カテゴリー | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 |
---|---|---|---|
1購入した製品・サービス | 85 | 83 (▼2) | 78 (▼5) |
2資本財 | 8,632 | 4,974 (▼3,658) | 12,006 (▲7,032) |
3燃料・エネルギー関連活動 | 1,122 | 1,084 (▼38) | 1,109 (▲25) |
5事業から発生する廃棄物 | 25 | 26 (▲1) | 38 (▲12) |
6出張 | 64 | 135 (▲71) | 201 (▲66) |
あおぞら銀行は、日本板硝子株式会社と「あおぞらESG支援フレームワークローン」に基づくポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)契約を締結しました。PIFは企業活動が環境・社会・経済に与える影響を包括的に評価し、ポジティブな影響の拡大やネガティブな影響の抑制を支援するものです。本件では、日本板硝子のサステナビリティ目標達成をモニタリングを通じて支援します 。
あおぞら銀行は、エネルギー取引所を運営するenechain社と協業し、顧客および地域金融機関の脱炭素化を支援します。あおぞら銀行の「ESG支援フレームワーク」の一環として、enechainが運営する環境価値取引マーケットプレイス「JCEX」を紹介し、J-クレジットや非化石証書の取引を促進することで、企業の温暖化ガス排出削減を後押しします 。
あおぞら銀行は、英国の非営利団体CDPによる「CDP気候変動質問書2024」の評価において、8段階評価の最高位である「A」リスト企業として選定されました。これは、同行の気候変動問題への対応と情報開示が国際的に高い水準にあることを示すものです。同行は気候変動対応を経営の重要課題と位置づけ、CO2排出量実質ゼロ目標達成に向けた取り組みを継続しています。
※掲載情報は公開資料をもとに作成しており、全てのリスク・機会を網羅するものではありません。 より詳細な情報は企業の公式発表をご確認ください。
脱炭素社会への移行は大きな事業機会と捉えています。具体的には、グリーン/トランジションファイナンス市場の拡大(2027年度までにサステナブルファイナンス1兆円目標 )、再生可能エネルギープロジェクトや省エネ化支援、「あおぞらESG支援フレームワークローン」を通じたソリューション提供(2023年6月より提供開始 )、水素・アンモニア・CCS・DAC等の次世代エネルギー技術や脱炭素イノベーションへの投融資機会の増加(短期~中長期の機会として認識 )、環境関連アドバイザリー業務の拡大が期待されます。
日本の金融市場において、株式会社あおぞら銀行(以下、「あおぞら銀行」または「同行」)は特有の位置を占めており、近年、他の金融機関同様、環境への配慮と持続可能な社会への貢献が経営上の重要課題として認識されるようになっています。気候変動の深刻化、資源の枯渇懸念、生物多様性の損失といった地球規模の環境問題は、金融機関の事業活動にも直接的・間接的に大きな影響を及ぼすため、これらのリスクを適切に管理し、新たな事業機会を捉えることが求められています。あおぞら銀行も、この認識のもと、サステナビリティへの取り組みを通じて経済的価値と社会的価値の両立を目指す姿勢を示しています₁。
本報告書は、あおぞら銀行の環境パフォーマンスを「気候変動」「資源循環」「生物多様性」という3つの主要な柱に焦点を当てて詳細に分析し、同行の環境スコア算定に必要な情報を集約し、提供することを目的としています。この分析を通じて、同行の環境戦略の現状、具体的な取り組み、達成度、そして今後の課題と機会を明らかにします。
本報告書は、以下の主要な構成で成り立っています。
あおぞら銀行の環境戦略とガバナンス: 同行のサステナビリティ推進体制、環境方針、ESG支援フレームワーク、関連金融商品などを概観します。
主要環境課題への取り組みと実績: 気候変動、資源循環、生物多様性の各分野における具体的な目標、施策、実績を詳細に分析します。
リスクと機会、業界動向: 同行が直面する環境関連のリスクと機会、国内外の金融業界における環境対応のベストプラクティス、日本のグリーンファイナンス市場の動向を考察します。
課題と提言: 現状の取り組みにおける課題を分析し、環境パフォーマンス向上のための具体的な提言を行います。
競合分析と比較評価: 国内主要銀行との環境戦略やESG評価を比較し、あおぞら銀行の相対的な位置づけを評価します。
分析対象は、あおぞら銀行単体の活動に加え、主要なグループ会社であるあおぞら投信株式会社、あおぞら企業投資株式会社などの環境関連活動も範囲に含めます。これにより、あおぞら銀行グループ全体の環境パフォーマンスに対する理解を深めます。
あおぞら銀行グループは、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを経営の根幹に据え、そのための体制整備と方針策定を進めています。
同行グループは、「あおぞら銀行グループ環境方針」を制定し、環境保全活動の基本理念を明確にしています₂。この方針は、地球環境の健全性が人類の経済社会活動の基盤であるとの認識のもと、環境関連法令の遵守、顧客の低炭素・脱炭素社会への移行支援を含む環境ソリューションに資する商品・サービスの提供、そして事業者としての環境負荷低減活動(省資源・省エネルギー、廃棄物削減、グリーン調達)の推進を柱としています。さらに、ステークホルダーとの対話を通じた環境保全活動の促進や、環境への取り組みに関する積極的な情報開示も重視されています₂。この環境方針は、同行グループの全ての環境関連活動の基礎となる枠組みを形成しており、その実践を通じて持続可能な社会の発展への貢献を目指しています。
金融機関としての本業を通じた環境・社会への影響を管理するため、あおぞら銀行グループは「環境・社会に配慮した投融資方針」を定めています₃,₄。この方針では、投融資案件の検討に際し、環境・社会リスクを適切に把握し、負の影響を及ぼす可能性のある事業を行う顧客とは対話を通じて課題改善に努め、改善が見られない場合は与信の制限・禁止等を行うことでリスク低減を図るとしています。具体的には、ラムサール条約指定湿地やユネスコ指定世界遺産へ負の影響を与える事業、ワシントン条約に違反する事業、児童労働・強制労働を伴う事業などは原則として投融資を行いません₃。また、先住民族のコミュニティへの負の影響、非自発的住民移転を伴う土地収用、保護価値の高い地域への負の影響が懸念される事業については特に留意し、慎重な判断を行う方針です₃,₄。これらの詳細な規定は、同行が投融資活動を通じて間接的に及ぼす環境・社会への影響を認識し、それを管理しようとする姿勢の表れと言えます。
あおぞら銀行では、取締役会がサステナビリティに関する取り組み全体を監督し、その下にサステナビリティ委員会(委員長はサステナビリティ担当役員)を設置して、気候変動対応を含むサステナビリティ課題を経営戦略と一体的に推進する体制を構築しています₅。この体制は、トップレベルのコミットメントのもとで環境戦略が策定・実行されることを担保する上で重要です。
あおぞら銀行グループの「環境方針」₂では、事業者としての環境負荷低減策として「省資源・省エネルギー、廃棄物削減、グリーン調達」が掲げられています。しかしながら、気候変動対策における具体的な取り組み(例:本店での再生可能エネルギー100%化、社用車のEV化推進₆)と比較すると、資源循環に関する詳細な実行戦略、具体的な数値目標(基本的なリサイクル率データ₇を除く)、あるいは自社オペレーションにおける具体的なグリーン調達ガイドラインについては、提供された資料からは気候変動イニシアチブほど広範には文書化されていません。この点については、₂や₇も、方針文書自体や定性的なプログラム記述において具体的な詳細が不足していることを指摘しています。これは、方針レベルでのコミットメントは存在するものの、資源循環分野における詳細な公開情報が気候変動対策に比べて少ない可能性、あるいは開示の優先順位や取り組みの成熟度に差異がある可能性を示唆しており、環境スコアリングにおいてはさらなる情報収集や取り組みの深化が期待される領域です。
あおぞら銀行は、顧客のESG課題解決を支援するための多様な金融・非金融ソリューションを提供しています。
同行は、「あおぞらESG支援フレームワーク」を通じて、顧客の環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)に関する課題解決をサポートしています₄,₈。このフレームワークでは、特に脱炭素化支援に注力しており、グリーンローン、ソーシャルローン、サステナビリティ・リンク・ローン、ポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)といったサステナブルファイナンス商品の提供を積極的に推進しています。これらのローンについては、株式会社格付投資情報センター(R&I)から国際的な原則や国内ガイドラインへの適合性についてセカンドオピニオンを取得しており₈,₉、透明性と信頼性の確保に努めています。非金融面では、脱炭素化関連ソリューションを提供する企業との連携を通じて顧客の取り組みを支援しており、今後はマネジメントシステム構築支援や人的資本に関する取り組み支援など、ソリューションの範囲を拡大する計画も示されています₈。
あおぞら銀行は、国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)が策定したポジティブ・インパクト金融原則(PIF原則)に基づくポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)の提供に積極的に取り組んでいます。PIFは、企業活動が環境・社会・経済に与えるインパクトを包括的に分析・評価し、ポジティブなインパクトの進展・拡大やネガティブなインパクトの緩和・抑制を継続的に支援することを目的とするものです₁₀,₁₁。同行のPIF評価実施体制は、R&IよりPIF原則への適合性についてセカンドオピニオンを取得済みです₉。具体的な実行事例としては、日本板硝子株式会社₁₀,₁₂、株式会社石垣₁₁、北海道建物株式会社₁₃など、多様な業種の企業に対してPIFを提供しており、顧客のサステナビリティ目標達成を支援しています。
あおぞら銀行は、環境プロジェクトへの資金供給を目的としたグリーンボンドも発行しています₁。同行のグリーンボンド・フレームワークは、国際資本市場協会(ICMA)のグリーンボンド原則に整合しており、調達資金の使途は再生可能エネルギー事業およびグリーンビルディング事業に限定されています₁₄。プロジェクトの評価・選定プロセス、調達資金の管理体制、レポーティング体制も整備されており、Sustainalytics社からセカンドオピニオンを取得しています₁₄。これは、環境プロジェクトへの資金を透明かつ効果的に供給するための標準的な金融手法です。
同行は、サステナブルファイナンスの推進に関する明確な数値目標を設定しています。2027年度までにサステナブルファイナンス実行額1兆円(うち環境関連ファイナンス7,000億円)を目標として掲げており₁ ,₁₅、2023年度末時点でのサステナブルファイナンス累計実行額は約6,470億円、うち環境関連ファイナンスは約4,740億円と、順調に進捗しています₅。これらの定量的な目標は、同行の戦略的な意図と進捗を測る上での重要な指標となります。
あおぞら銀行は、「あおぞらESG支援フレームワークローン」₈や環境・社会に配慮した投融資方針₃,₄を通じて、顧客企業に影響を与える形で環境課題に取り組むことを重視しているように見受けられます。PIFの事例₁₀,₁₁,₁₂,₁₃では、顧客企業のサステナビリティ目標達成を支援しており、これには資源効率や環境影響の緩和といった側面が含まれ得ます。例えば、日本板硝子向けのPIFインパクト分析フレームワーク₁₆では、「資源効率・安全性」「廃棄物」「生物多様性と生態系サービス」といったインパクトカテゴリーが考慮されています。また、グリーンボンド₁₄はグリーンビルディングや再生可能エネルギーを対象としており、気候変動対策や資源効率に貢献します。これに対し、同行自身の直接的なオペレーションにおける資源循環や生物多様性に関する詳細な公開戦略や、投融資方針以外の直接的な保全投資(基本的な廃棄物データ₇や₂₁,₄で言及される投融資方針を除く)は、これらのファイナンス活動ほど目立って開示されていません。このことは、あおぞら銀行の資源循環や生物多様性へのアプローチが、主にファイナンスや投資活動(顧客への影響)を通じて行われており、広範かつ詳細に公開された直接的なオペレーションプログラムや保全投資よりも、そちらに重点が置かれている可能性を示唆しています。これは環境スコア評価において重要な区別であり、同行が一部のオペレーション側面を内部的に管理しているか、あるいはこれらの分野がまだ発展途上である可能性も考えられます。
あおぞら銀行は、気候変動への対応をマテリアリティ(重要課題)の一つと認識し₅、多岐にわたる取り組みを推進しています。
同行は、自社の事業活動に伴う温室効果ガス(GHG)排出量削減に関して、明確な目標を設定し、着実な進捗を示しています。
Scope 1(直接排出)およびScope 2(間接排出)については、2030年度までに実質ゼロを達成する目標を掲げており、2023年度末時点で2020年度比40%の削減を達成しました₅,₆。この達成に向けた具体的な施策として、本店が入居する上智大学ソフィアタワーにおける使用電力の100%再生可能エネルギー化、名古屋支店、日本橋支店、札幌支店など各支店における使用電力のグリーン化推進、府中別館における省エネルギー設備(LED照明、最新の水冷式空調システム)への更新、社用車のエコカーへの切り替え(2024年5月時点でエコカー比率92%達成)、本店へのEVバッテリー充電装置の設置、データセンターを兼ねる府中別館でのJ-クレジット制度を活用したカーボンオフセットなどが挙げられます₅,₆,₈₅。
Scope 3排出量については、投融資ポートフォリオ(カテゴリ15)に関し、2050年度までに実質ゼロとする目標を設定しています₅。その他のScope 3カテゴリ(カテゴリ1:購入した製品・サービス、カテゴリ2:資本財、カテゴリ3:スコープ1,2に含まれない燃料及びエネルギー活動、カテゴリ5:事業から出る廃棄物、カテゴリ6:出張、カテゴリ7:雇用者の通勤)についても排出量を把握・開示しており₇、包括的なGHG排出量管理への意識がうかがえます。
同行の温室効果ガス排出量実績は以下の通りです(単位:t-CO₂)₅,₆,₇。
Scope1: 2020年度 114、2021年度 110、2022年度 106、2023年度 95(₇より)
Scope2: 2020年度 6,243、2021年度 4,884、2022年度 4,267、2023年度 3,701(₇より)
Scope3 カテゴリ1(購入した商品およびサービス): 2020年度 92、2021年度 85、2022年度 83、2023年度 78
Scope3 カテゴリ2(資本財): 2020年度 7,413、2021年度 8,632、2022年度 4,974、2023年度 12,006(₇より)
Scope3 カテゴリ3(燃料およびエネルギー関連活動): 2020年度 1,121、2021年度 1,122、2022年度 1,084、2023年度 1,109
Scope3 カテゴリ5(事業から出る廃棄物): 2020年度 25、2021年度 25、2022年度 26、2023年度 38
Scope3 カテゴリ6(出張): 2020年度 64、2021年度 64、2022年度 135、2023年度 201
Scope3 カテゴリ7(雇用者の通勤): 2021年度 295、2022年度 379、2023年度 700(2020年度はデータなし) Scope3 カテゴリ15(投融資ポートフォリオ)の詳細は、同行のTCFD提言への対応に関する報告書で別途開示されています。
さらに、顧客の脱炭素化支援を通じて、2030年度までに3,000万トンのGHG排出量削減に貢献するという目標も設定しており、2023年度末時点での実績は1,310万トンです₅。
これらの取り組みは、あおぞら銀行が自社の環境負荷低減と、投融資先を通じた広範な経済社会の脱炭素化の両面にコミットしていることを示しています。
あおぞら銀行は、自社オペレーションにおける再生可能エネルギー導入と、顧客の脱炭素化を支援するグリーンファイナンスの拡大の両面で積極的な取り組みを進めています。前述の通り、本店ビルでは使用電力の100%を再生可能エネルギー由来とし、他の拠点でも順次グリーン電力への切り替えを推進しています₆。
環境ファイナンスに関しては、2030年度までに7,000億円の実行残高を目指すという具体的な目標を掲げており、2023年度末時点での実績は4,318億円です₅。サステナブルファイナンス全体では、2027年度までに1兆円という目標に対し、2023年度末時点で約6,470億円(うち環境関連ファイナンスは約4,740億円)を実行しており、目標達成に向けて順調に進捗しています₅,₁₅。
国内外におけるグリーンエネルギーファイナンス、トランジションファイナンス、脱炭素イノベーションファイナンスなどの取り組みを拡大しており₅,₆,₈₅、特に、水素・アンモニア、CCS(二酸化炭素回収・貯留)、DAC(直接空気回収)といったエネルギー関連の新技術開発や、製造・運輸セクターにおける抜本的な原燃料転換や省エネルギー推進に対するファイナンス機会の増加を成長機会として捉えています₅,₆。この二重のアプローチは、あおぞら銀行が気候変動対策を重要な事業戦略の一環と位置づけていることを示しています。
あおぞら銀行は、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同し、そのフレームワークに基づいた情報開示を積極的に行っています₁,₅。開示内容は、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標の4つの主要項目を網羅しています。
気候変動に関連するリスクとして、政策変更・技術革新・市場の嗜好の変化などから生じる「移行リスク」と、自然災害の激甚化・頻発化などから生じる「物理的リスク」を認識しています₅,₆。これらのリスクが与信ポートフォリオや市場運用、資金調達、オペレーション、レピュテーションに与える潜在的な影響を評価するため、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数のシナリオ(例:IEA STEPS 3℃、NZE 1.5℃、IPCC RCP 8.5 4℃、RCP 2.6 2℃)を用いたシナリオ分析を実施しています₅,₆。分析対象セクターは、電力、エネルギー、自動車、不動産、素材など、気候変動の影響を大きく受ける可能性のある業種を含んでいます。最近では、NGFS(気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク)シナリオの活用も開始しており、分析の高度化を図っています。
具体的なリスク対応策としては、石炭火力発電所の新規建設および既存発電設備の拡張に対するプロジェクトファイナンスを原則行わない方針を明確にし、既存の石炭火力発電関連プロジェクトファイナンス残高を2040年度までにゼロとする目標を設定しています(2023年度末実績:257億円)₅,₆。
これらの取り組みは外部からも評価されており、CDPの気候変動質問書2024において、最高評価である「A」リスト企業に選定されました₁₇。これは、同行の気候変動戦略と情報開示が高い水準にあることを示すものです。
あおぞら銀行は、自社の排出量削減やリスク管理に留まらず、低炭素経済への移行に伴う事業機会を明確に認識しています。これには、水素、アンモニア、CCS、DACといった新しいエネルギー技術へのファイナンスや、製造業や運輸業といった排出削減が困難なセクター(Hard-to-abate sectors)の脱炭素化支援が含まれます₅,₆,₈₅。同行のTCFD提言に基づく開示₅や環境への取り組みに関するウェブページ₆では、「気候変動に関する機会」が短期から長期にわたって詳述されており、「グリーンエネルギー・ファイナンス、トランジション・ファイナンス、脱炭素イノベーションファイナンス等の取り組み拡大」や「水素・アンモニア、CCS、DAC等エネルギー関連の新技術開発に対するファイナンス機会の増加」が挙げられています。このような積極的な姿勢は、あおぞら銀行が気候変動を単なる管理すべきリスクとしてだけでなく、事業成長と価値創造のための戦略的分野と捉えていることを示唆しています。この未来志向のアプローチは、同行が持続可能ファイナンスおよびトランジションファイナンスの成長市場を活用し、環境への貢献と財務的リターンの両方を追求する上で有利に働く可能性があります。
あおぞら銀行は、資源の効率的な利用と循環型経済への移行の重要性を認識し、自社オペレーションおよび投融資活動において取り組みを進めています。
同行は、事業活動に伴う廃棄物の発生抑制とリサイクルの推進に努めています。同行の廃棄物管理実績は以下の通りです₇。
廃棄物発生量 (t): 2020年度 168、2021年度 173、2022年度 160、2023年度 151
リサイクル量 (t): 2020年度 123、2021年度 123、2022年度 110、2023年度 119
リサイクル率 (%): 2020年度 73%、2021年度 71%、2022年度 68%、2023年度 79%
コピー用紙購入量 (t): 2020年度 50、2021年度 47、2022年度 45、2023年度 43
具体的な取り組みとしては、府中別館における省エネルギー設備の更新(LED化、高効率空調)によるエネルギー消費量の削減₆、オフィス用品においてリサイクル素材を活用する「Plastic Smart」イニシアチブ(₂₄で言及)、ペットボトルキャップを回収しワクチン寄付につなげるエコキャップ運動への参加₁₈、本店が立地する上智大学周辺の地域清掃活動への参加₁₈,₁₉などが挙げられます。
これらの活動は、廃棄物の削減と資源の有効活用に向けた意識と実践を示していますが、気候変動対策と比較すると、組織全体を網羅する包括的な廃棄物削減プログラムや、リサイクル率以外の具体的な削減目標に関する詳細な情報は限定的です。しかし、2023年度の79%というリサイクル率は、一定水準の管理が行われていることを示す良好な指標と言えます。
あおぞら銀行グループの環境方針においては、「グリーン調達」に取り組むことが明記されています₂。また、「あおぞら銀行グループ業務委託に関する基本方針」に基づき、物品購入や業務委託先のサプライヤーの事業活動が環境に与える負の影響を懸念し、サプライヤーとのコミュニケーションを通じてその低減を図る意向が示されています₂。
しかしながら、これらの資料からは、自社のオペレーションにおける具体的なグリーン調達基準、サプライヤー評価プロセス、あるいは調達実績に関する詳細な情報は確認できませんでした。₂では、環境方針においてグリーン調達の具体的な実施方法が詳述されていない点が指摘されています。この点は、今後の情報開示の充実が期待される領域です。
同行の「環境・社会に配慮した投融資方針」では、プラスチック関連事業への投融資を検討する際に、顧客の環境社会配慮への取り組み状況や姿勢に関する情報を収集する方針が示されています₄。これは、プラスチック廃棄物問題への意識を反映したものです。
また、産業廃棄物の再資源化事業を手掛ける株式会社カイシアに対するLBOローンが、事業内容自体の環境負荷低減への貢献性からサステナビリティ・リンク・ローン(SLL)として認定された事例があります₂₀。これは、資源循環型ビジネスへの資金供給を通じて貢献する具体例と言えます。
さらに、同行のポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)の評価フレームワークにおいては、「資源効率・安全性」や「廃棄物」といったインパクトカテゴリーが含まれており₁₆、融資先の資源循環への貢献度も評価対象となり得ます。
あおぞら銀行は、プラスチックのような資源集約型セクターに関する特定のファイナンス方針を策定し₄、廃棄物リサイクル事業への融資も行っていますが₂₀、同行自身のオペレーションにおける包括的な廃棄物削減戦略、基本的なリサイクル率を超える具体的な目標、あるいは内部利用のための持続可能な調達慣行に関する詳細な公開情報は限定的です₂,₇。投融資方針₃,₄は資源循環に影響のあるセクター(例:プラスチック、資源採掘を伴う鉱業)に対応していますが、環境方針₂では自社オペレーションに関する「廃棄物削減」や「グリーン調達」が広範に言及されているに留まります。廃棄物とリサイクルの定量データ₇は入手可能ですが、例えば従業員一人当たりや収益当たりの具体的な削減目標、あるいは同行自身の消費に関する包括的なグリーン調達ガイドラインは、気候戦略やファイナンス方針ほど明確に示されていません。₂は、環境方針においてこれらの具体的な達成方法が欠けていると指摘しています。このことから、あおぞら銀行の資源循環への影響力は、公に詳述された内部のオペレーション慣行よりも、ファイナンス決定を通じて発揮される側面が大きい可能性があります。内部の資源循環プログラムの透明性向上と、場合によってはその目標設定の野心度を高める余地があると考えられます。
あおぞら銀行は、自然資本および生物多様性の保全が持続可能な社会の基盤であるとの認識を深めつつあり、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の提言を踏まえた対応を進めています。
同行の「環境・社会に配慮した投融資方針」には、生物多様性保全の観点が組み込まれています。具体的には、ラムサール条約指定湿地、ユネスコ指定世界遺産、ワシントン条約(CITES)違反事業への投融資を禁止しています₃,₄,₂₁。
さらに、保護価値の高い地域(High Conservation Value areas)や先住民族のコミュニティに負の影響を与える可能性のある事業、森林伐採を伴う大規模農園開発(NDPE: No Deforestation, No Peat, No Exploitation のコミットメントを要求)、パーム油生産(同様にNDPEコミットメントやRSPO認証の確認)、鉱山開発といった、生物多様性に大きな影響を及ぼし得るセクターや活動に対しては、特に留意し、顧客の環境社会配慮の取り組み状況を確認する方針です₃,₄,₂₀,₂₁。
グループ会社のあおぞら投信株式会社では、ファンドの投資対象を選定する際のサステナビリティ評価項目の一つとして「土地利用と生物多様性」を考慮に入れています₂₂。
TNFDへの対応としては、LEAPアプローチ(Locate, Evaluate, Assess, Prepare)やENCORE(Exploring Natural Capital Opportunities, Risks and Exposure)といったツールを用いて、自社の事業活動および投融資ポートフォリオが自然資本へ与える影響(インパクト)と自然資本からの恩恵(依存度)に関する分析を開始しています₂₁,₂₃,₂₄。これら分析結果を踏まえ、2023年度には投融資方針を生物多様性保全の観点から改定するなど₂₁、具体的な対応を進化させています。
あおぞら銀行が直接的に行う大規模な生物多様性保全投資や具体的な保全プログラムに関する情報は、現時点では限定的です。主な取り組みは、前述の投融資方針を通じた間接的な影響管理が中心となっています。₂₃では、LEAPアプローチとENCOREを用いて事業と自然資本の関係性を分析し、顧客の開示情報も活用しながら自然関連リスク・機会の分析を深め、環境への取り組みに関する包括的な開示を推進していく意向が示されています。₂₄も同様の分析に言及しています。
社会貢献活動の一環として、あおぞら銀行グループのマッチング寄付プログラムを通じて、「公益財団法人日本自然保護協会」などの自然保護団体へ寄付を行っています₁₈。これはフィランソロピー活動としての貢献ですが、事業活動と直接結びついた大規模な保全投資とは性質が異なります。
同行の生物多様性戦略は、投融資方針(例:ラムサール条約指定湿地、ユネスコ世界遺産、ワシントン条約違反事業へのファイナンス禁止、森林破壊、パーム油、鉱業に関する特定方針など₃,₄,₂₁)を通じたリスク軽減に重点を置いているように見受けられます。TNFDへの関与や依存度・影響度分析₂₁,₂₃も進めていますが、同行自身による大規模な生物多様性保全や生態系回復プロジェクトへの直接投資は、現在のところ目立っていません。あおぞら投信はサステナビリティスコアに「土地利用と生物多様性」を組み込んでおり₂₂、TNFDフレームワークを採用し、LEAPアプローチやENCOREツールを用いた分析を行っています₂₁,₂₃。これはリスクと機会を理解するための重要なステップです。また、日本自然保護協会への寄付₁₈のような慈善活動も行われています。しかし、例えば一部のグローバル銀行が推進するような、ネイチャー・ベースド・ソリューション(NbS)に特化したファンドの組成や、直接的な大規模保全パートナーシップといった取り組みは、提供された情報からは確認できませんでした。₂₃は、保全投資に関する具体的な詳細はこの文書では入手できないと述べています。したがって、あおぞら銀行の現在のアプローチは、ESGリスクを管理する慎重な金融機関としての姿勢と整合的ですが、積極的なプラスの影響創出という観点からは、標準的な融資業務を超えた、保全やNbSへの専門的な資金コミットメントを通じて、将来的に発展させる余地があると言えます。現在の戦略は、「害を少なくする」および「影響を理解する」ことに主眼があり、「積極的な回復・保全」への直接的な資金的コミットメントは、今後の課題となる可能性があります。
あおぞら銀行グループは、傘下の専門性を有する各社を通じて、多角的に環境課題への対応を進めています。
あおぞら投信は、「環境・社会に配慮した運用方針」を掲げ、商品開発や情報開示においてサステナビリティを重視しています₂₅。ESG投資の具体的な取り組みとして、投資対象の環境サステナビリティ選定基準を設けています。これには、温室効果ガス排出量(Scope1, 2)や埋蔵資源からの潜在排出量に基づき、排出量の多い企業を除外または投資ウェイトを削減するネガティブスクリーニングが含まれます₂₂。さらに、独自のサステナビリティスコア(土地利用と生物多様性の評価も含む)に基づき、スコアの高い銘柄の投資比率を引き上げ、低い銘柄を引き下げるポジティブティルティングも行っています₂₂。
例えば、「あおぞら・徹底分散グローバル・サステナビリティ株式ファンド(愛称:まんてん観測)」では、運用資産の大部分をサステナビリティを主要な要素として選定した投資対象に投資し、ポートフォリオ全体の温室効果ガス排出原単位および潜在排出量を参照インデックスと比較して大幅に削減することを目指しています₂₂。これらの取り組みは、責任ある機関投資家としての役割を果たすための具体的な行動として評価できます。
あおぞら企業投資は、「環境・社会に配慮した投融資方針」のもと、環境・社会課題の解決を支援する投融資を推進するとともに、負の影響を及ぼす可能性のあるファイナンスに対しては慎重な姿勢で臨んでいます₄。
この方針では、「セクター横断的方針」と「特定セクター方針」が定められています。セクター横断的方針では、ラムサール条約指定湿地やユネスコ世界遺産への負の影響、ワシントン条約違反、児童労働・強制労働などに関わる事業への投融資を禁止しています₃,₄。
特定セクター方針は極めて詳細であり、石炭火力発電(新規建設・拡張へのファイナンス禁止、ただしCCUS等脱炭素化技術支援は検討)、石炭採掘(MTR方式の禁止、発電用一般炭新規開発へのファイナンス禁止)、石油・ガス(オイルサンド、シェールガス、北極圏開発等への環境社会配慮確認)、大規模水力発電、バイオマス発電(ライフサイクルでのGHG排出量や持続可能性確認)、森林伐採(大規模プランテーション開発でのNDPEコミットメント要求)、パーム油(NDPEコミットメント要求、RSPO認証確認)、タバコ製造、非人道兵器(製造へのファイナンス禁止)、原子力、プラスチック、海運、鉱山開発(それぞれ環境社会配慮の取り組み状況確認)など、多岐にわたるセクターに対して具体的な対応方針を定めています₃,₄。
あおぞら企業投資株式会社₃,₄は、その特定のセクター方針を通じて、環境および社会リスクを管理するための特に詳細かつ具体的なアプローチを示しています。これらは広範な声明を超えて、石炭、石油・ガス、森林破壊に関連する活動、鉱業などのセクターに対する明確な条件や禁止事項を列挙しています。例えば、「新規石炭火力発電所の建設に対するファイナンスは行わない」ことは明確です。パーム油については、NDPE(森林破壊なし、泥炭地開発なし、搾取なし)へのコミットメントが求められます。鉱業については、環境・社会デューデリジェンスが強調されています。投資部門に対するこのような公表された方針の詳細度は、強力なリスク管理慣行と言えます。この詳細な方針の枠組みは、あおぞら企業投資にとって、特に生物多様性と気候変動に関連するあおぞらグループ全体の環境リスクエクスポージャーを軽減する上で重要な役割を果たしている可能性が高いです。これは、ESGリスクのガバナンスにおける強みです。
あおぞら銀行は、気候変動をはじめとする環境課題がもたらすリスクと機会を認識し、経営戦略に織り込む努力をしています。
TCFD提言に基づく分析を通じて、あおぞら銀行は気候変動が信用リスク、市場リスク、流動性リスク、オペレーショナルリスク、評判リスクといった伝統的な金融リスクを増幅させる可能性があると認識しています₅,₆。
具体的なリスクとしては、気候変動の影響による投融資先の財務状況悪化や事業継続困難に伴う与信費用の増加、保有有価証券の担保価値毀損、大規模災害による自行の事業拠点やシステムの被災、環境対応の遅れによるESG評価の低下とそれに伴う資金調達コストの上昇やビジネス機会の逸失などが挙げられます₅,₆,₈₆。特に、S&Pグローバル・レーティングの報告書では、あおぞら銀行の米国事業環境における不確実性(金利変動リスクや商業用不動産エクスポージャーなど)が指摘されており₂₆、これらのリスクは気候変動要因によってさらに複雑化・深刻化する可能性があります。
一方で、あおぞら銀行は脱炭素社会への移行を新たな事業機会と捉えています。グリーンファイナンスやトランジションファイナンス市場の拡大は、同行にとって大きな成長ドライバーとなり得ます₅,₆,₈₅。具体的には、再生可能エネルギープロジェクトへのファイナンス、省エネルギー化や燃料転換を目指す企業への支援、「あおぞらESG支援フレームワークローン」を通じたソリューション提供、水素・アンモニア・CCS・DACといった次世代エネルギー技術や脱炭素イノベーションへの投融資機会の増加、サステナビリティ推進に関するアドバイザリー業務の拡大、環境関連技術を有する企業との協業などが期待されます₅,₆,₈₅。
気候変動に加えて、自然資本の劣化や生物多様性の損失も重要なリスクおよび機会として認識され始めています。あおぞら銀行は、TNFDのLEAPアプローチ(Locate, Evaluate, Assess, Prepare)を用いた、事業活動および投融資ポートフォリオの自然への依存度と影響度の分析に着手しています₂₁,₂₃。今後は、顧客企業の開示情報を活用しながら、自然関連リスク・機会に関する分析を深化させ、事業戦略への統合を図る方針です₂₁,₂₃。この分野は気候変動対応と比較して金融機関全体で取り組みが初期段階にありますが、今後の進展が注目されます。
S&Pグローバル・レーティング₂₆は、あおぞら銀行が米国の事業環境、特に金利の不確実性や米国のオフィス関連商業用不動産(CRE)へのエクスポージャーに対して脆弱であると指摘しています。気候変動(物理的リスクと移行リスクの両方)は、これらの既存の脆弱性を著しく悪化させる可能性があります。₂₆は、米国のオフィスCREエクスポージャー(減少傾向にあるものの)と、米ドル建て資産のためのホールセール資金調達への依存に言及しています。気候変動は、米国における異常気象の頻度・深刻度の増加(物理的リスク)を通じて不動産価値に影響を与える可能性があります。また、移行リスク(例:エネルギー効率に関するより厳しい建築基準法、炭素価格設定)も商業用不動産の実行可能性と評価に影響を及ぼす可能性があります。あおぞら銀行自身のTCFD分析₅,₆は、自然災害や不動産に影響を与える政策変更による信用リスクを認識しています。したがって、あおぞら銀行の特定の米国エクスポージャーは、その市場における気候関連の物理的および移行リスクと組み合わさると、一般的な気候リスク評価を超えた慎重なモニタリングと管理が必要となる集中的な脆弱性領域を示す可能性があります。これは、市場固有の財務リスクとより広範な環境リスク要因を結びつける、より深いレベルの分析です。
国内外の金融機関は、環境課題への対応を加速させており、様々なベストプラクティスが生まれています。
国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)は、金融機関が持続可能な開発目標(SDGs)やパリ協定の目標達成に貢献するための枠組みを提供しています₂₇。欧州中央銀行(ECB)は、金融機関に対し、気候関連および環境リスクを事業戦略、ガバナンス、リスク管理フレームワークに統合し、フォワードルッキングな視点で包括的に考慮することを期待しています₂₈。これには、シナリオ分析の活用も含まれます。
個別金融機関の例として、HSBCは2050年までのネットゼロ達成目標を掲げ、融資ポートフォリオの排出量目標設定、サプライチェーン排出量削減、気候リスク管理を推進しています₂₉。また、資源循環の観点から、従来の線形経済モデルから循環経済モデルへの移行の重要性も指摘しています₃₀。BNP Paribasは、「気候・生物多様性イニシアチブ」を通じて関連研究を支援し、資産運用においても森林破壊や水問題といった生物多様性関連要素を組み込み、サステナブル・プラス商品群を提供しています₃₁,₃₂。ドイツ復興金融公庫(KfW)は、森林保全や海洋保護など、生物多様性ファイナンスに年間数十億ユーロを拠出し、独自の生物多様性ロードマップを策定中です₃₃。世界銀行は、クンミン・モントリオール地球生物多様性枠組の実施を支援し、PROBLUE(海洋健全性)、PROGREEN(陸上自然資産)といったプログラムや、ワイルドライフ・コンサベーション・ボンドのような革新的な金融商品を展開しています₃₄。これらの事例は、 financed emissions の野心的な目標設定、気候と生物多様性のリスク管理への統合、革新的金融商品の開発、顧客との積極的なエンゲージメント、そして堅牢な情報開示がグローバルなベストプラクティスであることを示しています。特に生物多様性への注目は急速に高まっています。
日本国内でも、金融庁や日本銀行が金融機関に対し、気候関連金融リスクの管理体制強化、ストレステストやシナリオ分析の活用を促しています₃₅。炭素価格の上昇が企業財務に与える影響や、それが金融システムへ波及するリスクも認識されています₃₆。また、企業の取締役には気候変動対応に関する善管注意義務があり、対応を怠った場合の法的責任リスクも高まっています₃₇。
政府はGX(グリーン・トランスフォーメーション)戦略を推進し、今後10年間で150兆円規模の官民投資(うち民間金融が130兆円)を見込んでおり、金融機関の役割は極めて重要です₃₈。TNFDへの対応については、国内金融機関の間で取り組みが始まっていますが、多くは既存の環境配慮投融資方針の再整理や初期的な分析に留まり、リスク・機会の具体的な特定やエンゲージメント戦略への落とし込みまで進んでいる事例はまだ一部です₃₉。
事業会社のオペレーション面では、オフィスにおける省エネ(LED照明化)やエコカー導入₄₀、大手町・丸の内・有楽町エリアにおける廃棄物再利用率100%目標や食品ロス削減、ペットボトル水平リサイクルといった先進的な資源循環の取り組み₄₁、日本政策投資銀行(DBJ)グループのサステナブル調達指針₄₂など、参考となる事例が見られます。
BNP Paribas₃₁,₃₂のような先進的なグローバル金融機関やTNFD₃₉のようなイニシアチブは、気候変動と生物多様性・自然資本の相互関連性をますます強調し、統合的な評価と戦略へと向かっています。BNP Paribasは、そのプログラム名を「気候・生物多様性イニシアチブ」と明確に改称し₃₁、資産運用において森林破壊や水問題(生物多様性の代理指標)を組み入れています₃₂。TNFDフレームワーク自体₃₉も、企業が気候関連のリスクや機会と並行して自然関連のリスクや機会を考慮することを奨励しています。₃₉は、日本の金融機関が気候と自然の関連性を分析しようと試みている事例を紹介しています。気候変動は生物多様性損失の主要な要因の一つであり、自然資本に基づく解決策は気候緩和と適応の鍵であるという科学的コンセンサス(例:IPBESの指摘₂₈,₄₃)があります。あおぞら銀行にとって、TNFD分析を開始しているものの₂₁,₂₃、今後の重要な方向性とベストプラクティスは、気候戦略と自然戦略をより深く統合し、ファイナンスやリスク管理においてシナジー(例:自然資本を活用した気候変動対策)とトレードオフ(例:再生可能エネルギープロジェクトの土地利用が生物多様性に与える影響)を特定することになるでしょう。
日本のグリーンファイナンス市場は、政府の政策的後押しと投資家の関心の高まりを背景に、急速な成長を遂げています。市場調査によると、日本のサステナブルファイナンス市場規模は2024年の315億米ドルから、2025年から2030年にかけて年平均成長率25.1%で拡大し、2030年には1,196.7億米ドルに達すると予測されています₄₄。2024年時点で、日本のサステナブルファイナンス市場は世界市場の約4.2%を占めています₄₄。
特にグリーンボンドの発行は活発で、2021年の年間発行額は114億米ドルと世界第5位の規模であり、累積発行額は373億米ドルに上ります₄₅。今後は、グリーンボンドに加え、サステナビリティ・リンク・ボンドの発行増加への期待も高まっています₄₅。
金融庁、経済産業省、環境省、日本銀行といった政府・中央銀行も、グリーンファイナンスを推進するための各種政策を導入しており₄₅、市場の成長を後押ししています。この市場環境は、あおぞら銀行のような金融機関にとって、サステナブルファイナンス関連の商品・サービスを拡大する大きな機会を提供しています。
あおぞら銀行は環境対応において着実な進展を見せているものの、さらなるパフォーマンス向上に向けていくつかの課題が存在すると考えられます。
Scope 3排出量、特に投融資ポートフォリオ(カテゴリ15)の算定と開示に関して、対象範囲の網羅性向上とデータ精度の継続的な改善が求められます。現状、多くの金融機関にとって共通の課題ですが、より精緻なカーボンアカウンティングは効果的な削減戦略の基礎となります。
トランジションファイナンスを推進する上で、「真に移行に資する案件」を見極める評価基準の高度化と、グリーンウォッシングと見做されるリスクの管理が一層重要になります。
中小企業を含む幅広い顧客層に対する脱炭素化支援策のメニュー拡充と、それらのソリューションが実効性を持つための浸透努力も継続的な課題です。
自社オペレーションにおける廃棄物削減目標について、現状のリサイクル率目標に加え、例えば床面積あたりや従業員一人あたりの廃棄物原単位削減目標といった、より具体的な数値目標の設定と、その達成に向けた包括的なプログラムの策定・開示が望まれます。₂,₂,₇で指摘されたように、現状では詳細な戦略や目標の開示が限定的です。
サステナブル調達方針に関しても、具体的な評価基準、対象品目、サプライヤーエンゲージメントのプロセス、実績などをより明確に開示することで、透明性と実効性を高める必要があります。
投融資活動を通じた資源循環型ビジネス(リサイクル、シェアリング、廃棄物発電など)への支援をさらに拡大し、その環境インパクトを定量的に評価・開示する体制の構築も期待されます。
TNFD対応の深化が重要です。₂₁や₂₃で分析開始が言及されていますが、リスクと機会の定量評価を進め、それを具体的な事業戦略や目標設定に結び付ける段階には至っていない可能性があります。Locate(特定)、Evaluate(診断)、Assess(評価)、Prepare(準備)のLEAPアプローチの各段階を網羅的に実施し、優先的に対応すべき地域やセクターを特定することが求められます。
投融資先の生物多様性への影響を評価する手法(例:生物多様性フットプリントの算定支援など)を高度化し、建設的なエンゲージメントを通じて改善を促す取り組みの強化が必要です。
現状、フィランソロピー活動₁₈を除き、事業レベルでの直接的な生物多様性保全活動や関連投資へのコミットメントは限定的に見えます。今後は、より積極的な貢献策を検討する余地があります。
環境データの透明性と網羅性、特に資源循環と生物多様性に関する定性的・定量的な情報の開示を一層充実させる必要があります。
グループ会社(あおぞら投信、あおぞら企業投資など)間で、環境戦略や目標の連携を強化し、グループ全体としてのシナジーを創出することが重要です。
行員に対する環境教育や意識啓発は継続的に実施し₃,₈,₄₆、専門人材の育成にも注力する必要があります。
あおぞら銀行は、特に気候変動対応において野心的な目標(Scope1・2排出量の2030年実質ゼロ₆、サステナブルファイナンス1兆円目標₁など)を掲げています。気候変動に関する活動は比較的明確に定義されており、CDP「A」評価₁₇はその強力なパフォーマンスを反映しています。しかし、包括的なオペレーショナルな資源循環や積極的な生物多様性保全といった分野では、詳細な公開戦略や、方針表明を超える具体的かつ野心的な目標設定という点では、気候変動対策ほど進展していないように見受けられます。資源循環については定量データ₇が存在するものの、リサイクル率を超える詳細なプログラム開示や野心的な削減目標は不足しています(前述の1.1.1、2.2.1での分析参照)。生物多様性への取り組みは、主に方針に基づくリスク軽減₃,₄,₂₁と初期のTNFD分析₂₃であり、積極的かつ大規模な保全投資プログラムの証拠は少ない状況です(前述の2.3.1での分析参照)。同行自身も「サステナビリティ推進に消極的との外部評価による、ESG評価低下」という潜在的リスクを認識しており₄₇、これは継続的な改善と確固たる行動の必要性を認識していることを示唆しています。したがって、資源循環と生物多様性の分野で、方針レベルのコミットメントや初期分析を、気候変動対策で見られるような堅牢で透明性のある野心的な行動計画や目標に転換することが重要な課題となります。これには、専門リソースの投入、具体的な指標の開発、そして場合によっては新しいプログラムの立ち上げが必要です。これらを怠ると、₄₇で言及されているESG評価リスクが顕在化する可能性があります。
あおぞら銀行が環境パフォーマンスを一層向上させるために、以下の具体的な提言を行います。
Scope 3 カテゴリ15(投融資ポートフォリオ)のネットゼロ目標達成に向け、特に排出量の多いセクター(電力、石油・ガス、鉄鋼、不動産など)ごとの具体的な移行戦略と中間目標を策定し、開示することを推奨します。
顧客エンゲージメントを強化し、脱炭素化に向けた技術的支援や知見共有を含む、より実効性の高い支援策を提供します。特に中小企業に対しては、取り組みやすいソリューションの開発が重要です。
気候関連の事業機会(再生可能エネルギー、省エネ、新技術等)を最大限に活用するため、関連ファイナンス商品の開発とマーケティング戦略を強化します。
自社オペレーションにおける廃棄物総量削減目標(例:2030年度までに2020年度比でXX%削減)、および食品ロス削減に関する具体的な数値目標を設定し、公表します。
サーキュラーエコノミー原則(リデュース、リユース、リサイクルに加え、リペア、リフューズ、リパーパスなど)に基づいたオフィス運営ガイドラインを策定し、3R+Renewable(再生可能資源への代替)を徹底します(MUFGの事例₄₈なども参考に)。
サプライヤー向けの具体的なグリーン調達基準(環境認証取得製品の優先、ライフサイクルアセスメント情報の要求など)を策定・公開し、主要サプライヤーとのエンゲージメントを通じてサプライチェーン全体での環境負荷低減を推進します。
資源循環型ビジネス(高度なリサイクル技術、アップサイクル事業、サービスとしての製品(PaaS)モデルなど)への投融資基準を明確化し、専門知識を持つ審査チームを育成します。
TNFDフレームワークに基づくLEAPアプローチ(Locate, Evaluate, Assess, Prepare)の全段階を完了させ、事業活動および投融資ポートフォリオにおける自然への依存度・影響度が特に高い優先地域・セクターを特定します。特定されたリスクと機会に基づき、具体的な緩和策(例:高影響セクターへのエンゲージメント強化、代替技術への投資促進)および事業機会創出策(例:ネイチャーポジティブ技術への投資)を策定し、開示します。
生物多様性の保全・回復に積極的に貢献するプロジェクト(例:持続可能な農林水産業、認証林業、生態系再生事業、流域管理改善プロジェクトなど)への投融資に関する具体的な目標設定(例:年間実行額、件数など)を検討します。
主要な投融資先に対し、生物多様性への影響評価(例:生物多様性フットプリントの算定)の実施と、具体的な保全計画の策定を奨励し、その進捗をモニタリングします。
既存の「No Go Zone」ポリシー(投融資禁止区域・事業)の厳格な運用に加え、積極的に自然資本の保全・再生を支援する「Positive Impact Zone」として特定の地域やプロジェクト分野を特定し、資金供給を強化することを検討します。
環境データ(GHG排出量、水使用量、廃棄物量、生物多様性関連指標など)の収集・管理システムを強化し、データの信頼性と網羅性を向上させるとともに、第三者保証の対象範囲を段階的に拡大します。
サステナビリティレポートや統合報告書において、特に資源循環と生物多様性に関する定性的・定量的な情報開示(具体的な目標、取り組み内容、KPI、進捗実績、課題など)を大幅に拡充します。
環境NGOやNPOとの連携を強化し、専門的な知見の導入や、より戦略的かつインパクトの大きい社会貢献活動(例:₁₈の日本自然保護協会への寄付を発展させ、共同プロジェクトを実施するなど)を展開します。
あおぞら銀行の環境への取り組みを相対的に評価するため、国内の主要な銀行グループ(三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)、みずほフィナンシャルグループ(Mizuho FG)、りそなホールディングス(Resona HD)、SBI新生銀行)との比較分析を行います₄₉,₅₀,₅₁,₅₂。比較項目は、気候変動目標、資源循環戦略、生物多様性方針、サステナブルファイナンス目標と実績などです。
2050年カーボンニュートラル(投融資ポートフォリオ、自社排出)を宣言し、2030年までの中間目標も設定しています。サステナブルファイナンス目標は100兆円(2030年度まで)と極めて大規模です₅₃。気候変動と自然資本・生物多様性への取り組みを一体的に推進しており、TNFDフォーラムへ参画し、LEAPアプローチを活用した分析も行っています₄₃,₅₄,₅₅,₅₆。自社オペレーションにおいても、GHG排出量削減目標に加え、廃棄物削減(本部ビルのリサイクル率90%以上目標)やプラスチックごみ・紙資源の有効活用目標を設定しています₄₈,₅₆。
2050年までに投融資ポートフォリオのGHG排出量ネットゼロ、2030年までに自社グループのGHG排出量ネットゼロを宣言しています₅₇。サステナブルファイナンス目標も設定し、積極的に推進しています。TNFD提言に基づく開示も行っており、「SMBCの森」といった具体的な生物多様性保全活動も展開しています₅₈,₅₉,₆₀。
投融資ポートフォリオの2050年ネットゼロ、自社排出の2030年カーボンニュートラルを目標としています₆₁。TCFD提言に加え、TNFD提言も踏まえた「気候・自然関連レポート」を統合的に発行しています₆₂,₆₃。環境・気候変動対応ファイナンス目標を設定し、循環型社会の推進として廃棄物排出量原単位削減目標や再利用率目標を掲げています₆₄。生物多様性保全に関しては、エクエーター原則への取り組み強化や経団連生物多様性宣言イニシアチブへの参加が見られます₆₃。
TCFDおよびTNFD提言に沿った取り組みを進めており、Scope1,2のカーボンニュートラル目標、投融資ポートフォリオのGHG排出量ネットゼロを宣言しています₆₅。リテール顧客向けのトランジション・ファイナンス目標も特徴的です。生物多様性保全活動として、植樹プロジェクトや海岸清掃活動などを地域と連携して実施しています₆₆。
エネルギー使用に伴うGHG排出量を2030年度末までにネットゼロ、投融資ポートフォリオのGHG排出量を2050年度末までにネットゼロとする目標を掲げています₆₇。石炭火力発電向けプロジェクトファイナンス残高は2040年度末までにゼロを目指します。責任ある投融資方針を制定し、赤道原則を採択しています₆₇。環境配慮型住宅ローンなども提供しています₆₈。
メガバンクであるMUFG、SMFG、みずほFGは、その規模とグローバルな事業展開を背景に、一般的に大規模なサステナブルファイナンス目標を設定し、気候変動だけでなく自然資本のような新しい分野に関しても、より広範かつ詳細な公開フレームワークを有しています(例:MUFGの100兆円目標₅₃、みずほの気候・自然統合レポート₆₂)。一方、あおぞら銀行は、これらのメガバンクと比較して規模は小さいものの、ポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)への強い注力₁₀,₁₁や、法人顧客に対する具体的なESG支援フレームワーク₈を通じて、ニッチな市場で独自の強みを発揮しようとしているように見受けられます。あおぞら銀行のサステナブルファイナンス目標は2027年度までに1兆円であり₁、その規模に応じた重要なコミットメントですが、絶対額ではメガバンクに及びません。競合他社に関する情報₅₀,₅₁は、あおぞら銀行を他のミドルティアまたは専門銀行と共に位置づけており、トップメガバンクとは区別しています。したがって、あおぞら銀行がメガバンクとグリーンファイナンスの絶対量で競争するのではなく、PIFや顧客に合わせたESGサービスといった付加価値の高い分野での戦略的集中が、主要な差別化要因となる可能性があります。本報告書では、この戦略的ポジショニングを強調することが重要です。
あおぞら銀行および国内主要銀行の第三者機関によるESG評価を比較することで、相対的な環境パフォーマンスを把握します。
Sustainalytics ESG Risk Rating: 27.7 (リスクレベル: Medium)、業種内順位(銀行): 587/1030 ₆₉。
CDP 気候変動: 2024年評価で「A」(最高評価)を取得₁₇。
MSCI ESG Rating: R&Iによる発行体格付は「A-(安定的)」ですが₇₀、これは信用格付であり、MSCI ESGレーティングとは異なります。あおぞら銀行のMSCI ESGレーティングに関する直接的な情報は提供された資料からは見当たりませんでした。しかし、他の金融機関(例:GMOペイメントゲートウェイ₇₁、大塚ホールディングス₇₂、みずほFG₇₃、SBI新生銀行₇₄)はMSCIの評価を受けており、金融業界で広く参照されている指標です。
以下に、競合他社の主なESG評価を示します。
三菱UFJフィナンシャル・グループ (MUFG):
Sustainalytics ESG Risk Rating: 16.9 (Low Risk), 業種内順位 175/1016 ₇₅。
CDP 気候変動スコア: 「A-」以上維持を目標としています₇₆。
MSCI ESGレーティング: 「A」以上と推測されます(₇₂の文脈より)。
みずほフィナンシャルグループ (Mizuho FG):
Sustainalytics ESG Risk Rating: 24.3 (Medium Risk), 業種内順位 410/1015 ₇₇。
CDP 気候変動スコア: 「A-」以上を目標としています₇₈。
MSCI ESGレーティング: MSCI ESG Leaders Indexes等の構成銘柄です₇₃。
三井住友フィナンシャルグループ (SMFG):
Sustainalytics ESG Risk Rating: 20.2 (Medium Risk), 業種内順位 279/1015 ₇₉。
CDP: PCAF Japan coalitionへの参画やCDPへのエンゲージメントを行っています₈₀。
りそなホールディングス (Resona HD):
独自の「りそなESG評価」を社内で実施しています₈₁。
各種ESGインデックスに組み入れられています₈₂。
CDPスコアに関する言及があります₈₃。
SBI新生銀行 (SBI Shinsei Bank):
MSCI ESG Rating: 「A」(2023年)₇₄。
CDP: 参加しています₈₄。
あおぞら銀行のCDP気候変動「A」評価₁₇は特筆すべき成果であり、気候関連の情報開示とパフォーマンスにおけるリーダーシップを示しています。しかし、SustainalyticsのESGリスクレーティングが27.7(ミディアムリスク)₆₉であることは、競合他社(例:MUFG 16.9 ローリスク、みずほFG 24.3 ミディアムリスク、SMFG 20.2 ミディアムリスク)と比較して中位層に位置することを示唆しています。CDPの「Aリスト」は、気候変動対策において世界的にトップクラスの企業群を代表するものです。一方、SustainalyticsのESGリスクレーティングは、気候変動だけでなく、様々な環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)要因を考慮したより広範な評価です。「ミディアムリスク」というスコアは、気候変動対応は強力であるものの、他のESG側面(Sustainalyticsの銀行向け評価方法論において重視される可能性のある、社会貢献やガバナンス、あるいは資源循環や生物多様性といった他の環境要因)が、トップパフォーマーと比較して総合スコアを相対的に引き下げている可能性を示唆しています。MUFGのような競合他社は、より低い(つまり良好な)Sustainalyticsのリスクスコアを有しています。このことから、あおぞら銀行は気候変動管理において強固な基盤を有しているものの、総合的なESG評価および環境スコアを向上させるためには、他の環境分野(資源循環、生物多様性)や、本報告書の直接的な範囲外ではあるものの総合的なESG評価に影響を与える社会・ガバナンス側面におけるパフォーマンスと情報開示を強化する必要があるかもしれません。本報告書における資源循環と生物多様性に関する詳細な分析は、これらの改善領域を特定する上で鍵となります。
あおぞら銀行は、環境課題への対応を経営の重要事項と位置づけ、特に気候変動分野において顕著な進展を見せています。Scope1・2排出量の実質ゼロ目標設定と着実な削減努力、CDP気候変動における「A」評価獲得、そしてポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)やESG支援フレームワークを通じた顧客のサステナビリティ推進支援は、同行の強みと言えます。TCFD提言に沿った情報開示やシナリオ分析の実施も評価できます。
一方で、資源循環と生物多様性の分野においては、方針レベルでのコミットメントは見られるものの、気候変動分野ほど具体的な戦略、野心的な数値目標、包括的なプログラムに関する公開情報が充実しているとは言えず、今後の深化が期待されます。特に、自社オペレーションにおける廃棄物総量削減やサプライチェーンを含めたサステナブル調達の具体化、TNFDフレームワークに基づく自然関連リスク・機会の事業戦略への本格的な統合と目標設定、そして生物多様性保全へのより積極的な事業レベルでの貢献は、今後の重要な取り組み課題となるでしょう。
金融機関を取り巻く環境は、GX(グリーン・トランスフォーメーション)の進展やステークホルダーからのESG情報開示要求の高まりなど、急速に変化しています。あおぞら銀行が、これらの変化に対応し、持続可能な金融機関としての役割を一層果たしていくためには、気候変動対応で培った知見を他の環境分野にも展開し、グループ全体での取り組みを強化・加速させることが不可欠です。特に、そのユニークなポジショニングであるPIFや顧客密着型のESG支援をさらに発展させ、社会全体のサステナビリティ向上に貢献することが期待されます。
本報告書で明らかになった、あおぞら銀行の環境スコア算定に資する主要な定量的・定性的情報は以下の通りです。
GHG排出量実績(Scope1, 2, 3各カテゴリ)と削減目標(2030年Scope1,2実質ゼロ、2050年Scope3カテゴリ15実質ゼロ)₅,₆,₇。
自社オペレーションにおける再生可能エネルギー導入比率(本店100%化など)₆。
環境ファイナンス実行額と目標(2030年度7,000億円目標、2023年度実績4,318億円)₅,₁₅。
CDP気候変動スコア「A」(2024年)₁₇。
TCFD提言に基づく詳細なリスク・機会分析と戦略開示₅,₆。
廃棄物リサイクル率(2023年度79%)と廃棄物発生量・コピー用紙購入量の実績₇。
投融資方針におけるプラスチック等特定セクターへの言及₄。
自社オペレーションに関する包括的な廃棄物削減目標や詳細なサステナブル調達基準の開示は限定的₂。
投融資方針における禁止セクター(ラムサール条約湿地等)および留意セクター(森林伐採、パーム油等)の明確化₃,₄,₂₁。
TNFD対応の開始(LEAPアプローチ、ENCORE活用による分析)と関連方針改定₂₁,₂₃。
あおぞら投信における生物多様性評価の組み込み₂₂。
事業レベルでの直接的な大規模保全投資や具体的な数値目標は未設定。
グループ環境方針および環境・社会に配慮した投融資方針の整備₂,₃。
サステナビリティ委員会の設置と取締役会による監督体制₅。
あおぞらESG支援フレームワークとPIFの積極的推進₈,₁₀。
これらの情報は、あおぞら銀行の環境パフォーマンスを多角的に評価し、今後の改善に向けた示唆を得る上で重要な基礎データとなります。
2023年 | 95t-CO2 |
2022年 | 106t-CO2 |
2021年 | 110t-CO2 |
2023年 | 3,701t-CO2 |
2022年 | 4,267t-CO2 |
2021年 | 4,884t-CO2 |
2023年 | - |
2022年 | - |
2021年 | - |
スコープ1+2 CORの過去3年推移
2023年 | 15kg-CO2 |
2022年 | 24kg-CO2 |
2021年 | 37kg-CO2 |
スコープ3 CORの過去3年推移
2023年 | 0kg-CO2 |
2022年 | 0kg-CO2 |
2021年 | 0kg-CO2 |
スコープ1+2のCOA推移
2023年 | 0kg-CO2 |
2022年 | 1kg-CO2 |
2021年 | 1kg-CO2 |
スコープ3のCOA推移
2023年 | 0kg-CO2 |
2022年 | 0kg-CO2 |
2021年 | 0kg-CO2 |
2023年 | 2,463億円 |
2022年 | 1,833億円 |
2021年 | 1,347億円 |
2023年 | -499億円 |
2022年 | 87億円 |
2021年 | 350億円 |
2023年 | 7兆6030億円 |
2022年 | 7兆1841億円 |
2021年 | 6兆7287億円 |
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