフォーマンスデータ: 温室効果ガス(GHG)排出量の実績値(Scope別)、再生可能エネルギー利用率、廃棄物リサイクル率、水使用量の実績値などを比較し、目標達成状況や削減ペースの違いを評価する。
SHIが掲げる2030年までの中間目標、特にScope 1およびScope 2の50%削減目標 は、国内の同業他社と比較した場合、標準的ないしはやや意欲的な水準にある可能性がある。しかし、環境規制や投資家の要求がより厳しい欧州企業など、グローバルなリーディングカンパニーと比較した場合、目標の野心度(特にScope 3目標の網羅性や削減率)、再生可能エネルギー導入のスピード、サーキュラーエコノミーへの移行度、生物多様性保全への体系的なアプローチ(影響評価や定量目標の設定)といった点では、更なる向上の余地が見られる可能性がある。したがって、国内外の幅広い競合企業との詳細な比較分析を通じて、SHIの相対的な強みと弱みを客観的に把握することが不可欠である。
近年、産業界全体で環境への取り組みが加速しており、特に先進的な企業は以下のような取り組みを推進している。これらはSHIが目指すべき方向性を考える上で参考となる。
気候変動:
SBTi認定: パリ協定の目標達成に整合する科学的根拠に基づいた削減目標(SBT:Science Based Targets)を設定し、SBTイニシアチブ(SBTi)から認定(特に1.5℃目標)を取得する。
Scope 3管理: サプライチェーン全体での排出量を網羅的に算定し、特に影響の大きいカテゴリ(例:カテゴリ1 購入した製品・サービス、カテゴリ4 輸送・配送(上流)、カテゴリ11 販売した製品の使用など)について具体的な削減目標を設定し、サプライヤーとの協働などを通じて削減を推進する。
RE100達成: 事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際イニシアチブ「RE100」に加盟し、長期的な電力購入契約(PPA)や自己託送、自家発電など具体的な手法を組み合わせた達成ロードマップを策定・実行する。
バリューチェーン連携: サプライヤーに対して環境データ開示や削減目標設定を要請するエンゲージメントプログラムを実施し、バリューチェーン全体での排出削減を図る。
次世代技術投資: 水素、アンモニア、合成燃料(e-fuel)といった次世代エネルギーの利用技術や、CCUS技術に関する研究開発投資を積極的に行い、実証プロジェクトなどを通じて社会実装を目指す。
ICP導入: 社内炭素価格(ICP:Internal Carbon Pricing)制度を導入し、投資判断や事業計画策定において気候変動リスク・コストを考慮に入れる。
資源循環:
サーキュラービジネスモデル: 従来の「作って、使って、捨てる」という線形経済モデルから脱却し、製品のサービス化(PaaS:Product as a Service)、シェアリング、リマニュファクチャリング(再製造)、アップグレードサービスなどを通じて、製品価値の最大化と資源消費の最小化を目指すビジネスモデルへの転換を図る。
エコデザイン: 製品の設計・開発段階から、省資源、長寿命化、分解・修理の容易性、リサイクル材の使用、リサイクルしやすさなどを考慮したエコデザインを導入・徹底する。
再生材利用: 製品に使用する再生材の比率について具体的な目標を設定し、その実績を開示する。
クローズドループ: 使用済み製品や製造工程で発生する廃棄物を回収し、再び自社の製品原料として利用する閉じた循環(クローズドループリサイクル)システムを構築する。
ウォータースチュワードシップ: 単なる水使用量の削減に留まらず、流域レベルでの水リスク評価に基づき、地域社会や他の水利用者と連携しながら、持続可能な水資源管理(ウォータースチュワードシップ)に取り組む。
生物多様性:
TNFD提言対応: 自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の提言フレームワークに沿って、自社の事業活動が自然資本や生物多様性にどのように依存し、影響を与えているかを評価し、それに関連するリスクと機会を特定・管理するための戦略、指標、目標を開示する。
サプライチェーン管理: 特に原材料調達(鉱物資源、農林水産物など)が生物多様性に与える影響(森林破壊、土地利用変化、水質汚染など)を評価し、リスクの高いサプライヤーに対するエンゲージメントや、持続可能な調達認証の取得などを通じてリスクを管理する。
ネイチャーポジティブ目標: 事業活動による生物多様性への負の影響を実質ゼロにする(No Net Loss)だけでなく、積極的に自然資本の回復・向上に貢献する「ネイチャーポジティブ」な目標を設定する。
自然資本会計: 自然資本の価値を経済的に評価し、経営判断に組み込む「自然資本会計」の導入を検討する。
生態系保全・再生: 事業拠点内外における生態系の保全・再生プロジェクトへ積極的に投資・参画する。
これらのベストプラクティスは、単に環境規制に対応したり、環境負荷を低減したりするだけでなく、事業戦略そのものやバリューチェーン全体を巻き込んだ、より本質的な変革を目指すものである。SHIの現在の取り組みと比較検討することで、具体的な改善の余地や、将来的に目指すべき戦略的な方向性を特定するための重要な示唆が得られる。特に、Scope 3排出量の網羅的な管理と削減、サーキュラーエコノミー型ビジネスモデルへの移行、そして体系的な生物多様性管理は、多くの製造業にとって今後の競争力を左右する重要な課題となるであろう。
企業の環境パフォーマンスや情報開示の状況は、CDP、MSCI、Sustainalytics、EcoVadisといった外部のESG評価機関によって評価され、スコアリングされている。これらのスコアは、投資家や金融機関が投資判断を行う際や、企業が自社の立ち位置を確認し改善点を見出す上で重要な指標となる。
情報収集: まず、SHI自身および上記で特定した主要な競合企業について、主要なESG評価機関が付与している環境関連のスコアや評価レポートを調査・収集する必要がある。SHIに関しては、EcoVadis社から「ブロンズ」評価を受けていることが確認されている 。他の評価機関(CDP、MSCI、Sustainalyticsなど)における評価状況も把握することが重要である。
比較分析: 各評価機関は独自の評価基準やスコアリング手法を用いているため、その違いを理解した上で、SHIと競合他社のスコアを比較する。特に、気候変動、資源循環(水、廃棄物)、生物多様性といった本報告書の重点分野に関連する項目別の評価やレーティングに着目し、相対的な強み・弱みを分析する。
評価要因の分析: スコアの高低に繋がった具体的な要因を特定することが重要である。評価機関が公表している評価レポートやフィードバック(入手可能な場合)を参照し、どのような取り組みや情報開示が高く評価され、逆にどのような点が課題として指摘されているのかを分析する。例えば、目標設定の野心度、定量的な実績データの開示、リスク管理プロセスの具体性、ガバナンス体制などが評価のポイントとなることが多い。
SHIがEcoVadisからブロンズ評価を受けていること は、同評価機関の基準において改善の余地があることを示唆している。他の主要な評価機関におけるスコアや評価内容を把握し、特に高い評価を得ている競合企業とのギャップを詳細に分析することで、SHIが優先的に取り組むべき課題がより明確になる。評価機関が重視する開示項目(例:定量データの網羅性、目標の具体性、第三者保証の有無、リスク管理プロセスの詳細など)を的確に理解し対応していくことは、単にスコアを改善するだけでなく、実質的な環境パフォーマンスの向上とステークホルダーからの信頼獲得の両面に不可欠である。
これまでの分析を踏まえ、SHIが現在直面している主要な環境課題を整理し、今後の取り組み強化に向けた戦略的な提言を行う。
SHIは環境課題に対して様々な取り組みを進めている一方で、以下のような課題に直面していると考えられる。
排出量削減と事業成長の両立: 2022年度の国内CO2総排出量目標が未達に終わったこと が示すように、生産活動の拡大に伴う環境負荷の増加を抑制し、設定した絶対量削減目標を着実に達成していくことが大きな課題である。効率改善だけでは限界があり、より抜本的な対策が求められる。
Scope 3 排出量管理の深化: ライフサイクル排出量の大部分(99%)を占める製品使用時(Scope 3 カテゴリ11)の排出量削減 は最重要課題の一つであるが、それだけでなく、原材料調達(カテゴリ1)や輸送・配送(カテゴリ4)など、他の重要なカテゴリを含むScope 3全体の排出量を正確に把握し、具体的な削減策を策定・実行していく必要がある。現在、カテゴリ11以外の目標設定を検討中である ことから、今後の進展が注目される。
再生可能エネルギー導入の加速: 2050年カーボンニュートラルという長期目標 の達成に向けては、国内外の事業拠点における再生可能エネルギーの利用比率を大幅に向上させる必要がある。現在の電力購入 や自家発電導入に加え、より積極的かつ大規模な導入計画の策定と実行が課題となる。
サーキュラーエコノミーへの移行: 従来の3R(リデュース、リユース、リサイクル)を中心とした廃棄物削減活動 から、製品の設計思想、ビジネスモデル、サプライチェーン全体を巻き込んだ、より包括的なサーキュラーエコノミー戦略へと移行していくことが求められる。
生物多様性への体系的アプローチ: 拠点周辺での緑化や清掃活動 に加え、事業活動やバリューチェーン全体が生物多様性に与える影響(依存度とインパクト)を科学的に評価し、リスクを管理するとともに、具体的な貢献目標を設定し、体系的に取り組んでいく必要がある。
情報開示の高度化: TCFD への対応は進めているが、今後、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)などの新たなフレームワークへの対応や、ESG評価機関、投資家など、ステークホルダーからの要求水準の高まりに応じた、より詳細かつ定量的な情報開示(特にScope 3排出量、資源循環の進捗、生物多様性への影響など)が課題となる。
環境事故の撲滅: 2022年度に環境事故が6件発生し、中期計画目標が未達となったこと から、環境リスク管理体制を一層強化し、環境事故の発生を根絶することが喫緊の課題である。
上記の課題に対応し、SHIが環境パフォーマンスをさらに向上させ、持続的な成長を実現するために、以下の戦略的な方向性を提言する。
気候変動:
Scope 1 & 2: 省エネルギー活動の継続・深化に加え、非化石エネルギーへの転換を加速するための具体的なロードマップを策定し、開示することを推奨する。具体的には、再生可能エネルギー電力の購入契約(PPAなど)の拡大、拠点における太陽光発電設備の増強、可能な範囲での熱源の電化や水素・アンモニア等への転換検討などが考えられる。また、インターナルカーボンプライシング(ICP)の導入を検討し、投資判断における気候変動要因の組み込みを強化することも有効である。
Scope 3: カテゴリ11(製品使用)の排出量削減に向けて、製品の高効率化、電動化、軽量化などの技術開発を一層強化する。同時に、主要なサプライヤーと連携し、排出量データの収集や削減目標の設定・達成を支援する「サプライヤーエンゲージメントプログラム」を導入し、カテゴリ1(購入した製品・サービス)などの排出量削減を協働で推進する。算定対象カテゴリを拡大し、信頼性・比較可能性の高いデータに基づき、SBTi認定の取得を目指すことを推奨する。
資源循環:
製品ライフサイクル思考の徹底: 製品のライフサイクルアセスメント(LCA)評価を強化し、その結果を製品設計にフィードバックする体制を構築する。設計段階から、資源効率、耐久性、修理・分解の容易性、リサイクル材の使用、リサイクル適性などを考慮した「エコデザイン」を徹底する。
再生材利用の拡大: 製品に使用する再生材(金属、プラスチックなど)の利用率について、具体的な数値目標を設定し、その達成に向けた調達戦略や技術開発を推進する。
サーキュラービジネスモデルの検討: 従来の製品売り切り型モデルに加え、リマニュファクチャリング(再製造)事業の本格展開、製品の修理・アップグレードサービスの拡充、あるいは製品のサービス化(PaaS)といった、サーキュラーエコノミーに貢献する新たなビジネスモデルの検討・試行を開始する。
水リスク管理の高度化: 国内外の事業拠点および主要なサプライチェーン拠点について、水リスク(渇水、水質など)評価を詳細に実施する。特にリスクが高いと特定された地域においては、具体的な水使用量削減目標や水質管理計画を策定し、実行するとともに、その進捗を開示する。
生物多様性:
影響評価と情報開示: TNFDフレームワークなどを参考に、自社の事業活動およびバリューチェーンが生物多様性・自然資本に与える依存度と影響度を評価するパイロットプロジェクトを開始し、体系的な評価手法の確立を目指す。
サプライチェーン管理強化: 主要な原材料(特に鉱物資源や土地利用変化リスクの高い素材)の調達における生物多様性リスク(例:関連する森林破壊、生態系破壊)を特定し、持続可能な調達方針(認証材の利用拡大、リスクの高いサプライヤーへのエンゲージメントなど)を強化する。
貢献目標の設定検討: 将来的には、生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ」に貢献するための、具体的な中長期目標(例:事業活動エリア内外での生態系再生への投資・貢献量)の設定を検討する。
横断的課題:
データ管理と開示: 環境関連データ、特にScope 3排出量、資源循環指標(リサイクル率、再生材利用率など)、生物多様性関連指標について、収集・管理体制を強化し、開示情報の網羅性、信頼性、比較可能性を高める。信頼性向上のため、第三者保証の対象範囲を拡大することも検討する 。
インセンティブ設計: 環境目標の達成度を、経営層や関連部門の従業員の業績評価や報酬に連動させる仕組みを検討し、全社的な取り組み意欲と責任感を向上させる。
ステークホルダーエンゲージメント: ESG評価機関や投資家との対話を強化し、評価改善に向けた課題や期待を的確に把握するとともに、自社の取り組みや進捗を積極的に発信する。
住友重機械工業株式会社(SHI)は、2050年カーボンニュートラル目標の設定 、TCFD提言への賛同 、国内拠点におけるゼロエミッションの継続達成 など、地球規模の環境課題に対して、企業として重要なコミットメントを示し、具体的な取り組みを進めている。特に、国内の廃棄物管理やエネルギー効率の改善においては着実な成果を上げており、環境負荷低減に向けた努力がうかがえる。
一方で、本報告書の分析が示す通り、SHIが今後取り組むべき課題も少なくない。事業成長とCO2総排出量削減の両立 、ライフサイクル排出量の大部分を占めるScope 3排出量の管理と削減の深化 、再生可能エネルギー導入の更なる加速 、廃棄物削減から一歩進んだサーキュラーエコノミーへの本格的な移行、そしてバリューチェーン全体を視野に入れた体系的な生物多様性への対応 などは、今後の重要な課題である。また、国際的なフレームワークやステークホルダーの要求水準に対応した、より高度な情報開示も求められている。国内外の競合他社の動向や業界のベストプラクティスとの比較からも、SHIが更なる取り組み強化を通じて競争力を高めていくべき領域が示唆されている。
本報告書で提示した分析結果と提言が、SHIにおける環境パフォーマンスの一層の向上、環境関連リスクの低減、そして環境課題解決に貢献する新たな事業機会の創出に繋がり、ひいては同社の持続的な企業価値向上に貢献することを期待する。気候変動、資源制約、生物多様性の損失といった課題への積極的かつ戦略的な対応は、社会からの信頼を獲得し、将来にわたる強固な成長基盤を築く上で不可欠な要素である。SHIがその技術力と事業基盤を活かし、これらの課題解決をリードしていくことが期待される。
2023年 | 36,272t-CO2 |
2022年 | 38,419t-CO2 |
2021年 | 37,418t-CO2 |
2023年 | 120,631t-CO2 |
2022年 | 151,681t-CO2 |
2021年 | 156,518t-CO2 |
2023年 | 76,761,104t-CO2 |
2022年 | 80,561,862t-CO2 |
2021年 | 137,175,145t-CO2 |
スコープ1+2 CORの過去3年推移
2023年 | 145kg-CO2 |
2022年 | - |
2021年 | 108kg-CO2 |
スコープ3 CORの過去3年推移
2023年 | 70,974kg-CO2 |
2022年 | - |
2021年 | 76,290kg-CO2 |
スコープ1+2のCOA推移
2023年 | 131kg-CO2 |
2022年 | - |
2021年 | 86kg-CO2 |
スコープ3のCOA推移
2023年 | 63,922kg-CO2 |
2022年 | - |
2021年 | 61,135kg-CO2 |
2023年 | 1兆815億円 |
2021年 | 1兆7981億円 |
2021年 | 1兆7981億円 |
2023年 | 327億円 |
2021年 | 498億円 |
2021年 | 498億円 |
2023年 | 1兆2009億円 |
2021年 | 2兆2438億円 |
2021年 | 2兆2438億円 |
すべての会社と比較したポジション
業界内ポジション
CORスコープ1+2
CORスコープ3
CORスコープ1+2
CORスコープ3
COAスコープ1+2
COAスコープ3
COAスコープ1+2
COAスコープ3