GX RESEARCH
更新日: 2025/4/22

ジャックス

8584.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン金融・保険業
環境スコア320
売上
184,782百万円
総資産
3,777,595百万円
営業利益
33,126百万円

COR(売上高炭素比率)

年間CO2排出量(kg)÷ 売上高(百万円)
Scope1+2
38kg
Scope3
2,263kg

COA(総資産炭素比率)

年間CO2排出量(kg)÷ 売上高(百万円)
Scope1+2
2kg
Scope3
111kg

Scope1

事業者自らによる直接排出
1,533t-CO2
2023年実績

Scope2

エネルギー消化に伴う間接排出
5,450t-CO2
2023年実績

Scope3

事業者の活動に関連する他社の排出
418,132t-CO2
2023年実績

スコープ3カテゴリー別データ

カテゴリー2021年度2022年度2023年度
1購入した製品・サービス
37,917
40,868
(2,951)
42,653
(1,785)
2資本財
14,269
16,509
(2,240)
14,260
(2,249)
3燃料・エネルギー関連活動
1,288
1,173
(115)
1,196
(23)
4輸送・配送(上流)
1,668
1,400
(268)
1,242
(158)
5事業から発生する廃棄物
8
132
(124)
233
(101)

国際イニシアティブへの参加

SBT
RE100
EV100
EP100
UNGC
30by30
GXリーグ

ガバナンス・フレームワーク開示

check
サステナビリティ委員会
check
TCFD・IFRS-S2
TNFD
潜在的環境財務コスト(シナリオ別試算)
2023年度排出量データ: スコープ1(1,533t)、 スコープ2(5,450t)、 スコープ3(418,132t)
低コストシナリオ
想定単価: 3,000円/t-CO₂
スコープ1:4.6百万円
スコープ2:16.4百万円
スコープ3:12.5億円
総額:12.8億円
売上高比率:0.69%
中コストシナリオ
想定単価: 5,000円/t-CO₂
スコープ1:7.7百万円
スコープ2:27.3百万円
スコープ3:20.9億円
総額:21.3億円
売上高比率:1.15%
高コストシナリオ
想定単価: 10,000円/t-CO₂
スコープ1:15.3百万円
スコープ2:54.5百万円
スコープ3:41.8億円
総額:42.5億円
売上高比率:2.30%
※潜在的環境財務コストは、仮想的なカーボンプライシングシナリオをもとに算出した参考値です。

環境への取り組み

パーパス制定

ジャックス、パーパス制定:「夢のある未来」「豊かな社会」実現へ

ジャックスは新たなパーパス「『夢のある未来』『豊かな社会』の実現に貢献する」を制定。創業以来の精神「信為萬事本」を基盤に、ステークホルダーとの信頼関係を強化し、持続的成長を目指す。環境配慮型社会への貢献もパーパス実現の一環として位置づけられている 。

グリーンボンド発行

株式会社ジャックスによるグリーンボンド発行

ジャックスが期間5年、総額100億円のグリーンボンドを発行。調達資金は主にソーラーローンのリファイナンスに充当予定。JCRから最上位評価「Green1(F)」を取得し、再生可能エネルギー普及への貢献と環境問題への取り組み姿勢を示した 。  

気候変動関連のリスク・機会

※掲載情報は公開資料をもとに作成しており、全てのリスク・機会を網羅するものではありません。 より詳細な情報は企業の公式発表をご確認ください。

リスク

移行リスク

気候変動対策強化に伴う規制(省エネ法、炭素価格等)や政策変更は、ジャックス自身の事業運営コスト増に加え、顧客企業の信用リスク増大(移行リスク)に繋がる可能性がある。また、ESG評価の低い企業は市場(顧客・投資家)からの評価低下や資金調達コスト上昇のリスクに直面する。特に「信頼」を重んじる同社にとって評判リスクは大きいと分析される 。

物理的リスク

異常気象の頻発化といった気候変動の物理的影響は、消費者の消費行動や特定産業(観光、農業等)の業績悪化を通じて、ジャックスのクレジット債権ポートフォリオの質を低下させるリスクがある。担保価値の変動リスクも考慮されるべき点である。定量的な影響評価は今後の課題と見られる。

機会

1998年来のソーラーローン実績 を活かし、EVローン等グリーンファイナンス市場での成長が期待される。2019年の100億円規模のグリーンボンド発行 はESG投資家への訴求力を高めた。環境経営推進は、ブランドイメージ向上、優秀な人材獲得 、コスト削減(例:省エネ活動による光熱費削減 )、ひいては企業価値向上に繋がる機会となる。

目標

省エネ法に基づきエネルギー使用量の年率1%以上削減を目標として掲げている 。実績として2017年度はエネルギー使用量を前年比3.1%削減した 。また、環境商材ローン(ソーラーローン等)の推進 やグリーンボンド発行 を通じ、事業を通じた環境保全への貢献を目指している。より包括的なGHG削減目標や資源循環・生物多様性目標の設定が今後の焦点となる。

環境アナリストレポート

株式会社ジャックスの環境イニシアティブ及びパフォーマンスに関する包括的分析レポート

序論

本報告書の目的と分析範囲

本報告書は、株式会社ジャックス(以下、ジャックス)の環境に関する取り組みとそのパフォーマンスについて、特に「気候変動」「資源循環」「生物多様性」の三つの重点分野に焦点を当て、包括的な分析を行うことを目的とする。この分析は、同社の環境スコア算定に必要な詳細情報の収集、及び将来の戦略的意思決定に資する学術的レベルの洞察を提供することを目指すものである。分析範囲には、ジャックスの具体的な環境活動、関連する潜在的リスクと事業機会、金融サービス業界における先進事例、競合他社との比較ベンチマーキング、そして同社が直面する課題と将来に向けた提言が含まれる。本報告書は、日本語で記述され、見出しレベル4までの階層構造を用い、全ての情報、データ、比較分析は、表や箇条書き、リスト形式を一切使用せず、物語形式(文章のみ)で記述するという要件に従う。

株式会社ジャックスの事業概要とサステナビリティへのコミットメント

ジャックスは、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)に属するコンシューマーファイナンス企業であり、1954年に北海道函館市で百貨店の月賦販売を提供する事業として創業した 1。以来70年にわたり、「お客様の豊かな生活を応援すること」を使命とし、国内及び海外(ASEAN4カ国)においてクレジット事業、カード・ペイメント事業、ファイナンス事業を展開している 1。同社は、創業以来の精神である「信為萬事本(信を万事の本と為す)」を全ての事業の根本に据え、これをグループの持続的な成長の原動力であると位置付けている 2

この企業哲学は、ジャックスのサステナビリティへのコミットメントにも反映されている。同社は、「『夢のある未来』『豊かな社会』の実現に貢献する」という経営理念を掲げ 3、株主、顧客、取引先、社会、環境といったあらゆるステークホルダーの信頼と期待に応え、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を実現するためには、企業の社会的責任(CSR)を重視した経営が不可欠であるとの認識を示している 4。特に、「消費者の安心・安全なくらし」や「環境にやさしい、便利で快適な社会」をサポートし、事業を通じて持続可能な社会の実現に貢献することがジャックスグループの社会的責任であると考えている 4。この考えに基づき、経済的利益の追求のみならず、社会福祉、環境、教育などの課題にも積極的に取り組むことが企業価値向上のために重要であると表明している 4。近年の情報開示においては、従来の「アニュアルレポート」に替えて2022年度より「統合報告書」を発行しており、これは財務情報と非財務情報(ESG側面を含む)を統合的に報告し、ステークホルダーへの説明責任を果たそうとする姿勢の変化を示唆している 1。ジャックスが長年にわたり培ってきた「信頼」を基盤とする企業文化を、現代のサステナビリティ要請にいかに結びつけ、具体的な行動として実践しているかが、本報告書の分析における重要な視点となる。

第1章 株式会社ジャックスの環境への取り組み

ジャックスグループは、地球環境の保全と管理が人類共通の重要課題であると認識し、環境負荷の軽減と資源の節約に配慮した企業活動を通じて、社会全体の環境保全に貢献することを目指している 6。以下では、「気候変動」「資源循環」「生物多様性」の各分野における具体的な取り組みを詳述する。

1.1 気候変動への対応

1.1.1 温室効果ガス排出削減に関する方針と実績

ジャックスは、気候変動問題を重要な経営課題の一つとして認識し、事業活動に伴う環境負荷の低減に努めている 6。具体的な取り組みとして、改正されたエネルギーの使用の合理化等に関する法律(改正省エネ法)における特定事業者の指定を受けており、エネルギー使用量に関して年率1%以上の削減を目標として掲げている 4。この目標達成に向け、社内での省エネルギー活動を推進している。過去の実績を見ると、例えば2015年度にはエネルギー使用量が2,136キロリットル(原油換算、以下同様)となり、前年度比で4.7%の削減を達成した。エネルギー使用原単位(床面積あたり)についても同年度は0.04799キロリットル毎平方メートルで、前年度比3.5%の削減となった。続く2016年度はエネルギー使用量が2,119キロリットル(前年度比0.8%減)、原単位が0.04734キロリットル毎平方メートル(同1.4%減)、2017年度はエネルギー使用量が2,054キロリットル(同3.1%減)、原単位が0.04368キロリットル毎平方メートル(同7.7%減)と、継続的な削減努力が見られる 4。これらの省エネ活動に加え、社用車として低燃費車両(エコカー)を導入するなど、二酸化炭素(CO2)排出量の削減にも積極的に取り組んでいる 4。これらの活動は、主に自社の事業活動における直接的なエネルギー消費(Scope 1及びScope 2排出量に相当)の削減に焦点を当てているように見受けられる。規制遵守(省エネ法)が取り組みの推進力の一つとなっている側面も示唆されるが、企業運営における効率化と環境負荷低減の両立を目指す姿勢がうかがえる。しかしながら、金融機関にとってより重要性が増している投融資ポートフォリオを通じた間接的な排出量(Scope 3)に関する方針や具体的な取り組みについては、提供された情報からは詳細を確認できなかった。

1.1.2 環境配慮型金融サービスの提供

ジャックスは、自社の事業活動における環境負荷低減に留まらず、金融サービスを通じて社会全体の環境保全に貢献することも目指している 6。その中心的な取り組みが、「環境商材ローン」の推進である 6。特に、太陽光発電システムの設備購入及び設置工事費用を対象とした「ソーラーローン」は、1998年に業界で初めて取り扱いを開始したとされ、同分野における先駆的な役割を果たしてきた歴史を持つ 4。現在もクレジット事業における注力商品として位置づけられ、その取り扱い拡大に取り組んでいる 4。この取り組みは、再生可能エネルギーの普及を金融面から支援するものであり、気候変動緩和への貢献を意図している。

さらに、このソーラーローン事業を裏付ける形で、ジャックスは2019年に期間5年、総額100億円のグリーンボンドを発行している 8。このグリーンボンドの資金使途は、主にソーラーローンの実行のために過去に調達した資金のリファイナンス(借り換え)に充当されることが計画された 7。このグリーンボンド発行に際しては、第三者評価機関である株式会社日本格付研究所(JCR)から「JCRグリーンファイナンス・フレームワーク評価」において最上位評価である「Green1(F)」を取得した 7。この評価は、資金使途であるソーラーローンが太陽光発電システムという省エネルギー性能の高い設備を対象としており、再生可能エネルギーとして環境改善に資するグリーンプロジェクトであること、適切な管理体制やリスク回避策が講じられていること、そして発行体であるジャックスの環境問題への取り組み姿勢や情報開示の十分性が認められたことを示している 7。グリーンボンドの発行は、ジャックスの環境への取り組みを市場にアピールし、サステナビリティに関心を持つ投資家からの資金調達を可能にする点で意義がある。ただし、資金使途が既存のローン債権のリファイナンス中心である場合、新たな再生可能エネルギー導入を直接的に促進する効果(追加性)は、新規プロジェクトへの融資と比較すると限定的である可能性も考慮する必要がある。ジャックスが今後、ソーラーローン以外の新たなグリーンファイナンス商品を開発・展開していくかどうかが、気候変動への貢献をさらに拡大する上で注目される点である。

1.1.3 気候関連リスク・機会の認識と情報開示

ジャックスは、気候変動がもたらす財務的な影響、すなわちリスクと機会についての認識を深め、その情報開示にも取り組み始めている。2023年度の統合報告書には、「TCFD提言に基づく情報開示」という項目が含まれていることが確認できる 3。TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言は、企業に対し、気候変動に関連するガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標について開示することを推奨する国際的な枠組みである。ジャックスがこの枠組みに言及していることは、同社が気候関連のリスク(物理的リスク、移行リスク)と機会を経営上の重要事項として認識し、ステークホルダーに対して透明性のある情報提供を行おうとしている姿勢を示すものである。金融業界全体でTCFDに基づく開示が標準化しつつある潮流 9 に対応しようとする動きと捉えられる。ただし、統合報告書の目次に項目が存在すること自体が、必ずしも提言の要求事項を網羅した質の高い開示を意味するわけではない。具体的な開示内容、例えば、気候変動シナリオを用いた事業戦略の頑健性評価、リスクの財務的影響の定量化、Scope 3排出量を含む指標と目標設定などの詳細については、実際の報告書本文を確認する必要がある。TCFD開示の実質的な内容と深度が、ジャックスの気候変動に対する戦略的な取り組みレベルを評価する上で重要な判断材料となる。

1.2 資源循環の推進

1.2.1 資源消費量削減に向けた社内努力

ジャックスは、事業活動において限りある資源の有効活用と環境負荷の低減に努めることを環境方針の一部として掲げている 6。社内での具体的な取り組みとしては、コピー用紙の使用量削減が挙げられている 4。これは、多くの企業で実施されている一般的なオフィスにおける資源節約策の一つである。このような取り組みは、コスト削減と環境負荷低減に貢献するものの、ジャックスの事業全体における資源消費という観点から見ると、その影響は限定的である可能性がある。例えば、クレジットカード発行に伴うプラスチック使用量の削減や、顧客への請求書や明細書の電子化推進といった、より事業活動に根差した資源循環への貢献策についての情報は、提供された資料からは確認できなかった。現在の取り組みは、主に社内業務における効率化と標準的な環境配慮活動に焦点を当てている段階にあると考えられる。

1.2.2 廃棄物削減とリサイクルの促進

資源循環のもう一つの側面である廃棄物の削減に関しても、ジャックスは目標として掲げている 6。しかしながら、具体的な廃棄物削減プログラムの内容、削減目標値、実績データ、あるいはリサイクル率向上に向けた施策など、その取り組みの詳細や成果を示す情報は、現時点での公開情報からは見出すことが難しい。コピー用紙削減 4 は廃棄物削減にも繋がるが、オフィスから排出される他の廃棄物(例:什器、電子機器、その他の消耗品)の管理やリサイクルに関する方針、あるいは事業活動(例:カード更新時の旧カード処理)に関連する廃棄物についての言及は少ない。資源循環を戦略的に推進するためには、廃棄物の種類別排出量の把握、具体的な削減・リサイクル目標の設定、そしてサプライチェーンにおける資源利用の効率化など、より包括的なアプローチが求められる。現状では、資源循環に関する取り組みの全体像やその進捗度合いを評価するための情報が不足していると言わざるを得ない。

1.3 生物多様性の保全

1.3.1 生物多様性への配慮に関する基本姿勢

ジャックスは、環境保全・管理を人類共通の重要課題と認識し、企業活動において環境負荷の軽減に努めることを表明している 6。この「環境保全」という広範な概念の中に、生物多様性の保全も含まれると解釈できる。同社は、社会全体の環境保全、管理に努めることを目指しており 6、その基本的な姿勢は示されている。しかしながら、気候変動対策におけるソーラーローンのような特定の重点分野として、生物多様性が明確に位置づけられているか、あるいは生物多様性損失のリスクや事業活動との関連性について具体的な方針が策定されているかについては、提供された情報からは判断できない。現状では、生物多様性への配慮は、より広範な環境保全の枠組みの中で、一般的な配慮事項として認識されている段階にある可能性が高い。

1.3.2 関連する具体的な取り組み事例

生物多様性保全に関連する具体的な活動として確認できたのは、ジャックスの創業70周年記念施策の一環として、特定非営利活動法人クリーンオーシャンアンサンブルへの寄付が行われた事例である 10。このNPOは、海洋ごみの回収や調査、再資源化などに取り組んでおり、その活動は海洋生態系の保全、ひいては海洋生物の多様性維持に間接的に貢献するものと考えられる。この寄付は、社会貢献活動として意義深いものであるが、ジャックスの事業活動そのものに生物多様性への配慮を組み込む戦略的な取り組みとは性質が異なる。例えば、金融機関として投融資先の事業活動が生物多様性に与える影響(土地利用の変化、資源採取、汚染など)を評価し、リスク管理プロセスに統合する、あるいは生物多様性保全に貢献するプロジェクトへの資金提供を行うといった、より本業に近い形での関与については、現時点での情報からは確認できない。生物多様性に関する取り組みは、現段階では主に社会貢献活動を通じた間接的な支援に留まっている可能性がある。

第2章 環境要因に伴うリスクと機会の分析

ジャックスのような金融サービス企業にとって、気候変動、資源循環、生物多様性といった環境要因は、事業継続に関わるリスクであると同時に、新たな成長をもたらす機会ともなり得る。本章では、ジャックスを取り巻く環境関連のリスクと機会について分析する。

2.1 ジャックスを取り巻く環境リスク

2.1.1 規制強化及び政策変更に伴うリスク

世界的に気候変動対策が加速する中、日本においても2050年カーボンニュートラル目標が掲げられ 11、関連する規制や政策が強化される傾向にある。これには、省エネルギー基準の厳格化、炭素価格付け(カーボンプライシング)の導入可能性、あるいは特定の産業に対する環境規制の強化などが含まれる。こうした規制強化は、ジャックス自身の事業運営(例:オフィスでのエネルギー消費)に直接影響を与える可能性があるほか、より大きな影響としては、同社の顧客企業や個人顧客が属する産業や経済活動全体への影響を通じて、間接的にジャックスの事業(例:融資先の信用リスク、担保価値の変動)に波及する可能性がある(移行リスク)。また、金融セクター全体に対しても、マネーロンダリング対策等と同様に 12、気候変動を含むESGリスク管理体制の強化や情報開示の拡充を求める監督当局からの要請が高まっている 9。これらの国内外の規制・政策動向に適切に対応できない場合、コンプライアンス上の問題や事業運営上の制約に直面するリスクが存在する。

2.1.2 市場環境の変化と競争上のリスク

日本の信販・クレジットカード業界は、多数のプレイヤーが存在し、競争が激しい市場である 13。近年、投資家や消費者の間で、企業の環境・社会への配慮を重視する傾向が強まっている 16。競合他社がジャックスよりも先進的で包括的な環境戦略を打ち出し、それを効果的にアピールした場合、ジャックスは環境意識の高い顧客層からの支持を失ったり、ESG投資を重視する投資家からの評価が相対的に低下したりする可能性がある。これは、市場シェアの喪失や資金調達コストの上昇に繋がるリスクとなる。また、気候変動の物理的な影響(異常気象の頻発化など)が、消費者の消費行動や特定の産業(例:観光、農業)の業績に影響を与え、それがジャックスのクレジット債権の質に影響を及ぼす可能性も否定できない。さらに、環境配慮型の商品やサービス(例:エコカーローン、省エネリフォームローン)に対する需要が高まる一方で、ジャックスがこうした市場の変化に対応した魅力的な商品を提供できなければ、競争上の機会を逸することにもなりかねない。

2.1.3 環境評価低下に伴う評判リスク

ジャックスは、創業以来「信為萬事本」を掲げ、信頼を事業の根幹に置いている 2。環境問題への対応が不十分であると社会的に認識されたり、ESG評価機関からの評価が著しく低下したりした場合、あるいは万が一、環境に関するネガティブな事象(例:投融資先での環境汚染問題への関与)が発生した場合、長年築き上げてきた「信頼」が損なわれ、深刻な評判リスク(レピュテーショナルリスク)に繋がる可能性がある。これは、顧客離れ、従業員の士気低下、株主や親会社であるMUFGを含むビジネスパートナーとの関係悪化など、多方面に悪影響を及ぼしかねない。したがって、環境への取り組みに関する透明性の高い情報開示 6 と、実態に基づいた誠実なコミュニケーションが極めて重要となる。見せかけだけの取り組み(グリーンウォッシング)と見なされることは、特に信頼を重んじる企業文化を持つジャックスにとっては、大きなダメージとなり得る。

2.2 環境課題への対応を通じた事業機会

2.2.1 グリーンファイナンス及びサステナブル市場での成長機会

環境問題への関心の高まりは、リスクだけでなく、新たな事業機会も創出している。特に、グリーンファイナンス市場は世界的に拡大しており、日本国内においても成長が見込まれる分野である。ジャックスは、1998年からソーラーローンを提供してきた実績があり 4、再生可能エネルギー分野における一定の知見と顧客基盤を有していると考えられる。この経験を活かし、太陽光発電以外にも、省エネルギー住宅のリフォームローン、電気自動車(EV)購入ローン、あるいはサーキュラーエコノミー(循環経済)に貢献する事業への融資など、環境配慮型の商品・サービスのラインナップを拡充することで、新たな収益源を開拓できる可能性がある 18。2019年のグリーンボンド発行 8 は、サステナビリティに関心を持つ投資家層へのアクセスを強化し、ブランドイメージ向上にも寄与したと考えられる。今後も同様の資金調達を継続・拡大することで、グリーンビジネスの成長を加速させることができる。環境意識の高い消費者や企業のニーズに応える革新的な金融ソリューションを提供することは、ジャックスにとって大きな成長機会となり得る。

2.2.2 環境経営推進による企業価値向上

環境課題への積極的な取り組みは、リスク管理や新たな収益機会の創出に留まらず、企業価値全体の向上にも貢献する。優れた環境パフォーマンスは、企業のブランドイメージを高め、製品やサービスの差別化要因となり得る。また、特に若い世代を中心に、企業の社会・環境への貢献度を就職先選びの重要な要素と考える人材が増えていることから、積極的な環境経営は優秀な人材の獲得と維持にも繋がる可能性がある(ジャックスが人的資本経営を重視している点 19 とも整合する)。さらに、ESG投資の拡大に伴い、良好な環境評価は投資家からの評価を高め、資金調達を有利にする可能性がある。社内的にも、省エネルギー活動の推進などは、光熱費等のコスト削減に直結し、経営効率の改善に寄与する 4。加えて、環境保全活動を通じて地域社会との良好な関係を構築したり 5、規制当局との対話を円滑に進めたりすることも期待できる。これらの有形・無形の価値創造を通じて、ジャックスが目指す持続的な成長と中長期的な企業価値の向上 4 に貢献すると考えられる。

第3章 業界動向、競合分析及びベンチマーキング

ジャックスの環境への取り組みを評価し、今後の方向性を検討する上で、同社が属する金融サービス業界、特に信販・クレジットカード業界全体の動向や、主要な競合他社の戦略、そして客観的なパフォーマンス指標との比較は不可欠である。

3.1 金融サービス業界における環境先進事例

近年、国内外の金融機関は、気候変動をはじめとする環境課題への対応を急速に強化している。業界における先進的な事例(ベストプラクティス)としては、以下のような取り組みが挙げられる。まず、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に関して、単に賛同を表明するだけでなく、複数の気候変動シナリオを用いた定量的なリスク・機会分析を実施し、その結果を経営戦略に反映させ、具体的な指標と目標と共に詳細に開示する動きが進んでいる 9。特に、金融機関自身の排出量(Scope 1, 2)だけでなく、投融資ポートフォリオからの排出量(Scope 3 カテゴリー15)の算定と削減目標(科学的根拠に基づく目標、SBTなど)の設定に取り組む企業が増加している。

また、グリーンファイナンスの範囲も拡大しており、再生可能エネルギーだけでなく、エネルギー効率改善、グリーンビルディング、持続可能な交通手段、資源効率・循環経済、さらには生物多様性保全に貢献するプロジェクトなど、多様な環境テーマに対応した融資基準や金融商品(サステナビリティ・リンク・ローンなど)が開発・提供されている。リスク管理の観点からは、ESG要因、特に気候変動リスクや生物多様性損失リスクを、従来の信用リスク評価プロセスや投資判断プロセスに体系的に組み込む動きが加速している。さらに、投融資先企業に対して、気候変動への移行計画策定や環境パフォーマンス改善を促すための積極的な対話(エンゲージメント)を行うことも重要な取り組みとなっている 21

資源循環に関しては、自社のオフィスにおけるペーパーレス化や廃棄物削減・リサイクルの徹底に加え、クレジットカードの素材を環境負荷の低いもの(例:リサイクルプラスチック)に切り替えたり、デジタル化を推進したりする動きが見られる。生物多様性に関しては、その重要性への認識が高まりつつあり、投融資活動が生物多様性に与える影響評価(ネイチャー関連財務情報開示タスクフォース、TNFDの枠組みなど)、自然資本への投資、あるいは生物多様性ポジティブな影響をもたらす事業へのファイナンスなどが模索されている段階である。これらの取り組みを支える基盤として、サステナビリティ担当役員の設置や専門部署の強化といったガバナンス体制の整備、そして従業員全体のESGリテラシー向上のための研修や能力開発 17 も不可欠な要素となっている。これらの先進事例は、ジャックスが今後目指すべき方向性を考える上での重要な参照点となる。

3.2 主要競合他社の特定と環境戦略分析

3.2.1 競合企業の選定根拠

日本の信販・クレジットカード市場において、ジャックスの主要な競合他社と考えられる企業を特定する。市場シェア、事業規模(営業収益など)、提供するサービス(個品割賦、クレジットカード、各種ローン)の類似性といった観点から、株式会社オリエントコーポレーション(オリコ)、株式会社クレディセゾン、三菱UFJニコス株式会社、株式会社ジェーシービー(JCB)、三井住友カード株式会社、イオンフィナンシャルサービス株式会社、楽天カード株式会社などが主要な競合企業として挙げられる 13。これらの企業は、国内のクレジットカード発行枚数や取扱高で上位に位置し、ジャックスと同様に個人向け金融サービスを幅広く展開しているため、環境戦略を含む経営戦略全般において比較対象として適していると考えられる。

3.2.2 選定された競合企業の環境への取り組み比較

選定された主要競合各社について、それぞれの公式ウェブサイト、統合報告書、サステナビリティレポートなどの公開情報を基に、「気候変動」「資源循環」「生物多様性」に関する具体的な環境への取り組み状況を調査し、ジャックスの取り組みと比較分析することが求められる。この詳細な比較分析には、本報告書の作成時点で利用可能な情報源だけでは不十分であり、各社の最新の開示情報を別途入手・分析する必要がある。

比較分析を行う際には、例えば以下のような観点が含まれるだろう。気候変動に関しては、各社が設定しているGHG排出削減目標(Scope 1, 2, 3のカバー範囲、目標水準、SBT認定の有無など)、TCFD提言に基づく情報開示の深度(シナリオ分析の有無、リスクの定量評価など)、提供しているグリーンファイナンス商品の種類と規模などを比較する。資源循環については、オフィスでの取り組み(ペーパーレス化率、廃棄物削減目標・実績)に加え、クレジットカードの素材変更(例:バイオマスプラスチックやリサイクル素材の採用状況)、デジタル明細への移行率、サプライチェーンにおける環境配慮要請などを比較する。生物多様性に関しては、関連する方針の策定状況、事業活動における生物多様性への影響評価(TNFDへの対応状況など)、関連する投融資基準や保全活動への支援状況などを比較する。

このような比較を通じて、ジャックスが業界内で先行している分野(例えば、ソーラーローンの長い歴史 4)、標準的なレベルにある分野、あるいは取り組みが相対的に遅れている可能性のある分野(例えば、Scope 3排出量の算定・開示、生物多様性への戦略的アプローチなど)を具体的に特定することが可能となる。この相対的な位置づけの把握は、ジャックスが競争環境の中で自社の環境戦略をどのように進化させていくべきかを検討する上で、極めて重要な情報となる。

3.3 環境スコアに基づくパフォーマンス比較

3.3.1 主要なESG評価の概要

企業の環境・社会・ガバナンス(ESG)への取り組みを評価し、スコアリングする外部機関が存在する。これらの評価は、投資家が投資判断を行う際や、企業が自社のパフォーマンスを客観的に把握する上で参考にされる。環境側面に関して、日本企業が対象となることの多い主要な評価やイニシアティブとしては、CDP(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)による気候変動、水セキュリティ、フォレストに関する質問書への回答に基づくスコアリング、MSCI社によるMSCI ESGレーティング、Sustainalytics社によるESGリスクレーティング、FTSE Russell社によるFTSE Blossom Japan IndexなどのESG指数への組み入れ評価などが挙げられる。これらの評価機関は、それぞれ独自の評価方法論を有しているが、一般的には企業の環境方針、リスク管理体制、パフォーマンスデータ、情報開示の質などを基に評価を行っている。

3.3.2 ジャックスと競合他社の環境スコア比較分析

ジャックス及び前項で特定した主要競合他社について、上記のような主要なESG評価機関から公表されている環境関連スコアや総合ESGスコア、格付けなどを調査し、比較分析することが有効である。この情報も、各評価機関のウェブサイトや企業の開示情報から別途入手する必要がある。

比較分析は、具体的なスコアや格付けを物語形式で記述することによって行う。例えば、「最新のCDP気候変動スコアにおいて、ジャックスが『C』評価であったのに対し、競合A社は『B』、競合B社は『A-』評価を得ており、気候変動に関する情報開示とパフォーマンス管理のレベルに差異が見られる。同様に、MSCI ESGレーティングでは、ジャックスは『BB』評価であるが、競合A社は『A』評価を維持しており、相対的に環境リスク管理体制や機会への対応において改善の余地がある可能性が示唆される」といった形で記述する(注:ここでのスコアは説明のための架空の例であり、実際の評価結果は調査が必要)。

これらのスコア比較は、ジャックスの環境パフォーマンスが外部からどのように評価されているかを客観的に示し、競合他社との相対的な立ち位置を把握する一助となる。ただし、評価機関ごとに評価軸や重点項目が異なるため、スコアの高低だけでなく、その背景にある評価理由(例えば、特定の項目での評価が低い理由など)を可能な範囲で分析し、第1章や第3.2項で述べた具体的な取り組み内容と関連付けて解釈することが重要である。スコアはあくまで結果指標の一つであり、その背後にある実質的な活動内容と合わせて評価することで、より深い洞察が得られる。

第4章 ジャックスの環境課題評価と将来への提言

これまでの分析を踏まえ、ジャックスが現在直面している環境分野における主要な課題を評価し、持続的な成長と企業価値向上に向けて今後注力すべき分野と具体的な行動について提言する。

4.1 現状の取り組みにおける課題認識

ジャックスの環境への取り組みは、特にソーラーローンにおける長年の実績 4 や省エネ法遵守に基づく社内エネルギー効率改善 4 など、特定の分野においては評価できる点がある。また、グリーンボンドの発行 8 やTCFD提言への言及 3 など、近年のサステナビリティ潮流に対応しようとする姿勢も見られる。しかしながら、業界の先進事例や競合他社の動向、そして増大する社会からの期待を踏まえると、いくつかの課題も認識される。

第一に、取り組みの範囲と深度に偏りが見られる可能性がある点である。気候変動対策においては、ソーラーローンという特定のプロダクトと自社のエネルギー効率改善に重点が置かれている一方で、金融機関として影響が大きいとされる投融資ポートフォリオ全体を通じた排出量(Scope 3)の把握や管理、あるいは気候変動以外の環境課題、特に資源循環や生物多様性に関する戦略的な取り組みや具体的な目標設定については、情報が限定的である。資源循環ではコピー用紙削減 4、生物多様性ではNPOへの寄付 10 など、個別的な活動は見られるものの、事業活動全体に統合された包括的な戦略としては、まだ発展途上にある可能性が示唆される。

第二に、TCFD提言への対応について、形式的な言及に留まらず、実質的な分析と経営戦略への統合が十分に進んでいるかという点である。リスクと機会の特定、シナリオ分析に基づく影響評価、そしてそれらを踏まえた具体的な経営判断や指標・目標設定といった、TCFDが求める核心部分について、開示の質と量が十分であるか、継続的な検証が必要である。

第三に、競争環境の中で、業界の先進的な取り組みに追随し、あるいはそれをリードしていくための戦略の明確化である。競合他社もESGへの取り組みを強化しており、目標設定の野心度、取り組み範囲の広さ、情報開示の透明性といった面で、ジャックスが相対的に見劣りするリスクも考慮する必要がある。

第四に、環境への取り組みが、個別の施策や社会貢献活動 10 として実施されるだけでなく、企業全体の経営戦略、リスク管理プロセス、企業文化の中に深く根付いているかという点である。サステナビリティを事業成長と企業価値向上のための重要なドライバーとして位置づけ、全社的に推進していく体制の強化が求められる。

第五に、ステークホルダーからの要求水準が高まる中で、環境パフォーマンスに関するデータの収集・管理体制と、それに基づく情報開示の透明性・網羅性をさらに向上させる必要性である。特に、資源使用量、廃棄物発生量・リサイクル率、生物多様性への影響、Scope 3排出量といった分野において、より詳細かつ定量的な情報開示が期待される可能性がある。

4.2 持続的成長に向けた重点分野と行動提案

上記の課題認識に基づき、ジャックスが今後、環境経営を深化させ、持続的な成長を実現するために注力すべき重点分野と具体的な行動を以下に提案する。

4.2.1 気候変動対応の深化

気候変動への対応は、引き続き最重要課題の一つである。まず、TCFD提言に基づく情報開示について、現状の開示レベルを評価した上で、必要に応じて定量的なシナリオ分析(複数の温度上昇シナリオ等)の実施、特定されたリスク・機会の財務的影響の試算、そしてそれらを反映した具体的な指標(例:ポートフォリオの炭素強度)と目標(例:中期的な削減目標)の設定・開示へと、内容の深化を図ることを推奨する。次に、金融機関にとって最も影響の大きいScope 3排出量、特に投融資ポートフォリオ(カテゴリー15)の排出量について、算定手法を確立し、段階的に算定・開示を進めるべきである。将来的には、科学的根拠に基づく削減目標(SBT)の設定も視野に入れることが望ましい。さらに、現在のソーラーローン 4 に加えて、省エネルギー改修、電気自動車(EV)、持続可能な農業、その他気候変動緩和・適応に資する分野へと、グリーンファイナンスの対象範囲を戦略的に拡大していくことを提案する。

4.2.2 資源循環及び生物多様性保全の強化

資源循環に関しては、まず社内での取り組みとして、コピー用紙削減 4 に留まらず、オフィスから排出される廃棄物全体について、種類別の排出量を把握し、具体的な削減目標(例:廃棄物原単位の削減率)及びリサイクル率向上目標を設定・公表することを推奨する。加えて、事業活動に直接関連する分野として、クレジットカードのライフサイクル全体での環境負荷低減を検討すべきである。これには、リサイクル素材やバイオマスプラスチックなど環境配慮型素材の採用拡大、カード発行枚数の抑制に繋がるデジタルカードへの移行促進、使用済みカードの回収・リサイクルスキームの検討などが含まれる。

生物多様性保全については、現状の社会貢献活動 10 を継続しつつ、より戦略的なアプローチへと移行することを提案する。第一歩として、自社の事業活動、特に投融資ポートフォリオが生物多様性に与えるリスクと機会について、初期的な評価(スクリーニング)を実施することが考えられる。その結果を踏まえ、生物多様性に関する基本的な方針を策定し、将来的にはTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の枠組みなどを参考に、関連するリスク管理プロセスへの統合や情報開示の充実を目指すべきである。また、生物多様性保全に直接的に貢献するプロジェクトへのファイナンスや、関連する技術を持つ企業との連携なども検討に値する。

4.2.3 環境情報開示の拡充とステークホルダーエンゲージメント

環境への取り組みの実態とその成果を、ステークホルダーに対して透明性高く、かつ分かりやすく伝達することは極めて重要である。統合報告書 3 やサステナビリティ関連ウェブページ 5 において、気候変動、資源循環、生物多様性の各分野における方針、具体的な取り組み内容、目標、そして実績データを、可能な限り定量的かつ具体的に開示していくことを推奨する。特に、これまで情報が限定的であった分野(例:Scope 3排出量、廃棄物データ、生物多様性関連指標)について、開示範囲の拡大と質の向上が求められる。また、情報開示は一方的な発信に留まらず、投資家、顧客、従業員、地域社会といった多様なステークホルダーとの対話(エンゲージメント)を積極的に行い、彼らの意見や期待を把握し、それを自社の環境戦略の見直しや改善に活かしていく双方向のコミュニケーションプロセスを構築することが重要である 21

結論

分析結果の総括とジャックスの環境経営への期待

本報告書では、株式会社ジャックスの環境への取り組みについて、「気候変動」「資源循環」「生物多様性」の三分野を中心に包括的な分析を行った。分析の結果、ジャックスは、特にソーラーローンにおける長年の実績や省エネルギー法に基づく社内効率化努力といった強みを持つ一方で、取り組みの範囲(特にScope 3排出量、資源循環、生物多様性)や深度、情報開示の網羅性といった面では、さらなる向上の余地があることが示唆された。環境規制の強化、市場競争の激化、評判リスクといった潜在的なリスクに適切に対応し、グリーンファイナンス市場の拡大や企業価値向上といった機会を最大限に活かすためには、環境課題への取り組みを一層深化させ、経営戦略の中心に据えていくことが不可欠である。

具体的には、TCFD提言に基づく開示の実質的な強化、Scope 3排出量の管理、グリーンファイナンスの多様化、資源循環と生物多様性に関する戦略的な目標設定と実行、そして透明性の高い情報開示と積極的なステークホルダーエンゲージメントが、今後の重要な課題となる。これらの課題に真摯に取り組み、創業以来の精神である「信為萬事本」 2 に基づく信頼を、環境という新たな側面からも確固たるものとしていくことが期待される。ジャックスがこれらの提言を実行に移し、環境経営を推進していくことは、同社自身の持続的な成長に貢献するだけでなく、MUFGグループの一員として、また日本の金融サービス業界を担う一社として、我が国及び世界の持続可能な社会の実現 3 に向けて重要な役割を果たすことに繋がるであろう。

引用文献

  1. 20212021年3月期,  https://magicalir.net/Disclosure/-/file/1260694

  2. 統 合 報 告 書,  https://finance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp/disclosure/20241001/20240930590890.pdf

  3. 2023,  https://www2.infomart.co.jp/web/jp/images/upload/2329/140120231005563541_16360930.pdf

  4. 1 株式会社ジャックス グリーンボンド・フレームワーク 1. グリーンボンド発行の背景及びサス,  https://www.jaccs.co.jp/corporate/ir/stock/rating/pdf/green-framework.pdf

  5. サステナビリティ|株式会社ジャックス,  https://www.jaccs.co.jp/corporate/sustainability/

  6. E(環境)|サステナビリティ|株式会社ジャックス,  https://www.jaccs.co.jp/corporate/sustainability/environment/

  7. 株式会社ジャックス 第 24 回無担保社債に予備評価 Green 1 を付与 - 日本格付研究所 - JCR,  https://www.jcr.co.jp/pdf/greenfinance/JACCS_20190320_jp.pdf

  8. 株式会社ジャックスのグリーンボンドの引受けについて - 三菱UFJモルガン・スタンレー証券,  https://www.sc.mufg.jp/company/news/000020812.pdf

  9. 「気候変動×金融」シリーズ 第3回:金融機関に求められる気候関連情報のベストプラクティスの共有,  https://www.mri.co.jp/knowledge/column/20220531.html

  10. プレス | Clean Ocean Ensemble,  https://cleanoceanensemble.com/press/

  11. 金融機関における気候変動への対応についての基本的な考え方,  https://www.fsa.go.jp/common/law/kikouhendou_dp_final.pdf

  12. 「クレジットカード業におけるマネー・ローンダリング及びテロ資金供与 対策に関するガイド - 経済産業省,  https://www.meti.go.jp/policy/economy/consumer/credit/creditmanerongaidorainfaq.pdf

  13. クレジットカードの発行会社とは?国内シェアを徹底分析! - 虎の巻(TORANOMAKI),  https://toranoko.com/toranomaki/creditcard/creditcard-issuer/

  14. クレジット・信販 - ランキング企業情報一覧の題名 | インターンシップ・新卒採用情報サイト キャリタス就活,  https://job.career-tasu.jp/rankinglist/207/

  15. 【STUDIES】わが国クレジット・カード業界の展望 - 日本総研,  https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=14118

  16. 持続可能な社会を支える金融システムの構築,  https://www.fsa.go.jp/news/r2/singi/20210618-2/01.pdf

  17. 日本のサステナブルファイナンス・セクター拡充に向けた方策 | 野村資本市場研究所,  https://www.nicmr.com/nicmr/report/repo/2020_stn/2020sum03.html

  18. ECOMO カードが日本を救う クレジットカードを利用した環境ビジネスへの投資スキーム - 日本銀行,  https://www2.boj.or.jp/archive/announcements/release_2009/data/grand0912b3.pdf

  19. ジャックス、マテリアリティ(重要課題)を改定 - PR TIMES,  https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000158092.html

  20. S(社会)|サステナビリティ|株式会社ジャックス,  https://www.jaccs.co.jp/corporate/sustainability/society/

  21. 地域金融機関が集まり脱炭素経営支援のベストプラクティスを考えるゼロボード主催「第2回脱炭素経営情報連携会」に21行が参加 - PR TIMES,  https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000152.000087068.html

  22. 【カード:業界研究】大手3社「三井住友カード・ジェーシービー(JCB)・三菱UFJニコス」を比較!業績比較・ランキング・平均年収・社風/強みの違い,  https://www.onecareer.jp/articles/2210

  23. クレジットカード業界徹底ガイド|就活に役立つ現状・動向から売上高を大公開,  https://shukatsu-mirai.com/archives/54991

  24. 【2025年最新】クレジットカード会社おすすめランキング|国内大手6社を徹底比較,  https://theapps.jp/media/2060

ジャックスのGHG排出量推移

GHG排出量推移

「Scope1」の過去3年の推移

2023年1,533t-CO2
2022年1,809t-CO2
2021年1,809t-CO2

「Scope2」の過去3年の推移

2023年5,450t-CO2
2022年5,062t-CO2
2021年5,405t-CO2

「Scope3」の過去3年の推移

2023年418,132t-CO2
2022年422,831t-CO2
2021年393,695t-CO2

COR(売上高あたりのCO2排出量)推移

スコープ1+2

スコープ1+2 CORの過去3年推移

2023年38kg-CO2
2022年40kg-CO2
2021年44kg-CO2

スコープ3

スコープ3 CORの過去3年推移

2023年2,263kg-CO2
2022年2,437kg-CO2
2021年2,400kg-CO2

COA(総資産あたりのCO2排出量)推移

スコープ1+2

スコープ1+2のCOA推移

2023年2kg-CO2
2022年2kg-CO2
2021年2kg-CO2

スコープ3

スコープ3のCOA推移

2023年111kg-CO2
2022年118kg-CO2
2021年122kg-CO2

業績推移

売上推移

2023年1,848億円
2022年1,735億円
2021年1,641億円

純利益推移

2023年238億円
2022年217億円
2021年183億円

総資産推移

2023年3兆7776億
2022年3兆5757億
2021年3兆2150億

すべての会社・業界と比較

環境スコアポジション

ジャックスの環境スコアは320点であり、すべての会社における環境スコアのポジションと業界内におけるポジションは下のグラフになります。

すべての会社と比較したポジション

業界内ポジション

ジャックスのCORポジション

ジャックスにおけるCOR(売上高(百万円)における炭素排出量)のポジションです。CORは数値が小さいほど環境に配慮したビジネスであると考えられます。ジャックスのスコープ1+2の合計のCORが38kg-CO2であり、スコープ3のCORが2263kg-CO2になります。グラフはGHG排出量のスコープ別に分かれており、すべての会社と業界内におけるそれぞれのポジションを表しています。
全体におけるジャックスのCORポジション

CORスコープ1+2

CORスコープ3

業界内におけるジャックスのCORポジション`

CORスコープ1+2

CORスコープ3

ジャックスのCOAポジション

ジャックスにおけるCOA(総資産(百万円)における炭素排出量)ポジションです。COAもCAR同様、数値が小さいほど環境に配慮したビジネスを行っていると考えられます。ジャックスのスコープ1+2の合計のCORが2kg-CO2であり、スコープ3のCORが111kg-CO2になります。グラフはGHG排出量のスコープ別に分かれており、すべての会社と業界内におけるそれぞれのポジションを表しています。
全体におけるジャックスのCOAポジション

COAスコープ1+2

COAスコープ3

業界内におけるジャックスのCOAポジション

COAスコープ1+2

COAスコープ3

環境スコアランキング(全社)

集計数:510企業
平均点数:217.6
CDPスコア気候変動勲章
三菱電機
6503.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
505
CDPスコア気候変動勲章
コニカミノルタ
4902.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
500
CDPスコア気候変動勲章
豊田自動織機
6201.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
480
4
古河電気工業
5801.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
470
5
味の素
2802.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
460
6
セコム
9735.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコンサービス業
455
7
ダイキン工業
6367.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
450
8
アイシン
7259.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
450
9
オムロン
6645.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
445
10
フジクラ
5803.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン製造業
445

業界別環境スコアランキング

集計数:96企業
平均点数:170.3
CDPスコア気候変動勲章
第一生命ホールディングス
8750.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン金融・保険業
370
CDPスコア気候変動勲章
十六フィナンシャルグループ
7380.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン金融・保険業
360
CDPスコア気候変動勲章
みずほリース
8425.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン金融・保険業
345
5
ジャックス
8584.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン金融・保険業
320
6
ゆうちょ銀行
7182.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン金融・保険業
320
7
しずおかフィナンシャルグループ
5831.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン金融・保険業
315
8
めぶきフィナンシャルグループ
7167.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン金融・保険業
300
9
T&Dホールディングス
8795.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン金融・保険業
300
10
東京センチュリー
8439.T
プライムアイコンプライム
プライムアイコン金融・保険業
285