カテゴリー | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 |
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1購入した製品・サービス | 2,269 | 3,126 (▲857) | 4,179 (▲1,053) |
2資本財 | 37,530 | 19,545 (▼17,985) | 22,511 (▲2,966) |
3燃料・エネルギー関連活動 | 2,294 | 2,160 (▼134) | 3,088 (▲928) |
5事業から発生する廃棄物 | 118 | 42 (▼76) | 105 (▲63) |
6出張 | 1,251 | 2,313 (▲1,062) | 2,031 (▼282) |
金融庁と日本取引所グループは、様々な関係者と連携しながら、TCFD (Task Force on Climate-related Financial Disclosures)に賛同する日本の企業・金融機関をサポートする取組を進めています。その一環として、企業と投資家が中長期的な企業価値の向上のために対話を進めていくに際してのTCFDの意義につき議論を深め、日本における今後のTCFDを巡る展開を展望するシンポジウムを2018年度から2021年度まで開催しています。
※掲載情報は公開資料をもとに作成しており、全てのリスク・機会を網羅するものではありません。 より詳細な情報は企業の公式発表をご確認ください。
ESG投資拡大を背景に、ESG関連金融商品(指数、債券、カーボンクレジット市場等)の提供・拡充による新たな収益機会 。信頼性の高いESG情報プラットフォーム事業の拡大 。国内外からのサステナブル投資資金誘致による市場活性化 。再エネ導入等によるオペレーション効率化・コスト削減機会も存在する 。
日本取引所グループ(JPX)は、東京証券取引所(TSE)、大阪取引所(OSE)、東京商品取引所(TOCOM)、日本証券クリアリング機構(JSCC)、JPX総研(JPXI)等を傘下に持ち、日本の資本市場における中核的な金融市場インフラ(FMI)としての役割を担っている。近年、グローバルな資本市場において、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)要因、すなわちESGを考慮した投資や企業経営の重要性が急速に高まっている。特に、気候変動がもたらす物理的・移行リスクや、資源枯渇、生物多様性の損失といった地球規模の環境課題は、経済活動の持続可能性そのものを脅かす要因として認識されている。
このような状況下で、JPXのような取引所は、単なる取引の場を提供するだけでなく、サステナブルな社会経済システムの構築に向けて、独自の責任と機会を有している。具体的には、上場企業に対するESG情報開示の促進と質の向上 1、投資家によるESG評価を可能にするための情報基盤整備 3、グリーンボンドやカーボンクレジット市場といったサステナブルファイナンス関連の商品・サービスの提供 1、そして取引所グループ自身の事業活動における環境フットプリントの管理と削減 1 など、多岐にわたる役割が期待されている。JPXは、これらの期待に応えるべく、サステナビリティを経営戦略の重点分野の一つと位置づけ、様々な取り組みを進めている 6。
本報告書は、JPXの環境パフォーマンスについて、「気候変動」「資源循環」「生物多様性」という3つの主要な環境分野に焦点を当て、その具体的な取り組み、目標、実績、関連するリスクと機会、業界における位置づけなどを包括的に分析することを目的とする。これにより、JPXの環境側面に関する評価(エンバイロメンタル・スコアリング)に必要な詳細情報を提供するとともに、学術研究者やESG投資家、その他のステークホルダーにとって有用な知見を提供することを目指す。
本報告書の構成は以下の通りである。まず、JPXの環境への取り組みについて、気候変動、資源循環、生物多様性の各分野における方針、目標、具体的な活動内容、実績データを詳述する。次に、これらの環境要因に関連してJPXが直面する可能性のある潜在的なリスクと事業機会を分析する。続いて、ロンドン証券取引所グループ(LSEG)、ニューヨーク証券取引所(NYSE)を運営するインターコンチネンタル取引所(ICE)、ユーロネクスト(Euronext)、香港証券取引所(HKEX)といった主要な海外競合取引所の環境に関する先進的な取り組み(ベストプラクティス)を紹介する。さらに、JPXが現在抱える課題を評価し、今後の取り組み強化に向けた提言を行う。競合他社の環境イニシアチブとパフォーマンスを分析し、最後に、MSCI、Sustainalytics、CDPといった主要なESG評価機関によるJPX及び競合他社の環境関連スコアを比較・分析(ベンチマーキング)する。
本報告書の分析は、JPXが公開している公式文書、特に統合報告書(JPXレポート) 8、サステナビリティ関連情報 7、公式ウェブサイト上の環境・ESG情報 4、TCFD提言に基づく開示情報 11、CDPへの回答内容 5 等を主要な情報源としている。加えて、競合となる主要な海外取引所(LSEG, ICE/NYSE, Euronext, HKEX)のサステナビリティ報告書やウェブサイト上の公開情報、並びにMSCI、Sustainalytics、CDPといった第三者評価機関が提供するESG評価データ 13 等を参照し、比較分析及びベンチマーキングを行った。分析にあたっては、客観性と網羅性を確保するよう努めた。なお、本報告書では、データの視覚的な比較を容易にするための表は用いず、全てのデータ、比較、ベンチマーキング結果は、本文中での記述的な説明、あるいは必要に応じて箇条書き形式で提示する。
JPXは、「経済の発展」と「環境の保全」が両立する持続可能な社会を目指し、環境理念及び環境方針を策定している 5。環境理念では、「環境課題に対する明確な行動計画を作成し、環境負荷の低減に継続的に取り組むことにより、環境と共存可能な資本市場の維持・発展に努める」ことを掲げている 16。
JPXは、環境方針の第一に「脱炭素社会への貢献」を掲げ、自社の温室効果ガス(GHG)排出量を100%削減することを通じて、脱炭素社会の実現に貢献する姿勢を明確にしている 5。この方針に基づき、気候変動への対応を重要な経営課題の一つとして認識している 5。
この課題に対応するためのガバナンス体制として、グループCEOを委員長、グループCOOを副委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置している 5。この委員会は、気候変動関連課題が事業運営に与える影響を分析し、対応策を進める役割を担っている。また、気候変動に関する基本方針、目標、取り組み状況等を取締役会に適切に報告し、取締役会がこれらの基本方針や重要事項について適宜監督を行う体制が構築されている 11。気候変動を含むサステナビリティ関連リスクは、グループ全体の重要なリスクとして認識され、リスク管理の観点からも四半期ごとに取締役会へ報告されている 11。さらに、サステナビリティ担当執行役員を任命し、その下部組織であるサステナビリティ推進部が中心となって、気候変動がJPXグループの事業にもたらすリスクと機会の特定・分析・モニタリングを推進している 1。
JPXが気候変動対応をトップダウンで推進する体制を構築していることは、グループCEOが委員長を務めるサステナビリティ委員会の設置や取締役会への報告体制から明らかである 5。このような体制は、組織全体としての強いコミットメントを示すものである。さらに、中期経営計画2024に掲げられたサステナビリティに関する取り組みの進捗が役員の中長期インセンティブ報酬(株式報酬)の評価項目の一つとされていることは 11、経営層の目標達成への動機付けを高める効果が期待される。しかしながら、委員会の具体的な意思決定プロセス、部門横断的な連携の実態、関連予算の配分メカニズムなど、その実効性を評価するための詳細な運用状況については、公開情報からだけでは判断が難しい側面もある。気候変動に関する取り組みや計画は、経営計画との整合性を確保するため、中期経営計画の更新と同時に見直される予定であり 12、そのプロセスにおいて、外部環境の変化やステークホルダーからの期待をどのように反映していくかが注目される。
JPXは、気候変動対応に関して、意欲的な目標を設定し、その達成に向けた取り組みを進めている。
具体的な目標:
2024年度末までに、JPXグループ全体で消費する電力の100%を再生可能エネルギーに切り替え、Scope 1(直接排出)及びScope 2(間接排出:エネルギー起源)のGHG排出量についてカーボン・ニュートラルを達成する 1。
長期的なESG目標として、「2030年に向けて、証券市場の運営(バリューチェーン)に係るカーボン・ニュートラルを目指す」ことを掲げている 5。
再生可能エネルギーの利用状況:
目標達成に向けた進捗として、2023年度にはグループ全体の電力需要の81%を再生可能エネルギーでカバーした 5。これは、2021年10月より東京本社・大阪本社の電力契約を再生可能エネルギーメニューに切り替えたこと 16 や、各拠点の電力需要に応じてPPA(電力購入契約)等を活用したことによるものである 5。
さらに、JPXは自ら再生可能エネルギーを創出する取り組みも進めている。2022年6月に発行したグリーンボンドにより調達した資金を活用し、営農型太陽光発電設備(茨城県、千葉県:2022年夏以降順次稼働)及び廃食用油を燃料とするバイオマス発電設備(2023年4月稼働)を取得・運営している 5。また、三菱HCキャピタルエナジーとの間で、JPXグループ拠点への再エネ供給を目的とした太陽光発電設備の共同開発・保有・運営に関する覚書を締結している 5。
GHG排出量:
JPXは、GHG排出量の算定と開示にも積極的に取り組んでおり、2019年度からScope 1及びScope 2、2020年度からScope 3(その他の間接排出)の排出量を算定・公表している 5。
Scope 1及びScope 2排出量については、2023年度時点で、基準年(2020年度)比で約83%の削減を達成しており、2024年度末のカーボンニュートラル目標達成に向けて大きく前進している 5。Scope 1排出量(都市ガス、ガソリン等)はJ-クレジットによりオフセットされている 11。
Scope 3排出量については、主にITインフラのソフトウェア開発に関連する資本財からの排出が大きいと認識しており、必要な投資を継続しつつ、排出量管理を通じて段階的な削減を目指すとしている 11。
これらの取り組みは、国際的な環境情報開示プラットフォームであるCDPからも評価されており、2024年の気候変動質問書に対する評価は「B」スコア(管理レベル)であった 5。
JPXのScope 1・2排出削減目標に向けた進捗は顕著であり、2023年度時点で81%の再エネ化と83%の排出削減を達成していることは高く評価できる 5。しかし、目標達成年である2024年度末までに残りの19%の再エネ化とカーボンニュートラルを達成するには、さらなる取り組みの加速が必要となる。自社発電設備への投資 5 は、エネルギーの安定供給確保や長期的なコスト削減に寄与する可能性がある一方で、短期的な目標達成においては、PPAや再生可能エネルギー証書の購入といった手段への依存度も影響すると考えられる。より挑戦的なのは、2030年までにバリューチェーン全体でのカーボンニュートラルを目指すという長期目標である 5。この目標は、JPX自身のオペレーションを超え、証券市場の運営に関わる広範な活動を対象とするため、達成に向けた具体的なロードマップの策定と、サプライヤーや市場参加者を含むステークホルダーとの連携、そしてその進捗状況の透明性ある開示が一層重要となる。
JPXは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同し、これに沿った情報開示を積極的に行っている 1。また、TCFDコンソーシアムの「移行計画策定・開示ガイダンス」等を参考に、脱炭素経済への移行に向けた計画(移行計画)を策定・公表している 5。
JPXの移行計画は、「グリーン戦略」として中期経営計画2024にも位置づけられており 5、市場運営者としての取り組み(Market-focused)と、事業会社としての取り組み(Exchange-focused)の両面から構成されている 11。
市場運営者としての施策 (Market-focused):
情報開示の促進: コーポレートガバナンス・コード改訂(プライム市場上場企業へのTCFD準拠開示要請等) 1 や、「ESG開示実践ハンドブック」の発行 1、「JPX ESG Knowledge Hub」 1 や「JPXサステナビリティ情報検索ツール」 3 の提供を通じて、上場企業のESG情報開示を支援する。
ESG関連商品・市場の提供: S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数等のESG関連指数の算出と、関連ETF・先物等の上場 1、ESG債(グリーンボンド等)の情報プラットフォーム提供 1、エネルギー関連市場(電力先物等)の活性化 11、カーボン・クレジット市場の創設・運営 11、デジタル技術を活用したグリーン・デジタル・トラック・ボンドの普及促進 5 などを行う。
国内外との連携: NZDPU(Net-Zero Data Public Utility)との気候関連データに関する円卓会議開催 6、NZFSPA(Net Zero Financial Service Providers Alliance)やGFANZ(Glasgow Financial Alliance for Net Zero)日本支部への参加 11、金融庁サステナブルファイナンス有識者会議等の政府ワーキング・グループへの参画 16、TCFDコンソーシアムへの参加 11 等を通じて、国内外の関係者と連携し、脱炭素化への移行を後押しする。
事業会社としての施策 (Exchange-focused):
前述の通り、2024年度までのScope 1・2カーボンニュートラル達成、Scope 3排出量の算定・管理・削減、GXリーグへの参画 11 等を通じて、自社の環境負荷低減に取り組む。
リスク分析:
JPXはTCFD提言に基づき、気候変動に関連するリスクと機会を評価している。物理的リスクとしては、洪水、高潮、海面上昇、土砂災害等を考慮し、自社のオフィスビルやデータセンターへの影響を評価している 11。参照シナリオとしてIPCC第6次評価報告書のSSP1-2.6(温暖化抑制シナリオ)及びSSP5-8.5(高排出シナリオ)を用い、2050年までの長期的な影響を分析している 11。
移行リスクとしては、国内外の気候変動関連規制の強化、カーボンプライシング導入等によるコスト増、エネルギー価格の変動、そして気候変動対策への取り組み不足と見なされることによる評判の低下(レピュテーションリスク)等を認識している 12。
JPXがTCFD提言への対応を積極的に進め、特に市場運営者としての役割を重視している点は、同社の事業特性を活かした戦略と言える 1。情報開示基盤の整備やESG関連商品の提供は、単なるリスク対応に留まらず、新たな収益機会の創出(グリーン戦略)にも繋がる可能性を秘めている 5。これは、JPXが気候変動問題をビジネスチャンスとして捉えていることの表れとも解釈できる。一方で、シナリオ分析の結果や、特定されたリスク・機会がJPXの財務状況に与える具体的な影響(定量的な評価)については、開示されている情報がまだ限定的である 11。今後、投資家や他のステークホルダーがより詳細な評価を行うためには、これらの財務的影響に関する開示の更なる深化が期待されるところである。
JPXは、環境方針の第二に「循環型社会への貢献」を掲げている 5。具体的には、資源消費量及び廃棄物の削減、そしてグリーン調達の推進を通じて、循環型社会の進展に貢献することを目指している 5。しかしながら、これらの目標達成に向けた具体的な数値目標(例えば、廃棄物削減率、リサイクル率、水使用量削減目標など)については、現在公開されている報告書やウェブサイトの情報からは明確に確認されていない 5。
JPXの資源循環に関する具体的な取り組みや定量的な実績に関する開示は、気候変動分野と比較して限定的である。
廃棄物管理・リサイクル: 環境方針に基づき、資源消費量の削減や廃棄物の適正管理、リサイクルの推進に取り組んでいると考えられるが、具体的な施策内容(例:オフィスでの廃棄物分別徹底、リサイクルプログラムの導入、ペーパーレス化の推進状況など)や、廃棄物発生量、リサイクル率といった実績データは詳細に開示されていない 5。
資源効率化: 資源効率を高めるための具体的な施策に関する情報も少ない。
グリーン調達: グリーン調達を推進する方針は示されているものの 5、具体的な調達基準、対象品目、実績などに関する情報は開示されていない 5。
貢献事例: 資源循環への貢献を示す具体的な事例として、グリーンボンドで調達した資金を用いて取得したバイオマス発電設備が挙げられる 5。この設備は、地域で排出される廃食用油を燃料として再利用するものであり、再生可能エネルギーの創出に加えて、廃棄物の削減と資源の有効活用(サーキュラーエコノミー)にも寄与する取り組みであると評価できる 15。
JPXの資源循環に関する取り組みは、環境方針には明確に位置づけられているものの 5、その具体性や開示レベルにおいては、気候変動対策に比べてまだ発展途上にある可能性が示唆される 5。特に、具体的な数値目標の設定や定量的な実績データの開示が不足している点は、今後の改善が期待される領域である。廃食用油を利用したバイオマス発電 5 は先進的な事例であるが、これがグループ全体の資源消費や廃棄物削減に向けた体系的な戦略の一部としてどのように位置づけられているのか、より包括的な情報提供が望まれる。
JPXの環境方針には、「環境保全活動実践の働きかけ」として、「環境課題に対する意識を醸成するための啓蒙などを通じて、社会全体の環境保全活動を推進します」との記述がある 5。また、環境理念として「経済の発展と環境の保全が両立する持続可能な社会」を目指すことが掲げられている 5。しかし、生物多様性の保全に特化した具体的な方針や、定量的な目標(例えば、生物多様性への負の影響を नेट・ゼロにする、あるいはネット・ポジティブにする等)の設定については、現在の公開情報からは確認されていない 5。
JPXの生物多様性保全に関する取り組みとして、現在確認できる主なものは以下の通りである。
「東証上場の森」: 2004年6月に秋田県由利本荘市に設置された7.3ヘクタールの森林において、植樹、下刈り、冬囲いといった森林保全活動を継続的に実施している 5。この活動は地域貢献の一環としても位置づけられており、地元の金融経済教育支援とも連携して行われている 5。この森における森林整備による二酸化炭素吸収量は、秋田県の認証制度により2024年度に63.7トンと認証されている 5。
TNFDへの対応: 自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)は、企業が自然関連のリスクと機会を評価・開示するためのフレームワークを開発しており、国際的に注目度が高まっている 30。しかし、現時点でJPXがTNFDフォーラムのメンバーである、あるいはTNFD提言に沿った開示を計画・実施しているという情報は確認されていない 25。ソフトバンク 25 やキリンホールディングス 30 など、TNFDへの賛同や情報開示を表明する日本企業が増加している状況とは対照的である。なお、グローバル・レポーティング・イニシアティブ(GRI)が生物多様性に関する報告基準「GRI 101: Biodiversity 2024」を公表するなど 38、生物多様性に関する情報開示基準の整備は進んでいる。
サプライチェーン等: JPXの事業活動、特にデータセンター運営やITインフラ調達といったサプライチェーンが生物多様性に与える影響や依存度に関する評価、及びそれらに関する情報開示は、現在のところ限定的である 5。
JPXの生物多様性に関する取り組みは、現時点では「東証上場の森」という具体的な社会貢献活動 5 が中心であり、事業活動全体を通じた生物多様性への影響評価、体系的な保全戦略の策定、具体的な目標設定、そしてTNFDのような最新の国際的フレームワークへの対応といった観点からは、まだ初期段階にあるか、あるいは情報開示が十分ではない可能性が高い 5。これは、同社がTCFD提言への対応を積極的に進めている気候変動分野 11 と比較すると、取り組みの優先度や進捗度に差があることを示唆している。生物多様性の損失が経済活動に与えるリスク 32 や、TNFDフレームワークの普及 30 といったグローバルな潮流を踏まえると、この分野における取り組みの遅れは、将来的にJPXのリスク認識や企業評価に影響を与える可能性がある。
JPXの事業活動及びその市場運営者としての役割は、環境要因に関連する様々なリスクと機会に晒されている。
JPXが直面する可能性のある主な環境関連リスクは以下の通りである。
規制リスク: 日本国内外で環境関連規制が強化される傾向にある。カーボンプライシング(炭素税、排出量取引制度等)の導入・強化 28、GHG排出量報告義務の拡大 41、サステナビリティ情報開示基準の厳格化(IFRSサステナビリティ開示基準(ISSB基準) 11、欧州CSRD 42 等)は、JPX自身の事業運営コスト増加やコンプライアンス負担増に繋がる可能性がある。また、JPXが運営する市場に上場する企業に対しても、これらの規制への対応が求められるため、対応の遅れは上場企業の価値低下を通じて市場全体の魅力低下に繋がるリスクがある。JPX自身または上場企業の規制対応が不十分と見なされた場合、規制当局からのペナルティや市場からの評価低下を招く可能性がある 12。
市場リスク: ESG投資の世界的な拡大 1 に伴い、投資家は投資判断において企業や市場のESGパフォーマンスをより重視するようになっている。JPX自身のESG評価(後述のベンチマーキング参照 14)が低い場合、あるいはJPX市場に上場する企業のESGパフォーマンスが全体として低いと認識された場合、国内外の投資家からの資金流入が減少し、市場の流動性や魅力が低下するリスクがある。また、ESGへの取り組みで先行する海外の競合取引所と比較して、JPX市場の相対的な魅力度が低下する可能性も考えられる。
物理的リスク: 気候変動の進行に伴う異常気象の激甚化・頻発化は、JPXの事業継続に対する物理的なリスクを高める。特に、洪水、高潮、台風、大規模停電などは、JPXが保有・運営するデータセンターやオフィスビル、取引システムといった重要インフラに直接的な損害を与え、市場機能の停止やサービス提供の遅延を引き起こす可能性がある 11。JPXはコンティンジェンシープラン(BCP)を策定・公表しているが 4、気候変動による物理的リスクの増大に対応するためには、BCPの継続的な見直しと強化が不可欠である。
評判リスク: JPX自身の環境対策(特にGHG排出削減、資源循環、生物多様性保全)が不十分であるとステークホルダーから認識された場合、あるいはJPX市場においてグリーンウォッシング(環境配慮を装う行為) 27 が疑われるような事例が発生し、それに対するJPXの監督・指導が不十分と見なされた場合、JPXグループ及び日本市場全体に対する信頼が損なわれ、企業価値の低下やビジネス機会の損失、資金調達コストの上昇に繋がるリスクがある 12。
JPXは、市場インフラの提供者として、自らが規制の対象となる一方で、上場企業に対して情報開示基準等のルールを導入・推進する立場にもある 1。この二重の立場は、規制リスクへの対応を複雑にする一方、規制動向を先取りして市場のスタンダードを形成するという機会にも繋がり得る。データセンター等の重要インフラを多数保有する取引所にとって、物理的リスクへの対応は極めて重要であり 11、事業継続計画(BCP) 4 と気候変動適応策との連携強化が求められる。また、市場全体の信頼性を維持するためには、JPX自身の環境パフォーマンス向上だけでなく、市場参加者に対する適切な情報開示の促進や規律付けといった役割も重要となる 12。
環境要因はリスクだけでなく、JPXにとって新たな事業機会ももたらす。
グリーンファイナンス・ESG商品: 世界的にサステナブルファイナンス市場が拡大する中 27、JPXはESG関連の金融商品・サービスを提供・拡充することで、新たな収益源を確保する機会がある 12。具体的には、S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数 1 のようなESG指数や、それらに連動するETF・ETN 1 の開発・上場促進、グリーンボンドやソーシャルボンド等のESG債市場の活性化と情報プラットフォームの提供 1、そして日本政府のGX戦略とも連携したカーボン・クレジット市場の創設・発展 11 などが挙げられる。
情報プラットフォーム事業: 投資家や企業の間でESG情報へのニーズが高まる中、JPXは信頼性の高いESG情報を提供するためのプラットフォーム事業を拡大する機会がある。「JPX ESG Knowledge Hub」 1 や「JPXサステナビリティ情報検索ツール」 3 の機能強化やデータ拡充 28 を通じて、市場参加者(特に情報開示に課題を抱える企業やESG分析を行う投資家)に対する付加価値を高め、新たなサービス収益を生み出す可能性がある。AI技術の活用 3 も、効率的かつ高度な情報提供に貢献し得る。
サステナブル投資の誘致: 日本市場におけるESG情報開示の質と透明性を向上させ 1、魅力的なESG投資商品を多様に提供すること 1 により、国内外のサステナブル投資資金を日本市場に呼び込み、市場全体の活性化とJPX自身の取引高増加に繋げる機会がある 27。これは、JPXの長期ビジョンである「総合的な金融・情報プラットフォーム」 8 の実現にも貢献する。
オペレーション効率化とコスト削減: 自社の事業運営において、再生可能エネルギーの導入比率を高めること 1 や、省エネルギー設備への更新、エネルギー効率の高いデータセンター運営などを推進することにより、エネルギーコストを削減できる。また、ペーパーレス化や廃棄物削減といった資源循環の取り組みも、長期的にはコスト削減に繋がる可能性がある。グリーンボンド等のサステナブルファイナンスを活用することで、資金調達コストを低減できる可能性もある 12。
JPXは、市場運営者というユニークな立場を最大限に活用し、ESG関連の商品開発や市場整備 1、そして情報開示基盤の強化 3 を通じて、直接的な収益機会の創出と、市場全体の持続可能性向上という二つの目標を同時に追求しようとしている。特に、カーボン・クレジット市場 11 や、ブロックチェーン技術等を活用した可能性のあるグリーン・デジタル・トラック・ボンド 5 といった新しい分野への挑戦は、将来の成長を牽引するドライバーとなる潜在力を秘めている。これらの取り組みを成功させるためには、技術革新への対応、規制当局との連携、そして市場参加者のニーズを的確に捉えることが鍵となる。
JPXの環境への取り組みを評価する上で、主要な海外の証券取引所グループの先進的な事例(ベストプラクティス)を参照することは有益である。以下に、LSEG、Euronext、HKEX、ICE/NYSEの取り組みを概観する。
ロンドン証券取引所グループ (LSEG):
気候変動: LSEGは、Science Based Targets initiative (SBTi)によって承認された科学的根拠に基づく削減目標を設定している。具体的には、2030年までにScope 1及び2排出量を2019年比で50%削減、Scope 3(燃料・エネルギー関連活動、出張、通勤)排出量も同様に50%削減、さらに2026年までにScope 3(購入した物品・サービス)排出量の67%をカバーするサプライヤーに対しSBTi目標設定を求めるという目標を掲げている 45。2023年末時点でサプライヤーエンゲージメント目標の達成率は44%である 45。また、2040年までのネットゼロ達成という野心的な目標も持っているが、正式なSBTi承認はまだ得ていない 45。子会社のFTSE Russellを通じて、広範なESG指数やデータサービスを提供しており、市場への影響力も大きい 46。
資源循環: 報告書では具体的な目標は明記されていないが、データセンターの効率化やオフィスでのエネルギー効率改善など、オペレーションにおける環境負荷低減努力に言及している 45。
生物多様性: LSEGはTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の提言を早期に採用し 45、自社の事業活動における自然関連のリスク、機会、依存、影響に関するベースライン評価を実施している 45。また、排出削減努力を最優先としつつ、現在の排出量に対する責任を果たすため、質の高いカーボンクレジット(特に自然に基づくソリューション)を活用する方針を持っている 45。
ユーロネクスト (Euronext):
気候変動: EuronextもSBTi承認済みの削減目標(2030年までにScope 1&2を73.5%削減(2020年比)、Scope 3出張排出量を46.2%削減(2019年比)、2027年までにサプライヤーの72%に目標設定要求)を設定している 48。2024年にはScope 1&2で84%削減(目標超過)、再エネ比率86%という高い実績を報告している 42。2050年までのネットゼロ目標も視野に入れており 48、欧州のCSRD(企業サステナビリティ報告指令)に準拠した報告書を早期に発行している 42。パリ協定整合ベンチマーク(PAB)や気候移行ベンチマーク(CTB)に準拠した指数も多数提供している 42。
資源循環: CSRD準拠報告の一環として、資源利用に関する情報開示を行っている可能性がある 42。
生物多様性: Euronextは生物多様性に配慮したスクリーニングを行う指数(Euronext® ESG Biodiversity Screened Index)を提供している 51。CSRD報告の中で生物多様性に関する情報開示も行っている可能性があり、また、グループ傘下の財団を通じて海洋資源保全活動も支援している 48。
香港証券取引所 (HKEX):
気候変動: HKEXはSBTiに削減目標を提出済みであり、その承認を待っている状況である 53。2024年には、再生可能エネルギー電力の利用とカーボンクレジットの購入を通じて、自社オペレーションにおけるカーボンニュートラルを達成した 53。2040年までのネットゼロ達成を目標としている 53。2024年末時点で、事業所の電力の99%を再生可能エネルギーで賄っている 53。また、IFRS S2(気候関連開示)に整合する形で、上場企業に対する気候関連開示要件を強化している 53。
資源循環: 市場全体のペーパーレス化を推進しており、上場申請プロセスや証券保管業務におけるデジタル化を進めている 53。
生物多様性: グループ傘下のHKEX Foundationを通じて生物多様性関連プロジェクトを支援しているほか、従業員向けの啓発活動も行っている 53。ただし、自社オペレーションにおける具体的な保全目標や計画に関する情報は限定的である。
インターコンチネンタル取引所 (ICE) / ニューヨーク証券取引所 (NYSE):
気候変動: ICEはScope 1, 2, 3の排出量を報告しており 58、再生可能エネルギーやカーボンクレジットの購入を通じて排出削減に取り組んでいる 58。TCFD報告書も発行している 58。NYSE上場企業から構成されるサステナビリティ諮問評議会を設置し、ベストプラクティスの共有を促進している 58。また、気候関連データを提供するUrgentem社を買収し 58、地理空間データを活用した気候リスク・社会影響分析ツール(ICE ESG Geo-Analyzer) 58 を提供するなど、データ・サービスプロバイダーとしての側面を強化している。
資源循環: 公開されている情報からは、資源循環に関する具体的な取り組みや目標は確認されていない 59。
生物多様性: 生物多様性保全に関する具体的な取り組みや目標は確認されていないが 59、自然資本に関連する商品として、自然由来の炭素クレジット先物 58 やNatural Asset Companies (NACs) 60 の構想に関与している。
これらの事例から、各取引所はそれぞれの地域における規制環境(特に欧州におけるCSRDやEUタクソノミーの影響は大きい)、事業ポートフォリオの特性(データ事業の比重など)、そして戦略的な優先順位付けに基づいて、環境への取り組みを進めていることがわかる。欧州のLSEGやEuronextは、規制への対応を背景に、SBTi目標の設定、再生可能エネルギー導入、包括的なESG報告といった面で先行しており、生物多様性への配慮も進んでいる 42。アジアのゲートウェイとしての役割を持つHKEXは、オペレーションでのカーボンニュートラル達成や国際基準(IFRS S2)に沿った開示基準の導入を進めている 53。データとテクノロジーに強みを持つICE/NYSEは、自社の排出削減努力に加え、市場参加者向けのデータやツール、関連商品の提供を通じてサステナビリティへの貢献を図っている 58。JPXは、国内市場のリーダーとして気候変動対策では具体的な目標と進捗を示しているが、資源循環や生物多様性といった分野、Scope 3排出量への対応、そしてCSRDレベルの包括的な情報開示といった点では、特に欧州の競合と比較して、さらなる取り組み強化の余地があると言える。JPX独自の強みである情報プラットフォーム 3 等を活かしつつ、グローバルなベストプラクティスを取り込んでいくことが今後の課題となるだろう。
JPXの環境への取り組みは着実に進展しているものの、さらなる向上に向けて克服すべき課題も存在する。
JPXが直面している主な環境関連の課題は以下の通りである。
気候変動:
Scope 3 排出量: Scope 1・2の削減目標達成に向けては順調に進捗しているものの、より広範なバリューチェーンを含むScope 3排出量の把握と削減は大きな課題である。特に、2030年までに「証券市場の運営(バリューチェーン)に係るカーボン・ニュートラル」を目指すという長期目標 5 の達成に向けた、具体的なロードマップや中間目標、進捗状況の開示が十分とは言えない。ITインフラ関連の資本財 11 以外のScope 3カテゴリ(例:上場企業の排出、投資活動等)への取り組み方針も明確化が必要である。
エネルギー調達: 2024年度末の100%再エネ化目標達成 5 に向けて、自社発電設備 5 やPPA 5 と、再生可能エネルギー証書購入の最適な組み合わせをどのように構築し、コスト効率と安定供給を両立させるかが課題となる。
資源循環:
目標と実績の具体性欠如: 環境方針で「循環型社会への貢献」 5 を掲げているにも関わらず、廃棄物削減、水使用量削減、リサイクル率向上などに関する具体的なKPIや数値目標が設定・開示されていない 5。実績データのトラッキングと公開も不十分である。
グリーン調達: グリーン調達の推進方針 5 はあるものの、具体的な基準やサプライヤーへの働きかけ、実績に関する情報が不足している。
生物多様性:
戦略と評価の不在: 事業活動が生物多様性に与える影響(インパクト)と依存度(ディペンデンシー)に関する体系的な評価が実施されているか不明であり、それに基づく具体的な保全戦略や目標が策定されていない 5。
国際フレームワークへの対応: TNFDのような国際的な開示フレームワークへの対応が遅れている可能性がある 25。競合他社の一部(LSEG, Euronext)が既に対応を進めている 45 中で、この遅れはグローバルな評価において不利になる可能性がある。
情報開示:
開示範囲と深度: 気候変動に関する開示(特にTCFD提言への対応)は進んでいるものの、資源循環や生物多様性といった他の環境側面に関する情報開示は質・量ともに拡充の余地がある。定量的なデータの開示が少ない点も課題である。
国際基準への対応: IFRS S1(サステナビリティ関連財務情報の一般要求事項)及びS2(気候関連開示) 11 や、欧州CSRD 42 など、グローバルに影響力を持つ新しい開示基準への対応準備を進める必要がある。
市場への働きかけ:
開示支援の強化: JPXは上場企業のESG情報開示を支援する立場にあるが 1、依然として開示の質と量にはばらつきがある 41。特に中小規模の上場企業に対する支援策の強化や、開示情報の比較可能性・信頼性を高めるための取り組みが求められる。
グリーンウォッシング対策: ESG投資の拡大に伴い、グリーンウォッシングへの懸念も高まっている 27。市場の信頼性を維持するため、ESG債やESG関連商品に関する基準の明確化やモニタリング体制の強化が課題となる。
JPXの環境への取り組みにおける最大の課題は、気候変動対策においては具体的な目標設定と進捗が見られる一方で、資源循環と生物多様性に関する戦略策定、目標設定、そして情報開示が相対的に遅れている点にあると言える 5。これは、地球環境問題への包括的な対応という観点からは改善が必要である。また、JPXは市場運営者として、上場企業のESG情報開示を促進・指導する役割を担っており 1、自社の情報開示レベルが市場全体のベンチマークとして見られるというプレッシャーも存在する。Scope 3排出量、特にバリューチェーン全体を対象としたカーボンニュートラル目標 5 の達成に向けた道筋を具体化することも、今後の大きな挑戦となる。
上記の課題を踏まえ、JPXが今後、環境パフォーマンスをさらに向上させ、持続可能な資本市場の実現に貢献するために注力すべき点を以下に提言する。
資源循環・生物多様性戦略の強化:
資源循環: 廃棄物発生量(総量及び原単位)、リサイクル率、水使用量(総量及び原単位)など、資源循環に関する具体的なKPIを設定し、中期的な数値目標を策定・公表する。これらの目標に対する進捗状況を定期的にモニタリングし、開示する。グリーン調達に関する具体的な基準(対象品目、サプライヤー選定基準等)を定め、サプライチェーン全体での環境負荷低減を推進する。
生物多様性: TNFDが提唱するLEAPアプローチ(Locate, Evaluate, Assess, Prepare) 35 などを参考に、自社の事業活動(特にデータセンター立地、エネルギー調達、IT機器等のサプライチェーン)が生物多様性に与える影響と依存度を評価し、重要性の高い領域(ホットスポット)を特定する。その評価に基づき、生物多様性保全に関する具体的な方針(例:No Net Loss / Net Positive Impactの目標設定、生物多様性に配慮した土地利用・調達方針)を策定・公表する。TNFDへの賛同表明や、提言に沿った情報開示の開始を積極的に検討する。
Scope 3 排出量削減の具体化:
2030年のバリューチェーン・カーボンニュートラル目標達成に向け、Scope 3排出量の主要な源泉(カテゴリ1:購入した製品・サービス、カテゴリ2:資本財、カテゴリ15:投資など)を特定し、それぞれの削減に向けた具体的なロードマップと施策を策定・開示する。特に、ITインフラ関連のサプライヤーや、市場運営に関連するステークホルダーとのエンゲージメントを強化し、サプライチェーン全体での排出削減を推進する。
情報開示の高度化:
気候変動分野に加え、資源循環、生物多様性に関する定量的なデータ(KPI、目標、実績)の開示を大幅に拡充する。
IFRS S1及びS2、あるいはCSRDといった国際的なサステナビリティ開示基準の動向を注視し、これらの基準に準拠した情報開示体制を早期に構築する。
統合報告書 8 において、環境側面を含む非財務情報と財務情報との関連性(リスク・機会の財務的影響等)をより明確に示し、企業価値創造ストーリーとの一貫性を高める。
市場機能の活用:
自社で創設・運営するカーボンクレジット市場 11 やESG債情報プラットフォーム 1 を、自社の排出削減目標達成(例:カーボンクレジットの活用)やサステナブルファイナンス調達に積極的に活用する。
生物多様性保全に貢献するプロジェクトへの資金供給を促進するため、生物多様性ボンドや生物多様性クレジットといった新しい金融商品の市場創設や、関連する指数開発、上場支援などの可能性を検討する。
ステークホルダーエンゲージメント:
投資家(特にESG投資家)、上場企業、ESG評価機関、規制当局など、多様なステークホルダーとの対話 2 を継続的に実施し、JPXの環境戦略や情報開示に対する期待や要請を把握し、取り組みの改善に繋げる。
「JPX ESG Knowledge Hub」 1 等を通じて、生物多様性や資源循環に関する最新動向やベストプラクティスに関する情報提供を強化し、市場全体の意識向上を図る。
JPXの環境への取り組みを相対的に評価するため、主要な海外競合取引所グループ(LSEG, Euronext, HKEX, ICE/NYSE)の環境イニシアチブとパフォーマンスを分析する。
LSEG: 気候変動対策においては、SBTi承認済みの野心的な削減目標を設定し、その達成に向けた進捗を着実に進めている 45。特に、排出量の大部分を占めるScope 3(購入物品・サービス)について、サプライヤーに対するSBTi目標設定の働きかけを具体的に進めている点は注目に値する 45。生物多様性に関しても、TNFDへの早期対応 45 を表明し、自然関連リスク評価に着手するなど、先進的な取り組みを見せている。FTSE Russellという強力な指数・データ部門を有し、市場へのESGインテグレーションを推進する力も大きい 46。
Euronext: 欧州の厳格な規制環境(CSRD等)への対応を迅速に進めており、CSRD準拠の報告書を早期に発行している 42。SBTi承認目標に対する実績も高く、再生可能エネルギー利用率や排出削減率で顕著な成果を上げている 42。商品開発においても、PAB/CTB指数 42 や生物多様性配慮型指数 51 など、サステナビリティをテーマとした先進的なプロダクトを提供している。
HKEX: アジアの主要な国際金融センターとして、また中国本土へのゲートウェイとして 61、独自の地位を築いている。2024年にオペレーションでのカーボンニュートラルを達成し 53、国際基準であるIFRS S2に整合した気候関連開示基準を導入するなど 53、気候変動対応で具体的な進展を見せている。資源循環の観点からは、市場全体のペーパーレス化推進 53 が特徴的な取り組みである。生物多様性への取り組みは、現時点では限定的に見える 53。
ICE/NYSE: グローバルなデータ・テクノロジー企業としての性格が強く、ESG分野においてもデータ提供サービス(Urgentem買収 58、ICE ESG Geo-Analyzer 58 等)や、炭素関連市場・商品(炭素クレジット先物 58、RVO/RINs先物 60、自然資本関連商品 60)の開発・提供に注力している。NYSE上場企業との連携(サステナビリティ諮問評議会 58)も行っている。一方で、ICEグループ自身の環境目標やオペレーションにおける実績に関する詳細な情報開示は、他の取引所グループと比較すると限定的である可能性がある 59。
各取引所グループは、それぞれの事業環境や戦略に基づき、環境への取り組みにおいて異なる強みと焦点を有している。欧州のLSEGとEuronextは、規制への対応を契機として、気候変動のみならず生物多様性を含む包括的なサステナビリティ戦略と情報開示を進めている。HKEXは、国際基準への整合性を図りつつ、アジア、特に中国関連市場におけるリーダーシップを発揮しようとしている。ICE/NYSEは、データと市場機能を活用したソリューション提供に強みを見せている。JPXは、国内市場における圧倒的なプレゼンスと、気候変動対策における具体的な目標達成へのコミットメントを示しているが、資源循環や生物多様性といった分野での取り組み強化、Scope 3排出量削減の具体化、そしてグローバル水準の包括的な情報開示といった面では、さらなる進化が求められる。JPXが持つ情報プラットフォーム提供能力 3 等の独自の強みを活かしながら、国際的なベストプラクティスを取り込み、日本市場全体のサステナビリティ移行を牽引していくことが期待される。
JPXの環境パフォーマンスを客観的に評価し、競合他社との相対的な位置づけを把握するため、主要なESG評価機関(Sustainalytics, CDP, MSCI)による評価スコアを比較分析する。
Sustainalytics ESG Risk Rating:
Sustainalyticsは、企業が直面する重要なESGリスクへのエクスポージャーと、それらのリスクをどの程度管理できているかを評価し、ESGリスクスコア(数値が低いほどリスクが低い)を付与している 62。2024年から2025年初頭にかけての評価によると、各取引所のスコアは以下の通りである。
Euronext: 13.4 (低リスク) 14
LSEG: 16.5 (低リスク) 63
HKEX: 17.8 (低リスク) 61
ICE: 18.9 (低リスク) 63
JPX: 22.7 (中リスク) 14
この比較から、JPXのESGリスク評価は「中程度リスク」であり、主要なグローバル競合他社(Euronext, LSEG, HKEX, ICE)がいずれも「低リスク」と評価されているのに対し、相対的にリスクが高いと見なされていることがわかる。特に、欧州のEuronext(13.4)やLSEG(16.5)とのスコア差は大きい。これは、JPXが管理すべきESGリスク(気候変動、資源循環、生物多様性、ガバナンス等を含む)が、これらの競合他社と比較して大きいか、あるいはリスク管理策が相対的に不十分であると評価されていることを示唆している。
CDP Climate Change Score:
CDPは、企業の気候変動に関する情報開示とパフォーマンスを評価し、A(リーダーシップ)からD-(開示)までのスコアを付与している 71。最新の評価(主に2023年または2024年のデータに基づく)は以下の通りである。
JPX: B (2024年評価) 5
Euronext: B (2024年評価) 42
LSEG: A- (2023年評価) 73
HKEX: スコアの直接記載なし。ただし、CDPとの連携 75 や、傘下企業でのB評価事例 76、Ping An(HKEX上場)のA-評価 78 など、関連情報は存在する。
ICE: スコアの直接記載なし。ただし、CDPとの連携やデータ利用事例あり 79。
JPXのCDPスコア「B」は「管理レベル」に位置づけられ、気候変動問題に対する認識と管理体制が構築されていることを示している。これはEuronextと同等の評価である。しかし、リーダーシップレベル(A/A-)に達しているLSEGと比較すると、一歩譲る形となっている。HKEXやICEについては直接的なスコア比較は困難であるが、両社ともCDPの枠組みに関与していることは確認できる。JPXがリーダーシップレベルを目指すためには、排出削減目標の達成に向けたさらなる進捗、Scope 3排出量管理の強化、気候関連リスク・機会への戦略的対応の深化などが求められる。
MSCI ESG Rating:
MSCIは、業界固有のESGリスクへのエクスポージャーとリスク管理能力に基づき、企業をAAA(リーダー)からCCC(ラガード)までの7段階で評価している 80。各取引所の評価状況は以下の通りである。
Euronext: AA (2024年評価) 42
HKEX: AA 82
JPX: 公開情報からは直接的な評価が確認できない 13。ただし、JPX市場にはMSCIのESG関連指数に連動するETF等が上場している 26。
LSEG: 公開情報からは直接的な評価が確認できないが、MSCIとの関連指数やデータ提供は行われている 46。
ICE: 公開情報からは直接的な評価が確認できないが、MSCIとの関連指数やデータ提供は行われている 87。
EuronextやHKEXといった主要な競合がMSCIから「AA」という高い評価を得ているのに対し、JPXの評価状況が不明瞭である点は注目される。MSCIはグローバルな機関投資家にとって重要なESG評価機関の一つであり 80、その評価が公開されていない、あるいは低い水準にある場合、グローバルなESG投資資金を呼び込む上で不利になる可能性がある。JPX自身がMSCI関連のESG指数を用いた商品を提供していること 26 を考慮すると、自社の評価を開示しない(あるいは低い)ことは、透明性の観点からも課題となり得る。
スコアリング傾向と相対的パフォーマンス:
複数の評価機関からのスコアを総合的に見ると、JPXは気候変動に関しては一定の管理レベル(CDP B評価)にあると評価されているものの、より広範なESGリスク管理(Sustainalytics 中リスク評価)や、業界リーダーとしての位置づけ(CDP AレベルやMSCI高評価の不在)という点では、特に欧州の競合(Euronext, LSEG)やアジアの競合(HKEX)と比較して改善の余地があることが示唆される。Sustainalyticsのリスク評価が相対的に高いこと、そしてMSCIの評価が不明瞭であることは、投資家、特にグローバルなESG投資家からの評価において、潜在的な懸念材料となり得る。JPXが環境パフォーマンスと情報開示の両面で継続的な改善努力を行うことが、国際的な競争力を維持・向上させる上で重要であると考えられる。
本報告書における分析の結果、日本取引所グループ(JPX)は、日本の資本市場の中核インフラとして、サステナビリティ、特に環境課題への対応を重要な経営課題と認識し、具体的な取り組みを進めていることが確認された。
気候変動: JPXは、2024年度末までのScope 1・2カーボンニュートラル達成、2030年までのバリューチェーンにおけるカーボンニュートラル達成という意欲的な目標を掲げ、再生可能エネルギー導入(2023年度実績81%)や自社発電設備への投資、TCFD提言に沿った情報開示と移行計画の策定・公表など、具体的な進捗を示している。CDP評価も管理レベル(B)に達している。
資源循環と生物多様性: 一方で、資源循環(廃棄物削減、リサイクル、グリーン調達)と生物多様性保全に関しては、環境方針には盛り込まれているものの、気候変動分野と比較して具体的な数値目標の設定、体系的な戦略、定量的な実績データの開示が限定的である。TNFDのような新しい国際的フレームワークへの対応も、現時点では明確ではない。
リスクと機会: JPXは、規制強化、市場評価、物理的災害、評判といった環境関連リスクに直面する一方で、ESG関連商品・サービスの提供、情報プラットフォーム事業の展開、サステナブル投資の誘致、オペレーション効率化といった多様な事業機会を有している。特に市場運営者としての機能を活かした取り組みが特徴的である。
競合比較とベンチマーキング: 主要な海外競合取引所と比較すると、JPXは気候変動対策では一定の進捗を見せているものの、資源循環・生物多様性への取り組みの具体性や、包括的なESG情報開示の深度、そして第三者評価機関によるESGスコア(特にSustainalyticsやMSCI)においては、改善の余地があることが示唆された。特に欧州の取引所は規制対応を背景に、より包括的かつ先進的な取り組みを進めている傾向が見られる。
総じて、JPXは気候変動対策を軸に環境への取り組みを強化しているが、資源循環や生物多様性といった他の重要な環境側面への対応と情報開示を強化し、よりホリスティックなアプローチへと進化させていくことが、今後の持続的な企業価値向上と市場からの信頼獲得に向けて不可欠である。
グローバルなサステナビリティ潮流は、今後ますます加速・深化していくと予想される。IFRSサステナビリティ開示基準(S1/S2)の普及、CSRDの影響拡大、TNFDへの関心の高まりなど、企業に対する環境・社会情報の開示要求は質・量ともに高まり続けるだろう。このような状況下で、JPXには以下の点が期待される。
環境戦略の包括的高度化: 気候変動対策の継続・深化に加え、資源循環と生物多様性に関する具体的な戦略・目標を設定し、実行に移すこと。特に、サプライチェーンを含むバリューチェーン全体での環境負荷低減と自然資本への配慮を強化することが重要となる。
情報開示の質的向上: 国際的な開示基準(IFRS S1/S2, CSRD, TNFD等)との整合性を意識し、気候変動以外の環境情報を含むサステナビリティ情報の開示を拡充・深化させること。特に、リスク・機会の財務的影響や、目標達成に向けた具体的な進捗状況に関する定量的な情報の開示が求められる。統合報告書等を通じて、非財務情報と財務情報の連携を強化し、企業価値創造への貢献を明確に示すことも重要である。
市場インフラ機能の活用: JPXが持つ市場インフラとしての機能を最大限に活用し、カーボンクレジット市場やESG債市場のさらなる発展、生物多様性ファイナンス等の新たな市場・商品の創出を通じて、日本及びアジア地域全体のサステナブルな経済移行を積極的にリードしていくこと。情報プラットフォームとしての役割を強化し、市場参加者のESGリテラシー向上とエンゲージメント促進に貢献することも期待される。
JPXがこれらの課題に積極的に取り組み、自社の環境パフォーマンス向上と市場全体のサステナビリティ推進の両面でリーダーシップを発揮していくことが、長期的な企業価値の向上と、豊かで持続可能な社会の実現への貢献に繋がるものと確信する。
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CDP Climate Change 2023 Scoring Methodology - Guidance & questionnaires, 4月 18, 2025にアクセス、 https://guidance.cdp.net/en/guidance?cid=46&ctype=theme&idtype=ThemeID&incchild=1µsite=0&otype=ScoringMethodology&page=1&tags=TAG-605%2CTAG-646
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PUJIANG INTERNATIONAL GROUP LIMITED 浦江國際集團有限公司 - HKEXnews, 4月 18, 2025にアクセス、 https://www1.hkexnews.hk/listedco/listconews/sehk/2022/1219/2022121900887.pdf
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CDP-WWF Temperature Scoring Methodology - Panda.org, 4月 18, 2025にアクセス、 https://wwf.panda.org/wwf_news/?11362466/CDP-WWF-Temperature-Scoring-Methodology
ESG Ratings and Rankings: Which One is Right for You? - KERAMIDA Inc., 4月 18, 2025にアクセス、 https://www.keramida.com/blog/esg-ratings-and-rankings-which-one-is-right-for-you
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Investor Relations - HKEX Group, 4月 18, 2025にアクセス、 https://www.hkexgroup.com/Investor-Relations?sc_lang=en
External Evaluations | Sustainability | Tokio Marine Holdings, 4月 18, 2025にアクセス、 https://www.tokiomarinehd.com/en/sustainability/evaluation/
ESG External Evaluation | Anritsu America, 4月 18, 2025にアクセス、 https://www.anritsu.com/en-US/about-anritsu/sustainability/evaluation
MSCI, LSEG, Sustanalytics ESG Ratings for Tesla - ESG News, 4月 18, 2025にアクセス、 https://www.knowesg.com/company-esg-ratings
Amundi PEA MSCI USA ESG Leaders UCITS ETF - USD: Net Asset Value(s) - 08:16:19 17 Apr 2025 - News article | London Stock Exchange, 4月 18, 2025にアクセス、 https://www.londonstockexchange.com/news-article/market-news/amundi-pea-msci-usa-esg-leaders-ucits-etf-usd-net-asset-value-s/16996322
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ICE MSCI ESG Leaders Index Futures, 4月 18, 2025にアクセス、 https://www.ice.com/publicdocs/ICE_MSCI_ESG_Factsheet.pdf
MSCI North America Selection Index (USD), 4月 18, 2025にアクセス、 https://www.msci.com/www/index-factsheets/msci-north-america-esg-leaders/07731604
ESG Ratings - Sustainable Business - Library Guides at University of Dayton, 4月 18, 2025にアクセス、 https://libguides.udayton.edu/sustainable_business/ESGratings
2023年 | 697t-CO2 |
2022年 | 824t-CO2 |
2021年 | 774t-CO2 |
2023年 | 2,279t-CO2 |
2022年 | 9,041t-CO2 |
2021年 | 11,751t-CO2 |
2023年 | 31,693t-CO2 |
2022年 | 27,916t-CO2 |
2021年 | 44,110t-CO2 |
スコープ1+2 CORの過去3年推移
2023年 | - |
2022年 | - |
2021年 | - |
スコープ3 CORの過去3年推移
2023年 | - |
2022年 | - |
2021年 | - |
スコープ1+2のCOA推移
2023年 | 0kg-CO2 |
2022年 | 0kg-CO2 |
2021年 | 0kg-CO2 |
スコープ3のCOA推移
2023年 | 0kg-CO2 |
2022年 | 0kg-CO2 |
2021年 | 1kg-CO2 |
2023年 | - |
2022年 | - |
2021年 | - |
2023年 | 608億円 |
2022年 | 463億円 |
2021年 | 500億円 |
2023年 | 80兆6826億円 |
2022年 | 82兆1874億円 |
2021年 | 71兆4634億円 |
すべての会社と比較したポジション
業界内ポジション
CORスコープ1+2
CORスコープ3
CORスコープ1+2
CORスコープ3
COAスコープ1+2
COAスコープ3
COAスコープ1+2
COAスコープ3