カテゴリー | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 |
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1購入した製品・サービス | - | - | 8,867 |
2資本財 | - | - | 6,065 |
3燃料・エネルギー関連活動 | - | - | 681 |
4輸送・配送(上流) | - | - | 1,247 |
5事業から発生する廃棄物 | - | - | 85 |
徳島大正銀行、とくぎんトモニリンクアップ、Sustechが地域企業の脱炭素化支援で業務提携。SustechのGHG排出量可視化・削減支援クラウド等を活用し、コンサルティングや再エネ導入支援を提供。地域経済の持続的発展に貢献する 。
※掲載情報は公開資料をもとに作成しており、全てのリスク・機会を網羅するものではありません。 より詳細な情報は企業の公式発表をご確認ください。
脱炭素化や資源循環に向けた取引先の資金需要増大は、サステナブルファイナンス市場拡大の好機。目標(2030年度累計5,500億円)達成に向けた融資実行 や、GHG排出量算定支援等の非金融サービス提供 は収益機会となる。ZEB Ready店舗導入 等による自社のコスト削減、ESG評価向上による企業価値向上も期待できる。
トモニホールディングス株式会社(以下、トモニホールディングス)は、香川県高松市に本社を置く金融持株会社であり、主に傘下の子会社である株式会社徳島大正銀行(以下、徳島大正銀行)および株式会社香川銀行(以下、香川銀行)を通じて事業を展開しています 1。同社は東京証券取引所プライム市場に上場しており 3、銀行業務を中心に、リース業務、カード業務、ベンチャーキャピタル業務など、多岐にわたる金融サービスを提供しています 6。
本報告書は、トモニホールディングスの環境への取り組みとパフォーマンスについて、特に「気候変動」、「資源循環」、「生物多様性」の三つの重点分野に焦点を当て、包括的かつ学術的な水準での分析を行うことを目的としています。この分析は、同社の環境スコア算出に必要な詳細情報を提供するとともに、将来の環境戦略策定に資する洞察を提供することを目指します。金融機関としてのトモニホールディングスが、これらの環境課題にどのように対応し、リスクを管理し、機会を捉えようとしているかを明らかにします。
本報告書で分析する三つの環境領域は、地球規模での持続可能性にとって極めて重要であり、金融機関の活動とも密接に関連しています。
気候変動は、金融機関にとって、自社の事業活動に伴う直接的な温室効果ガス(GHG)排出(Scope 1およびScope 2)だけでなく、投融資先の排出(Scope 3、特にカテゴリ15「投融資」)を含む、バリューチェーン全体での影響が問われる課題です。気候変動は、低炭素経済への移行に伴う「移行リスク」(例:規制強化、市場の変化、技術革新)と、異常気象の激甚化などによる「物理的リスク」(例:資産の毀損、サプライチェーンの混乱)の両方をもたらします。一方で、再生可能エネルギーや省エネルギー技術への資金提供、顧客の脱炭素化支援などは、新たな事業機会を生み出します。トモニホールディングスが気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を表明していること 13 は、これらのリスクと機会に対する認識の高まりを示唆しています。
資源循環は、従来の「採取・製造・廃棄」という線形経済モデルから脱却し、資源の効率的・循環的な利用を通じて、環境負荷の低減と経済成長の両立を目指す概念です。金融機関にとっては、自社のオフィスにおける廃棄物削減、リサイクルの推進、省資源化といった直接的な取り組みに加え、サーキュラーエコノミー(循環経済)への移行を目指す企業への投融資や、循環型ビジネスモデルの構築支援などを通じて貢献する役割が期待されます。トモニホールディングスの取り組みにおいては、内部の資源効率化が中心となるか、より広範な循環経済への貢献を目指すかが分析の焦点となります。
生物多様性は、生態系、種、遺伝子の多様性を指し、清浄な水や空気、食料供給、気候調整など、人間社会に不可欠な生態系サービスの基盤です。土地利用の変化、気候変動、環境汚染、資源の過剰利用などが生物多様性の損失を引き起こしています。金融機関の活動は、土地開発や資源採掘など、生物多様性に影響を与える可能性のあるセクターへの投融資を通じて、間接的に影響を及ぼす可能性があります。近年、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)などの枠組みが登場し、企業や金融機関に対して、自然資本への依存度や影響、関連するリスクと機会を開示するよう求める動きが強まっています。トモニホールディングスが地域社会に根差した活動を行う中で、生物多様性保全への貢献がどのように位置づけられているかを評価します。
これら三つの領域は相互に関連しており、気候変動対策が生物多様性に影響を与えたり、資源循環の推進がGHG排出削減に貢献したりするなど、統合的な視点での取り組みが求められます。本報告書では、各領域におけるトモニホールディングスの具体的な活動を分析し、その現状と課題、そして将来に向けた方向性を考察します。
トモニホールディングスグループは、サステナビリティを重要な経営課題と位置づけ、ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点から重要課題(マテリアリティ)を選定しており、その中には「気候変動問題をはじめとするサステナビリティへの取組み」が含まれています 14。以下では、気候変動、資源循環、生物多様性の各分野における具体的な取り組みを分析します。
気候変動は、トモニホールディングスがマテリアリティの一つとして特定している重要課題であり 14、様々な側面からの対応が進められています。
トモニホールディングスグループは、気候変動への対応として、自社の事業活動に伴うGHG排出量の把握に着手しています。具体的には、GHG排出量算定・可視化クラウドサービス「zeroboard」を導入し、取引先企業への導入支援も行うことで、Scope 1(直接排出)、Scope 2(間接排出)、さらには金融機関にとって最も重要となるScope 3(サプライチェーン排出、特に投融資先排出)の算定・可視化を推進する体制を整えています 15。これは、排出量の現状を把握し、削減策を検討するための基礎となる重要なステップです。
しかしながら、現時点で公開されている情報からは、グループ全体としての具体的なGHG排出削減目標(例えば、特定の基準年比で何%削減するか、いつまでに達成するかといった定量目標)や、それに対する実績については明確に示されていません。排出量算定ツールの導入は評価されるべきですが、その測定結果に基づいた具体的な削減目標の設定と、進捗状況の透明性ある開示が、今後の課題となります。TCFD提言への賛同 13 を踏まえれば、特にScope 3排出量に関する目標設定と開示は、ステークホルダーからの期待が高まる領域です。現状では、自社の排出削減目標を明示するよりも、取引先企業の脱炭素経営を支援すること 15 に重点が置かれている側面が見受けられますが、自社の説明責任を果たす上でも、内部目標の設定と開示は不可欠と考えられます。
トモニホールディングスグループは、再生可能エネルギーの導入と利用促進に関して、複数の取り組みを行っています。まず、金融支援を通じて、顧客企業による太陽光発電やバイオマス発電などの再生可能エネルギー導入を後押ししています 20。これは、銀行としての本業を通じたScope 3排出量削減への貢献として重要です。
加えて、自社の事業所においても、店舗への太陽光発電システムの設置を進めており 20、Scope 2排出量の削減に直接的に貢献しています。ただし、これらの取り組みの規模、例えば、再生可能エネルギー関連の融資残高やその割合、自社施設への太陽光発電導入による具体的な発電量や削減効果に関する定量的な情報は、公開資料からは限定的です。
さらに、外部パートナーシップを活用した取り組みも見られます。例えば、Sustech社との協業により、分散型電力運用プラットフォーム「ELIC」を活用した再生可能エネルギー発電所の開発や最適運用、再エネ電力の提供などを検討しており 18、より高度なエネルギーソリューションの提供を目指していることがうかがえます。こうしたパートナーシップが具体的なプロジェクトとして結実し、その成果が示されることが期待されます。再生可能エネルギーへの取り組みは、Scope 3への影響が大きい融資活動と、Scope 2に影響する自社利用の両面から評価されるべきですが、現状ではその全体的なインパクトを測るための情報が不足しています。
トモニホールディングスグループは、環境に配慮した金融商品・サービスの提供を通じて、グリーンファイナンスを推進しています。具体的には、「環境ローン(エコローン)」21、「環境私募債」20、「サステナビリティ・リンク・ローン」17 など、多様な商品を提供しています。サステナビリティ・リンク・ローンは、融資先のサステナビリティ目標達成度に応じて融資条件が変動する仕組みであり、顧客企業のESG経営へのインセンティブを高める先進的な取り組みと言えます 17。
また、グリーンボンドへの投資も行っており 20、投資活動においても環境側面を考慮しています。さらに、Jクレジット制度を活用したカーボンニュートラル実現支援 17 や、脱炭素経営支援を目的とした外部企業との連携 15、地方自治体との「ゼロカーボンシティの実現に向けた連携協定」の締結 17 など、取引先や地域社会の脱炭素化を多角的に支援する姿勢を示しています。香川銀行は「香川県地域ESG脱炭素設備投資促進コンソーシアム」にも参加し、専門家派遣を含む技術的サポートも提供しています 17。
これらの取り組みは、金融機関として環境課題解決に貢献する上で重要です。しかし、これらのグリーンファイナンスが、グループ全体の融資・投資ポートフォリオの中でどの程度の割合を占めているのか、また、気候変動リスクが通常の与信判断プロセスにどの程度組み込まれているのかといった、戦略的な統合の度合いについては、公開情報からは判断が難しい状況です。個別の商品提供を超えて、ポートフォリオ全体としての気候変動への対応方針が求められます。
トモニホールディングスは、2022年5月にTCFD提言への賛同を表明しており 13、気候変動に関する情報開示の重要性を認識しています。同社のウェブサイト上のサステナビリティ関連ページや統合報告書(ディスクロージャー誌)において、気候変動に関する取り組みを開示していることが確認されています 13。
TCFD提言への賛同は、気候関連のリスクと機会に関する透明性を高めるための重要な第一歩です。しかし、TCFDが推奨する具体的な開示項目、すなわち「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4つの柱に関する詳細な情報提供の状況については、現時点での公開情報だけでは十分に評価できません。例えば、気候変動シナリオ分析の実施状況やその結果、特定されたリスク・機会の財務的影響の定量化、投融資ポートフォリオの気候変動への整合性を示す指標(例:ポートフォリオの炭素強度、セクター別排出量)や目標設定といった、より踏み込んだ情報開示が期待されます。TCFDへの賛同を実質的な取り組みと情報開示の充実に繋げていくことが、今後の重要な課題となります。
トモニホールディングスグループは、事業運営における環境負荷低減のため、日常的な省エネルギー活動にも取り組んでいます。具体的には、「クールビズ」や「ウォームビズ」の実施による空調負荷の低減 21、LED照明への切り替え 22、照明やOA機器のこまめな消灯、節電の実施 23、エコドライブ運動への参加 20 などが挙げられます。
さらに、徳島大正銀行においては、「ZEB Ready」認証を取得した環境配慮型店舗を導入しており 22、建物のエネルギー効率向上にも注力しています。ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)は、年間の一次エネルギー消費量を大幅に削減する建築物であり、「ZEB Ready」はその基準を満たす高い省エネ性能を持つことを示します。これは、従来の省エネ活動よりも一歩進んだ、設備投資を伴う積極的な取り組みとして評価できます。
これらの施策は、主にScope 1およびScope 2のGHG排出量削減に貢献するものです。ただし、ZEB Ready認証店舗の具体的な数や、これらの省エネ活動全体としての定量的な削減効果(例:エネルギー消費量やGHG排出量の削減量)については、公開情報が限られています。個々の活動の積み重ねが、グループ全体の環境目標達成にどの程度貢献しているかを把握するためには、効果測定と情報開示の強化が望まれます。
資源循環は、持続可能な社会を構築する上で重要な要素ですが、トモニホールディングスグループの取り組みは、現時点では主に自社の事業運営における効率化に焦点が当てられているようです。
グループ全体として、ゴミの減量、分別、リサイクルの実施に取り組んでいます 22。これは、事業活動を行う上での基本的な環境配慮行動と言えます。また、具体的な取り組みとして、ペットボトル再生繊維を利用した制服の採用や、環境保全型贈答品、リサイクル商品の利用などが挙げられており 22、調達面での配慮も見られます。
しかし、これらの取り組みがどの程度の効果を上げているのかを示す定量的なデータ(例:廃棄物削減量、リサイクル率)や、グループ全体としての具体的な削減目標などは、公開情報からは確認できません。廃棄物の種類ごとの排出量把握や、より野心的な削減目標(例:埋立廃棄物ゼロ)の設定、サプライチェーン全体での資源循環への貢献など、より戦略的なアプローチの可能性も考えられます。現状では、基本的な廃棄物管理の範囲に留まっている印象を受けます。
金融機関にとって紙の使用量は大きな環境負荷要因の一つであり、トモニホールディングスグループはペーパーレス化に積極的に取り組んでいます。具体的には、タブレット端末を活用した取引の導入、通帳レス口座の取り扱い推進、DX・ICTサポートの提供 21、行内LANや共有フォルダの活用、ペーパーレス会議システムの導入、資料の両面コピーの励行 23 など、多岐にわたる施策を実施しています。香川銀行では、住宅ローンにおける電子契約サービスも導入されています 20。
これらの取り組みは、デジタル技術を活用して業務プロセスにおける紙の使用量を削減しようとするものであり、環境負荷低減と同時に業務効率化や顧客利便性向上にも繋がる可能性があります。ただし、これらの施策による具体的な紙使用量の削減実績(例:削減率、削減枚数)に関する定量的な情報は開示されておらず、その効果を客観的に評価することは困難です。目標設定と実績のモニタリング、そしてその結果の開示が、取り組みの実効性を示す上で重要となります。
トモニホールディングスグループの資源循環への貢献は、自社の取り組みに加えて、金融機能を通じた支援の側面も持ちます。特筆すべき事例として、徳島大正銀行が、産業廃棄物リサイクル事業を展開する顧客企業に対し、焼却灰リサイクル施設の建設資金を融資したことが挙げられます 17。この施設は、バイオマス発電所から排出される焼却灰などを道路舗装材として再利用するものであり、循環型社会の実現に直接的に貢献するプロジェクトへの支援として高く評価されます。
この事例は、金融機関が顧客企業のサーキュラーエコノミーへの移行を支援するポテンシャルを示しています。しかし、公開されている情報の中では、このような循環型経済に特化した融資事例は限定的に見受けられます。今後、トモニホールディングスが、資源循環を戦略的な融資・投資分野の一つとして位置づけ、関連する技術やビジネスモデルを持つ企業への支援を体系的に拡大していくかどうかが注目されます。現状では、個別の案件対応に留まっている可能性があり、より広範な循環経済への貢献に向けた戦略策定が期待されます。
生物多様性の保全は、地球環境の健全性を維持するために不可欠な要素です。トモニホールディングスグループの取り組みは、主に地域社会との連携による環境保全活動として展開されています。
グループは、地域に根差した金融機関として、地域の環境保全活動に積極的に参加しています。具体的には、徳島大正銀行による「アドプト・プログラム吉野川」への参加をはじめとする河川清掃活動 21 や、香川銀行による高松市中央通り一斉清掃への参加 25、その他の海岸・河川等の清掃活動への参加 21 が挙げられます。これらの活動は、地域の水環境保全に直接的に貢献するものです。
また、森林保全活動にも力を入れており、徳島大正銀行は「とくしま協働の森づくり事業」に関するパートナーシップ協定を締結し、「県立高丸山千年の森づくり」や「伊島ささゆり保全の会」の活動に参加しています 21。これらの活動では、植樹なども行われています 23。
これらの活動は、従業員の環境意識向上や地域社会との良好な関係構築に寄与するものであり、SDGsの目標14(海の豊かさを守ろう)や目標15(陸の豊かさも守ろう)にも貢献するものです 20。しかし、これらの活動が、金融機関としての事業活動(投融資)に伴う生物多様性への影響やリスクと、どのように関連付けられているかは不明確です。生物多様性への影響評価(フットプリント評価)や、保全活動に関する具体的な目標設定、効果測定といった側面は、現状の公開情報からは見えてきません。TNFDなどの新しい枠組みを視野に入れ、より戦略的な位置づけを検討する余地があると考えられます。
トモニホールディングスグループは、環境私募債の発行やグリーンボンドへの投資を通じて、環境保全に貢献する事業を資金面で支援しています 20。これらの金融商品は、その使途が環境関連プロジェクトに限定されるため、間接的に生物多様性保全に貢献する可能性があります。例えば、持続可能な森林管理や、生態系保全に資する土地利用改善プロジェクトなどが対象となれば、直接的な貢献が期待できます。
また、地域資源を活用した事業化支援も行っており 20、これが持続可能な方法で行われる場合には、地域の生物多様性保全と経済活性化の両立に繋がる可能性があります。
ただし、これらの金融商品や支援策が、具体的にどの程度生物多様性保全に貢献しているかを評価するためには、資金使途に関するより詳細な情報や、プロジェクトの選定基準、そしてその成果に関する報告が必要です。現状では、「環境保全」という広い枠組みの中で語られることが多く、生物多様性への具体的な貢献度合いを測ることは困難です。資金提供の際に、生物多様性への配慮を明確な基準として組み込むことが、今後の課題となり得ます。
前述の通り、トモニホールディングスグループの生物多様性保全に関する活動の多くは、地域社会やNPO、自治体との連携によって実施されています。河川清掃 21 や森林保全活動 21 は、地域の環境プログラムやパートナーシップへの参加を通じて行われています。
このような連携は、地域の実情に合わせた効果的な保全活動を展開する上で不可欠であり、地域金融機関としての役割とも合致しています。地域社会との協働を通じて、環境保全への意識を高め、具体的な行動を促進する効果が期待できます。
一方で、これらの連携活動が、グループ全体のサステナビリティ戦略の中でどのように位置づけられ、投融資活動を含む本業における生物多様性リスク管理とどのように連動しているのかは、さらなる明確化が求められます。地域貢献活動としての側面だけでなく、事業戦略の一環としての生物多様性保全への取り組み強化が、今後の持続可能な成長には重要となるでしょう。
金融機関であるトモニホールディングスにとって、気候変動、資源循環、生物多様性といった環境要因は、事業運営におけるリスク要因であると同時に、新たな事業機会をもたらす可能性も秘めています。
トモニホールディングスは、環境要因に関連する様々なリスクに直面しています。TCFD提言への賛同 13 は、特に気候関連リスクに対する認識を示していますが、リスクはそれだけに留まりません。
規制リスクとしては、国内外での気候変動対策強化に伴うリスクが挙げられます。例えば、カーボンプライシングの導入や強化、特定の産業に対する排出基準の厳格化は、融資先の財務状況や返済能力に影響を与える可能性があります。また、TCFDに続くTNFDのように、自然関連財務情報開示の義務化や要請が強化される可能性もあり、対応コストの増加や、開示内容次第ではネガティブな評価を受けるリスクも考えられます。グリーンウォッシング(環境配慮を装うこと)に対する規制強化もリスクとなり得ます。
市場リスクも重要です。顧客や投資家の間で、環境意識の高い金融機関や金融商品を選ぶ傾向が強まれば、環境パフォーマンスで劣後する場合、顧客離れや資金調達コストの上昇に繋がる可能性があります。特に、気候変動への移行リスクは、石炭火力発電関連など、高炭素排出セクターへの融資・投資ポートフォリオの資産価値を毀損させる可能性があります。
評判リスクも無視できません。環境負荷の高いプロジェクトへの融資が明らかになった場合や、環境への取り組みが表面的であると見なされた場合(グリーンウォッシング)、企業イメージやブランド価値が大きく損なわれる可能性があります。地域社会との関係性が重要な地方銀行にとって、環境問題への対応が不十分であるとの認識が広がることは、深刻な評判リスクに繋がります。
さらに、物理的リスクも考慮する必要があります。気候変動に伴う異常気象(台風、豪雨、高潮など)の激甚化は、銀行の支店やATMといった物理的な資産に損害を与えるだけでなく、融資先の事業活動や担保資産にも影響を及ぼし、貸倒れリスクを増加させる可能性があります。特に、特定の地域に事業基盤が集中している地方銀行にとっては、地域的な気象災害の影響を受けやすい構造にあります。
これらのリスクに対し、トモニホールディングスがどの程度体系的な評価を行い、経営戦略やリスク管理プロセスに統合しているかが、今後の持続可能性を左右する重要な要素となります。特に、投融資ポートフォリオにおける移行リスクと物理的リスクの評価、そして生物多様性関連リスクへの対応は、今後強化が求められる領域と考えられます。
環境課題への取り組みは、リスク管理の側面だけでなく、新たな事業機会の創出にも繋がります。トモニホールディングスは、既にいくつかの機会を捉え始めていますが、さらなる展開の可能性があります。
グリーンファイナンス市場の拡大は、最も直接的な事業機会です。既に提供している環境ローン 21、環境私募債 20、サステナビリティ・リンク・ローン 17 などを拡充・強化することに加え、省エネルギー改修、再生可能エネルギー導入、サーキュラーエコノミーへの移行支援、持続可能な農業など、特定の環境テーマに特化した新たな金融商品を開発・提供することで、市場シェアを獲得できる可能性があります。グリーンボンドへの投資 20 も、ポートフォリオのグリーン化と収益機会の両立に繋がります。
アドバイザリーサービスの提供も有望な分野です。取引先企業が直面する脱炭素化や環境規制への対応といった課題に対し、専門的な知見やソリューションを提供するビジネスモデルが考えられます。既に実施している外部企業との連携(例:Sustech 18、Zeroboard 15、宮地電機 19)を活かし、GHG排出量算定支援、省エネ診断、再エネ導入コンサルティング、Jクレジット活用支援 17 などを体系化し、手数料収入を得る事業へと発展させる可能性があります。これにより、単なる資金提供者から、顧客のサステナビリティ経営を支援するパートナーへと役割を進化させることができます。
優れた環境パフォーマンスと透明性の高い情報開示は、企業価値向上にも繋がります。ESG投資を重視する機関投資家からの評価向上や、環境意識の高い個人顧客・法人顧客の獲得、さらには優秀な人材の獲得・維持にも貢献します。地域社会や行政との良好な関係構築 17 も、事業運営の円滑化に繋がるでしょう。
加えて、自社の省エネルギー化 22 や資源利用効率の向上 20 は、光熱費や消耗品費の削減といった直接的なコスト削減効果ももたらします。
これらの機会を最大限に活かすためには、個別の取り組みに留まらず、環境課題への対応を経営戦略の中心に据え、金融商品・サービス、アドバイザリー機能、リスク管理、コミュニケーションなどを統合的に展開していくことが重要です。
トモニホールディングスの取り組みを評価し、今後の方向性を検討する上で、国内外の金融業界における環境先進事例を参照することは有益です。以下に、気候変動、資源循環、生物多様性の各分野における代表的なベストプラクティスを概説します。
気候変動対応において先進的な金融機関は、科学的根拠に基づく目標設定イニシアチブ(SBTi)の認定を受けた、野心的なGHG排出削減目標を設定しています。これには、自社のScope 1、2排出量だけでなく、投融資ポートフォリオ全体のScope 3排出量に関する目標も含まれます。特に、エネルギー、不動産、自動車といった排出量の多いセクターに対しては、具体的な脱炭素化経路(パスウェイ)を設定し、ポートフォリオの整合性を管理しています。
また、複数の気候変動シナリオ(例:1.5℃シナリオ、2℃シナリオ、成り行きシナリオ)を用いた詳細なシナリオ分析を実施し、その結果を経営戦略やリスク管理に反映させています。これにより、移行リスクと物理的リスクの特定と評価、それらに基づく事業機会の特定を行っています。
さらに、投融資先企業に対して、脱炭素化に向けた移行計画の策定・実行を積極的に働きかけるエンゲージメント活動を展開しています。場合によっては、石炭火力発電など特定の化石燃料関連事業からの段階的な融資撤退(フェーズアウト)方針を明確に打ち出している機関もあります。国際的な枠組みである「Net-Zero Banking Alliance(NZBA)」への加盟も、先進的な取り組みを示す指標の一つとなっています。これらの金融機関は、気候変動対応を単なるCSR活動ではなく、経営戦略の根幹に関わる課題として捉え、具体的な行動と透明性の高い情報開示を進めています。
資源循環の分野では、先進的な金融機関は、サーキュラーエコノミー(循環経済)への移行を支援するための専門的なファイナンスプログラムを設けています。これには、製品の長寿命化、リユース、リサイクル、シェアリングエコノミーなどを推進する企業への融資や投資が含まれます。
自社の事業運営においても、単なる廃棄物分別やリサイクルに留まらず、より野心的な目標(例:事業所からの埋立廃棄物ゼロ)を設定し、達成に向けた具体的な施策(例:サプライヤーへの働きかけ、リユース可能な物品の積極的利用)を推進しています。調達方針においても、環境負荷や資源効率、循環性を考慮した基準(サステナブル調達基準)を導入し、サプライヤーに対しても同様の取り組みを求めています。
また、投融資ポートフォリオにおける資源効率性や循環性を評価するための指標開発や、サーキュラーエコノミーに特化したファンドへの投資なども行われています。資源循環を、気候変動対策と並ぶ重要な環境課題として認識し、金融機能を通じてその実現を後押しする動きが見られます。
生物多様性の保全に関して先進的な金融機関は、自然関連のリスクと機会を経営戦略に統合する動きを加速させています。具体的には、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の提言に沿った情報開示に向けた準備を進め、自社の事業活動や投融資ポートフォリオが自然資本にどの程度依存し、どのような影響を与えているかを評価しています。
特に、農業、林業、鉱業、インフラ開発など、生物多様性への影響が大きいとされるセクターへの投融資に際しては、特定の高リスク地域(例:保護価値の高い森林、重要な淡水生態系)を融資対象外とする「ノーゴー・ゾーン」の設定や、事業者に対する環境社会影響評価(ESIA)の実施、生物多様性管理計画の策定などを融資条件とするポリシーを導入しています。
さらに、生物多様性の損失を食い止め、回復させる「ネイチャーポジティブ」な経済活動への貢献を目指し、具体的な目標を設定したり、関連するプロジェクト(例:持続可能な農林水産業、生態系回復事業)への投融資や、生物多様性保全に特化したファンドへの投資を拡大したりしています。地理空間情報(GIS)データなどを活用し、ポートフォリオが抱える生物多様性関連リスク(例:生態系劣化が進む地域へのエクスポージャー)を定量的に評価する試みも始まっています。これらの取り組みは、生物多様性損失が金融システムに与えるシステミックリスクへの認識の高まりを反映しています。
これらの先進事例と比較することで、トモニホールディングスの現在の取り組みの位置づけを客観的に把握し、今後の戦略強化に向けた示唆を得ることができます。
トモニホールディングスの環境パフォーマンスを相対的に評価するためには、同業他社、特に事業規模や地域特性が類似する金融機関との比較分析が不可欠です。
トモニホールディングスの主要な競合他社としては、まず、同じ四国地方や隣接する中国地方、あるいは事業展開エリアである関西地方を地盤とする地方銀行や第二地方銀行が考えられます。例えば、公開情報でトモニホールディングスと共にリストアップされることのある山形銀行、山梨中央銀行、大垣共立銀行、鳥取銀行、京葉銀行 5 や、同様の脱炭素支援サービス(例:Sustech社のプラットフォーム)を導入している北陸銀行、北洋銀行、伊予銀行、三十三銀行 18 などが比較対象候補となり得ます。比較対象を選定する際には、総資産規模、営業エリアの重複度、事業ポートフォリオ(銀行業務、リース、カード等の比率)などを考慮し、適切なピアグループを設定する必要があります。本報告書では、公開情報の制約から特定の競合他社を深く分析することは困難ですが、一般的な地方銀行セクターにおける動向を踏まえて考察します。
競合他社の環境戦略や目標を比較分析するには、各社のサステナビリティ報告書、統合報告書、ウェブサイトなどの公開情報を精査する必要があります。分析すべき項目としては、マテリアリティ(重要課題)の特定内容、気候変動に関する具体的なGHG排出削減目標(Scope 1, 2, 3)の有無と水準、SBTi認定の取得状況、TCFD提言への対応状況と開示の質、再生可能エネルギー導入・利用目標、グリーンファイナンスの目標額や実績、資源循環や生物多様性に関する方針や目標などが挙げられます。
一般的に、大手金融機関や一部の先進的な地方銀行では、SBTi認定目標の設定やNZBAへの加盟、詳細なTCFDレポートの発行など、より野心的な目標設定と国際的な枠組みへのコミットメントが進んでいます。一方で、多くの地方銀行においては、トモニホールディングスと同様に、地域貢献活動としての環境保全活動や、個別の環境配慮型金融商品の提供が中心となっている場合も少なくありません。トモニホールディングスがTCFD賛同 13 やGHG排出量算定ツールの導入 15 を進めている点は、地方銀行セクターの中では比較的前向きな動きと捉えられますが、目標設定や戦略の具体性においては、先進的な競合他社との間に差が存在する可能性があります。
競合他社の具体的な取り組み事例を比較することも重要です。気候変動対応では、提供しているグリーンローンやサステナビリティ・リンク・ローンの種類、規模、特徴、再生可能エネルギープロジェクトへのファイナンス実績、顧客向け脱炭素支援サービスの具体的内容などを比較します。例えば、特定の産業(例:地域の中小製造業)に特化した脱炭素化支援プログラムを提供している競合がいるかもしれません。
資源循環に関しては、競合他社がサーキュラーエコノミーに特化した融資制度を設けているか、自社の廃棄物削減目標や実績を開示しているか、サプライチェーンでの取り組みを進めているかなどを比較します。
生物多様性については、競合他社がTNFDへの対応を表明しているか、投融資ポリシーに生物多様性への配慮を明記しているか、特定の生態系保全プロジェクトへの資金提供やパートナーシップを積極的に行っているかなどを調査します。
トモニホールディングスの取り組み 15 と比較して、競合他社が特定の分野でより進んだ、あるいは独自性のある取り組みを行っている場合、それはトモニホールディングスにとって参考となるだけでなく、競争上の脅威ともなり得ます。例えば、競合が地域特性を活かした独自の環境ビジネス支援策を打ち出している場合などが考えられます。このような比較分析を通じて、トモニホールディングスの相対的な強みと弱みを把握し、戦略的な差別化を図るための示唆を得ることが可能です。
企業の環境パフォーマンスは、ESG評価機関によってスコアリングされ、投資家の意思決定や企業の評判に影響を与えます。トモニホールディングスの環境への取り組みを客観的に評価し、改善点を特定するためには、これらのスコアを競合他社と比較するベンチマーキングが有効です。
日本企業を評価対象としている主要なESG評価機関には、MSCI ESGレーティング、Sustainalytics(Morningstar傘下)、FTSE Russell、S&P Global ESG Scoresなどがあります。また、気候変動に特化した評価としては、CDP(旧Carbon Disclosure Project)のスコアリングが広く参照されています。これらの評価機関は、企業の公開情報(サステナビリティ報告書、統合報告書、ウェブサイト、ニュースリリースなど)や、企業への質問書への回答、メディア情報などを基に、独自の評価基準と方法論を用いてスコアリングを行います。
評価基準には、気候変動戦略、GHG排出量管理、再生可能エネルギー利用、水資源管理、廃棄物管理、資源効率、生物多様性方針、環境関連の投融資方針、環境リスク管理体制、環境関連の機会創出などが含まれます。評価機関によって重点を置く項目や評価方法、スコアの表示形式(例:AAA~CCC、0~100点、A~D)は異なりますが、概ね、方針・目標設定、具体的な取り組み、パフォーマンス実績、情報開示の質と量などが総合的に評価されます。
トモニホールディングスおよびその競合他社の具体的なESGスコアは、通常、評価機関との契約やデータベースへのアクセスが必要であり、本報告書の作成に利用可能な公開情報の中には含まれていません 5。したがって、現時点で定量的なスコア比較を行うことは困難です。
もし、これらのスコアデータが入手可能であれば、トモニホールディングスのスコアを、事前に設定した競合他社ピアグループの平均値、中央値、最高値、最低値などと比較することが可能になります。さらに、総合スコアだけでなく、気候変動、資源循環、生物多様性といった個別の環境テーマや、ガバナンス、リスク管理、機会創出といった評価項目ごとのスコアを比較することで、トモニホールディングスが相対的にどの分野で評価が高く、どの分野で改善が必要かを特定することができます。例えば、「気候変動戦略」の項目で競合より低い評価を受けている場合、目標設定の具体性やScope 3排出量への対応が課題である可能性が示唆されます。
具体的なスコアデータがない状況においても、これまでの分析(セクション2、4、5)に基づき、トモニホールディングスのESG評価における相対的なポジションを定性的に推測することは可能です。
強みとなり得る要素としては、TCFD提言への早期の賛同表明 13、GHG排出量算定ツールの導入と顧客支援への展開 15、地域社会と連携した環境保全活動の実績 21、サステナビリティ・リンク・ローンを含む多様な環境関連金融商品の提供 17 などが挙げられます。これらは、特に国内の地方銀行セクター内においては、比較的前向きな取り組みとして評価される可能性があります。
一方で、弱みや改善の余地があると考えられる要素としては、グループ全体としての定量的な環境目標(特にScope 3排出量、資源利用効率、廃棄物削減など)の欠如、気候変動や生物多様性に関するリスクと機会の評価・管理プロセスの詳細な開示不足、資源循環や生物多様性に関する戦略の具体性の低さ、先進的な国際イニシアチブ(SBTi、NZBA、TNFDなど)へのコミットメントの不在などが挙げられます。
これらの要素を総合的に勘案すると、トモニホールディングスは、地方銀行の平均的な水準、あるいはそれをやや上回る程度の環境パフォーマンスを示している可能性がありますが、国内外の先進的な金融機関と比較すると、まだ改善の余地が大きいと考えられます。特に、定量的な目標設定と実績開示の強化、リスク管理への統合深化、戦略的な取り組みの具体化などが、今後のESG評価向上に向けた鍵となるでしょう。
これまでの分析に基づき、トモニホールディングスが環境分野で直面している主要な課題を整理し、今後の持続可能な成長に向けた戦略的な提言を行います。
トモニホールディングスの環境への取り組みは、地域金融機関として一定の進展を見せていますが、さらなる深化と戦略的な統合が必要です。主な課題として以下の点が挙げられます。
第一に、グループ全体としての具体的かつ定量的な環境目標の設定が不十分である点です。特に、金融機関として最も影響の大きいScope 3(投融資先)排出量に関する削減目標や、資源利用効率、廃棄物削減に関する目標が明確に示されていません。目標なき取り組みは、進捗管理や成果評価を困難にし、ステークホルダーへの説明責任を果たす上でも課題となります。
第二に、気候変動や生物多様性に関するリスクと機会の評価を、事業戦略やリスク管理プロセスへより深く統合する必要がある点です。TCFD賛同 13 は重要な一歩ですが、シナリオ分析の結果や財務的影響の評価、それに基づく具体的な戦略展開に関する情報開示は限定的です。生物多様性に関しては、リスク認識や対応方針がまだ十分に明確化されていないように見受けられます。
第三に、資源循環と生物多様性の分野における戦略が、気候変動対策に比べて相対的に具体性に欠ける点です。資源循環は主に社内業務の効率化 20 に留まり、循環経済への貢献を目指す金融戦略は限定的です 17。生物多様性保全は、地域貢献活動 21 が中心であり、投融資活動におけるリスク管理との連携が不明確です。
第四に、外部パートナーシップへの依存 15 を効果的に管理し、具体的な成果に繋げていく必要がある点です。連携は有効な手段ですが、その成果を最大化するための戦略的なマネジメントが求められます。
第五に、情報開示の質と量の向上が求められる点です。TCFD提言への完全な準拠や、将来的なTNFDへの対応も見据え、定量的なデータに基づいた、より網羅的で透明性の高い情報開示が必要です。
これらの課題に対処し、環境への取り組みを強化することが、トモニホールディングスの持続的な成長と企業価値向上に不可欠です。
気候変動対策をさらに強化するため、以下の重点分野と行動を提案します。
まず、野心的かつ科学的根拠に基づいたGHG排出削減目標を設定することを推奨します。これには、Scope 1、2に加え、Scope 3(特に投融資先排出量)を対象とした中期・長期目標を含めるべきです。可能であれば、SBTi認定の取得を目指すことも有効です。目標達成に向け、エネルギー、不動産、運輸など、排出量への影響が大きい主要な投融資セクターについて、具体的な脱炭素化戦略(セクター別パスウェイ)を策定・開示することが望まれます。
次に、TCFD提言に基づく情報開示を質・量ともに拡充することを提案します。具体的には、複数の気候変動シナリオを用いた詳細な分析を実施し、特定されたリスクと機会が事業や財務に与える影響を可能な限り定量的に評価・開示します。また、ポートフォリオの気候変動への整合性を示す指標(例:ポートフォリオ・アライメント・メトリクス)を導入し、目標と共に開示することを検討します。
さらに、グリーンファイナンスの取り組みを強化・拡大します。既存の環境関連商品の拡充に加え、顧客企業の脱炭素化段階に応じた多様なソリューション(例:移行ファイナンス、技術導入支援)を提供します。同時に、気候変動リスク評価を、特定のグリーン案件だけでなく、全ての投融資案件の審査プロセスに標準的に組み込む体制を構築します。
最後に、投融資先企業とのエンゲージメントを強化し、企業の脱炭素化に向けた移行計画策定・実行を積極的に支援・促進することを提案します。建設的な対話を通じて、企業の取り組みを後押しするとともに、ポートフォリオ全体のリスク低減を図ります。
資源循環への貢献を強化するため、以下の行動を提案します。
まず、グループ全体の資源消費量(水、エネルギー、原材料など)と廃棄物発生量(種類別)に関するベースラインを詳細に把握・評価することから始めるべきです。現状を正確に把握することが、効果的な削減策の立案に繋がります。
次に、ベースライン評価に基づき、廃棄物削減(例:リサイクル率向上、最終処分量削減)や資源利用効率向上に関する具体的な定量目標を設定し、その進捗状況を定期的にモニタリング・開示することを推奨します。
さらに、金融機能を通じた循環経済への貢献を強化するため、戦略的なアプローチを策定します。地域産業の特性を踏まえ、循環型ビジネスモデル(例:リマニュファクチャリング、シェアリング、PaaS)に取り組む企業や、資源効率改善に資する技術開発を行う企業を特定し、優先的に支援する融資制度や投資方針を検討します。徳島大正銀行による焼却灰リサイクル施設への融資事例 17 のような取り組みを、より体系的に展開します。
加えて、自社の調達活動においても、持続可能性、特に資源循環の観点を重視した「サステナブル調達方針」を策定・導入し、サプライヤーに対しても環境配慮を働きかけることを提案します。
生物多様性保全への取り組みを強化し、戦略的な位置づけを明確にするため、以下の行動を提案します。
まず、TNFDなどの国際的な枠組みを参照し、自社の事業活動及び投融資ポートフォリオが、自然資本(生物多様性を含む)にどの程度依存し、どのような影響を与えているか、また、どのようなリスクと機会が存在するかについて、初期的な評価(スクリーニング)を実施することを推奨します。これにより、特に注意を払うべきセクターや地域を特定します。
次に、初期評価の結果に基づき、特に生物多様性への影響が大きいと考えられるセクター(例:農林水産業、建設・不動産、資源開発など)への投融資に関する具体的なポリシーやガイドラインを策定・導入することを検討します。これには、特定の高リスク活動への融資制限や、事業者に対する生物多様性配慮の要求などが含まれ得ます。
さらに、生物多様性の保全・回復に貢献する「ネイチャーポジティブ」な事業やプロジェクトへの投融資機会を積極的に探索・検討します。例えば、持続可能な認証を受けた農林水産物生産者への支援、生態系回復プロジェクトへのファイナンス、生物多様性保全に特化したファンドへの投資などが考えられます。
最後に、生物多様性に関する取り組みの情報開示を強化します。地域貢献活動 21 の成果を報告するだけでなく、投融資活動における生物多様性への配慮方針や具体的な取り組み、関連するリスク管理体制など、より戦略的な側面についても開示を進めることを推奨します。活動の成果を可能な限り定量的に示し、取り組みの実効性を高めることが重要です。
ESG評価機関からの評価、すなわち環境スコアリングを向上させるためには、以下の戦略的アプローチを推奨します。
第一に、本報告書で繰り返し指摘した通り、定量的なデータ収集体制の強化と、それに基づく目標設定及び実績の開示が最も重要です。GHG排出量(Scope 1, 2, 3)、エネルギー消費量、水使用量、廃棄物発生量・リサイクル率、グリーンファイナンスの実績額・比率など、評価機関が重視する主要な環境パフォーマンス指標について、網羅的かつ正確なデータを収集し、透明性をもって開示する基盤を整備します。
第二に、主要なESG評価機関の評価方法論や評価基準に関する理解を深め、自社の取り組みや開示内容がそれらの要求事項にどのように対応しているかを定期的にレビューします。必要であれば、評価機関との直接的な対話(エンゲージメント)を通じて、評価の背景や改善点に関するフィードバックを得ることも有効です。
第三に、環境戦略、目標、具体的な取り組み、そしてその成果を、統合報告書 13 やサステナビリティ報告書、ウェブサイトなどを通じて、株主、投資家、顧客、従業員、地域社会といった全てのステークホルダーに対して、明確かつ一貫性をもってコミュニケーションします。ストーリー性を持たせ、取り組みの意義や進捗を分かりやすく伝える工夫も重要です。
第四に、ベンチマーキングや競合分析(セクション5、6)で明らかになった自社の弱みや、先進事例(セクション4)とのギャップを認識し、それらを解消するための具体的な改善策を優先的に実行します。特に、国際的なイニシアチブへの参加や、先進的な方針・目標の導入は、評価向上に繋がりやすい要素です。
これらのアプローチを通じて、実質的な環境パフォーマンスの向上と、その適切な外部評価獲得の両立を目指すことが、持続的な企業価値向上に繋がります。
本報告書では、トモニホールディングスの環境への取り組みを、気候変動、資源循環、生物多様性の三つの側面から包括的に分析した。分析の結果、同社グループは、地域金融機関として環境課題への認識を高め、TCFD提言への賛同 13 やGHG排出量算定ツールの導入 15、多様な環境関連金融商品の提供 17、地域社会と連携した環境保全活動 21 など、多岐にわたる取り組みを進めていることが確認された。これらは、特に地方銀行セクターの中では前向きな動きとして評価できる。
一方で、いくつかの重要な課題も明らかになった。グループ全体としての定量的な環境目標、特に金融機関として影響の大きいScope 3排出量に関する目標設定が今後の課題である。また、気候変動や生物多様性に関するリスク評価を深化させ、それを経営戦略やリスク管理プロセスへ完全に統合し、その内容を具体的に開示する必要がある。資源循環や生物多様性に関する戦略は、気候変動対策に比べてまだ発展途上であり、より体系的かつ戦略的なアプローチが求められる。情報開示に関しても、定量的なデータに基づいた、より網羅的で透明性の高い開示への改善が期待される。
トモニホールディングスが掲げる「お客さま第一主義」「お客さまとともに成長」「信頼と安心の経営」というグループ経営理念 13 を実現し、持続的な成長を達成するためには、環境戦略の強化が不可欠である。環境課題への対応は、単なる規制遵守やリスク管理の手段に留まらず、新たな事業機会の創出、顧客や地域社会からの信頼獲得、企業価値の向上に直結する重要な経営課題である。
本報告書で提示した課題認識と戦略的提言が、トモニホールディングスにおける今後の環境戦略の策定と実行、そしてそれを通じた持続可能な社会への貢献と企業価値のさらなる向上に寄与することを期待する。環境への取り組みを経営の中核に据え、継続的に進化させていくことが、変化の激しい時代において地域と共に成長し続けるための鍵となるであろう。
TOMONY Holdings, Inc., https://www.tomony-hd.co.jp/english/english.html
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サステナビリティ - トモニホールディングス, https://www.tomony-hd.co.jp/sustainability/sustainability.html
トモニホールディングスグループが脱炭素経営支援に向け「zeroboard」の取扱いを開始, https://www.zeroboard.jp/news/732
ゼロボード、トモニHDと脱炭素経営支援 | NCB Library 金融・決済の ”なぜ?!” が見える, https://www.ncblibrary.com/posts/91827
環境 | トモニホールディングス, https://www.tomony-hd.co.jp/sustainability/environment.html
徳島大正銀行、とくぎんトモニリンクアップとSustech、地域の脱炭素化に向けた業務提携契約を締結 - PR TIMES, https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000066.000092942.html
株式会社徳島大正銀行、とくぎんトモニリンクアップ株式会社と業務提携いたしました。, https://www.miyajidenki.com/tokusima-business-partner-2/
SDGsへの取組み|企業情報 - 香川銀行, https://www.kagawabank.co.jp/about/sdgs/sdgs.html
SDGsへの取組み|地域とともに - 徳島大正銀行, https://www.tokugin.co.jp/about/region/sdgs.html
SDGsへの取組み - トモニホールディングス, https://www.tomony-hd.co.jp/sustainability/sdgs.html
環境への具体的取組み|地域とともに - 徳島大正銀行, https://www.tokugin.co.jp/about/region/origination.html
統合報告書・ディスクロージャー誌 - トモニホールディングス, https://www.tomony-hd.co.jp/ir/library/disclosure.html
環境への取組み|企業情報 - 香川銀行, https://www.kagawabank.co.jp/about/kankyo/torikumi.html
トモニホールディングス, https://www.tomony-hd.co.jp/
2023年 | 513t-CO2 |
2022年 | 507t-CO2 |
2021年 | 505t-CO2 |
2023年 | 4,793t-CO2 |
2022年 | 5,157t-CO2 |
2021年 | 4,813t-CO2 |
2023年 | 18,170t-CO2 |
2022年 | - |
2021年 | - |
スコープ1+2 CORの過去3年推移
2023年 | 60kg-CO2 |
2022年 | 71kg-CO2 |
2021年 | 76kg-CO2 |
スコープ3 CORの過去3年推移
2023年 | 207kg-CO2 |
2022年 | 0kg-CO2 |
2021年 | 0kg-CO2 |
スコープ1+2のCOA推移
2023年 | 1kg-CO2 |
2022年 | 1kg-CO2 |
2021年 | 1kg-CO2 |
スコープ3のCOA推移
2023年 | 4kg-CO2 |
2022年 | 0kg-CO2 |
2021年 | 0kg-CO2 |
2023年 | 878億円 |
2022年 | 799億円 |
2021年 | 703億円 |
2023年 | 140億円 |
2022年 | 142億円 |
2021年 | 131億円 |
2023年 | 4兆8105億円 |
2022年 | 4兆5514億円 |
2021年 | 4兆5961億円 |
すべての会社と比較したポジション
業界内ポジション
CORスコープ1+2
CORスコープ3
CORスコープ1+2
CORスコープ3
COAスコープ1+2
COAスコープ3
COAスコープ1+2
COAスコープ3