カテゴリー | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 |
---|---|---|---|
1購入した製品・サービス | 1,785,484 | 1,804,232 (▲18,748) | 1,779,105 (▼25,127) |
2資本財 | 240,534 | 154,002 (▼86,532) | 186,390 (▲32,388) |
3燃料・エネルギー関連活動 | 136,056 | 133,474 (▼2,582) | 133,456 (▼18) |
5事業から発生する廃棄物 | 2,400 | 2,630 (▲230) | 2,806 (▲176) |
6出張 | 5,381 | 5,856 (▲475) | 6,781 (▲925) |
ヤマト運輸は、主力3商品について、国際規格ISO 14068-1:2023に準拠したカーボンニュートラリティを2022年度に引き続き達成しました。BSIグループジャパンによる検証のもと、GHG排出量の算定、削減努力(EV導入、再エネ活用、ドライアイス削減等)、および2050年までのカーボンニュートラリティ維持計画を着実に推進していることが確認されました。
※掲載情報は公開資料をもとに作成しており、全てのリスク・機会を網羅するものではありません。 より詳細な情報は企業の公式発表をご確認ください。
環境への取り組みは、新たな事業機会も創出しています。カーボンニュートラル配送 や排出量データ提供 といったグリーン物流サービスは、環境意識の高い顧客への訴求力を高めます。自社開発のEMS や省エネ施策 はオペレーション効率化とコスト削減に貢献します。EV導入経験を活かした「EVライフサイクルサービス」(2026年度3,000台導入支援目標) や、JERAとのエネルギー新会社「ヤマトエナジーマネジメント」設立 は、サステナビリティ投資を新規事業へ転換する戦略的な動きであり、競争優位性の源泉となり得ます。
ヤマトホールディングス(以下、ヤマトグループ)は、持続可能な社会の実現に向けた環境への取り組みを経営の重要課題と位置づけています。公式ウェブサイトや統合報告書 を通じて、その方針、目標、具体的な活動内容を開示しています。特に、「エネルギー・気候」「資源循環・廃棄物」「水資源・生物多様性」を重要課題として認識し 、「つなぐ、未来を届ける、グリーン物流」という環境ビジョンを掲げ、環境、生活、経済により良い物流の実現を目指しています 。これらの取り組みは、経営構造改革プラン「YAMATO NEXT100」やサステナブル経営の強化の一環として推進されており 、ヤマトグループ環境方針 に基づき、TCFD提言への対応 や環境省の「エコ・ファースト制度」の認定取得 など、具体的な行動を伴っています。
気候変動は、ヤマトグループが最重要課題の一つとして取り組む分野です。事業活動に伴う温室効果ガス(GHG)排出量の削減に向け、意欲的な目標を設定し、多岐にわたる施策を展開しています。
ヤマトグループは、気候変動緩和に向けた明確な数値目標を設定しています。
目標:
長期目標:2050年までにGHG自社排出量(スコープ1およびスコープ2)を実質ゼロにする 。
中期目標:2030年までにGHG自社排出量(スコープ1およびスコープ2)を2020年度比で48%削減する 。この目標は日本政府の削減目標を踏まえて策定されています 。
2023年度目標(スコープ1・2):国内連結会社および株式会社スワンを対象に、2020年度比10%削減 。
2023年度目標(原単位):営業収益1億円あたりのGHG排出量(tCO₂e)を2020年度比10%削減 。
2023年度目標(海外):海外連結子会社のGHG排出量(スコープ1・2)を2022年度比3%削減 。
実績 (2023年度):
スコープ1排出量:約656,732 tCO₂ 。
スコープ2排出量:約166,350 tCO₂ 。
スコープ1・2合計排出量(国内連結+スワン):2020年度比11%削減を達成し、10%削減の目標を上回りました 。
排出原単位:2020年度比8%削減となり、10%削減の目標にはわずかに届きませんでした 。この結果は、絶対排出量の削減が進む一方で、事業収益の増加率に比して排出効率の改善が目標ペースに達していない可能性を示唆しており、継続的な取り組みの重要性を示しています。
海外連結子会社排出量:2022年度比3%削減を達成し、目標を達成しました 。
スコープ3排出量:約2,218,292 tCO₂でした。主な内訳は、カテゴリー1(購入した製品・サービス)が1,779,105 tCO₂e(全体の80%)と最も大きく、次いでカテゴリー2(資本財)が8%、カテゴリー3(スコープ1、2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動)が6%となっています 。スコープ3の算定には、IDEAv3.3や環境省排出原単位データベースVer.2.6などの標準的なデータベースが参照されています 。
特定サービスのカーボンニュートラリティ: ヤマト運輸は、主力商品である「宅急便」「宅急便コンパクト」「EAZY」について、国際規格ISO 14068-1:2023に準拠し、BSIグループジャパンによる検証のもと、2022年4月からカーボンニュートラリティを実現・維持しています 。
2022年度のこれら3商品のGHG排出量(ライフサイクル全体)は2,464,448 tCO₂eで、2021年度の2,570,761 tCO₂eから減少しました 。
基準年(2021年度)の荷物1個あたりの排出原単位は1.36 kg CO₂e/個です 。
2022年度には、荷物1個あたりの排出原単位を基準年比で5.9%(0.00008 tCO₂e/個)削減しました。これはSBTiが示す1.5℃目標達成に必要な年平均削減率(4.2%)を上回るペースです 。この削減は、現時点では排出削減努力のみによって達成されており、除去(Removal)やオフセットは2030年以降に導入予定です 。このカーボンニュートラリティ宣言は国内市場における先進的な取り組みですが、その長期的な信頼性は、今後のさらなる排出削減努力と、将来導入される除去・オフセット戦略の質に依存することになります。
ヤマトグループは意欲的なスコープ1・2削減目標を掲げ、着実な進捗を見せていますが、グループ全体の排出量の大部分(2023年度実績で約73% )を占めるスコープ3排出量については、明確なグループ全体の削減目標が公表されていません 。これは、サプライチェーン排出量の算定や管理の複雑さを反映している可能性がありますが、グローバルなベストプラクティス(例えば、DHLはスコープ3を含む目標を設定 )と比較すると、今後の戦略策定における重要な領域となります。ただし、ヤマトグループは、グリーン物流サービスの提供 や輸送パートナーのGHGデータ把握・改善支援 を通じて、スコープ3削減に向けた取り組みも進めています。
再生可能エネルギーの利用拡大は、GHG排出削減戦略の柱の一つです。
目標:
2030年までに再生可能エネルギー由来の電力使用率を70%に引き上げる 。
2030年までに太陽光発電設備を810拠点に導入する 。
2023年度目標:再生可能エネルギー使用率40%(国内連結+スワン)。
実績 (2023年度):
再生可能エネルギー使用率:37.3%。2022年度の21.8%から大幅に向上しましたが、40%の目標にはわずかに未達でした 。内訳は、購入電力(211,105 MWh)、自家発電(1,263 MWh)、PPA(電力販売契約、1,994 MWh)です 。
太陽光発電設備導入:2013年の羽田クロノゲートを皮切りに設置を進め 、2024年3月末時点で105拠点に導入済みです 。2023年度の自家発電量は約300万kWh (または1,263 MWh )でした。(注記:グリーンボンドレポーティングでは2022年度実績として847,964 kWh、371 t-CO₂削減と報告 )。2030年の目標達成には、今後6年間で700拠点以上の新規導入が必要となり、年間平均100拠点を超えるペースでの導入加速が求められます。これは過去の導入ペースと比較して大幅な加速であり、計画的な実行が不可欠です。
エネルギーマネジメントシステム (EMS): 物流拠点特有のエネルギー需要(特にEV充電によるピーク負荷)に対応するため、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成も受けて独自のEMSを開発・導入しました 。このシステムは、電力使用量の監視・制御、充電時間の最適化(電力需要の平準化)、太陽光発電や蓄電池との連携を可能にします 。将来的には、拠点間で電力を融通する仕組み(拠点間電力融通)の構築も目指しています 。
JERAとの連携: 2025年1月に、電力大手JERAグループとの協業により、新会社「ヤマトエナジーマネジメント株式会社」を設立しました 。この新会社は、ヤマトグループの拠点や地域の発電事業者が発電した再エネ電力を調達し、ヤマトグループ自身や他の事業者へ供給すること、太陽光発電設備への投資・管理、EMSを通じた電力監視・制御サービスを提供することを目的としています 。JERAは、電力需給バランスの維持(計画値同時同量制度への対応)や両グループ間の電力相互融通に関するノウハウを提供します 。この事業は、後述する「EVライフサイクルサービス」とも連携し、2025年度中のサービス開始を予定しています 。
この独自のEMS開発とJERAとの戦略的提携は、単なる再エネ調達を超えた、高度なエネルギー管理体制の構築を目指すものです。自社のエネルギー最適化に留まらず、外部へのサービス提供を通じて新たな事業機会を創出しようとしており、サステナビリティ投資を事業戦略に直結させる先進的な取り組みと言えます 。
輸送部門の脱炭素化に向け、車両の電動化と代替燃料の導入を積極的に進めています。
目標:
2030年までにEV(電気自動車)を23,500台導入する 。(注記:初期の情報 では2万台でしたが、後の複数の情報源 で23,500台とされています)
2023年度目標:EV1,500台導入 。
実績:
2023年度EV導入実績:1,754台を導入し、目標を達成しました 。(注記:2022年度はメーカーのリコール影響で計画500台に対し331台の導入でした )
累計EV導入台数(2024年3月末時点):約2,275台 。
環境対応車(EV、LPG、CNG、ハイブリッド車)合計(2024年3月末時点):36,002台 。
電動アシスト自転車(2024年3月末時点):3,606台 。
全体:ヤマト運輸の集配車両の84%が環境対応車に分類されます 。
具体的なEVモデルと実証実験:
日野デュトロ Z EV(量産型国産小型商用BEVトラック)を2022年から500台導入 。
Honda製の新型軽商用EV(交換式バッテリー「Mobile Power Pack e:」使用)の実証実験を2023年6月から開始。多様な地形(東京都内、栃木県、兵庫県)で実用性を検証 。
三菱ふそうトラック・バス製の新型「eCanter」(2tクラスEVトラック)を2023年9月から導入 。
カートリッジ式バッテリーEVの活用を検討。これにより、太陽光発電による昼間充電と夜間のバッテリー交換が可能となり、夜間の電力ピーク問題を回避し、再エネ活用を促進することを目指しています 。
FCV(燃料電池自動車)大型トラック(日野プロフィアベース、車両総重量25トン、トヨタMIRAI用FCスタック搭載)を用いた幹線輸送(例:東京-群馬間)の実証実験を2023年5月から開始。トヨタ、日野、アサヒグループ、西濃運輸、NLJと共同で実施 。長距離輸送における水素燃料活用の可能性と実用性を検証する目的ですが 、車両価格の高さ、積載量の減少、水素ステーションの不足といった課題も認識されています 。
EVライフサイクルサービス: 2024年10月より、グループ会社のヤマトオートワークス(YAW)が芙蓉総合リースと連携して提供を開始しました 。これは、商用車を利用する事業者の脱炭素化をワンストップで支援するサービスです。具体的には、GHG削減計画の立案支援、最適なEVの提案・導入(軽バンタイプから開始)、充電設備の設置・リース・保守、エネルギーマネジメント(将来提供予定)、再エネ供給(将来提供予定)、YAWの全国72拠点での車両メンテナンス、使用済み車両の再販・バッテリーリサイクルまでを包括的にサポートします 。2026年度までに3,000台の導入支援を目指しています 。
ヤマトグループは、ラストマイルから幹線輸送まで、多様な輸送ニーズに対応するため、BEV、交換式バッテリー、FCVといった複数の技術を並行して検討・導入しており、現実的なアプローチをとっています 。特に「EVライフサイクルサービス」の開始は、自社のEV転換における経験と資産(YAWの整備網など)を活かし、B2B市場向けの新たなサービスとして展開する戦略的な動きであり、環境対応を事業機会へと転換する好例です 。FCVについては、実証実験を通じて長距離輸送の脱炭素化を探求していますが 、認識されている課題 から、現時点では実験的な位置づけが強く、当面の脱炭素化はラストマイル・ミドルマイルにおけるBEV導入と、幹線輸送におけるモーダルシフト等に重点が置かれると考えられます。
車両の電動化や再エネ導入と並行し、事業運営全体でのエネルギー効率向上にも注力しています。
主な取り組み:
輸送効率の最適化: デジタル技術を活用した運行状況の可視化とデータに基づくルート最適化、積載率の向上(例:幹線輸送の積載率が2021年度90.5%から2022年度92.8%へ向上 )。
エコドライブの推進: 燃費改善と安全運転を両立させるエコドライブを推進 。(日本郵便でも実施例あり )
モーダルシフト: 鉄道や船舶を利用した輸送への転換を推進(2023年度目標180台規模? 、言及あり )。
施設効率化: 全営業所の照明をLED化(2023年度完了目標 、2022年度時点で54%完了 、言及あり )。100%再エネ利用のモデルセンター実証実験 。拠点集約や中継拠点の見直しによる効率化 。
ドライアイス使用量ゼロ化: クール宅急便で使用するドライアイス(昇華時にCO₂を排出)を2030年までにゼロにする目標を掲げ 、電力駆動の保冷ボックス やモバイルバッテリー駆動の小型冷凍機「D-mobico」 への切り替えを進めています。これにより、2022年度には約2万トンのCO₂e排出削減を達成しました 。この取り組みは、一般的な省エネ活動に加えて、特定の排出源に焦点を当てた効果的な対策として注目されます。
再配達削減: アプリによる事前通知や受取日時・場所指定の活用、 PUDOステーション(オープン型宅配便ロッカー)、コンビニ受取、置き配など、多様な受取方法を提供し、顧客の利便性向上と再配達削減を両立 。(業界全体の再配達率が11.4%まで減少したとの言及あり )
共同輸配送: 標準パレットを用いた企業間共同輸送のためのオープンプラットフォームを提供する新会社を設立し、物流の標準化・効率化を目指す 。
これらの多角的な省エネ・効率化施策は、EV導入に伴う電力需要増を管理し、GHG排出削減目標達成を支える上で不可欠です。ネットワーク最適化、技術導入、運用改善、顧客エンゲージメントを組み合わせた包括的なアプローチが取られています。
ヤマトグループは、「資源循環・廃棄物」をマテリアリティの一つと捉え 、環境方針 に基づき、環境負荷の抜本的削減と資源の有効活用に取り組んでいます 。これはSDGs目標12(つくる責任 つかう責任)にも合致するものです 。グリーン購入も推進しています 。
廃棄物削減とリサイクル率向上に向けた目標設定と実績管理が行われています。
目標 (対基準年度):
紙資材使用量:2021年度比2%削減(2023年度まで)。
埋立処分量:2020年度比40%削減(2023年度まで)。
廃棄物発生原単位:2020年度比3%削減(2023年度まで)。
リサイクル率:80%以上 。
埋立処分率:5%以下(2023年度まで)。
実績 (2023年度):
廃棄物総排出量:41,274トン(2020年度の48,357トンから減少)。
紙資材使用量:2021年度比17%削減(目標を大幅に達成)。
埋立処分量:2020年度比55%削減(目標を大幅に達成)。
廃棄物発生原単位:2020年度比14%削減(目標を大幅に達成)。
リサイクル率:84%(目標を達成)。
埋立処分率(最終処分率):5%(目標を達成)。
これらの結果は、ヤマトグループが資源循環・廃棄物削減に関する目標達成に向けて効果的な施策を実行し、顕著な成果を上げていることを示しています。特に、紙資材使用量や廃棄物原単位、埋立量において目標を大幅に上回る削減を達成したことは、オペレーション改善や材料選択における取り組みが成功していることを裏付けています。
包装材は物流事業における主要な資源消費・廃棄物発生源の一つであり、ヤマトグループは多角的なアプローチで持続可能性向上に取り組んでいます。
主な取り組み:
環境配慮型資材の導入: 新しい「クロネコボックス」では、森林保全に繋がるFSC認証資材を使用し、ほぼ100%リサイクル可能な設計を採用 。旧型からの段階的な切り替えを進めています 。
緩衝材削減・不要化: 包装材自体の工夫により緩衝材の使用量を削減、あるいは不要にする資材を開発・提供。例として、真空圧着で商品を固定するシート状緩衝材「Neco fit」(2011年開発)、段ボールのみで精密機器を梱包する「スマートフォン用フィットパック」、緩衝材削減と廃棄時分別が容易な「クイックフィット」などがあります 。
再生材利用の推進: 容器・包装材における再生可能資源・再生材の利用率目標(2023年度30%)に対し、実績は34%と目標を達成しました 。海外引越サービスにおいても再生材を利用した梱包を提供しています 。また、海外引越事業では体積を50%削減したシュリンクラップの利用を開始しました 。
リターナブル資材・シェアリング: 再利用可能な包装資材(リターナブル資材)の開発と、それを用いた共通輸送スキームの提供を進めています 。例として、パッキング事業において木製パレットをリターナブルパレット(容器)へ移行し、廃棄パレットを20%削減しました 。また、梱包資材の共通化により使用量を削減しています 。
機密文書リサイクル: 顧客から排出される機密文書を回収し、溶解処理を経てトイレットペーパーや段ボールとして100%再利用するサービスを提供。2023年度は約21,308トンをリサイクルしました 。
これらの取り組みは、包装材のライフサイクル全体(Reduce, Reuse, Recycle, Renewable)を考慮した包括的な戦略を示しており、資源消費と廃棄物発生の抑制に貢献しています。
廃棄物削減やリサイクルに加え、使用済み製品を資源として循環させる具体的な取り組みも行っています。
主な取り組み:
タイヤリトレッドプログラム: 東光タイヤ工業などのタイヤメーカーと協働し、使用済みタイヤを回収・再生(リトレッド)し、再生タイヤとしてヤマトグループが再購入・利用するプログラムを推進 。これにより、新品タイヤの生産抑制と廃棄タイヤの削減に貢献しています 。2023年度にはヤマトオートワークスを通じて34,574本のリトレッドタイヤを購入しました 。
制服リサイクル: 2000年から再生材(現在は植物由来PET素材)を用いた制服を導入 。使用済み制服は専門業者に委託してリサイクルされ、フェルト化されて主に自動車用吸音材として再利用されています 。2023年度は約162トンの制服をリサイクルしました 。
学生服リユース支援: グループ会社の(株)スワン(旧ヤマト自立センター)が、回収された中古学生服の検品・クリーニング・商品化作業を行い、学校でのリユース会への納品をヤマト運輸が担う形で、リユース活動を支援しています 。
これらのプログラムは、タイヤや制服といった事業運営上、大量に消費・廃棄される品目について、具体的な循環ループを構築するものであり、単なる廃棄物削減を超えた、実践的なサーキュラーエコノミーへの貢献を示しています。
ヤマトグループは、事業活動が生物多様性に与える影響を認識し、自然との共生を目指すとしていますが、気候変動や資源循環と比較すると、取り組みの具体性や戦略性は発展途上にあると考えられます。
方針: ヤマトグループ環境方針において、「生物多様性を守る土地の利用や適切な化学物質管理を行います」と明記されています 。事業活動が生物多様性の恩恵を受けていること、また影響を与えうることを認識し、地域社会の豊かな自然を次世代に繋げることを目指しています 。マテリアリティとしては「社会と企業のレジリエンス」の項目に含まれています 。
具体的な行動:
生息地創出・再生: 物流ターミナル「羽田クロノゲート」敷地内に、地域の生態系に配慮した樹木を植栽し、自然石を用いたビオトープ「和の里」を設置 。
海洋保全: 沖縄ヤマト運輸がサンゴ礁保全活動「Team Tyura Sango」に参加(苗作り、植え付け、啓発活動)し、沖縄県内各地でビーチクリーン活動を実施 。
環境教育: 子ども向けに「クロネコヤマト環境教室」を開催し、地域の環境保全意識向上を図る 。
その他: 地域環境保全への貢献を社会的責務と認識 。外部コミュニケーションにおいて生物多様性尊重に言及 。
直接的な生息地創出の事例としては羽田クロノゲートのビオトープが挙げられます 。環境方針では大気・水質・土壌汚染防止へのコミットメントが示されていますが 、生物多様性保全に特化した汚染防止策に関する具体的な情報は、提供された資料からは確認できませんでした。
環境方針で生物多様性に配慮した土地利用が謳われており 、羽田の事例ではその配慮が見られます 。しかし、全国に展開する物流施設の新規開発や土地利用変更に際して、生物多様性への影響を体系的に評価するプロセス(アセスメント)に関する情報は、提供された資料内には見当たりませんでした 。物流インフラは土地利用を通じて生態系に影響を与える可能性があるため、この点は今後の課題となり得ます。TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)のようなフレームワークが注目を集める中 、自然への依存度や影響に関する情報開示の重要性は増しており、体系的な影響評価プロセスの欠如は将来的なリスクとなる可能性があります。
「ヤマトグループ ビジネスパートナー行動ガイドライン」が存在し、サプライヤーとの対話を深める方針が示されていますが 、CSR調達ガイドライン における一般的な環境配慮事項を超えて、生物多様性に関する具体的な基準がサプライチェーン管理に組み込まれているかについての情報は確認できませんでした。
総じて、ヤマトグループの生物多様性への取り組みは、方針レベルでの言及はあるものの、気候変動や資源循環分野で見られるような詳細な戦略、具体的な行動計画、定量的な目標設定には至っていないようです。報告されている活動は、特定の拠点や地域での事例、あるいは環境教育が中心であり、グループ全体での体系的な取り組みとしてはまだ初期段階にあると考えられます 。
ヤマトグループの事業は、その性質上、様々な環境要因に関連するリスクと機会に直面しています。
規制リスク: 気候変動に関する規制強化(排出基準、燃料規制、炭素価格導入の可能性など)は、輸送コストの増加や、より迅速かつ高コストな車両代替を要求する可能性があります 。また、生物多様性保全を目的とした土地利用規制は、物流施設の立地選定や開発計画に影響を与える可能性があります 。
市場リスク: 燃料価格の変動は、化石燃料への依存度が高い現状では、運営コストに直接的な影響を与えます 。環境意識の高い顧客が、より持続可能な物流サービスや詳細な環境データを提供する競合他社を選択する可能性があり、市場シェアを失うリスクがあります 。
評判リスク: 環境目標の未達、環境汚染事故、生息地破壊などが起きた場合、ブランドイメージやステークホルダーからの信頼が損なわれる可能性があります。また、カーボンニュートラリティ等の主張が、十分な根拠に基づかないと見なされた場合(グリーンウォッシング)、批判を受けるリスクもあります 。
物理的リスク: 気候変動に伴う異常気象(台風、洪水、大雪など)の頻発化・激甚化は、物流ネットワークの寸断、施設や車両への損害、オペレーションの遅延などを引き起こす可能性があります。ヤマトグループはTCFD提言に基づき、気候関連リスクの分析を進めており、2023年度には洪水による物理的リスク(収益減少、施設・設備被害)の財務影響分析を実施しました 。この分析は、気候変動に対する事業継続計画の策定において重要な基礎情報となります。
技術的リスク: 特定の技術(特定のEVモデル、FCVなど)への依存は、技術の陳腐化、予期せぬ問題(バッテリー供給・コスト、水素インフラ整備の遅れなど)が発生した場合のリスクを伴います 。
ヤマトグループの広範な輸送ネットワークとインフラは、特に規制リスクと物理的リスクに晒されやすい構造にあります。TCFDに基づくリスク分析 は、これらのリスクを認識し、対応策を検討する上で重要なステップです。
環境への取り組みは、リスク管理だけでなく、新たな事業機会の創出にも繋がっています。
グリーン物流サービスの提供: 環境負荷低減を求める顧客(特に自社のスコープ3排出量削減を目指す企業)に対し、差別化されたサービスを提供できます。
既に実施している「宅急便」等のカーボンニュートラル配送オプション 。
顧客への詳細な排出量データの提供(EMSや追跡データ活用によるシステム開発中 )。
「EVライフサイクルサービス」による脱炭素化支援事業 。
モーダルシフト提案による排出量削減ソリューション 。
オペレーション効率化によるコスト削減: 省エネルギー投資、ルート最適化、代替燃料導入は、燃料費や光熱費の削減に繋がり、運営コストの低減とレジリエンス向上に貢献します 。開発したEMSはこの効率化を支える基盤技術です 。
ブランド価値向上と評判: 優れた環境パフォーマンスと透明性の高い情報開示は、企業のブランドイメージを高め、環境意識の高い顧客や従業員を引きつけ、社会からの信頼を醸成します 。高いESG評価の獲得もこれを後押しします 。
ESG投資の呼び込み: 高いESGパフォーマンスと主要なESG指数への組み入れ(例:MSCI ESG Leaders指数 )は、ESG投資家からの資金調達を有利にし、資本コストを低減させる可能性があります。
イノベーションと新規事業モデル: EMSや新型保冷ボックスのような独自技術の開発、EVライフサイクルサービスやヤマトエナジーマネジメントのような新規サービスの展開は、新たな成長ドライバーとなり、競争優位性を確立する機会を提供します 。
特に、EVライフサイクルサービスやJERAとのエネルギー事業JVは、自社の環境投資から得た知見やインフラを外部に提供することで、サステナビリティへの取り組みを直接的な事業機会へと転換する戦略的な動きであり、ヤマトグループの強みとなりつつあります 。これは、環境対応を単なるコストやリスク管理として捉えるのではなく、競争優位性と市場でのポジショニング確立のための能動的な手段と位置付けていることを示しています。
ヤマトグループの取り組みを評価する上で、グローバルな物流業界における先進企業の事例を参考にすることは有益です。ここでは、DHL、FedEx、UPSの取り組みを紹介します。
意欲的な目標設定: グローバル大手は、多くの場合スコープ3を含むNet-Zero目標を設定しています(DHL: 2050年 、FedEx: 2040年 、UPS: 2050年 )。DHLの2030年目標(<29百万トンCO₂e)はSBTiに整合しています 。FedExの2040年目標には契約輸送(スコープ3)が含まれます 。UPSもスコープ3排出量を報告対象としています 。
大規模な電動化: ラストマイル配送用EVへの大規模投資が共通して見られます(DHL: 39,000台以上導入、2030年目標>66% 、FedEx: 約9,900台の代替燃料車・EV 、UPS: 約19,000台の代替燃料・先進技術車、1,000台以上のEV )。
持続可能な航空燃料 (SAF): 航空貨物の脱炭素化においてSAFが重視されており、多くの場合「Book and Claim」方式(証書取引)が活用されています(DHL: 2030年目標>30%混合、GoGreen Plusサービス 、FedEx: 低炭素代替燃料を追求 )。
施設における再生可能エネルギー: 施設での100%再エネ電力化目標(UPS: 2035年まで )や、カーボンニュートラル設計の新規ビル建設(DHL )が進められています。FedExも施設内外での太陽光発電を利用しています 。
顧客向け排出量ソリューション: 顧客が自社の輸送に伴う排出量を追跡できるツール(FedEx Sustainability Insights )や、認証された低炭素・カーボンニュートラル輸送オプション(DHL GoGreen Plus 、UPS Carbon Neutral )を提供しています。
グローバルリーダーは、スコープ3を含む野心的な目標設定、EVとSAF双方への大規模投資、洗練された顧客向けソリューション開発において先行しています。ヤマトグループのスコープ1・2目標はこれらに匹敵しますが、スコープ3戦略やSAFへの関与は、これらのグローバル企業と比較するとまだ限定的であるように見受けられます。
サーキュラーエコノミー重視: 資源循環の原則(Eliminate, Circulate, Regenerate )に基づいた取り組みが重視されています。UPSは返品ソリューションを提供し 、FedExは再利用可能な包装材(Reusable Pak )を導入しています。
持続可能な包装: 環境配慮型包装材の提供、材料使用量の削減、再生材含有率の向上が進められています(FedEx 、DHLは循環型ソリューションを提供 )。
廃棄物削減とリサイクル: 事業活動や施設における廃棄物削減プログラムの実施とリサイクル最大化が図られています(FedEx: 固形廃棄物の60%をリサイクル施設へ 、環境方針に廃棄物最小化を明記 )。
先進事例では、単なるリサイクルを超えて、再利用可能な包装材の導入や資源循環システムの設計など、サーキュラーエコノミーの原則を統合する動きが見られます。ヤマトグループの包装材 や特定の資源(タイヤ、制服)のリサイクルループ に関する取り組みは、これらのトレンドとよく整合しています。
方針・戦略: 独自の生物多様性方針や声明を策定する企業が増えています(Union Pacific 、Ferragamo 、Daigas Group )。生物多様性を広範なESG戦略に統合する動きも見られます(DHLはESGアドボカシーやカーボンクレジットで言及 )。
具体的取り組み: パートナーシップを通じた生息地の回復・保全プロジェクトへの参画が一般的です(FedEx: Arbor Day Foundation等との植林、インドでの保全活動 、UPS: 植林目標 )。DHLのカーボンオフセットプロジェクトでは生物多様性への貢献(コベネフィット)も考慮されています 。
影響評価と緩和: 事業活動の影響に対し、緩和階層(回避、最小化、回復・復元、オフセット)を適用する事例があります(Union Pacific )。土地利用計画やサプライチェーンにおいて生物多様性を考慮する動きも出ています 。
資金調達とアドボカシー: 世界生物多様性枠組(GBF )のような国際目標を支持し、保全活動への資金動員に関与する企業もあります 。政策提言活動を行う例も見られます 。
生物多様性に関するベストプラクティスは、個別のプロジェクト実施に留まらず、方針策定、影響評価、サプライチェーンへの統合、国際目標への貢献といった戦略的な取り組みへと進化しています。FedExは植林や地域パートナーシップにおいて積極的な活動を展開しています 。ヤマトグループの現在報告されている活動 は、これらの先進的な取り組みと比較すると、まだ包括性に欠ける可能性があります。
これまでの分析を踏まえ、ヤマトグループが環境分野で直面している主要な課題と、今後の取り組みに向けた推奨事項を以下に示します。
脱炭素化の規模と難易度: 巨大な車両フリートの電動化(2030年目標23,500台 )は、莫大な投資、充電インフラ整備、電力系統への負荷管理(EMS/JERA連携で一部対応 )、車両調達・コストの問題 を伴います。特に、長距離・大型貨物輸送の脱炭素化は依然として大きな技術的・経済的課題です(FCV実証実験は進行中だが課題あり )。
スコープ3排出量の管理: 排出量全体に占める割合が大きいにも関わらず 、グループ全体の明確なスコープ3削減目標が不在であること は、包括的な気候変動対策を示す上で、競合他社と比較した場合の課題となり得ます。多数の輸送パートナーからデータを収集し、共同で削減努力を進めることは複雑なプロセスです 。
再生可能エネルギー導入の加速: 太陽光発電設備の設置目標(2030年までに810拠点 、現状105拠点 )達成と、70%の再エネ電力使用率目標 達成には、導入ペースの大幅な加速と大規模な電力調達が必要であり、実行面での大きな挑戦です。
包装廃棄物の管理: 進捗は見られるものの 、大量の荷物を取り扱う事業において、多様な顧客セグメントにわたる包装廃棄物を効果的に管理し、リユースや循環型ソリューションをさらに普及させることは継続的な課題です。
生物多様性への取り組みの深化: 現在の局所的な取り組み から、全国規模の事業運営、特に新規施設開発における土地利用計画やサプライチェーン管理に、生物多様性への配慮を体系的に組み込むことが、今後の重要な発展領域です(前述の分析参照)。
グローバルスタンダードへの対応: SBTi、TNFD、ISO 14068といった進化する国際基準や投資家の期待に、戦略や情報開示を継続的に整合させていく必要があります。
ヤマトグループの主要な課題は、事業規模の大きさと、物流(特に大型輸送)の脱炭素化に伴う固有の困難さに起因します。EMSやJERAとの連携、EVライフサイクルサービスといった革新的な解決策が開発されていますが、これらの効果的な実行と規模拡大が成功の鍵となります。生物多様性への取り組みは、気候変動や資源循環と比較して、まだ強化の余地が大きい分野です。
上記の課題認識に基づき、ヤマトグループが今後重点的に取り組むべき分野と具体的な行動を以下に提案します。
推奨事項1:再生可能エネルギー導入の加速と多様化: 2030年の太陽光発電810拠点目標達成に向け、中間目標を含む明確なロードマップを策定・公表する。ヤマトエナジーマネジメント(JERAとのJV )を活用し、長期的なPPA確保を進めるとともに、太陽光以外の多様な再エネ源(風力、地熱等)の導入も検討し、70%目標の確実な達成を目指す。
推奨事項2:包括的なスコープ3戦略の策定と実行: 主要な排出源(特に購入した輸送サービス、燃料・エネルギー関連活動)を対象とした、科学的根拠に基づく正式なスコープ3削減目標を設定する。輸送パートナーとの連携を強化し 、データ収集精度向上と共同での削減施策(パートナーのEV導入支援、共同配送ルート最適化等)を推進する。提供するグリーン物流サービス において、顧客にもたらすスコープ3削減効果を明確に訴求する。
推奨事項3:生物多様性戦略の強化と体系化: 昆明・モントリオール生物多様性枠組 に整合した、正式な「生物多様性行動計画」を策定する。全ての新規インフラ開発プロジェクトにおいて、緩和階層(回避・最小化・回復・オフセット)を組み込んだ体系的な生物多様性影響評価を導入する。自然を活用した解決策(NbS)の機会を探求し、現在の拠点を超えた保全活動を展開する(炭素吸収源確保目標との連携も視野に入れる)。サプライヤーガイドライン やエンゲージメントに生物多様性基準を統合する。TNFDに沿った情報開示に向けた準備を進める。
推奨事項4:FCVおよび長距離輸送脱炭素化戦略の明確化: 進行中のFCV実証実験の結果 を踏まえ、長距離輸送の脱炭素化に向けたより明確な戦略を定義する。これには、FCV開発の継続(実現可能性がある場合)、代替燃料(例:再生可能ディーゼル、バイオLNG等)の検討、あるいはモーダルシフト の大幅な拡大などが含まれうる。
推奨事項5:サーキュラーエコノミー・イノベーションの推進: 持続可能な包装材に関するイノベーション を継続し、特にリユースシステムの利用拡大(パレットでの成功事例 を他へ展開)と循環性を考慮した設計(Design for Circularity)に注力する。タイヤ・制服以外 の主要な廃棄物についても、クローズドループ・プログラムの導入を検討する。
ヤマトグループの環境パフォーマンスを相対的に評価するため、国内の主要競合であるSGホールディングス(佐川急便)および日本郵便の環境戦略を分析します。
戦略・報告: 「脱炭素ビジョン」を掲げ 、環境配慮型事業を推進 。統合報告書やESGブックを通じて積極的に情報開示を行っています 。資源循環 やサステナブル調達 にも注力しています。
気候変動: 環境対応車の導入 、モーダルシフトやDXによる効率化 、物流施設への再エネ導入 などに取り組んでいます。(具体的な目標・実績データは提供資料にはなく、詳細報告書での確認が必要)。特筆すべき点として、高知県や高尾に森林を保有し、サステナビリティ活動に活用しています 。
資源循環: 資源の再利用を重視し 、エコユニフォームやECO車体などの導入を通じて資源使用量の削減を図っています 。
生物多様性: 保有林(高知県、高尾)が生物多様性保全に貢献していると考えられます 。(これ以外の具体的な方針・活動は提供資料からは不明)
ESG評価: 第三者評価機関から極めて高い評価を一貫して得ています。具体的には、MSCI ESG格付けで最高評価「AAA」を3年連続で獲得 、CDP気候変動質問書で最高評価「Aリスト」に4年連続で選定 、Sustainalytics ESGリスクレーティングで「低リスク」(スコア19.6)と評価されています 。また、FTSE Blossom Japan Sector Relative Indexの構成銘柄にも選定されています 。
SGホールディングスは、一貫してトップレベルのESG評価を獲得しており、これは同社が環境課題に対して高いレベルの管理体制と情報開示を行っていることを示唆しています。特に、物流企業としては珍しい森林保有 は、炭素吸収や生物多様性保全の観点からユニークな戦略要素と言えます。
戦略・報告: 持続的な成長と企業価値向上を目指し 、サステナビリティレポートを毎年発行 。グループ経営理念・方針にサステナビリティを組み込み 、ステークホルダーの意見をマテリアリティ特定に反映させています 。
気候変動:
目標:2050年カーボンニュートラル、2030年度までにGHG排出量(スコープ1・2)を2019年度比46%削減 。
実績:2022年度のスコープ1・2・3排出量を報告 。2019年度比での削減率は2021年度時点で30.3% 。
取り組み:大規模なEV導入計画(2025年度までに軽四13,500台、二輪28,000台)。燃料電池小型トラックの導入 。エコドライブ推進 。運行ダイヤ・車両サイズの最適化 。デジタルタコグラフ活用 。輸送情報システム開発 。太陽光・蓄電池等を備えた「+エコ郵便局」の推進 。電力会社(中部電力)や自動車メーカー(三菱自動車)との連携 。
再生可能エネルギー:2022年度の使用率は3.8% 。
資源循環:
実績:2022年度の廃棄物発生量・リサイクル量を報告 。
取り組み:はがき等へのFSC認証紙使用拡大 。レターパック等への古紙配合 。グリーン購入推進 。フードロス削減に繋がる「エシカル配送」の試行 。
生物多様性:
方針:人権方針やCSR調達ガイドライン内で言及 。
取り組み:WWFジャパンとのパートナーシップ(森林保全プロジェクト支援)。FSC認証紙の使用 。農福連携の推進 。
ESG評価: CDP気候変動で「A-」(リーダーシップレベル)評価 。MSCI ESG格付けは「BBB」(平均レベル)。日経SDGs経営調査などで一定の評価を得ています 。
日本郵便は、ヤマトグループと同水準の気候変動目標と、非常に大規模なEV導入計画を持っています 。生物多様性に関してもWWFとの連携 により、体系的なアプローチを取っているように見えます。一方で、報告されている再生可能エネルギー導入率(2022年度3.8% )は低く、主要なESG評価(CDP A-、MSCI BBB )では、ヤマトグループやSGホールディングスに後れを取っています。
気候変動目標: スコープ1・2削減目標については、ヤマト(2030年48%削減 vs 2020年)と日本郵便(同46%削減 vs 2019年)が同レベルの野心的な目標を掲げています。SGホールディングスの具体的目標値は不明ですが、高い評価から同等以上の取り組みが推察されます。現時点での再エネ導入率ではヤマトがリードしています。3社ともEV導入に注力しており、ヤマトと日本郵便はFCVも視野に入れています。
資源循環: 3社とも資源効率化を重視しています。提供された情報の中では、ヤマトグループが廃棄物削減量、リサイクル率、具体的な循環プログラム(タイヤ、制服)に関する最も詳細な定量データを開示しています 。SGホールディングスはエコユニフォーム等 、日本郵便は廃棄物データ報告やFSC/再生紙利用 に言及しています。
生物多様性: 日本郵便がWWFとの連携 により最も体系化されているように見えます。SGホールディングスは保有林 というユニークな資産を持ちます。ヤマトグループの活動は現時点では局所的 に見えます。方針レベルでのコミットメントは各社にありますが、戦略の深さには差が見られます。
総合的なESG評価: 第三者評価に基づくと、SGホールディングスがリードし、次いでヤマトグループ、日本郵便の順となります(詳細は次章)。
国内大手物流3社は、それぞれ環境課題に取り組んでいますが、強みや注力分野は異なります。SGホールディングスは総合的なESG評価で際立っています。ヤマトグループは再エネ導入や資源循環における定量的な進捗と、革新的なサービス開発(EVライフサイクル、EMS)が特徴です。日本郵便は意欲的なEV計画と体系的な生物多様性パートナーシップを持つ一方、再エネ導入や総合評価では改善の余地があります。
主要なESG評価機関による評価結果は、企業の環境パフォーマンスと情報開示の質を客観的に比較する上で重要な指標となります。
CDP(気候変動): 2024年評価(2025年2月発表)において、最高評価である「Aリスト」に選定されました 。これは、過去の評価(一部第三者サイトでは「B」と報告 )からの向上であり、気候変動への取り組みと情報開示において、CDPの基準で世界的なリーダー企業と認められたことを意味します 。
MSCI ESGレーティング: 「AA」評価(リーダーレベル)を維持しています(2023年11月時点の指数データ等に基づく )。MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数およびMSCI ESG Leaders指数の構成銘柄に継続選定されています 。AA評価は、業界固有のESGリスク管理において同業他社比較で優れた企業であることを示します 。
Sustainalytics ESGリスクレーティング: 直近のデータではスコア24.1(リスクレベル:Medium)と評価されています 。これは運輸業界グループ383社中161位、グローバル全体15,167社中5535位に相当します(スコアが低いほどリスクが低い)。Mediumリスク評価は、重要なESG課題に対するエクスポージャーや管理体制に中程度のリスクがあると見なされていることを示唆します。
FTSE Russell: FTSE Blossom Japan Sector Relative Indexの構成銘柄であり、セクター内で相対的に優れたESG対応を行っている企業と評価されています 。
ヤマトグループは、特にCDPのAリスト選定やMSCIのAA評価維持により、高いESG評価を得ています。これは気候変動対策と情報開示への注力を反映した結果です。Sustainalyticsの評価は良好ながらも、更なる改善の余地を示唆しています。主要なESG指数への組み入れは、投資家コミュニティからの評価を裏付けています。
SGホールディングス:
CDP(気候変動):「Aリスト」に4年連続選定(2024年評価含む)。
MSCI ESGレーティング:「AAA」(最高評価)を3年連続獲得 。
Sustainalytics ESGリスクレーティング:スコア19.6(リスクレベル:Low)。運輸業界383社中89位 。
FTSE Russell:FTSE Blossom Japan Sector Relative Index構成銘柄 。
日本郵便ホールディングス:
CDP(気候変動):2023年評価で「A-」(リーダーシップレベル)。
MSCI ESGレーティング:「BBB」(平均レベル)。
Sustainalytics ESGリスクレーティング:日本郵政ホールディングス自体のスコアは提供資料に明記されていませんが、関連金融機関は中程度のリスク評価を受ける傾向があります 。
その他:日経SDGs経営調査で評価(日本郵政3つ星、ゆうちょ・かんぽ3.5星)。
総合リーダー: ESG評価全体を見ると、SGホールディングスが一貫して3社の中で最も高いパフォーマンスを示しています。CDP(Aリスト)、MSCI(AAA)、Sustainalytics(Low Risk)の全てでトップレベルの評価を得ており、ESGリスク・機会に対する卓越した管理能力と高い情報開示レベルがうかがえます。
ヤマトホールディングスの位置づけ: ヤマトグループは、SGホールディングスに次ぐ強力なポジションを確立しています。直近のCDP Aリスト選定 により、気候変動分野ではSGホールディングスと同等の評価を得ました。MSCIのAA評価 もリーダーレベルであり非常に高い評価ですが、SGホールディングスのAAA評価には一歩及びません。Sustainalyticsのリスクスコア(Medium Risk )も、SGホールディングスのLow Risk よりは若干高い(リスクが高い)評価となっています。
日本郵便の位置づけ: 日本郵便は、これらの主要なESG評価においては、3社の中で相対的に下位に位置づけられます。CDPのA-評価 はリーダーシップレベルであり良好ですが、Aリストには達していません。MSCIのBBB評価 は平均レベルであり、競合2社のリーダーレベル評価とは差があります。
2023年 | 656,732t-CO2 |
2022年 | 659,537t-CO2 |
2021年 | 673,213t-CO2 |
2023年 | 166,350t-CO2 |
2022年 | 200,674t-CO2 |
2021年 | 229,042t-CO2 |
2023年 | 2,218,291t-CO2 |
2022年 | 2,215,690t-CO2 |
2021年 | 2,297,206t-CO2 |
スコープ1+2 CORの過去3年推移
2023年 | 468kg-CO2 |
2022年 | 478kg-CO2 |
2021年 | 503kg-CO2 |
スコープ3 CORの過去3年推移
2023年 | 1,261kg-CO2 |
2022年 | 1,230kg-CO2 |
2021年 | 1,281kg-CO2 |
スコープ1+2のCOA推移
2023年 | 725kg-CO2 |
2022年 | 777kg-CO2 |
2021年 | 830kg-CO2 |
スコープ3のCOA推移
2023年 | 1,953kg-CO2 |
2022年 | 2,000kg-CO2 |
2021年 | 2,114kg-CO2 |
2023年 | 1兆7586億円 |
2022年 | 1兆8007億円 |
2021年 | 1兆7936億円 |
2023年 | 376億円 |
2022年 | 459億円 |
2021年 | 560億円 |
2023年 | 1兆1359億円 |
2022年 | 1兆1076億円 |
2021年 | 1兆869億円 |
すべての会社と比較したポジション
業界内ポジション
CORスコープ1+2
CORスコープ3
CORスコープ1+2
CORスコープ3
COAスコープ1+2
COAスコープ3
COAスコープ1+2
COAスコープ3