GX RESEARCH
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更新日: 2025/6/5

デンソー

6902.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
環境スコア420
売上
7,144,733百万円
総資産
9,093,370百万円
営業利益
380,599百万円

COR(売上高炭素比率)

年間CO2排出量(kg)÷ 売上高(百万円)
Scope1+2
60kg
Scope3
4,577kg

COA(総資産炭素比率)

年間CO2排出量(kg)÷ 総資産(百万円)
Scope1+2
47kg
Scope3
3,596kg

Scope1

事業者自らによる直接排出
342,000t-CO2
2023年実績

Scope2

エネルギー消化に伴う間接排出
86,000t-CO2
2023年実績

Scope3

事業者の活動に関連する他社の排出
32,702,000t-CO2
2023年実績

スコープ3カテゴリー別データ

カテゴリー2021年度2022年度2023年度
1購入した製品・サービス
10,642,000
9,930,000
(712,000)
10,293,000
(363,000)
2資本財
1,217,000
1,262,000
(45,000)
1,357,000
(95,000)
3燃料・エネルギー関連活動
239,000
235,000
(4,000)
353,000
(118,000)
4輸送・配送(上流)
1,069,000
1,351,000
(282,000)
862,000
(489,000)
5事業から発生する廃棄物
40,000
27,000
(13,000)
56,000
(29,000)

国際イニシアティブへの参加

check
SBT
RE100
EV100
EP100
UNGC
check
30by30
check
GXリーグ

ガバナンス・フレームワーク開示

check
サステナビリティ委員会
check
TCFD・IFRS-S2
TNFD
潜在的環境財務コスト(シナリオ別試算)
2023年度排出量データ: スコープ1(342,000t)、 スコープ2(86,000t)、 スコープ3(3270万t)
低コストシナリオ
想定単価: 3,000円/t-CO₂
スコープ1:10.3億円
スコープ2:2.6億円
スコープ3:981.1億円
総額:993.9億円
売上高比率:1.39%
中コストシナリオ
想定単価: 5,000円/t-CO₂
スコープ1:17.1億円
スコープ2:4.3億円
スコープ3:1635.1億円
総額:1656.5億円
売上高比率:2.32%
高コストシナリオ
想定単価: 10,000円/t-CO₂
スコープ1:34.2億円
スコープ2:8.6億円
スコープ3:3270.2億円
総額:3313億円
売上高比率:4.64%
※潜在的環境財務コストは、仮想的なカーボンプライシングシナリオをもとに算出した参考値です。

環境への取り組み

SBT認定

デンソー、Scope3排出量削減目標でSBT認定取得、サプライチェーン全体でCO2削減へ

デンソーは、サプライチェーン全体のCO2排出量(Scope3)を2030年度までに2020年度比25%削減する目標を設定し、科学的根拠に基づく目標イニシアチブ(SBTi)から認定を取得しました。2050年度までのサプライチェーン全体でのカーボンニュートラルも目指し、Scope1・2目標に加え、気候変動対策を加速します。

データ駆動型スマート農業の推進

デンソーとデルフィー、データ駆動型スマート農業推進で基本合意、気候変動影響にも対応

デンソーとオランダのデルフィー社は、データ駆動型スマート農業の推進に関する基本合意書を締結しました。気候変動などによる農業生産の不安定化に対応するため、デンソーのセンシング技術やデジタルツインを活用し、栽培環境の最適化を目指します。2030年までのシステム実現を目標としています。

気候変動関連のリスク・機会

※掲載情報は公開資料をもとに作成しており、全てのリスク・機会を網羅するものではありません。 より詳細な情報は企業の公式発表をご確認ください。

リスク

移行リスク

自動車業界の環境規制強化は大きなリスクです。例えば、2030年に電動化率が47%と想定される中、規制に適合できない場合、約3,000億円規模の財務的影響(販売機会損失)が試算されています。また、電気自動車(EV)へのシフトに伴う従来の内燃機関(ICE)部品の需要減少や、異業種からの参入による競争激化も市場リスクとなります。さらに、炭素税や排出量取引制度の導入・強化によるカーボンプライシングリスクとして、約120億円の財務影響が見込まれています。

物理的リスク

サイクロンや洪水といった異常気象の頻発化・深刻化は、国内外の工場操業停止やサプライチェーン寸断の物理的リスクを高めます。特に、デンソーの生産拠点の65%が集中する日本およびアジア地域での影響が懸念され、これにより約1,200億円規模の財務的影響が生じる可能性が試算されています。これらのリスクは、事業継続に対する直接的な脅威となります。

機会

電動化車両(EV、HEV、FCEV)やe-fuel、水素、バイオ燃料といった代替燃料に対応するシステム・コンポーネントへの需要増大は大きな事業機会です。特にインバータやサーマル関連製品、ヒートポンプシステムの需要拡大により、2025年度には約3,000億円の財務的貢献が期待されます。また、水素製造・利用技術(SOEC、SOFC)や、資源循環を促進するトレーサビリティ技術、省エネルギー効果の高い生産技術(Factory-IoT導入等で年間約1,020億円のコスト削減効果)も成長機会です。さらに、食農・FA分野や水素ビジネスといった非車載領域への事業多角化により、2030年度には約3,000億円規模の財務的貢献を目指しています。

目標

デンソーは、スコープ1および2のCO2排出量を2030年度までに2020年度比で50%削減し、さらに2035年度までには電力・ガスを含めた生産活動(モノづくり)におけるカーボンニュートラルを(カーボンクレジットを使用せずに)達成することを目標としています。スコープ3排出量については、2030年度までに2020年度比で25%削減し、2050年度までにはサプライチェーン全体でのカーボンニュートラル実現を目指します。また、グローバルでの再生可能エネルギー電力比率を2025年度までに100%に引き上げることも目標に掲げています。

環境アナリストレポート

株式会社デンソーの環境戦略分析:気候変動、資源循環、生物多様性への対応

1. はじめに

本報告書の目的と構成

本報告書は、株式会社デンソー(以下、デンソーと記載)の環境戦略、特に「気候変動」「資源循環」「生物多様性」という3つの重点分野における具体的な取り組みと実績を、包括的に分析および評価することを目的としています。収集されたデータおよびその分析結果は、デンソーの環境パフォーマンスに関するスコア算定の基礎資料として活用されることを意図しており、同時に学術的視点からの詳細な考察を提供することを目指します。

デンソーは、自動車部品業界におけるグローバルリーダーとして、その事業活動が環境に与える影響の大きさを認識し、長年にわたり環境経営を推進してきました。本報告書は、同社の環境へのコミットメントが実際の戦略や活動にどのように反映され、それがどの程度の成果を上げているのか、また、どのような課題に直面しているのかを明らかにします。この分析は、単に企業の公表情報を整理するだけでなく、業界のベストプラクティスや科学的知見との比較を通じて、デンソーの取り組みの実効性や網羅性を批判的に検討することも含みます。このような学術的アプローチは、企業の環境パフォーマンスをより深く理解し、将来の戦略策定に資する洞察を得るために不可欠です。

報告書の構成は以下の通りです。まず、デンソーの環境戦略全体の概要を把握するため、同社の「エコビジョン」や長期環境方針、そしてTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)およびTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)提言への対応状況について詳述します。次に、3つの重点分野である「気候変動」「資源循環」「生物多様性」それぞれについて、具体的な取り組み内容、目標、実績を詳細に分析します。続いて、これらの環境要因に関連する潜在的なリスクと事業機会を考察し、業界他社の先進事例との比較を行います。さらに、競合他社の環境戦略と環境評価スコアを分析し、デンソーのポジションを相対的に評価します。最後に、現状の課題を評価し、将来に向けた提言を行うことで、本報告書を締めくくります。この構造により、読者はデンソーの環境への取り組みを多角的に理解し、その評価を行うことができるでしょう。

2. デンソー株式会社の環境戦略概要

エコビジョンと環境長期方針

デンソーの環境経営は、その時々の社会情勢や環境問題の進展に応じて進化を遂げてきた「エコビジョン」と、それに基づく長期方針によって方向づけられています。同社は1993年に「環境憲章」および「環境への取り組み行動計画」を策定して以来、環境活動を継続的に推進しており 1、現在は「デンソーエコビジョン2025」がその中核をなしています 3。このエコビジョンは、2050年を見据えた持続可能な地域社会の実現に向けた2025年までの行動計画として位置づけられています 4

「エコビジョン2025」では、達成すべき3つの主要目標として「ターゲット3」が設定されています。これは、「エネルギー1/2」、「クリーン2倍」、「グリーン2倍」から構成されていましたが、脱炭素化への世界的な潮流加速を踏まえ、「エネルギー1/2」は「カーボンニュートラル」の視点を加えた目標へと引き上げられました 4。これらの目標を「製品」「工場」「社員」「経営」の各段階で実現するため、10項目の具体的な行動計画「アクション10」が推進されています 3。この「アクション10」は、究極の燃費性能の追求、CO2ゼロものづくり、低炭素なくらし・移動の実現、エコマテリアル&ローエミッション、ミニマム環境負荷生産、環境意識・知識・スキルの向上、自然環境調和プロダクトの開発、緑・自然豊かな職場の実現、自然共生アクション、そしてこれらを支える環境マネジメント(エコマネジメント、エコプロダクツ、エコファクトリー、エコフレンドリー)といった多岐にわたる分野を網羅しています 3

デンソーの環境戦略におけるこのような長期的な視点と段階的な目標設定は、同社が環境課題に対して継続的に取り組んできた姿勢を示すものです。特に「エネルギー1/2」から「カーボンニュートラル」への目標引き上げは、パリ協定以降の国際的な動向や社会からの要請の高まりに対する企業の対応力を示す事例と言えます。しかしながら、これらの野心的な目標、とりわけ「カーボンニュートラル」や「グリーン2倍」(生物多様性に関連)の達成は、「アクション10」がグローバルサプライヤーとしてのデンソーの事業活動の複雑性、特にスコープ3排出量や基本的なリサイクルを超える真の資源循環といった課題に、どれほど具体的かつ効果的に対応できるかにかかっています。これらの目標が単なるスローガンに終わらず、実質的な環境負荷削減につながるためには、「アクション10」の各項目が、デンソーのあらゆる事業部門、そしてバリューチェーン全体において、測定可能でインパクトのある成果を生み出すよう設計・実行される必要があります。

サステナビリティ推進体制とガバナンス

デンソーの環境戦略を実効性あるものとするためには、強固な推進体制とガバナンスが不可欠です。同社は、全社安全衛生環境委員会を中心とした環境経営推進体制を構築しています 9。この委員会は、代表取締役副社長が委員長を務め、経営幹部、海外地域本社の社長、グループ会社の環境管理責任者などが出席し、年2回開催されます。委員会では、方針策定、活動進捗の確認、個別課題とその解決策について議論が行われます 9。さらに、エネルギー分科会、物流分科会、クリーン製品分科会、生産環境分科会といった専門分科会が設置され、各事業分野における課題への対応方針策定や全社的な取り組み推進を担っています 9

気候変動関連の課題については、取締役会が会社の目標を決定し、戦略審議会・役員検討会、年度計画全社審議会で方針・戦略・計画を審議し、経営審議会および取締役会で目標の達成状況をモニタリングするというプロセスが確立されています 10。また、リスク管理に関しては、CRO(チーフ・リスク・オフィサー)を委員長とするリスク管理会議が設置され、グループ全体のリスク管理体制・枠組みの改善確認や重要リスク管理活動の方向性決定などを推進しています 11

これらの委員会や会議体の設置は、デンソーが環境課題や関連リスクを経営の重要事項として認識していることを示しています。特に、TCFD報告書で言及されているように、CO2排出量や削減量を事業ポートフォリオの評価軸に据え、定期的に議論・推進している点は、環境要因を経営戦略に統合しようとする積極的な姿勢の表れです 10。しかしながら、これらのガバナンス体制が真に有効であるかは、環境目標と短期的な財務目標が相反する可能性のある場面において、環境配慮を優先する意思決定が実際に行われるか、そして、気候変動だけでなく、資源循環や生物多様性といった広範な環境課題が、全ての主要な投資判断や戦略的意思決定にどれだけ深く組み込まれているかによって評価されるべきです。CROやリスク管理会議の存在は評価できますが、環境リスクが財務リスクや戦略リスクと同等、あるいはそれ以上に重要な経営リスクとして全社的に認識され、対応策が講じられているかが問われます。

TCFD提言・TNFD提言への対応

デンソーは、環境関連のリスクと機会に対する理解を深め、透明性の高い情報開示を行うため、国際的なフレームワークへの対応を積極的に進めています。気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)には2019年に賛同を表明し、その提言に沿った情報開示を継続しています 10。具体的には、IEA(国際エネルギー機関)やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の外部シナリオを参照し、自社の中長期戦略と照合しながらシナリオ分析を実施し、気候変動が事業に及ぼす重要項目を機会とリスクに分類しています 10

さらに、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)に関しても、そのフレームワークを活用した取り組みを進めています。2022年10月からはEYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社と協働し、TNFDが推奨するLEAPアプローチ(Locate:自然との接点の特定、Evaluate:依存度・影響の評価、Assess:リスク・機会の評価、Prepare:対応と報告)を用いた試行分析を開始しました 1。この分析では、特に上流の原材料調達(例:ボーキサイト)における生物多様性リスクなどが特定されています 12

デンソーによるTCFDおよびTNFDへの積極的な対応は、企業が直面する環境関連の財務的影響を体系的に把握し、経営戦略に統合しようとする先進的な姿勢を示すものです。特にTNFDへの早期の取り組みは、生物多様性を含む自然資本に関するリスクと機会への対応において、業界をリードする可能性を秘めています 1。TCFD分析では、電動化技術への需要増による2025年度3,000億円の財務的機会や、異常気象による1,200億円規模の潜在的損失リスクなどが具体的に示されており 10、これらの分析結果が実際の経営判断に活用されていることがうかがえます。

しかしながら、これらの高度な分析フレームワークの価値は、分析結果が具体的な企業行動へと転換され、バリューチェーン全体にわたる実質的な変革を促すかどうかにかかっています。TNFDに関しては、現状は「試行分析」の段階であり 12、その分析結果が、例えばボーキサイトのような特定された高リスク原材料の調達方針の見直し、代替材料への研究開発投資の加速、あるいはサプライヤーとのエンゲージメント強化といった具体的な行動にどれだけ結びついているか、今後の展開が注目されます。TCFD/TNFD分析から得られた洞察を、パイロットプロジェクトや総論的な方針表明に留めることなく、調達、研究開発、設備投資といった事業の根幹に関わる意思決定プロセス全体に深く組み込むことが、真の価値創造に向けた次なる重要なステップとなるでしょう。

3. 気候変動への具体的な取り組みと実績

CO2排出量削減目標と実績(スコープ1・2・3、SBT認定)

デンソーは、気候変動対策を経営の最重要課題の一つと位置づけ、バリューチェーン全体でのCO2排出量削減に取り組んでいます。同社は、科学的根拠に基づく目標設定イニシアチブ(SBTi)から、その削減目標の認定を受けています。

2023年度におけるデンソーグループ全体の温室効果ガス総排出量(全スコープ)は約46億kg CO2​eでした 13。内訳を見ると、スコープ1(事業者による直接排出)およびスコープ2(他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出)の合計排出量は、2023年度(デンソーグループ全体)で146.0万トンであり、そのうちデンソー単体のスコープ1排出量は34.2万トン、スコープ2排出量は8.6万トンでした 14。これに対し、スコープ3(スコープ1・2以外の間接排出、サプライチェーン排出量)は、2023年度(デンソーグループ全体)で3270.2万トンに達し、その大部分を「製品使用時」の排出(1923.9万トン)と「購入した物品・サービス」からの排出(1029.3万トン)が占めています 14

デンソーがSBTi認定を受けた目標は以下の通りです。

  • スコープ1および2排出量:2030年度までに2020年度比で50%削減し、さらに2035年度までには電力・ガスを含めた生産活動(モノづくり)におけるカーボンニュートラルを(カーボンクレジットを使用せずに)達成する 10

  • スコープ3排出量:2030年度までに2020年度比で25%削減し、2050年度までにはサプライチェーン全体でのカーボンニュートラル実現を目指す 10

目標達成状況については、モノづくり(スコープ1・2)におけるCO2排出量2020年度比50%削減目標を2023年度に達成しました 10。デンソー単体ではこの目標を3年前倒しで達成し、グループ会社全体でも2024年度目標を2年前倒しで達成するなど、スコープ1・2排出量の削減は順調に進んでいます 14

デンソーのスコープ1・2排出量削減における前倒しでの目標達成は特筆すべき成果です。これは、同社の生産現場における省エネ活動や再生可能エネルギー導入の努力が実を結んだ結果と言えるでしょう。しかしながら、データが示す通り、デンソーのカーボンフットプリントの大部分はスコープ3排出量によって構成されており、その規模はスコープ1・2排出量の約22倍にも及びます 14。この事実は、デンソーの真の脱炭素化がスコープ3排出量の抜本的な削減にかかっていることを明確に示しています。「製品使用時」と「購入した物品・サービス」がスコープ3の二大排出源であることを考慮すると、顧客である自動車メーカーとの連携による製品使用時エネルギー効率の更なる向上、そして広範なサプライヤーネットワークとの協調による調達段階での排出量削減が不可欠です。現状のスコープ3排出量25%削減目標(2030年度)は、その排出量の規模やバリューチェーン全体でのカーボンニュートラルという長期目標から見ると、1.5℃目標との整合性を確実にするためには、より野心的な中間目標の設定や、削減努力の一層の加速が求められる可能性があります。

再生可能エネルギー導入の進捗

デンソーは、スコープ2排出量削減の柱として、再生可能エネルギーの導入を積極的に推進しています。2020年度には0.6%であった再生可能エネルギー電力比率を、2025年度までに100%に引き上げるという非常に意欲的な目標を掲げています 13

この目標達成に向け、国内外の工場で再生可能エネルギー導入が進められています。具体的には、安城製作所、西尾製作所、広瀬製作所、株式会社デンソー福島、そして欧州全域のデンソーグループ工場では2022年度(2023年3月期)までにカーボンニュートラルを達成しました。これに続き、高棚製作所、大安製作所、幸田製作所、善明製作所、湖西製作所においても2023年度(2024年3月期)にカーボンニュートラルを達成しています 5。これらの達成は、再生可能電力の購入や、一部カーボンクレジットの活用によるものと推察されます。加えて、太陽光発電設備の導入拡大や自家発電の推進も積極的に行われています 5

2025年度までにグローバルで再生可能エネルギー電力100%という目標は、2020年度の低いベースラインから考えると極めて野心的です。特に、欧州の工場群が先行してカーボンニュートラルを達成している一方で 5、日本国内の複数工場や、北米、アジア(日本を除く)といった再生可能エネルギーのインフラや市場メカニズムが多様な地域での展開が今後の鍵となります。このような短期間での大規模な目標達成には、再生可能エネルギー証書(REC)の購入や電力購入契約(PPA)への依存度が高まる可能性があります。デンソーは自家発電やPPAの活用にも言及しており 5、これらは一般的にRECよりも環境的な追加性(新たな再生可能エネルギー発電容量の創出への貢献)が高いと評価されます。今後、目標達成に向けた具体的な調達手段の構成比率(自家発電、PPA、RECの種別など)や、特にRECを利用する場合のその品質(例:由来地域、発電技術、追加性の有無)に関する透明性の高い情報開示が、デンソーの再生可能エネルギー戦略の真の環境貢献度を評価する上で重要となるでしょう。

モノづくり(生産活動)における排出削減策

デンソーは、その強みである「モノづくり」の思想と技術力を活かし、生産活動におけるCO2排出量削減に注力しています。その中核となるのが「モノづくりカーボンニュートラルロードマップ」であり、「省エネ推進」「エネルギー創出検証」「再生可能エネルギー調達」の3つを柱としています 5

省エネ活動は徹底されており、エネルギー供給部門から使用部門まで全従業員が参加する形で推進されています。特筆すべきは、デンソー独自の「エネルギーJIT(Just-in-Time)活動」です 5。これは、生産変動に応じて必要な時に必要な量のエネルギーだけを供給するという考え方で、無駄なエネルギー消費を徹底的に排除するものです。また、生産工程の技術開発も継続的に行われており、2023年度(2024年3月期)には全社で2,730件もの省エネ改善が実施されました 5。これらの取り組みの結果、2025年度を目標としていたエネルギー使用量の原単位半減(2012年度比CO2排出量原単位1/2、「エネルギーハーフ」)は、2023年度に3年前倒しで達成されました 5

デンソーが長年培ってきたJIT生産方式の哲学をエネルギー管理に応用した「エネルギーJIT」は、革新的な取り組みと言えます 2。この効率性と無駄の排除を追求する企業文化は、生産現場における脱炭素化を推進する上で大きな競争優位性をもたらしています。「エネルギーハーフ」目標の前倒し達成は、その有効性を如実に示しています 5。今後の課題は、この厳格なJIT的思考を、資源循環やスコープ3排出量の管理といった、より複雑で外部要因の多い領域にいかに展開していくかという点です。例えば、製品の循環性を高めるためには、生産プロセスの効率化だけでなく、設計段階からの思想の転換や、サプライヤー、さらには最終消費者との連携が不可欠となります。

製品・技術開発による貢献(電動化製品、水素関連技術等)

デンソーは、自動車のライフサイクル全体でCO2排出量が最も多いとされる製品使用段階での排出量削減に貢献するため、電動化製品や水素関連技術をはじめとする環境配慮型製品・技術の開発を積極的に推進しています。

電動化分野では、ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(BEV)、燃料電池自動車(FCEV)といったxEV向け製品の開発に注力しています。具体的には、インバータ、バッテリーの温度を最適に管理するサーマルマネジメントシステム、エネルギー損失の少ないSiC(炭化ケイ素)パワー半導体などが挙げられます 10。これらの高効率な電動化コンポーネントは、車両の電費向上に直接的に貢献します。

水素関連技術においては、トヨタ自動車のFCEV「MIRAI」に多くのデンソー製部品が搭載されている実績があります 17。さらに、水素をエネルギー源とする社会の実現を見据え、水素から電気を生成する固体酸化物形燃料電池(SOFC)や、電気から水素を製造する固体酸化物形電解セル(SOEC)といった次世代技術の開発も進めています 5。これらの技術は、運輸部門だけでなく、産業部門や家庭部門におけるクリーンエネルギー利用の拡大にも貢献する可能性があります。

加えて、e-fuel(合成燃料)やバイオ燃料といったカーボンニュートラル燃料に対応するエンジン制御システムなどの開発も手掛けており 10、既存の内燃機関技術の脱炭素化にも取り組んでいます。

デンソーが電動化技術(EV部品)と水素技術(FCEV部品、SOEC/SOFC)の両方に多大な投資を行っていることは、複数の脱炭素化経路における市場リーダーシップを狙う戦略と言えます 5。これは、将来のパワートレイン構成が依然として流動的である自動車業界において、リスクを分散しつつ多様な機会を捉えようとするものです。しかしながら、このデュアルストラテジーは、一方の技術が他方よりも急速に市場に普及した場合、リソースの分散や投資効率の低下を招くリスクも内包しています。BEVとFCEVのどちらが将来の主流となるか、あるいは地域や車両セグメントによって棲み分けが進むのかは未だ不透明です。両分野への投資は、市場の動向を正確に予測し、状況に応じてリソースを柔軟に再配分する能力が成功の鍵となります。この戦略の巧拙が、デンソーの長期的な競争力を左右する重要な要素となるでしょう。

インターナルカーボンプライシングの活用

デンソーは、企業活動における炭素排出の経済的価値を内部的に認識し、低炭素化への投資を促進する手段として、インターナルカーボンプライシング(ICP)制度を2021年より導入しています 5。この制度は、主に省エネルギー設備投資などの投資判断基準として活用されており、CO2排出削減に貢献するプロジェクトの採択を後押しすることを目的としています。

ICPの導入は、企業が自主的に炭素コストを経営に取り込む先進的な取り組みとして評価できます。しかし、その実効性は、設定される炭素価格の水準と、その適用範囲の広さに大きく依存します。ICP価格が低すぎる場合や、適用対象が一部の省エネ設備投資などに限定される場合、従来の投資収益性が高い炭素集約型のプロジェクトからの大幅なシフトを促すには不十分かもしれません。デンソーのTCFD報告書では、ICPがCO2排出削減に寄与する投資を加速させると述べられていますが 10、具体的な炭素価格の水準や、全ての主要な設備投資判断への適用の有無については、開示されている情報からは必ずしも明確ではありません。ICPがデンソーの脱炭素化戦略において真に強力な推進力となるためには、その価格設定根拠や適用範囲に関する透明性を高め、企業全体の投資ポートフォリオを低炭素型へ転換させる明確な効果を示すことが期待されます。

物流におけるCO2排出削減

デンソーは、サプライチェーンにおける物流過程でのCO2排出量削減にも取り組んでいます。主な施策として、トラックの積載率向上、輸送ルートの最適化による省エネ輸送の実施、生産地移管による納入先への輸送距離短縮、工場や中継倉庫間の物流効率化などが挙げられます 5。日本国内の物流業務は、子会社である株式会社デンソーロジテムに委託し、連携してこれらの改善活動を推進しています 6

これらの取り組みは、物流効率改善を通じた排出量削減に寄与するものです。しかし、デンソー本体の物流CO2排出量の実績を見ると、2022年度(2023年3月期)には増加し、2023年度(2024年3月期)に減少に転じるなど、変動が見られ、継続的な削減の難しさを示唆しています 14。物流分野における一層の脱炭素化を進めるためには、従来の効率化策に加え、より抜本的なアプローチの検討が求められます。例えば、一部ルートにおける電気トラックや水素トラックといった低炭素燃料車の導入可能性の検討、航空貨物における持続可能な航空燃料(SAF)の利用、さらにはグローバルな調達・生産ネットワークの最適化による根本的な輸送距離の最小化などが考えられます。現状の取り組みは重要であるものの、将来の戦略においては、低炭素な輸送手段への投資や、輸送に伴う排出量を考慮した戦略的な調達判断など、よりシステム的な変革を視野に入れることが望ましいでしょう。

CDP気候変動スコアと外部評価

デンソーの気候変動への取り組みは、外部評価機関からも高い評価を得ています。国際的な非営利団体CDPによる気候変動質問書への回答において、デンソーは3年連続で最高評価である「Aリスト」企業に選定されています 18。これは、同社の気候変動戦略、リスク管理、排出削減努力、そして情報開示の透明性が国際的に高い水準にあることを示しています。

CDPにおけるリーダーシップは、デンソーの環境マネジメントと情報開示の質の高さを裏付けるものです。一方で、ムーディーズによるセカンドオピニオン(SPO)では、デンソーのサステナブルファイナンス・フレームワークにおける一部プロジェクト(電動化や先進安全技術など)の環境・社会便益に関する報告指標が、直接的な環境負荷削減量(例:削減されたCO2トン数)ではなく、売上高の増加率に基づいている点が指摘されています 21。これは、デンソーが高い総合評価を得ている一方で、特定の成果報告においては、そのインパクトをより直接的かつ定量的に示すための改善の余地があることを示唆しています。投資家やその他のステークホルダーは、企業の環境活動がもたらす具体的な成果に対してより強い関心を持つようになっているため、報告指標の精緻化は、デンソーの取り組みの価値をさらに高める上で重要です。

4. 資源循環への具体的な取り組みと実績

サーキュラーエコノミー推進戦略

デンソーは、持続可能な社会の実現に向けて、製品のライフサイクル全体を通じた資源効率の最大化を目指すサーキュラーエコノミー推進戦略を掲げています 3。特に注目されるのは、「Car to Car」サーキュラーエコノミーの構想です 22。これは、使用済み自動車(ELV)から回収された部品や素材を、再び新しい自動車の生産に利用することを目指すものであり、資源の閉鎖系ループを自動車産業内で完結させようとする野心的な取り組みです。

この「Car to Car」ビジョンは、真のサーキュラーエコノミー原則に合致するものであり、デンソーの先進性を示すものです。しかしながら、自動車のサプライチェーンは極めて複雑であり、車両に使用される素材の多様性、ELVの効率的な収集・解体システムの構築、そして高純度な再生材の経済的な回収といった多くのシステム的な課題が存在します。デンソーが開発中の自動精密解体システムのような技術革新は、これらの課題解決に向けた重要な一歩ですが、戦略の完全な実現には、業界横断的な連携、政策による後押し、さらには消費者の行動変容やELV管理システムの変革も不可欠となります。デンソーのビジョンは称賛に値するものの、その達成には企業単独の努力を超えた、社会システム全体の変革が求められることを認識する必要があります。

製品ライフサイクル全体での資源効率化(自動精密解体システム、バッテリーライフサイクル管理等)

デンソーは、製品ライフサイクル全体での資源効率化を目指し、革新的な技術開発を進めています。

自動精密解体システム:

このシステムは、デンソーが長年培ってきたロボティクスとAI認識・判断技術を応用し、ELVから高純度かつ高品質なリサイクル材を大量かつ低コストで抽出することを目的としています 22。従来、ELVの解体は手作業が多く、素材分離の精度に限界がありましたが、本システムでは、シュレッダー処理される前に、ロボットが精密な解体と選別を行います。特に高純度プラスチックの回収に注力し、車両重量の約90%を再利用可能にすることを目指しています 22。この技術は、デンソーの医療用手術支援ロボット「iArmS」や手術室情報連携プラットフォーム「OPeLiNK」で培われた知見が活かされています 22。2027年までには主要作業の自動化と事業基盤の確立を完了し、将来的には海外展開も視野に入れています 22。このシステムは、解体事業者がこれまで未利用であった資源を高純度再生原料へと転換し、高速選別・出荷を可能にすることで、サーキュラーエコノミーの実現に大きく貢献することが期待されます。

バッテリーライフサイクル管理:

電気自動車(EV)の普及に伴い、使用済みバッテリーの適切な処理と資源有効活用が喫緊の課題となっています。デンソーは、バッテリーの健康状態(State of Health: SOH)診断技術を核として、バッテリーの再利用(リユース)、再製品化(リパーパス)、そしてリサイクルを促進する包括的なライフサイクル管理システムの構築に取り組んでいます 23。SOH診断技術は、バッテリーの劣化状態を精密に評価し、再利用に適しているか、あるいは他の用途(例:電動アシスト自転車、コンビニエンスストア向け蓄電池など)に再製品化できるかを判断します 23。これにより、バッテリー資源を最大限に活用し、最終的なリサイクルへとつなげるシームレスな循環を目指しています。特に、国内でのEVバッテリー資源循環の確立に注力しており、バッテリーサプライチェーン協議会(BASC)への参画などを通じて、自動車メーカーや業界団体との連携を強化しています 23。

これらの技術開発は、デンソーを資源循環分野におけるテクノロジーリーダーとして位置づけるものです。自動精密解体システムの成功は、多様な車種や部品に対するAIの学習能力と、解体事業者にとっての経済的実行可能性にかかっています。同様に、バッテリーSOH診断技術の普及には、バッテリーデータの標準化とアクセス、そして自動車メーカー間の協力が不可欠です。デンソーがBASCに参画していることは 23、業界連携に向けた前向きな動きと言えるでしょう。これらの先進的な取り組みが、業界全体の資源循環を加速させるためには、技術的な成熟度向上に加え、経済的なインセンティブ設計や関連法規の整備、そして業界標準の策定が重要な要素となります。

環境配慮設計とエコ材料の使用(植物由来樹脂等)

デンソーは、製品開発の初期段階から環境負荷低減を意識した設計(エコデザイン)を推進し、エコ材料の活用にも積極的に取り組んでいます。製品の小型化・軽量化、省資源化は、車両の燃費向上やライフサイクル全体での環境負荷削減に直結するため、継続的なテーマとして追求されています 3

特に注目されるのは、植物由来樹脂の研究開発と一部製品への実用化です 17。デンソーは、デンプンを原料とするバイオポリカーボネートや、ヒマシ油を原料とするウレタン樹脂などを開発し、ラジエータータンクなどの自動車部品に適用しています 2。これらの植物由来樹脂は、枯渇性資源である石油への依存を低減するだけでなく、植物が生育過程でCO2を吸収するため、仮に焼却処理(サーマルリサイクル)された場合でも、大気中のCO2総量を増加させない「カーボンニュートラル」な特性を持つとされています 17

植物由来樹脂の採用は、化石燃料依存からの脱却という点で評価できる取り組みです。しかし、これらのバイオベースマテリアルの環境影響を総合的に評価するためには、ライフサイクルアセスメント(LCA)の実施が不可欠です。原料となる植物の栽培過程における土地利用の変化(例:食料生産との競合、森林破壊リスク)、水消費量、肥料や農薬の使用による環境負荷、そして最終的な廃棄時の処理方法(既存のリサイクルシステムとの整合性、生分解性の有無と条件など)といった多角的な視点からの検証が求められます。「熱回収しても大気中のCO2を増やさない」という特性は 17 一つの利点ですが、それ以外の環境側面についても透明性の高い情報開示が期待されます。特に、代替燃料・原料開発において「生物多様性に十分配慮する」との言及があることから 2、植物由来プラスチックについても、原料栽培地の持続可能性認証の取得など、具体的な配慮がなされているかの確認が重要です。

廃棄物削減と再資源化の取り組み(ゼロエミッション活動等)

デンソーは、生産活動に伴う廃棄物の削減と再資源化を推進するため、「ゼロエミアドバンス」と名付けたリサイクル指向型の資源利用プログラムを展開しています 3。これは、工場から排出される廃棄物を可能な限り削減し、資源として有効活用することを目指す活動です。

具体的な事例として、デンソー岩手では、溶剤の回収・精製による再利用技術を導入したり、製造工程で使用した硫酸を社内の排水処理薬品として再利用したりするなどの工夫により、ゼロエミッション(単純埋立廃棄物ゼロ)を継続しています 25

デンソーグループ全体(国内)の産業廃棄物に関する実績を見ると、2023年度(2024年3月期)の総排出量に対し、再資源化率は99.97%という非常に高い水準を達成しています 14。これは、デンソーの生産拠点における徹底した分別とリサイクルへの取り組みの成果と言えます。

国内事業所における99.97%という高い資源リサイクル率は 14、デンソーの優れた内部廃棄物管理体制を示すものです。デンソー岩手における溶剤回収のような具体的な取り組みは 25、その好例と言えるでしょう。これは「エコファクトリー」としての効率性を反映しています。しかし、サーキュラーエコノミーの観点から見ると、自社工場から出る生産廃棄物の管理に留まらず、デンソーが製造・販売した製品が最終的にどのように処理され、資源として循環しているかという、製品ライフサイクル全体での廃棄物削減と資源化がより大きな課題となります。この課題は、製品の設計段階でのリサイクル容易性の考慮、使用素材の選択、そして自動精密解体システムのような技術の実用化と普及に密接に関連しています。

水資源の有効活用と管理

デンソーは、水資源の持続可能な利用に向けて、使用量の削減と効率的な管理に取り組んでいます。グローバルでの水使用量および排水量の実績は継続的にモニタリングされており 14、具体的な削減目標も設定されています。例えば、デンソー岩手では、2023年度末時点で2015年度比65%という大幅な水使用量削減を達成しています 25

グループ全体としては、第7次連結環境行動計画(2025年度目標、2026年3月期目標)において、グローバルでの水投入量原単位(売上高当たり)を2019年度比で2.1%削減すること、水リスクが高いと特定された拠点においては水投入量原単位(生産量当たり)を同12.5%削減することを目標として掲げています 26。さらに、サプライヤーに対しても、事業活動における水排出量や消費量に関する意識調査を定期的に実施し、バリューチェーン全体での水リスク低減を図っています 27

デンソーの水管理戦略は、削減目標の設定やサプライヤーへの働きかけに加え、TNFDの試行分析においてWRI(世界資源研究所)のAqueductのようなツールを活用した水リスク評価を取り入れるなど 12、高度化の兆しを見せています。これらのリスク評価を、特に水ストレスの高い地域に立地する全ての自社工場およびサプライヤー工場に対する具体的な水管理目標(コンテキストベース・ウォーターターゲット)へと落とし込み、単なるデータ収集に留まらない積極的な水スチュワードシップ活動をバリューチェーン全体で展開していくことが、今後の重要なステップとなります。現状のグローバル原単位目標(例:売上高あたり2.1%削減 26)は、水ストレスの高い地域においては必ずしも十分とは言えない可能性があるため、地域ごとの水事情を考慮した目標設定と対策の強化が望まれます。

CDP水セキュリティスコアと外部評価

デンソーの水資源管理に関する取り組みは、CDPの水セキュリティ質問書への回答においても高く評価されており、気候変動分野と同様に3年連続で最高評価である「Aリスト」に選定されています 18。この評価は、同社の水リスク管理体制、水使用量の削減努力、そして関連情報の開示における先進性を示すものです。

CDP水セキュリティにおける「Aリスト」獲得は、デンソーの優れた水管理と情報開示を客観的に示すものです。このリーダーシップを維持・強化するためには、TNFDフレームワークに基づく水関連リスク評価(特にバリューチェーン上流における水リスク)の結果を 12、具体的な水戦略へとさらに深く統合し、その進捗を明確に示すことが求められます。例えば、原料調達先やバイオベース素材の栽培地域など、自社の直接的な事業活動範囲外ではあるものの水リスクが高いと特定された領域において、どのような緩和策を講じているのか、あるいはどのような目標を設定しているのかといった情報開示は、デンソーの包括的な水スチュワードシップを示す上で重要性を増すでしょう。

5. 生物多様性保全への具体的な取り組みと実績

生物多様性保全方針と活動

デンソーは、事業活動と自然環境との共生を目指し、生物多様性保全に関する方針を定め、具体的な活動を推進しています。その基盤となるのが「デンソーグループ生物多様性ガイドライン」であり、これは愛知目標後の国際的な枠組みも踏まえて適宜改訂が検討されています 28。また、近年の自然資本への関心の高まりを受け、TNFDのLEAPアプローチを活用し、事業が自然に与える影響や自然への依存度、関連するリスクと機会の分析にも着手しています 1。これらの活動は、「デンソーエコビジョン2025」における「グリーン2倍」目標とも連動し、地球環境の保全に貢献することを目指しています 1

デンソーがTNFDへの早期対応を進めていること 1、そして長年にわたり「デンソー緑のプロジェクト」のような地域密着型の保全活動を継続していること 29 は、生物多様性への基本的なコミットメントを示すものです。TNFDの試行分析を通じて、特に原材料調達といったバリューチェーン上流における生物多様性リスク(例:ボーキサイト採掘の影響 1)を認識したことは重要な進展です。これまでの生物多様性への取り組みが「主にCSRの観点から」と捉えられていたものから 1、「企業経営と直結する」との認識へと移行しつつあることは評価できます。今後の課題は、この認識の変化を、単なる「グリーン」活動の推進に留まらず、原材料調達方針の策定、代替材料の研究開発、新規事業拠点選定といった中核的な経営判断プロセスに生物多様性の観点を本格的に統合し、具体的な指標と目標を設定していくことです。

生態系保全活動(デンソー緑のプロジェクト、水域保全、事業拠点緑化等)

デンソーは、地域社会や従業員と連携し、多様な生態系保全活動を国内外で展開しています。

  • デンソー緑のプロジェクト: 2006年から継続されているこの活動は、デンソーの生物多様性保全活動の代表例です。社員とその家族、NPO、地域住民が一体となり、森林育成活動や自然体験イベントなどを実施しています。2024年6月までに61回のイベントが開催され、延べ9,223人が参加しました 29。このプロジェクトでは、地域固有の苗木を用いた自然配植技法にこだわった緑化が行われています 30

  • 国内外拠点での植林・緑化活動: ドイツ、イギリス、イタリアといった欧州、ブラジル、そしてシンガポール、タイ、マレーシア、フィリピン、インドなどのアジア諸国を含む、世界各地の事業拠点で植林活動や緑化活動が実施されています 28。特にタイやマレーシアでは、沿岸部のマングローブ林を保護するための植林活動に多くの従業員が参加しています 28

  • 水域保全活動: 豊橋製作所では、絶滅危惧種であるアカウミガメの産卵地保全のため、2007年からNPO法人表浜ネットワークと協働し、環境保全活動を推進しています 29。その他、国内外の事業所近隣の河川や湾など、野生生物が生息する水域の環境保全・美化活動も行われています 29

  • 「自然と共生する工場」認定制度: デンソーは独自の基準に基づき、生物多様性保全に積極的に取り組む工場を「自然と共生する工場」として認定しています。2023年度(2024年3月期)までに、デンソー半田製作所(愛知県)、アイシンカナダ(ACI)、アイシンケミカルインディアナ(ACIN)など、国内外で合計4拠点が認定されました 26。デンソー半田製作所のエコトープは、環境省の「自然共生サイト」にも認定されています 26

これらの広範な植林活動や地域の生態系保全プロジェクトは 28、従業員の環境意識向上や地域社会との連携強化に貢献する価値ある取り組みです。しかし、これらの活動が企業全体のグローバルな事業活動やバリューチェーンが持つ環境フットプリントと比較して、どの程度の生態学的インパクトを持つのかを客観的に評価することも重要です。活動の成果を最大化するためには、単に植樹本数といった活動量だけでなく、在来種の利用、生態系の連結性への貢献、そして長期的なモニタリングに基づく保全効果の検証が求められます。「地域性苗木による自然配植技法にこだわった緑化活動」30 や「自然と共生する工場」認定制度 26 は、質を重視する良い方向性を示しています。

サプライチェーンにおける生物多様性リスク・機会の評価と対応(TNFDフレームワーク活用)

デンソーは、TNFDのLEAPアプローチを用いた試行分析を通じて、サプライチェーンにおける生物多様性への依存度、影響、そしてそれに伴うリスクと機会の特定を進めています。この分析では、特に海外における原材料(例:アルミニウムの原料となるボーキサイト)の採掘場所での生態系破壊リスクや、土地・海上輸送に伴う外来種の移動リスクなどが認識されました 12

一方で、これらのリスク認識は新たな事業機会の特定にも繋がっています。例えば、鉱物資源への依存度を低減するための代替技術の開発や、環境負荷のより低い採掘技術への需要の高まりなどが機会として認識されています 12

これらの分析結果は、全社安全衛生環境委員会で審議され、重要なリスクについてはリスク管理会議で具体的な対応策が検討される体制となっています 12

ボーキサイト採掘のような上流工程に焦点を当てたTNFD試行分析は 12、バリューチェーンにおける生物多様性リスクを具体的に把握するための重要な第一歩です。真の課題は、この分析アプローチを、レアアース、銅、プラスチック、植物由来樹脂の原料となるバイオマスなど、他の主要な原材料へと拡大し、その結果を実際の調達方針、サプライヤー契約、そして代替材料の研究開発へと統合していくことです。現状では、分析結果を「委員会へ報告する」12 という段階にあり、サプライチェーンにおける生物多様性への影響を軽減するための具体的な緩和策や数値目標は、まだ十分に策定・開示されていない状況です。今後、これらの分析結果に基づき、より踏み込んだ調達基準の設定やサプライヤーエンゲージメントプログラムの展開が期待されます。

「30by30アライアンス」への参画と貢献

デンソーは、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全するという国際目標「30by30」の達成に貢献するため、日本政府主導の「30by30アライアンス」に参画しています 28

アライアンスへの参画を通じて、デンソーは事業所敷地内外での緑化活動の推進や、従業員の環境意識向上を目的とした研修などを実施し、生物多様性保全への貢献を目指しています 28

「30by30アライアンス」への参加は 28、国や国際社会の目標にコミットする積極的な姿勢を示すものです。デンソーの貢献をよりインパクトのあるものにするためには、自社敷地内の緑化や従業員教育といった活動 28 に加え、同社の事業活動やサプライチェーンが生物多様性に大きな影響を与えている可能性のある地域において、大規模な保護地域やOECM(その他の効果的な地域ベースの保全措置)の新規設定や管理改善を積極的に支援することが考えられます。これには、デンソーが持つ資金力や技術的専門知識の活用も期待されます。30by30目標の本質は広範で生態学的に重要なエリアの保全であり、企業は自社が保有する土地の保全管理、外部の保全プロジェクトへの資金提供、そして自社のサプライチェーンが30by30目標地域やその周辺に負の影響を与えないようにすることを通じて貢献できます。

6. 環境関連のリスクと機会の分析

気候変動関連リスク(規制強化、市場変動、物理的リスク)と事業機会

デンソーは、気候変動が事業に及ぼす多面的なリスクを認識し、それに対応する事業機会の創出にも注力しています。TCFD提言に沿った分析では、これらのリスクと機会が財務的影響とともに具体的に評価されています 10

リスク:

  • 規制リスク: 世界各国で自動車産業に対する環境規制(燃費基準、排ガス規制など)が強化・加速しており、これに対応できない場合、製品の販売機会の損失や市場シェアの低下に繋がる可能性があります 10。デンソーの分析では、2030年に電動化率が47%になると想定した場合、規制不適合による販売数減少のリスクとして3,000億円規模の財務影響が試算されています 10。また、環境税の導入・拡大もコスト増要因となります。

  • 市場リスク: 電気自動車(EV)へのシフトが進む中で、従来の内燃機関(ICE)関連部品の需要が減少するリスクがあります 33。同時に、IT企業など異業種からの参入も増加しており、競争環境は激化しています 31

  • 物理的リスク: サイクロンや洪水といった異常気象の頻発化・深刻化により、国内外の工場操業停止やサプライチェーンの寸断が生じるリスクがあります。特に、生産拠点の65%が集中する日本およびアジア地域での影響が懸念され、1,200億円規模の財務影響が試算されています 10

  • カーボンプライシングリスク: 炭素税や排出量取引制度の導入・強化が世界的に進むことで、製品の炭素コストが付加され、コスト競争力が低下するリスクがあります。これによる財務影響は120億円と試算されています 10

機会:

  • 電動化・新燃料対応: EV、ハイブリッド車(HEV)、燃料電池車(FCEV)などの電動化車両や、e-fuel、水素、バイオ燃料といった代替燃料に対応するシステム・コンポーネントへの需要増大は大きな事業機会です 10。特にインバータやサーマル関連製品、ヒートポンプシステムの需要拡大が見込まれ、2025年度には3,000億円の財務的貢献が期待されています 10

  • カーボンニュートラル貢献技術: 水素製造・利用技術(SOEC、SOFCなど)や、資源循環を促進するトレーサビリティ技術など、カーボンニュートラル社会の実現に貢献する新技術への期待が高まっています 31

  • 高効率生産技術: 省エネルギー効果の高い生産技術(Factory-IoT導入など)への需要も増加しています 10。デンソー自身も、「エコビジョン2025」で掲げたエネルギー原単位半減目標の達成により、年間約165万トンのCO2排出量と1,020億円のエネルギーコスト削減効果を見込んでいます 10

  • 事業多角化: 自動車分野で培った環境技術を応用し、食農・FA(ファクトリーオートメーション)分野や水素ビジネスといった非車載領域での事業機会創出も目指しており、2030年度には3,000億円規模の財務的貢献を見込んでいます 10

デンソーがTCFDに基づき気候関連リスクと機会を財務的に定量化していることは 10、経営における気候変動課題の統合が進んでいることを示しています。しかし、その根底には、従来の内燃機関部品における強みから、電動化や新エネルギーソリューションにおけるリーダーシップへと転換するという大きな経営課題が存在します。「電動化対応の遅れ」33 や異業種からの競争圧力 31 は、この転換期における重大なリスクです。この課題を乗り越えるためには、単なる技術開発に留まらず、事業ポートフォリオの変革、場合によっては既存事業からの戦略的撤退といった俊敏な経営判断が求められます。加えて、洪水などの物理的リスク 10 やサプライチェーンの混乱 11 は、既存事業と新規事業の双方に影響を及ぼす可能性があり、レジリエンス強化の重要性を増しています。非自動車分野への多角化 10 はリスクヘッジとして有効ですが、新たな市場での競争力を確立するための能力開発も同時に必要となります。

資源循環・資源枯渇に関するリスクと事業機会

資源の有限性やサプライチェーンの複雑化は、デンソーにとって重要な経営課題であり、同時に新たな事業機会も提示しています。

リスク:

  • 原材料調達リスク: 3TG(タンタル、錫、タングステン、金)、コバルト、マイカといった紛争鉱物や、その他の懸念鉱物(特に電動化に伴い需要が増加するリチウム、ニッケル、レアアースなど)の調達においては、人権侵害や環境破壊といったESGリスクが伴います 27。これらの鉱物のサプライチェーンは複雑で不透明な場合が多く、安定供給や価格変動のリスクも存在します 11

  • 規制対応リスク: 各国で化学物質規制やリサイクル関連法規が強化される傾向にあり、これらへの対応コストが増加する可能性があります 27

機会:

  • サーキュラーエコノミー型ビジネス: 自動精密解体システムやバッテリーの再利用・リサイクルといった、資源循環を前提とした新しいビジネスモデルの確立は、新規市場の創出に繋がります 22

  • 代替材料の開発・実用化: 植物由来樹脂のようなサステナブルな代替材料の開発と実用化は、枯渇性資源への依存度を低減し、製品の環境負荷を削減する機会となります 17

  • グリーン調達の推進: サプライヤーに対してグリーン調達基準の遵守を求めることで、バリューチェーン全体での環境負荷を低減し、デンソーブランドの価値向上に貢献できます 27

電動化に不可欠なリチウム、コバルト、レアアースといったクリティカルマテリアルのサプライチェーンにおけるESGリスクは、今後ますます増大すると予想されます。デンソーは紛争鉱物対応プログラムを有していますが 27、これらの新興クリティカルマテリアルに対しても、サプライヤー調査の範囲拡大に留まらず、より踏み込んだトレーサビリティの確保やデューディリジェンスの実施が求められます。バッテリーパスポートのような技術の活用 23 や、責任ある鉱物調達のための国際的なイニシアチブへの積極的な参加・貢献は、リスク軽減と持続可能な調達体制の構築に不可欠です。

生物多様性損失に関するリスクと事業機会

生物多様性の損失は、地球環境の健全性を損なうだけでなく、企業の事業活動にも直接的・間接的な影響を及ぼす重要なリスクとして認識されつつあります。デンソーはTNFDフレームワークの試行分析を通じて、この課題への対応を進めています 1

リスク:

  • サプライチェーンにおけるリスク: TNFD試行分析の結果、特に海外の原材料調達先(例:ボーキサイト採掘)における生態系破壊や水資源への負の影響が、潜在的なリスクとして認識されました 12

  • 事業活動による直接的負荷: 工場の建設・操業に伴う土地利用の変化や、大気・水域への汚染物質排出などが、地域生態系に負荷を与える可能性があります。

  • 規制・社会的圧力の増大: 生物多様性保全に関する法規制の強化や、投資家・消費者からの情報開示要求、具体的な対策実施への圧力が高まる可能性があります。

機会:

  • 先進的リスク管理と情報開示: TNFDフレームワークへの早期対応は、自然関連リスクの先進的な管理体制を構築し、透明性の高い情報開示を行うことで、投資家や社会からの信頼を高める機会となります 1

  • 代替技術・材料の開発: 生物資源を活用した代替燃料や原料(例:植物由来プラスチックラジエータータンク)の開発は、天然資源への依存度を低減し、環境負荷の少ない製品を提供する機会となります 2

  • 地域社会との連携強化: 「デンソー緑のプロジェクト」のような生態系保全活動を通じて、地域社会との良好な関係を構築し、企業ブランドイメージを向上させることができます 28

  • 長期的なレジリエンス向上: 自然資本への依存度や影響を正確に評価し、その結果を事業戦略に統合することで、気候変動や資源枯渇といった長期的な環境変化に対する企業のレジリエンス(強靭性)を高めることができます 12

デンソーがTNFD分析を通じて、特にボーキサイトのような上流の原材料調達における高い生物多様性リスクを特定したことは 12、極めて重要な認識です。これに対応する機会として、当該資源への依存度を低減する技術開発や、より環境負荷の低い採掘方法の採用・支援が挙げられます 12。しかし、これらの代替策は、既存の確立された材料やサプライヤーと比較して、短期的にはコスト増を招いたり、技術的成熟度が低かったりする可能性があります。ここに、短期的なコスト効率と、長期的な生物多様性リスクの緩和および機会獲得との間のトレードオフが生じます。このバランスをどのように取るかが、デンソーの持続可能性戦略の成否を左右するでしょう。

評判リスクと企業の社会的責任

企業の環境パフォーマンスは、その評判や社会的評価にますます大きな影響を与えるようになっています。

リスク:

  • 環境目標の未達成、環境関連法令の違反、あるいは広範なサプライチェーンにおける環境問題や人権侵害が発覚した場合、デンソーの企業評判は大きく損なわれる可能性があります 11。2023年度には重大な環境関連法違反や訴訟問題はなかったと報告されていますが 35、グローバルに展開するサプライチェーンのリスク管理は継続的な課題です。

機会:

  • 高い環境パフォーマンスを達成し、その取り組みと成果を透明性をもって積極的に情報開示することは、企業価値およびブランドイメージの向上に繋がります 1。CDPにおける高評価やTNFDへの早期参画は、デンソーの評判資本を構築する上で有利に働いています。また、持続可能性へのコミットメントは、優秀な人材の獲得や維持にも貢献します 32

デンソーがCDPで高い評価を得ていることや、TNFDへの積極的な関与は 1、良好なレピュテーションの構築に寄与しています。しかし、自動車業界全体が厳しい監視下に置かれている現在、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーといった野心的な目標と実際の進捗との間にギャップが生じたり、広大なグローバルサプライチェーン 11 で問題が発生したりすれば、この評判は急速に損なわれる可能性があります。ムーディーズによるSPOで、一部のインパクト報告が間接的(売上ベース)であるとの指摘があったことは 21、ステークホルダーがより直接的なインパクト指標を求める中で、小さな脆弱性となり得ます。このような外部からの指摘に真摯に対応し、改善を図ることが、評判リスクを管理し、信頼を維持する上で重要です。

7. 自動車部品業界における環境先進事例

自動車部品業界においても、環境問題への対応は企業存続に関わる重要な経営課題として認識され、先進的な企業は気候変動対策、資源循環、生物多様性保全の各分野で意欲的な取り組みを進めています。

気候変動対策の先進的取り組み事例

  • ボッシュ (Bosch): グローバル規模で2020年にスコープ1および2排出量におけるカーボンニュートラルを達成しました 36。これは、エネルギー効率の向上、再生可能エネルギーによる自家発電、グリーン電力の購入、そして最終手段としてのカーボンクレジット活用という4つのレバーを組み合わせることで実現されました 36。さらに、スコープ3排出量についても、2030年までに2018年比で30%の絶対量削減という野心的な目標を掲げています 37。サプライヤーに対してもグリーン電力への切り替えを強く要請するなど 40、バリューチェーン全体での脱炭素化を推進しています。

  • コンチネンタル (Continental AG): 2020年から全世界の自社拠点で100%再生可能エネルギー由来の電力を購入しています 41。2040年までに生産活動でのカーボンニュートラル、2050年までにバリューチェーン全体でのカーボンニュートラル達成を目標としています 41

  • ZFフリードリヒスハーフェン (ZF Friedrichshafen AG): 2040年までにスコープ1、2、3全てを含むクライメートニュートラル(気候中立)を目標としています 40。特にサプライヤーに対しては、2025年までに100%グリーン電力への移行を求めるなど、サプライチェーンにおける排出削減に積極的に関与しています 40

これらの事例から、主要な競合他社が自社事業所(スコープ1・2)の脱炭素化に留まらず、サプライチェーン全体(スコープ3)の排出削減にも積極的に取り組んでいることが明らかです。特に、ボッシュやZFのようにサプライヤーに対して再生可能エネルギーの使用を具体的に要求する動きは、業界全体の脱炭素化を加速させる上で重要な意味を持ちます。デンソーもサプライヤーエンゲージメントを進めていますが 16、これらの競合他社の取り組みと比較して、その要求水準や具体的な進捗管理がどの程度厳格であるかは、スコープ3排出量の大部分を占める「購入した物品・サービス」の削減目標達成において鍵となります。

資源循環(サーキュラーエコノミー)の先進的取り組み事例

  • ヴァレオ (Valeo): 「4Rプラン」(Robust Design: 堅牢設計、Remanufacturing: 再製造、Repair: 修理、Recycle(d): リサイクル・再生材利用)を掲げ、製品の長寿命化と資源保全を推進しています 45。年間100万個以上の製品を再製造しており、この数字を10年以内に倍増させる目標を持っています 45。また、「SUSTAINera」というラベルを導入し、サーキュラーエコノミー部品の利用を促進しています 46。例えば、ステランティスと共同開発したフロントガラス搭載型再製造ビデオカメラは、新品と比較して天然資源の使用量を最大99%削減できると報告されています 46

  • ZFフリードリヒスハーフェン (ZF Friedrichshafen AG): 世界20ヶ所以上の拠点で再製造事業を展開しており、2022年には5,500種類以上の製品を再製造し、約32,000トンのCO2排出量削減に貢献しました 46

  • ボッシュ (Bosch): 機械部品の再製造による製品寿命の延長、EVバッテリーリサイクル、持続可能な製品設計の事例として「Quigo Green」(小型レーザー測定器)の開発など、多岐にわたる取り組みを行っています 37

  • その他業界動向: 自動車メーカー(OEM)においても、ルノーグループが Choisy-le-Roi 工場で廃車部品を再製造し、最大80%の材料を再利用している事例 48 や、BMWがEVにリサイクルプラスチックを積極的に使用している事例 48 があります。部品業界全体としても、設計段階からの分解・再利用の容易化、リサイクル材利用率の向上、ELVからの材料回収効率の改善などが進められています 48

ヴァレオやZFのような企業は、大規模かつ成熟した再製造事業を展開し、顕著な資源節約とCO2排出削減効果を上げています 46。デンソーはELV向けの革新的な自動精密解体技術の開発 22 やバッテリーライフサイクル管理 23 に注力していますが、これら競合他社と比較して、自社が販売した多様なコンポーネントに対する再製造プログラムの規模や成熟度については、さらなる情報収集と分析が必要です。「部品リビルド事業の拡大」との言及はあるものの 2、その具体的な内容や規模は必ずしも明確ではありません。自社製品の再製造は、リサイクルよりも高い価値を保持しつつ資源循環を実現する重要な戦略であり、デンソーにとってもELV解体やバッテリー管理を補完する形で強化すべき分野と考えられます。

生物多様性保全の先進的取り組み事例

  • ボルボ・カーズ (Volvo Cars) (OEM事例): TNFD提言を自動車メーカーとして早期に採用し、サプライチェーン全体での生物多様性への負の影響回避・低減と自然再生への積極的な貢献をコミットしています 51。具体的には、2030年までに全生産車両における平均リサイクル材利用率30%達成、事業活動から排出される廃棄物の99%以上を再利用またはリサイクル、自動車1台あたりの水使用量を2018年比で50%削減といった数値目標を掲げています 51

  • フォルクスワーゲングループ (Volkswagen Group) (OEM事例): 2025年より年間最大2,500万ユーロ規模の生物多様性基金を設立し、外部の保全プロジェクトを支援する計画です 52。また、自社の生産拠点およびサプライチェーンにおける生物多様性の向上にも取り組んでおり、2007年から継続的に生物多様性保全プロジェクトを支援しています 52

  • コンチネンタル (Continental AG): 自然回復ソリューションを提供するLand Life社と共同で、植林作業を効率化するロボットを開発しています 53。これは、技術革新を通じた生物多様性保全への貢献事例です。

  • アストラゼネカ (AstraZeneca) (他業種事例): 製薬企業ですが、サプライチェーンにおける生物多様性へのコミットメントとして参考になります。2024年までにバリューチェーン全体の生物多様性リスクおよび依存度を体系的に評価するためのフレームワークを開発することを約束し、主要な森林破壊リスク産品(紙・パルプ包装材、パーム油など)について、2025年までに森林破壊フリー(deforestation-free)を達成することを目指しています 54

  • 業界全体の動向: 世界経済フォーラムなどの報告書では、自動車セクターが自然ポジティブへの移行に果たすべき役割として、事業活動による影響の回避・低減(水管理の改善、汚染の回避・削減、生物多様性の評価・計画・管理の強化、GHG排出削減の加速)、原材料による影響の回避・低減(循環性の拡大、サプライヤーエンゲージメント、責任ある調達)、製品提供の変革、自然保護・再生への支援、セクター横断的な協力などが挙げられています 51

ボルボやVWのような先進的なOEMは、自社拠点での緑化活動に留まらず、サプライチェーンにおける持続可能性に関する野心的な数値目標(例:ボルボのリサイクル材利用率や廃棄物削減目標 51)を設定したり、大規模な社外の自然保護・再生プロジェクトへの資金提供(例:VWの生物多様性基金 52)を行ったりするなど、より広範な生態系への影響に対する責任を果たす方向へとシフトしています。デンソーによるTNFDへの対応は重要な第一歩ですが、これをバリューチェーン全体での具体的な生物多様性影響削減目標(例えば、ボーキサイトや植物由来樹脂の調達に関する目標)の設定や、「デンソー緑のプロジェクト」を超える規模での自然保護・再生への直接投資へと繋げていくことが、業界のベストプラクティスに伍していく上で求められます。

8. 競合他社の環境への取り組みと環境スコア分析

デンソーの環境パフォーマンスを客観的に評価するためには、同業他社の取り組みとの比較が不可欠です。ここでは、主要な自動車部品サプライヤーであるボッシュ、コンチネンタル、ZFフリードリヒスハーフェン、アイシン、ヴァレオ、マグナ・インターナショナルを対象に、各社の環境戦略、具体的な取り組み、実績、そして外部機関による環境評価スコアを分析し、デンソーの相対的な位置づけを考察します。

主要競合企業の環境戦略、具体的取り組み、実績

  • ボッシュ (Bosch Group / Robert Bosch GmbH):

  • 戦略: ボッシュは、2020年にスコープ1および2排出量においてカーボンニュートラルを達成したことを宣言しています 36。スコープ3排出量については、2030年までに2018年比で30%の絶対量削減を目指すという野心的な目標を設定しています 37。循環経済の推進と水消費量の削減も重要な戦略的柱です 37

  • 気候変動への取り組み: エネルギー効率の改善(2030年までに累計1.7 TWhのエネルギー削減目標に対し、2024年時点で1,144 GWhを達成)、再生可能エネルギーによる自家発電(2024年に197 GWh発電)、グリーン電力の購入(2024年に電力需要の99.5%をカバー)、そして残余排出量のカーボンオフセットによってカーボンニュートラルを維持しています 36

  • 資源循環への取り組み: 部品の再製造(リマニュファクチャリング)、EV用バッテリーのリサイクル、リサイクル材の利用推進(例:カーバイド生産において自社発生のリサイクル材を20%使用)など、多岐にわたる活動を展開しています 36

  • 生物多様性への取り組み: 環境リスク分析の一環として、IPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム)が定義する生物多様性損失の要因(気候変動、環境汚染、天然資源の利用・搾取、土地利用変化、外来種の拡大)について全報告対象拠点を評価し、TNFDやSBTN(Science Based Targets Network)のガイドラインを参照しています 37

  • コンチネンタル (Continental AG):

  • 戦略: 2040年までに生産活動におけるカーボンニュートラル、2050年までにバリューチェーン全体でのカーボンニュートラル達成を目標としています。さらに、100%排出ゼロのモビリティと産業、100%クローズドループの資源・製品サイクル、100%責任あるバリューチェーンの実現という野心的なビジョンを掲げています 41

  • 気候変動への取り組み: 2020年から全世界の自社拠点で100%再生可能エネルギー由来の電力を購入しています 41。その気候目標はSBTiによって1.5℃目標に整合していると認定されています 41

  • 資源循環への取り組み: 2024年の廃棄物回収率は87%でした 57。タイヤ事業部門では、2030年までにタイヤに使用する再生可能材料およびリサイクル材料の比率を少なくとも40%に高めるという具体的な目標を設定しています 57。一部工場ではISCC PLUS認証(持続可能な原料のマスバランス方式による認証)も取得しています 58

  • 生物多様性への取り組み: 自然回復ソリューション企業であるLand Life社と共同で、植林作業を効率化するロボットを開発しています 53。また、持続可能な天然ゴムの調達方針を策定・公開しています 56

  • ZFフリードリヒスハーフェン (ZF Friedrichshafen AG):

  • 戦略: 2040年までにスコープ1、2、3の全てを含むバリューチェーン全体でのクライメートニュートラル(気候中立)達成を目標としています。中間目標として、スコープ1および2排出量を2030年までに2019年比で80%削減、スコープ3排出量を同期間に売上高あたり40%削減することを掲げています 40

  • 気候変動への取り組み: サプライヤーに対して2025年までに100%グリーン電力の使用を義務付けるなど、サプライチェーンにおける脱炭素化を強力に推進しています 40。スウェーデンのH2 Green Steel社とは、7年間にわたるグリーン鋼材の供給契約を締結しています 43

  • 資源循環への取り組み: 世界20ヶ所以上の拠点で再製造事業を展開しており、2022年には5,500種類以上の製品を再製造し、約32,000トンのCO2排出量削減に貢献したと報告しています 46

  • 生物多様性への取り組み: 全ての生産拠点および主要開発拠点においてISO 14001(環境マネジメントシステム)を導入・運用しています。ビジネスパートナー行動規範の中で、サプライヤーに対しても生物多様性への配慮とクンミン・モントリオール生物多様性枠組の目標達成への貢献を求めています 60

  • アイシン (AISIN CORPORATION):

  • 戦略: 2035年までに生産活動におけるカーボンニュートラル、2050年までにライフサイクル全体でのカーボンニュートラル達成を目標としています 26

  • 気候変動への取り組み: SBTiから認定された削減目標(スコープ1・2:2030年度までに2020年度比46.2%削減、スコープ3カテゴリー1(購入した製品・サービス)およびカテゴリー11(販売した製品の使用):同27.5%削減)の達成に向けて取り組んでいます 64。サプライヤーの脱炭素化支援のため、Manufacture 2030社のプラットフォームを活用した連携を開始しています 64

  • 資源循環への取り組み: 第7次アイシン連結環境行動計画(2025年度目標)において、国内での廃棄物排出原単位9%削減(2014年度比)、グローバルでの水投入量原単位2.1%削減(2019年度比)などを目標としています 26

  • 生物多様性への取り組み: 独自の「自然と共生する工場」認定制度(国内外4拠点が認定済み)を設け、地域生態系の保全活動を推進しています 26

  • ヴァレオ (Valeo):

  • 戦略: 「CAP 50」計画を策定し、2050年までにカーボンニュートラルに貢献することを目指しています。2030年の中間目標として、スコープ1・2排出量を2019年比で75%削減、スコープ3排出量を同15%削減することを掲げています 45

  • 気候変動への取り組み: 2030年までにエネルギー消費の80%を低炭素エネルギー源に転換する目標を掲げています 45

  • 資源循環への取り組み: 「4Rプラン」(堅牢設計、再製造、修理、リサイクル・再生材利用)を推進し、年間100万個以上の製品を再製造しています。廃棄物の回収・リサイクル率90%を目標とし、サーキュラーエコノミー部品には「SUSTAINera」ラベルを付与しています 45

  • 生物多様性への取り組み: サプライヤー評価の項目に生物多様性に関する配慮を含めるなど、バリューチェーンでの取り組みを進めています 65

  • マグナ・インターナショナル (Magna International):

  • 戦略: 2050年までにバリューチェーン全体でのネットゼロ達成を目標としています。SBTiから認定された目標として、スコープ1・2排出量を2030年までに2021年比で42%削減、スコープ3排出量を同25%削減することを掲げています 66

  • 気候変動への取り組み: 2030年までにグローバルで使用する電力を100%再生可能エネルギーに転換することを目指しています 67。2024年のエネルギー原単位削減率は0.8%でした 68

  • 資源循環への取り組み: 「EcoSphere」製品群(100%リサイクル可能なフォーム材と外装材のシステムなど)を開発しています。2024年の廃棄物リサイクル率は89.2%、埋立廃棄物からの転換率は96.1%でした 68

  • 生物多様性への取り組み: 2024年に生物多様性への影響評価戦略を策定するためのワーキンググループを設立しました。ミツバチ保護プロジェクトへの支援なども行っています 68

これらの競合他社の動向から、自動車部品業界全体として、SBTiに準拠した科学的根拠に基づく排出削減目標の設定、スコープ3排出量への取り組み強化、再生可能エネルギー導入の加速が共通のトレンドとなっていることがわかります。特にサプライヤーに対する脱炭素化の要求(例:ZFのグリーン電力義務化 40)は、業界標準となりつつあります。資源循環においては、再製造が多くの企業で成熟した取り組みとして定着しています。生物多様性に関しては、気候変動対策に比べて取り組みの成熟度にばらつきが見られるものの、コンチネンタルの天然ゴム調達方針や植林ロボット開発のように 53、具体的な製品や調達に関連した活動が見られ始めています。デンソーは、これらの動向を踏まえ、特にスコープ3におけるサプライヤーエンゲージメントの深化、再製造事業の規模拡大、そしてバリューチェーン全体を対象とした具体的な生物多様性行動計画の策定において、競合他社の先進事例を参考にしつつ、独自の強みを活かした戦略を推進していく必要があります。

環境評価スコア(CDP、Sustainalytics等)の比較ベンチマーキング

外部評価機関による環境スコアは、企業の環境パフォーマンスを客観的に比較する上で重要な指標となります。以下に、デンソーおよび主要競合他社の公表されている主なESG関連スコアをまとめます。

  • デンソー (DENSO):

  • CDP 気候変動: A評価 19

  • CDP 水セキュリティ: A評価 19

  • Sustainalytics ESGリスク評価: 16.2(低リスク、2023年5月時点、オートコンポーネンツ業界245社中37位)。2024年9月更新情報では16.1とされ、同業他社比較では中位に位置づけられています 70

  • DitchCarbon Score: 62(同業界の99%の企業より高い評価)13

  • ボッシュ (Bosch Group / Robert Bosch GmbH):

  • CDP 気候変動: A評価 73

  • CDP 水セキュリティ: B評価 73

  • Sustainalytics ESGリスク評価 (Robert Bosch GmbH): 15.5(低リスク、オートコンポーネンツ業界247社中34位)74。なお、インド法人であるBosch Ltd.は8.3(極小リスク)と非常に高い評価を得ています 75

  • ISS ESG: Primeステータス、B-評価 73

  • コンチネンタル (Continental AG):

  • CDP 気候変動: A-評価 42

  • CDP 水セキュリティ: B評価 42

  • CDP サプライチェーン: A評価 76

  • Sustainalytics ESGリスク評価: 17.6(低リスク、オートコンポーネンツ業界253社中103位)76。ただし、Morningstar経由の情報では24.57(中リスク)とも表示されています 77

  • MSCI ESG評価: A評価 76

  • EcoVadis: プラチナメダル(上位1%)76

  • ZFフリードリヒスハーフェン (ZF Friedrichshafen AG):

  • CDP 気候変動: スコアは直接公表されていませんが、CDPサプライヤーエンゲージメント評価ではA-評価を2年連続で獲得しています 43

  • CDP 水セキュリティ: 2022年の質問票は提出されていますが、具体的なスコアは確認できませんでした 80

  • Sustainalytics ESGリスク評価: ZF Commercial Vehicle Control Systems India Ltd.(インド法人)は22.9(中リスク)と評価されています 81。Robert Bosch GmbHとの比較対象としてSustainalyticsのレポートで言及されています 74。S&P Global ESG Scoreも存在しますが、具体的なスコアはプレミアムチャネルでの提供となっています 82。金融格付け機関Moody'sによる格付けはBa2です 83

  • EcoVadis: プラチナメダル 78

  • アイシン (Aisin Corporation):

  • CDP 気候変動: A評価(2年連続)63

  • CDP 水セキュリティ: A-評価 85

  • Sustainalytics ESGリスク評価: 24.5(中リスク、オートコンポーネンツ業界246社中164位)86。なお、Aisino Corp.は別会社であり、25.0(中リスク)と評価されています 88

  • ヴァレオ (Valeo):

  • CDP 気候変動: A評価 89

  • Sustainalytics ESGリスク評価: 10.2(低リスク)と報告されており、一部情報源では「Negligible(極小リスク)」や8.8(極小リスク)とも記載されています 89

  • MSCI ESG評価: AAA評価(業界リーダー)45

  • マグナ・インターナショナル (Magna International):

  • CDP 気候変動・水セキュリティ・森林: 2023年度実績を含む2024年提出版のCDP質問票が存在しますが、具体的なスコアは確認できませんでした 69

  • Sustainalytics ESGリスク評価: 16.5(低リスク、オートコンポーネンツ業界247社中41位)87

  • S&P Global ESG Score: 46/100(2024年9月更新、業界平均37)93

  • DitchCarbon Score: 56(同業界の97%の企業より高い評価)66

環境スコアの比較分析から得られる洞察:

デンソーはCDPの気候変動および水セキュリティにおいて「A」評価を維持しており、これは業界トップクラスの環境マネジメントと情報開示体制を示しています。DitchCarbon Scoreも非常に高いです。SustainalyticsのESGリスク評価では「低リスク」と評価されていますが、スコア自体(16.1-16.2)は、ヴァレオ(8.8-10.2)やボッシュ(15.5)といった一部の競合他社と比較するとやや高い(リスクがやや大きい)ものの、マグナ(16.5)やコンチネンタル(17.6)とは同等レベル、アイシン(24.5)よりは良好なポジションにあります。

特筆すべきはヴァレオのMSCI「AAA」評価であり、これは業界におけるESGパフォーマンスの明確なリーダーシップを示しています。ボッシュもCDP気候変動で「A」評価、Sustainalyticsでデンソーと同等以上の評価を得ており、強力な競合相手です。コンチネンタルはCDPの複数分野で高評価を得ており、EcoVadisではプラチナ評価を受けています。

この比較から、デンソーは総じて高い環境パフォーマンスを示しているものの、Sustainalyticsのスコアや、MSCI評価(公表されていれば)においては、ヴァレオやボッシュのようなトップランナーとの差を意識し、さらなる改善の余地を探る必要があるかもしれません。特に、リスク評価機関が注目する具体的なESG課題(例:サプライチェーンにおける人権・環境デューデリジェンスの深化、製品ライフサイクル全体での環境負荷のさらなる低減、生物多様性へのより踏み込んだコミットメントなど)への対応強化が、スコア向上と企業価値向上に繋がる可能性があります。

9. デンソーが直面する現在の課題と今後の推奨事項

現在の主な環境課題の評価

デンソーは長年にわたり環境経営を推進し、特に生産活動におけるCO2排出量削減(スコープ1・2)や水使用量削減などで顕著な成果を上げてきました。CDP評価においても気候変動と水セキュリティで「Aリスト」を獲得するなど、その取り組みは外部からも高く評価されています 19。しかしながら、自動車業界が直面する構造変革と地球環境問題の深刻化の中で、デンソーもいくつかの重要な課題に直面しています。

  • スコープ3排出量の削減: デンソーのCO2排出量の大部分はスコープ3、特に「製品使用時」と「購入した物品・サービス」に由来します 14。スコープ1・2でのカーボンニュートラル目標達成は視野に入っていますが、バリューチェーン全体でのカーボンニュートラル実現のためには、この巨大なスコープ3排出量の削減が最大の課題です。現在の2030年目標(25%削減)は、その規模と比較して、より一層の努力が求められる可能性があります。サプライヤーとの連携強化 16 や顧客である自動車メーカーとの協業を通じた製品使用時排出量の抜本的削減が不可欠です。

  • 真のサーキュラーエコノミーの実現: 「Car to Car」サーキュラーエコノミー構想 22 や自動精密解体システム 22、バッテリーライフサイクル管理 23 など、先進的な技術開発は進んでいるものの、これらを社会システムとして実装し、経済的に持続可能な形で運用するには多くのハードルが存在します。素材の多様性、回収・分別コスト、再生材の品質確保、そして何よりも業界横断的な連携体制の構築が課題です。また、植物由来樹脂のようなエコ材料の採用 17 についても、ライフサイクル全体での環境影響評価(LCA)と持続可能な調達体制の確立が求められます。

  • サプライチェーンにおける生物多様性保全: TNFDフレームワークの試行分析を通じて、特に原材料調達段階での生物多様性への影響と依存性が認識されました 12。ボーキサイト採掘などがその一例です。これらのリスクに対応するためには、調達方針への生物多様性配慮の組み込み、サプライヤーに対する具体的な要求事項の設定、そして代替材料への研究開発投資の加速など、より踏み込んだ対策が必要です。現状の「デンソー緑のプロジェクト」29 や「30by30アライアンス」への参画 28 に加え、バリューチェーン上流での具体的な行動計画が求められます。

  • 電動化への対応と事業構造転換: 自動車業界の急速な電動化シフトは、デンソーにとって大きな事業機会であると同時に、従来の内燃機関関連部品事業にとっては大きなリスクとなります 31。電動化技術開発を加速し、市場ニーズに迅速に対応するだけでなく、事業ポートフォリオの最適化や従業員のスキル転換など、事業構造全体の変革が課題です。

  • 環境情報の質的向上とインパクトの可視化: CDPでの高評価は情報開示の量と質を反映していますが、一部の外部評価(例:ムーディーズSPO 21)では、環境・社会便益に関する報告指標が間接的(売上ベース)であるとの指摘もあります。投資家や社会からの要求は、より直接的で定量的なインパクト評価へと向かっています。取り組みの成果をより明確に示し、ステークホルダーとのエンゲージメントを深めるためには、報告の質をさらに高める努力が求められます。

これらの課題は、デンソーが真のサステナビリティリーダーへと進化するための試金石と言えます。技術力やモノづくりにおける強みを活かしつつ、バリューチェーン全体を巻き込んだ包括的なアプローチと、より野心的な目標設定、そして透明性の高い情報開示を通じて、これらの課題に取り組むことが期待されます。

今後の重点分野と推奨事項

デンソーが持続可能な成長を達成し、環境リーダーシップをさらに強化するためには、以下の分野に重点を置き、具体的な行動を加速させることが推奨されます。

  1. スコープ3排出削減目標の再評価と深掘り:

  • 推奨事項: 現在のスコープ3排出量削減目標(2030年までに25%削減)の妥当性を、1.5℃目標との整合性や競合他社の目標水準を考慮して再評価し、可能であればより野心的な目標を設定する。

  • 根拠: デンソーのCO2排出量の大部分を占めるスコープ3 14 の削減が、真のカーボンニュートラル達成の鍵です。競合他社の中にはより高い削減目標を掲げる企業もあり 38、目標の引き上げはリーダーシップを示す上で重要です。

  • 具体的な行動:

  • 「製品使用時」排出量削減のため、自動車メーカーとの連携を強化し、次世代電動化技術(高効率インバータ、SiCパワー半導体、バッテリーマネジメントシステム等)の開発と普及を加速する。製品の軽量化、エネルギー効率向上に資する技術開発への投資を優先する。

  • 「購入した物品・サービス」からの排出量削減のため、サプライヤーエンゲージメントプログラムを質・量ともに拡充する。ZF社がサプライヤーに2025年までの100%グリーン電力化を要求している事例 40 などを参考に、より具体的な要求(例:再生可能エネルギー導入目標、SBT認定取得の奨励、低炭素材料への切り替え等)を提示し、達成に向けた技術支援や協調的取り組みを強化する。Manufacture 2030のようなプラットフォーム活用 16 をさらに推進する。

  1. サーキュラーエコノミー戦略の具体化と実装加速:

  • 推奨事項: 「Car to Car」ビジョン 22 の実現に向けたロードマップをより具体化し、自動精密解体システムやバッテリーリサイクル技術の実用化・普及を加速する。自社製品の再製造(リマニュファクチャリング)プログラムを強化・拡大する。

  • 根拠: ヴァレオやZFは大規模な再製造事業を展開し、資源効率とCO2削減に貢献しています 46。デンソーも部品リビルド事業に言及していますが 2、その規模拡大と可視化が求められます。自動解体システム 22 は革新的ですが、その経済性と普及には時間がかかる可能性があります。

  • 具体的な行動:

  • 主要製品カテゴリー(例:オルタネーター、スターター、エアコンコンプレッサー等)における再製造目標を設定し、回収システムを構築する。

  • 製品設計段階から解体容易性、再利用可能性、リサイクル材使用率向上を考慮する「エコデザイン」を全製品に徹底する。

  • 植物由来樹脂等のエコ材料について、LCA評価に基づき環境負荷が真に低いものを選択し、トレーサビリティを確保した持続可能な調達を徹底する。その情報を積極的に開示する。

  1. 生物多様性保全のバリューチェーン全体への展開:

  • 推奨事項: TNFD分析 12 から得られた洞察に基づき、特にリスクが高いと特定された原材料(例:ボーキサイト)の調達方針を見直し、サプライヤーに対する具体的な生物多様性保全要件を策定・導入する。

  • 根拠: 生物多様性損失はサプライチェーンを通じて事業に影響を及ぼすリスクであり、企業価値にも関わります。ボルボ・カーズ 51 やアストラゼネカ 54 のように、バリューチェーン全体での目標設定やコミットメントが先進事例として存在します。

  • 具体的な行動:

  • 主要原材料(金属鉱物、樹脂原料、電子部品材料等)について、生物多様性への影響評価(LEAPアプローチ等)を系統的に実施し、高リスク品目については代替材料への転換、認証材の利用、サプライヤーとの協働による影響緩和策を推進する。

  • 「30by30アライアンス」への貢献として、自社拠点での緑化活動に加え、バリューチェーン上で重要な生態系を有する地域における保全・再生プロジェクトへの投資や支援を検討する(例:VWの生物多様性基金 52)。

  • 生物多様性に関する定量的な目標(例:特定原材料の持続可能な調達比率、生態系再生への貢献面積等)を設定し、進捗を開示する。

  1. 環境パフォーマンス報告の高度化:

  • 推奨事項: 環境活動の成果について、売上高のような間接的な指標だけでなく、可能な限り直接的な環境・社会インパクト(例:製品使用によるCO2削減貢献量、資源消費削減量、生態系サービス向上への寄与など)を定量的に算定・開示する。

  • 根拠: ムーディーズのSPO 21 でも指摘されたように、ステークホルダーはより直接的で具体的なインパクト情報を求めています。透明性と信頼性の高い報告は、企業価値向上に不可欠です。

  • 具体的な行動:

  • 主要な環境配慮型製品群について、ライフサイクル全体での環境負荷削減効果をLCA手法等を用いて算定し、公表する。

  • インターナルカーボンプライシングの具体的な価格水準や適用範囲、投資判断への影響度合いについて、可能な範囲で情報開示を拡大する。

これらの推奨事項は、デンソーが既に有する高い技術力と環境意識を基盤としつつ、グローバルな環境課題の進展と社会からの期待の高まりに応え、持続可能な自動車社会の実現に向けたリーダーシップをさらに発揮していくための一助となることを意図しています。

10. 総括

本報告書は、株式会社デンソーの環境戦略および「気候変動」「資源循環」「生物多様性」の3分野における具体的な取り組みと実績を、公開情報に基づき包括的に分析・評価した。

デンソーは、「エコビジョン2025」および2030年長期方針の下、カーボンニュートラル達成を最重要課題の一つと位置づけ、生産活動(スコープ1・2)におけるCO2排出量削減で目標を前倒し達成するなど、着実な成果を上げている 5。再生可能エネルギー導入も積極的に推進しており、2025年度までの100%化目標に向けて国内外の拠点で取り組みが進んでいる 5。CDP評価においても気候変動・水セキュリティ両分野で3年連続「Aリスト」を獲得しており 18、その環境マネジメントと情報開示は高く評価されている。

一方で、デンソーのCO2排出量の大部分を占めるスコープ3排出量、特に「製品使用時」と「購入した物品・サービス」からの排出削減は、依然として大きな課題である 13。2030年までの25%削減目標は、その規模とバリューチェーン全体でのカーボンニュートラルという長期目標を鑑みると、さらなる取り組みの加速と、場合によっては目標の引き上げも検討の余地がある。これには、電動化技術のさらなる進化と普及、そしてサプライヤーとのより深い連携による低炭素調達の徹底が不可欠となる。

資源循環の分野では、「Car to Car」サーキュラーエコノミー構想を掲げ、自動精密解体システムやバッテリーライフサイクル管理といった革新的な技術開発を進めている点は特筆に値する 22。これらの技術が実用化され社会実装されれば、自動車産業における資源循環に大きな変革をもたらす可能性がある。しかし、その実現には技術的課題の克服に加え、経済合理性の確保、業界横断的な標準化と連携、政策的支援など、多岐にわたる要素が絡み合う。また、植物由来樹脂のようなエコ材料の採用は進められているものの 17、そのライフサイクル全体での環境影響評価と持続可能な調達体制の確立、情報開示の充実が今後の課題となる。

生物多様性保全に関しては、TNFDフレームワークの試行分析に着手し、サプライチェーン上流におけるリスク認識を深めている点は先進的である 1。長年継続している「デンソー緑のプロジェクト」29 や「30by30アライアンス」への参画 28 は評価できるが、今後は特定されたリスク(例:ボーキサイト調達)への具体的な対応策の策定と実行、そしてバリューチェーン全体での生物多様性への負の影響を定量的に把握し、削減目標を設定していくことが期待される。

競合他社との比較においては、デンソーは多くの分野で業界をリードする、あるいは同等以上のパフォーマンスを示している。しかし、ヴァレオのMSCI「AAA」評価 45 やボッシュのスコープ3削減目標の野心度 38、ZFのサプライヤーへの厳格なグリーン電力要求 40 など、一部の領域ではさらに高みを目指す余地がある。

総じて、デンソーは環境課題に対して真摯に取り組み、多くの成果を上げてきた企業である。しかし、地球環境問題の深刻化と社会からの期待の高まりは、同社に対して、これまでの取り組みの延長線上にはない、より大胆かつ包括的な変革を求めている。本報告書で示した課題と推奨事項が、デンソーの持続可能な成長と、より良い自動車社会の実現に向けた次なる一歩に貢献することを期待する。

引用文献

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  47. Automotive Circular Economy Industry Outlook 2025-2034 - EV - GlobeNewswire, 5月 9, 2025にアクセス、 https://www.globenewswire.com/news-release/2025/05/07/3075812/28124/en/Automotive-Circular-Economy-Industry-Outlook-2025-2034-EV-Adoption-Spurs-Boom-in-Battery-Repurposing-Unlocking-Major-Opportunity-in-Automotive-Circular-Economy.html

  48. How the Circular Economy is Driving Sustainable Auto Manufacturing, 5月 9, 2025にアクセス、 https://www.cares-sustainableforum.com/circular-economy-is-driving-sustainable-auto-manufacturing/

  49. Circularity in automotive spare parts - FreightAmigo, 5月 9, 2025にアクセス、 https://www.freightamigo.com/blog/circularity-in-automotive-spare-parts/

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  59. Continental AG | SPOTT.org, 5月 9, 2025にアクセス、 https://www.spott.org/natural-rubber/continental-ag/

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  61. ZF Regional e-mobility and R&D | We invest in changing lives - EBRD, 5月 9, 2025にアクセス、 https://www.ebrd.com/home/work-with-us/projects/psd/55010.html

  62. サステイナビリティ:ZF のサステナブルな考え方と行動 - ZF, 5月 9, 2025にアクセス、 https://www.zf.com/japan/ja/sustainability_international/sustainability.html

  63. AISIN Recognized on the A List (Highest Rating) of CDP's Climate Change Category for Two Consecutive Years, 5月 9, 2025にアクセス、 https://www.aisin.com/en/news/2025/006344.html

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  69. www.magna.com, 5月 9, 2025にアクセス、 https://www.magna.com/docs/default-source/financial-reports-public-filings/tax-other-reports/magna-international-inc-cdp-submission-2024-(fy2023)-completed-(website-version).pdf?sfvrsn=6eef9103_14

  70. DENSO Corp. - Company ESG Risk Rating - Sustainalytics, 5月 9, 2025にアクセス、 https://www.sustainalytics.com/esg-rating/denso-corp/1008752290

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  76. Ratings and rankings - Continental AG, 5月 9, 2025にアクセス、 https://www.continental.com/en/sustainability/reporting/ratings-and-rankings/

  77. CON - Continental AG Sustainability - Morningstar, 5月 9, 2025にアクセス、 https://www.morningstar.com/stocks/xetr/con/sustainability

  78. ZF Recognition and Supplier's Awards, 5月 9, 2025にアクセス、 https://www.zf.com/site/supplierboard/en/sustainability/zf_recognition_and_supplier_s_awards/zf_recognition_and_suppliers_awards.html

  79. CDP Scores and A Lists, 5月 9, 2025にアクセス、 https://cdp.net/en/data/scores

  80. ZF Friedrichshafen AG - Water Security 2022, 5月 9, 2025にアクセス、 https://www.zf.com/master/media/corporate/m_zf_com/sustainability/environment_health_safety_ehs/ZF_CDP_Water_Security_Questionnaire_2022_download.pdf

  81. ZF Commercial Vehicle Control Systems India Ltd. ESG Risk Rating - Sustainalytics, 5月 9, 2025にアクセス、 https://www.sustainalytics.com/esg-rating/zf-commercial-vehicle-control-systems-india-ltd/1046435488

  82. ZF Friedrichshafen AG ESG Score - S&P Global, 5月 9, 2025にアクセス、 https://www.spglobal.com/esg/scores/results?cid=6216004

  83. ZF Friedrichshafen AG, 5月 9, 2025にアクセス、 https://www.zf.com/master/media/corporate/m_zf_com/company/bonds_relations_/bons_and_rating/Credit_Opinion-ZF-Friedrichshafen-AG-Update-30Dec2024.pdf

  84. SP Member News Roundup - February 2025 - Suppliers Partnership for the Environment, 5月 9, 2025にアクセス、 https://www.supplierspartnership.org/member-news/sp-member-news-roundup-february-2025/

  85. Search and view past CDP responses, 5月 9, 2025にアクセス、 https://www.cdp.net/en/responses?back_to=https%3A%2Fnewsforce.link%2Fsitemap-19699.xml&page=10&per_page=20&sort_by=project_name&sort_dir=desc

  86. Aisin Corp. - Company ESG Risk Rating - Sustainalytics, 5月 9, 2025にアクセス、 https://www.sustainalytics.com/esg-rating/aisin-corp/1008753051

  87. Magna International, Inc. ESG Risk Rating - Sustainalytics, 5月 9, 2025にアクセス、 https://www.sustainalytics.com/esg-rating/magna-international-inc/1008164126

  88. Aisino Corp. - Company ESG Risk Rating - Sustainalytics, 5月 9, 2025にアクセス、 https://www.sustainalytics.com/esg-rating/aisino-corp/1013741582

  89. VALEO | FR0013176526 | Euronext exchange Live quotes, 5月 9, 2025にアクセス、 https://live.euronext.com/en/product/equities/FR0013176526-MTAH/esg

  90. Valeo SE (FRTN.MX) environment, social and governance (ESG) ratings - Yahoo Finance, 5月 9, 2025にアクセス、 https://sg.finance.yahoo.com/quote/FRTN.MX/sustainability/

  91. Valeo SE - Overall ESG Rating - KnowESG, 5月 9, 2025にアクセス、 https://www.knowesg.com/esg-ratings/valeo-se

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デンソーのGHG排出量推移

GHG排出量推移

「Scope1」の過去3年の推移

2023年342,000t-CO2
2022年368,000t-CO2
2021年394,000t-CO2

「Scope2」の過去3年の推移

2023年86,000t-CO2
2022年206,000t-CO2
2021年277,000t-CO2

「Scope3」の過去3年の推移

2023年32,702,000t-CO2
2022年33,021,000t-CO2
2021年32,407,000t-CO2

COR(売上高あたりのCO2排出量)推移

スコープ1+2

スコープ1+2 CORの過去3年推移

2023年60kg-CO2
2022年90kg-CO2
2021年122kg-CO2

スコープ3

スコープ3 CORの過去3年推移

2023年4,577kg-CO2
2022年5,158kg-CO2
2021年5,876kg-CO2

COA(総資産あたりのCO2排出量)推移

スコープ1+2

スコープ1+2のCOA推移

2023年47kg-CO2
2022年77kg-CO2
2021年90kg-CO2

スコープ3

スコープ3のCOA推移

2023年3,596kg-CO2
2022年4,457kg-CO2
2021年4,360kg-CO2

業績推移

売上推移

2023年7兆1447億
2022年6兆4013億
2021年5兆5155億

純利益推移

2023年3,128億円
2022年3,146億円
2021年2,639億円

総資産推移

2023年9兆934億
2022年7兆4087億
2021年7兆4323億

すべての会社・業界と比較

環境スコアポジション

デンソーの環境スコアは420点であり、すべての会社における環境スコアのポジションと業界内におけるポジションは下のグラフになります。

すべての会社と比較したポジション

業界内ポジション

デンソーのCORポジション

デンソーにおけるCOR(売上高(百万円)における炭素排出量)のポジションです。CORは数値が小さいほど環境に配慮したビジネスであると考えられます。デンソーのスコープ1+2の合計のCORが60kg-CO2であり、スコープ3のCORが4577kg-CO2になります。グラフはGHG排出量のスコープ別に分かれており、すべての会社と業界内におけるそれぞれのポジションを表しています。
全体におけるデンソーのCORポジション

CORスコープ1+2

CORスコープ3

業界内におけるデンソーのCORポジション`

CORスコープ1+2

CORスコープ3

デンソーのCOAポジション

デンソーにおけるCOA(総資産(百万円)における炭素排出量)ポジションです。COAもCAR同様、数値が小さいほど環境に配慮したビジネスを行っていると考えられます。デンソーのスコープ1+2の合計のCORが47kg-CO2であり、スコープ3のCORが3596kg-CO2になります。グラフはGHG排出量のスコープ別に分かれており、すべての会社と業界内におけるそれぞれのポジションを表しています。
全体におけるデンソーのCOAポジション

COAスコープ1+2

COAスコープ3

業界内におけるデンソーのCOAポジション

COAスコープ1+2

COAスコープ3

環境スコアランキング(全社)

集計数:1049企業
平均点数:180.6
CDPスコア気候変動勲章
三菱電機
6503.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
505
CDPスコア気候変動勲章
コニカミノルタ
4902.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
500
CDPスコア気候変動勲章
豊田自動織機
6201.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
480
4
古河電気工業
5801.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
470
5
味の素
2802.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
460
6
セコム
9735.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコンサービス業
455
7
ダイキン工業
6367.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
450
8
アイシン
7259.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
450
9
三ツ星ベルト
5192.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
445
10
フジクラ
5803.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
445

業界別環境スコアランキング

集計数:509企業
平均点数:205.6
CDPスコア気候変動勲章
三菱電機
6503.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
505
CDPスコア気候変動勲章
コニカミノルタ
4902.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
500
CDPスコア気候変動勲章
豊田自動織機
6201.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
480
4
古河電気工業
5801.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
470
5
味の素
2802.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
460
6
ダイキン工業
6367.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
450
7
アイシン
7259.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
450
8
三ツ星ベルト
5192.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
445
9
フジクラ
5803.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
445
10
オムロン
6645.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
445